説明

画像処理装置及び撮像装置

【課題】演算量の増大化を抑制するとともに継続して精度良く追尾物体を検出することを
可能とする画像処理装置や、この画像処理装置を備える撮像装置を提供する
【解決手段】追尾処理部60は、入力画像に探索領域を設定する探索領域設定部61と、
探索領域内の画像を解析する画像解析部62と、解析結果に基づいて予備追尾値を設定す
る予備追尾値設定部63と、解析結果に基づいて予備追尾値を設定するとともに設定して
いる追尾値の適否を判定する追尾値設定部64と、追尾値に基づいて探索領域内の画像か
ら追尾物体の検出を行う追尾対象検出部65と、を備える。追尾値設定部64は、設定し
ている追尾値が不適正である場合に、予備追尾値を追尾値として設定し直す切替動作を行
う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される画像を処理する画像処理装置や、この画像処理装置を備えた撮像
装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル方式の画像を撮像して記録する撮像装置や、画像を再生する再生装置が
広く普及している。これらの電子機器には、順次入力される画像の中から所定の被写体(
以下、追尾物体とする)を検出する追尾処理を行うものがある。当該検出結果は、撮像し
て記録する画像や再生する画像の処理に利用したり、焦点や露出などの撮像時の各種パラ
メータの制御などに利用したりすることができる。
【0003】
しかしながら、時々刻々と変化する入力画像中から、精度を良好に保ったまま継続して
追尾物体を検出することは困難なものとなる。
【0004】
そこで、特許文献1では、追尾物体が有する複数の色を認識するとともに、それぞれの
色の部位の位置関係なども合わせて把握し、これらを総合して追尾物体の検出を行うこと
としている。この方法によって追尾物体を検出すると、精度良く追尾物体を検出すること
が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−322178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の追尾物体の検出方法では、一度に多数の情報を処理する必要があ
る。そのため、処理が煩雑になり処理時間が増大したり、消費電力が増大したりすること
が問題となる。また、追尾物体を検出するための部位が物体などに遮られるなどした場合
、検出が困難になることも問題となる。
【0007】
そこで本発明は、演算量の増大化を抑制するとともに継続して精度良く追尾物体を検出
することを可能とする画像処理装置や、この画像処理装置を備える撮像装置を提供するこ
とを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の画像処理装置は、入力画像から追尾物体を検出する
追尾処理部を備える画像処理装置において、前記追尾処理部が、前記追尾物体を示す信号
値である追尾値を設定する追尾値設定部と、前記追尾物体を示すとともに前記追尾値とは
異なる信号値である予備追尾値を設定する予備追尾値設定部と、前記入力画像から前記追
尾値を有する画素を検出する追尾対象検出部と、を備え、前記追尾値設定部が、設定され
ている前記追尾値に替えて前記予備追尾値を新たな追尾値として設定し直す切替動作を実
行可能とすることを特徴とする
【0009】
また、上記構成の画像処理装置において、前記入力画像中に探索領域を設定する探索領
域設定部と、前記探索領域内の画素の信号値の度数分布を求める画像解析部と、をさらに
備え、前記予備追尾値設定部が、前記度数分布に基づいて前記予備追尾値を設定し、前記
追尾値設定部が、前記度数分布に基づいて前記追尾値及び前記予備追尾値の適否を判定す
るものであり、設定されている前記追尾値が不適正なものであると判定する場合に前記切
替動作を実行し、前記追尾対象検出部が、前記探索領域内の画像から前記追尾値を有する
画素を検出することとしても構わない。
【0010】
このように構成すると、設定されている追尾値による検出精度が劣化する場合に、切替
動作を行うことが可能となる。そのため、効率よく切替動作を行い、検出精度の改善を図
ることが可能となる。また、入力画像の探索領域に限って追尾物体の検出や予備追尾値の
設定を行うため、演算量を低減したり、追尾物体を示す信号値が予備追尾値として設定さ
れる可能性を向上させたりすることが可能となる。
【0011】
また、上記構成の画像処理装置において、前記探索領域設定部が、前記入力画像に対す
る前記追尾対象検出部の検出結果に基づいて、当該入力画像の次に入力される入力画像に
設定する前記探索領域の位置を決定しても構わない。
【0012】
また、前記追尾値の度数が前記度数分布中で最大のものではなく、前記予備追尾値の度
数がその周囲の他の信号値の度数よりも大きい場合に、前記追尾値設定部が、前記追尾値
が不適正であると判定しても構わない。また、前記予備追尾値の度数が前記度数分布中で
最大となる場合に、前記追尾値設定部が、前記追尾値が不適正であると判定しても構わな
い。
【0013】
また、上記構成の画像処理装置において、前記予備値設定部が、前記度数分布中の度数
が大きい信号値ほど優先して前記予備追尾値に設定することとしても構わない。
【0014】
このように構成すると、度数が大きく検出し易い信号値を優先的に予備追尾値として設
定することが可能となる。なお、上記のように設定されている追尾値と予備追尾値とは異
なる信号値となるため、度数が大きくても追尾値と略等しい信号値は、予備追尾値の候補
から除外される。
【0015】
また、上記構成の画像処理装置において、前記入力画像が前記追尾処理部に順次入力さ
れるとともに、前記画像解析部が前記度数分布を順次出力し、前記予備追尾値設定部が、
順次出力される前記度数分布について所定の回数以上連続して所定の閾値を超える度数を
有している信号値を、前記予備追尾値として設定することとしても構わない。
【0016】
このように構成すると、追尾物体が含まれる探索領域内の信号値の中でも、継続して検
出される度数が大きい信号値を、予備追尾値として設定することが可能となる。したがっ
て、追尾物体を示す信号値である可能性が高く精度良く検出することができる信号値を、
予備追尾値として設定することが可能となる。なお、所定の回数を大きくすることで、予
備追尾値が追尾物体を示す信号値となる可能性を高めることが可能となる。一方、所定の
回数を小さくすることで、迅速に予備追尾値を設定して、切替動作が必要となる場合に予
備追尾値が設定されていない状態が生じることを抑制することが可能となる。
【0017】
また、上記構成の画像処理装置において、前記予備追尾値設定部が、前記入力画像の背
景を示す信号値を除外して、前記予備追尾値を設定することとしても構わない。
【0018】
このように構成すると、度数分布中で背景を示す信号値の度数が大きくなる場合に、当
該信号値を除外して予備追尾値を設定することが可能となる。そのため、追尾物体を示す
信号値が予備追尾値として設定される可能性を高めることが可能となる。なお、前記画像
解析部が、前記探索領域とは異なる領域である背景領域内の画素の信号値の度数分布を出
力し、前記予備追尾値設定部が、当該度数分布に基づいて前記背景を示す信号値を特定す
ることとしても構わない。
【0019】
また、上記構成の画像処理装置において、前記画像解析部が、ある種類の信号値に基づ
いて第1の度数分布を求めるとともに他の種類の信号値に基づいて第2の度数分布を求め
、前記追尾値設定部が設定している前記追尾値が前記ある種類の信号値であるとき、前記
予備追尾値設定部が前記第2の度数分布に基づいて前記他の種類の信号値となる前記予備
追尾値を設定することとしても構わない。また、前記追尾値設定部が、前記第1の度数分
布に基づいて前記追尾値の適否を判定しても構わないし、さらに、前記第2の度数分布に
基づいて前記予備追尾値の適否をも判定することで、前記追尾値の適否を判定しても構わ
ない。
【0020】
このように構成すると、追尾値及び予備追尾値として設定される信号値の種類を異なら
せることが可能となる。即ち、切替動作の前後において、追尾対象検出部が検出する信号
値の種類を異ならせることが可能となる。そのため、様々な撮像環境下において撮像され
る入力画像に対しても、精度良く追尾物体の検出を行うことが可能となる。上記目的を達成するために本発明の他の画像処理装置は、入力画像から追尾物体を検出する追尾処理部を備える画像処理装置において、前記追尾処理部が、前記追尾物体の一部である第1追尾領域を示す信号を第1追尾信号として設定する第1追尾信号設定部と、前記追尾物体の一部であるとともに前記第1追尾領域とは異なる位置に存在する第2追尾領域を示す信号を第2追尾信号として設定する第2追尾信号設定部と、前記第1追尾信号又は前記第2追尾信号のいずれか一方を、追尾信号として設定する追尾信号設定部と、前記入力画像から前記追尾信号を検出することにより前記追尾物体を検出する追尾物体検出部と、を備えることを特徴とする。
また、上記構成の画像処理装置において、前記追尾処理部は、前記入力画像から前記第1追尾信号を検出する第1追尾信号検出部と、前記入力画像から前記第2追尾信号を検出する第2追尾信号検出部と、を更に備え、前記追尾信号設定部は、前記第1追尾信号検出部と前記第2追尾信号検出部による検出結果に応じて、前記第1追尾信号又は前記第2追尾信号のいずれか一方を、追尾信号として設定することとしても構わない。
上記目的を達成するために本発明の更に他の画像処理装置は、入力画像から追尾物体を検出する追尾処理部を備える画像処理装置において、前記追尾処理部が、前記追尾物体の一部である第1追尾領域を示す信号を追尾信号として設定する追尾信号設定部と、前記追尾物体の一部であるとともに前記第1追尾領域とは異なる位置に存在する第2追尾領域を示す信号を予備追尾信号として設定する予備追尾信号設定部と、前記入力画像から前記追尾信号を検出することにより前記追尾物体を検出する追尾物体検出部と、を備え、前記追尾信号設定部が、設定されている前記追尾信号に替えて前記予備追尾信号を新たな追尾信号として設定し直す切替動作を実行可能とすることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の撮像装置は、撮像により前記入力画像を生成する撮像部と、上記の画像
処理装置と、を備え、前記追尾処理部による前記追尾物体の検出結果に基づいた制御が行
われることを特徴とする。
【0022】
なお、追尾物体の検出結果に基づいた制御として、例えば、撮像部の焦点や絞りなどの
各種設定の制御を行っても構わないし、入力画像に対する画像処理の制御を行っても構わ
ない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、追尾物体を検出するための追尾値を、予備追尾値に切り替えることが
可能となる。そのため、切替前の追尾値による検出精度が悪かったとしても、予備追尾値
による検出精度が良いものであれば、継続して精度良く追尾物体を検出することが可能と
なる。また、追尾値と予備追尾値とを同時に用いることなく、切り替えて用いることとし
ているため、追尾物体の検出に要する演算量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】は、本発明の実施形態における撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】は、本発明の実施形態における撮像装置に備えられる追尾処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】は、本発明の実施形態における撮像装置に備えられる追尾処理部の動作を示すフローチャートである。
【図4】は、入力画像及び画像解析結果の一例を示す図である。
【図5】は、予備追尾値の設定方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】は、追尾値が適正である場合の入力画像及び画像解析結果の一例を示す図である。
【図7】は、追尾値が不適正である場合の入力画像及び画像解析結果の一例を示す図である。
【図8】は、図7に示す入力画像の次のフレームの入力画像の一例と、当該入力画像から得られる画像解析結果の一例とを示す図である。
【図9】は、第1変形例について説明する入力画像及び画像解析結果の一例を示す図である。
【図10】は、第2変形例について説明する入力画像及び画像解析結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。最初に、本発明における
撮像装置の一例について説明する。なお、以下に説明する撮像装置は、デジタルカメラな
どの音声、動画及び静止画の記録が可能なものである。
【0026】
<<撮像装置>>
まず、撮像装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態
における撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、撮像装置1は、入射される光学像を電気信号に変換するCCD(Ch
arge Coupled Device)またはCMOS(Complimentary Metal Oxide Semiconductor)セ
ンサなどの固体撮像素子から成るイメージセンサ2と、被写体の光学像をイメージセンサ
2に結像させるとともに光量などの調整を行うレンズ部3と、を備える。レンズ部3とイ
メージセンサ2とで撮像部が構成され、この撮像部によって画像信号が生成される。なお
、レンズ部3は、ズームレンズやフォーカスレンズなどの各種レンズ(不図示)や、イメ
ージセンサ2に入力される光量を調整する絞り(不図示)などを備える。
【0028】
さらに、撮像装置1は、イメージセンサ2から出力されるアナログ信号である画像信号
をデジタル信号に変換するとともにゲインの調整を行うAFE(Analog Front End)4と
、入力される音声を電気信号に変換する集音部5と、AFE4から出力されるR(赤)G
(緑)B(青)のデジタル信号となる画像信号をY(輝度信号)U,V(色差信号)を用
いた信号に変換するとともに画像信号に各種画像処理を施す画像処理部6と、集音部5か
ら出力されるアナログ信号である音声信号をデジタル信号に変換する音声処理部7と、画
像処理部6から出力される画像信号に対してJPEG(Joint Photographic Experts Gro
up)圧縮方式などの静止画用の圧縮符号化処理を施したり画像処理部6から出力される画
像信号と音声処理部7からの音声信号とに対してMPEG(Moving Picture Experts Gro
up)圧縮方式などの動画用の圧縮符号化処理を施したりする圧縮処理部8と、圧縮処理部
8で圧縮符号化された圧縮符号化信号を記録する外部メモリ10と、画像信号を外部メモ
リ10に記録したり読み出したりするドライバ部9と、ドライバ部9において外部メモリ
10から読み出した圧縮符号化信号を伸長して復号する伸長処理部11と、を備える。ま
た、画像処理部6は、入力される画像信号から追尾物体を検出する追尾処理を行う追尾処
理部60を備える。なお、追尾処理部60の構成の詳細については後述する。
【0029】
また、撮像装置1は、伸長処理部11で復号された画像信号をディスプレイなどの表示
装置(不図示)で表示可能な形式の信号に変換する画像出力回路部12と、伸長処理部1
1で復号された音声信号をスピーカなどの再生装置(不図示)で再生可能な形式の信号に
変換する音声出力回路部13と、を備える。
【0030】
また、撮像装置1は、撮像装置1内全体の動作を制御するCPU(Central Processing
Unit)14と、各処理を行うための各プログラムを記憶するとともにプログラム実行時
の信号の一時保管を行うメモリ15と、撮像を開始するボタンや各種設定の決定を行うボ
タンなどのユーザからの指示が入力される操作部16と、各部の動作タイミングを一致さ
せるためのタイミング制御信号を出力するタイミングジェネレータ(TG)部17と、C
PU14と各部との間で信号のやりとりを行うためのバス回線18と、メモリ15と各部
との間で信号のやりとりを行うためのバス回線19と、を備える。
【0031】
なお、外部メモリ10は画像信号や音声信号を記録することができればどのようなもの
でも構わない。例えば、SD(Secure Digital)カードのような半導体メモリ、DVDな
どの光ディスク、ハードディスクなどの磁気ディスクなどをこの外部メモリ10として使
用することができる。また、外部メモリ10を撮像装置1から着脱自在としても構わない

【0032】
次に、撮像装置1の基本動作について図1を参照して説明する。まず、撮像装置1は、
レンズ部3より入射される光をイメージセンサ2において光電変換することによって、電
気信号である画像信号を取得する。そして、イメージセンサ2は、TG部17から入力さ
れるタイミング制御信号に同期して、所定のフレーム周期(例えば、1/30秒)で順次
AFE4に画像信号を出力する。そして、AFE4によってアナログ信号からデジタル信
号へと変換された画像信号は、画像処理部6に入力される。画像処理部6では、画像信号
がYUVを用いた信号に変換されるとともに、階調補正や輪郭強調等の各種画像処理が施
される。また、メモリ15はフレームメモリとして動作し、画像処理部6が処理を行なう
際に画像信号を一時的に保持する。
【0033】
また、このとき画像処理部6に入力される画像信号に基づき、レンズ部3において、各
種レンズの位置が調整されてフォーカスの調整が行われたり、絞りの開度が調整されて露
出の調整が行われたりする。このフォーカスや露出などの各種調整は、それぞれ最適な状
態となるように所定のプログラムに基づいて自動的に行われたり、ユーザの指示に基づい
て手動で行われたりする。また、追尾処理部60は、画像処理部6に入力される画像信号
に対して追尾処理を行う。なお、追尾処理部60の動作の詳細については後述する。
【0034】
動画を記録する場合であれば、画像信号だけでなく音声信号も記録される。集音部5に
おいて電気信号に変換されて出力される音声信号は音声処理部7に入力されてデジタル化
されるとともにノイズ除去などの処理が施される。そして、画像処理部6から出力される
画像信号と、音声処理部7から出力される音声信号と、はともに圧縮処理部8に入力され
、圧縮処理部8において所定の圧縮方式で圧縮される。このとき、画像信号と音声信号と
は時間的に関連付けられており、再生時に画像と音とがずれないように構成される。そし
て、圧縮された画像信号及び音声信号はドライバ部9を介して外部メモリ10に記録され
る。
【0035】
一方、静止画や音声のみを記録する場合であれば、画像信号または音声信号が圧縮処理
部8において所定の圧縮方法で圧縮され、外部メモリ10に記録される。なお、動画を記
録する場合と静止画を記録する場合とで、画像処理部6において行われる処理を異なるも
のとしても構わない。
【0036】
外部メモリ10に記録された圧縮後の画像信号及び音声信号は、ユーザの指示に基づい
て伸長処理部11に読み出される。伸長処理部11では、圧縮された画像信号及び音声信
号を伸長し、画像信号を画像出力回路部12、音声信号を音声出力回路部13にそれぞれ
出力する。そして、画像出力回路部12や音声出力回路部13において、表示装置やスピ
ーカで表示または再生可能な形式の信号に変換されて出力される。
【0037】
なお、表示装置やスピーカは、撮像装置1と一体となっているものでも構わないし、別
体となっており、撮像装置1に備えられる端子とケーブル等を用いて接続されるようなも
のでも構わない。
【0038】
また、画像信号の記録を行わずに表示装置などに表示される画像をユーザが確認する、
いわゆるプレビューモードである場合に、画像処理部6から出力される画像信号を圧縮せ
ずに画像出力回路部12に出力することとしても構わない。また、記録する画像が動画像
であるか静止画像であるかを問わず、プレビューモードである場合に、追尾処理部60が
追尾処理を行うこととしても構わない。
【0039】
また、動画の画像信号を記録する際に、圧縮処理部8で圧縮して外部メモリ10に記録
するのと並行して、画像出力回路部12を介して表示装置などに画像信号を出力すること
としても構わない。
【0040】
<<追尾処理部>>
次に、図1に示した追尾処理部60の構成について図面を参照して説明する。図2は、
本発明の実施形態における撮像装置に備えられる追尾処理部の構成を示すブロック図であ
る。なお、以下では説明の具体化のために、追尾処理部60に入力されて追尾処理が行わ
れる画像信号を画像として表現するとともに、「入力画像」と呼ぶこととする。また、追
尾すべき被写体を追尾物体と呼び、追尾物体の一部分であり追尾処理部60によって検出
が行われる特徴部分を追尾対象と呼ぶこととする。
【0041】
追尾処理部60は、入力画像に探索領域を設定して探索領域情報を生成し出力する探索
領域設定部61と、入力画像の探索領域情報が示す探索領域中の画像を解析して画像解析
情報を生成し出力する画像解析部62と、必要に応じて画像解析情報に基づき予備追尾値
を設定して予備追尾値情報を生成し出力する予備追尾値設定部63と、予備追尾値情報と
画像解析情報とに基づいて追尾値を設定して追尾値情報を生成し出力する追尾値設定部6
4と、入力画像の探索領域情報が示す探索領域中の画像から追尾値情報が示す追尾値とな
る部分を検出することで追尾対象を検出して追尾対象情報を生成し出力する追尾対象検出
部65と、を備える。
【0042】
外部から入力される追尾対象指定情報や、追尾対象検出部65から出力される追尾対象
情報は、探索領域設定部61に入力され、探索領域の設定に利用される。また、追尾値設
定部64は、画像解析情報に基づいて設定した追尾値と予備追尾値情報が示す予備追尾値
とを自機やメモリ15などに保持し、画像解析情報に応じて追尾値の切り替えを行う。
【0043】
また、追尾対象検出部65から出力される追尾対象情報は、入力画像中の追尾対象の位
置(即ち、追尾物体の位置)を示すものとなる。撮像装置1は、この追尾対象情報に基づ
いて種々の処理を行う。例えば、焦点や露出などの撮像部の設定制御や、入力画像の画像
処理などを行う。
【0044】
また、追尾処理部60の動作について図面を参照して説明する。図3は、本発明の実施
形態における撮像装置に備えられる追尾処理部の動作を示すフローチャートである。
【0045】
図3に示すように、追尾処理部60は、最初に入力画像の取得を行い(STEP1)、
追尾対象の指定を行う(STEP2)。なお、STEP1の入力画像の取得を、STEP
2で追尾対象が指定されるまで繰り返し行われることとし、最新の入力画像から追尾対象
が指定されるようにしても構わない。
【0046】
STEP2の追尾対象の指定は、例えば、撮像装置1に備えられる表示装置などに表示
される入力画像を確認したユーザが直接的に指定することによって行われるものであって
も構わないし、プログラムなどによって自動的に指定されることによって行われるもので
あっても構わない。また、プログラムなどによって指定された複数の追尾対象候補からユ
ーザが選択することによって行われるものであっても構わない。
【0047】
ユーザが追尾対象を指定する場合、例えば、カーソルキーやタッチパネルなどから成る
操作部16をユーザが操作することによって、追尾対象を指定することとしても構わない
。また、プログラムによって追尾対象やその候補を指定する場合、例えば、入力画像に対
して不特定の顔を検出する顔検出処理や特定の顔を検出する顔認識処理を行い、検出され
た顔を有する追尾物体の一部(例えば、検出した顔の眉間から口に向かう方向に存在する
領域である胴体領域)を、追尾対象やその候補として指定することとしても構わない。顔
検出や顔認識の方法として、周知の種々の技術を適用することが可能である。例えば、Ad
aboost(Yoav Freund, Robert E. Schapire,"A decision-theoretic generalization of
on-line learning and an application to boosting", European Conference on Computa
tional Learning Theory, September 20,1995.)を利用して大量の教師サンプル(顔及
び非顔のサンプル画像)から作成した重みテーブルと、入力画像と、を比較することで顔
検出や顔認識を行うこととしても構わない。
【0048】
上述のような方法で指定された追尾対象の情報は、追尾対象指定情報として探索領域設
定部61に入力される。探索領域設定部61は、追尾対象指定情報によって指定される追
尾対象の周囲に探索領域を設定する(STEP3)。例えば、追尾対象を中心とした所定
の大きさの領域を、探索領域として設定する。なお、追尾対象指定情報が、追尾対象の位
置(例えば重心位置)と、追尾対象の大きさの情報とを含むものとしても構わない。さら
に、探索領域を、追尾対象の大きさに応じた大きさ(例えば、追尾対象が十分に包含され
得る大きさ)であり、追尾対象の重心位置を中心とした領域としても構わない。また、探
索領域の形状はどのようなものであっても構わない。例えば、後述するような矩形状とし
ても構わないし、正円や楕円などの円形状としても構わない。
【0049】
STEP3で設定された探索領域は、探索領域設定部61から探索領域情報として出力
される。そして、画像解析部62が、探索領域情報が示す探索領域内の画像について解析
を行う(STEP4)。例えば、探索領域に含まれる画素の信号値(追尾値と同じ種類の
値)をヒストグラム化することで、解析を行う。このヒストグラム(度数分布)を用いた
画像解析結果の一例を、図4を参照して説明する。図4は、入力画像及び画像解析結果の
一例を示す図である。図4(a)は、探索領域が設定された入力画像の一例を示す図であ
り、図4(b)は、図4(a)の探索領域内の画像から得られる信号値のヒストグラムで
ある。
【0050】
追尾値及び信号値は、どのような種類の値(例えば、RGBの各値や輝度値、H(色相
)S(彩度)V(明度)で表される信号のHの値)を用いても構わないが、以下では説明
の具体化のため、色相値(以下、単に色とも呼ぶ)を用いる場合を例に挙げて説明する。
また、以下の説明では色相値を角度などの値ではなく、単純な色の種類(例えば、黄色、
緑色、青色など)を用いて簡易的に表現するものとする。
【0051】
図4(a)に示す入力画像40では、追尾物体である人物A1のズボンの周辺部分が追
尾対象として指定され、当該部分に矩形状の探索領域41が設定されている。また、人物
A1のズボンの色は黄色Ye、上着の色は緑色Gである。さらに、入力画像40には人物
A2も含まれており、人物A2の上着及びズボンの色はともに青色Bである。このとき、
探索領域内41内の各画素の色のヒストグラムが、図4(b)に示すようになる。具体的
には、黄色Yeを示す画素が最も多く、緑色Gを示す画素が次に多いことを示すヒストグ
ラムが得られる。画像解析部62は、このようなヒストグラムの情報を生成し、画像解析
情報として出力する。
【0052】
追尾値設定部64は、画像解析情報が示すヒストグラムに基づいて追尾値を設定する(
STEP5)。追尾値設定部64は、例えばヒストグラム中で最も度数が多い色(図4(
b)では黄色Ye)を追尾値として設定する。なお、ユーザにより直接指示された色を追
尾値として設定しても構わない。また、設定された追尾値は、追尾値設定部64やメモリ
15などに保持される。
【0053】
STEP5において追尾値が設定されると、次のフレームの入力画像の取得が行われる
(STEP6)。そして、探索領域設定部61が、STEP3と同様に取得した入力画像
に対して探索領域を設定する(STEP7)。例えば、直前の入力画像で指定または検出
された追尾対象の位置や大きさに基づいて、探索領域が設定される。そして、画像解析部
62が、STEP4と同様に入力画像の探索領域内の画像に対して解析を行い、画像解析
情報を出力する(STEP8)。
【0054】
ここで、予備追尾値が設定されていなければ(STEP9、NO)、予備追尾値設定部
63が画像解析情報に基づいて予備追尾値の設定を行う(STEP10)。そして、追尾
値設定部64が、現状で設定している追尾値(例えば黄色Ye)を追尾値情報として追尾
対象検出部65に出力する。追尾対象検出部65は、入力画像の探索領域中から追尾値を
有する画素を検出することで、追尾対象の検出を行う(STEP13)。
【0055】
STEP10の予備追尾値の設定方法の一例について、図面を参照して説明する。図5
は、予備追尾値の設定方法の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、最初
に予備追尾値設定部63が、例えば図4(b)に示すようなヒストグラムに基づいて、候
補値の有無を確認する(STEP101)。候補値は、例えば現状で設定されている追尾
値(黄色Ye)を除いて最も度数が大きい信号値や、所定の閾値よりも度数が大きい信号
値である。図4(b)に示す例では、緑色Gが候補値に該当する。候補値が無ければ(S
TEP101、NO)、予備追尾値を設定せずに終了する。一方、候補値があれば(ST
EP101、YES)、当該候補値がn回連続して確認されているか否かを確認する(S
TEP102)。n回連続で確認されていなければ(STEP102、NO)、予備追尾
値を設定せずに終了する。n回連続で確認されていれば(STEP102、YES)、当
該候補値を予備追尾値として設定し(STEP103)、予備追尾値情報を追尾設定部6
4に出力して終了する。なお、図5は一つの入力画像に対する処理を示したものであり、
STEP103で予備追尾値が設定されるまで、図5の動作は繰り返し行われることとす
る。また、nは自然数である。
【0056】
一方、予備追尾値が設定されている場合(STEP9、YES)、追尾値設定部64が
、画像解析情報に基づいて、現状で設定している追尾値が適正か否かを判定する(STE
P11)。追尾値の適否の判定方法の一例について、図面を参照して説明する。図6は、
追尾値が適正である場合の入力画像及び画像解析結果の一例を示す図であり、図7は、追
尾値が不適正である場合の入力画像及び画像解析結果の一例を示す図である。なお、図6
及び図7は、入力画像及び画像解析結果の一例について示した図4と同様のものである。
即ち、入力画像60,70中に人物A1,A2が含まれ、人物A1が追尾物体であり、設
定されている追尾値は黄色Yeである。なお、図6及び図7では、緑色Gが予備追尾値と
して設定されているものとする。
【0057】
図6(a)に示す入力画像60では、探索領域61中に人物A2が侵入することで、追
尾値である黄色Yeのズボンの一部が遮られている。しかしながら、図6(b)に示すヒ
ストグラムでは、追尾値である黄色Yeの度数が依然として最大となっており、黄色Ye
の度数は予備追尾値の緑色Gの度数よりも大きい。このような場合、現状で設定されてい
る追尾値は適正であると判定し(STEP11、YES)、追尾値の切替を行うことなく
追尾対象の検出を行う(STEP13)。
【0058】
これに対して、図7(a)に示す入力画像70では、探索領域71に人物A2が侵入す
ることで、追尾値である黄色Yeのズボンの大部分が遮られている。そのため、図7(b
)に示すヒストグラムでは、追尾値である黄色Yeの度数が最大ではなくなっている。一
方、予備追尾値である緑色Gの度数は、ある程度の大きさを保っており検出し易いものと
なっている。このような場合、現状で設定されている追尾値を不適正と判定し(STEP
11、NO)、予備追尾値を追尾値に切り替える(STEP12)。即ち、追尾値を緑色
Gに切り替えて設定する。そして、新たに設定した追尾値を用いて追尾対象の検出を行う
(STEP13)。
【0059】
STEP13では、追尾対象検出部65が、各画素の信号値が追尾値であるか否かを判
定することで追尾対象を検出し、追尾対象情報を出力する。例えば、ISODATA(In
teractive Self Organization of Data)法などの種々の公知のアルゴリズムを用いて、
信号値が追尾値となるグループと追尾値とならないグループとに分類することで追尾対象
を検出しても構わない。例えばこの場合、複数の中心値を与え、どの中心値に近いかに基
づいてそれぞれの信号値を仮分類し、不適なグループ(所属する信号値が少ない、分散が
大きいなど)の排除(結合や分割など)をしつつ仮分類後のそれぞれのグループの信号値
から新たに中心値を設定し、さらに仮分類を繰り返し行うことで分類を行っても構わない
。なお、追尾値と、追尾値とみなせる範囲を示す類似度とを設定することで、各画素の信
号値を分類しても構わない。また、信号値が追尾値であるとされたグループの画素の重心
位置を追尾対象の位置としても構わなく、信号値が追尾値であるとされたグループの画素
が広がる領域を追尾対象の大きさとしても構わない。また、これらの情報を追尾対象情報
に含めても構わない。
【0060】
STEP13で追尾対象の検出を行った後、追尾処理を終了するか否かの確認が行われ
る(STEP14)。ユーザなどから追尾処理を終了する旨の指示が入力されていれば(
STEP14、YES)、追尾処理を終了する。一方、追尾処理を終了する指示が入力さ
れていなければ(STEP14、NO)、STEP6に戻って次フレームの入力画像を取
得し、当該入力画像に対して上記の処理(STEP7〜STEP13)を行う。このよう
に、順次取得する入力画像に対して追尾処理が行われる。
【0061】
ここで、次フレームの入力画像に対する追尾処理の一例について、図8を参照して説明
する。図8は、図7に示す入力画像の次のフレームの入力画像の一例と、当該入力画像か
ら得られる画像解析結果の一例とを示す図である。なお、上述のように、図7(a)に示
す入力画像70の探索領域71内の画像に対して、追尾値を緑色Gとして追尾対象の検出
が行われた場合について説明する。
【0062】
図7に示す場合において、緑色Gを追尾値として追尾対象の検出を行うと、主に探索領
域71内の上部の画素が、追尾対象を示す画素として検出される。上述した方法と同様に
、検出された追尾対象を中心として探索領域が設定されるとすると、図8(a)に示す入
力画像80に対して設定される探索領域81は、図7の探索領域71よりも上方の位置と
なる。即ち、設定される探索領域81は、追尾値である緑色Gを示す画素が集まっている
上着の部分に近づいたものとなる。
【0063】
図8(a)に示すような探索領域81が設定されると、図8(b)に示すヒストグラム
のように、新たに設定した追尾値である緑色Gの度数が大きいものとなる。そのため、精
度良く追尾対象を検出することが可能となる。なお、以降の追尾処理においても、STE
P10と同様の方法で予備追尾値が設定される。そして、設定されている追尾値(緑色G
)が不適正なものとなれば(検出が困難になれば)、設定された予備追尾値を追尾値とす
る切替動作が行われる。
【0064】
以上のように、本例の追尾処理部60は、追尾対象を検出するために設定する追尾値の
他に予備追尾値を設定し、予備追尾値を追尾値に切替可能とする。これにより、追尾対象
が何らかの物体によって遮られるなどして、設定されている追尾値の画素を検出すること
が困難になったとしても、予備追尾値を追尾値に切り替えて別の追尾対象(即ち、同一の
追尾物体の別の特徴部分)を検出することとして、継続して精度良い検出が行われること
を可能にする。
【0065】
また、追尾値及び予備追尾値を同時に用いて追尾処理を行わず、必要に応じて切り替え
る構成とするため、追尾対象の検出に必要な演算量が増大することを抑制することが可能
となる。したがって、動作の迅速化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0066】
なお、図5に示す予備追尾値を設定する際のパラメータnは、どのような数としても構
わないが、以下の観点に応じて適宜設定すると好ましい。nを大きくすると、探索領域内
に連続的かつ長期間継続的に含まれる信号値が予備追尾値となるため、予備追尾値が追尾
物体の特徴部分を示すものとなる可能性を高くすることが可能となる。また、撮像状況の
変化に強く、精度良く検出することができる信号値を予備追尾値として設定することが可
能となる。一方、nを小さくすると、迅速に予備追尾値を設定することが可能となる。そ
のため、追尾値の切替が必要となった場合に、予備追尾値が未だ設定されていないという
状況が発生することを抑制することが可能となる。なお、nを状況に応じて変更可能な構
成としても構わない。
【0067】
また、図3のSTEP11における追尾値の適否の判定について、追尾値の度数が最大
ではなくなるまたは所定の値よりも小さくなり、予備追尾値の度数が最大となるまたは所
定の値よりも大きくなる場合に、追尾値を不適正と判定してSTEP11の追尾値の切替
を行うこととしても構わない。また、予備追尾値の度数が追尾値の度数よりも大きくなっ
た場合に、追尾値が不適正であると判定しても構わない。また、追尾値や予備追尾値が、
周囲の信号値の度数と比較して突出して大きいものとなっているか否か(即ち、検出しや
すいか否か)を考慮して、適否の判定を行っても構わない。不適正の判定はどのように行
っても構わないが、概ね探索領域内において追尾値が支配的な値ではなくなり、予備追尾
値が支配的な値となった場合に、追尾値が不適正であると判定する。
【0068】
また、予備追尾値を複数設定しても構わない。例えば、候補値が複数存在する場合、当
該複数の候補値の全てまたは一部を予備追尾値としても構わない。また、設定した複数の
予備追尾値に優先順位を付けても構わないし、追尾値の切替を行う段階で、最も追尾値に
相応しい予備追尾値を選択して追尾値としても構わない。
【0069】
(第1変形例)
上述の例では、追尾値及び予備追尾値のみを設定する場合について説明したが、さらに
他の値を設定する構成としても構わない。この場合の一例を、図9を参照して説明する。
図9は、第1変形例について説明する入力画像及び画像解析結果の一例を示す図であり、
入力画像及び画像解析結果の一例について示した図4と同様のものである。即ち、入力画
像90中に人物A1,A2が含まれ、人物A1が追尾物体であり、追尾値は黄色Ye、予
備追尾値は緑色Gである。また、本例では背景が一様の色相値であり水色Cyであるもの
とする。
【0070】
本例の場合、例えば図9(b)に示すように、画像解析部62が、探索領域91のヒス
トグラムだけでなく、背景領域92のヒストグラムをも生成する。また、予備追尾値設定
部63が、これらのヒストグラムに基づいて予備追尾値の設定を行う。なお、図9(a)
に示すように、背景領域92を、探索領域91とその周囲の領域とを含む領域であり中心
を背景領域92と略等しくする領域としても構わない。
【0071】
図9(b)の探索領域91のヒストグラムでは、最も度数が大きい信号値が黄色Ye、
次に度数が大きい信号値が水色Cy、さらに次に度数が大きい信号値が緑色Gとなる。こ
こで、2番目に大きい信号値である水色Cyが候補値となり、n回連続で確認されてしま
うと、背景の信号値である水色Cyが予備追尾色として設定されてしまう(図5、STE
P101〜103)。そして、背景の信号値である水色Cyが追尾値に切り替えられて設
定されてしまうと(図3、STEP12)、追尾対象検出部65が背景を検出することと
なり、追尾物体A1を検出することが困難となる。
【0072】
そこで本例では、予備追尾値を設定する際に背景領域92のヒストグラムを参照して、
背景の信号値(以下、背景値とする)を求めるとともに候補値から背景値を除外する。図
9(b)に示す場合であれば、背景領域92のヒストグラムで最も度数が大きい信号値で
ある水色Cyが背景値として設定され、候補値から除外される。
【0073】
本例のように構成することによって、背景値が予備追尾値として設定されることを抑制
することが可能となる。そのため、追尾対象検出部65が誤って背景を検出することが抑
制され、追尾処理の精度を向上させることが可能となる。
【0074】
なお、図3のSTEP5で追尾値を設定する際に、本例の方法を採用しても構わない。
特に、探索領域91の中で最も大きい度数の信号値を追尾値として設定する場合、誤って
背景値を追尾値として設定することを抑制することができる。そのため、このような場合
に本例の方法を採用して追尾値を設定すると、好適である。
【0075】
また、背景領域92を、探索領域91と同様の矩形状としたが、探索領域91と異なる
形状としても構わない。また、入力画像90に対する背景領域92の設定方法は、図9に
示す例の場合に限られず、どのように設定しても構わない。例えば、入力画像90全体の
領域、入力画像90全体から探索領域91を除いた領域、入力画像90全体から中央部の
所定の領域を除いた領域、などのように、他の方法で背景領域を設定しても構わない。
【0076】
(第2変形例)
上述の例では、追尾値及び予備追尾値がともに色相値である場合について説明したが、
信号値の種類を異ならせることも可能である。この場合の一例を、図10を参照して説明
する。図10は、第2変形例について説明する入力画像及び画像解析結果の一例を示す図
であり、入力画像及び画像解析結果の一例について示した図4と同様のものである。即ち
、入力画像100中に人物A1,A2が含まれ、人物A1が追尾物体であり、追尾値は黄
色Yeである。
【0077】
本例の場合、画像解析部62が、信号値の種類が異なる複数のヒストグラムを生成する
。例えば図10(b)に示すように、色相値のヒストグラムと、輝度値のヒストグラムと
、をそれぞれ生成する。またこの場合、追尾値の信号値の種類が色相値であれば、予備追
尾値の信号値の種類は輝度値となる。
【0078】
本例では、それぞれのヒストグラムに基づいて、独立して追尾値及び予備追尾値を設定
することができる。例えば、それぞれのヒストグラムで最も度数が大きい信号値を追尾値
または予備追尾値として設定しても構わないし、度数が周囲の信号値よりも突出している
信号値を追尾値または予備追尾値として設定しても構わない。また、生成するヒストグラ
ムの性質(即ち、信号値の種類)に応じて、異なる設定方法を用いて追尾値及び予備追尾
値を設定しても構わない。また、予備追尾値を設定する際に、上述したようにn回連続で
確認された信号値を予備追尾値として設定しても構わない。
【0079】
本例のように構成すると、ある種類の信号値を用いた追尾対象の検出が困難であるとき
に、別の種類の信号値を用いた検出に切り替えることが可能となる。例えば、輝度値の変
化が激しい撮像環境下で、追尾対象の輝度値を特定し難い場合に、色相値を用いた検出に
切り替えることができる。また例えば、追尾物体の色相値が周囲の色相値と略等しく、追
尾対象の検出が困難である場合に、輝度値を用いた検出に切り替えることができる。した
がって、様々な撮像環境下においても精度良く検出を行うことが可能となる。
【0080】
(その他変形例)
なお、追尾値及び予備追尾値として設定され得る信号値の種類は、色相値に限られない
。例えば輝度値や、RGBのいずれかの値や、RGBを組み合わせた値など、どのような
種類の信号値を用いても構わない。
【0081】
また、画素の信号値や追尾値、予備追尾値を低階調化しても構わない。低階調化するこ
とにより、わずかな信号値の差異を無視することができるようになるため、容易
に追尾対
象の検出を行うことが可能となる。また、検出に用いる信号値の種類に応じて、低階調化
する程度を決定しても構わない。
【0082】
また、上述の追尾処理部60から出力される追尾対象情報に基づいて、画像の切り出し
を行うこととしても構わない。例えば、撮像部が広角の入力画像を作成するとともに、画
像処理部6が入力画像から追尾対象(追尾物体)を含む所定の領域を切り出すことで、所
望の構図となる画像を作成することとしても構わない。このように画像の切り出しを行う
こととすると、ユーザが、撮像したいと考える追尾物体に撮像装置1を簡易的に向けるだ
けで、所望の構図となる画像を得ることが可能となる。そのため、ユーザが撮像に注力す
る必要を低減することが可能となる。
【0083】
また、追尾処理を撮像装置が(撮像時に)行う場合について説明したが、再生装置が(
再生時に)行うこととしても構わない。例えば、再生すべき画像中から追尾対象を検出し
、検出結果に応じた画像処理を当該再生すべき画像に施して再生を行う場合などに、本例
を適用することができる。特に、再生すべき画像に対して上記のような画像の切り出しを
行う場合などに、本例を利用しても構わない。
【0084】
また、本発明の実施形態における撮像装置1について、画像処理部6や追尾処理部60
などの動作を、マイコンなどの制御装置が行うこととしても構わない。さらに、このよう
な制御装置によって実現される機能の全部または一部をプログラムとして記述し、該プロ
グラムをプログラム実行装置(例えばコンピュータ)上で実行することによって、その機
能の全部または一部を実現するようにしても構わない。
【0085】
また、上述した場合に限らず、図1の撮像装置1や図2の追尾処理部60は、ハードウ
ェア、あるいは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実現可能である。
また、ソフトウェアを用いて撮像装置1や追尾処理部60を構成する場合、ソフトウェア
によって実現される部位についてのブロック図は、その部位の機能ブロック図を表すこと
とする。
【0086】
以上、本発明の実施形態についてそれぞれ説明したが、本発明の範囲はこれに限定され
るものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実行することができ
る。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、入力される画像から追尾物体を検出する画像処理装置や、当該画像処理装置
を備えた撮像装置や再生装置などの電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 撮像装置
2 イメージセンサ
3 レンズ部
4 AFE
5 集音部
6 画像処理部
61 探索領域設定部
62 画像解析部
63 予備追尾値設定部
64 追尾値設定部
65 追尾対象検出部
7 音声処理部
8 圧縮処理部
9 ドライバ部
10 外部メモリ
11 伸長処理部
12 画像出力回路部
13 音声出力回路部
14 CPU
15 メモリ
16 操作部
17 TG部
18 バス
19 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像から追尾物体を検出する追尾処理部を備える画像処理装置において、
前記追尾処理部が、
前記追尾物体の一部である第1追尾領域を示す信号を第1追尾信号として設定する第1追尾信号設定部と、
前記追尾物体の一部であるとともに前記第1追尾領域とは異なる位置に存在する第2追尾領域を示す信号を第2追尾信号として設定する第2追尾信号設定部と、
前記第1追尾信号又は前記第2追尾信号のいずれか一方を、追尾信号として設定する追尾信号設定部と、
前記入力画像から前記追尾信号を検出することにより前記追尾物体を検出する追尾物体検出部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記追尾処理部は、
前記入力画像から前記第1追尾信号を検出する第1追尾信号検出部と、
前記入力画像から前記第2追尾信号を検出する第2追尾信号検出部と、
を更に備え、
前記追尾信号設定部は、前記第1追尾信号検出部と前記第2追尾信号検出部による検出結果に応じて、前記第1追尾信号又は前記第2追尾信号のいずれか一方を、追尾信号として設定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
入力画像から追尾物体を検出する追尾処理部を備える画像処理装置において、
前記追尾処理部が、
前記追尾物体の一部である第1追尾領域を示す信号を追尾信号として設定する追尾信号設定部と、
前記追尾物体の一部であるとともに前記第1追尾領域とは異なる位置に存在する第2追尾領域を示す信号を予備追尾信号として設定する予備追尾信号設定部と、
前記入力画像から前記追尾信号を検出することにより前記追尾物体を検出する追尾物体検出部と、を備え、
前記追尾信号設定部が、設定されている前記追尾信号に替えて前記予備追尾信号を新たな追尾信号として設定し直す切替動作を実行可能とすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
撮像により前記入力画像を生成する撮像部と、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像処理装置と、を備え、
前記追尾処理部による前記追尾物体の検出結果に基づいた制御が行われることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−34258(P2013−34258A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−249889(P2012−249889)
【出願日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【分割の表示】特願2009−93976(P2009−93976)の分割
【原出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】