説明

画像処理装置

【課題】原稿画像を光電的に読み取った画像データに基づいて、比較的少ない容量のメモリを用いて、画像データ内における網点領域を適切に判別する。
【解決手段】原稿画像を読み取って取得された画像データにおけるピーク候補画素をピーク候補画素検出部41によって検出し、画像データにおける所定の注目画素を中心とする参照領域内におけるピーク候補画素以外の非ピーク候補画素の数が、所定の網点判定閾値以上である場合に、上記注目画素が網点領域に属する画素であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿画像を読み取って取得された画像データの各画素が網点領域に属する画素であるか否かを判定する属性判定部を備えた画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機などにおいて原稿画像を光電的に読み取った画像データに基づいて、その画像データ内の文字領域、写真領域、網点領域などの領域判別を行い、その各領域に応じた画像処理を行うことによって高画質な印刷画像を取得する方法が提案されている。
【0003】
たとえば、文字領域に対しては比較的強いエッジ強調処理を施すことによって文字の輪郭がくっきりするようにしたり、写真領域に対しては比較的弱いエッジ強調処理を施すことによってメリハリをつけたり、網点領域に対しては平滑化処理を施すことによってモアレの発生を低減させたりすることが提案されている。
【0004】
ここで、原稿画像の解像度と印刷解像度が近いが少しずれているような場合にはモアレが発生しやすいが、それ以外の場合、たとえば、印刷画像の解像度が低解像度であって誤差拡散処理によって出力画像データを生成するような複写機の場合、網点領域にモアレは発生しにくいため上述したような平滑化処理を行う必要はない。
【0005】
しかしながら、網点領域と文字領域との判別が適切行われなかった場合、網点領域は文字領域と判別されてしまい、これによりエッジ強調処理が施されてモアレが発生してしまう問題がある。また、たとえば網点領域の一部だけに対してエッジ強調処理が施された場合には、その一部の領域と周辺領域との濃度差が発生して印刷画像の画質が著しく劣化する問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、網点領域を精度良く検出方法が種々提案されている。たとえば、特許文献1においては、画像データの各画素データに基づいてピーク画素を検出し、図16に示すように、所定の注目画素を中心とする参照領域R内におけるピーク画素PPの数をカウントし、そのピーク画素が所定の閾値以上である場合に上記注目画素を網点領域に属する画素として判別する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−219366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の網点の属性の判定方法によれば、図16に示すようなピーク画素PPを複数見つける必要があり、たとえば、100線45度の網点の原稿画像を600dpiで光電的に読み取る場合には、図17に示すように、最低でも9画素×9画素の参照領域を確保する必要がある。なお、図17は模式図であり、100lpiの線の間隔と600dpiの画素の大きさとの関係は正確なものではない。
【0009】
さらに、網点属性の判定精度を上げようとするならば、もっと多くの数のピーク画素を検出する必要があるため、参照領域をもっと広く確保する必要があり、その参照領域に対応する大きさ容量を備えたメモリが必要となり、コストアップになる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、上述したような大きな容量のメモリを必要とすることなく、網点領域を適切に判別することができる画像処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像処理装置は、原稿画像を読み取って取得された画像データにおけるピーク候補画素を検出するピーク候補画素検出部と、画像データにおける所定の注目画素を中心とする参照領域内におけるピーク候補画素以外の非ピーク候補画素の数が、所定の網点判定閾値以上である場合に、注目画素が網点領域に属する画素であると判定する属性判定部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の画像処理装置においては、画像データにおける所定の注目画素について、線らしさを表す指標を算出する線らしさ算出部を設け、属性判定部を、線らしさ算出部において算出された線らしさを表す指標が、所定の文字判定閾値以上である場合に、注目画素が文字に属する画素であると判定するものとできる。
【0013】
また、画像データにおける所定の注目画素がエッジ画素であるか否かを判定するエッジ画素判定部を設け、属性判定部を、注目画素がエッジ画素であると判定され、かつ線らしさを表す指標が文字判定閾値以上である場合に、注目画素が文字に属する画素であると判定するものとできる。
【0014】
また、属性判定部を、画像データにおける所定の注目画素を中心とする参照領域内における非ピーク候補画素の数が網点判定閾値未満であって、かつ注目画素の線らしさを表す指標が文字判定閾値未満で所定の閾値以上である場合に、注目画素が文字と網点との間に属する画素であると判定するものとできる。
【0015】
また、属性判定部を、画像データにおける所定の注目画素を中心とする参照領域内における非ピーク候補画素の数が網点判定閾値未満であって、かつ注目画素の線らしさを表す指標が所定の閾値未満である場合に、注目画素が写真に属する画素であると判定するものとできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像処理装置によれば、原稿画像を読み取って取得された画像データにおけるピーク候補画素を検出し、画像データにおける所定の注目画素を中心とする参照領域内におけるピーク候補画素以外の非ピーク候補画素の数が、所定の網点判定閾値以上である場合に、注目画素が網点領域に属する画素であると判定するようにしたので、上述したようなピーク画素の数に基づいて網点である否かを判定する方法と比較すると参照領域を小さくすることができ、属性判定をする際に用いるメモリの容量を少なくすることができる。
【0017】
また、上記本発明の画像処理装置において、画像データにおける所定の注目画素について、線らしさを表す指標を算出し、その線らしさを表す指標が、所定の文字判定閾値以上である場合に、注目画素が文字に属する画素であると判定するようにした場合には、網点を細線や文字と誤判定することなく、細線や文字を検出することができる。これにより網点に強いエッジ強調処理が施されてモアレが発生することを防止することができるとともに、細線や文字には強いエッジ強調処理を施して輪郭をはっきりさせることができる。
【0018】
また、画像データにおける所定の注目画素がエッジ画素であるか否かを判定し、注目画素がエッジ画素であると判定され、かつ線らしさを表す指標が文字判定閾値以上である場合に、注目画素が文字に属する画素であると判定するようにした場合には、文字をより適切に検出することができるとともに、写真領域内に存在する文字についても適切に検出することができる。なお、ここでいう写真領域とは、文字や絵などを含む写真画像全体の領域のことを意味するものとする。
【0019】
また、画像データにおける所定の注目画素を中心とする参照領域内における非ピーク候補画素の数が網点判定閾値未満であって、かつ注目画素の線らしさを表す指標が文字判定閾値未満で所定の閾値以上である場合に、注目画素が文字と網点との間に属する画素であると判定するようにした場合には、文字と網点との間の中間的な属性の画素を判定し、このような明らかに文字でない属性の画素には、文字のような強いエッジ強調処理を施すことなく、文字と網点との中間的なエッジ強調処理や濃度変換処理を施すようにすることによって、違和感のない画質の印刷画像を得ることができる。
【0020】
また、画像データにおける所定の注目画素を中心とする参照領域内における非ピーク候補画素の数が網点判定閾値未満であって、かつ注目画素の線らしさを表す指標が所定の閾値未満である場合や、参照領域内の全ての画素が非ピーク候補画素である場合に、注目画素が写真に属する画素であると判定するようにした場合には、写真の属性の画素を適切に検出することができ、その属性に応じたエッジ強調処理や濃度変換処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の画像処理装置の一実施形態を用いた印刷装置の概略構成を示すブロック図
【図2】図1に示す画像処理部の構成を示すブロック図
【図3】図2に示す網点らしさ取得部の構成を示すブロック図
【図4】本発明の画像処理装置の一実施形態を用いた印刷装置の全体の処理の流れを説明するためのフローチャート
【図5】網点らしさ取得部の作用を説明するためのフローチャート
【図6】ラプラシアンフィルタの線画像と孤立点に対する反応を説明するための図
【図7】ピーク候補画素検出のために用いられるラプラシアンフィルタ係数の一例を示す図
【図8】直交するラプラシアンフィルタ係数のラプラシアン量が同符号の場合と異符号の場合とを説明するための図
【図9】非ピーク候補画素の数をカウントするための参照領域の一例を示す図
【図10】網点領域のピーク候補画素と非ピーク候補画素との比率と、文字や線のピーク候補画素と非ピーク候補画素との比率との相違を説明するための図
【図11】線らしさ取得部の作用を説明するためのフローチャート
【図12】線検出フィルタ係数の一例を示す図
【図13】エッジ画素判定用の微分フィルタ係数の一例を示す図
【図14】属性判定部の作用を説明するためのフローチャート
【図15】写真の属性の画素に対して濃度変換処理を施す際に用いられるガンマ曲線と、文字の属性の画素に対して濃度変換処理を施す際に用いられるガンマ曲線との一例を示す図
【図16】従来の網点領域の判定方法を説明するための図
【図17】従来の網点領域の判定方法において必要とされる参照領域の大きさを説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の画像処理装置を用いた印刷装置の一実施形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態の印刷装置の概略構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施形態の印刷装置1は、図1に示すように、原稿画像を光電的に読み取って画像データを取得する原稿画像読取部10と、原稿画像読取部10によって読み取られた画像データにおける文字領域、網点領域および写真領域などを判定し、各領域に対してそれぞれに適応した互いに異なる画像処理を施す画像処理部20と、画像処理部20において画像処理の施された処理済画像データに基づいて印刷用紙に対して印刷処理を施す印刷部30とを備えている。
【0024】
原稿画像読取部10は、原稿画像の画像情報を光電的に読み取るラインイメージセンサを有し、ラインイメージセンサで原稿画像を走査することによって原稿画像を読み取り、原稿画像を表す画像データをビットマップデータとして出力するものである。本実施形態においては、ビットマップデータを構成する各画素データは8ビットで表されるものであり、0〜255の値をとり得るものである。
【0025】
画像処理部20は、図2に示すように、入力された画像データに基づいて各画素について網点らしさを表す指標を取得する網点らしさ取得部21と、入力された画像データに基づいて各画素がエッジ画素であるか否かを判定するエッジ画素判定部22と、入力された画像データに基づいて各画素について線らしさを表す指標を取得する線らしさ取得部23と、上記の網点らしさを表す指標、エッジ画素判定結果および線らしさを表す指標に基づいて、各画素について、文字領域、網点領域および写真領域などの属性を判定する属性判定部24と、属性判定部24において判定された属性に基づいて、各画素データに対してその属性に適応したエッジ強調処理を施すエッジ強調処理部と、各画素データに対してその属性に適応した濃度変換処理を施す濃度変換処理部26と、エッジ強調処理および濃度変換処理の施された画像データに対してハーフトーニング処理を施すハーフトーニング処理部27とを備えている。上記の各部の詳細な作用については、後で詳述する。
【0026】
図3は、画像処理部20における網点らしさ取得部21のより具体的な構成を示すブロック図である。網点らしさ取得部21は、図3に示すように、入力された画像データを一時記憶するデータメモリ40と、データメモリ40に記憶された画像データに基づいて、ピーク候補画素を検出するピーク候補画素検出部41と、ピーク候補画素検出部41によって検出されたピーク候補画素の位置情報を記憶するピークメモリ42と、ピーク候補画素検出部41によって検出されたピーク候補画素に基づいて、所定の参照領域内の非ピーク候補画素の数を算出し、これを網点らしさを表す指標として取得する網点らしさ算出部43とを備えている。上記の各部の詳細な作用についても、後で詳述する。
【0027】
印刷部30は、画像処理部20においてエッジ強調処理や濃度変換処理の施された処理済画像データに基づいて、印刷用紙に印刷を施すものである。印刷部30としては、たとえば、孔版印刷やインクジェットプリントやレーザープリントなどを行うものを用いることができる。
【0028】
次に、本実施形態の印刷装置1の作用について、図4〜図15を適宜参照しながら説明する。なお、図4に示すフローチャートは、印刷装置1における原稿画像の読取りから印刷用紙への印刷処理までの全体の処理の流れを示したものである。また、図5に示すフローチャートは、図4に示す網点らしさの取得(S12)の処理をより詳細に示したものであり、図11に示すフローチャートは、図4に示す線らしさの取得(S16)の処理をより詳細に示したものであり、図14に示すフローチャートは、図4に示す属性の判定(S18)の処理をより詳細に示したものである。
【0029】
まず、図4に示すフローチャートのように、原稿画像読取部10の原稿台に原稿が設置され、押圧板により押圧された状態でラインイメージセンサにより走査されて画像データが読み取られる(S10)。
【0030】
そして、原稿画像読取部10において読み取られた画像データは、それぞれ網点らしさ取得部21とエッジ画素判定部22と線らしさ取得部23とに入力され、網点らしさ取得部21においては各画素の網点らしさを表す指標が取得され、エッジ画素判定部22においてはエッジ画素の判定が行われ、線らしさ取得部23においては各画素の線らしさを表す指標が取得される(S12〜S16)。
【0031】
ここで、まず、網点らしさ取得部21の処理について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0032】
原稿画像読取部10から出力された画像データは、網点らしさ取得部21のデータメモリ40に5ライン分ずつ順次記憶される(S30)。
【0033】
そして、ピーク候補画素検出部41において、データメモリ40に記憶された5ライン分の画像データに基づいて網点検出の基礎となるピーク候補画素の検出が行われるが、本実施形態においては、画像データの濃度振幅の2次微分であるラプラシアン量を算出し、そのラプラシアン量に基づいてピーク候補画素の検出を行う。このようにラプラシアン量を用いるのは、ラプラシアン量は、図6の左側に示すような線の原画像よりも図6の右側に示すような孤立点に対して大きく反応するからである。
【0034】
ピーク候補画素検出部41は、まず、図7(a)〜(d)に示す4組8種類のフィルタ係数を用いて各画素についてラプラシアン量を算出する(S32)。図7(a)〜(d)の各組における2つのフィルタ係数は、互いに直交する方向に0以外の数値が配置されるように作成されたものである。また、図7(a)〜(d)の4組のフィルタ係数は、互いに異なる4つの直交方向のラプラシアン量が算出できるように作成されたものである。なお、本実施形態においては、フィルタ係数として5行×5列のものを利用するようにしたが、これに限らず、これよりも小さい3行×3列のものを用いてもよい。
【0035】
具体的には、ピーク候補画素検出部41は、図7(a)に示す2つのフィルタ係数を用いて、下式を算出することによってLap1[a]およびLap2[a]を算出する。なお、data(j,i)は所定の注目画素の座標値(j,i)の画素データの値を示すものであり、jは図7(a)〜(d)に示すように縦方向の座標値を意味し、iは横方向の座標値を意味するものとする。
【0036】
Lap1[a]=−data(j,i)×2+(j−2,i)+data(j+2,i)
Lap2[a]=−data(j,i)×2+(j,i+2)+data(j+2,i-2)
また、ピーク候補画素検出部41は、図7(b)に示す2つのフィルタ係数を用いて、下式を算出することによってLap1[b]およびLap2[b]を算出し、図7(c)に示す2つのフィルタ係数を用いて、下式を算出することによってLap1[c]およびLap2[c]を算出し、図7(d)に示す2つのフィルタ係数を用いて、下式を算出することによってLap1[d]およびLap2[d]を算出する。
【0037】
Lap1[b]=−data(j,i)×2+(j−2,i+1)+data(j+2,i−1)
Lap2[b]=−data(j,i)×2+(j+1,i+2)+data(j−1,i-2)
Lap1[c]=−data(j,i)×2+(j−2,i+2)+data(j+2,i−2)
Lap2[c]=−data(j,i)×2+(j+2,i+2)+data(j−2,i-2)
Lap1[d]=−data(j,i)×2+(j−1,i+2)+data(j+1,i−2)
Lap2[d]=−data(j,i)×2+(j+2,i+1)+data(j−2,i-1)
次に、ピーク候補画素検出部41は、各画素についてそれぞれ算出された4組のラプラシアン量を参照し、ラプラシアン量Lap1とLap2とが全ての組において同符号となるような画素をピーク候補画素検出対象とし(S34,YES,S36)、4組のラプラシアン量のうちのいずれかの組のラプラシアン量Lap1とLap2とが異符号である画素についてはピーク候補画素検出対象から除外する(S34,NO,S38)。
【0038】
ここで、互いに直交する方向のラプラシアン量Lap1とLaP2とが異なる符号であるとは、図8(a)に示すような濃度分布の画素であることを意味し、ラプラシアン量Lap1とLaP2とが同じ符号であるとは、図8(b)に示すような濃度分布の画素であることを意味している。そして、図8(a)に示すような濃度分布である画素は線や文字である可能性が高く、図8(b)に示すようの濃度分布である画素は網点のような孤立点である可能性が高い。
【0039】
次いで、ピーク候補画素検出部41は、S36においてピーク候補画素検出対象とされた画素について、各組のラプラシアン量Lap1とLap2とを加算して、その加算した値をピーク値Pvalとして取得する(S40)。そして、各画素について取得された4つのピーク値Pvalが全て正の場合には、その中の最大値を極大値Plus_Maxとして取得し、4つのピーク値Pvalが全て負の場合には、その中の絶対値が最大のものを極小値Minus_Maxとして取得する(S42)。
【0040】
ここで、各画素について取得された4つのピーク値Pvalが全て正であるということは正のピーク成分が大きく寄与していることになり、すなわち原稿画像としては谷である可能性が高いことになる。逆に、4つのピーク値Pvalが全て負であるということは負のピーク成分が大きく寄与していることになり、すなわち原稿画像としては山である可能性が高いことになる。
【0041】
次に、上述したようにして取得された極大値Plus_Maxまたは極小値Minus_Maxの絶対値と、予め設定されたピーク閾値とを比較し(S44)、極大値Plus_Maxまたは極小値Minus_Maxの絶対値がピーク閾値よりも大きい場合には、その画素をピーク候補画素として判定する(S46)。一方、極大値Plus_Maxまたは極小値Minus_Maxの絶対値がピーク閾値以下である場合には、その画素を非ピーク候補画素として判定する(S48)。なお、このとき用いるピーク閾値は、例えば、実験的に求めたピーク値に対して、ピーク周辺のピーク候補画素を検出するため、上記ピーク値よりも比較的低い値に設定することが望ましい。また、S38においてピーク候補画素検出対象から除外された画素も非ピーク候補画素として判定されることになる。
【0042】
上述したようにしてピーク候補画素検出部41においてピーク候補画素が検出され、そのピーク候補画素の位置を特定する情報がピークメモリ42に記憶される。
【0043】
次に、網点らしさ算出部43がピークメモリ42を参照し、図9に示すように、所定の注目画素Pを中心とする5画素×5画素の参照領域内に存在するピーク候補画素の数をカウントし、参照領域内の全画素数25画素からピーク候補画素数を減算して非ピーク候補画素数を算出し、その非ピーク候補画素数を上記注目画素の網点らしさを表す指標として取得する(S50)。そして、画像データを構成する全ての画素を順次注目画素として上記と同様の演算を行うことによって、各画素の網点らしさを表す指標が取得される。なお、このとき参照領域内の画素が全て非ピーク候補画素である場合には、その注目画素については、網点らしさを表す指標を255とし、後述するように写真の属性に判定されるものとする。なお、いわゆる写真領域以外の用紙の余白なども全て非ピーク候補画素となり、写真の属性として判断されることになる。
【0044】
本実施形態においては、上述したようにピーク候補画素数ではなく、非ピーク候補画素数を網点らしさを表す指標としているが、このようにするのは画像データ内の比較的狭い領域でピーク候補画素数と非ピーク候補画素数とを比較した場合、たとえば網点領域の場合には、図10(a)に示すように非ピーク候補画素数の方がピーク候補画素数よりも多くなり、文字や線の領域である場合には、図10(b)に示すように網点領域に比較するとピーク候補画素数の割合が大きくなって非ピーク候補画素数が少なくなるからであり、非ピーク候補画素数を網点らしさを表す指標とすることによって文字や線と区別して網点領域を適切に判定することができるからである。
【0045】
また、このように比較的狭い領域でのピーク候補画素数と非ピーク候補画素数とを検出するので、上述したデータメモリ40やピークメモリ42の容量を小さくすることができるからである。
【0046】
ただし、細い線を含む文字や単なる細い線などについては、比較的狭い領域内であっても非ピーク候補画素数が増えてくるので、これらの領域を網点領域と誤判定してしまう可能性がある。
【0047】
そこで、本実施形態においては、上述したようにエッジ画素判定部22や、線らしさ取得部23を設け、これらの処理結果も用いることによって領域判定の精度をより高いものとしている。
【0048】
また、詳細は後述するが、本実施形態においては、網点領域と文字領域とのいずれか一方に判定するのではなく、網点と文字との間に属する領域を設定し、この領域に対しては文字と網点との中間の画像処理を施すことによって違和感のない画質の印刷画像を得るようにする。そして、この網点と文字との間に属する領域を判定するためにも、上述した線らしさ取得部23の処理結果を用いるようにしている。
【0049】
以下、この線らしさ取得部23の処理(図4のS16)について、図11に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0050】
まず、線らしさ取得部23は、所定の注目画素について、図12に示す4つの線検出フィルタ係数を用いて4つの線成分量line1〜line4を算出する(S60)。なお、線成分量の演算方法については、通常のフィルタ演算と同様であるので詳細な演算式については説明を省略する。
【0051】
そして、互いに直交する線検出フィルタ係数の線成分量を1つの組とし、すなわちline1とline2を1つの組、line3とline4を1つの組として、各組について、各線成分量の絶対値の差分をline_valueとして算出する(S62)。
【0052】
次に、上述したようにして算出された2つのline_valueのうちの大きい方の値を線らしさを表す指標として取得する(S64)。なお、このとき後述する属性判定の都合上、線らしさを表す指標は128を最大値とする必要があるため、line_valueを12で除算した値が線らしさを表す指標として取得される。そして、画像データを構成する全ての画素を順次注目画素として上記と同様の演算を行うことによって、各画素の線らしさを表す指標が取得される。
【0053】
次に、エッジ画素判定部22の処理(図4のS14)について説明する。このエッジ画素判定部22におけるエッジ画素の判定は、文字の輪郭部分を抽出するために行われるものである。
【0054】
エッジ画素判定部22は、具体的には、所定の注目画素について、図13に示す4つの微分フィルタ係数を用いてエッジ量edge1〜edge4を算出し、このedge1〜edge4の絶対値のうちの最も大きい値をMax_edgeとして取得する。
【0055】
そして、このMax_edgeと予め設定されたエッジ閾値とを比較し、Max_edgeの方がエッジ閾値よりも大きい場合には、その注目画素をエッジ画素と判定する。一方、Max_edgeがエッジ閾値以下の場合には、その注目画素を非エッジ画素と判定する。そして、画像データを構成する全ての画素を順次注目画素として上記と同様の演算を行うことによって、エッジ画素であるか否かを示す判定結果が取得される。
【0056】
上述したようにして、画像データを構成する全ての画素について、それぞれ網点らしさを表す指標と、線らしさを表す指標と、エッジ画素であるか否かを示す判定結果とが取得される。
【0057】
そして、この各画素の網点らしさを表す指標、線らしさを表す指標およびエッジ画素判定結果は属性判定部24に入力され、属性判定部24は、これらに基づいて各画素の属性を判定する(図4のS18)。本実施形態においては、細線、文字、網点、文字と網点の間および写真の5つの属性が設定されており、各画素についていずれか1つの属性が割り当てられる。以下、属性判定部24の属性判定方法について、図14に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは線らしさを表す指標をline_like、網点らしさを表す指標をamiと呼ぶこととする。
【0058】
属性判定部24は、まず、各画素のline_likeを参照し、line_likeが50以上である場合には(S70,YES)これを全て50に丸め(S72)、50より小さい場合にはそのままの値とする。なお、ここでline_likeを50に丸めるようにしたのは、実験により文字のline_likeは50以下の値をとることがわかったからである。ただし、これは一つの実験例であってこれに限られるものではない。
【0059】
次に、属性判定部24は、各画素のline_likeが38よりも大きいか否かを判定し、38よりも大きい場合には(S74,YES)、その画素の属性を細線と判定する(S76)。なお、ここで閾値として38を用いるようにしたのは、実験により網点のline_likeは38より大きい値をとらないことがわかったからである。ただし、これは一つの実験例であってこれに限られるものではない。
【0060】
次に、各画素のline_likeが27より大きいか否かが判定されるとともに、amiの値が参照され、line_likeが27より大きいまたはami=255の画素であって、かつその画素がエッジ画素である場合には(S78,YES)、その画素の属性は文字と判定される(S80)。なお、ここで閾値として27を用いるようにしたのは、実験により若干の網点のline_likeは27の近傍をとり得ることがわかっているが、文字周りの画素をより多く含めるようにするためである。ただし、これは一つの実験例であってこれに限られるものではない。また、ここでami=255かつエッジ画素である場合に、その属性を文字と判定するようにしているには、写真領域内におけるエッジ部をここで検出するためである。すわなち、本実施形態においては、写真領域内においてもエッジ部や文字については、文字の属性として判定するようにしている。
【0061】
次に、各画素のamiが参照され、amiが8よりも大きい場合には(S82,YES)、その画素の属性は網点と判定される(S84)。なお、ここで閾値として8を用いるようにしたのは、実験により網点のamiが8より大きいことがわかったからであるが、これは一つの実験例であってこれに限られるものではない。
【0062】
次に、各画素のline_likeが参照され、line_likeが15よりも大きい場合には(S86,YES)、その画素の属性は文字と網点の間と判定される(S88)。一方、line_likeが15以下である場合には(S86,NO)、その画素の属性は写真と判定される(S90)。なお、ここでは、line_likeが38以下で比較的大きな値をとったときでも、属性としては網点と文字との中間のようなものであり、中間程度の処理を施すのが良いため、明らかに写真といえる値を考慮して15を採用するようにした。ただし、これは一つの例であってこれに限られるものではない。
【0063】
上述のようにして、属性判定部24は、画像データを構成する全ての画素に対して属性を割り当てるが、どの属性かを示す情報として各画素に属性値を割り当てる。具体的には、細線の属性を示す属性値として0、文字の属性を示す属性値として16、網点の属性を示す属性値として128、文字と網点の間の属性を示す属性値として196〜230、写真の属性を示す属性値として255を割り当てる。なお、文字と網点の間の属性を示す属性値は、line_likeの大きさに応じて196〜230まで変化するものであり、line_likeは図14のS86における判定によると16〜50まで変化するものであるので、line_likeが16の場合は230、line_likeが50である場合には196となる。すなわち、line_likeが大きいほど属性値が小さくなることになる。
【0064】
そして、次に、上述したようにして各画素に割り当てられた属性値に基づいて、エッジ強調処理部25において画像データの各画素データに対してエッジ強調処理が施される(図4のS20)。本実施形態のエッジ強調処理部25は、ラプラシアンフィルタを用いてエッジ強調を施すものである。ラプラシアンのフィルタ係数については、通常用いられるような3×3や5×5のものを用いるようにすればよい。
【0065】
そして、エッジ強調処理部25は、具体的には、画像データを構成する各画素データdata(j,i)と、ラプラシアンフィルタを用いて求められたラプラシアン量lapとに基づいて、下式を演算することによって処理済画素sdata(j,i)を算出する。
【0066】
sdata(j,i)=data(j,i)−lap×weight
上式におけるweightは、各画素データdata(j,i)に割り当てられた属性値に応じて変化するものであり、たとえば、属性値が0(細線)の場合にはweight=1.5とし、属性値が16(文字)の場合にはweight=1とし、属性値が128(網点)または255(写真)の場合にはweight=0とすることができる。
【0067】
そして、属性値が196〜230(文字と網点の間)の場合には、weightは、たとえば下式によって算出される。なお、line_like’=属性値−196であり、また下式の35は属性値の範囲である。
【0068】
weight=(35−line_like’)/35
上述したようにして、weightを決定してエッジ強調処理を施すことによって、細線の画素データには強めのエッジ強調処理がほどこされ、文字の画素データには通常のエッジ強調処理が施され、文字と網点の間の属性の画素データには、その線らしさの指標に応じた比率のエッジ強調処理が施される。そして、網点と写真の画素データにはエッジ強調処理を施さないようにすることができる。
【0069】
次に、エッジ強調処理部25においてエッジ強調処理が施された後、濃度変換処理部26においてエッジ強調処理済画素データに対して濃度変換処理が施される(図4のS22)。
【0070】
濃度変換処理は、文字の内部が濃くなるように変換しようとすると写真のシャドー部分がつぶれてしまい、全体的に暗い印象の画像となってしまう。
【0071】
そこで、これを解消するために、本実施形態の濃度変換処理部26は、文字に対してはコントラストの強いガンマ曲線を用いて濃度変換処理を施し、写真には文字のガンマ曲線よりも明るくなるようなガンマ曲線を用いて濃度変換処理を行うようにする。また、細線に対しては文字と同じガンマ曲線を用いて、網点に対しては写真と同じガンマ曲線を用いて濃度変換処理を行う。図15は、文字と細線の属性の画素に対して濃度変換処理を施す際に用いられるガンマ曲線と、写真と網点の属性の画素に対して濃度変換処理を施す際に用いられるガンマ曲線との一例を示したものである。
【0072】
そして、濃度変換処理部26は、文字と網点との間の属性の画素に対して濃度変換処理を施す際には、図15に示す写真の画素に対して用いられるガンマ曲線と、文字の画素に対して用いられるガンマ曲線との両方を用い、対象となる画素のami(網点らしさの指標)の大きさに基づいて、これらのガンマ曲線の比率を変化させて濃度変換処理を行う。具体的には、下式に基づいて濃度変換処理済画素データoutdata(j,i)を算出する。
【0073】
outdata(j,i)=
{(35−line_like’)*gamma1[data(j,i)] + line_like’×gamma2[data(j,i)]}/35
gamma1:写真、網点用のガンマ曲線を示す式
gamma2:文字、細線用のガンマ曲線を示す式
上述したようにして、画像データの各画素データに対して、その属性に応じた濃度変換処理が施され、その濃度変換処理済画像データは、ハーフトーニング処理部27に入力される。そして、ハーフトーニング処理部27においては、濃度変換処理済画像データに対してハーフトーニング処理が施される(図4のS24)。ハーフトーニング処理としては、たとえば、誤差拡散法やディザ法などがある。
【0074】
そして、ハーフトーニング処理部27においてハーフトーニング処理の施された処理済画像データは、画像処理部20から出力されて印刷部30に入力される。
【0075】
そして、印刷部30において、入力された処理済画像データに基づいて印刷用紙に印刷処理が施される(図4のS26)。
【符号の説明】
【0076】
1 印刷装置
10 原稿画像読取部
20 画像処理部
21 網点らしさ取得部
22 エッジ画素判定部
23 線らしさ取得部
24 属性判定部
25 エッジ強調処理部
26 濃度変換処理部
27 ハーフトーニング処理部
30 印刷部
40 データメモリ
41 ピーク候補画素検出部
42 ピークメモリ
43 網点らしさ算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿画像を読み取って取得された画像データにおけるピーク候補画素を検出するピーク候補画素検出部と、
前記画像データにおける所定の注目画素を中心とする参照領域内における前記ピーク候補画素以外の非ピーク候補画素の数が、所定の網点判定閾値以上である場合に、前記注目画素が網点領域に属する画素であると判定する属性判定部とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像データにおける所定の注目画素について、線らしさを表す指標を算出する線らしさ算出部を備え、
前記属性判定部が、前記線らしさ算出部において算出された線らしさを表す指標が、所定の文字判定閾値以上である場合に、前記注目画素が文字に属する画素であると判定するものであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像データにおける所定の注目画素がエッジ画素であるか否かを判定するエッジ画素判定部を備え、
前記属性判定部が、前記注目画素がエッジ画素であると判定され、かつ前記線らしさを表す指標が前記文字判定閾値以上である場合に、前記注目画素が文字に属する画素であると判定するものであることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記属性判定部が、前記画像データにおける所定の注目画素を中心とする参照領域内における前記非ピーク候補画素の数が前記網点判定閾値未満であって、かつ前記注目画素の前記線らしさを表す指標が前記文字判定閾値未満で所定の閾値以上である場合に、前記注目画素が文字と網点との間に属する画素であると判定するものであることを特徴とする請求項2または3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記属性判定部が、前記画像データにおける所定の注目画素を中心とする参照領域内における前記非ピーク候補画素の数が前記網点判定閾値未満であって、かつ前記注目画素の前記線らしさを表す指標が前記所定の閾値未満である場合に、前記注目画素が写真に属する画素であると判定するものであることを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図10】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−30975(P2013−30975A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165537(P2011−165537)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】