説明

画像切り抜き装置およびレイアウトスキャナ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レイアウトスキャナ自身、あるいはレイアウトスキャナ等に組み込まれ、切り抜き画像を作成するための画像切り抜き装置に関する。
【0002】
【従来の技術】レイアウトスキャナを用いた製版作業では、レイアウト(集版)工程に先立って、予め用意された画像を切り抜く作業が行われる。一般に、製版工程において、写真等の画像の切り抜き処理は、例えば、写真中の必要部分のみを透過させるためのマスクを作成し、両者を対にすることにより為される。このことはレイアウトスキャナを用いた製版工程においても同様であり、フラットベッドスキャナ等により写真(フィルム)を走査して得られる写真画像データで表される画像(図5(a)参照)の必要部分のみを透過させるためのマスク(図5(b)参照)を表すマスクデータを作成し、写真画像データとマスクデータとを対にすることにより画像の切り抜き処理が為される。
【0003】なお、上記マスクデータは、操作者が、レイアウトスキャナの表示装置上に表示された写真画像を目視しながら、必要領域の輪郭をトレースして作成される。マスクデータは、写真画像データと同一の解像度を有し、かつ各単位領域が「0」および「1」で表される2値データであり、例えば、必要領域に対応する切り抜き領域は「0」、その他の遮蔽すべき領域は「1」というデータ形式となっている。具体的には、図5(b)に示すマスクを表すマスクデータでは、線で囲まれた各単位領域の値が「0」、他の領域が「1」となる。なお、このような形式のデータとしては、ビットマップデータやランレングスデータ等が知られている。
【0004】ところで、マスクデータ作成時における表示装置上のマスクの表示手法としては、切り抜き領域以外(「1」部分)を所定の色で塗りつぶす手法や、図5(b)に示すように切り抜き領域の輪郭に沿った線で表す手法がある。前者では、写真画像の必要領域内の画像が透過表示されるとともに、他の領域が所定の色で塗りつぶされることになる。また、後者では、写真画像上に切り抜き領域の輪郭線を描いたような画像が得られる。そして、操作者は、上述した過程を経て作成されたマスクデータおよび写真画像データからなる画像、すなわち、切り抜かれた状態の画像(以後、切り抜き画像と称す)を加工/移動してレイアウト処理を行い、完成したレイアウトイメージを校正刷りしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したように、従来の画像切り抜き処理においては、マスクは、例えば、切り抜き領域を透過(「0」)、他の領域を非透過(「1」)として表示される。この場合、操作者は、非透過部分の背後に隠れている写真画像を視認することができない。したがって、例えば、切り抜き領域が必要領域に較べて僅かに狭い場合には、操作者がその誤差を認識するのは極めて困難であった。
【0006】また、図5(b)に示すように、切り抜き領域の輪郭に沿った線でマスクを表し、写真画像上に切り抜き領域の輪郭線を描いたような画像を得る手法もあるが、この手法でも、操作者は、線の背後に隠れた画像を視認できず、予め誤差を考慮してトレースを行う必要があるという欠点があった。一般に、表示装置上の線は数ドット(ピクセル)程度の幅を要するため、この線の背後に隠れた画像を視認できないと、切り抜き領域を精密に決定することはできない。必要領域の画像(例えば、商品の画像)が変形したり、当該領域に不必要な背景が入り込んでしまうといった不都合は、極めて重要な問題となるため、マスクの切り抜き領域は、極めて高い精度で写真画像の必要領域と一致する必要があるのである。
【0007】また、上記いずれの手法によりマスクデータを作成しても、集版工程では、切り抜き画像しか表示されず、写真画像データとマスクデータとにズレが生じていても、そのズレを操作者が視認することは極めて困難であった。このため、校正刷りにおいて初めてズレが確認され、再度、マスクデータの作成処理(画像切り抜き工程)からやり直すということが少なくなかった。
【0008】ところで、レイアウトスキャナや一般的なデザインシステムにおいて、写真画像上に文字を配置したり平網を掛けたりする場合に、処理を円滑に行わせるために、文字や平網を透かしたイメージを表示装置上に表示させる機能が備えられている。従来、レイアウトスキャナ等は、透かしたイメージを表示する場合には、所定の計算処理を行って当該イメージを表す透過画像データを作成していた。この計算処理は、一般に複雑であり、システムに相応の負荷をかけていた。本発明は、上述した事情に鑑みて為されたものであり、高精度のマスクデータまたは透過画像データを容易に得ることができる画像切り抜き装置およびレイアウトスキャナを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による画像切り抜き装置およびレイアウトスキャナは、被切り抜き画像から所望の必要領域を切り抜くためのマスクデータを作成する画像切り抜き装置であって、前記被切り抜き画像の画像データを記憶した記憶手段と、前記被切り抜き画像から所望の領域を抽出するための切り抜き領域を有するマスクデータを作成して前記記憶手段に記憶させるマスクデータ作成手段と、前記記憶手段から前記マスクデータおよび前記被切り抜き画像の画像データを読み出し、該マスクデータの前記切り抜き領域に所定間隔の透過領域を設けた透過画像データを作成するとともに、該透過画像データおよび前記被切り抜き画像の画像データを出力する透過画像作成手段と、表示面を備え、前記透過画像作成手段から出力される前記各画像データで表される画像を重畳表示する表示手段とを具備することを特徴としている。
【0010】さらに、前記透過画像作成手段は、前記マスクデータの前記切り抜き領域に間引き処理を行い、透過画像データを作成する、例えば、前記表示面の垂直走査方向においてn(nは1以上の整数)行あるいはn列間隔で前記切り抜き領域に透過領域を設けて前記透過画像データを作成するようにしてもよい。前記透過画像作成手段は、前記マスクデータから複数の異なる透過画像データを作成し、前記指示入力手段から入力される指示に基づいて、前記表示手段に表示させる前記透過画像を切り換えるようにしてもよい。さらに、前記透過画像作成手段は、前記透過画像の非透過部分の色が前記表示面上で重合する前記被切り抜き画像の色と相異なるよう前記透過画像データを作成するようにしてもよい。
【0011】
【作用】上記構成によれば、マスクデータ作成手段が、記憶手段に記憶された被切り抜き画像から所望の領域を抽出するための切り抜き領域を有するマスクデータを作成して前記記憶手段に記憶させる。透過画像作成手段が、前記記憶手段から前記マスクデータおよび前記被切り抜き画像の画像データを読み出し、該マスクデータの前記切り抜き領域に所定間隔の透過領域を設けた透過画像データを作成し、表示手段が前記透過画像作成手段から出力される前記各画像データで表される画像を表示する。したがって、切り抜き領域を表す画像および当該画像の背後の被切り抜き画像が同時に視認可能となる。
【0012】また、前記透過画像作成手段が、例えば、前記表示面の垂直走査方向においてn行間隔で、あるいは前記表示面の水平走査方向においてn列間隔で前記切り抜き領域に透過領域を設けるなど、間引き処理を行って前記透過画像データを得る。さらに、前記透過画像作成手段が、前記マスクデータから複数の異なる透過画像データを作成し、前記指示入力手段から入力される指示に基づいて、前記表示手段に表示させる前記透過画像を切り換える。また、前記透過画像作成手段が、前記透過画像の非透過部分の色が前記表示面上で重合する前記被切り抜き画像の色と相異なるよう前記透過画像データを作成する。
【0013】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明の一実施例について説明する。図1は本発明の画像切り抜き装置を有するレイアウトスキャナを用いた画像切り抜き処理を説明するための図であり、図1(a)は、図5(a)に示す写真画像から必要領域を切り抜くためのマスクデータの表示イメージを示しており、図1(b)は、図5(a)に示す写真画像データと上記マスクデータとを重ねて得られる画像を示している。ここでは、本実施例における画像切り抜き処理について説明する前に、本実施例による画像切り抜き装置を備えたレイアウトスキャナの構成について説明する。
【0014】図2は本実施例による画像切り抜き装置を備えたレイアウトスキャナの構成を示すブロック図であり、この図において、1はマウスやキーボード等からなる指示入力手段であり、操作者の指示を入力するためのものである。2はフラットベッドスキャナや作図機等からなる台紙情報入力手段であり、画像等が貼付される台紙の画像データを入力するためのものである。この台紙情報入力手段2から入力される台紙の画像データは、画像切り抜き作業に後続する集版工程で用いられる。3はドラム型スキャナやフラットベッド等からなる画像情報入力手段であり、切り抜きかれるべき画像データ(以後、被切り抜き画像データと称す)を入力するためのものである。
【0015】4は後に詳述するレイアウト手段(トレース手段、マスクデータ作成手段および透過画像作成手段)であり、画像情報入力手段3を介して入力される各画像データをそれぞれ、記憶手段5へ供給する。記憶手段5は、磁気ディスクや光磁気ディスク等で構成されており、レイアウト手段4から供給される各画像データを、所定の記憶形式で記憶する。なお、画像情報入力手段3と記憶手段5とを直接接続し、レイアウト手段4を介さずに各画像データを記憶手段5に記憶させるようにしてもよい。
【0016】6はCRT(Cathode Ray Tube)等の表示手段であり、レイアウト手段4に制御され、各種画像を表示する。7はスキャナ等の出力手段であり、レイアウト手段4に制御され、製版フィルム等にレイアウト結果を出力する。この出力手段7はまた校正刷りを出力する機能を有する。レイアウト手段4は、CPU,ROM,RAM,各種I/Oインタフェースを備え、ROMに内蔵されたプログラム(あるいは記憶手段5から読み出したプログラム)と、指示入力手段1から入力される指示とに基づいてレイアウト処理を行う。このレイアウト処理のうち本発明が対象としている画像切り抜き工程および集版工程を行うためのレイアウト手段4の機能について以下に説明する。
【0017】ところで、レイアウトスキャナにおいて、画像切り抜き処理とは、前述したように、マスクデータを作成する処理に他ならない。このような画像切り抜き処理を行うために、レイアウト手段4は、図3に示すように、2枚の仮想的なプレーン10,11を重ねて得られる画像の一部(表示手段6の表示可能範囲)を表示手段6に表示するようにしている。すなわち、表示手段6の表示面の一つの画素(ドット、ピクセル)は、2枚のプレーンの対応する各単位領域の内容に基づいて決定される。
【0018】レイアウト手段4は、上層プレーン10をマスクデータを作成するための透明なプレーン、下層プレーン11を被切り抜き画像データのためのプレーンとし、上層プレーン10が下層プレーン11の前面に位置するように表示手段6に表示させる。レイアウト手段4は、上記各プレーン10,11の前面に所定形状のカーソルを表示させ、指示入力手段1から入力される指示に応じて、当該カーソルを移動させる。また、レイアウト手段4は、必要に応じてカーソルの軌跡を上層プレーンに書き込む機能を有する。
【0019】さらに、レイアウト手段4は、上記カーソルの軌跡で囲まれた領域を切り抜き領域とするマスクデータを作成する機能を有する。マスクデータは、「0」および「1」の2値で表現される。例えば、表示手段6の各画素に対応する領域毎に、被切り抜き画像の必要部分に対応する領域は「0」、その他の領域は「1」で表現される。これに対して、下層プレーン11においては、被切り抜き画像データが、例えば、RGB形式で表現される。
【0020】すなわち、下層プレーン11は、赤(R)の階調(例えば、256階調)を表すプレーン、緑(G)の階調を表すプレーンおよび青(B)の階調を表すプレーンから構成されている。もちろん、RGB形式に限らず、例えば、HSV形式など、各種形式でカラー画像を表現するようにしてもよい。また、レイアウト手段4は、指示入力手段1から入力される指示に応じて、切り抜き領域のイメージ(画像)を表示手段6に表示させる際に、当該イメージが表示手段6の表示面の垂直走査方向において、例えば1行おきに(間引いて)表示されるようマスクデータに基づいて透過画像データを作成する機能を有する。すなわち、上層プレーン10上の透過画像データは、例えば、図1(a)に示すように、1行おきに「透過」となる画像を表す。なお、本願明細書における「間引き」とは、上述したように透過領域を設けることを意味し、画像の解像度やサイズを変更するものではない。
【0021】なお、レイアウト手段4は、指示入力手段1から入力される指示に従って、透過画像データ中の非透過の各行の幅や間隔を任意に設定する機能を有する。例えば、3行間隔で1行ずつ透過させるといったことも可能である。また、本実施例では、透過画像データを構成する非透過の各行の方向を、表示手段6の水平走査方向と一致させているため、間引き表示を容易に行うことができる。さらに、レイアウト手段4は、上層プレーン10の「1」部分を透過、「0」部分を非透過として取り扱う機能、およびこれを反転して取り扱う機能を有するとともに、上層プレーン10の「0」部分の色を予め設定された色とする機能を有する。
【0022】また、レイアウト手段4は、指示入力手段1から入力される指示に従って、下層プレーン11上の画像および上層プレーン10上の画像を相対的に移動させる機能を有する。この機能により、上層プレーン10の切り抜き領域と下層プレーン11の必要領域との位置合わせを容易に行うことができる。なお、レイアウト手段4は、両領域の相対位置を変えずに両領域を移動させる機能や、表示手段6に表示した画像の変倍処理はもちろん、回転移動や鏡像処理、各種フィルタ処理などを実現するための機能を有する。
【0023】このような構成において為される画像切り抜き処理について説明する。なお、記憶手段5には、既に、図5(a)の画像を表す被切り抜き画像データが記憶されているものとする。また、以下に述べる動作は、特に明示しない限り、レイアウト手段4により為されるものとする。
【0024】上記状態において、指示入力手段1から所定の指示がレイアウト手段4に入力されると、ステップS1において、画像切り抜き処理を行うための表示領域の寸法が算出される。次に、ステップS2では、指示入力手段1に指示された被切り抜き画像データが記憶手段5から読み出され、ステップS3において、所望の倍率、および向きで下層プレーン11に書き込まれる。したがって、表示手段6の表示面に被切り抜き画像が表示される。
【0025】次に、ステップS4では、必要領域を切り抜くためのマスクデータを新規に作成するか否かが操作者により判断される。このステップでの判断結果が「YES」であれば処理はステップS5へ進む。ステップS5は、マスクデータを新規作成するためのステップであり、例えば、操作者が表示手段6の表示面を参照しつつ必要領域の輪郭をトレースすることによりことにより為される。
【0026】ステップS6は、ステップS5に後続するとともにステップS4での判断結果が「NO」であった場合の処理であり、指示入力手段1により指定されたマスクデータが記憶手段5から読み出される。そして、ステップS7では、作成あるいは読み出したマスクデータの切り抜き領域(すなわち値が「0」の部分)を、上記表示面の垂直走査方向において1行間隔で「1」に書き換えて透過画像データを作成し、所望の寸法に変倍した後に上層プレーン10に書き込む(図1(a)参照)。
【0027】こうすることにより、表示手段6の表示面には、例えば、図1(b)に示されるような画像が表示され、操作者は、切り抜き領域を表す透過画像を通して背後の画像を視認することが可能となる。ただし、この場合、レイアウト手段4は、上層プレーン10上の「0」部分を非透過、「1」部分を透過として作動するものとする。
【0028】操作者は、マスクの背後にある画像を視認しつつ切り抜き領域と必要領域とが一致するよう指示入力手段11を操作し、両者が一致した時点で指示入力手段11から所定の指示が入力されると、被切り抜き画像データとマスクデータとの位置関係が記憶手段5に記憶される。すなわち、切り抜き処理が行われる(ステップS8)。
【0029】ステップS9では、画像切り抜き処理を終了するか否かが判断される。上述した一連の画像切り抜き処理において、マスクデータの精度が不十分であるなどの問題が発生したり、他の被切り抜き画像に対して同様な処理を行う場合には、当該ステップの判断結果は「NO」となり、処理はステップS10へ進む。ステップS10では、画像切り抜き処理を継続して行うために必要な各種処理(例えば、他の被切り抜き画像データを読み込む等)が行われ、処理はステップS4へ戻る。逆に、ステップS9での判断結果が「YES」であれば、画像切り抜き処理が終了する。操作者は、所望のマスクデータが得られるまで上記処理を繰り返し、所望のマスクデータが得られた場合には、当該マスクデータを記憶手段5に記憶させる。
【0030】このようにして作成された切り抜き画像は、後の集版工程において、台紙の画像に重ねて表示手段6に表示される。ここで表示される切り抜き画像は、通常は必要領域を切り抜いた画像となるが、指示入力手段1から所定の指示が入力されると、図1(b)に示される画像が表示されることになる。したがって、操作者は、集版工程においてもマスクと被切り抜き画像とが合致しているか否かを高い精度で確認することができる。
【0031】なお、上記判断をより正確なものとするために、透過画像データの作成方法を変更できるようにしてもよい。例えば、通常は、マスクの切り抜き領域において1,3,5,…行のみを非透過の行とし、指示入力手段11から所定の指示が入力された場合には、2,4,6,…行のみを非透過の行とするようにしてもよい。こうすることにより、操作者は、両者を切り換えてより正確な判断を下すことができる。
【0032】以上説明したように、本発明の一実施例によれば、マスクの切り抜き領域を例えば、1行おきに透過とするようにしたため、この切り抜き領域の形状を認識しつつその背後に存在する被切り抜き画像および背景を操作者が明瞭に視認される。すなわち、マスクデータ作成時において、従来のように、マスクを表す画像の背後に被切り抜き画像が隠れてしまうことがなく、切り抜き領域の輪郭に生じる誤差を極めて小とすることができる。また、表示すべき画像量も少ないため、レイアウト手段4にかかる負荷を小とすることができる。さらに、集版工程においても、被切り抜き画像と切り抜き領域の透過画像とを同時に表示可能であるため、実際に校正刷りを行うことなく、マスクデータのズレを発見することを容易にすることができる。こうしたことから、本実施例によれば、操作者にかかる負荷を軽減することができる。
【0033】これに加えて、被切り抜き画像を間引くのではなく、切り抜き領域を表す透過画像を透過および被透過領域から構成し、この透過画像を通して被切り抜き画像を透過表示するするようにしたため、従来必要とされていた透かし表示のための複雑な計算処理が不要となり、レイアウト手段4にかかる負荷を低減することができる。このことは、写真画像上に文字を配置したり、平網を掛けたりする際の透かし表示にも応用可能である。
【0034】なお、上述した一実施例においては、切り抜き領域の画像を構成する各行の方向を表示手段6の水平走査方向と一致させる例を示したが、これに限らず、例えば、各行(列)の方向を垂直走査方向と一致させるなど、任意の方向としてもよい。また、メッシュのように、異なる方向の行(列)を組み合わせて上記画像を構成するようにしてもよい。
【0035】また、例えば、上層プレーン10上の透過画像の非透過領域の色を、対応する位置に存在する被切り抜き画像の色と異なる色とし、下層プレーン11(被切り抜き画像)の色に関わらず、切り抜き領域を明瞭に表示させるようにしてもよい。透過画像の非透過画像の色を背後の被切り抜き画像の色と明瞭かつ確実に相違させることは、例えば、レイアウト手段4において、背後の画像の色のRGB各成分とこれらがとり得る最大値(本実施例では、255)との各排他的論理和とることにより容易に実現可能である。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、マスクデータ作成手段が、記憶手段に記憶された被切り抜き画像から所望の領域を抽出するための切り抜き領域を有するマスクデータを作成して前記記憶手段に記憶させる。透過画像作成手段が、前記記憶手段から前記マスクデータおよび前記被切り抜き画像の画像データを読み出し、該マスクデータの前記切り抜き領域に所定間隔の透過領域を設けた透過画像データを作成し、表示手段が前記透過画像作成手段から出力される前記各画像データで表される画像を表示する。このため、切り抜き領域を表す画像および当該画像の背後の被切り抜き画像が同時に視認可能となる。したがって、マスクデータ作成時において、従来のように、マスクを表す画像の背後に被切り抜き画像が隠れてしまうことがなく、しかも、背景部分も同時に視認されるため、マスクデータに生じる誤差を極めて小とすることができる(請求項1,7)。
【0037】また、前記透過画像作成手段が、例えば、前記表示面の垂直走査方向においてn行間隔で、あるいは前記表示面の水平走査方向においてn列間隔で前記切り抜き領域に透過領域を設けるなど、間引き処理を行って前記透過画像データを得る。すなわち、被切り抜き画像を間引くのではなく、前記切り抜き領域を表す画像データを間引いて(所定間隔で透過領域を設けて)表示するするようにしたため、従来必要とされていた透かし表示のための複雑な計算処理が不要となり、システムにかかる負荷を低減することができる(請求項2〜4,7)。
【0038】さらに、前記透過画像作成手段が、前記マスクデータから複数の異なる透過画像データを作成し、前記指示入力手段から入力される指示に基づいて、前記表示手段に表示させる前記透過画像を切り換えるため、より高精度のマスクデータを作成することができる(請求項5,7)。また、前記透過画像作成手段が、前記透過画像の非透過部分の色が前記表示面上で重合する前記被切り抜き画像の色と相異なるよう前記透過画像データを作成するため、前記透過画像の非透過部分の背後の画像を明瞭に認識することができる(請求項6,7)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による画像切り抜き装置により為される処理を説明するための図であり、(a)はマスクの切り抜き領域の表示イメージ、(b)は同切り抜き領域と被切り抜き画像とを同時に表示した場合のイメージを表している。
【図2】同画像切り抜き装置を適用したレイアウトスキャナの概略構成を示すブロック図である。
【図3】同画像切り抜き装置が表示手段6の表示面に画像を表示する過程を説明するための概念図である。
【図4】同画像切り抜き装置により為される画像切り抜き処理の流れを示す処理図である。
【図5】従来の画像切り抜き装置の動作を説明するための図であり、(a)は被切り抜き画像データで表される画像、(b)は同画像に対応したマスクの表示イメージを表している。
【符号の説明】
1 指示入力手段
2 台紙情報入力手段
3 画像情報入力手段
4 レイアウト手段(マスクデータ作成手段、透過画像作成手段)
5 記憶手段
6 表示手段
7 出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被切り抜き画像から所望の必要領域を切り抜くためのマスクデータを作成する画像切り抜き装置であって、前記被切り抜き画像の画像データを記憶した記憶手段と、前記被切り抜き画像から所望の領域を抽出するための切り抜き領域を有するマスクデータを作成して前記記憶手段に記憶させるマスクデータ作成手段と、前記記憶手段から前記マスクデータおよび前記被切り抜き画像の画像データを読み出し、該マスクデータの前記切り抜き領域に所定間隔の透過領域を設けた透過画像データを作成するとともに、該透過画像データおよび前記被切り抜き画像の画像データを出力する透過画像作成手段と、表示面を備え、前記透過画像作成手段から出力される前記各画像データで表される画像を重畳表示する表示手段とを具備することを特徴とする画像切り抜き装置。
【請求項2】 前記透過画像作成手段は、前記マスクデータの前記切り抜き領域に間引き処理を行い、透過画像データを作成することを特徴とする請求項1記載の画像切り抜き装置。
【請求項3】 前記透過画像作成手段は、前記表示面の垂直走査方向においてn(nは1以上の整数)行間隔で前記切り抜き領域に透過領域を設けて前記透過画像データを作成することを特徴とする請求項1または2記載の画像切り抜き装置。
【請求項4】 前記透過画像作成手段は、前記表示面の水平走査方向においてn(nは1以上の整数)列間隔で前記切り抜き領域に透過領域を設けて前記透過画像データを作成することを特徴とする請求項1または2記載の画像切り抜き装置。
【請求項5】 前記透過画像作成手段は、前記マスクデータから複数の異なる透過画像データを作成し、前記指示入力手段から入力される指示に基づいて、前記表示手段に表示させる前記透過画像を切り換えることを特徴とする請求項3または4記載の画像切り抜き装置。
【請求項6】 前記透過画像作成手段は、前記透過画像の非透過部分の色が前記表示面上で重合する前記被切り抜き画像の色と相異なるよう前記透過画像データを作成することを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の画像切り抜き装置。
【請求項7】 請求項1ないし6いずれかに記載の画像切り抜き装置を備えたことを特徴とするレイアウトスキャナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3075111号(P3075111)
【登録日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【発行日】平成12年8月7日(2000.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−306658
【出願日】平成6年12月9日(1994.12.9)
【公開番号】特開平8−160594
【公開日】平成8年6月21日(1996.6.21)
【審査請求日】平成10年9月22日(1998.9.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−4061(JP,A)
【文献】特開 平2−959(JP,A)
【文献】特開 平1−298477(JP,A)