説明

画像処理装置

【課題】符号化部に入力される予測後データの値を小さくすることにより、符号化データの符号量を削減することが可能な画像処理装置を得る。
【解決手段】画像処理装置1は、量子化前の第1のデータD1が入力され、量子化後の第2のデータD2を出力する量子化部2と、第2のデータD2と、予測データである第3のデータD3との差分値を、第4のデータD4として出力する予測部3と、第4のデータD4を符号化する符号化部4とを備える。量子化部2は、第1のデータD1を量子化係数で除算することにより、端数を含む除算結果である第5のデータD5を得る第1の処理部5と、第3のデータD3と第5のデータD5との比較結果に基づき、第4のデータD4の値が小さくなるように端数を切り上げ又は切り捨てることにより、第2のデータD2を得る、第2の処理部6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、特に、予測符号化方式のエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
図13は、予測符号化方式のエンコーダ101の構成を示すブロック図である。エンコーダ101は、量子化部102、予測部103、及び符号化部104を備えて構成されている。量子化部102には、図示しない前段の処理ブロックから、データD100が入力される。量子化部102は、データD100を量子化することにより、データD101を出力する。予測部103には、量子化部102から、データD101が入力される。また、予測部103には、過去に処理したデータが、予測データD102として入力されている。予測部103は、データD101と予測データD102との差分値を、データD103として出力する。符号化部104には、予測部103から、データD103が入力される。符号化部104は、データD103をエントロピー符号化することにより、符号化データD104を出力する。
【0003】
また、近年、JPEGよりも高画質で、JPEG2000よりも回路構成及び演算処理が簡素化された静止画ファイルフォーマットとして、マイクロソフト社よりHD Photo(又はJPEG XR)が提案されている。
【0004】
図14は、HD Photoにおけるエンコーダ201の構成を示すブロック図である。エンコーダ201は、色変換部202、プレフィルタ203、周波数変換部204、量子化部205、予測部206、及び符号化部207を備えて構成されている。
【0005】
色変換部202には、CCD又はCMOSイメージセンサ等の撮像素子から、RGB色空間の画素信号D200が入力される。色変換部202は、画素信号D200を、例えばYUV色空間の画素信号D201に変換して出力する。プレフィルタ203には、色変換部202から、画素信号D201が入力される。プレフィルタ203は、画素信号D201に対して、ブロック歪みを低減するためのプレフィルタ処理を実行し、画素信号D202を出力する。周波数変換部204には、プレフィルタ203から、画素信号D202が入力される。周波数変換部204は、画素信号D202に対して所定の周波数変換処理(PCT:HD Photo Core Transform)を実行し、周波数変換処理後のデータD203を出力する。HD Photoでは、データD203に、ハイパス成分、ローパス成分、及び直流成分が含まれる。
【0006】
量子化部205には、周波数変換部204から、データD203が入力される。量子化部205は、データD203を量子化することにより、データD204を出力する。予測部206には、量子化部205から、データD204が入力される。また、予測部206には、過去に処理したデータが、予測データとして入力されている。予測部206は、データD204と予測データとの差分値を、データD205として出力する。符号化部207には、予測部206から、データD205が入力される。符号化部207は、データD205をエントロピー符号化することにより、符号化データD206を出力する。
【0007】
なお、HD Photoの詳細については、例えば下記非特許文献1に開示されており、JPEG XRの詳細については、例えば下記非特許文献2に開示されている。
【0008】
【非特許文献1】"HD Photo -Photographic Still Image File Format", [online], 2006年11月7日, Microsoft Corporation, [2007年10月10日検索], インターネット<URL: http://www.microsoft.com/whdc/xps/hdphotodpk.mspx>
【非特許文献2】"Coding of Still Pictures -JBIG JPEG", [online], 19 December 2007, ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG1 N 4392, [2008年3月4日検索], インターネット<URL: http://www.itscj.ipsj.or.jp/sc29/open/29view/29n9026t.doc>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図13,14に示したエンコーダ101,201において、符号化部104,207から出力される符号化データD104,D206の符号量を削減するためには、符号化部104,207に入力される予測後データ(データD103,D205)の値が、なるべく小さな値になっていることが望ましい。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、符号化部に入力される予測後データの値を小さくすることにより、符号化データの符号量を削減することが可能な画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置は、量子化前の第1のデータが入力され、量子化後の第2のデータを出力する量子化部と、前記第2のデータと、予測データである第3のデータとの差分値を、第4のデータとして出力する予測部と、前記第4のデータを符号化する符号化部とを備え、前記量子化部は、前記第1のデータを量子化係数で除算することにより、端数を含む除算結果である第5のデータを得る第1の処理部と、前記第3のデータと前記第5のデータとの比較結果に基づき、前記第4のデータの値が小さくなるように前記端数を切り上げ又は切り捨てることにより、前記第2のデータを得る、第2の処理部とを有する。
【0012】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置によれば、第2の処理部は、第3のデータと第5のデータとの比較結果に基づき、第4のデータの値が小さくなるように、第5のデータ内に含まれる端数を切り上げ又は切り捨てる。その結果、符号化部によって符号化される第4のデータの値が小さくなるため、符号化後のデータの符号量を削減することが可能となる。
【0013】
本発明の第2の態様に係る画像処理装置は、第1の態様に係る画像処理装置において特に、前記符号化部は、前記第4のデータを、上位側の第1の桁範囲内の第1の部分データと、下位側の第2の桁範囲内の第2の部分データとに分割する第3の処理部と、前記第1の部分データ及び前記第2の部分データのうちの前記第1の部分データのみを符号化する第4の処理部とを有し、前記端数は、前記第5のデータのうち、前記第2の桁範囲に相当する第3の桁範囲内の特定の桁以下のデータであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第2の態様に係る画像処理装置によれば、第4の処理部によって符号化される第1の部分データの値が小さくなるため、符号化後のデータの符号量を削減することが可能となる。しかも、第4のデータの全体が符号化されるのではなく、上位側の第1の部分データのみが符号化され、この上位側の第1の部分データに対して符号量の削減効果が得られる。従って、第4のデータの全体が符号化される場合と比較すると、符号量の削減効果が顕著となる。
【0015】
本発明の第3の態様に係る画像処理装置は、第2の態様に係る画像処理装置において特に、前記特定の桁は、前記第3の桁範囲の最上位桁以下の範囲内で、任意に設定可能であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第3の態様に係る画像処理装置によれば、第5のデータの端数を規定する特定の桁は、第3の桁範囲の最上位桁以下の範囲内で、任意に設定可能である。特定の桁を、上位側に設定することにより、符号量の削減効果を高めることができ、下位側に設定することにより、画質を向上することができる。従って、ユーザの好みに応じた設定が可能となる。
【0017】
本発明の第4の態様に係る画像処理装置は、第2又は第3の態様に係る画像処理装置において特に、前記第1の桁範囲は、HD PhotoにおけるNormal Bitであり、前記第2の桁範囲は、HD PhotoにおけるFlex Bitであることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第4の態様に係る画像処理装置によれば、HD Photoにおいてエントロピー符号化が実行されるNormal Bitに関して、エントロピー符号化後のデータの符号量を削減することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、符号化データの符号量を削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0021】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像処理装置1Aの構成を示すブロック図である。画像処理装置1Aは、HD Photoにおけるエンコーダに限らず、予測符号化方式のエンコーダ全般に適用することができる。
【0022】
画像処理装置1Aは、量子化部2、予測部3、及び符号化部4を備えて構成されている。量子化部2には、図示しない前段の処理ブロック(例えば周波数変換部)から、量子化前のデータD1が入力される。量子化部2は、量子化後のデータD2を出力する。予測部3には、量子化部2から、データD2が入力される。また、予測部3には、過去に処理したデータ(例えば前回処理したデータ)が、予測データD3として入力されている。予測部3は、データD2と予測データD3との差分値を、データD4として出力する。但し、条件によっては予測部3は予測処理を実行せず、この場合、データ値が「0」のデータが予測データD3として用いられる。符号化部4には、予測部3から、データD4が入力される。符号化部4は、データD4をエントロピー符号化することにより、符号化データD10を出力する。
【0023】
図2は、図1に示した量子化部2の構成を示すブロック図である。量子化部2は、処理部5,6を備えて構成されている。処理部5には、データD1が入力される。処理部5は、データD1を量子化係数Qで除算することにより、端数を含む除算結果であるデータD5を出力する。処理部6には、処理部5から、データD5が入力される。また、処理部6には、予測データD3が入力されている。処理部6は、データD3とデータD5とを比較し、その比較の結果に基づいて、データD4の値が小さくなるようにデータD5の端数を切り上げ又は切り捨てることにより、データD2を出力する。
【0024】
図3は、データD5を示す図である。データD5は、整数部P1と小数部P2とを有している。整数部P1のビット幅をHとし、小数部P2のビット幅をGとし、小数部P2の最下位桁を第0桁とすると、小数部P2の最上位桁は第(G−1)桁となり、整数部P1の最下位桁は第G桁となり、整数部P1の最上位桁は第(H+G−1)桁となる。例えば、ビット幅Hが8ビットであり、ビット幅Gが4ビットである場合は、小数部P2の最上位桁は第3桁となり、整数部P1の最下位桁は第4桁となり、整数部P1の最上位桁は第11桁となる。
【0025】
図4は、図2に示した処理部5,6の処理内容を説明するための図である。図4では一例として、データD1のビット幅が8ビットであり、量子化係数Qが「8」である場合を想定している。
【0026】
図4の(A)に示すように、処理部5には、例えば「10110101」なるデータD1が入力される。
【0027】
処理部5は、データD1を「8」で除算することにより、端数を含む除算結果であるデータD5を出力する。具体的には、図4の(B)に示すように、データD1を3ビット右方向にシフトすることにより、「00010110」なる整数部P1と、「101」なる小数部P2とを有するデータD5を出力する。小数部P2が、データD5における端数である。データD5は、処理部6に入力される。
【0028】
処理部6には、予測データD3が入力されている。
【0029】
ここで、第1のケースとして、図4の(C)に示すように、例えば「00001010」なる予測データD3が、処理部6に入力されていたとする。処理部6は、データD3とデータD5とを比較する。この第1のケースでは、データD3よりもデータD5のほうが大きい。この場合、処理部6は、図4の(D)に示すように、データD5の小数部P2を切り捨てることによって得られるデータ「00010110」を、データD2として出力する。データD3よりもデータD5のほうが大きい場合には、データD5の小数部P2を切り捨てることによって、データD2の値はデータD3の値に近付く。その結果、図1を参照して、データD2とデータD3との差分値であるデータD4が小さくなるため、符号化データD10の符号量も削減される。
【0030】
一方、第2のケースとして、図4の(E)に示すように、例えば「00111010」なる予測データD3が、処理部6に入力されていたとする。処理部6は、データD3とデータD5とを比較する。この第2のケースでは、データD3よりもデータD5のほうが小さい。この場合、処理部6は、図4の(F)に示すように、データD5の小数部P2を切り上げることによって得られるデータ「00010111」を、データD2として出力する。データD3よりもデータD5のほうが小さい場合には、データD5の小数部P2を切り上げることによって、データD2の値はデータD3の値に近付く。その結果、図1を参照して、データD2とデータD3との差分値であるデータD4が小さくなるため、符号化データD10の符号量も削減される。
【0031】
このように第1の実施の形態に係る画像処理装置1Aによれば、処理部6は、データD3とデータD5との比較結果に基づき、データD4の値が小さくなるように、データD5内に含まれる端数(小数部P2)を切り上げ又は切り捨てる。その結果、符号化部4によって符号化されるデータD4の値が小さくなるため、符号化データD10の符号量を削減することが可能となる。
【0032】
<第2の実施の形態>
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る画像処理装置1Bの構成を示すブロック図である。画像処理装置1Bは、符号化される部分と符号化されない部分とを有するデータを符号化対象とするエンコーダ、例えば、HD Photoにおけるエンコーダに適用することができる。符号化部4からは、符号化データD11と、符号化されていないデータD12とが出力される。その他の構成は、図1と同様である。
【0033】
図6は、図5に示した符号化部4の構成を示すブロック図である。符号化部4は、処理部7〜9を備えて構成されている。処理部7には、図5に示した予測部3から、データD4が入力される。処理部7は、データD4を、部分データD4Uと部分データD4Lとに分割して出力する。処理部8には、処理部7から、部分データD4Uが入力される。処理部8は、部分データD4Uをエントロピー符号化することにより、符号化データD11を出力する。処理部9には、処理部7から、部分データD4Lが入力される。処理部9は、データD4Lに基づいてデータD12を生成して出力する。例えば、処理部9は、データD4Lのうち、Trim Bitsで示される下位ビットを切り捨てることにより、データD12を生成して出力する。
【0034】
図7は、データD4を示す図である。処理部7は、データD4を、上位側の桁範囲R1内の部分データD4Uと、下位側の桁範囲R2内の部分データD4Lとに分割する。桁範囲R1は、HD PhotoにおけるNormal Bitに相当し、桁範囲R2は、HD PhotoにおけるFlex Bitに相当する。桁範囲R1のビット幅をNとし、桁範囲R2のビット幅(Model Bits)をMとし、桁範囲R2の最下位桁を第0桁とすると、桁範囲R2の最上位桁は第(M−1)桁となり、桁範囲R1の最下位桁は第M桁となり、桁範囲R1の最上位桁は第(N+M−1)桁となる。HD Photoにおいては、ビット幅Mは適応的に可変である。
【0035】
図8は、図5に示した量子化部2の構成を示すブロック図である。量子化部2は、処理部5,6及び桁設定部10を備えて構成されている。処理部5には、データD1が入力される。処理部5は、データD1を量子化係数Qで除算することにより、端数を含む除算結果であるデータD5を出力する。処理部6には、処理部5から、データD5が入力される。また、処理部6には、予測データD3が入力されている。処理部6は、データD3とデータD5とを比較し、その比較の結果に基づいて、データD4の値が小さくなるようにデータD5の端数を切り上げ又は切り捨てることにより、データD2を出力する。データD5のうちのどの桁範囲を端数として扱うかは、桁設定部10から処理部6に入力されるデータD13によって、可変に設定可能である。
【0036】
図9は、データD5を示す図である。データD5は、整数部P1と小数部P2とを有している。整数部P1のうち下位側の桁範囲R3は、図7に示した桁範囲R2(Flex Bit)に相当する。小数部P2の最上位桁を桁A0とすると、桁範囲R3の最下位桁は桁A1となり、桁範囲R3の最上位桁は桁AMとなる。桁設定部10は、桁A0〜AMの中から一つを選択し、データD13として処理部6に入力する。例えば桁A1が選択された場合は、処理部6において、桁A1以下の範囲(斜線ハッチングを付した範囲)が、データD5における端数として設定される。
【0037】
図10は、図8に示した処理部5,6及び桁設定部10の処理内容の第1の例を説明するための図である。図10では一例として、データD1のビット幅が8ビットであり、量子化係数Qが「8」である場合を想定している。
【0038】
図10の(A)に示すように、処理部5には、例えば「11111101」なるデータD1が入力される。
【0039】
処理部5は、データD1を「8」で除算することにより、端数を含む除算結果であるデータD5を出力する。具体的には、図10の(B)に示すように、データD1を3ビット右方向にシフトすることにより、「00011111」なる整数部P1と、「101」なる小数部P2とを有するデータD5を出力する。データD5は、処理部6に入力される。ここで、桁A0を指定するデータD13が、桁設定部10から処理部6に入力されており、その結果、小数部P2が、データD5における端数Zとして設定されている。
【0040】
処理部6には、予測データD3が入力されている。
【0041】
ここで、第1のケースとして、図10の(C)に示すように、例えば「00001010」なる予測データD3が、処理部6に入力されていたとする。処理部6は、データD3とデータD5とを比較する。この第1のケースでは、データD3よりもデータD5のほうが大きい。この場合、処理部6は、図10の(D)に示すように、データD5の端数Zを切り捨てることによって得られるデータ「00011111」を、データD2として出力する。データD3よりもデータD5のほうが大きい場合には、データD5の端数Zを切り捨てることによって、データD2の値はデータD3の値に近付く。その結果、図5を参照して、データD2とデータD3との差分値であるデータD4が小さくなり、図6を参照して、処理部8によって符号化される部分データD4Uも小さくなるため、符号化データD11の符号量が削減される。
【0042】
一方、第2のケースとして、図10の(E)に示すように、例えば「00111010」なる予測データD3が、処理部6に入力されていたとする。処理部6は、データD3とデータD5とを比較する。この第2のケースでは、データD3よりもデータD5のほうが小さい。この場合、処理部6は、図10の(F)に示すように、データD5の端数Zを切り上げることによって得られるデータ「00100000」を、データD2として出力する。データD3よりもデータD5のほうが小さい場合には、データD5の端数Zを切り上げることによって、データD2の値はデータD3の値に近付く。その結果、図5を参照して、データD2とデータD3との差分値であるデータD4が小さくなり、図6を参照して、処理部8によって符号化される部分データD4Uも小さくなるため、符号化データD11の符号量が削減される。
【0043】
図11は、図8に示した処理部5,6及び桁設定部10の処理内容の第2の例を説明するための図である。図11では一例として、データD1のビット幅が8ビットであり、量子化係数Qが「8」である場合を想定している。
【0044】
図11の(A)に示すように、処理部5には、例えば「11010111」なるデータD1が入力される。
【0045】
処理部5は、データD1を「8」で除算することにより、端数を含む除算結果であるデータD5を出力する。具体的には、図11の(B)に示すように、データD1を3ビット右方向にシフトすることにより、「00011010」なる整数部P1と、「111」なる小数部P2とを有するデータD5を出力する。データD5は、処理部6に入力される。ここで、桁AMを指定するデータD13が、桁設定部10から処理部6に入力されており、その結果、整数部P1の下位4ビットと、小数部P2とが、データD5における端数Zとして設定されている。
【0046】
処理部6には、予測データD3が入力されている。
【0047】
ここで、第1のケースとして、図11の(C)に示すように、例えば「00001010」なる予測データD3が、処理部6に入力されていたとする。処理部6は、データD3とデータD5とを比較する。この第1のケースでは、データD3よりもデータD5のほうが大きい。この場合、処理部6は、図11の(D)に示すように、データD5の端数Zを切り捨てることによって得られるデータ「00010000」を、データD2として出力する。データD3よりもデータD5のほうが大きい場合には、データD5の端数Zを切り捨てることによって、データD2の値はデータD3の値に近付く。その結果、図5を参照して、データD2とデータD3との差分値であるデータD4が小さくなり、図6を参照して、処理部8によって符号化される部分データD4Uも小さくなるため、符号化データD11の符号量が削減される。
【0048】
一方、第2のケースとして、図11の(E)に示すように、例えば「00111010」なる予測データD3が、処理部6に入力されていたとする。処理部6は、データD3とデータD5とを比較する。この第2のケースでは、データD3よりもデータD5のほうが小さい。この場合、処理部6は、図11の(F)に示すように、データD5の端数Zを切り上げることによって得られるデータ「00100000」を、データD2として出力する。データD3よりもデータD5のほうが小さい場合には、データD5の端数Zを切り上げることによって、データD2の値はデータD3の値に近付く。その結果、図5を参照して、データD2とデータD3との差分値であるデータD4が小さくなり、図6を参照して、処理部8によって符号化される部分データD4Uも小さくなるため、符号化データD11の符号量が削減される。
【0049】
このように第2の実施の形態に係る画像処理装置1Bによれば、処理部8によって符号化される部分データD4Uの値が小さくなるため、符号化データD11の符号量を削減することが可能となる。しかも、データD4の全体が符号化されるのではなく、上位側の部分データD4Uのみが符号化され、この上位側の部分データD4Uに対して符号量の削減効果が得られる。従って、データD4の全体が符号化される場合と比較すると、符号量の削減効果が顕著となる。
【0050】
また、第2の実施の形態に係る画像処理装置1Bによれば、図9に示したように、データD5の端数を規定する特定の桁A0〜AMは、桁範囲R3の最上位桁以下の範囲内で、任意に設定可能である。特定の桁を、上位側に設定することにより、符号量の削減効果を高めることができ、下位側に設定することにより、画質を向上することができる。従って、ユーザの好みに応じた設定が可能となる。
【0051】
図12は、HD Photoのエンコーダにおけるプレフィルタ51,52及び周波数変換部53,54の構成を示すブロック図である。図12に示すように、HD Photoにおけるエンコーダは、第1階層のプレフィルタ51及び周波数変換部53と、第2階層のプレフィルタ52及び周波数変換部54とを備えている。
【0052】
プレフィルタ51には、画素信号D50が入力される。プレフィルタ51は、画素信号D50に対してプレフィルタ処理を実行し、プレフィルタ処理後の画素信号D51を出力する。画素信号D51は、周波数変換部53に入力される。周波数変換部53は、画素信号D51に対して周波数変換処理(PCT)を実行し、ハイパス成分のデータD1HPと、第1階層における直流成分のデータD52とを出力する。データD52は、プレフィルタ52に入力される。プレフィルタ52は、データD52に対してプレフィルタ処理を実行し、プレフィルタ処理後のデータD53を出力する。データD53は、周波数変換部54に入力される。周波数変換部54は、データD53に対して周波数変換処理(PCT)を実行し、ローパス成分のデータD1LPと、直流成分のデータD1DCとを出力する。
【0053】
周波数変換部53,54から出力されたデータD1HP,D1LP,D1DCは、図5に示したデータD1として、量子化部2に入力される。同様に、符号化部4に入力されるデータD4には、ハイパス成分のデータ、ローパス成分のデータ、及び直流成分のデータが含まれている。
【0054】
第2の実施の形態に係る発明は、HD Photoにおけるハイパス成分、ローパス成分、及び直流成分の、いずれにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した量子化部の構成を示すブロック図である。
【図3】データを示す図である。
【図4】図2に示した処理部の処理内容を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示した符号化部の構成を示すブロック図である。
【図7】データを示す図である。
【図8】図5に示した量子化部の構成を示すブロック図である。
【図9】データを示す図である。
【図10】図8に示した処理部及び桁設定部の処理内容の第1の例を説明するための図である。
【図11】図8に示した処理部及び桁設定部の処理内容の第2の例を説明するための図である。
【図12】HD Photoのエンコーダにおけるプレフィルタ及び周波数変換部の構成を示すブロック図である。
【図13】予測符号化方式のエンコーダの構成を示すブロック図である。
【図14】HD Photoにおけるエンコーダの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
1A,1B 画像処理装置
2 量子化部
3 予測部
4 符号化部
5〜9 処理部
10 桁設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子化前の第1のデータが入力され、量子化後の第2のデータを出力する量子化部と、
前記第2のデータと、予測データである第3のデータとの差分値を、第4のデータとして出力する予測部と、
前記第4のデータを符号化する符号化部と
を備え、
前記量子化部は、
前記第1のデータを量子化係数で除算することにより、端数を含む除算結果である第5のデータを得る第1の処理部と、
前記第3のデータと前記第5のデータとの比較結果に基づき、前記第4のデータの値が小さくなるように前記端数を切り上げ又は切り捨てることにより、前記第2のデータを得る、第2の処理部と
を有する、画像処理装置。
【請求項2】
前記符号化部は、
前記第4のデータを、上位側の第1の桁範囲内の第1の部分データと、下位側の第2の桁範囲内の第2の部分データとに分割する第3の処理部と、
前記第1の部分データ及び前記第2の部分データのうちの前記第1の部分データのみを符号化する第4の処理部と
を有し、
前記端数は、前記第5のデータのうち、前記第2の桁範囲に相当する第3の桁範囲内の特定の桁以下のデータである、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記特定の桁は、前記第3の桁範囲の最上位桁以下の範囲内で、任意に設定可能である、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の桁範囲は、HD PhotoにおけるNormal Bitであり、
前記第2の桁範囲は、HD PhotoにおけるFlex Bitである、請求項2又は3に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−239701(P2009−239701A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84156(P2008−84156)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】