説明

画像処理装置および方法、並びにプログラム

【課題】より確実に物体を識別できるようにする。
【解決手段】処理対象画像の注目画素の画素値Xは、画素値を構成する各色成分を軸とする特徴空間の観測点に写像される。識別装置では特徴空間の任意の観測点に対して、その観測点に写像される画素値Xの真値がYである尤度と、ノイズのない肌領域の画素の画素値の肌確率分布とが予め用意されており、これらに基づいて注目画素が肌領域の画素であるかが識別される。すなわち、注目画素の画素値Xに対して用意された尤度から画素値Xの真値がYである真値確率分布が求められ、真値確率分布と肌確率分布との畳み込みにより求められた、注目画素が肌領域の画素である確率に基づいて、注目画素が肌領域の画素であるかの識別が行なわれる。本技術は、識別装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は画像処理装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、より確実に物体を識別することができるようにした画像処理装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の識別機能をもつカメラ向けの技術として、被写体の色情報から特定の物体を識別する技術が知られている。例えば、そのような技術として、カメラの画枠内にいる人の顔や腕といった肌の領域を、色情報を利用して識別する技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このような色情報を利用する技術は、装置への実装の容易さ、信号処理量の少なさにおいて利点を有している。また、色情報を利用する技術は、人の体の形状や顔の形状といった空間情報を利用した物体の識別技術と併用可能であるという利点も有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ihab Zaqout, Roziati Zainuddin, Sapian Baba, 「A Survey on Pixel-Based Skin Color Detection Techniques」Machine Graphics & Vision International Journal, Volume 14 Issue 1, January,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した色情報を利用して肌の領域を識別する技術では、予め多くの種類の肌サンプルが撮影され、それらの肌サンプルに基づいて特徴空間における肌の分布が学習により求められる。そして、このようにして得られた肌の分布が用いられて、画像上の各領域が肌の領域であるか否かの識別が行なわれる。
【0006】
しかしながら色情報を用いた識別では、識別対象となる物体が充分に明るく撮影されていることが前提とされているため、物体が充分な明るさで撮影されなかった場合、つまりノイズの影響を大きく受ける場合には、期待通りの識別性能が得られないことがあった。
【0007】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より確実に物体を識別することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術の第1の側面の画像処理装置は、複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置であって、各画素値について予め求められた、画素値の真値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、所定の画素値について求められた前記真値の確率分布または確率密度関数を選択する選択部と、予め求められた前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、前記選択部により選択された前記真値の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算を行なうことで、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算部とを備える。
【0009】
画像処理装置には、前記演算部により算出された前記確率に基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域であるかを識別する判定部をさらに設けることができる。
【0010】
前記真値の確率分布を画素値の真値の尤度に基づいて求め、前記演算部には、前記真値の確率分布と、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布との畳み込み演算を行なうことで前記確率を算出させることができる。
【0011】
画像処理装置には、前記真値の確率分布に対して線形補間処理を行なって、画素値の真値である確率を補間により求める補間処理部をさらに設けることができる。
【0012】
本技術の第1の側面の画像処理方法またはプログラムは、複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置の画像処理方法またはプログラムであって、各画素値について予め求められた、画素値の真値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、所定の画素値について求められた前記真値の確率分布または確率密度関数を選択する選択ステップと、予め求められた前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、前記選択ステップの処理で選択された前記真値の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算を行なうことで、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算ステップとを含む。
【0013】
本技術の第1の側面においては、複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理において、各画素値について予め求められた、画素値の真値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、所定の画素値について求められた前記真値の確率分布または確率密度関数が選択され、予め求められた前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、選択された前記真値の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算を行なうことで、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率が算出される。
【0014】
本技術の第2の側面の画像処理装置は、複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置であって、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、所定輝度のノイズ成分の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算により画素の輝度ごとに予め求められた、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数を選択する選択部と、前記選択部により選択された、前記特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数と、前記注目画素の画素値とに基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算部とを備える。
【0015】
画像処理装置には、前記演算部により算出された前記確率に基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域であるかを識別する判定部をさらに設けることができる。
【0016】
前記判定部には、前記注目画素を含む複数の画素からなるブロックを単位として、前記ブロックが前記特定物体の領域であるかを識別させることができる。
【0017】
画像処理装置には、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布に対して線形補間処理を行なって、ノイズ成分の含まれている画素値である確率を補間により求める補間処理部をさらに設けることができる。
【0018】
本技術の第2の側面の画像処理方法またはプログラムは、複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置の画像処理方法またはプログラムであって、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、所定輝度のノイズ成分の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算により画素の輝度ごとに予め求められた、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数を選択する選択ステップと、前記選択ステップの処理で選択された、前記特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数と、前記注目画素の画素値とに基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算ステップとを含む。
【0019】
本技術の第2の側面においては、複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理において、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、所定輝度のノイズ成分の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算により画素の輝度ごとに予め求められた、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数が選択され、選択された、前記特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数と、前記注目画素の画素値とに基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率が算出される。
【発明の効果】
【0020】
本技術の第1の側面および第2の側面によれば、より確実に物体を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】特徴空間における観測点、真値確率分布、および肌確率分布について説明する図である。
【図2】観測点の輝度と真値確率分布の大きさについて説明する図である。
【図3】本技術を適用した識別装置の構成例を示す図である。
【図4】識別処理について説明するフローチャートである。
【図5】特徴空間における観測点とノイズ肌確率分布について説明する図である。
【図6】ノイズ肌確率分布の算出について説明する図である。
【図7】識別装置の他の構成例を示す図である。
【図8】識別処理について説明するフローチャートである。
【図9】コンピュータの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本技術を適用した実施の形態について説明する。
【0023】
〈第1の実施の形態〉
[本技術の概要]
まず、本技術による物体識別の概要について説明する。
【0024】
本技術は、例えば各画素が複数の色情報を有する画像について、画像(以下、処理対象画像とも称する)上の各領域が予め定められた特定色の物体であるかを識別するものである。なお、識別対象とされる物体は、物理的に同じ構成要素からなるものであればどのような物体であってもよいが、以下では、識別対象となる物体が人の肌であるものとして説明を続ける。
【0025】
例えば処理対象画像が、6色のカラーフィルタを有する撮像装置により撮影された画像であり、処理対象画像の画素の画素値がX=(x1,x2,x3,x4,x5,x6)であるとする。すなわち、画素値Xは、x1乃至x6の6つの色成分の値からなるとする。具体的には、6つの色成分として、R(赤),G(緑),B(青),C(シアン),M(マゼンダ),Y(黄)などが考えられる。
【0026】
いま、図1に示すように、これらの6つの色成分を軸とする座標系の空間を特徴空間とし、上述した画素値Xが座標X=(x1,x2,x3,x4,x5,x6)に写像されるとする。
【0027】
この特徴空間の次元数は、処理対象画像の画素の画素値Xが有する色成分の数と同じであり、図1では、画素値Xを構成する色成分x1乃至x6のそれぞれに対応する特徴空間の各軸がX1軸乃至X6軸とされている。また、図1において、観測点K11は、画素値Xが写像された点を表しており、この観測点K11の座標はXである。
【0028】
この場合、処理対象画像上の画素の画素値Xには、処理対象画像の撮影時に生じたショットノイズやランダムノイズなど、各種のノイズが含まれている。すなわち、画素値Xは、処理対象画像の画素の画素値の真値Yにノイズ成分が加算された値である。
【0029】
このような画素値Xに対する真値Yの確率分布である真値確率分布T11は、観測点K11を含む所定の領域となっており、真値確率分布T11内の各位置(点)には、その位置の座標に写像される画素値が、画素値Xの真値Yである確率が対応付けられている。なお、図1では、真値Yである確率が所定の閾値以上である点(位置)からなる領域が真値確率分布T11として図示されている。
【0030】
また、本技術による肌領域の識別には、予め学習により求めたノイズのない肌サンプルの確率分布である肌確率分布U11が用いられる。
【0031】
肌確率分布U11は、ノイズを無視できる充分な明るさで人の肌を撮影して得られたサンプル画像(以下、学習画像とも称する)が用いられて学習により求められる。肌確率分布U11内の各位置(点)には、その位置の座標に写像される画素値を有する画素が、画像上の肌領域を構成する画素である確率が対応付けられている。
【0032】
なお、図1では、肌領域の画素である確率が所定の閾値以上である点(位置)からなる領域が肌確率分布U11として図示されている。したがって、肌確率分布U11の領域は、学習画像上のノイズの含まれていない肌領域の画素の画素値の取り得る範囲を示しているということができる。
【0033】
また、この実施の形態では、特徴空間における各位置の画素値Xに対する真値Yである確率や肌領域の画素である確率の分布は、実写等で取得されたものと考え、離散的なものとして扱うこととする。すなわち、真値Yである確率や肌領域の画素である確率の分布として、確率密度関数に代えて確率分布を用いることとする。
【0034】
このように肌確率分布U11が予め学習により得られている場合、観測点K11の真値Y、より詳細には真値Yの特徴空間への写像後の位置が肌確率分布U11の領域内であれば、観測点K11に対応する画素は肌領域を構成する画素であるということができる。
【0035】
観測点K11に対応する画素が肌領域の画素である確率F(X)は、真値Yの確率分布である真値確率分布T11の領域と肌確率分布U11の領域が重なる領域に対応する確率であるから、真値確率分布T11と肌確率分布U11の畳み込みにより求めることができる。すなわち、確率F(X)は、真値確率分布T11の領域と肌確率分布U11の領域とがどれだけ重なっているかと関係があり、重なる部分の面積が真値確率分布T11と肌確率分布U11の領域の面積に対して大きいほど、確率F(X)は高く(大きく)なる。
【0036】
ところで、肌領域の画素である確率F(X)の算出に必要となる真値確率分布T11は、観測点K11の画素値X、つまり観測値の事後確率の確率分布であるから、最大事後確率推定(MAP(Maximum a posteriori)推定)により求めることができる。
【0037】
しかしながら、最大事後確率推定で必要となる事前確率P(Y)と証拠P(X)を正確に求めることはできない。そこで、本技術では、画素値Xが観測されたときに、画素値Xの真値がYである尤もらしさの度合いを示す尤度P(X|Y)の分布が、真値確率分布T11として用いられる。
【0038】
すなわち、処理対象画像上の処理対象となっている画素が注目画素とされると、注目画素の画素値Xに対して予め求められた真値Yの尤度P(X|Y)が、画素値Xの真値がYである確率とみなされ、真値Yの尤度の分布が真値確率分布T11であるものとされる。換言すれば、真値確率分布T11内の各位置(点)には、その位置の座標に写像される画素値が、注目画素の画素値Xの真値である尤もらしさの度合いを示す尤度が対応付けられている。
【0039】
そして、得られた真値確率分布T11に基づいて次式(1)が計算され、注目画素が肌領域の画素である確率F(X)が算出される。さらに、得られた確率F(X)が閾値以上であるか否かが判定され、その判定結果に応じて注目画素が肌領域の画素であるか否かの識別が行なわれる。
【0040】
F(X)=Σg(Z)×h(X−Z) ・・・(1)
【0041】
なお、式(1)において、Zは特徴空間全体の各位置(座標)を示しており、g(Z)は真値確率分布、すなわち画素値Xの真値がZ(より詳細には、位置Zに写像される画素値)である尤度P(X|Z)を示している。また、Xは特徴空間に写像された注目画素の写像後の位置(座標)を示しており、h(X−Z)は肌確率分布、すなわち肌確率分布における位置(X−Z)に対応付けられた、肌領域の画素である確率を示している。
【0042】
したがって、注目画素が肌領域の画素である確率F(X)は、画素値Xに対して予め求められた尤度P(X|Y)と、肌確率分布U11との畳み込みにより算出される。但し、式(1)では、真値確率分布の近似的な値として尤度が用いられるため、畳み込み演算により得られる値は厳密には確率とはいえないが、畳み込みで得られる値は肌領域らしさの度合いを示す値であるため、確率F(X)は肌領域である確率とみなすことができる。
【0043】
また、特徴空間上において、ノイズのない肌領域の画素の画素値が写像される領域と、画素値Xの真値Yが存在する領域とは特徴空間内の限られた領域となる。そのため、畳み込み演算の計算量を抑えるために、位置Zの取り得る座標の範囲は、ノイズのない肌領域の画素の画素値が写像される領域、または真値Yが写像され得る領域の何れかの領域内の位置の取り得る座標の範囲とされることが望ましい。
【0044】
以上のように、画素値Xに対して求められた尤度と、ノイズのない肌領域の肌確率分布とを畳み込むことで確率F(X)を算出し、確率F(X)に対する閾値処理により注目画素が肌領域であるかを識別することで、画素値Xに含まれるノイズ成分の量によらず、高精度に識別を行なうことができる。この識別手法は、注目画素に含まれるノイズ成分をキャンセルして、ノイズのない世界で注目画素が肌領域であるかの識別を行なう手法である。
【0045】
また、処理対象画像の各画素に含まれるノイズは、画素の輝度値が高いほど少なくなる。したがって、例えば図2に示すように、注目画素の画素値が写像された位置が特徴空間の座標系の原点から遠いほど、つまり注目画素の輝度が高いほど、注目画素に対応する観測点について求められた真値確率分布の領域は小さくなる。
【0046】
なお、図2において各矢印は、画素値Xを構成する色成分x1乃至x6のそれぞれに対応する座標系のX1軸乃至X6軸を表しており、Oは座標系の原点を表している。
【0047】
図2の例では、観測点K21乃至観測点K25のそれぞれは、輝度の異なる処理対象画像上の画素の画素値の写像点を示している。また、真値確率分布T21乃至真値確率分布T25のそれぞれは、観測点K21乃至観測点K25に写像された画素値Xに対して予め求められた真値Yの確率分布を示している。
【0048】
処理対象画像の画素の画素値Xは、そのまま特徴空間上の座標に写像されるので、特徴空間において、原点Oからより遠い位置にある観測点ほど、その観測点に写像される画素の輝度値は高いことになる。また、輝度の高い画素ほど、その画素の画素値に含まれるノイズ成分は少ないので、観測点K21乃至観測点K25のうち、より原点Oから遠い位置にあるものほど、その観測点の真値確率分布の領域の大きさは小さくなる。
【0049】
例えば、観測点K21乃至観測点K25のうち、最も原点Oから遠い観測点K25では、観測点K25と、真値確率分布T25の領域とがほぼ同じ大きさの領域となっており、より高精度に肌領域の画素であるかを識別できることが分かる。
【0050】
[識別装置の構成例]
次に、以上において説明した識別手法により処理対象画像の各画素が、肌領域の画素であるかの識別を行なう識別装置の具体的な実施の形態について説明する。そのような識別装置は、例えば撮像素子に複数色のカラーフィルタを有する撮像装置などに設けられ、図3に示すように構成される。
【0051】
図3の識別装置11は、学習部21、記録部22、識別部23、および出力部24から構成される。
【0052】
学習部21は、供給された学習画像に基づいて、学習により画素値Xに対する各画素値の尤度P(X|Y)と、ノイズのない肌領域の肌確率分布とを求め、記録部22に供給する。記録部22は、学習部21から供給された尤度と肌確率分布を記録し、これらの尤度や肌確率分布を必要に応じて識別部23に供給する。
【0053】
識別部23は、記録部22から供給された尤度および肌確率分布に基づいて、供給された処理対象画像の各画素について、それらの画素が肌領域の画素であるか否かを識別し、その識別結果を出力部24に供給する。
【0054】
識別部23は、取得部31、選択部32、演算部33、および判定部34を備えている。取得部31は、記録部22から尤度や肌確率分布を取得する。選択部32は、供給された処理対象画像の画素を順次、注目画素として選択する。
【0055】
また、演算部33は、注目画素の画素値Xに対して求められている尤度と肌確率分布との畳み込み演算を行なうことで、注目画素が肌領域の画素である確率F(X)を算出する。判定部34は、各注目画素について、確率F(X)に対する閾値処理を行い、注目画素が肌領域の画素であるかの識別を行なう。
【0056】
出力部24は、識別部23から供給された、処理対象画像上の各画素が肌領域の画素であるかの識別結果を後段に出力する。
【0057】
[識別処理の説明]
このような識別装置11に複数の学習画像が供給されると、識別装置11の学習部21は学習画像を用いた学習により、各画素値に対する真値の尤度と肌確率分布を求める。
【0058】
例えば、学習部21は、学習画像の画素のうちの肌領域内にある各画素の画素値に基づいて、肌領域の画素のヒストグラムを生成する。具体的には、各画素値をヒストグラムのビンとして、そのビンの画素値を有する画素の数がビンに対する頻度値とされる。学習部21は、このようにして得られた各ビン(画素値)の頻度値を正規化することで、肌確率分布を生成する。すなわち、ヒストグラムのビンの画素値が、肌領域を構成する画素の画素値であり、正規化された頻度値が、そのビンの画素値を有する画素が肌領域を構成する画素である確率である。
【0059】
なお、学習部21は、肌確率分布が充分に稠密でなく、画素値に対応付けられた肌領域である確率が欠損している場合、その画素値の周囲の画素値の確率を用いた線形補間により欠損位置(画素値)の肌領域である確率を補間する。
【0060】
具体的には、例えば学習部21は、特徴空間上の所定の位置に対応付けられた肌領域である確率と、その位置の周囲にある他の位置の肌領域である確率との差分絶対値が、所定の閾値以上となる位置を特定し、その位置を欠損位置とする。例えば、欠損位置の特定に用いられる閾値は、画素値の変化に対する肌領域である確率の変化、すなわち肌領域である確率の勾配に基づいて、特徴空間上の位置ごとに定められる。
【0061】
また、肌確率分布は、学習画像上の肌領域の画素の画素値の散らばり(分布)を、ガウス分布や混合ガウス分布で近似することにより生成されるようにしてもよいし、予め求められた確率分布が肌確率分布とされてもよい。
【0062】
さらに、学習部21は、学習画像の画素のうちの肌領域内にある画素の画素値を真値Yとして、真値Yに各ノイズ成分の値を足し込んで、ノイズ成分が含まれる画素値Xとすることで、真値Yに対する各画素値Xの分布を生成する。学習部21は、このようにして生成した分布から、尤度P(X|Y)を求める。
【0063】
学習部21は、肌確率分布における場合と同様に、尤度P(X|Y)に対しても線形補間処理を行ない、欠損位置とされた真値Yの尤度を、周囲の真値Yの尤度を用いて補間する。すなわち、画素値Xごとの真値確率分布に対して線形補間処理が行なわれる。
【0064】
学習部21により肌確率分布と尤度が生成されて記録部22に記録されると、識別装置11では、これらの肌確率分布と尤度を利用して識別処理を行い、供給された処理対象画像の各画素が肌領域の画素であるか否かを識別することができるようになる。
【0065】
以下、図4のフローチャートを参照して、識別装置11による識別処理について説明する。
【0066】
ステップS11において、取得部31は、記録部22からノイズのない肌確率分布を読み出す。そして、ステップS12において、選択部32は、供給された処理対象画像上の1つの画素を注目画素として選択する。例えば、処理対象画像上の画素がラスタスキャン順に注目画素として選択されていく。
【0067】
ステップS13において、演算部33は、注目画素の真値確率分布を求める。例えば取得部31は、注目画素の画素値Xに対して予め求められた尤度P(X|Y)を記録部22から読み出して演算部33に供給する。演算部33は、取得部31から供給された真値Yの尤度をYが真値である確率とみなし、画素値Xに対して予め求められた、各真値Yの尤度の分布を真値確率分布とする。
【0068】
ステップS14において、演算部33は、注目画素の画素値Xについて求めた真値確率分布と、取得部31により読み出された肌確率分布との畳み込み演算、すなわち尤度と肌確率分布の畳み込み演算を行ない、注目画素が肌領域の画素である確率F(X)を算出する。
【0069】
ステップS15において、判定部34は、演算部33により求められた確率F(X)が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0070】
ステップS15において、確率F(X)が閾値以上であると判定された場合、ステップS16において、判定部34は、注目画素が肌領域を構成する画素であるとし、その旨の識別結果を出力部24に供給する。出力部24は、判定部34から供給された識別結果を出力して、処理はステップS18に進む。
【0071】
これに対してステップS15において、確率F(X)が閾値以上でないと判定された場合、つまり確率F(X)が閾値未満である場合、ステップS17において、判定部34は注目画素が肌領域を構成する画素でないとし、その旨の識別結果を出力部24に供給する。出力部24は、判定部34から供給された識別結果を出力して、処理はステップS18に進む。
【0072】
ステップS16またはステップS17において、注目画素についての識別結果が出力されると、ステップS18において、識別部23は、処理対象画像上の全ての画素を注目画素としたか否かを判定する。
【0073】
ステップS18において、まだ全ての画素が注目画素とされていないと判定された場合、処理はステップS12に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0074】
一方、ステップS18において、全ての画素が注目画素とされたと判定された場合、処理対象画像の全画素について肌領域であるかの識別が行われたので、識別処理は終了する。
【0075】
このようにして、識別装置11は、注目画素の画素値に対して用意された尤度から求めた真値確率分布と、ノイズのない肌領域の肌確率分布とを畳み込むことで確率F(X)を算出し、確率F(X)に対する閾値処理により注目画素が肌領域であるかを識別する。
【0076】
このように尤度を用いて近似的に真値確率分布を求めることにより、画素値Xに含まれるノイズ成分の量によらず、高精度に物体識別を行なうことができる。すなわち、処理対象画像上の目的とする物体をより確実に識別することができる。
【0077】
従来の識別手法では、特徴空間において、ノイズが含まれる画素の画素値の写像位置が、ノイズのない肌領域の画素から求めた肌確率分布の領域内にあるか否かを判定することにより、物体の識別が行なわれていた。しかしながら、従来の識別手法では、注目画素の輝度変化により生じる、注目画素の画素値に含まれるノイズ量の変化が充分に考慮されていなかったため、ノイズの影響に対してロバストな識別を行なうことができなかった。
【0078】
特に、処理対象画像を撮影する撮像素子のカラーフィルタ間の分光透過率の特徴の違い、すなわち、ここでは色の違いが小さいとき、つまり僅かな波長の違いを利用して物体の識別を行なう場合、画像に含まれるノイズが識別に与える影響が非常に大きくなり、物体の識別精度が低下してしまう。
【0079】
これに対して識別装置11では、注目画素の画素値に対して用意された尤度から真値確率分布を求め、ノイズのない世界で物体識別を行なうので、SN比(Signal to Noise ratio)が低く、ノイズの多い条件下においても、より高い精度で物体を識別することができる。
【0080】
なお、以上においては、真値確率分布と肌確率分布とから物体識別を行なう場合について説明したが、確率分布でなく確率密度関数が用いられる場合においても、同様の処理が行なわれて物体識別が行なわれる。
【0081】
すなわち、画素値ごとに予め用意された、真値である確率の確率密度関数(以下、真値確率密度関数と称する)のうち、注目画素の画素値Xに対して求められた真値確率密度関数が取得部31により選択される。そして、予め用意された、各画素値がノイズの含まれていない肌領域の画素の画素値である確率の確率密度関数(以下、肌確率密度関数と称する)と、選択された真値確率密度関数との畳み込み演算が演算部33により行なわれ、確率F(X)が算出される。
【0082】
〈第2の実施の形態〉
[本技術の概要]
また、以上においては、ノイズのない世界で物体識別を行なう例について説明したが、画素の輝度ごとにノイズの含まれる肌領域の確率分布を用意し、ノイズのある世界で物体識別を行なうようにしてもよい。
【0083】
そのような場合、例えば図5に示すように、6色のカラーフィルタを有する撮像装置により撮影された処理対象画像の注目画素の画素値X=(x1,x2,x3,x4,x5,x6)が、特徴空間の座標X=(x1,x2,x3,x4,x5,x6)に写像される。そして、座標がXである写像後の観測点K31が、予め用意された注目画素の輝度により定まるノイズ肌確率分布M11の領域内にあるか否かを判定することにより、注目画素が肌領域の画素であるか否かが識別される。
【0084】
なお、図5において各矢印は、画素値Xを構成する色成分x1乃至x6のそれぞれに対応する座標系のX1軸乃至X6軸を表しており、Oは座標系の原点を表している。
【0085】
ノイズ肌確率分布M11は、画素の輝度ごとに予め求められたノイズのある肌サンプルの確率分布であり、ノイズが生じない充分な明るさで人の肌を撮影して得られた学習画像から求められた肌確率分布と、ノイズの確率分布とから求められる。
【0086】
ノイズ肌確率分布M11内の各位置(点)には、その位置の座標に写像される画素値を有する画素が、画像上のノイズが含まれた肌領域を構成する特定の輝度の画素である確率が対応付けられている。このノイズ肌確率分布M11の領域の境界は、画素値に含まれるノイズの影響により、図1に示したノイズのない肌確率分布U11の領域境界と比べて、歪な形状となっている。
【0087】
なお、図5では、肌領域の画素である確率が所定の閾値以上である点(位置)からなる領域がノイズ肌確率分布M11として図示されている。したがって、ノイズ肌確率分布M11の領域は、ノイズが含まれている肌領域の画素の画素値の取り得る範囲を示しているということができる。
【0088】
また、この実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、特徴空間における肌領域の画素である確率の分布は離散的なものとして扱われることとし、各位置の肌領域の画素である確率の分布として、確率密度関数に代えて確率分布が用いられることとする。
【0089】
このようにノイズ肌確率分布M11が予め得られている場合、観測点K31の位置がノイズ肌確率分布M11の領域内であれば、観測点K31に対応する画素は肌領域を構成する画素であるということができる。
【0090】
ところで、ノイズ肌確率分布は、ノイズのない肌確率分布と、所定輝度のノイズの確率分布とから求められるが、図6に示すように、輝度が低い場合においては、ノイズ確率分布がノイズ肌確率分布の領域の形状に与える影響は、ノイズ肌確率分布の特徴を変えるほどに大きい。
【0091】
図6では、図中、上側には画素の輝度が高い、高輝度のノイズ肌確率分布M21が示されており、図中、下側には画素の輝度が低い、低輝度のノイズ肌確率分布M22が示されている。
【0092】
高輝度である特定輝度のノイズ肌確率分布M21の生成には、特定輝度のノイズのない肌サンプルの画像(学習画像)の画素から得られた肌確率分布U21と、特定輝度の画素のノイズ確率分布N11とが用意される。
【0093】
ノイズ確率分布N11は、輝度を変数としてもつノイズ関数である。すなわち、画像上の特定輝度の画素に対応する点が、ノイズの影響により特徴空間上でどのように分布するかが確率の関数で与えられており、この関数がノイズ確率分布N11とされる。したがってノイズ確率分布N11の各位置(点)には、ノイズを含む特定輝度の画素が、特徴空間上のそれら位置に写像される画素値を有している確率が対応付けられている。
【0094】
ノイズ関数を求める方法としては、例えば明るさを変えながらグレーチャートを撮影し、得られた画像の画素値の散らばりを関数化する方法などがある。画素値の散らばりを関数化する代表的な方法としては、画素値の散らばりをガウス分布や混合ガウス分布で近似してパラメータ化する方法がある。
【0095】
また、確率分布モデルを用いずに、画素値の散らばりをテーブルとして保持するようにしてもよい。具体的には、グレーチャートを撮影して得られた画像の画素値のヒストグラムを求め、ヒストグラムの各ビンの頻度値の積分値(和)が1となるように、各ビンの頻度値を正規化したものをテーブル化することで、ノイズ確率分布を得るようにしてもよい。
【0096】
なお、ノイズ確率分布を求める方法は、上述した方法に限らず、どのような方法であってもよい。
【0097】
以上のようにして、高輝度の肌確率分布U21と、高輝度のノイズ確率分布N11とが用意されると、図中、右上に示すように、これらの肌確率分布U21とノイズ確率分布N11との畳み込み演算が行なわれて、高輝度のノイズ肌確率分布M21が求められる。
【0098】
高輝度の場合と同様に、低輝度のノイズ肌確率分布M22の生成には、ノイズのない高輝度の肌サンプル画像(学習画像)から、補間によって得られた低輝度の肌確率分布U22と、低輝度の画素のノイズ確率分布N12とが用意される。そして、図中、下側に示すように、肌確率分布U22とノイズ確率分布N12との畳み込み演算が行なわれて、低輝度のノイズ肌確率分布M22が求められる。ノイズの影響がない場合、輝度が変化しても任意の画素の画素値の比は一定であると仮定できる。したがって、高輝度で撮影した学習画像の各画素の画素値の比を保ちながら、画素値を小さくしていくことで、ノイズのない低輝度時の学習画像を補間により得ることができる。このような低輝度の学習画像の生成方法は、他の実施の形態においても同様である。
【0099】
高輝度の肌確率分布U21と、低輝度の肌確率分布U22とを比較すると、これらの肌確率分布は、スケール(大きさ)は異なるが確率分布の形状はほぼ同じとなっている。
【0100】
これに対して、低輝度のノイズ確率分布N12は、高輝度のノイズ確率分布N11と比べて分散が大きくなっている。これは、画像に含まれるノイズ、特にショットノイズは画像の輝度に大きく影響されるからである。
【0101】
ノイズ肌確率分布は、ノイズのない肌領域の肌確率分布とノイズ確率分布とを合わせたものであるから、ノイズ肌確率分布M21とノイズ肌確率分布M22は、輝度の影響が大きいノイズ確率分布の違いによって、確率のばらつき方に大きな違いが生じている。
【0102】
このようにノイズの確率分布は輝度に大きく影響されるので、ノイズのない肌領域の画素の画素値の肌確率分布に、特定輝度で生じるノイズの確率分布を畳み込むことで、所望の輝度で撮影した画像に対して最適なノイズ肌確率分布を得ることができる。
【0103】
[識別装置の構成例]
次に、輝度ごとに用意されたノイズ肌確率分布を用いて、処理対象画像の各画素が、肌領域の画素であるかの識別を行なう識別装置について説明する。そのような識別装置は、例えば撮像素子に複数色のカラーフィルタを有する撮像装置などに設けられ、図7に示すように構成される。
【0104】
図7の識別装置61は、生成部71、記録部72、識別部73、および出力部74から構成される。
【0105】
生成部71は、供給された学習画像に基づいて、図3の学習部21と同様の処理を行なって肌確率分布を求める。また、生成部71は、予め記録している各輝度のノイズ確率分布と、肌確率分布との畳み込みを行い、輝度ごとにノイズ肌確率分布を求め、記録部72に供給する。すなわち、肌確率分布と、特定輝度のノイズ確率分布との畳み込みにより、特定輝度のノイズ肌確率分布が求められる。
【0106】
ここで、生成部71に供給される学習画像は、処理対象画像を撮影する装置(例えば識別装置61)により撮影されたものとされる。また、生成部71に記録されているノイズ確率分布を得るための画像も、処理対象画像を撮影する装置により撮影されたものとされる。なお、ノイズ確率分布は、上述したノイズ関数を求める方法や、ヒストグラムを利用する方法などにより、生成部71によって生成されるようにしてもよい。
【0107】
記録部72は、生成部71から供給された輝度ごとのノイズ肌確率分布を記録し、必要に応じてノイズ肌確率分布を識別部73に供給する。
【0108】
識別部73は、記録部72から供給されたノイズ肌確率分布に基づいて、供給された処理対象画像の各画素について、それらの画素が肌領域の画素であるか否かを識別し、その識別結果を出力部74に供給する。
【0109】
識別部73は、選択部81、取得部82、演算部83、および判定部84を備えている。選択部81は、供給された処理対象画像の画素を順次、注目画素として選択する。取得部82は、注目画素の輝度により定まるノイズ肌確率分布を記録部72から取得する。
【0110】
演算部83は、取得部82により取得されたノイズ肌確率分布と注目画素の画素値とから、注目画素が肌領域の画素である確率F(X)を算出する。判定部84は、各注目画素について、確率F(X)に対する閾値処理を行い、注目画素が肌領域の画素であるかの識別を行なう。
【0111】
出力部74は、識別部73から供給された、処理対象画像上の各画素が肌領域の画素であるかの識別結果を出力する。
【0112】
[識別処理の説明]
このような識別装置61に複数の学習画像が供給されると、識別装置61の生成部71は学習画像を用いた学習により肌確率分布を求めるとともに、得られた肌確率分布と、予め記録しているノイズ確率分布とを畳み込んで、輝度ごとにノイズ肌確率分布を求める。
【0113】
また、生成部71は、ノイズ肌確率分布が充分に稠密でなく、画素値に対応する肌領域である確率が欠損している場合、その画素値の周囲の画素値の確率を用いた線形補間により欠損位置(画素値)の肌領域である確率を補間する。なお、ノイズ肌確率分布に対する線形補間処理は、学習部21により行なわれる肌確率分布に対する線形補間処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0114】
生成部71によりノイズ肌確率分布が生成されて記録部72に記録されると、識別装置61では、ノイズ肌確率分布を利用して識別処理を行い、供給された処理対象画像の各画素が肌領域の画素であるか否かを識別することができるようになる。
【0115】
以下、図8のフローチャートを参照して、識別装置61による識別処理について説明する。
【0116】
ステップS51において、取得部82は、記録部72からノイズ肌確率分布を読み出して一時的に保持する。そして、ステップS52において、選択部81は、供給された処理対象画像上の1つの画素を注目画素として選択する。例えば、処理対象画像上の画素がラスタスキャン順に注目画素として選択されていく。
【0117】
ステップS53において、取得部82は、注目画素の輝度に基づいて、記録部72から読み出した各輝度のノイズ肌確率分布から、識別に用いるノイズ肌確率分布を選択する。すなわち、取得部82は、注目画素の画素値Xに基づいて、注目画像の輝度値を算出し、算出された輝度値により特定されるノイズ肌確率分布、例えば注目画素の輝度と同じ輝度について求められたノイズ肌確率分布を選択する。
【0118】
ステップS54において、演算部83は、注目画素の画素値Xと、取得部82により選択されたノイズ肌確率分布とに基づいて、注目画素が肌領域の画素である確率F(X)を算出する。具体的には、演算部83は、注目画素の画素値Xを特徴空間上に写像し、写像された位置である観測点を求める。そして、演算部83は、ノイズ肌確率分布において、特徴空間上の各位置に対応付けられている肌領域である確率のうち、注目画素の画素値Xを写像して得られた観測点に対応付けられている確率を読み出して確率F(X)とする。
【0119】
注目画素が肌領域の画素である確率F(X)が求められると、その後、ステップS55乃至ステップS58の処理が行なわれて識別処理は終了するが、これらの処理は図4のステップS15乃至ステップS18の処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0120】
以上のようにして識別装置61は、注目画素の輝度により特定されるノイズ肌確率分布を選択し、選択したノイズ肌確率分布から注目画素の画素値Xに対応する確率を読み出して確率F(X)とする。また、識別装置61は、求めた確率F(X)に対する閾値処理により注目画素が肌領域であるかを識別する。
【0121】
このように、輝度ごとに予めノイズ肌確率分布を用意し、注目画素の輝度により特定されるノイズ肌確率分布を選択することで、注目画素の輝度に対して最適なノイズ肌確率分布を用いて、肌領域であるかの識別を行なうことができる。これにより、注目画素に含まれるノイズ量を考慮して高精度に識別を行なうことができる。すなわち、処理対象画像上の目的とする物体をより確実に識別することができる。
【0122】
注目画素の画素値Xは、処理対象画像の撮影時に生じたショットノイズやランダムノイズが、画素値Xの真値に加算された値である。つまり、画素値Xはノイズが含まれた状態で観測された値である。また、ノイズ肌確率分布は、各画素値(位置)が観測されたときに、その画素値を有する画素が、ノイズが含まれている肌領域の画素である確率の分布である。したがって、注目画素の画素値Xと、ノイズ肌確率分布とを用いる識別装置61の識別手法は、ノイズのある世界で物体識別を行なう手法ということができる。
【0123】
ノイズのある世界での物体識別では、特に画素の輝度によってノイズの確率分布が大きく異なるため、ノイズ肌確率分布の領域(識別の境界)の大きさや形状も画素の輝度によって大きく変化する。識別装置61では、予め輝度ごとにノイズ肌確率分布を用意しておき、注目画素の輝度に応じて適切なノイズ肌確率分布を用いて識別を行なうことで、SN比が低くノイズの多い条件下においても、より高い精度で物体を識別することができる。
【0124】
なお、以上においては、ノイズ肌確率分布を用いて物体識別を行なう場合について説明したが、確率分布でなく確率密度関数が用いられる場合においても、同様の処理が行なわれて物体識別が行なわれる。
【0125】
すなわち、予め用意された肌確率密度関数と、特定輝度の画素ごとに求められた、画素値がノイズ成分である確率の確率密度関数(以下、ノイズ確率密度関数とも称する)との畳み込み演算が行なわれる。そして、その演算により特定輝度の画素ごとに得られた、特定輝度の画素の各画素値が、ノイズが含まれている肌領域の画素の画素値である確率の確率密度関数(以下、ノイズ肌確率密度関数とも称する)が求められる。さらに、このようにして得られたノイズ肌確率密度関数と、注目画素の画素値Xとに基づいて確率F(X)が算出される。
【0126】
〈変形例1〉
なお、以上においては、処理対象画像上の1つの画素の輝度に応じてノイズ肌確率分布を選択し、注目画素が肌領域の画素であるかを識別すると説明したが、注目画素を含む領域の輝度に基づいてノイズ肌確率分布が選択されるようにしてもよい。
【0127】
そのような場合、図8のステップS53において、取得部82は、処理対象画像上の注目画素を含む所定の大きさのブロックから、注目画素と類似する画素を検出する。例えば、ブロック内の画素のうち、注目画素との画素値の距離(例えばユークリッド距離)が所定の閾値以下となる画素が検出される。
【0128】
そして、取得部82は、ブロック内から検出された画素と注目画素の輝度値の平均値を求め、求めた平均値により特定される輝度のノイズ肌確率分布を選択する。演算部83は、このようにして選択されたノイズ肌確率分布を用いて、注目画素が肌領域の画素である確率F(X)を求め、判定部84は、求められた確率から注目画素が肌領域の画素であるかの識別を行なう。
【0129】
〈変形例2〉
また、以上においては画素単位で識別が行なわれる例について説明したが、処理対象画像上の複数画素からなるブロック単位で識別が行なわれるようにしてもよい。
【0130】
そのような場合、例えば処理対象画像が複数のブロックに分割され、それらのブロックが順番に注目ブロックとして選択部81により選択されていく。そして、取得部82により注目ブロック内の画素の輝度値の平均値が求められ、得られた平均値により特定される輝度のノイズ肌確率分布が選択される。
【0131】
そして、このようにして選択されたノイズ肌確率分布が用いられて、演算部83により注目ブロックが肌領域である確率F(X)が求められ、求められた確率から注目ブロックが肌領域であるかの識別が判定部84により行なわれる。
【0132】
具体的には、演算部83は、注目ブロックの画素値の代表値を特徴空間上に写像して、写像された位置である観測点を求める。例えば、代表値は、注目ブロックの中心にある画素の画素値などとされる。そして、演算部83は、ノイズ肌確率分布において、特徴空間上の各位置に対応付けられている肌領域である確率のうち、観測点に対応付けられている確率を読み出して確率F(X)とする。
【0133】
〈変形例3〉
また、ブロック単位で識別が行なわれる場合に、注目ブロック内の中心にある画素(以下、注目画素と称する)と画素値が近い画素が用いられてブロックの平均輝度が求められるようにしてもよい。
【0134】
そのような場合、例えば取得部82により注目ブロック内の画素から、注目画素との画素値の距離(例えば、ユークリッド距離)が近い画素が検出され、検出された画素と注目画素の輝度値の平均値が算出される。そして、得られた平均値により特定される輝度のノイズ肌確率分布が取得部82により選択される。
【0135】
また、このようにして選択されたノイズ肌確率分布において、注目画素の画素値Xが特徴空間上に写像された位置である観測点に対応付けられている確率が、演算部83により読み出されて確率F(X)とされる。さらに、判定部84によって、読み出された確率に基づいて注目ブロックが肌領域であるかの識別が行なわれる。
【0136】
〈変形例4〉
さらに、ブロック単位で識別が行なわれる場合に、注目ブロック内の画素の支配的な輝度に基づいて、ノイズ肌確率分布が選択されるようにしてもよい。
【0137】
そのような場合、例えば取得部82により注目ブロック内の画素の輝度値のヒストグラムが生成され、ヒストグラムから注目ブロック内の支配的な輝度値が求められる。そして、求められた支配的な輝度により特定される輝度のノイズ肌確率分布が取得部82により選択される。
【0138】
また、このようにして選択されたノイズ肌確率分布において、注目ブロックの画素の画素値の代表値が特徴空間上に写像された位置である観測点に対応付けられている確率が、演算部83により読み出されて確率F(X)とされる。さらに、判定部84によって、読み出された確率に基づいて注目ブロックが肌領域であるかの識別が行なわれる。
【0139】
さらに、ノイズのない肌確率分布と、所定輝度のノイズ確率分布とを畳み込んでノイズ肌確率分布を求め、得られたノイズ肌確率分布について、肌の領域である確率が所定の閾値以上である特徴空間上の位置からなる領域を、肌である領域として記録部72に記録しておいてもよい。この場合、処理対象画像の各画素が肌領域の画素であるかの識別時においては、処理対象画像上の注目画素が、特徴空間において、記録部72に記録された肌である領域内にあるときには、注目画素は肌領域の画素であるとされる。逆に、注目画素が、特徴空間において、記録部72に記録された肌である領域外にあるときには、注目画素は肌領域の画素でないとされる。このように、肌である領域を予め記録しておくことで、ノイズ肌確率分布を記録しておく場合と比べて、記録部72の記録領域をより小さくすることができる。
【0140】
なお、以上において説明した変形例1乃至変形例4が上述した第1の実施の形態に適用されるようにしてもよい。例えば、変形例2乃至変形例4が第1の実施の形態に適用される場合には、注目画素を含むブロックを単位として、そのブロックが肌領域であるか否かの識別が行なわれる。
【0141】
ところで、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0142】
図9は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0143】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
【0144】
バス204には、さらに、入出力インターフェース205が接続されている。入出力インターフェース205には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部206、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部207、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記録部208、ネットワークインターフェースなどよりなる通信部209、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア211を駆動するドライブ210が接続されている。
【0145】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU201が、例えば、記録部208に記録されているプログラムを、入出力インターフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0146】
コンピュータ(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア211に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
【0147】
そして、プログラムは、リムーバブルメディア211をドライブ210に装着することにより、入出力インターフェース205を介して、記録部208にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記録部208にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記録部208に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0148】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0149】
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0150】
さらに、本技術は、以下の構成とすることも可能である。
【0151】
[1]
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置であって、
各画素値について予め求められた、画素値の真値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、所定の画素値について求められた前記真値の確率分布または確率密度関数を選択する選択部と、
予め求められた前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、前記選択部により選択された前記真値の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算を行なうことで、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算部と
を備える画像処理装置。
[2]
前記演算部により算出された前記確率に基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域であるかを識別する判定部をさらに備える
[1]に記載の画像処理装置。
[3]
前記真値の確率分布は画素値の真値の尤度に基づいて求められ、
前記演算部は、前記真値の確率分布と、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布との畳み込み演算を行なうことで前記確率を算出する
[1]または[2]に記載の画像処理装置。
[4]
前記真値の確率分布に対して線形補間処理を行なって、画素値の真値である確率を補間により求める補間処理部をさらに備える
[1]乃至[3]の何れかに記載の画像処理装置。
[5]
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置の画像処理方法であって、
各画素値について予め求められた、画素値の真値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、所定の画素値について求められた前記真値の確率分布または確率密度関数を選択する選択ステップと、
予め求められた前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、前記選択ステップの処理で選択された前記真値の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算を行なうことで、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算ステップと
を含む画像処理方法。
[6]
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理用のプログラムであって、
各画素値について予め求められた、画素値の真値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、所定の画素値について求められた前記真値の確率分布または確率密度関数を選択する選択ステップと、
予め求められた前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、前記選択ステップの処理で選択された前記真値の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算を行なうことで、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算ステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。
[7]
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置であって、
前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、所定輝度のノイズ成分の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算により画素の輝度ごとに予め求められた、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数を選択する選択部と、
前記選択部により選択された、前記特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数と、前記注目画素の画素値とに基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算部と
を備える画像処理装置。
[8]
前記演算部により算出された前記確率に基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域であるかを識別する判定部をさらに備える
[7]に記載の画像処理装置。
[9]
前記判定部は、前記注目画素を含む複数の画素からなるブロックを単位として、前記ブロックが前記特定物体の領域であるかを識別する
[8]に記載の画像処理装置。
[10]
前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布に対して線形補間処理を行なって、ノイズ成分の含まれている画素値である確率を補間により求める補間処理部をさらに備える
[7]乃至[9]の何れかに記載の画像処理装置。
[11]
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置の画像処理方法であって、
前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、所定輝度のノイズ成分の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算により画素の輝度ごとに予め求められた、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数を選択する選択ステップと、
前記選択ステップの処理で選択された、前記特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数と、前記注目画素の画素値とに基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算ステップと
を含む画像処理方法。
[12]
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理用のプログラムであって、
前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、所定輝度のノイズ成分の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算により画素の輝度ごとに予め求められた、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数を選択する選択ステップと、
前記選択ステップの処理で選択された、前記特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数と、前記注目画素の画素値とに基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算ステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0152】
11 識別装置, 23 識別部, 31 取得部, 32 選択部, 33 演算部, 34 判定部, 61 識別装置, 73 識別部, 81 選択部, 82 取得部, 83 演算部, 84 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置であって、
各画素値について予め求められた、画素値の真値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、所定の画素値について求められた前記真値の確率分布または確率密度関数を選択する選択部と、
予め求められた前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、前記選択部により選択された前記真値の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算を行なうことで、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記演算部により算出された前記確率に基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域であるかを識別する判定部をさらに備える
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記真値の確率分布は画素値の真値の尤度に基づいて求められ、
前記演算部は、前記真値の確率分布と、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布との畳み込み演算を行なうことで前記確率を算出する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記真値の確率分布に対して線形補間処理を行なって、画素値の真値である確率を補間により求める補間処理部をさらに備える
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置の画像処理方法であって、
各画素値について予め求められた、画素値の真値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、所定の画素値について求められた前記真値の確率分布または確率密度関数を選択する選択ステップと、
予め求められた前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、前記選択ステップの処理で選択された前記真値の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算を行なうことで、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算ステップと
を含む画像処理方法。
【請求項6】
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理用のプログラムであって、
各画素値について予め求められた、画素値の真値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、所定の画素値について求められた前記真値の確率分布または確率密度関数を選択する選択ステップと、
予め求められた前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、前記選択ステップの処理で選択された前記真値の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算を行なうことで、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算ステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項7】
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置であって、
前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、所定輝度のノイズ成分の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算により画素の輝度ごとに予め求められた、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数を選択する選択部と、
前記選択部により選択された、前記特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数と、前記注目画素の画素値とに基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算部と
を備える画像処理装置。
【請求項8】
前記演算部により算出された前記確率に基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域であるかを識別する判定部をさらに備える
請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記注目画素を含む複数の画素からなるブロックを単位として、前記ブロックが前記特定物体の領域であるかを識別する
請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布に対して線形補間処理を行なって、ノイズ成分の含まれている画素値である確率を補間により求める補間処理部をさらに備える
請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理装置の画像処理方法であって、
前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、所定輝度のノイズ成分の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算により画素の輝度ごとに予め求められた、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数を選択する選択ステップと、
前記選択ステップの処理で選択された、前記特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数と、前記注目画素の画素値とに基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算ステップと
を含む画像処理方法。
【請求項12】
複数の色成分の値からなり、ノイズ成分が含まれる画素値を有する画素からなる処理対象画像上の領域が、予め定められた特定物体の領域であるかを識別する画像処理用のプログラムであって、
前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれていない画素値の確率分布または確率密度関数と、所定輝度のノイズ成分の確率分布または確率密度関数との畳み込み演算により画素の輝度ごとに予め求められた、前記特定物体の画像の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数のなかから、前記処理対象画像の注目画素を含む領域に基づいて、特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数を選択する選択ステップと、
前記選択ステップの処理で選択された、前記特定輝度の画素のノイズ成分の含まれている画素値の確率分布または確率密度関数と、前記注目画素の画素値とに基づいて、前記注目画素を含む領域が前記特定物体の領域である確率を算出する演算ステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−73548(P2013−73548A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213866(P2011−213866)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】