説明

画像処理装置および方法

【課題】 複数の画像に対する結合処理が画像処理により妨げられることを防止することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、複数の画像を結合するための画像処理装置であって、前記複数の画像を結合する際の結合領域を取得する取得手段と、前記複数の画像の少なくとも一つに対して画像処理を行う画像処理手段と、前記画像処理手段による前記結合領域への画像処理を制限する制限手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画像を結合するための画像処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影画像を用いた医療診断では、一回の放射線画像撮影では撮影することが出来ない大きさの被写体の画像が必要になることがある。このような場合、被写体の部分ごとに放射線撮影を行い、得られた複数の放射線撮影画像を結合して一枚の放射線撮影画像を取得することが行われる。しかしながら、複数の放射線撮影画像を適切に結合するためには、ユーザーによるマニュアル操作のみでは困難な場合もある。よって、従来から、複数の放射線画像に対して結合領域の認識処理を行い、結合処理をガイドする手法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の放射線画像に対して結合領域の認識処理を行い、認識された結合領域に基づき、結合処理をガイドするためのマークを放射線画像に付与する技術が開示されている。
【0004】
また、放射線撮影画像を用いた医療診断以外の分野においても、複数の撮影画像に対して認識処理を行い、認識処理結果に基づきパノラマ画像の生成をガイドする手法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−94772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の画像の結合処理を適切にガイドするためには、結合領域の認識処理が所望の精度で行われる必要がある。しかしながら、結合処理の前処理として、複数の画像それぞれに対するマスク処理、階調調整、部分領域の切り出し処理などを行うことがある。このような前処理を行った場合、画像内の被写体認識が困難になり、結合領域の認識精度が低下してしまうことがある。加えて、結合処理後の結合部の画質が低下することもある。尚、ここでの結合領域とは、複数の画像の結合処理を行う際のつなぎ目となる領域である。
【0007】
また、ユーザーによるマニュアル操作で結合処理を行う場合であっても、前処理が行われた画像では結合領域が視認しにくくなることがある。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、複数の画像に対する結合処理が画像処理により妨げられることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の画像を結合するための画像処理装置であって、前記複数の画像を結合する際の結合領域を取得する取得手段と、前記複数の画像の少なくとも一つに対して画像処理を行う画像処理手段と、前記画像処理手段による前記結合領域への画像処理を制限する制限手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の画像に対する結合処理が画像処理により妨げられることを防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第一の実施形態における放射線画像処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図2】第一の実施形態におけるフローチャートを示す図である。
【図3】切り取り処理を行った場合の処理を示すフローチャートである。
【図4】結合処理用領域の強調表示の例を示す図である。
【図5】警告ダイアログの例を示す図である。
【図6】警告ダイアログの例を示す図である。
【図7】結合処理用領域の強調表示の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一の実施形態)
次に、図面を参照しながら、本実施の形態について説明する。図1は、本実施形態における放射線画像処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。尚、以下の機能構成の一部は、CPU(セントラルプロセッシングユニット)、コンピュータプログラムが格納されたRAM(ランダムアクセスメモリ)などを有するパーソナルコンピュータにより代替することが可能である。
【0013】
101は、デジタルX線撮影装置(放射線撮影装置)で撮影された複数の放射線撮影画像、撮影情報を放射線画像処理装置へ入力する画像入力部101である。入力手段として、ネットワークを介して入力される場合、CD−ROMやDVD−ROMなどの記録メディアを経由して入力される場合などがある。
【0014】
102は、画像入力部に入力された放射線撮影画像を保持する画像保持部102である。画像保持部102は、放射線画像を保持するためのハードディスクなどの記録装置から構成される。
【0015】
103は、放射線撮影画像や結合処理用領域を表示する画像表示部103である。画像表示部103は、CRTモニターや液晶モニターなどの表示装置から構成される。
【0016】
104は、画像表示部103に表示された放射線画像に対して、切り出し操作や警告の確認操作などの指示を入力する操作入力部104である。操作入力部104は、マウスやキーボードなどの一般的な入力装置から構成される。
【0017】
105は、画像保持部102に保持された放射線撮影画像の中から連続する複数の放射線撮影画像を選択するための画像選択部105である。画像選択部105は、あらかじめ設定された画像選択プログラムに基づき、複数の放射線画像を選択してもよい。また、操作入力部104と同様にマウスやキーボードなどにより構成され、ユーザーのマニュアル指示により画像を選択してもよい。
【0018】
106は、選択された複数の放射線撮影画像を結合する際に結合部となる結合領域を取得する結合領域取得部106である。本実施形態において、結合領域とは、例えば、複数の放射線撮影画像それぞれの重複している領域である。結合領域取得部106は、複数の放射線画像に含まれる撮影情報を用いて結合領域を特定しても良いし、複数の放射線画像それぞれに対して画像内の被写体認識処理を行い、結合領域を特定してもよい。
【0019】
107は、選択された複数の放射線撮影画像に対して画像処理を行う画像処理部107である。画像処理部107で行われる画像処理は、ユーザー指示に基づく切り出し処理、マスク処理、階調調整などである。
【0020】
108は、画像処理部107による画像処理を制限する制限部108である。制限部108は、画像処理部107による画像処理の対象領域が結合領域を含むか否かを判定する。そして、結合領域を含んでいると判定された場合は、結合領域内に画像処理が行われないように、画像処理部107による画像処理を制限する。例えば、結合領域内に対する切り出し処理、マスク処理、階調調整などを無効にする。また、結合領域内に対して画像処理の指示があった場合は、ユーザーに対して警告を行ってもよい。
【0021】
109は、複数の放射線画像を結合して、一枚の放射線画像に合成する画像合成部109である。
110は、各部101〜109を相互に接続するシステムバス110である。
【0022】
次に、図2に示すフローチャートを用いて、本実施形態における放射線画像処理装置の動作について具体的に説明する。尚、図2に示す処理および、後述する図3の各処理は、前述した放射線画像処理装置の各構成が行う処理である。
【0023】
(ステップS201)ステップS201では、画像選択部105が、画像記憶部102に保持された放射線画像の内、連続する複数の放射線画像を選択する。
【0024】
(ステップS202)ステップS202では、画像入力部101によって、画像情報を読み込む。画像情報には撮影時の位置情報などが含まれており、複数の画像の結合領域を求めることができる。尚、結合領域の求め方は、座標データからの特定に限るものではない。例えば、画像中におけるマーカの写り込みから結合領域を特定することも出来る。
【0025】
(ステップS203)ステップS203では、結合領域取得部106が、結合領域を取得する取得手段として機能し、読み込んだ画像情報から複数の画像の結合領域を特定する。尚、画像情報に含まれる位置情報から重複領域を求め、重複領域を結合領域として特定することも可能である。また、単純に重複領域を用いるのではなく、重複領域の内画像端の部分は画質劣化の可能性を考えて結合領域から除外してもよい。
【0026】
(ステップS204)ステップS204では、制限部108が、画像処理を制限する制限手段として機能し、結合領域に対する画像処理を制限する。前述の通り、画像処理の指示があったとしても、結合領域内に対する切り出し処理、マスク処理、階調調整などは無効にする。尚、ユーザーに対する警告として、画像表示部103に結合領域を強調表示してもよい。
【0027】
図4は、放射線撮影画像中の結合領域を強調表示した表示例を示す図である。図4において、402は放射線撮影画像401の結合領域402を示し、403は放射線撮影画像403の結合領域404を示している。図4では、結合処理用領域402、404を破線の枠で囲って表示している。他にも半透明枠や特定色で塗りつぶしてもよい。
【0028】
また、強調表示は矩形領域ではなく、図7に示すように放射線撮影画像701、703上に結合境界702、704として破線で表示することも可能である。さらに、強調表示は表示/非表示の切り替え設定を持つことも可能である。
【0029】
次に、図3に示すフローチャートを用いて、ステップS204における制限処理の具体的な処理フローを説明する。図3に示す処理フローは、ユーザー指示に基づく画像の切り取り処理があった場合の処理である。
【0030】
(ステップS301)ステップS301では、複数の放射線撮影画像の少なくいとも一つに対して、操作入力部104からの切り取り座標に関する入力を取得する。切り取り操作は、結合前の複数の放射線撮影画像のいずれかに対して行われる。
【0031】
(ステップS302)ステップS302では、制限部108が、入力された切り取り座標が結合領域(複数の放射線撮影画像の重複領域)を含んでいるか否かを判定する。結合領域を含んでいないと判定された場合は、ステップS303に処理を進める。結合領域を含んでいると判定された場合は、ステップS305に処理を進める。
【0032】
(ステップS303)ステップS303では、切り取り座標が結合領域を含んでいないと判定されているため、画像処理部107が画像処理手段として機能し、通常の切り取り処理を行う。切り取り処理後、ステップS304に処理を進める。
【0033】
(S304)ステップS304では、切り取り処理が行われた後であるため、画像表示部103に切り取り処理の処理結果を表示させる。
【0034】
(ステップS305)ステップS305では、切り取り座標が結合領域を含んでいると判定されているため、制限部108が切り取り処理を制限する。切り取り処理の制限では、切り取り処理を完全に無効としても良いし、切り取り処理が行われても後の結合処理に不都合が生じない一部領域に対しては、切り取り処理を許可してもよい。結合処理に不都合が生じない一部領域とは、例えば、結合領域外に対して画素値がほぼ変化していない領域などである(結合領域外に対する画素値の変化が所定値以下の領域)。尚、切り取り処理の制限に加えて、ユーザーに対する警告報知を行ってもよい。
【0035】
図5は、本実施形態における警告表示の例を示したものである。図5に示すように、ダイアログ501上に、処理が無効になる旨を表すメッセージ502と、確認用のボタン503を表示する。
【0036】
また、本実施形態では、ステップS305で切り取り処理を制限した。しかし、図6のようなダイアログ601のように処理を実行すると結合処理が正常に行われない可能性がある旨を表示するように表示制御602し、確認ボタン603とキャンセルボタン604を表示して切り取り処理を行っても良い。この時、確認ボタンが押下されるとステップS303に処理は移ることになる。また、警告手段として警告音を用いることも可能である。
【0037】
(その他の実施形態)
尚、上記第一の実施形態においては、複数の放射線撮影画像に対する結合処理に関して説明した。しかしながら、本発明は、放射線撮影画像に対する処理に限定されるものではなく、一般的な可視光を撮影するデジタルカメラで撮影した撮影画像からパノラマ画像を作成する場合に適用することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像を結合するための画像処理装置であって、
前記複数の画像を結合する際の結合領域を取得する取得手段と、
前記複数の画像の少なくとも一つに対して画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段による前記結合領域への画像処理を制限する制限手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記制限手段は、前記結合領域への前記画像処理が制限されている旨の報知を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記結合領域は、前記複数の画像内で重複している重複領域であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理は、前記複数の画像に対する切り出し処理、マスク処理、階調調整の少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記結合領域を強調表示する表示制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記制限手段は、前記結合領域へ前記画像処理が行われる場合、結合処理が正常に行われない可能性がある旨を報知することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
複数の画像を結合するための画像処理方法であって、
取得手段が、前記複数の画像を結合する際の結合領域を取得する取得工程と、
画像処理手段が、前記複数の画像の少なくとも一つに対して画像処理を行う画像処理工程と、
制限手段が、前記画像処理手段による前記結合領域への画像処理を制限する制限工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
複数の画像を結合するための画像処理装置であって、
前記複数の画像を結合する際の結合領域を取得する取得手段と、
前記複数の画像の少なくとも一つに対して画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段による前記結合領域への画像処理を制限する制限手段とを有することを特徴とする画像処理装置として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータを、
複数の放射線撮影画像を結合する画像処理装置であって、
前記複数の放射線撮影画像を結合する際の重複領域を取得する取得手段と、
前記重複領域と前記放射線撮影画像とを表示させる表示制御手段と、
前記複数の放射線撮影画像に対して画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段による前記重複領域への画像処理を制限する制限手段とを有することを特徴とする画像処理装置として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−48392(P2012−48392A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188657(P2010−188657)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】