説明

画像処理装置及び方法

【課題】スキャナ装置での負荷状況や画像処理能力に応じて、ネットワークに結合されたスキャナ装置又は画像処理装置で画像処理を分担することにより、ユーザの処理待ち時間を短縮するとともに処理分担に伴うユーザによる煩雑な設定を回避する。
【解決手段】制御部42は、スキャナ装置10での読取画像データに対する画像処理の実行可否を通信部25Aを介し問い合わせ、その結果が、設定された処理をスキャナ装置10で実行不可であることを示している場合、設定値及び装置能力記憶部43の内容に基づいて、スキャン実行命令の引数を決定し、スキャナ装置10から画像データとメタデータファイル51とを受信し、該画像データについて、該実行不可の処理を画像処理部44で実行し、メタデータファイル51が、要求した処理が省略されたことを示している場合、該省略された処理を画像処理部44で実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに結合されたスキャナ装置と連携する画像処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、スキャナ装置で、原稿画像を読み取った後画像を回転させることにより、ホストコンピュータによる画像処理の負荷を軽減することが開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、スキャナ装置で、原稿画像を読み取った後ページ番号を付加することにより、ホストコンピュータによる画像処理の負荷を軽減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−219788号公報
【特許文献2】特開平1−251168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ネットワークに結合されたスキャナ装置では、利用状況が時間と共に変化し、特に、スキャナ装置の処理能力が低い場合に負荷が高いと、ユーザの処理待ち時間が長くなる。
【0006】
また、スキャナ装置で画像回転やページ付加等の画像処理ができない場合には、画像スキャンを行った後にユーザがコンピュータ上の画像処理プログラムを立ち上げ、処理内容を設定して実行指示を与える必要があるため、煩雑である。
【0007】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、スキャナ装置での負荷状況又は画像処理能力に応じて、ネットワークに結合されたスキャナ装置又は画像処理装置で画像処理を分担することにより、ユーザの処理待ち時間を短縮するとともに処理分担に伴うユーザによる煩雑な設定を回避することが可能な画像処理装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による画像処理装置の第1態様では、
スキャナ読取画像データに対する処理を設定するとともにスキャン実行指示を入力する入力手段と、
ネットワークインターフェイスと、
画像処理手段と、
該スキャン実行指示に応答してスキャナ装置に対する画像読取と該設定された処理とを要求する命令を該ネットワークインターフェイスを介し送信し、該スキャナ装置から画像データと該要求した処理が行われたか否かを示すメタデータとを該ネットワークインターフェイスを介し受信し、該メタデータが、該要求した処理が省略されたことを示している場合、該受信した画像データについて該省略された処理を該画像処理手段に実行させる制御手段とを有する。
【0009】
本発明による画像処理装置の第2態様では、第1態様において、該スキャナ装置での読取画像データに対する画像処理の実行可否を該ネットワークインターフェイスを介し問い合わせる装置能力問合せ手段を更に有し、該制御手段はさらに、該処理の実行可否の問い合わせ結果が、該入力手段で設定された処理を該スキャナ装置で実行不可であることを示している場合、該受信した読取画像データについて、該実行不可の処理を該画像処理手段に実行させる。
【0010】
本発明による画像処理装置の第3態様では、
スキャナ読取画像データに対する処理を設定するとともにスキャン実行指示を入力する入力手段と、
ネットワークインターフェイスと、
画像処理手段と、
スキャナ装置での読取画像データに対する画像処理の実行可否を該ネットワークインターフェイスを介し問い合わせる装置能力問合せ手段と、
該画像処理の実行可否の問い合わせ結果が、該入力手段で設定された処理を該スキャナ装置で実行不可であることを示している場合、該スキャン実行指示に応答して、該スキャナ装置に対する画像読取と該設定された処理から該実行不可の処理を除いた処理とを要求する命令を該ネットワークインターフェイスを介し送信し、該スキャナ装置から該ネットワークインターフェイスを介し画像データを受信し、該実行不可の処理を該画像処理手段に実行させる制御手段とを有する。
【発明の効果】
【0011】
上記第1態様の構成によれば、スキャン実行指示に応答してスキャナ装置に対する画像読取と設定された処理とを要求する命令をネットワークインターフェイスを介し送信し、該スキャナ装置から画像データと該要求した処理が行われたか否かを示すメタデータとを該ネットワークインターフェイスを介し受信し、該メタデータが、該要求した処理が省略されたことを示している場合、該受信した画像データについて該省略された処理を画像処理手段に実行させるので、該スキャナ装置での負荷状況に応じて、該スキャナ装置又は該画像処理装置で画像処理が分担され、これにより、ユーザの処理待ち時間が短縮され、また、ユーザは処理分担にかかわらず1回設定すればよく、処理分担に伴うユーザによる煩雑な設定を回避することができるという効果を奏する。
【0012】
上記第2又は第3態様の構成によれば、該スキャナ装置での読取画像データに対する画像処理の実行可否を該ネットワークインターフェイスを介し問い合わせ、該問い合わせの結果が、該設定された処理を該スキャナ装置で実行不可であることを示している場合、該受信した読取画像データについて、該実行不可の処理を該画像処理手段が実行するので、ユーザは該スキャナ装置の画像処理能力にかかわらず1回設定すればよく、ユーザによる煩雑な設定を回避することができるという効果を奏する。
【0013】
本発明の他の目的、特徴的な構成及び効果は、以下の説明を特許請求の範囲及び図面の記載と関係づけて読むことにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係る画像処理システムの機能ブロック図である。
【図2】図1のスキャナ装置ドライバによる処理を示す概略フローチャートである。
【図3】装置能力データファイルの内容の一例を示す説明図である。
【図4】メタデータファイルの内容の一例を示す説明図である。
【図5】図1中のパーソナルコンピュータのハードウエア構成を示す概略ブロック図である。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係る画像処理システムの機能ブロック図である。
【0016】
このシステムでは、スキャナ装置10とパーソナルコンピュータ(PC)20とがネットワーク30で結合されている。図1では説明の簡単化のために、複数台のスキャナ装置及び複数台のPC20をそれぞれ1つのスキャナ装置10及びPC20で代表して示している。
【0017】
スキャナ装置10では、制御部11が通信部12を介し、遠隔制御プロトコル、例えばSOAP(Simple Object Access Protocol)プロトコルで、スキャン設定値及びスキャン後に行う画像処理の内容を引数とするスキャン実行命令を受け取る。制御部11はこれに応答して、原稿スキャン読取部13に対し、この設定値で原稿スキャン読取部(スキャナ本体部)13を駆動させて画像を読取り、そのデータのアドレスを画像処理部14に引き渡して、前記画像処理を行わせ、その結果を、通信部12を介して返信する。
【0018】
一方、装置能力記憶部15には、原稿スキャン読取部13及び画像処理部14の能力データが格納されており、制御部11は、通信部12を介して供給される装置能力問い合わせに応答して、このデータを、通信部12を介し返信する。
【0019】
図5は、PC20のハードウエア構成を示す概略ブロック図である。
【0020】
PC20では、CPU21がインターフェイス22を介してPROM23、DRAM24、スネットワークインターフェイス25、ハードディスクドライブ26、表示装置27及び入力装置28に結合されている。図5では、簡単化の為に、複数種のインターフェイスを1つのブロック22で表している。
【0021】
PROM23は、例えばフラッシュメモリであり、BIOSが格納されている。DRAM24は、主記憶装置として用いられる。ハードディスクドライブ26には、OS(オペレーティングシステム)及びスキャナドライバが格納されている。ネットワークインターフェイス25は、ネットワーク30に結合される。表示装置27は、例えばキーボード及びポインティングデバイスを備えている。
【0022】
図1に戻って、ブロック40は、上記スキャナドライバの機能ブロックであり、これに、通信部25A、表示装置27及び入力装置28が結合されている。通信部25Aは、図5のネットワークインターフェイス25と、OSに含まれる通信機能とで構成されている。
【0023】
スキャナ装置ドライバ40では、ユーザインターフェイス部41が入力装置28にメニューを表示させ、ユーザが表示装置27を介して選択した項目に応じて、入力装置28への表示内容を変更し、表示装置27を介して入力された設定値を保持する。ユーザインターフェイス部41は、表示装置27からのスキャン実行開始入力に応答して、該設定値を制御部42に供給する。スキャナ装置ドライバ40はこれに応答して、図2に示す処理を行う。以下、括弧内は図中のステップ識別符号である。
【0024】
(S0)装置能力記憶部43に、スキャナ装置10の装置能力データが格納されていればステップS3へ進み、そうでなければステップS1へ進む。
【0025】
(S1)制御部42は、例えばSOAPプロトコルで、通信部25Aを介してスキャナ装置10に装置能力を問い合わせる。
【0026】
(S2)スキャナ装置10から通信部25Aを介して受信した装置能力データを、装置能力記憶部43にファイルとして記憶させる。装置能力記憶部43は、このファイルを格納するハードディスクドライブ26の一部記憶領域と、DRAM24上の一部データ領域とから成る。
【0027】
(S3)制御部42は、ハードディスクドライブ26からDRAM24上に、この装置能力データを読み出す。
【0028】
図3は、装置能力記憶部15に格納される装置能力データファイル50の内容の一例を示す。
【0029】
この内容はXMLで記述されており、"capability"要素に含まれる頁付(paging)、及び画像回転(rotation)の処理は可能(true)であり、裏面写り防止処理(antibleedthrough)は不可能(false)であることを示している。また、"underHighLoad"要素に含まれる頁付(paging)処理は高負荷時でも実行され(true)、画像回転(rotation)処理は高負荷時に省略(false)されることを示している。
【0030】
(S4)制御部42は、ユーザインターフェイス部41からの上記設定値及び装置能力記憶部43の内容に基づいて、スキャン実行命令の引数を決定する。即ち、該設定値のうち、実行不可能な画像処理であることを装置能力記憶部43の内容が示しているものについては、この引数に含めず、画像処理部44で後処理すべき内容として記憶しておく。
【0031】
(S5)制御部42は、通信部25Aを介しスキャナ装置10に対し、スキャン実行命令を送信する。
【0032】
スキャナ装置10では、制御部11が通信部12を介してこの命令を受け取ると、この命令に含まれる画像読取処理を原稿スキャン読取部13に行わせる。制御部11は、原稿スキャン読取部13での画像読取処理が終了すると、現時点でのジョブの混雑度、すなわち、ジョブの待ち行列中のジョブ数が設定値以上であれば、PC20から受け取った命令に含まれる画像処理のうち、装置能力記憶部15に格納されている上記高負荷時省略可能処理を除く処理を、画像処理部14に対し行わせ、その結果の画像データと、省略した画像処理の内容を示すメタデータファイル51とを、通信部12を介しPC20に返信する。
【0033】
図4は、メタデータファイル51の内容の一例を示す。この内容もXMLで記述されており、頁付処理(paging)は行われた(completed)が、画像回転処理(rotation)は高負荷時であったため省略された(omitted)ことを示している。
【0034】
(S6)スキャナ装置10からの返信の受信を開始すると、ステップS7へ進む。
【0035】
(S7)制御部42は、通信部25Aを介して、これら画像データ及びメタデータを受信する。
【0036】
(S8、S9)制御部42は、この画像データに対し、画像処理部44に上記後処理を行わせる。
【0037】
(S10、S11)制御部42は、メタデータファイル51の内容が、画像処理を省略したことを示していれば、この処理を、画像処理部44に行わせる。
【0038】
本実施例1によれば、スキャン実行指示に応答してスキャナ装置10に対する画像読取と設定された処理とを要求する命令を通信部25Aを介し送信し、スキャナ装置10から画像データと該要求した処理が行われたか否かを示すメタデータファイル51とを通信部25Aを介し受信し、メタデータファイル51が、該要求した処理が省略されたことを示している場合、該受信した画像データについて該省略された処理を画像処理部44で実行するので、スキャナ装置10での負荷状況に応じて、スキャナ装置10又はPC20で画像処理が分担され、これにより、ユーザの処理待ち時間が短縮され、また、ユーザは処理分担にかかわらず1回設定すればよく、処理分担に伴うユーザによる煩雑な設定を回避することができるという効果を奏する。
【0039】
また、スキャナ装置10での読取画像データに対する画像処理の実行可否を通信部25Aを介し問い合わせ、該問い合わせの結果が、該設定された処理をスキャナ装置10で実行不可であることを示している場合、該受信した読取画像データについて、該実行不可の処理を画像処理部44で実行するので、ユーザはスキャナ装置10の画像処理能力にかかわらず1回設定すればよく、ユーザによる煩雑な設定を回避することができるという効果を奏する。
【0040】
以上において、本発明の好適な実施例を説明したが、本発明には他にも種々の変形例が含まれ、上記実施例で述べた各構成要素の機能を実現する他の構成を用いたもの、当業者であればこれらの構成又は機能から想到するであろう他の構成も、本発明に含まれる。
【0041】
例えば、スキャナ装置10が、スキャン実行命令の引数に余分のものが含まれている場合にエラーとみなさず無視する場合には、ステップS4において、設定値のうち、実行不可能な画像処理であることを装置能力記憶部43の内容が示しているものを省略しなくてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 スキャナ装置
11、42 制御部
12、25A 通信部
13 原稿スキャン読取部
14、44 画像処理部
15、43 装置能力記憶部
20 PC
21 CPU
22 インターフェイス
23 PROM
24 DRAM
25 ネットワークインターフェイス
26 ハードディスクドライブ
27 表示装置
28 入力装置
30 ネットワーク
40 スキャナ装置ドライバ
41 ユーザインターフェイス部
50 装置能力データファイル
51 メタデータファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャナ読取画像データに対する処理を設定するとともにスキャン実行指示を入力する入力手段と、
ネットワークインターフェイスと、
画像処理手段と、
該スキャン実行指示に応答してスキャナ装置に対する画像読取と該設定された処理とを要求する命令を該ネットワークインターフェイスを介し送信し、該スキャナ装置から画像データと該要求した処理が行われたか否かを示すメタデータとを該ネットワークインターフェイスを介し受信し、該メタデータが、該要求した処理が省略されたことを示している場合、該受信した画像データについて該省略された処理を該画像処理手段に実行させる制御手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
該スキャナ装置での読取画像データに対する画像処理の実行可否を該ネットワークインターフェイスを介し問い合わせる装置能力問合せ手段、
を更に有し、該制御手段はさらに、該処理の実行可否の問い合わせ結果が、該入力手段で設定された処理を該スキャナ装置で実行不可であることを示している場合、該受信した読取画像データについて、該実行不可の処理を該画像処理手段に実行させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
スキャナ読取画像データに対する処理を設定するとともにスキャン実行指示を入力する入力手段と、
ネットワークインターフェイスと、
画像処理手段と、
スキャナ装置での読取画像データに対する画像処理の実行可否を該ネットワークインターフェイスを介し問い合わせる装置能力問合せ手段と、
該画像処理の実行可否の問い合わせ結果が、該入力手段で設定された処理を該スキャナ装置で実行不可であることを示している場合、該スキャン実行指示に応答して、該スキャナ装置に対する画像読取と該設定された処理から該実行不可の処理を除いた処理とを要求する命令を該ネットワークインターフェイスを介し送信し、該スキャナ装置から該ネットワークインターフェイスを介し画像データを受信し、該実行不可の処理を該画像処理手段に実行させる制御手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
コンピュータが、
(a)入力手段を介したスキャン実行指示に応答してスキャナ装置に対し、画像読取と該入力手段を介して設定された処理とを要求する命令をネットワークインターフェイスを介し送信し、
(b)該スキャナ装置から画像データと該要求した処理が行われたか否かを示すメタデータとを該ネットワークインターフェイスを介し受信し、
(c)該メタデータが、該要求した処理が省略されたことを示している場合、該受信した画像データについて該省略された処理を実行する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
該コンピュータがさらに、
(c)該スキャナ装置での読取画像データに対する画像処理の実行可否を該ネットワークインターフェイスを介し問い合わせ、
(d)該処理の実行可否の問い合わせ結果が、該入力手段で設定された処理を該スキャナ装置で実行不可であることを示している場合、該受信した読取画像データについて、該実行不可の処理を実行する、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
コンピュータが、
(a)スキャナ装置での読取画像データに対する画像処理の実行可否をネットワークインターフェイスを介し問い合わせ、
(b)入力手段を介したスキャナ読取画像データに対する処理の設定とスキャン実行指示とを受け付け、
(c)該画像処理の実行可否の問い合わせ結果が、該入力手段で設定された処理を該スキャナ装置で実行不可であることを示している場合、該スキャン実行指示に応答して、該スキャナ装置に対する画像読取と該設定された処理から該実行不可の処理を除いた処理とを要求する命令を該ネットワークインターフェイスを介し送信し、
(d)該スキャナ装置から該ネットワークインターフェイスを介し画像データを受信し、該実行不可の処理を実行する、
ことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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