説明

画像処理装置、画像処理方法、および制御プログラム

【課題】処理対象領域の境界が不自然に強調されないように補正を行う画像処理を実現することにある。
【解決手段】本発明に係る画像処理装置31は、人物の口を含む顔画像について画像処理を行うものであって、顔画像の少なくとも口の一部を含む第1領域の各位置について、該位置の色と歯の代表色との差に基づいて、該位置が歯であることの尤度を第1器官尤度として特定する歯色類似度特定部51と、第1領域の第1位置からの距離が大きいほど第1重みが小さくなるように第1重みを決定する歯位置重み決定部52と、第1器官尤度および第1重みが大きいほど補正量が大きくなるように該位置の補正量を決定する歯補正量決定部53と、上記補正量を用いて画像を補正する歯画像補正部54とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関し、特に顔画像の補正を行う画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
写真または映像等の画像に人物の顔が含まれる場合、その画像に含まれる顔は画像の観察者の注意を引く部分であることが多い。従来から、画像に含まれる顔の見栄えが良くなるよう、顔画像を補正または調整する技術がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、上下の唇の輪郭を抽出し、検出した上下の唇の内側の輪郭に囲まれる部分を、歯に対応する部分として特定し、歯に対応する部分の明るさを調整する技術が開示されている。例えば歯に対応する部分の画素値を明るくし、顔の見栄えを良くすることができる。特許文献1の技術では、歯に対応する部分を特定するために、画像の各画素の輝度値の変化から、唇の輪郭を検出している。具体的には、口領域において縦方向(顔の高さ方向)の検出線を複数定義し、各検出線に沿って画素の輝度値の変化を調べ、比較的輝度値の変化が大きな点を唇の輪郭点として特定する。そして、特定した輪郭点の空間分布から、上下の唇の外側の輪郭および内側の輪郭に対応する輪郭点を特定し、上下の唇の内側の輪郭に囲まれる領域を口の内部として特定し、そこに歯に対応する領域があるとみなす。口の内部の領域における輝度値についてのヒストグラムを作成すると、いくつもの山が現れる。特許文献1によれば、最大輝度値に最も近いヒストグラムの極小値より大きい輝度を有する画素を歯とみなす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−231879号公報(2009年10月8日公開)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T. Cootes, G. Edwards, and C. Taylor、「Active appearance models」、IEEE、Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence、June 2001、23(6)、pp.681-685
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では、以下の問題を生じる。
【0007】
唇または歯の補正をする領域を特定するために、まず唇の輪郭を検出することが考えられる。しかしながら、特許文献1の技術を用いて唇の輪郭を検出するためには、照明条件が良い顔画像を用意する必要があった。画像の輝度値は、照明等の撮影環境に依存して大きく変化する。例えば逆光の条件で撮影された顔画像では、顔の部分に光が当たらず、顔全体が暗くなる。そのため、画素毎の輝度値の変化が小さくなり、唇の輪郭部分の輝度値の変化も小さくなり、輪郭点の特定が困難になる(誤検出をしやすくなる)という問題が生じる。また屋内等の低照度下で撮影された場合、ノイズが相対的に大きくなり、唇の輪郭点の特定がさらに困難になる。
【0008】
一方、顔に光が当たっている照明条件で撮影された場合、唇の輪郭部分の輝度値の変化が大きく、輪郭点の特定はしやすくなる。しかしながら、光の当たり方によっては顔の凹凸によって陰影ができ、唇の輪郭における輝度値の変化より大きな輝度変化が陰影の境界部分に生じる。その結果、陰影の境界と唇の輪郭との区別が困難になる。
【0009】
また、顔に光が強く当たっている照明条件で撮影された場合、顔全体が白っぽくなる(輝度が大きくなる)。そのため、唇の輪郭付近が白っぽくなり、輪郭部分の輝度値の変化が小さくなり、輪郭点の特定が困難になる。また、口紅やリップグロスに当たった光の反射(艶)により、艶の領域の境界に大きな輝度変化が生じた場合、輪郭と艶の境界との区別が困難になり、誤検出しやすくなる。
【0010】
また、特許文献1の技術では、唇の輪郭から特定した口内領域において輝度がある値よりも大きい画素を補正対象として特定し、補正対象の画素に対して、一様にトーンカーブを適用して、輝度を増加させる。この場合、輝度を増加させる補正によって、補正対象と判定された領域とそれ以外の領域との境界が、不自然に強調されて見えるという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理対象の領域の境界が不自然に強調されないように処理対象の器官に適切に補正を行う画像処理を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る画像処理装置は、人物の口を含む顔画像について画像処理を行う画像処理装置であって、上記顔画像の少なくとも口の一部を含む第1領域の各位置について、該位置の色と処理対象である器官の代表色である第1代表色との差に基づいて、該位置が上記器官であることの尤度を第1器官尤度として特定する第1器官尤度特定部と、上記第1領域の各位置について、上記第1領域の第1位置からの距離が大きいほど第1重みが小さくなるように上記第1重みを決定する第1重み決定部と、上記第1器官尤度および上記第1重みが大きいほど補正量が大きくなるように該位置の上記補正量を決定する補正量決定部と、上記補正量を用いて画像を補正する画像補正部とを備えることを特徴としている。
【0013】
本発明に係る画像処理方法は、人物の口を含む顔画像についての画像処理方法であって、上記顔画像の少なくとも口の一部を含む第1領域の各位置について、該位置の色と処理対象である器官の代表色である第1代表色との差に基づいて、該位置が上記器官であることの尤度を第1器官尤度として特定する第1器官尤度特定ステップと、上記第1領域の各位置について、上記第1領域の第1位置からの距離が大きいほど第1重みが小さくなるように上記第1重みを決定する第1重み決定ステップと、上記第1器官尤度および上記第1重みが大きいほど補正量が大きくなるように該位置の上記補正量を決定する補正量決定ステップと、上記補正量を用いて画像を補正する画像補正ステップとを備えることを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、第1領域の各位置における第1器官尤度および第1重みが大きいほど、該位置における補正量が大きくなる。第1器官尤度が大きければ、その位置が処理対象である器官である度合いが大きいと考えられる。よって、処理対象である器官と考えられ、かつ、第1位置に近い位置の補正量を大きくし、処理対象である器官ではない位置、または、第1位置から遠い位置の補正量を小さくすることができる。そのため、第1位置に近い位置の処理対象である器官の領域を主に補正し、第1領域の第1位置から遠い境界付近の補正量を小さくできる。それゆえ、第1領域の境界が不自然に強調されることを防ぎながら、処理対象である器官の領域に対して適切に補正を行うことができる。
【0015】
処理対象の器官は、例えば唇または歯であってよい。
【0016】
また、上記補正量は、上記第1器官尤度および上記第1重みの積に比例してもよい。
【0017】
また、上記第1器官尤度特定部は、色空間の色相彩度平面における上記第1代表色と上記第1領域の各位置の色との間の距離に応じて、上記第1器官尤度を特定してもよい。
【0018】
また、上記第1器官尤度特定部は、色空間の色相彩度平面における上記第1代表色と上記第1領域の各位置の色との間の距離と、上記第1代表色と該位置の色との色相の差とに応じて、上記第1器官尤度を特定してもよい。
【0019】
また、上記第1器官尤度特定部は、色空間における上記第1代表色と上記第1領域の各位置の色との距離に応じて、上記第1器官尤度を特定してもよい。
【0020】
また、上記第1位置は上記第1領域の中の線を示し、上記第1重み決定部は、上記第1位置が示す線からの距離が大きいほど上記第1重みが小さくなるように上記第1重みを決定する構成であってもよい。
【0021】
また、上記第1位置は、上記第1領域の重心または中心を通る線を示すものであってもよい。
【0022】
上記の構成によれば、第1領域の重心または中心の補正量を大きくし、そこから離れた端の補正量を小さくすることができる。例えば、口の中に見える歯は、口端点に近い領域では唇の陰になることが多い。そのため、処理対象領域の重心または中心に近い歯の補正量を大きくすることにより、より自然な補正を行うことができる。
【0023】
また、上記第1位置が示す線は、2つの口端点を結ぶ線に対して垂直であってもよい。
【0024】
上記の構成によれば、口の中心付近を主に補正して、より自然な補正を行うことができる。
【0025】
また、上記第1位置は上記第1領域の中の点を示し、上記第1重み決定部は、上記第1位置が示す点からの距離が大きいほど上記第1重みが小さくなるように上記第1重みを決定する構成であってもよい。
【0026】
また、上記第1重み決定部は、上記第1領域における上記第1器官尤度と輝度との積が最も大きい位置を上記第1位置とする構成であってもよい。
【0027】
また、上記第1位置は、上記第1領域の重心または中心を示すものであってもよい。
【0028】
また、上記第1位置は、上記第1領域における上記第1器官尤度が第1閾値以上である領域の重心または中心を示すものであってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、例えば唇または歯と考えられる領域の重心または中心の補正量を大きくすることができる。よって、より自然な補正を行うことができる。
【0030】
また、上記第1位置は、上記顔画像における人物の顔の向きに応じた実際の口の中心位置を示すものであってもよい。
【0031】
上記の構成によれば、顔の向きが正面ではない場合に、実際の口の中心の補正量を大きくすることができる。よって、より自然な補正を行うことができる。
【0032】
また、上記画像補正部は、上記補正量が大きいほど対応する上記第1領域の位置の輝度を大きく増加させてもよい。
【0033】
上記の構成によれば、例えば顔画像の歯を自然な見た目で白く補正することができる。また、例えば、唇の光沢を自然な見た目で増すことができる。
【0034】
また、上記補正量決定部は、上記第1領域の各位置について、上記第1器官尤度、上記第1重みおよび輝度が大きいほど補正量が大きくなるように上記補正量を決定する構成であってもよい。
【0035】
また、上記画像補正部は、上記第1器官尤度が第2閾値以上である第2領域を補正領域とし、上記補正領域の画像を上記補正値を用いて補正してもよい。
【0036】
また、上記画像処理装置は、上記第1領域の各位置について、該位置の色と処理対象ではない別の器官の代表色である第2代表色との差に基づいて、該位置の第2器官尤度を特定する第2器官尤度特定部を備え、上記補正量決定部は、上記第1器官尤度および上記第1重みが大きいほど上記補正量が大きくなるように、かつ、上記第2器官尤度が小さいほど上記補正量が大きくなるように上記補正量を決定する構成であってもよい。
【0037】
上記の構成によれば、処理対象ではない別の器官と考えられる領域の補正量を小さくすることができる。そのため、例えば、歯の領域の周囲に存在する唇または歯肉または舌の領域を補正することを防止し、歯の領域を適切に補正することができる。
【0038】
また、処理対象である上記器官は唇であり、左右の口端点を結ぶ線分の垂直二等分線上にあり、かつ、上記第1領域の内側のある点を第2位置として、上記画像処理装置は、上記第1領域の各位置について、上記第2位置で第2重みが最大となるように、かつ、上記第1領域の境界の少なくとも一部で上記第2重みが最小となるように、上記第2重みを決定する第2重み決定部を備え、上記第1器官尤度特定部は、上記第1領域の各位置について、上記第2重みが小さいほど上記第1器官尤度を小さくする構成であってもよい。
【0039】
上記の構成によれば、唇の中央位置について補正量を大きくし、唇の境界付近での補正量を小さくすることができる。よって、唇領域の境界が不自然に強調されることを防ぎながら、唇領域に対して適切に補正を行うことができる。
【0040】
なお、上記画像処理装置は、一部をコンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各部として動作させることにより上記画像処理装置をコンピュータにて実現させる制御プログラム、および上記制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0041】
以上のように、本発明によれば、第1位置に近い位置の処理対象である器官の領域を主に補正し、第1領域の第1位置から遠い境界付近の補正量を小さくできる。それゆえ、第1領域の境界が不自然に強調されることを防ぎながら、処理対象である器官の領域に対して適切に補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像補正部の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るデジタルカメラの概略構成を示すブロック図である。
【図3】(a)は、正規化された口領域の画像を示す画像であり、(b)は、平滑化された口領域の画像を示す画像である。
【図4】口画像における複数の領域を示す図である。
【図5】CbCr平面において、唇色の候補となる色の範囲を単純化して示す図である。
【図6】本実施形態の唇色特定処理および唇領域特定処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】(a)は、候補色と肌の代表色とのCbCr平面における距離と、重みWaとの関係を示す図であり、(b)は、図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の重みWaを計算した結果を示す画像である。
【図8】(a)は、候補色と肌の代表色とのCbCr平面における色相と、重みWbとの関係を示す図であり、(b)は、図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の重みWbを計算した結果を示す画像である。
【図9】図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の重みWcを計算した結果を示す画像である。
【図10】図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の画素値から唇色度合いD1を計算した結果を示す画像である。
【図11】図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の重みWdを計算した結果を示す画像である。
【図12】図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の画素値から候補評価値D2を計算した結果を示す画像である。
【図13】(a)は、各画素の色と唇の代表色とのCbCr平面における距離と、第1の唇色類似度Weとの関係を示す図であり、(b)は、図3(b)に対応し、口画像の各画素の第1の唇色類似度Weを計算した結果を示す画像である。
【図14】(a)は、各画素の色と唇の代表色とのCbCr平面における色相と、第2の唇色類似度Wfとの関係を示す図であり、(b)は、図3(b)に対応し、口画像の各画素の第2の唇色類似度Wfを計算した結果を示す画像である。
【図15】図3(b)に対応し、唇候補領域に分類された画素を示す画像である。
【図16】(a)および(b)は、図15に対応し、唇候補領域を示す画像からモデル化した唇領域を特定する手順を示す画像である。
【図17】図16(a)に対応し、モデル化された唇領域を示す画像である。
【図18】本実施形態の補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図19】各水平位置での補正重みWgを示す図である。
【図20】図17に対応し、補正重みWgを示す画像である。
【図21】図20に対応し、補正部分評価値D3を示す画像である。
【図22】図3(b)に対応し、輝度と補正部分評価値D3との積を示す画像である。
【図23】光沢補正領域の第1補正量によるヒストグラムである。
【図24】(a)は、各画素の入力用輝度に対する第1トーンカーブを示す図であり、(b)は、各画素の入力用輝度に対する第2トーンカーブを示す図である。
【図25】図22に対応し、輝度成分のみを有する光沢画像を示す画像である。
【図26】正規化された口画像、平滑化された口画像、および光沢画像の合成処理を示す図である。
【図27】(a)は、補正前の顔画像の一部を示す画像であり、(b)は、補正後の顔画像の一部を示す画像である。
【図28】(a)は、図3(a)に対応し、正規化された口画像のCb成分の値を示す画像であり、(b)は、図3(a)に対応し、正規化された口画像のCr成分の値を示す画像である。
【図29】口内領域特定処理および補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図30】図17に対応し、口内部領域および口内部領域の補正重みWhを示す画像である。
【図31】図3(b)に対応し、口画像の各画素の歯色類似度Wiを計算した結果を示す画像である。
【図32】図13(b)に対応し、各画素の(1−We)の値を示す画像である。
【図33】図14(b)に対応し、各画素の(1−Wf)の値を示す画像である。
【図34】図31に対応し、歯光沢画像を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、主に、デジタルカメラに搭載され、撮像された画像に含まれる顔画像に対して処理を行う画像処理装置について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明に係る画像処理装置は、デジタルビデオカメラ、パーソナルコンピュータ(PC)のWebカメラ、またはカメラ付き携帯電話等の撮影装置に搭載され、撮影装置で撮影して得られた画像に対して処理を行ってもよい。また、本発明に係る画像処理装置は、ネットワーク等の通信経路、または外部記憶装置から取得した画像について処理を行ってもよい。また、撮像された静止画だけではなく、動画等の顔画像に処理を行ってもよい。また、デジタルカメラで撮像を行う際にデジタルカメラの表示装置に表示されるプレビュー画像に処理を施してもよい。
【0044】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0045】
<デジタルカメラの構成>
図2は、本実施形態に係るデジタルカメラ30の概略構成を示すブロック図である。デジタルカメラ30は、指示入力装置2、撮像装置3、画像記憶装置4、表示装置5、および画像処理装置31を備える。
【0046】
指示入力装置2は、ボタン、キーまたはタッチパネル等の入力装置を備え、利用者から撮像の指示を受け付け、撮像装置3に撮像の指示を出力する。また、指示入力装置2は、利用者から顔画像の補正処理の指示を受け付け、画像処理装置31に補正処理の指示を出力する。
【0047】
撮像装置3は、例えば、CCD(charge coupled device)またはCMOS(complementary metal oxide semiconductor)撮像素子等の撮像素子を備える。撮像装置3は、撮像の指示に応じて撮像し、撮像した画像(画像データ)を画像記憶装置4に出力する。
【0048】
画像記憶装置4は、各種の情報を記憶するものであり、例えばHDD(Hard Disk Drive)、またはフラッシュメモリ等の記憶デバイスを備える。画像記憶装置4は、撮像装置3から受け取った画像を記憶して保存しておく。
【0049】
表示装置5は、ディスプレイを備え、入力された画像を表示して利用者に提示する。また、表示装置5は、画像処理装置31から補正処理済みの画像を受け取り、補正処理済みの画像を表示する。
【0050】
<画像処理装置の構成>
画像処理装置31は、画像取得部(指示受領部)11、顔検出部12、特徴検出部13、適否判定部14、口画像正規化部15、平滑化部16、肌代表色特定部17、候補色特定部18、唇代表色特定部19、唇領域特定部20、画像補正部21、合成部22、表示制御部23、口内部領域特定部32、歯候補色特定部33、および歯代表色特定部34を備える。
【0051】
画像取得部11は、指示入力装置2から補正処理の指示を受け取る。補正処理の指示は、処理対象となる画像を示す情報、および、どのような補正処理を行うかを示す情報を含む。補正処理の種類としては、例えば、唇にリップグロスを塗布したように画像を補正する唇艶強調補正、または歯が白くなるよう画像を補正する歯のホワイトニング補正等がある。画像取得部11は、受け取った補正処理の指示に基づき、画像記憶装置4から処理対象の画像を取得する。なお、画像取得部11は、撮像装置3から撮像された画像を直接受け取ってもよい。画像取得部11は、取得した処理対象の画像を顔検出部12、特徴検出部13、適否判定部14、口画像正規化部15、肌代表色特定部17、および合成部22に出力する。また、画像取得部11は、受け取った補正処理の指示を画像補正部21に出力する。
【0052】
顔検出部12は、画像取得部11から受け取った画像の中に含まれる顔画像を検出する。顔検出部12は、画像に含まれる顔画像を検出すると、顔画像の位置を特定する。顔画像の位置は、顔画像の所定の点の座標を示してもよいし、顔画像の領域を示してもよい。顔検出部12は、顔画像の位置を、特徴検出部13、適否判定部14、口画像正規化部15および肌代表色特定部17に出力する。なお、顔検出部12は、処理対象の画像から複数の顔画像を検出してもよい。複数の顔画像を検出した場合、顔検出部12は、各顔画像の位置を特定し、複数の顔画像の位置を上記各部に出力してもよい。
【0053】
特徴検出部13は、画像取得部11から受け取った処理対象の画像および顔検出部12から受け取った顔画像の位置から、該顔画像の顔の各特徴の位置を検出する。具体的には、特徴検出部13は、例えば目(目頭、目尻等)、口(口端点、口の中心点等)、および鼻(鼻の頂点等)等の顔の器官の特徴、および顔の輪郭等の特徴(特徴点)を検出し、それらの位置を特定する。特徴の位置は、特徴点の座標を示してもよいし、特徴を含む領域を示してもよい。各特徴の検出は、公知の技術を用いて行うことができる。特徴検出部13は、検出した顔の特徴の位置を適否判定部14、口画像正規化部15、および肌代表色特定部17、および画像補正部21に出力する。なお、特徴検出部13は、複数の顔画像の特徴の位置を特定し、複数の顔画像の特徴の位置を上記各部に出力してもよい。
【0054】
適否判定部14は、画像取得部11から受け取った処理対象の画像、顔検出部12から受け取った顔画像の位置、および特徴検出部13から受け取った顔の特徴の位置から、該顔画像が補正処理を行うのに適しているか否かを判定する。例えば、適否判定部14は、横向きの顔画像および顔の写りが小さすぎる顔画像等を、不適として判定する。具体的な判定方法は後述する。なお、処理対象の画像に複数の顔画像が含まれている場合、適否判定部14は、各顔画像について補正処理を行うことの適否を判定してもよいし、補正処理を行うのにより適した所定数(例えば1つ)の顔画像を特定してもよい。適否判定部14は、処理対象として適切と判定した顔画像を示す情報を口画像正規化部15、肌代表色特定部17、および候補色特定部18に出力する。
【0055】
口画像正規化部15は、画像取得部11、顔検出部12、および特徴検出部13からそれぞれ処理対象の画像、顔画像の位置、および顔の特徴の位置を受け取る。口画像正規化部15は、受け取った情報に基づき、適否判定部14によって処理対象として適切と判定された顔画像について、処理対象となる顔画像の口領域の画像を抽出する。後の画像処理における計算を容易にするために、口画像正規化部15は、処理対象の画像の口領域が所定の大きさになるように画像サイズを正規化する。具体的には、口画像正規化部15は、口の左右の端点が所定の座標に位置するように、必要に応じて処理対象の顔画像を回転および拡大・縮小させ、所定のサイズの口領域(口を含む領域)を処理対象の顔画像から切り出す。図3(a)は、正規化された口領域の画像を示す画像である。なお、処理対象の顔画像を拡大・縮小する場合、必要に応じて元の画素の間の点の画素値を任意の方法で補間してもよい。口画像正規化部15は、正規化された口領域の画像(口画像)を平滑化部16、および画像補正部21に出力する。
【0056】
平滑化部16は、口画像正規化部15から受け取った口画像を平滑化する。具体的には、平滑化部16は、口画像にガウシアンフィルタ等を適用し、平滑化された口画像を生成する。図3(b)は、平滑化された口領域の画像を示す画像である。平滑化された口画像を用いることで、ノイズを排除して、唇等の所望の領域を正確に特定することができる。なお、正規化された口画像および平滑化された口画像はカラーの画像であるが、図3では、その輝度値(Y値)による明暗を示している。平滑化部16は、平滑化された口画像を候補色特定部18、唇領域特定部20、および画像補正部21に出力する。
【0057】
肌代表色特定部17は、画像取得部11、顔検出部12、および特徴検出部13からそれぞれ処理対象の画像、顔画像の位置、および顔の特徴の位置を受け取る。肌代表色特定部17は、受け取った情報に基づき、適否判定部14によって処理対象として適切と判定された顔画像について、処理対象となる顔画像の肌の代表色を特定する。顔領域の一部の色、例えば、顔領域の中心部分(鼻付近)の平均色、中央値、または最頻値の色等を肌の代表色としてもよい。また、顔領域全体の平均色等を肌の代表色としてもよい。また、顔のある領域の平均色を求め、該領域において該平均色と色相が異なる(CbCr平面における該平均色との角度が閾値より大きい)画素、および/または、該領域において該平均色との色の差が大きい(YCbCr色空間における該平均色との距離が閾値より大きい)ピクセルを除外して、残りのピクセルから算出した平均色を、代表色としてもよい。また、肌代表色特定部17は、肌の色の分散度合いを求める。肌代表色特定部17は、肌の代表色を候補色特定部18および唇代表色特定部19に出力する。肌代表色特定部17は、肌の色の分散度合いを唇代表色特定部19に出力する。
【0058】
候補色特定部18は、唇の色の候補となる複数の候補色を特定する。候補色特定部18は、口画像において複数の領域を設定し、各領域の代表色を特定して候補色とする。図4は、口画像における複数の領域を示す図である。図中の×印は、特徴検出部13によって検出された口端点を示す。具体的には、候補色特定部18は、以下の処理を行う。候補色特定部18は、口画像の水平方向の中央における所定の領域を、縦(垂直)方向に並ぶ複数の領域に分割する。候補色特定部18は、分割された各領域の代表色(平均色あるいは中央値または最頻値の色等)を、唇の色の複数の候補色として特定する。このようにして分割された領域の少なくとも1つは、主として唇である部分を含む領域であると考えられる。よって、複数の候補色の少なくとも1つは、唇の色の代表色として適していると考えられる。ただし、各領域の設定(分割)方法は上記に限らず、唇があると考えられる2つの口端点の間において複数の領域を設定すればよい。また、分割された複数の領域の大きさに制限はなく、各画素を複数の領域としてもよい。なお、画像のノイズ等を排除して候補色を特定するために、候補色特定部18は、平滑化された口画像を用いて候補色を特定する。しかし、これに限らず、候補色特定部18は、平滑化されていない口画像を用いて候補色を特定してもよい。また、候補色特定部18は、分割された領域の色の分散度合いを、対応する候補色の分散度合いとして求める。候補色特定部18は、複数の候補色を唇代表色特定部19に出力する。候補色特定部18は、候補色の分散度合いを唇代表色特定部19に出力する。
【0059】
唇代表色特定部19は、肌の代表色に基づき、複数の候補色の中から唇の代表色を特定する。唇代表色特定部19は、肌の代表色と、各候補色との色相および彩度における差に応じて、肌の代表色との差が大きい候補色を、唇の代表色として特定する。唇代表色特定部19は、YCbCr色空間またはL*a*b*色空間のような、輝度(または明度)と、色相および彩度とによって色を表現する色空間において処理を行う。唇代表色特定部19は、輝度(または明度)の情報を使わず、色空間における色相および彩度を表すCbCr平面(色相彩度平面)の情報に基づいて、各候補色について、唇の色である度合いを求め、CbCr平面における唇の代表色を特定する。唇の代表色を特定するための詳細な処理は後述する。唇代表色特定部19は、特定したCbCr平面における唇の代表色を唇領域特定部20および画像補正部21に出力する。
【0060】
図5は、CbCr平面において、唇色の候補となる色の範囲を単純化して示す図である。唇の色は、肌の代表色とはある程度異なる色であると考えられる。そのため、CbCr平面において、肌の代表色から距離が近い範囲Aの色は、唇色の候補から除外するのがよい。また、唇の色は、肌の代表色とは色相が異なると考えられる。そのため、CbCr平面において、肌の代表色に色相が近い範囲Bの色は、唇色の候補から除外するのがよい。また、被写体の口が開いていて口画像に歯が含まれている場合、複数の候補色の中には、歯の色を示す白っぽい色がある可能性がある。歯の色を唇の候補から除外するために、彩度が小さい範囲Cの色は、唇色の候補から除外するのがよい。唇色の候補は、範囲A、範囲B、範囲Cの外側の範囲にあると考えられる。なお、図5では、肌の代表色から距離が近く、かつ、肌の代表色に色相が近い範囲を肌色範囲とし、彩度が小さい範囲を白範囲とし、肌色範囲でも白範囲でもない範囲を唇色候補範囲としている。
【0061】
唇領域特定部20は、平滑化された口画像、および唇の代表色に基づき、口画像における唇である領域を特定する。唇領域特定部20は、CbCr平面における唇の代表色との色相および彩度における差に応じて、唇の代表色に類似する色の領域を唇領域と特定する。唇領域を特定するための詳細な処理は後述する。なお、画像のノイズ等を排除して唇領域を特定するために、唇領域特定部20は、平滑化された口画像を用いて唇領域を特定する。しかし、これに限らず、唇領域特定部20は、平滑化されていない口画像を用いてもよい。唇領域特定部20は、特定した唇領域を示す情報、および唇候補領域を示す情報等を画像補正部21に出力する。
【0062】
口内部領域特定部32は、唇領域特定部20から唇領域を示す情報を受け取り、唇領域特定部20が特定した上の唇領域および下の唇領域の間の領域を、口内部領域として特定する。唇領域特定部20が、上下の唇の領域を正確に特定することで、口画像の中の歯を含む口内部の領域を特定することができる。なお、上下の唇領域の間に空間がない場合、歯の補正は行わない。口内部領域特定部32は、特定した口内部領域を示す情報を歯候補色特定部33に出力する。
【0063】
歯候補色特定部33は、口内部領域を示す情報、および平滑化部16から受け取った平滑化された口画像に基づき、歯の色の候補となる複数の歯候補色を特定する。歯候補色特定部33は、口画像の口内部領域に含まれる複数の領域から各領域の代表色を特定し、歯候補色とする。例えば、歯候補色特定部33は、図4に示すように口画像を複数の領域に分割する。そのうち、口内部領域に含まれる各領域の代表色(平均色あるいは中央値または最頻値の色等)を、歯の色の複数の候補色(歯候補色)として特定する。このようにして分割された領域の少なくとも1つは、主として歯を含む領域であると考えられる。よって、複数の歯候補色の中には、歯の色の代表色として適している色があると期待される。ただし、各領域の設定(分割)方法は上記に限らない。分割された複数の領域の大きさに制限はなく、各画素を複数の領域としてもよい。なお、画像のノイズ等を排除して歯候補色を特定するために、歯候補色特定部33は、平滑化された口画像を用いて歯候補色を特定する。しかし、これに限らず、歯候補色特定部33は、平滑化されていない口画像を用いて歯候補色を特定してもよい。また、歯候補色特定部33は、分割された領域の色の分散度合いを、対応する歯候補色の分散度合いとして求める。歯候補色特定部33は、複数の歯候補色および歯候補色の分散度合いを歯代表色特定部34に出力する。また、歯候補色特定部33は、歯候補色の分散度合いを画像補正部21に出力する。
【0064】
歯代表色特定部34は、複数の歯候補色の中から歯の色の度合いが大きい歯の代表色を特定する。具体的には、歯代表色特定部34は、彩度が最も小さい歯候補色を、歯の代表色として特定する。歯代表色特定部34は、歯の代表色を画像補正部21に出力する。
【0065】
図1は、画像補正部21の構成を示すブロック図である。画像補正部21は、唇重み特定部(第2重み決定部)41、唇尤度特定部(器官尤度特定部)42、唇位置重み決定部(第1重み決定部)43、唇補正量決定部(補正量決定部)44、唇画像補正部(画像補正部)45、歯色類似度特定部(器官尤度特定部)51、歯位置重み決定部(第1重み決定部)52、歯補正量決定部(補正量決定部)53、および歯画像補正部(画像補正部)54を備える。画像補正部21は、補正処理の指示、顔の特徴の位置、正規化された口画像、平滑化された口画像、唇の代表色および歯の代表色に基づき、口画像における見た目の補正を行い、補正された口画像を生成する。口画像の補正の方法は後述する。画像補正部21は、補正された口画像を合成部22に出力する。
【0066】
唇重み特定部41は、唇領域を示す情報に基づき、位置に応じた補正重みWgを決定する。
【0067】
唇尤度特定部42は、補正重みWg、唇候補領域、および唇の代表色等に基づき、各画素について、唇であることの尤度を特定する。
【0068】
唇位置重み決定部43は、正規化された口画像と唇であることの尤度とに基づき、特定位置に応じた補正の重みを求める。
【0069】
唇補正量決定部44は、唇であることの尤度と特定位置に応じた補正の重みとに基づき、光沢画像を生成する。
【0070】
唇画像補正部45は、正規化された口画像、平滑化された口画像、および光沢画像に基づき、補正された口画像を生成する。
【0071】
歯色類似度特定部51は、口内部領域を示す情報、および歯の代表色に基づき、口内部領域の各画素について、画素の色と歯の代表色との色空間における距離に応じた歯色類似度Wiを求める。
【0072】
歯位置重み決定部52は、口内部領域を示す情報、および口端点の情報に基づき、口内部領域の各画素位置に対して、歯の画像補正を行うための重み(補正重みWh)を求める。
【0073】
歯補正量決定部53は、口内部領域を示す情報、歯色類似度Wi等に基づいて、口内部領域について、歯光沢画像を生成する。
【0074】
歯画像補正部54は、正規化された口画像、および歯光沢画像を合成し、補正された口画像を生成する。
【0075】
合成部22は、補正された口画像を正規化する前の元のサイズに戻し(必要に応じて補正された口画像を回転および拡大・縮小させ)、処理対象の画像に合成し、補正された画像を生成する。このようにして、処理対象の画像において唇等の見た目が補正された画像が得られる。合成部22は、補正された画像を、表示制御部23に出力する。なお、合成部22は、補正された画像を、画像記憶装置4に出力して記憶させてもよい。
【0076】
表示制御部23は、補正された画像を表示装置5に出力し、補正された画像を表示するよう表示装置5を制御する。
【0077】
<唇補正の画像処理フロー>
以下に、デジタルカメラ30における画像補正処理の流れについて説明する。
【0078】
利用者は、指示入力装置2を介して、例えば撮像されて画像記憶装置4に記憶されている画像の中から、処理対象の画像を選択する。また、利用者は、指示入力装置2を介して、処理対象の画像に施す補正処理の種類(唇艶強調補正、または歯のホワイトニング補正等)を、複数の候補の中から選択する。指示入力装置2は、指定された補正処理の種類の情報を含む補正処理の指示を、画像処理装置31の画像取得部11に出力する。
【0079】
図6は、画像処理装置31における唇色特定処理および唇領域特定処理の流れを示すフローチャートである。
【0080】
画像取得部11は、指示入力装置2からの補正処理の指示を受け取ると、画像記憶装置4から処理対象となる画像を取得する(S1)。
【0081】
顔検出部12は、処理対象となる画像に含まれる顔画像を検出し、その顔画像の位置を特定する(S2)。顔検出部12は、処理対象の画像に含まれる複数の顔画像を検出してもよい。
【0082】
特徴検出部13は、検出された顔画像に含まれる、顔の特徴の位置を検出する(S3)。特徴検出部13は、例えば目(目頭、目尻等)、口(口端点、口の中心点等)、および鼻(鼻の頂点等)等の顔の器官の特徴(特徴点)を検出し、それらの位置を特定する。なお、特徴検出部13は、顔の輪郭等の特徴を検出してもよい。
【0083】
適否判定部14は、これらの検出された顔の特徴の位置に基づき、該顔画像が補正処理を行うのに適しているか否かを判定する(S4)。例えば、適否判定部14は、複数の顔画像サンプルから目、鼻、口等の顔の器官の各特徴の周辺の輝度分布の特徴をあらかじめ学習して作成した顔モデルを記憶しておく。適否判定部14は、顔モデルと、検出された顔画像とを比較することにより、顔画像の検出された特徴の信頼度および顔の向きを特定する。
【0084】
例えば検出された特徴の信頼度が、所定の閾値よりも低い場合、顔の特徴を正確に検出していない可能性が高いので、口または唇等に適切に補正処理を行うことができない可能性がある。そのため、検出された特徴の信頼度が、所定の閾値よりも低い場合、適否判定部14は、該顔画像は補正処理を行うのに適していないと判定する。
【0085】
また、検出された顔の向きが正面に対して大きくずれている場合(顔の向きが所定の範囲内にない場合、例えば顔の向きが正面に対して所定の角度(例えば30°)より大きい場合)、適切に補正処理を行うことができない可能性がある。この場合、適否判定部14は、該顔画像は補正処理を行うのに適していないと判定する。
【0086】
また、顔画像が小さすぎる場合(例えば検出した口の両方の端点の間の距離が所定の閾値(例えば100ピクセル)より小さい場合)、適切に補正処理を行うことができない可能性があるため、適否判定部14は、該顔画像は補正処理を行うのに適していないと判定する。
【0087】
補正処理を行うのに適していないと判定された場合(S4でNo)、該顔画像に対する処理は終了する。
【0088】
補正処理を行うのに適していると判定された場合(S4でYes)、次に肌代表色特定部17は、処理対象として適切と判定された顔画像について、処理対象となる顔画像の肌の代表色を特定する(S5)。ここでは、顔領域の中心部分(鼻付近)の平均色を肌の代表色とする。また、肌代表色特定部17は、肌の色の分散度合い(標準偏差)を求める。具体的には、平均色を求めた領域(鼻付近)の画素の画素値の色空間のCb軸における分散σbs2、Cr軸における分散σrs2、および色相の分散σps2を求める。
【0089】
口画像正規化部15は、処理対象となる顔画像の口領域の画像を抽出し、処理対象の画像の口領域が所定の大きさになるように画像サイズを正規化した口画像を生成する(S6)。具体的には、口画像正規化部15は、口の左右の端点が所定の座標に位置するように、必要に応じて処理対象の顔画像を回転および拡大・縮小させ、所定のサイズの口領域を処理対象の顔画像から切り出す。
【0090】
平滑化部16は、正規化された口画像を平滑化する(S7)。
【0091】
候補色特定部18は、口画像の水平方向の中央における所定の領域を、縦方向に並ぶ複数の領域に分割し、分割された各領域の代表色を、唇の色の複数の候補色として特定する(S8)。ここでは、各領域について、該領域の平均色を、候補色とする。
【0092】
なお、肌の代表色および複数の候補色は、輝度の情報を含まなくてもよい。以下の処理では、輝度(Y)を用いずに、CbCr平面において肌の代表色および複数の候補色を用いて唇の色の代表色および唇領域の特定を行う。
【0093】
唇代表色特定部19は、各候補色について、唇の色である度合い(唇色度合い)を求める(S9)。口画像の唇の色は、肌の色とは異なる色であり、肌の色とは異なる色相であると考えられる。また、口画像の唇の色は、一般に白っぽく写る歯とも異なる色であると考えられる。肌の代表色とCbCr平面における距離が大きく、肌の代表色と色相の差が大きく、彩度が大きいほど、唇色度合いが大きいとする。
【0094】
具体的には、唇代表色特定部19は、各候補色について、候補色と肌の代表色とのCbCr平面における距離に応じて大きくなる第1の非肌色度合い(肌の色ではない度合い)を、唇色度合いの重みとして求める。唇代表色特定部19は、各候補色について、候補色と肌の代表色との色相の差に応じて大きくなる第2の非肌色度合いを、唇色度合いの重みとして求める。唇代表色特定部19は、各候補色について、候補色の彩度に応じて大きくなる非歯色度合い(歯の色ではない度合い)を、唇色度合いの重みとして求める。
【0095】
CbCr平面における距離に応じた唇色度合いの重みWa(第1の非肌色度合い)は、次式で求めることができる。
【0096】
【数1】

【0097】
ここで、Cbs、Crsは、それぞれ肌の代表色(平均色)のCb成分およびCr成分であり、Cb、Crは、それぞれ候補色のCb成分およびCr成分である。また、σbs、σrsは、それぞれ色空間のCb軸における肌の色の標準偏差、Cr軸における肌の色の標準偏差である。図7(a)は、候補色と肌の代表色とのCbCr平面における距離と、重みWaとの関係を示す図である。式(1)によれば、候補色と肌の代表色とのCbCr平面における距離が小さければ、重みWaは0に近く、候補色と肌の代表色とのCbCr平面における距離が大きくなればなるほど、重みWaは大きくなり、1に近づく。図7(b)は、図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の画素値を式(1)に当てはめて重みWaを計算した結果を示す画像である。明るい箇所は重みWaが大きく、暗い箇所は重みWaが小さいことを示す。これによれば、唇の領域は重みWaが大きいことが分かる。しかしながら、歯の領域も重みWaが大きくなっている。
【0098】
色相の差に応じた唇色度合いの重みWb(第2の非肌色度合い)は、次式で求めることができる。
【0099】
【数2】

【0100】
ここで、Psは、肌の代表色(平均色)の色相であり、CbCr平面における位相の角度で示される。また、Pは、候補色の色相である。また、σpsは、肌の色の色相の標準偏差である。また、αは、候補色の色相と肌の代表色の色相とが同じであっても重みWbが0にならないようにするための、所定の定数である。図8(a)は、候補色と肌の代表色とのCbCr平面における色相と、重みWbとの関係を示す図である。式(2)によれば、候補色と肌の代表色との色相の差が小さければ、重みWbはαに近く、候補色と肌の代表色との色相の差が大きくなればなるほど、重みWbは大きくなり、1+αに近づく。図8(b)は、図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の画素値を式(2)に当てはめて重みWbを計算した結果を示す画像である。明るい箇所は重みWbが大きく、暗い箇所は重みWbが小さいことを示す。これによれば、唇の領域は重みWbが大きいことが分かる。しかしながら、歯の一部の領域も重みWbが大きくなっている。
【0101】
彩度に応じた唇色度合いの重みWc(非歯色度合い)は、次式で求めることができる。
【0102】
【数3】

【0103】
ここで、Cb、Crは、それぞれ候補色のCb成分およびCr成分である。また、cは、所定の定数である。式(3)におけるexpの分子は、彩度を表す。式(3)によれば、候補色の彩度が小さければ、重みWcは0に近く、候補色の彩度が大きくなればなるほど、重みWcは大きくなり、1に近づく。図9は、図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の画素値を式(3)に当てはめて重みWcを計算した結果を示す画像である。明るい箇所は重みWcが大きく、暗い箇所は重みWcが小さいことを示す。これによれば、唇の領域は重みWcが大きいことが分かる。一方、白っぽい色である歯の一部の領域は重みWcが小さいことが分かる。また、写真に暗く写りやすい口の中の一部も、重みWcが小さくなっている。
【0104】
照明等により1つの画像の中の肌に濃淡ができた場合、一般に、同じ人物の肌でも、肌の平均色からの肌の各点の色までの色空間またはCbCr平面における距離は大きくなることがある。すなわち、肌の色の色空間またはCbCr平面における分散は大きくなることがある。一方で、色相は照明等の条件によってあまり変化しない。よって、一部の肌と唇とについて、CbCr平面における距離に応じた重みWaの値が同程度になる場合でも、色相の差に応じた重みWbによって肌の色と唇の色とを判別することができる。
【0105】
また、口紅等により1つの画像の中の唇の色と肌の色とが同色相である場合、肌と唇とについて、色相の差に応じた重みWbの値は同程度になることがある。そのような場合は、CbCr平面における距離に応じた重みWaによって肌の色と唇の色とを判別することができる。
【0106】
また、歯の領域から得られた候補色は、CbCr平面における距離に応じた重みWaおよび色相の差に応じた重みWbが共に大きくなり得る。歯の色は一般に白っぽく彩度が小さいのに対して、唇の色は彩度が大きいと考えられるので、彩度に応じた重みWcによって、歯の色と唇の色とを判別することができる。また、口の中において影として暗く写った箇所等も彩度が低くなるので、彩度に応じた重みWcによって、唇の色と区別することができる。
【0107】
唇代表色特定部19は、各候補色について、第1の非肌色度合いWaと第2の非肌色度合いWbと非歯色度合いWcとの積を、唇色度合いD1として求める。
【0108】
【数4】

【0109】
図10は、図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の画素値から唇色度合いD1を計算した結果を示す画像である。明るい箇所は唇色度合いD1が大きく、暗い箇所は唇色度合いD1が小さいことを示す。この唇色度合いD1が大きい候補色が、唇の色である可能性が高いと考えられる。図10に示す例では、唇領域から得られた候補色が最も唇色度合いD1が大きい。唇代表色特定部19は、唇色度合いD1が最も大きい候補色を、唇色の第1の候補(第1の選択候補色)として選択する。一方で、画像の歯に色がついていたりして歯の領域の色の彩度が小さくない場合、または、CbCr平面における唇の色と肌の色との差が小さい場合、第1の選択候補色として歯の色を選択してしまう可能性がある。
【0110】
そこで、本実施形態では、残った候補色から第1の選択候補色とは色相・彩度による差が大きい第2の候補(第2の選択候補色)を選択し、第1の選択候補色と第2の選択候補色とのいずれかを唇の色として特定する。
【0111】
唇代表色特定部19は、第1の選択候補色を除いた他の各候補色について、候補色と第1の選択候補色とのCbCr平面における距離に応じて大きくなる重みWd(第1の選択候補色ではない度合い)を求める(S10)。第1の選択候補色との距離に応じた重みWdは、次式で求めることができる。
【0112】
【数5】

【0113】
ここで、Cbd、Crdは、それぞれ第1の選択候補色のCb成分およびCr成分であり、Cb、Crは、それぞれ候補色のCb成分およびCr成分である。また、σbd、σrdは、それぞれ色空間のCb軸における第1の選択候補色の標準偏差(第1の選択候補色の領域の各画素のCb成分の標準偏差)、Cr軸における第1の選択候補色の標準偏差(第1の選択候補色の領域の各画素のCr成分の標準偏差)である。第1の選択候補色の標準偏差は、選択候補色に対応する領域(候補色特定部18が分割した領域)の各画素の画素値から求めることができる。式(5)によれば、第1の選択候補色と他の候補色とのCbCr平面における距離が小さければ、重みWdは0に近く、第1の選択候補色と他の候補色とのCbCr平面における距離が大きくなればなるほど、重みWdは大きくなり、1に近づく。図11は、図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の画素値を式(5)に当てはめて重みWdを計算した結果を示す画像である。明るい箇所は重みWdが大きく、暗い箇所は重みWdが小さいことを示す。ただし、図11に示す例では、第1の選択候補色として唇領域から得られた候補色が選択されている。そのため、唇領域の画素の重みWdは、小さくなっている。
【0114】
唇代表色特定部19は、各候補色について、唇色度合いD1と重みWdとの積を、候補評価値D2として求める。
【0115】
【数6】

【0116】
図12は、図3(b)に対応し、候補色の代わりに口画像の各画素の画素値から候補評価値D2を計算した結果を示す画像である。明るい箇所は候補評価値D2が大きく、暗い箇所は候補評価値D2が小さいことを示す。唇代表色特定部19は、候補評価値D2が最も大きい候補色を、唇色の第2の候補(第2の選択候補色)として選択する。これによれば、もし、第1の選択候補色として歯の色が選ばれていた場合、第2の選択候補色として唇の領域から得られた候補色が選択されると考えられる。重みWdのために、第1の選択候補色と第2の選択候補色とは、異なる領域(異なる顔の部位)から得られた候補色になる可能性が高い。複数の候補色の中から、異なる色である2つの候補色を選択候補色として選択することで、いずれかの選択候補色に唇の色として適切な候補色が含まれるようにする。
【0117】
唇代表色特定部19は、第1および第2の選択候補色から、より唇の色らしい選択候補色を、唇の代表色として特定する(S11)。S10までの処理により、第1および第2の選択候補色としては、唇の領域から得られた候補色と、歯の領域から得られた候補色が選択されている可能性が高い。そこで、唇代表色特定部19は、第1および第2の選択候補色のうち、彩度のより大きい方を、唇の代表色として特定する。なお、唇代表色特定部19は、唇の代表色の輝度Yを特定してもよいし、輝度Yを特定しなくてもよい。少なくとも唇の代表色の色相および彩度(またはCb成分およびCr成分)を特定すればよい。
【0118】
なお、唇の代表色を、以下のようにして決めてもよい。唇代表色特定部19は、唇色度合いD1に応じて1つの第1の選択候補色を選択し、それを唇の色として特定してもよい。また、唇代表色特定部19は、唇色度合いD1に応じて複数の第1の選択候補色を選択して、それらの中から彩度の大きいものを唇の代表色として特定してもよい。また、唇代表色特定部19は、唇色度合いD1に応じて第1の選択候補色を選択し、候補評価値D2に応じて複数の第2の選択候補色を選択し、第1の選択候補色および複数の第2の選択候補色の中から、彩度の最も大きいものを唇の代表色として特定してもよい。または、唇代表色特定部19は、第1および第2の各選択候補色の中から、その色相が最も所定の色相に近いものを唇の代表色として特定してもよい。唇は赤いという前提が成り立つ場合が多いため、例えば、所定の色相は、典型的な唇の色である赤に近い色相とすればよい。
【0119】
唇領域特定部20は、口画像の各画素について、唇の代表色との類似度合いを求める(S12)。唇の代表色と類似している色の領域は、唇の領域であると考えられる。唇領域特定部20は、唇の代表色と、各画素の色との色相および彩度における差に応じて、唇の代表色と類似している領域を特定する。具体的には、唇領域特定部(口色類似度特定部)20は、各画素について、各画素の色と唇の代表色とのCbCr平面における距離に応じた第1の唇色類似度We、および、各画素の色と唇の代表色との色相の差に応じた第2の唇色類似度Wfを求める。
【0120】
CbCr平面における距離に応じた第1の唇色類似度Weは、次式で求めることができる。
【0121】
【数7】

【0122】
ここで、Cbl、Crlは、それぞれ唇の代表色のCb成分およびCr成分であり、Cb、Crは、それぞれ各画素の色のCb成分およびCr成分である。また、σbl、σrlは、それぞれ色空間のCb軸における唇の色の標準偏差、Cr軸における唇の色の標準偏差である。唇の色の標準偏差は、唇の代表色(最終的に唇の代表色として特定された候補色)に対応する領域(候補色特定部18が分割した領域)の各画素の色から求めることができる。図13(a)は、各画素の色と唇の代表色とのCbCr平面における距離と、第1の唇色類似度Weとの関係を示す図である。式(7)によれば、各画素の色と唇の代表色とのCbCr平面における距離が小さければ、第1の唇色類似度Weは1に近く、各画素の色と唇の代表色とのCbCr平面における距離が大きくなればなるほど、第1の唇色類似度Weは小さくなり、0に近づく。図13(b)は、図3(b)に対応し、口画像の各画素の色を式(7)に当てはめて第1の唇色類似度Weを計算した結果を示す画像である。明るい箇所は第1の唇色類似度Weが大きく、暗い箇所は第1の唇色類似度Weが小さいことを示す。これによれば、唇の領域は第1の唇色類似度Weが大きいことが分かる。ただし、唇の領域の一部は、照明等によって光って写っており彩度が小さいので、第1の唇色類似度Weは小さくなっている。また、唇に影等がある場合も、第1の唇色類似度Weは小さくなる可能性がある。
【0123】
色相の差に応じた第2の唇色類似度Wfは、次式で求めることができる。
【0124】
【数8】

【0125】
ここで、Plは、唇の代表色の色相であり、CbCr平面における位相の角度で示される。また、Pは、各画素の色の色相である。また、σplは、唇の色の色相の標準偏差である。図14(a)は、各画素の色と唇の代表色とのCbCr平面における色相と、第2の唇色類似度Wfとの関係を示す図である。式(8)によれば、各画素の色と唇の代表色との色相の差が小さければ、第2の唇色類似度Wfは1に近く、各画素の色と唇の代表色との色相の差が大きくなればなるほど、第2の唇色類似度Wfは小さくなり、0に近づく。図14(b)は、図3(b)に対応し、口画像の各画素の色を式(8)に当てはめて第2の唇色類似度Wfを計算した結果を示す画像である。明るい箇所は第2の唇色類似度Wfが大きく、暗い箇所は第2の唇色類似度Wfが小さいことを示す。これによれば、唇の領域は第2の唇色類似度Wfが大きいことが分かる。
【0126】
色相の差に応じた第2の唇色類似度Wfの方が、第1の唇色類似度Weに比べて照明等の影響を受けにくく、安定して精度よい結果を得ることができる。一方で、唇は、口紅またはリップグロス等が塗布されるので、様々な色であり得る。肌の色と同色相の口紅が唇に塗布されている場合、色相の差に応じた第2の唇色類似度Wfで正確に唇の領域を特定するのは困難である。よって、唇の色の色相が肌の色の色相と類似している場合、第1の唇色類似度Weが、唇の領域を判定するためのよりよい指標になり得る。
【0127】
唇領域特定部20は、第1の唇色類似度Weおよび第2の唇色類似度Wfに基づいて、口画像から唇の候補となる領域(唇候補領域、第1の唇領域)を特定する(S13)。唇候補領域は、唇の代表色に類似した色を有する領域と言える。本実施の形態では、唇領域特定部20は、第1の唇色類似度Weおよび第2の唇色類似度Wfの少なくともいずれか一方の値が大きい画素を、唇候補領域と判別する。具体的には、唇領域特定部20は、各画素について、第1の唇色類似度Weを所定の閾値と比較し、第1の唇色類似度Weが該閾値より大きい画素を唇候補領域に分類する。また、唇領域特定部20は、各画素について、第2の唇色類似度Wfを別の閾値と比較し、第2の唇色類似度Wfが該閾値より大きい画素を唇候補領域に分類する。図15は、図3(b)に対応し、唇候補領域に分類された画素を示す画像である。明るい箇所が唇候補領域を示す。図15に示す画像は、図13(b)に示す画像および図14(b)に示す画像をそれぞれ閾値に基づいて2値化し、和をとったものに対応する。
【0128】
なお、唇領域特定部20は、第1の唇色類似度Weおよび第2の唇色類似度Wfのいずれか一方のみを使用して唇候補領域を特定してもよい。また、唇領域特定部20は、第1の唇色類似度Weが閾値より大きく、かつ、第2の唇色類似度Wfが別の閾値より大きい画素を唇候補領域として特定してもよい。この場合、唇候補領域を示す画像は、図13(b)に示す画像および図14(b)に示す画像をそれぞれ2値化し、積をとったものに対応する。また、唇領域特定部20は、各画素について、2値化する前に第1の唇色類似度Weおよび第2の唇色類似度Wfの和または積をとり、その結果によって唇候補領域を特定してもよい。また、唇領域特定部20は、1−(1−We)×(1−Wf)が所定の閾値より大きい画素を唇候補領域として特定してもよい。唇領域特定部20は、唇候補領域の分布から、明らかに唇ではないと判断できる箇所を、唇候補領域から除外してもよい。
【0129】
唇領域特定部20は、口画像の唇候補領域から、モデル化した唇領域(第2の唇領域)を特定する(S14)。モデル化した唇領域を特定する方法は様々で、口画像の唇候補領域の境界をモデルとなる関数(高次関数等)で近似してもよいし、唇候補領域の空間分布にあらかじめ用意した唇形状モデルをフィッティングさせて特定してもよいし、あらかじめ用意した唇形状モデルを基に、セグメンテーション技術により唇領域を特定してもよい。唇形状モデルは、唇らしい唇の形状を関数または範囲等により規定するものであり、唇の範囲を示す所定の手順で定義されてもよい。
【0130】
本実施形態で行うモデル化した唇領域を特定する具体的な処理について、以下に説明する。図16(a)、および図16(b)は、図15に対応し、唇候補領域を示す画像からモデル化した唇領域を特定する手順を示す画像である。水平方向にx軸、縦(垂直)方向にy軸をとる。まず、上唇について、モデル化した唇領域を特定する。既知である左右の口端点の位置から、口の水平方向における中央のx座標(x0)を特定する。また、水平方向中央(x座標=x0)において、連続して縦方向に分布する上唇の唇候補領域の上端および下端の位置から、上唇領域の縦方向の中心位置(y座標y0)を推定する。
【0131】
座標(x0,y0)を中心位置として、所定のサイズの矩形を、探索ブロックとして設定する(図16(a))。なお、探索ブロックは、上唇の候補領域の上端および下端を含む程度に、縦方向のサイズが大きいことが好ましい。初期位置の探索ブロックにおいて、探索ブロックに含まれる唇候補領域の画素の重心位置を求め、該重心位置のy座標を、x座標=x0における上唇の唇領域の縦方向の中心位置(y座標=y1)とする。
【0132】
次に、探索ブロックをΔxだけ口端点側に移動させ、座標(x1,y1)を中心位置として探索ブロックを設定する(図16(b))。x1=x0+Δxである。移動させた探索ブロックに含まれる唇候補領域の画素の重心位置を求め、該重心位置のy座標を、x座標=x1における上唇の唇領域の縦方向の中心位置(y座標=y2)とする。
【0133】
このように探索ブロックを口端点の付近まで順次ずらして重心の計算を行うことで、上唇の唇領域の縦方向の中心位置を示す複数の点の座標((x0,y1)、(x1,y2)、…)が得られる。探索ブロックが所定の位置(例えば口端点)に達するまで処理を続けてもよいし、唇候補領域が途切れる位置まで処理を続けてもよい。例えば、上唇の唇領域の縦方向の中心位置を示す複数の点を結ぶ曲線(二次曲線またはより高次の曲線等)を求めることで、上唇の唇領域の縦方向の中心位置を示す曲線を得ることができる。なお、下唇の唇領域の縦方向の中心位置を示す複数の点も、同様にして得ることができる。
【0134】
唇領域特定部20は、唇領域の縦方向の中心位置を示す各点を中心とした、縦方向の所定の幅の範囲を、モデル化された唇領域として特定する。本実施形態では、唇領域の縦方向の中心位置を示す各点を中心とした、縦方向の所定の幅の範囲が、唇らしい形状を表す唇形状モデルであると言える。図17は、図16(a)に対応し、モデル化された唇領域を示す画像である。明るい箇所は唇領域を示す。唇候補領域からモデル化した唇形状の領域を唇領域として特定することで、ノイズ等を排除して唇らしい唇領域を特定することができる。なお、図17に示す例では、後の唇の補正処理において口端付近の肌にまで補正処理を行わないよう、敢えて口端付近は唇領域から除いている。
【0135】
なお、口の水平方向中央付近において、連続して縦方向に分布する唇候補領域の上端から下端の距離を、モデル化された唇領域の縦方向の幅としてもよい。また、唇領域特定部20は、唇領域の縦方向の中心位置を示す各点を結ぶ曲線を求め、その曲線の縦方向の所定の幅の領域を、モデル化された唇領域として特定してもよい。また、唇領域特定部20は、口端点側に向かうほど唇領域の縦の幅が小さくなるよう、唇領域の縦方向の中心位置を示す各点に基づいて、唇領域を特定してもよい。その方が、特定した唇領域がより自然なモデルの唇形状となる。
【0136】
このようにして唇領域特定部20は、唇領域を特定する。なお、唇領域特定部20は、唇候補領域の画素を、唇領域として特定してもよい。また、唇領域特定部20は、唇候補領域であり、かつ、モデル化された唇領域である領域(図15の画像の領域と図17の画像の領域の積をとった領域)のみを唇領域として特定してもよい。以上で、唇色特定処理および唇領域特定処理が完了する。
【0137】
次に、特定した唇領域に対して、唇艶強調補正を行う。リップグロスを塗布したように見せるために、唇の光沢(艶)を強くする。そのために、唇の一部の領域の輝度を大きくし、唇領域の色変化を全体的に滑らかにする。具体的には、唇領域の一部の画素に輝度を加算するための光沢画像を用意し、唇領域を平滑化した口画像に光沢画像を重ねる(合成する)ことで、唇領域を滑らかにし、唇の一部の光沢を強くする。
【0138】
図18は、画像処理装置31における補正処理の流れを示すフローチャートである。
【0139】
画像補正部21の唇重み特定部41は、図17に示す唇領域の各画素位置に対して、唇の画像補正を行うための重み(補正重みWg)を求める(S21)。例えば、唇領域の中心付近では光沢増強の補正をより強くかけ、唇領域の周辺部付近(境界付近)では、光沢増強の補正をより弱くかけることで、自然な見た目の画像補正を行う。
【0140】
具体的には、唇重み特定部41は、上下の各唇について、唇領域の水平方向の中心位置ほど重みが大きく、唇領域の水平方向の外側(口端点側)ほど重みが小さくなるように補正重みWg(第2重み)を設定する。また、唇重み特定部41は、上下の各唇について、唇領域の縦方向の中心位置ほど重みが大きく、唇領域の縦方向の端部ほど重みが小さくなるように補正重みWgを設定する。例えば、唇領域の水平方向の中心位置、かつ、縦方向の中心位置(第1位置)では、補正重みが1になり、唇領域の水平方向の中心位置、かつ、縦方向の唇領域の端部では、補正重みが0になるようにする。また、唇領域の水平方向の外側の端、かつ、縦方向の中心位置では、補正重みが0.5になり、唇領域の水平方向の外側の端、かつ、縦方向の唇領域の端部では、補正重みが0になるようにする。その間における補正重みは、例えば線形に変化させてもよい。図19は、各水平位置での補正重みWgを示す図である。縦軸は唇領域の縦方向における位置、横軸は各位置の補正重みWgを示す。また、左側のグラフは唇領域の水平方向の中心の位置に対応するものであり、右側のグラフは唇領域の水平方向の外側の位置に対応するものである。各水平位置において、唇領域の幅の中心では補正重みWgが大きい。また、水平方向の中心では、補正重みWgが大きい。図20は、図17に対応し、補正重みWgを示す画像である。明るい箇所は補正重みWgが大きいことを示す。図17に示す唇領域に対して、図20に示す補正重みWgは、より唇らしく見える領域の補正重みが大きくなっていることが分かる。なお、この処理を唇領域特定部20が行い、唇領域特定部20が、図20に示す画像を2値化したものを唇領域として特定してもよい。
【0141】
画像補正部21の唇尤度特定部42は、補正重みWg、唇候補領域、第1の唇色類似度We、および第2の唇色類似度Wfに基づいて、処理対象である唇候補領域(第1領域)の各画素について、唇であることの尤度を特定する(S22)。具体的には、唇尤度特定部42は、各画素について、補正重みWg(図20)、唇候補領域(図17)、第1の唇色類似度We(図13(b))、および第2の唇色類似度Wf(図14(b))の積を補正部分評価値D3(第1器官尤度)として求める。図21は、図20に対応し、補正部分評価値D3を示す画像である。明るい箇所は補正部分評価値D3の値が大きいことを示す。補正重みWg(0〜1)、唇候補領域(0または1)、第1の唇色類似度We(0〜1)、および第2の唇色類似度Wf(0〜1)が大きい、すなわち補正部分評価値D3が大きければ、その画素が唇であることが尤もらしいと言える。よって、各画素の補正部分評価値D3は、該画素が唇であることの尤度を示す。また、唇尤度特定部42は、唇領域の中で光沢(輝度)の補正を行う光沢補正領域を特定する。唇尤度特定部42は、補正部分評価値D3の値が所定の閾値より大きい領域(画素)を、光沢(輝度)補正の対象である光沢補正領域(第2領域)として特定する。
【0142】
自然な見た目の光沢補正を行うために、光沢補正領域の中でも、唇らしさが大きく、かつ、明るい一部の箇所(領域)について、より輝度が大きくなるように補正を行う。ここでは、光沢補正領域の中で補正部分評価値D3と輝度(画素の元々の輝度)との積が最大になる画素を中心として、輝度を増大させる。そのために、以下の処理では、唇領域の一部の画素の輝度を加算するための光沢画像を用意する。
【0143】
画像補正部21の唇位置重み決定部43は、正規化された口画像の光沢補正領域に含まれる各画素について、輝度と補正部分評価値D3との積を求める。図22は、図3(b)に対応し、輝度と補正部分評価値D3との積を示す画像である。明るい箇所は輝度と補正部分評価値D3との積が大きく、暗い箇所は輝度と補正部分評価値D3との積が小さいことを示す。なお、光沢補正領域ではない位置は、暗く示されている。唇位置重み決定部43は、輝度と補正部分評価値D3との積が最大になる画素を中心とする、同心円状の位置重み(第1重み)を決定する(S23)。この同心円状の位置重みは、中心が1で、中心からの距離が大きくなるほど小さくなる。図22では、輝度と補正部分評価値D3との積が最大になる画素は、図に示す円の中心に位置する。
【0144】
画像補正部21の唇補正量決定部44は、光沢補正領域の各画素について、輝度と補正部分評価値D3と同心円状の位置重みとの積を求め、補正用トーンカーブの入力用輝度とする。
【0145】
図23は、光沢補正領域の入力用輝度によるヒストグラムである。唇補正量決定部44は、光沢補正領域の各画素について、入力用輝度に応じた第1補正量を求め、また、入力用輝度の値が大きい上位の所定の割合の画素について、入力用輝度に応じた第2補正量を求める(S24)。この処理について以下に説明する。
【0146】
図24(a)は、各画素の入力用輝度に対する第1トーンカーブを示す図であり、図24(b)は、各画素の入力用輝度に対する第2トーンカーブを示す図である。図24(a)、図24(b)における横軸は入力輝度を、縦軸はトーンカーブによる出力輝度を示し、参考までに図23のヒストグラムを重ねて表示している。なお、輝度値は0〜255の値をとるものとする。第1トーンカーブでは、各画素の入力用輝度値に対して、最大入力輝度255が最大出力輝度127になるように出力輝度を線形に変化させる。第1トーンカーブによる出力輝度が、第1補正量となる。
【0147】
第2トーンカーブでは、各画素の入力用輝度値に対して、その中で最高の入力輝度に対する出力輝度が128になるように、かつ、入力用輝度値の上位4%を除いた全ての画素の出力輝度が0になる。そして、第2トーンカーブでは、入力用輝度値の上位4%の画素については、その入力用輝度値に応じて出力輝度が0から128に線形に変化する。第2トーンカーブによる出力輝度が、第2補正量となる。
【0148】
唇補正量決定部44は、第1トーンカーブを用いて、入力用輝度に比例する第1補正量を求める。また、唇補正量決定部44は、第2トーンカーブを用いて、入力用輝度が上位の4%の画素について、入力用輝度に応じた第2補正量を求める。
【0149】
唇補正量決定部44は、各画素の第1補正量および第2補正量に基づき、光沢画像を生成する(S25)。図25は、図22に対応し、輝度成分のみを有する光沢画像を示す画像である。光沢画像の各画素の輝度値は、各画素の第1補正量および第2補正量の和(最大値は255)に、所定の補正度合い(例えば0.1)を乗じたものである。所定の補正度合いのために、光沢画像の最大輝度は、例えば25程度になる。光沢画像の輝度値は、口画像に対する輝度の補正値となる。
【0150】
画像補正部21の唇画像補正部45は、各画素の輝度値について、図3(a)に示す正規化された口画像、図3(b)に示す平滑化された口画像、および図25に示す光沢画像を合成し、補正された口画像を生成する(S26)。すなわち、唇画像補正部45は、第1補正量および第2補正量に応じて各画素の輝度を増加させる。具体的には、唇画像補正部45は、各画素について、平滑化された口画像(図3(b))の輝度値に図20に示す補正重みWgを乗じたものと、正規化された口画像(図3(a))の輝度値に重み(1−Wg)を乗じたものと、光沢画像(図25)の輝度値との和を、補正された口画像の輝度値とする。図26は、正規化された口画像、平滑化された口画像、および光沢画像の合成処理を示す図である。補正された口画像の各画素の輝度値Ycは、次式で求められる。
【0151】
【数9】

【0152】
ここで、Yfは平滑化された口画像の画素の画素値を示し、Ynは正規化された口画像の画素の画素値を示し、Ygは光沢画像の画素の画素値を示す。なお、補正重みWgは、0から1の値をとる。また、加算の結果の輝度値Ycが最大輝度255を越えるときは、その画素の輝度値を255にする。唇領域について平滑化された口画像を合成することで、唇領域の輝度変化を滑らかにし、唇領域に光沢画像を合成することで、唇領域の光沢を増強させることができる。なお、ここでは唇画像補正部45は、色相および彩度については、補正しない。
【0153】
次に、合成部22は、補正された口画像を正規化する前の元のサイズに戻し(必要に応じて補正された口画像を回転および拡大・縮小させ)、処理対象の画像(顔画像)に合成し、補正された画像を生成する(S27)。このようにして、処理対象の画像における唇等の見た目が補正された画像が得られる。
【0154】
図27(a)は、補正前の顔画像の一部を示す画像であり、図27(b)は、補正後の顔画像の一部を示す画像である。上下の唇全体の見た目が滑らかになり、下唇の一部の光沢が増強されていることが分かる。なお、図27(b)では、以下で説明する歯のホワイトニング処理の補正も適用されている。
【0155】
表示制御部23は、補正処理後の画像を表示装置5に表示させ、補正処理を終了する。
【0156】
<唇補正のまとめ>
本実施形態の画像処理装置31によれば、唇と肌とを含む口画像の輝度を除いた色相および彩度の情報に基づいて、様々な色であり得る唇の代表色を特定し、特定した唇の代表色に基づいて唇領域を正確に特定することができる。そして、特定した唇領域に補正処理を行うことで、画像の中の人物の唇に、適切な補正処理を施すことができる。
【0157】
従来の画像処理では、輝度の情報を用いて唇の領域を検出するのが当然と考えられていた。それは、輝度に基づいて唇の領域を検出する利点があることに起因する。この理由としては、以下を挙げることができる。
【0158】
第1に、輝度に基づく方法は、グレースケール画像にも適用できることが挙げられる。
【0159】
第2に、一般に、口画像のY成分は、Cb成分およびCr成分に比べ、エッジが明瞭であり、Y成分を用いると唇等のエッジが検出しやすいことが挙げられる。図28(a)は、図3(a)に対応し、正規化された口画像のCb成分の値を示す画像であり、図28(b)は、図3(a)に対応し、正規化された口画像のCr成分の値を示す画像である。明るい箇所は各成分の値が大きいことを示す。CbCr成分を示す図28(a)および図28(b)と、輝度Yを示す図3(a)とを比較すると、輝度Yを示す画像の方が、より唇のエッジを鮮明に見分けることができる。
【0160】
このように、従来において、照明条件等がよい場合は、輝度に基づいて唇の領域および唇の色を特定することができた。一方で、照明条件等が悪い場合(部分的に影ができる場合、または照明が強すぎる場合等)は、従来のように輝度に基づいて唇の領域および唇の色を特定すると、誤検出が多くなり、正確に唇の領域および唇の色を特定することができないことがある。
【0161】
また、唇の色(色相等)が既知である場合に、色相または彩度によって唇の領域を特定することは、従来から行われていた。また、一般的な方法で、顔の広い範囲に分布する肌の色を検出する場合と異なり、唇という顔の中の狭い領域の色を同様の方法で検出するのは困難である場合が多い。
【0162】
これに対して、本実施形態の画像処理装置31によれば、唇の色が既知ではなく、かつ、唇の領域も既知ではない場合に、唇の代表色を特定し、唇の領域を特定することができる。画像処理装置31は、色相と彩度における差に応じて、肌の色および歯の色とは異なる(差が大きい)候補色を唇の代表色として特定する。そのため、影、照明または化粧等により、画像における肌と唇とが同色相である場合においても、また、画像における肌の色が場所によって大きく異なっている場合においても、肌および歯と唇とを正確に区別し、唇の代表色を特定することができる。また、肌の色の分散等を考慮して各候補色が唇の色である度合いを求めるので、より適切な唇色度合いを求めることができる。ここで、色相および彩度における差とは、2つの色の色相彩度平面(CbCr平面)における違いを指し、色相の違い、彩度の違い、および、色相彩度平面における距離等が含まれる。
【0163】
また、画像処理装置31は、肌の色との色相および彩度による差に応じて複数の候補色を選択し、その中からより唇の色らしい(例えば彩度が大きい)候補色を唇の代表色として選択する。そのため、より正確に唇の代表色を特定することができる。
【0164】
また、画像処理装置31は、唇の代表色と各画素との色相と彩度における差に応じて、唇の代表色に類似する領域を唇領域として特定する。比較的明るい照明環境の元で撮影された画像の場合、唇の一部が白っぽくなることがある。唇の白っぽくなった艶領域は彩度が小さく、一方で唇の他の領域は彩度が大きいので、艶領域とそれ以外の唇領域の色のCbCr平面における距離は大きくなる。しかしながら、艶領域も色相は変化しないため、色相を考慮することで艶領域も正確に唇領域と判定することができる。一方で、肌と唇とが同色相であった場合でも、唇の代表色と各画素とのCbCr平面における距離を考慮することで、正確に唇領域を特定することができる。
【0165】
また、画像処理装置31は、唇の代表色に類似する画素(唇候補領域の画素)の空間分布に基づき、所定の唇形状のモデル等を適用し、唇らしい形状を構成する画素および/または唇らしい位置にある画素を、モデル化された唇領域として特定する。唇以外で唇の代表色に類似した領域がある場合、唇候補領域の中から唇の領域のみを判別する必要がある。そこで、唇形状のモデルを唇候補領域に適合させる(フィットさせる)ことにより、唇候補領域から唇らしい位置にある画素のみを唇領域として特定することができる。また、照明条件等により、唇の一部が唇の代表色に類似していない場合でも、唇形状のモデルを唇候補領域に適合させた場合に唇形状のモデルに含まれる画素を、唇領域として特定することができる。よって、撮影時に白く輝いたりして色相・彩度の情報が失われた唇の領域も、正確に唇領域として特定することができる。
【0166】
このように、本実施形態の画像処理装置31によれば、悪条件下で撮影された画像に対しても、正確に唇の代表色を特定し、唇領域を特定することができる。
【0167】
また、画像処理装置31は、唇らしさを表す補正部分評価値D3と、特定の位置(第1位置)を中心とした位置重みとの積に応じて唇の補正量(光沢画像)を決定する。唇である尤度が低い箇所、または特定の位置から離れた箇所の補正量は小さくなるので、補正を行う領域の境界付近での補正量を小さくすることができる。それゆえ、唇の境界が不自然に強調されることを防ぎながら、唇の領域に対して適切に(見た目が自然な)補正を行うことができる。
【0168】
<歯補正の画像処理フロー>
以下に、デジタルカメラ30における歯のホワイトニングの画像補正処理の流れについて説明する。なお、唇領域を特定するまでの処理(図6に示す処理)は、上記唇補正の場合と同様である。
【0169】
図29は、画像処理装置31における口内領域特定処理および補正処理(歯のホワイトニング処理)の流れを示すフローチャートである。画像処理装置31は、歯の領域の輝度を大きくすることにより、画像の中の歯を白く輝いて見えるように補正する。
【0170】
まず、口内部領域特定部32は、唇領域特定部20が特定した上の唇領域および下の唇領域の間の領域を、口内部領域(処理対象領域、第1領域)として特定する(S31)。具体的には、図17に示す上下の唇領域に挟まれる領域を、口内部領域とする。口画像の口内部領域に、歯の領域が含まれていると考えられる。
【0171】
歯候補色特定部33は、口画像の口内部領域の少なくとも一部を、複数の領域に分割し、分割された各領域の代表色を、歯の色の複数の候補色(歯候補色)として特定する(S32)。ここでは、各領域について、該領域の平均色を、歯候補色とする。
【0172】
歯代表色特定部34は、各歯候補色の彩度を比較し、最も彩度の小さい歯候補色を歯の代表色として特定する(S33)。なお、歯の代表色として、所定の色(例えば白)を用いてもよい。
【0173】
画像補正部21の歯色類似度特定部51は、口内部領域の各画素について、歯の代表色との類似度合いを求める(S34)。具体的には、歯色類似度特定部51は、各画素の色と歯の代表色との色空間における距離に応じた歯色類似度Wiを求める。歯色類似度Wiは、口内部領域の各画素の色と歯の代表色との類似度を表す。つまり、歯色類似度Wiが大きいということは、その画素が歯であることの尤度が大きいということである。
【0174】
色空間における距離に応じた歯色類似度Wiは、次式で求めることができる。
【0175】
【数10】

【0176】
ここで、Yt、Cbt、Crtは、それぞれ歯の代表色の輝度Y成分、Cb成分、Cr成分であり、Y、Cb、Crは、それぞれ各画素の色のY成分、Cb成分、Cr成分である。また、σyt、σbt、σrtは、それぞれ色空間のY軸における歯の色の標準偏差、Cb軸における歯の色の標準偏差、Cr軸における歯の色の標準偏差である。歯の色の標準偏差は、歯の代表色(最終的に歯の代表色として特定された歯候補色)に対応する領域(歯候補色特定部33が分割した領域)の各画素の色から求めることができる。なお、暗い画素は歯の領域の白っぽい画素と同様に、色相および彩度が小さくなる。そのため、歯色類似度Wiを求める際に輝度Yを考慮し、暗い画素は歯色類似度Wiが低くなるようにしている。図31は、図3(b)に対応し、口画像の各画素の色を式(10)に当てはめて歯色類似度Wiを計算した結果を示す画像である。明るい箇所は歯色類似度Wiが大きく、暗い箇所は歯色類似度Wiが小さいことを示す。これによれば、歯の領域は歯色類似度Wiが大きいことが分かる。口内部領域の歯以外の領域、すなわち、歯肉や口の奥、および舌等は、歯色類似度Wiが小さくなっている。
【0177】
画像補正部21の歯位置重み決定部52は、口内部領域の各画素位置に対して、歯の画像補正を行うための重み(補正重みWh)を求める(S35)。例えば、口内部領域の口端点に近い領域は、口の内部で陰になっていることが多いと考えられる。そのため、歯を白くする補正処理は、口内部領域の水平方向(左右の口端点が並ぶ方向)の中央付近についてより重点的に行えばよい。これにより、自然な見た目の画像補正を行う。
【0178】
具体的には、歯位置重み決定部52は、口内部領域の水平方向の中心位置ほど重みが大きく、口内部領域の水平方向の外側(口端点側)ほど重みが小さくなるように補正重みWh(第1重み)を設定する。例えば、口内部領域の左右の口端点を結ぶ線分の垂直二等分線上の位置(水平方向の中心位置)では、補正重みWhが1になり、口内部領域の水平方向の外側の端では、補正重みWhが0になるようにする。補正重みは、上記垂直二等分線からの距離に応じて、例えば線形に変化させてもよい。言い換えると、画像補正部21は、口内部領域の水平方向の中心を通る線(2つの口端点を結ぶ線分の垂直二等分線)からの距離に応じて、該距離が大きくなるほど補正重みWhが小さくなるように補正重みWhを決定する。図30は、図17に対応し、口内部領域および口内部領域の補正重みWhを示す画像である。明るい箇所は補正重みWhが大きいことを示す。
【0179】
なお、上記に限らず、歯位置重み決定部52は、口内部領域の特定の位置(点または線を示す第1位置)からの距離が大きくなるほど補正重みWhが小さくなるように補正重みWhを決定してもよい。例えば、歯位置重み決定部52は、口内部領域の重心または中心(例えば口内部領域に外接する矩形の中心)を上記特定の位置と設定してもよい。また、歯位置重み決定部52は、口内部領域の重心または中心を通る線上の位置を上記特定の位置と設定してもよい。
【0180】
また、例えば、画像の中の顔が正面を向いておらず、口が少し横向きになっていることがある。歯位置重み決定部52は、特徴検出部13によって検出された顔の特徴等から顔の向きを特定してもよい。それにより、歯位置重み決定部52は、その顔の口の中心と考えられる位置(画像上の口端点の中心ではなく、実際の口の中央を表していると考えられる画像上の点または線)を上記特定の位置として設定し、該特定の位置からの距離に応じて補正重みWhを決定してもよい。顔の向きが正面ではない場合に、実際の口の中心の補正重みWhを大きくする(すなわち、歯の輝度を大きくする)ことにより、より自然な補正を行うことができる。なお、顔の特徴点から顔の向きを特定し、実際の口の中心を特定する方法として、公知の技術を利用することができる(非特許文献1参照)。例えば、三次元の顔モデルに顔の特徴点をフィッティングさせることにより顔(顔モデル)の向きを特定し、顔モデルの口の特徴点から、画像上の対応する点(実際の口の中央を示す点)を特定することができる。
【0181】
また、例えば、歯位置重み決定部52は、口内部領域における最も輝度が大きい位置(画素)、または、最も歯色類似度Wiが大きい位置(画素)を上記特定の位置に設定し、該特定の位置からの距離に応じて補正重みWhを決定してもよい。または、歯位置重み決定部52は、口内部領域における歯色類似度Wiが所定の閾値(第1閾値)よりも大きい領域の重心または中心を上記特定の位置に設定してもよい。
【0182】
自然な見た目の歯光沢補正を行うために、以下の処理では、歯領域の画素の輝度を加算するための歯光沢画像を用意する。
【0183】
画像補正部21の歯補正量決定部53は、口内部領域について、口内部領域の補正重みWh、歯色類似度Wi、第1の唇色類似度We(第2器官尤度)、および第2の唇色類似度Wf(第2器官尤度)に基づいて、歯光沢画像を生成する(S36)。具体的には、各画素について、口内部領域の補正重みWhおよび歯色類似度Wiの積をとったものに、(1−We)および(1−Wf)を乗じ、さらに所定の補正度合い(例えば20)を乗じた画像を、歯光沢画像として生成する。歯光沢画像の各画素値は、補正に用いる各位置の補正量を表す。
【0184】
図32は、図13(b)に対応し、各画素の(1−We)の値を示す画像である。図33は、図14(b)に対応し、各画素の(1−Wf)の値を示す画像である。図34は、図31に対応し、歯光沢画像を示す画像である。明るい箇所は値が大きいことを示す。なお、口内部領域の補正重みWh、歯色類似度Wi、第1の唇色類似度We、および第2の唇色類似度Wfは、0から1の値をとる。例えば補正度合いが20の場合、歯光沢画像の各画素は、0から20の値をとる。歯光沢画像の各画素の値が、口画像を補正する際の輝度の補正値(補正量)となる。なお、口内部領域の補正重みWhと歯色類似度Wiとの積をとることにより、口内部領域の歯である領域の水平方向中央付近の補正の重みを大きくすることができる。なお、口内部領域の補正重みWhと歯色類似度Wiとの積に限らず、口内部領域の補正重みWhおよび歯色類似度Wiが大きくなるほど補正量(歯光沢画像の各画素の値)が大きくなるように、補正値を決定すればよい。
【0185】
画像において口が開いているのに歯が見えていない場合に、舌等の色を歯の代表色と特定してしまうことがある。舌の色は唇の色に比較的類似していると考えられる。このような場合に、舌の色を明るく補正することがないよう、(1−We)および(1−Wf)を考慮することによって、唇に類似した色相・彩度の領域(例えば舌)を補正しないようにすることができる。
【0186】
画像補正部21の歯画像補正部54は、各画素の輝度値について、図3(a)に示す正規化された口画像、および図34に示す歯光沢画像を合成し、補正された口画像を生成する(S37)。具体的には、歯画像補正部54は、各画素について、正規化された口画像(図3(a))の輝度値と、歯光沢画像(図34)の輝度値との和を、補正された口画像の輝度値とする。また、加算の結果の輝度値が最大輝度255を越えるときは、その画素の輝度値を255にする。歯光沢画像の各画素値は、輝度の補正値であると言える。なお、本実施形態では歯のホワイトニング補正処理のために、補正量に応じて輝度を増加させる補正を行うが、例えば、補正量に応じて特定の色を合成する、または特定の色を増強(特定の色相の彩度の値を増加)させてもよい。
【0187】
合成部22は、補正された口画像を処理対象の画像(顔画像)に合成する。以降の処理は上記唇補正の場合と同様である。
【0188】
図27(a)と図27(b)を比較すると、図27(b)に示す補正後の顔画像の一部を示す画像では、歯の特に水平方向の中央の領域の輝度が上がっていることが分かる。
【0189】
<歯補正のまとめ>
本実施形態の画像処理装置31によれば、唇領域に基づいて、口内部領域を正確に特定することができる。そして、口内部領域の中の歯である度合いが大きい領域に対して補正処理を行うことで、画像の中の人物の歯に、適切な補正処理を施すことができる。また、口内部領域の特定の位置(水平方向中央)からの距離に応じて、補正重みWhを変化させることにより、口端点付近の口内部領域の境界での輝度の補正量を小さくすることができる。それゆえ、口内部領域の境界が不自然に強調されることを防ぎながら、歯の領域に対して適切に(見た目が自然な)補正を行うことができる。
【0190】
また、図34に示す歯光沢画像において、明るい箇所は歯である度合いが大きい箇所を示している。そのため、歯光沢画像は、歯の領域を示していると言える。このように、本実施形態によれば、正確に歯の領域を特定することができる。画像処理装置31は、歯光沢画像の画素値が所定の閾値以上である領域を歯の領域として特定する歯領域特定部を備えてもよい。
【0191】
最後に、画像処理装置31の各ブロック、特に画像取得部11、顔検出部12、特徴検出部13、適否判定部14、口画像正規化部15、平滑化部16、肌代表色特定部17、候補色特定部18、唇代表色特定部19、唇領域特定部20、画像補正部21、合成部22、表示制御部23、口内部領域特定部32、歯候補色特定部33、歯代表色特定部34、歯色類似度特定部51、歯位置重み決定部52、歯補正量決定部53、および歯画像補正部54は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPU(central processing unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0192】
すなわち、画像処理装置31は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである画像処理装置31の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記画像処理装置31に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU(microprocessor unit))が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0193】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM(compact disc read-only memory)/MO(magneto-optical)/MD(Mini Disc)/DVD(digital versatile disk)/CD−R(CD Recordable)等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM(erasable programmable read-only memory)/EEPROM(electrically erasable and programmable read-only memory)/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0194】
また、画像処理装置31を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(local area network)、ISDN(integrated services digital network)、VAN(value-added network)、CATV(community antenna television)通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE(institute of electrical and electronic engineers)1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(asynchronous digital subscriber loop)回線等の有線でも、IrDA(infrared data association)やリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(high data rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。
【0195】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明は、画像処理装置を備えるデジタルカメラ等に利用することができる。
【符号の説明】
【0197】
2 指示入力装置
3 撮像装置
4 画像記憶装置
5 表示装置
11 画像取得部(指示受領部)
12 顔検出部
13 特徴検出部
14 適否判定部
15 口画像正規化部
16 平滑化部
17 肌代表色特定部
18 候補色特定部
19 唇代表色特定部
20 唇領域特定部(第2器官尤度特定部)
21 画像補正部
22 合成部
23 表示制御部
30 デジタルカメラ
31 画像処理装置
32 口内部領域特定部
33 歯候補色特定部
34 歯代表色特定部
41 唇重み特定部(第2重み決定部)
42 唇尤度特定部(第1器官尤度特定部)
43 唇位置重み決定部(第1重み決定部)
44 唇補正量決定部(補正量決定部)
45 唇画像補正部(画像補正部)
51 歯色類似度特定部(第1器官尤度特定部)
52 歯位置重み決定部(第1重み決定部)
53 歯補正量決定部(補正量決定部)
54 歯画像補正部(画像補正部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物の口を含む顔画像について画像処理を行う画像処理装置において、
上記顔画像の少なくとも口の一部を含む第1領域の各位置について、該位置の色と処理対象である器官の代表色である第1代表色との差に基づいて、該位置が上記器官であることの尤度を第1器官尤度として特定する第1器官尤度特定部と、
上記第1領域の各位置について、上記第1領域の第1位置からの距離が大きいほど第1重みが小さくなるように上記第1重みを決定する第1重み決定部と、
上記第1器官尤度および上記第1重みが大きいほど補正量が大きくなるように該位置の上記補正量を決定する補正量決定部と、
上記補正量を用いて画像を補正する画像補正部とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
上記補正量は、上記第1器官尤度および上記第1重みの積に比例することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記第1器官尤度特定部は、色空間の色相彩度平面における上記第1代表色と上記第1領域の各位置の色との間の距離に応じて、上記第1器官尤度を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記第1器官尤度特定部は、色空間の色相彩度平面における上記第1代表色と上記第1領域の各位置の色との間の距離と、上記第1代表色と該位置の色との色相の差とに応じて、上記第1器官尤度を特定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記第1器官尤度特定部は、色空間における上記第1代表色と上記第1領域の各位置の色との距離に応じて、上記第1器官尤度を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
上記第1位置は上記第1領域の中の線を示し、
上記第1重み決定部は、上記第1位置が示す線からの距離が大きいほど上記第1重みが小さくなるように上記第1重みを決定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
上記第1位置は、上記第1領域の重心または中心を通る線を示すことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
上記第1位置が示す線は、2つの口端点を結ぶ線に対して垂直であることを特徴とする請求項6または7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
上記第1位置は上記第1領域の中の点を示し、
上記第1重み決定部は、上記第1位置が示す点からの距離が大きいほど上記第1重みが小さくなるように上記第1重みを決定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
上記第1重み決定部は、上記第1領域における上記第1器官尤度と輝度との積が最も大きい位置を上記第1位置とすることを特徴とする請求項1から5、および9のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
上記第1位置は、上記第1領域の重心または中心を示すことを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項12】
上記第1位置は、上記第1領域における上記第1器官尤度が第1閾値以上である領域の重心または中心を示すことを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項13】
上記第1位置は、上記顔画像における人物の顔の向きに応じた実際の口の中心位置を示すことを特徴とする請求項6または9に記載の画像処理装置。
【請求項14】
上記画像補正部は、上記補正量が大きいほど対応する上記第1領域の位置の輝度を大きく増加させることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
上記補正量決定部は、上記第1領域の各位置について、上記第1器官尤度、上記第1重みおよび輝度が大きいほど補正量が大きくなるように上記補正量を決定することを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項16】
上記画像補正部は、上記第1器官尤度が第2閾値以上である第2領域を補正領域とし、上記補正領域の画像を上記補正量を用いて補正することを特徴とする請求項1から15に記載の画像処理装置。
【請求項17】
上記第1領域の各位置について、該位置の色と処理対象ではない別の器官の代表色である第2代表色との差に基づいて、該位置の第2器官尤度を特定する第2器官尤度特定部を備え、
上記補正量決定部は、上記第1器官尤度および上記第1重みが大きいほど上記補正量が大きくなるように、かつ、上記第2器官尤度が小さいほど上記補正量が大きくなるように上記補正量を決定することを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項18】
処理対象である上記器官は唇であり、
左右の口端点を結ぶ線分の垂直二等分線上にあり、かつ、上記第1領域の内側のある点を第2位置として、
上記第1領域の各位置について、上記第2位置で第2重みが最大となるように、かつ、上記第1領域の境界の少なくとも一部で上記第2重みが最小となるように、上記第2重みを決定する第2重み決定部を備え、
上記第1器官尤度特定部は、上記第1領域の各位置について、上記第2重みが小さいほど上記第1器官尤度を小さくすることを特徴とする請求項1から17に記載の画像処理装置。
【請求項19】
人物の口を含む顔画像についての画像処理方法であって、
上記顔画像の少なくとも口の一部を含む第1領域の各位置について、該位置の色と処理対象である器官の代表色である第1代表色との差に基づいて、該位置が上記器官であることの尤度を第1器官尤度として特定する第1器官尤度特定ステップと、
上記第1領域の各位置について、上記第1領域の第1位置からの距離が大きいほど第1重みが小さくなるように上記第1重みを決定する第1重み決定ステップと、
上記第1器官尤度および上記第1重みが大きいほど補正量が大きくなるように該位置の上記補正量を決定する補正量決定ステップと、
上記補正量を用いて画像を補正する画像補正ステップとを備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項20】
人物の口を含む顔画像について画像処理を行う画像処理装置の制御プログラムであって、
上記顔画像の少なくとも口の一部を含む第1領域の各位置について、該位置の色と処理対象である器官の代表色である第1代表色との差に基づいて、該位置が上記器官であることの尤度を第1器官尤度として特定する第1器官尤度特定ステップと、
上記第1領域の各位置について、上記第1領域の第1位置からの距離が大きいほど第1重みが小さくなるように上記第1重みを決定する第1重み決定ステップと、
上記第1器官尤度および上記第1重みが大きいほど補正量が大きくなるように該位置の上記補正量を決定する補正量決定ステップと、
上記補正量を用いて画像を補正する画像補正ステップとを、コンピュータに実行させる制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図15】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図23】
image rotate

【図29】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図16】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate


【公開番号】特開2012−256130(P2012−256130A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127754(P2011−127754)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】