説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラム及び記録媒体

【課題】2次元バーコードに画像を簡単に挿入できるとともに、十分な可読性を確保できるようにする。
【解決手段】デコーダ105で2次元バーコードの誤り訂正符号を用いてデコードを行った結果、エラーが0となるように、組み合わせ最適化アルゴリズムを用いて埋め込む画像のサイズ、色、角度及び位置を決定するようにして、2次元バーコードに画像を簡単に挿入できるとともに、十分な可読性を確保できるようにし、また、2次元バーコードに複数の画像を埋め込む場合や動画像を埋め込む場合であっても、組み合わせ最適化アルゴリズムによって簡単に画像の表示態様を決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置、画像処理方法、プログラム及び記録媒体に関し、特に、イラスト等の画像が含まれた2次元バーコードを生成するために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットを通じて情報を提供するサービスが普及しており、情報を提供する手段の1つとして2次元バーコードが多く用いられている。2次元バーコードは、1次元バーコードよりも多くの情報をコード化することができ、携帯電話等により読み取ることができる。
【0003】
一方、2次元バーコード単体からは、どのような情報が含まれているかを判別することができないため、指定されたロゴやイラストを2次元バーコードの中の指定された位置に挿入した2次元バーコードを生成するサービスも普及してきている。このサービスによれば、2次元バーコードの中央部など、予め定められた位置にロゴやイラストを挿入しているため、場合によっては2次元バーコードを十分に読み取ることができない可能性もあり、可読性については不十分である。
【0004】
そこで、バーコードの可読性を向上させるために、2次元バーコードとロゴやデザインとの画像合成を行うのではなく、イラストの部分も2次元バーコードの信号として認識するようにデザインしてイラスト入り2次元バーコードを生成するサービスも行われている。また、2次元バーコードの一部にバーコードとして認識可能な表示文字または表示マークを付すことにより、ユーザに対して、実際に2次元バーコードを端末装置に読み取らせてみようという意欲を向上させる技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−31681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したイラストの部分も2次元バーコードの信号として認識するようにデザインしてイラスト入り2次元バーコードを生成するサービスにおいては、イラストの位置、サイズ、色、角度などを試行錯誤的に調整する必要があるとともに、2次元バーコードの信号として認識するようにしなければならない。したがって、特に、複数のイラスト等の画像が挿入された2次元バーコードを生成しようとすると、処理が複雑になってしまい、調整するためのコストや手間が多くなるという問題点がある。
【0007】
本発明は前述の問題点に鑑み、2次元バーコードに画像を簡単に挿入できるとともに、十分な可読性を確保できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像処理装置は、2次元バーコードに挿入する画像の表示態様をデコーダによる可読性に基づいて決定する決定手段と、前記決定手段によって決定された表示態様で前記画像と前記2次元バーコードとを合成する合成手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の画像処理方法は、2次元バーコードに挿入する画像の表示態様をデコーダによる可読性に基づいて決定する決定工程と、前記決定工程において決定した表示態様で前記画像と前記2次元バーコードとを合成する合成工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のプログラムは、前記の画像処理方法の各工程をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
本発明の記録媒体は、前記のプログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2次元バーコードに挿入する画像の表示態様をデコーダによる可読性に基づいて決定するようにしたので、2次元バーコードに画像を簡単に挿入できるとともに、十分な可読性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態における画像処理装置100の機能構成例を示すブロック図である。
図1において、画像入力部101は、2次元バーコードに埋め込む画像を入力するためのものである。埋め込む画像として具体的には、ロゴ、イラスト、写真、動画像などである。なお、埋め込む画像は、図示しない外部装置から送られたものでもよく、メモリ102に予め記憶された画像であってもよい。
【0014】
バーコード生成部103は、例えば、QRコード(登録商標)などの2次元バーコードを生成するためのものである。例えば、メールアドレスや電話番号といったデータがバーコード生成部103に入力されると、入力されたデータを2次元バーコードに符号化する。なお、本実施形態においては、画像処理装置100で2次元バーコード(画像埋め込み前のもの)を生成する構成であるが、他の装置で生成された2次元バーコードを入力する構成であってもよい。
【0015】
可読判定部104は、2次元バーコードに埋め込む画像の位置等をランダムに設定し、設定した位置に画像を埋め込んだ場合にデコーダ105でエラーが生じるか否かを判定するためのものである。そして、エラーが生じない画像の位置等を決定する。
【0016】
本実施形態では、1つのデコーダ105を用いているが、ロバスト性を向上させるために、複数のデコーダを用いてもよい。複数のデコーダを用いる場合には、エラーの集計結果は、例えば、複数の各デコーダの平均値を用いるようにする。
【0017】
画像合成部106は、可読判定部104による判定結果をもとに埋め込む位置等が決定された画像を2次元バーコードに埋め込むためのものである。
【0018】
バーコード出力部107は、イラスト等の画像が埋め込まれた2次元バーコードを所定の画像に埋め込んで出力するためのものである。なお、画像が埋め込まれた2次元バーコードのみを出力し、2次元バーコードを所定の画像に埋め込む処理を他の装置で行うような構成であってもよい。
【0019】
次に、イラスト等の画像を2次元バーコードに埋め込むための処理手順について説明する。図3は、本実施形態における2次元バーコードに画像を埋め込む処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0020】
まず、ステップS11において、画像入力部101は、メモリ102から埋め込む画像を読み出して可読判定部104に送る。また、バーコード生成部103は、入力されたデータを2次元バーコードに符号化して可読判定部104に送る。具体的には、ユーザによる所望の画像を選択する操作に応じて、図示しない操作部から入力信号が画像入力部101に入力され、入力信号に基づいて埋め込む画像をメモリ102から読み出す。
【0021】
次に、ステップS12において、可読判定部104は、2次元バーコードに画像を埋め込む位置等の表示態様の初期設定を行う。ここで、可読判定部104の詳細な構成について説明する。
【0022】
図2は、本実施形態における可読判定部104の詳細な構成例を示すブロック図である。
画像を埋め込む位置等を初期設定する場合は、図2に示すように、パラメータ設定部208で初期設定値を算出し、サイズ設定部201、色設定部202、角度設定部23、及び位置設定部204がそれぞれ、パラメータ設定部208で算出されたサイズ、色、角度、及び位置の初期設定値を設定し、画像処理部205に送る。この時、埋め込む画像が複数ある場合は、全ての画像のサイズ、色、角度、及び位置の初期設定値を設定する。
【0023】
埋め込む画像が、表示態様が変化する動画像(例えば、GIF形式のアニメーション)である場合は、全てのコマにおける全ての画像のサイズ、色、角度、及び位置の初期設定値を設定する。本実施形態では、静止画像も動画像も1枚以上埋め込むことが可能であり、1枚以上の静止画像と1枚以上の動画像とを組み合わせて埋め込むことも可能である。
【0024】
また、パラメータ設定部208は、画像の色だけではなく、2次元バーコードの色及び背景の色(単一色やグラデーションなど)の初期設定値も算出し、色設定部202は、2次元バーコードの色及び背景の色の初期設定値も設定する。
【0025】
次に、ステップS13において、画像処理部205は、サイズ設定部201、色設定部202、角度設定部23、及び位置設定部204で設定された設定値をもとに埋め込む画像を変形し、変形した画像を入力された2次元バーコードに埋め込んで、確認用2次元バーコードを生成する。そして、可読性を確認するために、生成した確認用2次元バーコードをデコーダ105へ送る。この時、設定された2次元バーコードの色及び背景の色が、バーコード生成部103で生成された2次元バーコードと異なる場合は、設定した色の2次元バーコードをそのままオリジナルの2次元バーコードに埋め込む。
【0026】
次に、ステップS14において、デコーダ105は、確認用2次元バーコードをデコードし、エラー集計部206は、デコードの可否及エラー数をカウントする。ここで、デコーダ105は、2次元バーコードの誤り訂正符号を用いてデコードする。その結果、デコードが可能であり、かつエラー数が0であるか否かを判定する。なお、埋め込む画像が複数ある場合は、各画像が重なっていないか否かも判定する。
【0027】
この判定の結果、デコードが不可能、もしくはエラーがある場合は、ステップS15に進む。そして、ステップS15において、エラー集計部206は、エラーの集計結果を設定指示部207に送り、再設定指示部207は、パラメータ設定部208に対して設定値を変更するように指示する。そして、サイズ設定部201、色設定部202、角度設定部23、及び位置設定部204は、パラメータ設定部208で算出された設定値に変更して、再度、画像処理部205に送り、ステップS13に戻る。
【0028】
ここで、パラメータ設定部208でどのように各設定値を変更するかについては、組み合わせ最適化アルゴリズムを用いて計算する。具体的には、組み合わせ最適化アルゴリズムの一種である反復山登り法(Iterated Hill-Climbing)を用いる。また、埋め込む画像が複数ある場合や、動画像を埋め込む場合は、最急降下法(Steepest Descent Method)や焼き鈍し法(Simulated Annealing)、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)などを用いてもよい。
【0029】
なお、組み合わせ最適化アルゴリズムを用いた場合、計算結果がユーザの意図と大きく異なる表示態様となる可能性がある。そこで、本実施形態では、ユーザが各設定値の閾値を設定することができるようにしている。具体的には、ユーザの操作により図示しない操作部から各設定値の閾値の情報がパラメータ設定部208に入力され、その閾値の範囲内で組み合わせ最適化アルゴリズムを用いて計算する。
【0030】
これにより、パラメータ設定部208では、組み合わせアルゴリズムによって変更すべき各設定値を計算し、計算した設定値の情報をサイズ設定部201、色設定部202、角度設定部23、及び位置設定部204に送る。このように組み合わせ最適化アルゴリズムによって、ステップS13〜S15の処理が繰り返して行われ、最適な設定値になるまでこの処理を繰り返す。なお、遺伝的アルゴリズムなど1度に解候補(各設定値の組み合わせ)を複数生成するアルゴリズムを用いる場合は、解候補を1度に複数パターン生成し、それらの解候補の全てのパターンについてステップS13〜S15の処理を繰り返す。場合によってはその中で良好な結果が得られた複数の解候補をもとに、新しい解候補の生成を行い、最適な設定値になるまでこの処理を繰り返す。
【0031】
一方、ステップS14の判定の結果、デコードが可能であり、かつエラー数が0である場合(さらに画像が重なっていない場合)は、ステップS16に進む。そして、ステップS16において、そのときの設定値の画像及び2次元バーコードを画像合成部106に送り、画像合成部106は、2次元バーコードに画像を埋め込み、バーコード出力部107に出力して処理を終了する。
【0032】
図4は、本実施形態の画像合成部106において合成されたイラスト入り2次元バーコードの一例を示す図である。図4に示すように、組み合わせ最適化アルゴリズムを用いて計算した結果から、埋め込む画像のサイズや位置などを決定し、デコード時にエラーが発生しない位置へ画像が埋め込まれる。
【0033】
また、動画像入り2次元バーコードを作成する場合は、以下の3通りのパターンで作成することができる。
(1)入力される動画像が定位置に固定され、コマ毎に画像が変化するような動画像の場合、1枚以上の動画像を入力し、2次元バーコード内の算出された定位置に埋め込む。
(2)1枚以上の静止画像を入力し、同一の静止画像を用いて2次元バーコード内で移動させ、動画像入りの2次元バーコードとして出力する。
(3)1枚以上の動画像を入力し、同一の動画像を用いてコマごとに2次元バーコード内で移動させる。
【0034】
したがって、出力される2次元バーコードは、以下の(a)〜(c)の形態で出力される。
(a)1枚以上の静止画像、動画像、または静止画像及び動画像の組み合わせで埋め込まれた2次元バーコード
(b)静止画像のみを含み、静止画像の位置を時系列的に変化させない静止画像2次元バーコード
(c)1枚以上の動画像を含む、及び、静止画像または動画像の位置を時系列的に変化させた動画像2次元バーコード
【0035】
図5は、本実施形態において、2次元バーコードに1つの画像を埋め込むことによるエラー数の統計の一例を示す図である。x軸及びy軸は、2次元バーコード内の位置を示しており、z軸は、エラーの数を示している。
【0036】
前述したように、デコーダ105では、2次元バーコードの誤り訂正符号を用いてデコードを行っており、デコードを試みた結果、誤り訂正符号によってエラーが訂正可能である場合は、画像を埋め込んだ場合であってもエラーは0になる。図5に示す例においては、2次元バーコード内の左上部分に画像を挿入することによって、2次元バーコードの可読性を確保することができる。
【0037】
以上のように本実施形態においては、デコーダ105で2次元バーコードの誤り訂正符号を用いてデコードを行った結果、エラーが0となるように、組み合わせ最適化アルゴリズムを用いて埋め込む画像のサイズ、色(2次元バーコードの色及び背景の色も含む)、角度及び位置を決定するようにした。これにより、2次元バーコードに画像を簡単に挿入できるとともに、十分な可読性を確保できる。また、2次元バーコードに複数の画像を埋め込む場合や動画像を埋め込む場合であっても、組み合わせ最適化アルゴリズムによって簡単に画像の表示態様を決定することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、デコードが可能であり、かつエラー数が0である場合に埋め込む画像の表示態様を決定したが、例えば、エラー数が0であるが埋め込む画像が小さい場合、エラー数が数回あるが埋め込む画像が大きい場合の方がユーザにとって好ましい場合もある。そこで本実施形態では、対話型進化計算法を用いて複数の表示態様の候補からユーザに選択させ、選択された表示態様の2次元バーコードを生成する例について説明する。なお、本実施形態の画像処理装置の機能構成例は第1の実施形態と同様であるため説明は省略する。
【0039】
図6は、本実施形態において、ユーザが望む表示態様で2次元バーコードに画像を埋め込む処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS61において、画像入力部101は、メモリ102から埋め込む画像を読み出して可読判定部104に送る。また、バーコード生成部103は、入力されたデータを2次元バーコードに符号化して可読判定部104に送る。具体的には、ユーザによる所望の画像を選択する操作に応じて、図示しない操作部から入力信号が画像入力部101に入力され、入力信号に基づいて埋め込む画像をメモリ102から読み出す。
【0040】
次に、ステップS62において、可読判定部104は、埋め込む画像の表示態様の候補をn個生成する。なお、表示態様の候補を生成する手順については図7を参照しながら後述する。次に、ステップS63において、ステップS62で生成したn個の表示態様の候補を図示しない表示パネル等に表示してユーザに提示する。この時、ユーザに対しては、「表示態様を決定する」または「この中で最も好ましい表示態様を選択する」のどちらかを選択させるようにする。
【0041】
次に、ステップS64において、ユーザから「表示態様を決定する」が選択されたか否かを判断する。この判断の結果、「表示態様を決定する」が選択された場合は、ステップS67に進み、画像合成部106は、選択された表示態様で画像を埋め込んだ2次元バーコードを生成し、バーコード出力部107に出力して処理を終了する。
【0042】
一方、ステップS64の判断の結果、「この中で最も好ましい表示態様を選択する」が選択された場合は、ステップS65に進み、ユーザによって最も好ましいと選択された表示態様の候補を抽出する。そして、ステップS66において、選択された好ましい候補をもとに、新たに表示態様の候補をn個生成し、ステップS63に戻る。なお、ステップS66における新たな表示態様の候補を生成する詳細な手順については図8を参照しながら後述する。
【0043】
図7は、図6のステップS62における表示態様の候補を生成する手順の一例を示すフローチャートである。なお、図7のステップS71〜S74の処理内容はそれぞれ、図3のステップS12〜S15の処理内容と同様であるため、説明は省略する。
【0044】
ステップS73の判断の結果、デコードが可能であり、かつエラー数が0である場合は、ステップS75に進み、画像処理部205は、ユーザに提示する表示態様の候補としてリストアップする。次に、ステップS76において、表示態様の候補をn個抽出したか否かを判断する。この判断の結果、n個抽出していない場合は、次の候補を抽出するためにステップS71に戻る。一方、ステップS76の判断の結果、n個抽出した場合は、処理を終了する。
【0045】
本実施形態では、ユーザの要望に沿うように表示態様を決定するため、n個の表示態様の候補としてはなるべくサイズ、色、角度、及び位置がそれぞれ異なるような組み合わせにする。そこでステップS71で初期設定を行う際には、すでにリストアップされた表示態様の候補とは大きく異なるようにする。
【0046】
図8は、図6のステップS66における表示態様の候補を生成する手順の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS81において、図6のステップS65でユーザによって選択された最も好ましい表示態様の候補をもとに次に提示する候補の設定を行う。具体的には、ユーザによって候補が選択されることにより、どのパラメータ(サイズ、色、角度、位置)をユーザが重視しているかを知ることができる。そこで本実施形態では、以下の数1に示す式を用いて、目的関数f(x)が大きくなるように候補を抽出する。
【0047】
【数1】

【0048】
ここで、xは画像が挿入された候補を示し、P(x)は、デコードの成功度合いを示す関数を示している。また、Q(x)は、画像の配置の適切さやユーザの要望を満たす度合いを示している。また、P(x)は、以下の数2に示す式により表現される。
【0049】
【数2】

【0050】
ここで、pk(x)は、デコーダ105が複数ある場合に、k番目のデコーダによってデコードが成功したか否かを表す関数である。k番目のデコーダがデコードの成否のみを返す場合、デコードに成功するとpk(x)=1となり、デコードに失敗するとpk(x)=0となる。また、k番目のデコーダがデコードに失敗した時にその度合いを返す場合には、pk(x)は0〜1までの実数値となる。また、wk(p)は、各デコーダの重要度を調整する重みを示している。
【0051】
一方、Q(x)は、以下の数3に示す式により表現される。
【0052】
【数3】

【0053】
ここで、ql(x)は、画像の配置具合の良好性やユーザによる条件の充足度を表す関数である。本実施形態では、q1(x)〜q4(x)を設定している。q1(x)は、複数の画像を挿入する場合に、画像同士が重なり合う度合いを示し、q2(x)は、2次元バーコードの内部に画像が配置されている度合いを示している。また、q3(x)は、画像の拡大率の適切さを示し、q4(x)は、各画像の拡大率の統一性を表す関数を示している。また、wl(q)は、各要素の重要度を調整する重みを示している。
【0054】
さらに、q1(x)は、以下の数4に示す式により表現される。
【0055】
【数4】

【0056】
ここで、Niは挿入する画像の総数を示し、Siは画像iの面積を示している。さらに、SiOは、画像iが他の画像によって覆われる領域の面積を示している。
【0057】
また、q2(x)は、以下の数5に示す式により表現される。
【0058】
【数5】

【0059】
ここで、SiBは、画像iにおいて、2次元バーコード領域からはみ出ている領域の面積を示している。
【0060】
また、q3(x)は、以下の数6に示す式により表現される。
【0061】
【数6】

【0062】
ここで、αは、0.3前後に設定される定数であり、SQRは2次元バーコードの面積を示している。
【0063】
そして、q4(x)は、以下の数7に示す式により表現される。
【0064】
【数7】

【0065】
scalemin及びscalemaxはそれぞれ、最も小さい拡大率及び最も大きい拡大率を示している。なお、本実施形態では、q1(x)〜q4(x)を設定して計算を行っているが、それ以外にq1(x)〜q4(x)と同様に、画像の位置関係など、ユーザの要望や配置の適切性を関数として設定することができる。
【0066】
以上のようにQ(x)については、ユーザが重視しているパラメータの比重が高く設定され、図6のステップS63〜S66の処理が繰り返されることにより、各パラメータの比重がユーザの要望に沿うようになり、Q(x)は大きい値となる。また、画像が重なる場合など一般的に好ましくない表示態様ではQ(x)を小さくすることができる。このように目的関数f(x)が基準値以上となるものを最終的に候補として抽出する。
【0067】
すなわち、ステップS81において、パラメータ設定部208は、Q(x)が大きくなるように各パラメータの値を割り当てて設定を行い、xを決定する。
【0068】
次に、ステップS82において、図3のステップS13の手順と同様に、確認用2次元バーコードをデコーダ105へ送る。そして、ステップS84において、デコーダ105は、確認用2次元バーコードをデコードし、エラー集計部206は、デコードの可否及エラー数をカウントする。ここで、デコーダ105では、2次元バーコードの誤り訂正符号を用いてデコードする。この結果、目的関数f(x)が基準値以上であるか否かを判断する。なお、基準値の設定については、図6のステップS63〜S66の処理を繰り返す度に基準値を変更する。
【0069】
この判断の結果、目的関数f(x)が基準値未満である場合は、ステップS84に進み、図3のステップS15の手順と同様に、パラメータの設定値を変更する。なお、本実施形態では、f(x)が大きくなるように最適化アルゴリズムを用いて計算する。
【0070】
一方、ステップS73の判断の結果、目的関数f(x)が基準値以上である場合は、ステップS75に進み、画像処理部205は、ユーザに提示する表示態様の候補としてリストアップする。次に、ステップS86において、表示態様の候補をn個抽出したか否かを判断する。この判断の結果、n個抽出していない場合は、次の候補を抽出するためにステップS71に戻る。一方、ステップS86の判断の結果、n個抽出した場合は、処理を終了する。
【0071】
以上のように本実施形態では、対話型進化計算法を用いて目的関数f(x)を最大化することにより、ユーザにとって好ましい表示態様で2次元バーコードに画像を埋め込むことができる。
【0072】
(本発明に係る他の実施形態)
前述した本発明の実施形態における画像処理装置を構成する各手段、並びに画像処理方法の各工程は、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明に含まれる。
【0073】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記録媒体等としての実施形態も可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0074】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図3、6〜8に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システムまたは装置に直接、または遠隔から供給する場合も含む。そして、そのシステムまたは装置のコンピュータが前記供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。
【0075】
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0076】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0077】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどがある。さらに、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM、DVD−R)などもある。
【0078】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続する方法がある。そして、前記ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。
【0079】
また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0080】
また、その他の方法として、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記録媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせる。そして、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0081】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0082】
さらに、その他の方法として、まず記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。そして、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における可読判定部の詳細な機能構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における2次元バーコードに画像を埋め込む処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態の画像合成部において合成されたイラスト入り2次元バーコードの一例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において、2次元バーコードに画像を埋め込むことによるエラー数の統計の一例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態において、ユーザが望む表示態様で2次元バーコードに画像を埋め込む処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS62における表示態様の候補を生成する手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】図6のステップS66における表示態様の候補を生成する手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
100 画像処理装置
101 画像入力部
102 メモリ
103 バーコード生成部
104 可読判定部
105 デコーダ
106 画像合成部
107 バーコード出力部
201 サイズ設定部
202 色設定部
203 角度設定部
204 位置設定部
205 画像処理部
206 エラー集計部
207 再設定指示部
208 パラメータ設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元バーコードに挿入する画像の表示態様をデコーダによる可読性に基づいて決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された表示態様で前記画像と前記2次元バーコードとを合成する合成手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記決定手段は、2次元バーコードに画像を挿入する問題を最適化問題として定式化した最適化アルゴリズムを用いて決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記決定手段は、少なくとも前記画像のサイズ、色、角度及び位置の中の何れかを決定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記決定手段は、対話型進化計算法を用いて決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
2次元バーコードに挿入する画像の表示態様をデコーダによる可読性に基づいて決定する決定工程と、
前記決定工程において決定した表示態様で前記画像と前記2次元バーコードとを合成する合成工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
前記決定工程においては、2次元バーコードに画像を挿入する問題を最適化問題として定式化した最適化アルゴリズムを用いて決定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記決定工程においては、少なくとも前記画像のサイズ、色、角度及び位置の中の何れかを決定することを特徴とする請求項5または6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記決定工程においては、対話型進化計算法を用いて決定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理方法。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか1項に記載の画像処理方法の各工程をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−151700(P2009−151700A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330922(P2007−330922)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【Fターム(参考)】