説明

画像処理装置

【課題】 垂直同期信号と表示領域の画素信号との位相関係の調整が可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】 書き込み制御回路102は、入力映像の水平同期信号HSIN_Nに同期してラインバッファ101−k(k=1〜N)を順次選択し、選択したラインバッファに入力映像の1ライン分の画素信号を書き込む。同期信号生成回路103は、入力映像の垂直同期信号VSIN_Nに応じて、出力映像のライン数に対応した回数だけ出力映像の水平同期信号HSYNC_Nを出力するとともに、垂直同期信号VSIN_Nに対して、予め入力された位相調整データにより指定された位相関係を持った出力映像の垂直同期信号VSYNC_Nを出力する。解像度変換回路105は、出力映像の水平同期信号HSYNC_Nに応じ、ラインバッファ101−k(k=1〜N)に記憶された画素信号を用いて、入力映像と異なる解像度の出力映像の1ライン分の画素信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置に供給する映像信号に対する画像処理を行う画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像信号に対して解像度変換等の各種の画像処理を施して表示装置に供給する画像処理装置が各種提供されている。これまでに提供されてきた画像処理装置では、入力映像の垂直同期信号と水平同期信号と画素信号とから出力映像の垂直同期信号と水平同期信号と画素信号とを生成する際、入力映像と出力映像とで垂直同期信号と表示領域内の画素信号との位相関係はほぼ変化がなかった。例えば特許文献1は、解像度変換を行う映像信号処理装置に関するものであるが、同文献に実施形態として開示された映像信号処理装置では、入力映像の垂直走査期間の3番目の水平同期信号の発生タイミングにおいて出力映像の垂直同期信号を発生させている(特許文献1の段落0037参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−93834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1垂直走査期間内の各ラインの画素信号のうちどの範囲内のラインの画素信号を有効表示範囲内に表示させるかは、表示装置間で必ずしも一定ではない。このため、ある映像信号をある表示装置に与えた場合には同映像信号における表示領域内の画素信号が同表示装置の有効表示領域内に表示されるが、同映像信号を他の表示装置に与えた場合には同映像信号における表示領域内の画素信号の表示位置が有効表示領域の上または下にずれ、本来表示されるべき映像の上部または下部が欠けた映像が表示装置に表示されるということがあった。
【0005】
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、対象とする表示装置の有効表示領域に表示領域内の画素信号が適切に表示されるように映像信号を調整することが可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、垂直同期信号と水平同期信号と画素信号とを含む映像信号を生成する画像処理装置において、前記映像信号における垂直同期信号と表示領域内の画素信号とが予め入力された位相調整データにより指定された位相関係を持つように、前記垂直同期信号の位相を調整する手段を具備することを特徴とする画像処理装置を提供する。
【0007】
かかる発明によれば、映像信号の供給先である表示装置の仕様に合った適切な位相調整データを画像処理装置に予め入力することにより、映像信号における垂直同期信号と表示領域内の画素信号との位相関係が適切に調整され、表示装置の有効表示領域に表示領域内の画素信号が適切に表示される。
【0008】
この発明は、解像度変換を行う画像処理装置に好適である。何故ならば、この種の画像処理装置は、様々な仕様の表示装置に解像度変換のなされた映像信号を供給することが多いからである。
【0009】
このような解像度変換機能を備えた画像処理装置として、最も一般的なものは、一画面分の映像信号をフィールドメモリに一旦格納し、このフィールドメモリ内の映像信号に解像度変換を施して出力する構成のものである。この種の画像処理装置は、複雑な制御が不要であるものの、大容量のフィールドメモリが必要であるため、装置が大規模かつ高価なものとなる。そこで、1ライン分の画素信号の記憶が可能なラインバッファを複数備え、この複数のラインバッファを利用し、解像度変換を行って表示装置に映像を表示させる画像処理装置が各種提案されている。
【0010】
この種の画像処理装置では、複数のラインバッファに入力映像における各ラインの画素信号を順次書き込む一方、複数のラインバッファに記憶された複数ラインの画素信号のうちの2ライン分の画素信号を用いた解像度変換を行い、出力映像の画素信号を生成する。
【0011】
好ましい態様において、この発明は、このようなラインバッファを利用して解像度変換を行う画像処理装置として、上述した課題を解決するものを提供する。すなわち、この発明は、各々1ライン分の画素信号を記憶する複数のラインバッファと、入力映像の水平同期信号に同期して前記複数のラインバッファを順次選択し、選択したラインバッファに前記入力映像の1ライン分の画素信号を書き込む書き込み制御回路と、前記入力映像の垂直同期信号に応じて、出力映像のライン数に対応した回数だけ出力映像の水平同期信号を出力するとともに、前記入力映像の垂直同期信号に対して、予め入力された位相調整データにより指定された位相関係を持った出力映像の垂直同期信号を出力する同期信号生成回路と、前記出力映像の水平同期信号に応じ、前記複数のラインバッファに記憶された複数ラインの画素信号を用いて、前記入力映像と異なる解像度の出力映像を構成する1ライン分の画素信号を出力する解像度変換手段とを具備することを特徴とする画像処理装置を提供する。
【0012】
この態様によれば、解像度変換手段は、入力映像の表示領域内の画素信号が複数のラインバッファに順次書き込まれるのとほぼ同期間に出力映像の表示領域内の画素信号を生成する。一方、同期信号生成回路は、入力映像の垂直同期信号に対して、予め入力された位相調整データにより指定された位相関係を持った出力映像の垂直同期信号を出力する。従って、出力映像の表示を行う表示装置の仕様に合った適切な位相調整データを画像処理装置に予め入力することにより、解像度変換後の表示領域内の画素信号を表示装置の有効表示領域に適切に表示させることができる。
【0013】
入力映像の垂直同期信号の1周期内に出力映像のライン数に対応した回数だけ出力映像の水平同期信号を出力するための手段に関しては、従来から各種の構成のものが提案されてきた。その1つとして、例えば出力映像の画素の同期信号であるドットクロックの周波数を可変とし、PLL(Phase Locked Loop;位相同期ループ)を利用して、出力映像における垂直同期信号と水平同期信号を入力映像の垂直同期信号に位相同期させる構成のものがある。
【0014】
しかしながら、この構成では、PLLを用いる分だけ装置が大規模化し、かつ、高価になる問題がある。また、映像信号の垂直同期信号は比較的周波数が低いので、この垂直同期信号に正確に位相同期するPLLを構成するのは難しいという問題がある。
【0015】
そこで、この発明の好ましい態様において、同期信号生成回路は、出力映像の画素に同期したドットクロックを用いて、前記入力映像の垂直同期信号の1周期内のドットクロック数をカウントするとともに、前記入力映像の垂直同期信号の1周期内のドットクロック数を出力映像のライン数により除算した商と剰余を算出し、前記商および剰余に基づいて、出力映像の各ラインに割り当てるドットクロック数を表示領域が属するラインと非表示領域が属するラインとで変え、かつ、出力映像の各ラインに割り当てるドットクロック数の総和が前記入力映像の垂直同期信号の1周期内のドットクロック数と等しくなるように調整し、出力映像の各ライン毎に定めたドットクロック数相当の間隔を空けて出力映像の水平同期信号を発生し、前記出力映像の水平同期信号の発生回数をカウントすることにより、前記入力映像の垂直同期信号に対して、予め入力された位相調整データにより指定された位相関係を持った出力映像の垂直同期信号を出力する。
【0016】
この態様によれば、PLLを用いることなく、入力映像の垂直同期信号の1周期内に出力映像のライン数に対応した回数だけ出力映像の水平同期信号を発生させることができる。また、この態様によれば、非表示領域と表示領域とで1ライン当たりのドットクロック数が異なるが、表示領域内では1ライン当たりのドットクロック数が同じであるので、ライン間のドットクロック数の変化に起因したノイズが表示画面に現れるのを防止することができる。
【0017】
この態様では、出力映像における各ラインの1ライン当たりのドットクロック数が画像処理装置内において決定される。従って、画像処理装置の外部において出力映像の垂直同期信号と表示領域内の画素信号との位相関係を調整するのは、極めて困難になる。しかしながら、この態様において、同期信号発生回路は、出力映像の水平同期信号の発生回数をカウントすることにより、入力映像の垂直同期信号に対して、予め入力された位相調整データにより指定された位相関係を持った出力映像の垂直同期信号を出力する。従って、この態様のように、出力映像における各ラインの1ライン当たりのドットクロック数が画像処理装置内において決定される場合においても、出力映像の表示を行う表示装置の仕様に合った適切な位相調整データを画像処理装置に予め入力することにより、解像度変換後の表示領域内の画素信号を表示装置の有効表示領域に適切に表示させることができる。
【0018】
他の好ましい態様において、画像処理装置における同期信号生成回路は、前記出力映像の水平同期信号の発生回数をカウントする垂直カウンタと、前記垂直カウンタのカウント値に基づいて前記出力映像の垂直同期信号を発生する垂直同期信号作成回路とを具備し、前記入力映像の垂直同期信号に応じて、前記位相調整データに基づいて前記垂直カウンタに対するカウント値の設定が行われるように構成されている。
【0019】
この態様によれば、簡単な構成により、入力映像の垂直同期信号に対して、予め入力された位相調整データにより指定された位相関係を持った出力映像の垂直同期信号を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明による画像処理装置の一実施形態である画像表示LSI100の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態における同期信号生成回路103の構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態におけるライン長算出回路33の構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態におけるライン長調整回路307の処理内容を説明する図である。
【図5】同実施形態におけるタイミング生成回路34の構成を示すブロック図である。
【図6】同実施形態における1垂直走査期間内における書き込みライン番号と読み出しライン番号の時間経過に伴う変遷を例示する図である。
【図7】同実施形態の効果を説明する図である。
【図8】この発明の他の実施形態における出力映像の各ラインへのライン長データの適用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
図1は、この発明による画像処理装置の一実施形態である画像表示LSI(Large Scale
Integrated circuit;大規模集積回路)100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この画像表示LSI100は、N個(Nは2以上の整数)のラインバッファ101−k(k=1〜N)と、書き込み制御回路102と、同期信号生成回路103と、読み出し制御回路104と、解像度変換回路105とを有する。
【0022】
ラインバッファ101−k(k=1〜N)は、各々入力映像における1ライン分の画素信号を記憶するバッファである。書き込み制御回路102には、入力映像における垂直走査期間(1画面の期間)の開始を示す垂直同期信号VSIN_Nと、1画面分の入力映像における各ラインの開始を示す水平同期信号HSIN_Nが与えられる。書き込み制御回路102は、垂直同期信号VSIN_Nがアクティブレベル(Lレベル)になり、その後、非アクティブレベル(Hレベル)になった後、水平同期信号HSIN_Nがアクティブレベルとなる毎に、ラインバッファ101−k(k=1〜N)を順次かつ巡回的に選択し、入力映像において水平同期信号HSIN_Nに続く1ライン分の画素信号を選択したラインバッファ101−kに書き込む処理を繰り返す。
【0023】
同期信号生成回路103は、入力映像の垂直同期信号VSIN_Nと、解像度変換後の出力映像の各画素の周期に同期したドットクロックDOTCLKに基づいて、出力映像の1画面の開始を示す垂直同期信号VSYNC_Nと出力映像における各ラインの開始を示す水平同期信号HSYNC_Nを生成する回路である。本実施形態の1つの特徴は、この同期信号生成回路103における垂直同期信号VSYNC_Nの発生タイミングの制御方法にある。なお、この同期信号生成回路103の詳細については後述する。
【0024】
読み出し制御回路104は、垂直同期信号VSYNC_Nがアクティブレベル(Lレベル)になり、その後、非アクティブレベル(Hレベル)になった後、水平同期信号HSYNC_Nがアクティブレベルとなる毎に、出力映像の1ライン分の画素信号を得るために必要な入力映像の2ライン分の画素信号をラインバッファ101−k(k=1〜N)から読み出す制御を行う回路である。さらに詳述すると、読み出し制御回路104は、水平同期信号HSYNC_Nがアクティブレベルとなる都度、その水平同期信号HSYNC_Nに同期させて出力すべき出力映像内の1ライン分の画素信号のライン番号を求め、垂直方向の解像度の変換率に基づいて、この出力映像における1ラインの画素信号を求める補間演算に必要な入力映像における2ラインの位置を求め、これら2ラインの画素信号を記憶している2個のラインバッファ101−k(k=kc−1,kc)を選択する。そして、これら2個のラインバッファ101−k(k=kc−1,kc)から2ライン分の画素信号を解像度変換回路105へ出力させるのである。
【0025】
解像度変換回路105は、このように読み出し制御回路104による制御の下でラインバッファ101−k(k=1〜N)から供給される2ライン分の画素信号を利用して、水平方向および垂直方向の2次元の補間演算を実行し、出力映像を構成する1ライン分の画素信号を算出し、図示しない表示装置に出力する。その際、水平方向の補間用の係数は、算出対象である画素信号の水平方向における画素位置と水平方向の解像度の変換率に基づいて決定され、垂直方向の補間用の係数は、算出対象である画素信号の垂直方向における画素位置と垂直方向の解像度の変換率に基づいて決定される。
【0026】
図2は同期信号生成回路103の構成例を示すブロック図である。図2において、同期化部31は、入力映像の垂直同期信号VSIN_Nを出力映像のドットクロックDOTCLKによりサンプリングして出力する回路である。立ち下がりエッジ検出部32は、ドットクロックDOTCLKによりサンプリングされた同期信号VSIN_NがHレベルからLレベルに転じたときドットクロックDOTCLKの1周期分のパルス幅の垂直リセットパルスVRESETを出力する回路である。ライン長算出回路33は、ドットクロックDOTCLKと、垂直リセットパルスVRESETと、1画面分の出力映像における垂直方向のライン数を示すライン数データVTLとを用いて、出力映像の1ライン分の時間長を示すライン長データHTLを作成する回路である。ここで、ライン数データVTLは、垂直方向における解像度の変換率に基づいて予め決定されるデータである。タイミング生成回路34は、ライン数データVTLと、ライン長算出回路33により作成されたライン長データHTLと、ドットクロックDOTCLKとを用いて、出力映像の垂直同期信号VSYNC_Nおよび水平同期信号HSYNC_Nを生成する回路である。
【0027】
図3はライン長算出回路33の構成例を示すブロック図である。図3において、ライン長カウンタ301およびドットカウンタ302は、いずれもドットクロックDOTCLKのカウントを行うカウンタである。ここで、ライン長カウンタ301のリセット端子Rには垂直リセットパルスVRESETが与えられ、ドットカウンタ302のリセット端子Rには垂直リセットパルスVRESETがORゲート303を介して与えられる。ドットカウンタ302のキャリイン端子CIには固定値“1”が与えられている。一致検出回路304は、ドットカウンタ302のカウント値がライン数データVTLと一致したときに一致信号EQ(=“1”)を出力する。この一致信号EQは、ライン長カウンタ301のキャリイン端子CIに与えられるとともにORゲート303を介してドットカウンタ302のリセット端子Rに与えられる。
【0028】
ここで、ドットカウンタ302、一致検出回路304およびORゲート303からなる回路では、垂直リセットパルスVRESETによるドットカウンタ302のリセット後、ドットカウンタ302によるドットクロックDOTCLKのカウント値が「0」からVTLまでカウントアップされると、一致検出信号EQ=“1”がORゲート303を介してドットカウンタ302のリセット端子Rに与えられ、その直後のドットクロックDOTCLKに同期してドットカウンタ302のカウント値が「0」になる、という動作が繰り返される。すなわち、一致検出信号EQは、VTL+1個のドットクロックDOTCLKがカウントされる度に“1”とされる。また、ライン長カウンタ301は、垂直リセットパルスVRESETによるリセット後、一致検出信号EQ=“1”がキャリイン端子CIに与えられる都度、ドットクロックDOTCLKのカウントを行う。
【0029】
ラッチ305は、垂直リセットパルスVRESETが発生する都度、その時点におけるライン長カウンタ301のカウント値HTL_quotを保持する。また、ラッチ306は、垂直リセットパルスVRESETが発生する都度、その時点におけるドットカウンタ302のカウント値HTL_remを保持する。
【0030】
ここで、ライン長カウンタ301は、VTL+1個のドットクロックDOTCLKのカウントが行われる都度、1だけカウントアップされる。従って、垂直リセットパルスVRESETによりラッチ305に保持されるカウント値HTL_quotは、次式に示すように、当該垂直リセットパルスVRESETの1つ前の垂直リセットパルスVRESETの発生時点から当該垂直リセットパルスVRESETの発生時点までの間、すなわち、1垂直走査期間内に発生したドットクロックDOTCLKの個数DOTCLK_totalをVTL+1により割り算した結果の商となる。
HTL_quot=INT(DOTCLK_total/(VTL+1))……(1)
【0031】
また、ドットカウンタ302は、VTL+1個のドットクロックDOTCLKのカウントが行われる都度、「0」にリセットされる。従って、垂直リセットパルスVRESETによりラッチ306に保持されるカウント値HTL_remは、次式に示すように、1垂直走査期間内に発生したドットクロックDOTCLKの個数DOTCLK_totalをVTL+1により割り算した結果の剰余となる。
HTL_rem=mod(DOTCLK_total、VTL+1) ……(2)
【0032】
ライン長調整回路307は、これらの商HTL_quotおよび剰余HTL_remに基づいて、出力映像の各ラインに対応したライン長データHTLを算出する回路である。図4はこのライン長調整回路307の処理内容を説明する図である。図4に示すように、ライン長調整回路307は、ライン長データHTLを表示領域と非表示領域とで異なる値とし、剰余HTL_remを非表示領域が属するラインにおいて調整する。この調整方法は、以下のようにHTL_rem<VTL/2の場合とHTL_rem≧VTL/2の場合とで異なる。
【0033】
*** HTL_rem<VTL/2の場合 ***
表示領域のHTL
=HTLs
=HTL_quot ……(3)
非表示領域のHTL
=HTLe
=HTL_quot+HTL_rem/非表示ライン数 ……(4)
【0034】
*** HTL_rem≧VTL/2の場合 ***
表示領域のHTL
=HTLs
=HTL_quot+1 ……(5)
非表示領域のHTL
=HTLe
=HTL_quot+1−(VTL+1−HTL_rem)/非表示ライン数……(6)
【0035】
図2におけるタイミング生成回路34は、このようにして表示領域、非表示領域の各領域毎に決定されるライン長データHTLとドットクロックDOTCLKに基づき、出力映像の垂直同期信号VSYNC_Nおよび水平同期信号HSYNC_Nを生成する。
【0036】
図5はこのようなタイミング生成回路34の構成例を示すブロック図である。図5において、水平カウンタ401は、ドットクロックDOTCLKのカウントを行うカウンタである。一致検出回路402は、水平カウンタ401のカウント値がライン長データHTLと一致したときに一致検出信号EQH=“1”を水平カウンタ401のリセット端子Rに与える。ここで、水平カウンタ401は、キャリイン端子CIが“1”に固定されている。従って、水平カウンタ401および一致検出回路402からなる回路では、水平カウンタ401が「0」からHTLまでカウントすると(すなわち、HTL+1個のドットクロックDOTCLKをカウントすると)、一致検出信号EQH=“1”が水平カウンタ401のリセット端子Rに与えられ、その直後のドットクロックDOTCLKに同期して水平カウンタ401のカウント値が「0」とされる、という動作が繰り返される。この間、水平同期信号作成回路406は、水平カウンタ401のカウント値が所定範囲内にある期間だけアクティブレベル(Lレベル)となる水平同期信号HSYNC_Nを作成して出力する。
【0037】
ここで、ライン長算出回路33により算出されるライン長データHTLは、上述したように非表示領域のラインと表示領域のラインとで異なっており、非表示領域が属する各ラインでは「0」から非表示領域用のライン長データHTLeまで水平カウンタ401によるドットクロックDOTCLKのカウントが行われ、表示領域が属する各ラインでは「0」から表示領域用のライン長データHTLsまで水平カウンタ401によるドットクロックDOTCLKのカウントが行われる。ここで、ラインが非表示領域の属するラインであるか表示領域の属するラインであるかは、例えば後述する垂直カウンタ403のカウント値により定めることが可能である。
【0038】
垂直カウンタ403は、水平カウンタ401と同様、ドットクロックDOTCLKのカウントを行うカウンタである。この垂直カウンタ403のキャリイン端子CIには、一致検出回路402からの一致検出信号EQHが供給される。従って、垂直カウンタ403は、一致検出信号EQHが“1”であるときにドットクロックDOTCLKのカウントを行う。一致検出回路404は、垂直カウンタ403のカウント値がライン数データVTLと一致したときに一致検出信号EQV=“1”を出力する。ANDゲート405は、一致検出回路402が出力する一致検出信号EQHと一致検出回路404が出力する一致検出信号EQVの両方が“1”であるときに信号“1”を垂直カウンタ403のリセット端子Rに供給する。
【0039】
従って、垂直カウンタ403、一致検出回路404およびANDゲート405からなる回路では、水平カウンタ401がHTL+1個のドットクロックDOTCLKのカウントを行って一致検出信号EQHが“1”になる毎に、垂直カウンタ403によるドットクロックDOTCLKのカウントが行われ、垂直カウンタ403のカウント値がVTLに到達して一致検出信号EQVが“1”になると、その直後のドットクロックDOTCLKに同期して垂直カウンタ403のカウント値が「0」になる、という動作が繰り返される。ここで、上述した水平同期信号作成回路406は、水平カウンタ401がHTL+1個のドットクロックDOTCLKのカウントを行う間に1回だけ水平同期信号HSYNC_Nをアクティブレベル(Lレベル)とする。従って、垂直カウンタ403のカウント値は、水平同期信号HSYNC_Nの発生回数(より正確にはアクティブレベルの発生回数)を示すものとなる。そして、垂直同期信号作成回路407は、この垂直カウンタ403のカウント値が所定範囲内にある期間だけアクティブレベル(Lレベル)となる垂直同期信号VSYNC_Nを作成して出力する。
【0040】
上述した読み出し制御回路104は、このようにしてタイミング生成回路34によって発生される垂直同期信号VSYNC_Nおよび水平同期信号HSYNC_Nに基づき、ラインバッファ101−k(k=1〜N)から2ライン分の画素信号を読み出し、解像度変換回路105へ供給する。
【0041】
ここで、1垂直走査期間内において、ラインバッファ101−k(k=1〜N)に順次書き込まれる入力映像の各ラインの画素信号のライン番号(以下、書き込みライン番号という。)と、ラインバッファ101−k(k=1〜N)から順次読み出される入力映像の各ラインの画素信号のライン番号(補間用の2ラインのうちライン番号の大きい方。以下、読み出しライン番号という。)の時間経過に伴う変遷は図6に例示するものとなる。
【0042】
この例では、表示領域用のライン長データHTLsと非表示領域用のライン長データHTLeとの間にHTLs<HTLeなる関係がある場合を図示している。この場合、非表示領域では、ライン長データHTLeが大きく出力映像の1ライン分の時間長が長くなるので、ラインバッファ101−k(k=1〜N)から補間のための2ライン分の画素信号の読み出しを行う周期が長くなり、読み出しライン番号の変化の時間勾配は小さくなる。一方、表示領域では、ライン長データHTLsが小さく出力映像の1ライン分の時間長が短くなるので、ラインバッファ101−k(k=1〜N)から補間のための2ライン分の画素信号の読み出しを行う周期が短くなり、読み出しライン番号の変化の時間勾配は大きくなる。しかし、1垂直走査期間を通じてみると、読み出しライン番号の時間勾配は書き込みライン番号の時間勾配と等しくなり、1垂直走査期間を要して、1画面分の各ラインの画素信号のうち解像度変換に必要な全てのラインの画素信号がラインバッファ101−k(k=1〜N)から読み出される。
【0043】
図6に示すように、大きなライン長データHTLeが採用される非表示領域では、時間経過に伴って書き込みライン番号と読み出しライン番号との差が次第に大きくなる。また、小さなライン長データHTLsが採用される表示領域では、時間経過に伴って書き込みライン番号と読み出しライン番号との差が次第に小さくなる。従って、ラインバッファ101−k(k=1〜N)の個数Nは、少なくとも書き込みライン番号と読み出しライン番号との差の最大値よりも大きな値にする必要がある。また、ライン長データHTLsおよびHTLeの値を決定するに当たっては、書き込みライン番号よりも読み出しライン番号が大きくなることがないように考慮する必要がある。前掲式(3)〜(6)は、この点を考慮したものである。
【0044】
特許文献1に実施形態として開示された装置でも、1垂直走査期間内における出力映像の水平同期信号の発生回数を所望の値とするため、出力映像における1ライン分の画素数をラインによって変更するようにしている(特許文献1の段落0053および図4参照)。
【0045】
しかしながら、特許文献1の技術は、本実施形態のように、ライン長データHTLを非表示領域と表示領域とで変えるものではない。本実施形態において、ライン長データHTLは、非表示領域が属するラインか表示領域が属するラインかにより異なったものになるが、表示領域が属する各ラインに対応したライン長データHTLは同じ値である。従って、ライン間のドットクロック数の変化に起因したノイズが表示画面に現れるのを防止することができる。
【0046】
本実施形態の特徴は、外部からの設定により水平カウンタ401および垂直カウンタ403の周期的なカウント動作と垂直リセットパルスVRESETの発生タイミングとの位相関係を調整可能にした点にある。具体的には、次の通りである。まず、図5に示すように、タイミング生成回路34の水平カウンタ401および垂直カウンタ403にはロード端子LDが設けられており、各ロード端子LDには垂直リセットパルスVRESETが与えられる。また、水平カウンタ401および垂直カウンタ403には、予め画像表示LSI100の外部から入力された位相調整データの粗調整部および微調整部が各々与えられる。そして、垂直リセットパルスVRESETがアクティブレベル(Hレベル)になると、タイミング生成回路34では、位相調整データの粗調整部および微調整部がドットクロックDOTCLKに同期して垂直カウンタ403および水平カウンタ401に各々カウント値として設定されるようになっている。従って、本実施形態によれば、垂直リセットパルスVRESETの発生時において、垂直カウンタ403および水平カウンタ401の各カウント値が位相調整データの粗調整部および微調整部となるように、水平カウンタ401および垂直カウンタ403のカウント動作の位相を制御することができる。
【0047】
本実施形態によれば、このように水平カウンタ401および垂直カウンタ403の周期的なカウント動作と垂直リセットパルスVRESETの発生タイミングとの位相関係を調整可能にしたため、出力映像における表示領域と垂直同期信号VSYNC_Nとの位相関係の調整が可能になるという効果が得られる。以下、図7を参照し、この効果について詳述する。
【0048】
まず、本実施形態では、入力映像の表示領域が属する各ラインの画素信号がラインバッファ101−k(k=1〜N)に書き込まれる期間、この書き込み動作と並行して、読み出し制御回路104によってラインバッファ101−k(k=1〜N)から画素信号が読み出され、解像度変換回路105により出力映像における表示領域が属する各ラインの画素信号が生成され、図示しない表示装置に供給される。従って、出力映像において表示領域が属する各ラインの画素信号の発生期間は、入力映像において表示領域が属する各ラインの画素信号の発生期間とほぼ一致する。
【0049】
一方、本実施形態では、入力映像の垂直同期信号VSIN_Nの立ち下がりタイミングに近いタイミングにおいて垂直リセットパルスVRESETが発生し、この垂直リセットパルスVRESETの発生時に位相調整データの粗調整部および微調整部が垂直カウンタ403および水平カウンタ401にカウント値として設定される。
【0050】
ここで、例えば位相調整データの粗調整部がΔY、微調整部が「0」であるとすると、垂直リセットパルスVRESETが発生する都度、タイミング生成回路34では、垂直カウンタ403のカウント値がΔY、水平カウンタ401のカウント値が「0」とされ、垂直リセットパルスVRESETの発生時から1垂直走査期間の間に、垂直カウンタ403のカウント値がΔYからVTLまで進んだ後、「0」となり、「0」からΔYまで進む、という動作が繰り返される。
【0051】
このように、垂直リセットパルスVRESETの発生タイミングにおいて位相調整データに対応したカウント値になるように垂直カウンタ403のカウント動作の位相が調整される。そして、垂直同期信号VSYNC_Nは、このようなカウント動作を行う垂直カウンタ403のカウント値が所定範囲にあるときにアクティブレベル(Lレベル)とされる。従って、垂直カウンタ403にロードするカウント値ΔYを変化させることにより、出力映像における表示領域の画素信号に対する垂直同期信号VSYNC_Nの位相を変化させることができるのである。従って、本実施形態によれば、出力映像の表示を行う表示装置の仕様に合った適切な位相調整データを画像処理装置に予め入力することにより、解像度変換後の表示領域内の画素信号を表示装置の有効表示領域に適切に表示させることができる。
【0052】
なお、以上では、出力映像において表示領域の画素信号に対する垂直同期信号の位相を整数ライン分だけシフトする調整の例を挙げたが、画像表示LSI100の後続の表示装置の仕様によっては、例えば4.5ラインなど非整数ラインの位相シフトが必要になる場合もあり得る。そのような場合には、垂直カウンタ403にロードする位相調整データの粗調整部を必要な位相シフト量の整数部「4」に対応した値とし、水平カウンタ401にロードする位相調整データの微調整部を必要な位相シフト量の小数部「0.5」に対応した値とすればよい。
【0053】
<他の実施形態>
以上、この発明の実施形態を説明したが、この発明には、他にも各種の実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0054】
(1)上記実施形態において、「0」以外の値を持った位相調整データの粗調整部を垂直カウンタ403にロードする場合には、図7に例示するように、非表示領域用に算出されたライン長データHTLeが表示領域の属するラインの水平同期信号HSYNC_Nの生成に用いられ、表示領域内にライン間でドットクロック数の変化する境界が発生し、これがノイズの原因となる。そこで、「0」以外の値を持った位相調整データの粗調整部を垂直カウンタ403にロードする場合には、図8に例示するように、非表示領域用に算出されたライン長データHTLeを適用するライン番号(垂直カウンタ403のカウント値)と表示領域用に算出されたライン長データHTLsを適用するライン番号(垂直カウンタ403のカウント値)とを位相調整データの粗調整部ΔYだけ垂直方向下方にシフトし、非表示領域用に算出されたライン長データHTLeが非表示領域に、表示領域用に算出されたライン長データHTLsが表示領域に適用されるようにしてもよい。
【0055】
(2)垂直同期信号VSYNC_Nをアクティブレベルとするときの垂直カウンタ403のカウント値を位相調整データに応じて増減することにより、出力映像の垂直同期信号VSYNC_Nと表示領域の画素信号との間に所望の位相関係を持たせてもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では、位相調整データにより、垂直カウンタ403および水平カウンタ401に所望のカウント値をロードしたが、垂直カウンタ403のみに所望のカウント値をロードするようにしてもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では、この発明を解像度変換を行う画像処理装置に適用したが、解像度変換以外の画像処理を行う画像処理装置に適用してもよい。また、上記実施形態では、垂直同期信号と水平同期信号と画素信号とを含む入力映像の映像信号を受け取って、垂直同期信号と水平同期信号と画素信号とを含む出力映像の映像信号を出力する画像処理装置にこの発明を適用したが、入力映像の映像信号を受け取らず、例えばアミューズメント機器等において記憶媒体から各種のパターンデータを読み出して描画を行うことにより、垂直同期信号と水平同期信号と画素信号とを含む映像信号を出力する画像処理装置にこの発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
100……画像表示LSI、101−k(k=1〜N)……ラインバッファ、102……書き込み制御回路、103……同期信号生成回路、104……読み出し制御回路、105……解像度変換回路、31……同期化部、32……立ち下がりエッジ検出部、33……ライン長算出回路、34……タイミング生成回路、301……ライン長カウンタ、302……ドットカウンタ、303……ORゲート、304,402,404……一致検出回路、305,306……ラッチ、307……ライン長調整回路、401……水平カウンタ、403……垂直カウンタ、405……ANDゲート、406……水平同期信号作成回路、407……垂直同期信号作成回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直同期信号と水平同期信号と画素信号とを含む映像信号を生成する画像処理装置において、
垂直同期信号と表示領域内の画素信号とが予め入力された位相調整データにより指定された位相関係を持つように、前記垂直同期信号の位相を調整する手段を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
各々1ライン分の画素信号を記憶する複数のラインバッファと、
入力映像の水平同期信号に同期して前記複数のラインバッファを順次選択し、選択したラインバッファに前記入力映像の1ライン分の画素信号を書き込む書き込み制御回路と、
前記入力映像の垂直同期信号に応じて、出力映像のライン数に対応した回数だけ出力映像の水平同期信号を出力するとともに、前記入力映像の垂直同期信号に対して、予め入力された位相調整データにより指定された位相関係を持った出力映像の垂直同期信号を出力する同期信号生成回路と、
前記出力映像の水平同期信号に応じ、前記複数のラインバッファに記憶された複数ラインの画素信号を用いて、前記入力映像と異なる解像度の出力映像を構成する1ライン分の画素信号を出力する解像度変換手段と
を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記同期信号生成回路は、出力映像の画素に同期したドットクロックを用いて、前記入力映像の垂直同期信号の1周期内のドットクロック数をカウントするとともに、前記入力映像の垂直同期信号の1周期内のドットクロック数を出力映像のライン数により除算した商と剰余を算出し、前記商および剰余に基づいて、出力映像の各ラインに割り当てるドットクロック数を表示領域が属するラインと非表示領域が属するラインとで変え、かつ、出力映像の各ラインに割り当てるドットクロック数の総和が前記入力映像の垂直同期信号の1周期内のドットクロック数と等しくなるように調整し、出力映像の各ライン毎に定めたドットクロック数相当の間隔を空けて出力映像の水平同期信号を発生し、前記出力映像の水平同期信号の発生回数をカウントすることにより、前記入力映像の垂直同期信号に対して、予め入力された位相調整データにより指定された位相関係を持った出力映像の垂直同期信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記同期信号生成回路は、前記出力映像の水平同期信号の発生回数をカウントする垂直カウンタと、前記垂直カウンタのカウント値に基づいて前記出力映像の垂直同期信号を発生する垂直同期信号作成回路とを具備し、前記入力映像の垂直同期信号に応じて、前記位相調整データに基づく前記垂直カウンタに対するカウント値の設定が行われるように構成されたことを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−256604(P2010−256604A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106283(P2009−106283)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】