画像加熱装置
【課題】ベルト式外部加熱タイプの画像加熱装置9において、ベルト部材105を回転可能な画像加熱部材101の表面へ圧接させる付勢力に前奥にばらつきがあった場合のベルト走行方向の偏りをそれ自身の動作で制御することでベルト部材の寄る力を低減させ、ベルト部材101と規制部材211の摺動による摩耗を原因とするベルト寿命の低下を低減する。
【解決手段】ベルト部材105を張架する複数の支持ローラ103・104を保持する支持ローラ保持部材208を画像加熱部材101とベルト部材105の接触面Neに対して法線方向を回転軸209とし回動可能とする回動機構を有し、複数の支持ローラのうち接触面Neの画像加熱部材の回転方向において最下流側に位置する支持ローラが支持ローラ保持部材に対して、最上流側に位置する支持ローラとの中心間距離が移動距離に対して線形に増減する方向に移動可能に支持されていること。
【解決手段】ベルト部材105を張架する複数の支持ローラ103・104を保持する支持ローラ保持部材208を画像加熱部材101とベルト部材105の接触面Neに対して法線方向を回転軸209とし回動可能とする回動機構を有し、複数の支持ローラのうち接触面Neの画像加熱部材の回転方向において最下流側に位置する支持ローラが支持ローラ保持部材に対して、最上流側に位置する支持ローラとの中心間距離が移動距離に対して線形に増減する方向に移動可能に支持されていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式などを採用したプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に搭載される定着装置として用いて好適な画像加熱装置に関する。
【0002】
画像加熱装置としては、記録材上に形成された未定着画像を固着画像として加熱定着する定着装置や、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢度を増大させる光沢度増大装置等を挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
従来、種々の画像形成装置が知られているが、その中でも感光体にレーザ光で像露光を行い、それを現像して画像を得る電子写真方式画像形成装置が一般に普及している。このような画像形成装置は、画像品質が高く、高速である等の長所を持っており、例えば、複写機等の出力装置、レーザビームプリンタ等として広く用いられている。そして、これらの画像形成装置においては、厚紙などのいろいろな用紙(記録材)での高い生産性(単位時間あたりのプリント枚数)が求められてきている。
【0004】
ところで、上記のような電子写真方式を適用した画像形成装置においては、高い生産性、特に坪量の大きな用紙での生産性を上げるため、定着装置の定着スピードを高速化する必要がある。しかし、坪量が大きい用紙では、熱が多く奪われるため、定着に要する熱量が、薄い紙に定着する場合に比べて大幅に多い。そこで、坪量の大きい紙に定着する際には、定着スピードを落としたり、単位時間あたりのプリント枚数を減少させたりして、定着処理を施しているのが現状である。
【0005】
生産性を向上させることが可能な技術として、定着部材の表面温度を向上させるために定着部材に外部加熱部材を当接し、定着部材を外部から加熱する技術が知られている。また、外部加熱部材を複数の支持ローラに張架した無端ベルトにより形成することにより、熱伝導を行う領域の接触面積を増やし、熱伝導量を更に増大させることが可能となっている。このような技術方式をベルト式外部加熱装置と呼ぶ。
【0006】
しかしながら、外部加熱ベルトを定着部材としての定着ローラの表面へ圧接させる付勢力にばらつきがあった場合、回転動作時にベルトが長手方向に移動して、ベルトの端部がその側に設けられたベルト規制板等のベルト規制部材と当接する。ベルト規制板に及ぼすベルト寄り力が大きい場合は、ベルトの端部がベルト規制板に摺動することによって、ベルト端面に削れや亀裂が発生しベルト寿命を低下させる要因になる。ベルト寄り規制手段としては次のようなものが知られている。
【0007】
1)ベルトを掛け回すローラの端部にベルト規制部材を設ける(特許文献1、2、3、4)
2)ベルト内周の両端或は片端にリブを固着し、ベルトを掛け回すローラの端部や溝の側面にて規制する(特許文献5)
3)ベルトの端部位置を検出し、ベルトを掛け回すローラのアライメントを移動し寄り制御を行う(特許文献6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−075697号公報
【特許文献2】特開2000−075698号公報
【特許文献3】特開2000−075699号公報
【特許文献4】特開2000−075700号公報
【特許文献5】特開平9−090787号公報
【特許文献6】特開平8−234597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来例ではそれぞれ以下のような課題がある。
【0010】
1)特許文献1〜4では、ベルトがベルト規制部材に常に突き当たっているため、端部に応力が集中し、耐久による端部波打ちや座屈、更には削れや破断が生じる。特に、ベルト端の真直度がよくない場合や、突き当て面の平面度や振れがよくない場合、更に応力集中が激しくなり耐久性を損なう。また、発生した削れ粉による画像品質の低下や、電気系統に侵入し短絡を起こす可能性がある。
【0011】
2)特許文献5では、リブに弾性体を用いることやリブ接着全面で寄り力を受けるため、応力は改善される。但し、ベルトに対して精度良くリブを接着することが難しく、結果的にベルトの蛇行を十分に押さえることが困難であるため、局所的な応力集中が起き、リブ剥がれによる短寿命等の問題が懸念される。また、このようなベルトは消耗品であることが多く、短寿命によりランニングコストに対して不利となる。
【0012】
3)特許文献6は有効であるが、ベルトの位置を検出する手段、ローラのアライメントを変化させる構成及び制御手段が必要であり、装置の大型化が考えられる。
【0013】
本発明は、外部加熱ベルトにより画像加熱部材の表面に与える熱量を増大させた外部加熱ベルト構成において上記従来技術の問題点を解決するためになされたものである。その目的とするところは、次のような画像加熱装置を提供することにある。即ち、外部加熱ベルトを画像加熱部材の表面へ圧接させる付勢力に前奥にばらつきがあった場合のベルト走行方向の偏りをそれ自身の動作で制御する。これにより、ベルトの寄る力を低減させ、外部加熱ベルトと規制部材の摺動による摩耗を原因とするベルト寿命の低下を低減することが可能な画像加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明に係る画像加熱装置の代表的な構成は、画像を担持した記録材に接して前記画像を加熱する回転可能な画像加熱部材と、前記画像加熱部材の表面に接触して前記画像加熱部材の回転に従動して回転し前記画像加熱部材を外部より加熱する無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を支持し、前記画像加熱部材を押圧する第一支持ローラと、前記ベルト部材を支持し、前記ベルト部材と前記画像加熱部材との接触面における前記ベルト部材の移動方向において最下流側で前記画像加熱部材を押圧する第二支持ローラと、を備えた画像加熱装置であって、前記第一と第二支持ローラを保持する支持ローラ保持部材を、前記接触面に対して法線方向を回転軸とし回動可能とする回動機構を有し、前記第二支持ローラのそれぞれの端部が、前記支持ローラ保持部材に対して、前記第一支持ローラと前記第二支持ローラとの中心を結ぶ直線方向へ移動可能となるように支持されている方向に移動可能に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検知手段や駆動装置を用いることなく、外部加熱ベルトであるベルト部材を画像加熱部材へ圧接させる付勢力にばらつきがあっても、それ自身の動作により支持ローラの軸間距離を前奥で変動させることができる。これにより、ベルト走行方向が画像加熱部材の回転方向と一致するようにベルト部材を画像加熱部材の走行方向へ倣わせることができ、ベルト部材の寄り力を抑えることでベルト寿命を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例における画像形成装置の概略構成図
【図2】定着装置の要部の一部切り欠き正面模式図
【図3】図2の(3)−(3)線に沿う拡大右側面図
【図4】外部加熱ベルトアセンブリの右側面図
【図5】外部加熱ベルトアセンブリの分解斜視図
【図6】同アセンブリの加圧−加圧解除機構の斜視図
【図7】同アセンブリの一部切り欠き平面模式図
【図8】定着装置の制御系統のブロック図
【図9】中間フレームが定着ローラに対して傾いているときに、外部加熱ベルトに働く力の関係を説明した図
【図10】回動軸の配設位置の説明図
【図11】加圧力と支持ローラの定着ローラに対する位置関係を説明する模式図
【図12】図11における矢印方向から見た模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0018】
[第1の実施例]
(1)画像形成装置例
図1は本発明に関わる画像加熱装置を定着装置9として備える画像形成装置50の一例の概略構成図である。この装置50は中間転写方式でインライン方式の電子写真カラーレーザビームプリンタである。パソコン等のホスト装置70から制御回路部60に入力する画像信号に基づいて記録材Pにフルカラー画像を形成することができる。
【0019】
装置50内には第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdが併設され、並行処理により各々異なった色のトナー像を電子写真プロセスにより形成する。画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ専用の像担持体、本例では回転駆動される電子写真感光ドラム3a、3b、3c、3dを具備し、各ドラム3a、3b、3c、3d上にそれぞれ異なる色のトナー像が形成される。
【0020】
各ドラム3a、3b、3c、3dに隣接して中間転写体としての循環移動する中間転写ベルト130が設置され、ドラム3a、3b、3c、3d上に形成された各色のトナー像がベルト130上に順次に重ね合わされて1次転写される。そして、そのベルト上のトナー像が2次転写ローラ11で記録材P上に2次転写される。トナー像が転写された記録材Pは、定着装置9において加熱及び加圧によりトナー像の定着を受けて、記録画像形成物として装置外のトレイ6に排出される。
【0021】
ドラム3a、3b、3c、3dの外周には、それぞれドラム帯電器2a、2b、2c、2d、現像器1a、1b、1c、1d、1次転写帯電器24a、24b、24c、24d及びクリーナ4a、4b、4c、4dが設けられている。装置内の上方部にはレーザスキャナ5a、5b、5c、5dが設置されている。
【0022】
ドラム3a、3b、3c、3dは帯電器2a、2b、2c、2dにより一様に帯電処理される。そして、レーザスキャナ5a、5b、5c、5dから発せられたレーザ光をポリゴンミラーを回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズによりドラム3a、3b、3c、3dの母線上に集光して露光La、Lb、Lc、Ldする。これにより、ドラム3a、3b、3c、3d上に画像信号に応じた潜像が形成される。
【0023】
本実施例において、現像器1a、1b、1c、1dには、現像剤としてそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナーが、図示しない供給装置により所定量充填されている。現像器1a、1b、1c、1dは、それぞれドラム3a、3b、3c、3d上の潜像を現像して、シアントナー画像、マゼンタトナー画像、イエロートナー画像及びブラックトナー画像として可視化する。
【0024】
ベルト130は矢示の方向にドラム3と同じ周速度をもって回転駆動されている。ドラム3a上に形成担持された第1色のイエロートナー画像は、ドラム3aとベルト130との当接部(1次転写ニップ部)を通過する。その通過過程で、1次転写帯電器24aからベルト130に印加される1次転写バイアスにより形成される電界と圧力により、ベルト130の外周面に1次転写されていく。
【0025】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次にベルト130上に重畳転写され、装置50に入力したカラー画像情報に対応した合成カラートナー画像が形成される。
【0026】
1次転写が終了したドラム3a、3b、3c、3dは、それぞれのクリーナ4a、4b、4c、4dにより転写残トナーをクリーニング、除去され、引き続き次の潜像の形成以下に備えられる。ベルト130上に残留したトナー及びその他の異物は、ウエブクリーナ20のクリーニングウエブ(不織布)21をベルト130の表面に当接して、拭い取るようにしている。
【0027】
2次転写ローラ11は、ベルト130を懸回張設させた3本のローラ13・14・15のうちのローラ14に対してベルト130を挟ませて圧接させることで、ベルト130との間に2次転写ニップ部を形成している。ローラ11には、2次転写バイアス源によって所定の2次転写バイアスが印加されている。
【0028】
ベルト130上に重畳転写された合成カラートナー画像の記録材Pへの転写は2次転写ニップ部でなされる。即ち、記録材Pが給紙カセット10からレジストローラ12、転写前ガイドを通過して2次転写ニップ部に所定のタイミングで給送され、ニップ部で挟持搬送される。同時にローラ11に2次転写バイアスがバイアス電源からに印加される。この2次転写バイアスによりベルト130から記録材Pへ合成カラートナー画像が転写される。ニップ部を通ってトナー画像の転写を受けた記録材Pはベルト130から分離されて定着装置9へ導入され、熱と圧力を受けて未定着画像が固着像として定着される。
【0029】
片面コピーモードの場合は、定着装置9を出た記録材Pはフラッパ16の上側のシートパスを通って装置外の排紙トレイ6に排出される。
【0030】
両面コピーモードが選択されている場合には、定着装置9を出た第1面側画像形成済みの記録材Pがフラッパ16により再循環搬送機構側のシートパス17側に導入される。さらにスイッチバックシートパス18内に入り、次いで該シートパス18から引き出し搬送されて再搬送シートパス19に誘導される。そして、該シートパス19からレジストローラ12、転写前ガイドを通過して2次転写ニップ部に表裏反転状態で所定のタイミングで再導入される。
【0031】
これにより、記録材Pの第2面側に対して、ベルト130上のトナー画像の2次転写がなされる。2次転写ニップ部にて第2面に対するトナー画像の2次転写を受けた記録材Pはベルト130から分離されて定着装置9へ再導入され、トナー画像の定着処理を受けて両面コピーとして装置外の排紙トレイ6に排出される。
【0032】
モノクロなどモノカラーモードは指定された色の画像形成部が画像形成動作することでなされる。他の画像形成部はドラムの回転はなされるが画像形成動作はなされない。
【0033】
(2)定着装置
図2は定着装置9の要部の一部切り欠き正面模式図、図3は図2の(3)−(3)線に沿う拡大右側面図である。図4は外部加熱ベルトアセンブリの右側面図、図5は外部加熱ベルトアセンブリの分解斜視図、図6は同アセンブリの加圧−加圧解除機構の斜視図である。図7は外部加熱ベルトアセンブリの一部切り欠き平面模式図、図8は定着装置の制御系統のブロック図である。
【0034】
以下の説明において、定着装置9に関して、正面とは装置を記録材入口側からみた面(またはその側)、後面とはその反対側の面(またはその側:記録材出口側)である。また、左右とは装置を正面から見て左(長手方向の一端側、手前側)または右(長手方向の他端側、奥側)である。定着装置9またはこれを構成している部材の長手方向とは、回転体の軸線方向(スラスト方向)、又は記録材搬送路面内において記録材搬送方向に直交する方向又はその方向に並行な方向である。また、短手方向とは記録材搬送方向に並行な方向である。
【0035】
上又は下とは重力方向において上又は下である。上流側と下流側とは記録材搬送方向に関して或いは回転可能な画像加熱部材の移動方向に関して上流側と下流側である。
【0036】
定着装置9は、画像を加熱する回転可能な画像加熱部材としての定着ローラ101と、定着ローラ101とニップ部Nを形成する加圧部材としての加圧ローラ102と、定着ローラ101を外部より加熱する外部加熱ベルトアセンブリ110と、を有する。そして、ニップ部Nで未定着トナー画像Kを担持した記録材Pを挟持搬送して加熱する。なお、本実施例おいて、定着装置9に対する大小各種幅サイズの記録材の導入は記録材幅中心を基線とする中央基準搬送でなされる。
【0037】
1)定着ローラ101
定着ローラ101は定着装置枠体の左右の本体側板202L・202R間に左右の軸部101aがそれぞれ軸受部材220を介して回転可能に支持されて配設されている。定着ローラ101は所定の外径と肉厚とした中空芯金(金属パイプ)の外周面をトナー離型層、或いは弾性層とトナー離型層を順次に被覆したものである。中空芯金の内部には発熱体としてハロゲンヒータ111が配置されている。
【0038】
定着ローラ101の右側軸部101aにはドライブギアGが固着して配設されている。ギアGには制御回路部(制御手段)60で制御される駆動源M1から駆動力が伝達される。これにより、定着ローラ101が図3において矢印Aの時計方向に所定の速度で回転駆動される。
【0039】
また、ハロゲンヒータ111には制御回路部60で制御される電源部111a(図8)から不図示の給電系統を介して電力が供給される。これにより、ヒータ111が発熱して定着ローラ101が内部から加熱される。定着ローラ101の長手方向中央部の外面には温度検知手段としてのサーミスタ121を弾性支持部材(不図示)により弾性的に接触させてある。このサーミスタ121により定着ローラ101の表面温度が検知され、その検知温度情報が制御回路部60にフィードバックされる。
【0040】
制御回路部60はサーミスタ121から入力する検知温度(検知される温度に関する情報)が所定の目標温度(定着温度:所定の温度に対応する情報)に維持されるように電源部111aからヒータ111に対する供給電力を制御している。即ち、ヒータ111をON/OFFすることで、定着ローラ101の表面温度が所定の目標温度で制御(温度調節)される。
【0041】
2)加圧ローラ102
加圧ローラ102は定着ローラ101の下側において定着ローラ101に並行に配列されており、本体側板202L・202R間に左右の軸部102aがそれぞれ軸受部材221を介して回転可能に支持されて配設されている。加圧ローラ102は所定の外径と肉厚とした中空芯金(金属パイプ)の外周面をトナー離型層、或いは弾性層とトナー離型層を順次に被覆したものである。中空芯金の内部には発熱体としてハロゲンヒータ112が配置されている。
【0042】
左右の軸受部材221はそれぞれ本体側板202L・202Rに対して上下方向にスライド移動可能であり、加圧手段としての加圧ばね(付勢部材)222の圧縮反力により上方に押し上げ付勢されている。これにより、加圧ローラ102の上面が定着ローラ101の下面に所定の押圧力で押し当ることで、定着ローラ101と加圧ローラ102との間に記録材搬送方向において所定幅の定着ニップ部Nが形成される。この加圧ローラ102は定着ローラ101の回転に伴なって矢印の反時計方向Bに従動回転する。
【0043】
ハロゲンヒータ112には制御回路部60で制御される電源部112aから不図示の給電系統を介して電力が供給される。これにより、ヒータ112が発熱して加圧ローラ102が内部から加熱される。加圧ローラ102の長手方向中央部の外面には温度検知手段としてのサーミスタ122を弾性支持部材(不図示)により弾性的に接触させてある。このサーミスタ122により加圧ローラ102の表面温度が検知され、その検知温度情報が制御回路部60にフィードバックされる。
【0044】
制御回路部60はサーミスタ122から入力する検知温度が所定の目標温度に維持されるように電源部112aからヒータ112に対する供給電力を制御している。即ち、ヒータ112をON/OFFすることで、加圧ローラ102の表面温度が所定の目標温度で制御される。
【0045】
定着ローラ101が回転駆動されると共にヒータ111への通電と外部加熱ベルトアセンブリ110による外部加熱でローラ101の表面温度が所定の目標温度に立ち上げられる。また加圧ローラ102が従動回転すると共にヒータ112への通電によりローラ102の表面温度が所定の目標温度に立ち上げられる。この状態において、定着ニップ部Nに画像形成部側から未定着トナー画像Kを担持した記録材Pが導入される。記録材Pはニップ部Nを挟持搬送されることで熱と圧力を受けて未定着トナー画像Kが固着像として定着される。Dは記録材Pの搬送方向である。
【0046】
3)外部加熱ベルトアセンブリ110
外部加熱ベルトアセンブリ110は定着ローラ101の上面側に配設されており、定着ローラ101を外部より加熱する外部加熱手段である。アセンブリ110は定着ローラ101の外部加熱部材となる外部加熱ベルト105を有する。ベルト105は可撓性を有する回転可能な無端状のベルト部材(エンドレスベルト)である。本実施例においては、ステンレスやニッケル等の金属製の可撓性を有する無端状のベルト部材を基材とし、その外周面を、トナー付着を防止するために耐熱性の摺動層としてフッ素系樹脂被覆したものである。
【0047】
ベルト105は複数の支持ローラとしての間隔をあけた並行2本の第一支持ローラ103と第二支持ローラ104との間に張架されている。第一支持ローラ103と第二支持ローラ104は定着ローラ101の回転方向において最上流側と最下流側との位置関係に配列されている。第一支持ローラ103は左右の軸部103aが、それぞれ、左右の軸受板206に設けられた軸受丸穴206aに嵌入されて左右の軸受板206・206間に回転可能に支持されて配設されている。
【0048】
第二支持ローラ104は左右の軸部104aが、それぞれ、左右の軸受板206に設けられた前後方向の軸受長穴206bに嵌入されて左右の軸受板206・206間に回転可能に支持されて配設されている。第二支持ローラ104は軸受長穴206bにより第一支持ローラ103に近づく方向と遠のく方向とにスライド移動する自由度を有する。即ち、左右の軸受板206は第二支持ローラ104を回動自在かつ、第一支持ローラ103の回転中心Oa(図4)と第二支持ローラ104の回転中心Obを結んだ直線方向である矢印F方向に移動可能なように支持している。
【0049】
つまり、複数の支持ローラである第一と第二の支持ローラ103と104のうちの最下流側に位置する第二支持ローラ104は、最上流側に位置する第一支持ローラ103との中心間距離が移動距離に対して線形に増減する方向に移動可能に支持されている。
【0050】
そして、第二支持ローラ104は軸受長穴206bに嵌め入れられた加圧手段(付勢手段)としての加圧ばね(付勢部材)109の圧縮反力により第一支持ローラ103から遠のく方向に常時移動付勢されている。即ち、最下流側に位置する第二支持ローラ104は、最上流側に位置する第一支持ローラ103に対して軸間距離が増大する方向に付勢手段109によって付勢されている。この構成により第二支持ローラ104はベルト105に張りを与えるテンションローラとしても機能する。本実施例では、同じ軸受板206が複数の支持ローラ103・104を支持している。
【0051】
左右の軸受板206はそれぞれ上部の中央部に設けられた丸穴206cが支持ローラ保持部材としての中間フレーム208の左右側端面にそれぞれ設けられた軸207に対して嵌係合されることで中間フレーム208の左右側に保持されている。左右の軸受板206は中間フレーム208に対してでそれぞれ軸207を中心に独立して回動可能とされている。即ち、中間フレーム208はその下面側に第一及び第二支持ローラ103・104を左右の軸受板206を介して回転可能に保持している。その第一及び第二支持ローラ103・104間にベルト105が掛け回されている。
【0052】
また、第一及び第二支持ローラ103・104の間において、この両ローラに張架されたベルト105の上方側のベルト部分の外面に接触してベルト表面をクリーニングするクリーニングローラ108が配設されている。ローラ108は左右の軸部104aが、それぞれ、左右の軸受板206に設けられた上下方向の軸受長穴206dに嵌入されて左右の軸受板206・206間に回転可能に支持されて配設されている。また、付勢部材(不図示)によりベルト105の表面に対して所定の圧力で押し付けられた状態にされている。
【0053】
中間フレーム208の上面には中間フレーム208の長手方向中央部に縦軸(中間フレーム208の上面に対して法線方向の軸)209が配設されている。そして、中間フレーム208はその軸209を加圧フレーム201の長手方向中央部に設けた孔201aに下から差し込んでCリング(不図示)で抜け止めると共にスラスト方向の移動を規制している。
【0054】
即ち、中間フレーム208は、軸209及び加圧フレーム201側に配設されている中間コロ210によって加圧フレーム201の下面と一定の間隔を保ちながら、加圧フレーム201に対して軸209を中心に所定の角度回転可能(旋回可能)に支持されている。
【0055】
本実施例における旋回動作について説明する。本実施例では、軸209はベルト105を介して、定着ローラ101の表面に対向する位置に設けられ、より詳しくは、定着ローラ101の回転軸線に直行する線を軸線とするものである。この軸209を中心に中間フレーム208が回動する結果、定着ローラ101の回転軸線方向において接触面Neの一方側と他方側との接触量を調整するように接触面Neを回動することができる。
【0056】
本実施例では、上記の軸209、孔201a、加圧フレーム201が回動機構を構成している。即ち、支持ローラ103・104を保持させた中間フレーム208を、定着ローラ101とベルト105との後述する接触面Neの中心に対して法線方向の軸209を中心に回転可能とする回動機構を構成している。定着ローラ101の回転軸線方向において接触面Neの一方側と他方側との接触量を調整するように接触面Neを回動することができれば、軸209の配置は本実施例に限定されるものではない。
【0057】
加圧フレーム201はその前側が左右の本体側板202L・202R間に固定されたステイ軸203を中心に上下方向に回動可能に支持されて配設されている。そして、加圧フレーム201よりも上方の定着装置枠体側の不動のばね受座223と加圧フレーム上面との間に加圧ばね204が圧縮されて配設されている。加圧ばね204は加圧フレーム201の上面の左右側に一対配設されている。この加圧ばね204の圧縮反力により加圧フレーム201は軸203を中心に下方に常時回動付勢されている。
【0058】
加圧フレーム201の後側の下方には本体側板202L・202R間にカム軸224が回転可能に支持されて配設されている。このカム軸224には左右側に一対の偏心カム225が固定して配設されている。その一対の偏心カム225は同形状で同位相である。カム軸224は制御回路部60で制御される駆動源M2により偏心カム225の大隆起部が上向きとなった図3・図4の2点鎖線示の第1回転角状態と小隆起部が上向きとなった実線示の第2回転角状態とに180°間欠回転制御される。
【0059】
カム軸224が第1回転角状態に転換されることで、加圧フレーム201は偏心カム225の大隆起部により加圧ばね204の加圧力に抗して軸203を中心に持ち上げ回動されて図3・図4の2点鎖線示の上昇位置に保持される。この状態においてはアセンブリ110は定着ローラ101から持ち上げられて第一支持ローラ103と第二支持ローラ104とベルト105が定着ローラ101から離間している退避状態に保持されている(アセンブリ110の加圧解除状態)。
【0060】
このように、加圧フレーム201は本体側板202の間に固定されたステイ軸203のまわりに回動し、加圧バネ204による加圧力を受け定着ローラ101の方向に付勢される。カム225は回転することにより加圧フレーム201を昇降させ、外部加熱ベルト105の定着ローラ101に対する当接/退避動作を行っている。
【0061】
制御回路部60は画像形成装置50のスタンバイ状態においては、駆動源M1をOFFにして定着ローラ101の駆動を停止している。ヒータ111・112に対する通電もOFFにしている。また、カム軸224を第1回転角状態にしてアセンブリ110を加圧解除状態にしている。
【0062】
制御回路部60は、画像形成信号の入力に基づいて、駆動源M1をONにして定着ローラ101を回転駆動させる。これに伴い加圧ローラ102が従動回転する。また、ヒータ111・112に対する通電をONにして、定着ローラ101および加圧ローラ102の表面温度をそれぞれ所定の目標温度に立ち上げる。また、駆動源M2によりカム軸224を第1回転角状態から第2回転角状態に転換する。そうすると、偏心カム225の小隆起部が上向に回動していくにつれて、加圧フレーム201が加圧ばね204の加圧力により軸203を中心に持ち下げ回動されていく。
【0063】
そうすると、第一支持ローラ103と第二支持ローラ104に張架されているベルト105の下行側部分が定着ローラ101の上面に接触し、さらに第一支持ローラ103と第二支持ローラ104がベルト105を挟んで定着ローラ101の上面に当接する。
【0064】
このとき、ベルト105の下行側部分が定着ローラ101の曲面に倣って第一と第二支持ローラ103・104間に押し込まれる。これにより、第二支持ローラ104が加圧ばね109の付勢力に抗して第一支持ローラ103に近づく方向にスライド移動して加圧ばね109の圧縮反力が増してベルト105の張りが強まる。そのため、ベルト105の下行側部分が定着ローラ101の曲面に対して十分に倣って押圧されて密着する。
【0065】
そして、偏心カム225の小隆起部が最終的に上向に回動することで偏心カム225は加圧フレーム201に対して非接触となる。この状態において、第一支持ローラ103と第二支持ローラ104はベルト105を挟んで定着ローラ101の上面に対して加圧ばね204の加圧力にて所定の圧力で均等に押圧された当接状態になる(アセンブリ110の加圧状態)。
【0066】
このアセンブリ110の加圧状態において、第一及び第二支持ローラ103・104に張架されているベルト105の下行側部分が定着ローラ101に対して腹当てに接触して定着ローラ101と広い接触面Neを形成している。この状態において、ベルト105は定着ローラ101との摩擦力で定着ローラ101の回転に伴なって矢印の反時計方向Cに従動して回転する。また、第一支持ローラ103、第二支持ローラ104、クリーニングローラ108は、ベルト105の回転に従動して回転する。
【0067】
第一支持ローラ103及び第二支持ローラ104はそれぞれ、所定の外径と肉厚とした金属パイプであり、内部には発熱体としてハロゲンヒータ114・115が配置されている。ハロゲンヒータ114・115にはそれぞれ制御回路部60で制御される電源部114a・115a(図8)から不図示の給電系統を介して電力が供給される。これにより、ヒータ114・115が発熱して第一支持ローラ103及び第二支持ローラ104が内部から加熱される。そして、この加熱される第一支持ローラ103及び第二支持ローラ104に張架されて定着ローラ101の回転に従動して回転するベルト105が加熱される。
【0068】
図3のように、第一支持ローラ103とベルト105との接触領域(ローラ103のベルト掛け回し部分)D1においてベルト105の長手方向中央部の外面には温度検知手段としてのサーミスタ123を弾性支持部材(不図示)により弾性的に接触させてある。このサーミスタ123によりベルト105の表面温度が検知され、その検知温度情報が制御回路部60にフィードバックされる。
【0069】
制御回路部60はサーミスタ123から入力する検知温度が所定の目標温度に維持されるように電源部114aからヒータ114に対する供給電力を制御している。即ち、ヒータ114をON/OFFすることで、ベルト105の表面温度が所定の目標温度で制御される。
【0070】
また、第二支持ローラ104とベルト105との接触領域(ローラ104のベルト掛け回し部分)D2においてベルト105の長手方向中央部の外面には温度検知手段としてのサーミスタ124を弾性支持部材(不図示)により弾性的に接触させてある。このサーミスタ124によりベルト105の表面温度が検知され、その検知温度情報が制御回路部60にフィードバックされる。
【0071】
制御回路部60はサーミスタ124から入力する検知温度が所定の目標温度に維持されるように電源部115aからヒータ115に対する供給電力を制御している。即ち、ヒータ115をON/OFFすることで、ベルト105の表面温度が所定の目標温度で制御される。
【0072】
上記のように定着ローラ101に対して加圧状態にされたアセンブリ110のベルト105は回転する定着ローラ101に対して接触面Neで接触して従動回転する。そして、第一及び第二支持ローラ103・104により加熱されて接触面Neにおいて定着ローラ101の表面を外部加熱する。
【0073】
ベルト105の目標温度は定着ローラ101の目標温度よりも高く設定してある。そのため、定着ローラ101の表面温度が定着ニップ部Nにおいて記録材Pとの接触により降下することに対してレスポンス(熱の感応精度)良くベルト105から定着ローラ101に熱が供給される。
【0074】
4)ベルト105の寄り移動抑制構成
アセンブリ110には、ベルト105が定着ローラ101に接触して定着ローラ101の回転に従動して回転しているときに支持ローラ103・104の長手方向に沿う移動を規制するためにベルト105の両側部に設けられた規制部材を有する。規制部材211はベルト105の第一及び第二支持ローラ103・104に対する相対変位を規制する。
【0075】
本実施においては、この規制部材211は第一及び第二支持ローラ103・104の左右両端部に、それぞれ、支持ローラの同軸上に設けられ、支持ローラの外径よりも大きい外径を有するリング形状(円形フランジ、円形鍔座)で設けられている。
【0076】
図9は回転する定着ローラ101に対するアセンブリ110の加圧状態において、中間フレーム208が、定着ローラ101に対してある角度傾いているときの中間フレーム208が保持する部材の概略図である。ベルト105は定着ローラ101に対して加圧接触していて定着ローラ101との摩擦力で定着ローラ101の回転に従動して回転する。即ち、ベルト105は定着ローラ101との接触面Neにおいて定着ローラ101の回転方向と同じ方向の摩擦力を受けて従動回転する。
【0077】
また、支持ローラ103・104を保持させた中間フレーム208は、定着ローラ101とベルト105との接触面Neに対して法線方向の、前記回動機構の軸209を中心に回転可能である。
【0078】
このとき、接触面Neにおけるベルト105のある質点に働く摩擦力が、軸209周りに中間フレーム208を回転させるモーメントは以下に示す式(1)になる。
【0079】
m=−rfcos(θ−ρ)・・・式(1)
ここで(r,θ)は接触面Neに投影された軸209の位置を原点としたときの質点の座標、fは質点が受ける摩擦力、ρは定着ローラ101と中間フレーム208の交差角である。また、モーメントの向きが反時計方向のときを正としている。
【0080】
X軸負の領域に働くモーメントの和M1及びX軸正の領域に働くモーメントの和M2は、上記の式を各領域で積分して各々次の式(2)、式(3)のようになる。
【0081】
M1=f/2×LxLy1^2×sinρ・・・式(2)
M2=−f/2×LxLy2^2×sinρ・・・式(3)
ここで、Lxは定着ローラ101とベルト105の接触面Neに対して、軸209の投影位置からベルト長手方向端までの距離である。Ly1は回動軸209の位置から接触面Ne下流側端部までの距離である。Ly2は回動軸209の位置から接触面Ne上流側端部までの距離である。
【0082】
この式より、X軸負の領域に働くモーメントM1は常に正となり、交差角ρを小さくする方向に力が働く。一方、X軸正の領域に働くモーメントM2は常に負となり、交差角ρを大きくする方向に力が働く。また、これらのモーメントは、距離Ly1及び距離Ly2の二乗に比例しているため、軸209の位置によって、モーメントの総和(M1+M2)が変化する。
【0083】
図10は本実施例の形態を示すもので、軸209の位置を、定着ローラ101とベルト105の接触面Neに投影したとき、接触面Neにおける定着ローラ101の回転方向Aに対して接触面Neの中心よりも上流側に配置した場合である。本実施例では、支持ローラ103とオーバーラップする領域に配置されている。
【0084】
この場合、接触面Neに関して、回動軸209よりも下流側の接触領域が上流側の接触領域よりも大きくなるため、モーメントの総和は正になる。このとき、中間フレーム208の回動によって交差角ρは小さくなり定着ローラ101と支持ローラ103及び104は平行になる。また、モーメントの絶対値はsinρに比例するので、交差角ρが小さくなるほどモーメントが働かなくなり、ベルト寄りが発生しない姿勢で中間フレーム209が安定する。
【0085】
図11は加圧ばね204の付勢力によって第一と第二支持ローラ103・104が定着ローラ101へ侵入(当接)したときの模式図である。まず、加圧ばね109によって、ベルト105内の第一と第二支持ローラ103・104がベルト105を所定の張力でそれぞれの中心軸間距離が略同一になるように支持された状態に保持される。
【0086】
その状態において、カム225を回動することにより、第一と第二支持ローラ103・104は加圧ばね204の発生する付勢力により、侵入量L1だけ定着ローラ101へ食い込んだ状態になるまで定着ローラ101の外周面に対して付勢される。
【0087】
加圧ばね204は加圧フレーム201の上面の左右側(長手方向両端側)に設けられて2か所で定着ローラ101へ支持ローラ103及び104を付勢するため、その左右の加圧ばね204の持つ付勢力のばらつき分、侵入量L1はローラ長手方向で異なってしまう。この時、侵入量L1が大きいほうが、従動搬送されるベルト105の搬送速度は大きくなり、逆に侵入量L1が小さい方は大きい方に比べベルト105の搬送速度が相対的に遅くなる。
【0088】
このようにシームレスに構成されたベルト105の搬送速度に差がある場合、ベルト105そのものに速度の大きい側から速度の小さい側へ向かってスラスト移動する力が働く。そのため、例えば図11での矢視図(矢印Hの方向から見た図)である図12に示す長手方向左側の加圧力が大きく、長手方向右側の加圧力が小さい場合、ベルト105は矢印D方向に向かってスラスト移動(ベルト寄り移動)を行う。
【0089】
また、支持ローラ103及び104の侵入量L1が大きい場合、図11に示す点Pから点Qまでのベルト長は侵入量L1が小さい場合に比べて長くなる。そのため、侵入量L1が大きい場合、小さい場合に比べて支持ローラ103及び104の中心軸間距離は小さくなる方向に力が働く。
【0090】
例えば図11での矢視図である図12に示す長手方向左側の加圧力が大きく、長手方向右側の加圧力が小さい場合、軸間距離W1は軸間距離W2よりも短くなる。そのため、ベルト105の搬送方向と、定着ローラ101の回転方向に交差角が発生し、ベルト105に矢印E方向に向かってスラスト移動する力が働く。
【0091】
本実施例では、前記のように、第一と第二の支持ローラ103と104のうち接触面Neの定着ローラ回転方向において最下流側に位置する第二支持ローラ104が支持ローラ保持部材208に対して図4のように支持されている。即ち、最上流側に位置する第一支持ローラ103との中心間距離が移動距離に対して線形に増減する方向に移動可能に支持されている。
【0092】
これにより、定着ローラ101に対する外部加熱ベルトアセンブリ110の付勢力に長手方向で差があった場合、第二支持ローラ104が軸間距離を所定距離だけ移動する。これにより、搬送速度差でベルト105がスラスト移動しようとする力を、その長手方向の付勢力差を利用し、軸間距離を補正することで逆方向にベルト105をスラスト移動させる力を発生させて打ち消すことができる。
【0093】
その結果、付勢力のばらつきを吸収し、安定したベルト搬送がなされる。即ち、検知手段や駆動装置を用いることなく、ベルト105を定着ローラ101へ圧接させる付勢力にばらつきがあっても、それ自身の動作により支持ローラ103・104の軸間距離を前奥で変動させることができる。これにより、ベルト走行方向が定着ローラ101の回転方向と一致するようにベルト105を定着ローラ101の走行方向へ倣わせることができ、ベルト105の寄り力を抑えることでベルト寿命を向上させることが可能である。
【0094】
[その他の装置構成]
1)本発明に係る画像加熱装置は、実施例の定着装置としての使用に限られない。記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢を増大させる光沢増大装置(画像改質装置)としても有効に使用することができる。
【0095】
2)画像加熱部材101はローラ体に限られない。回転駆動されるエンドレスベルト体にすることもできる。
【0096】
3)ベルト105を張架する複数の支持ローラは実施例の第一と第二の2本のローラ103・104に限られない。3本以上の支持ローラでベルト105を張架する構成とすることもできる。この場合も、その複数の支持ローラのうち画像加熱部材の移動方向において最下流側に位置する支持ローラは、最上流側の支持ローラと最下流側の支持ローラの中心間距離が移動距離に対して線形に増減する方向に移動可能に支持した構成にする。また、最下流側に位置する支持ローラは、最上流側に位置する支持ローラに対して、軸間距離が増大する方向に付勢手段によって付勢する。
【0097】
4)ベルト105を加熱する加熱手段は実施例のヒータ114・115による加熱に限られない。ベルト105に電磁誘導発熱する金属層を具備させ、その金属層を誘導コイルで誘導発熱させて熱する加熱手段構成にすることもできる。
【0098】
5)加圧部材102はローラ体に限られない。回転駆動されるエンドレスベルト体にすることもできる。また、表面(定着ローラや記録材との当接面)の摩擦係数が小さい非回転部材(加圧パッドなど)の形態にすることもできる。
【符号の説明】
【0099】
9・・画像加熱装置、P・・記録材、K・・画像、101・・画像加熱部材、A・・画像加熱部材の回転方向、103,104・・支持ローラ、105・・ベルト部材、208・・支持ローラ保持部材、Ne・・接触面、209,201,201a・・回動機構、209・・回転軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式などを採用したプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に搭載される定着装置として用いて好適な画像加熱装置に関する。
【0002】
画像加熱装置としては、記録材上に形成された未定着画像を固着画像として加熱定着する定着装置や、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢度を増大させる光沢度増大装置等を挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
従来、種々の画像形成装置が知られているが、その中でも感光体にレーザ光で像露光を行い、それを現像して画像を得る電子写真方式画像形成装置が一般に普及している。このような画像形成装置は、画像品質が高く、高速である等の長所を持っており、例えば、複写機等の出力装置、レーザビームプリンタ等として広く用いられている。そして、これらの画像形成装置においては、厚紙などのいろいろな用紙(記録材)での高い生産性(単位時間あたりのプリント枚数)が求められてきている。
【0004】
ところで、上記のような電子写真方式を適用した画像形成装置においては、高い生産性、特に坪量の大きな用紙での生産性を上げるため、定着装置の定着スピードを高速化する必要がある。しかし、坪量が大きい用紙では、熱が多く奪われるため、定着に要する熱量が、薄い紙に定着する場合に比べて大幅に多い。そこで、坪量の大きい紙に定着する際には、定着スピードを落としたり、単位時間あたりのプリント枚数を減少させたりして、定着処理を施しているのが現状である。
【0005】
生産性を向上させることが可能な技術として、定着部材の表面温度を向上させるために定着部材に外部加熱部材を当接し、定着部材を外部から加熱する技術が知られている。また、外部加熱部材を複数の支持ローラに張架した無端ベルトにより形成することにより、熱伝導を行う領域の接触面積を増やし、熱伝導量を更に増大させることが可能となっている。このような技術方式をベルト式外部加熱装置と呼ぶ。
【0006】
しかしながら、外部加熱ベルトを定着部材としての定着ローラの表面へ圧接させる付勢力にばらつきがあった場合、回転動作時にベルトが長手方向に移動して、ベルトの端部がその側に設けられたベルト規制板等のベルト規制部材と当接する。ベルト規制板に及ぼすベルト寄り力が大きい場合は、ベルトの端部がベルト規制板に摺動することによって、ベルト端面に削れや亀裂が発生しベルト寿命を低下させる要因になる。ベルト寄り規制手段としては次のようなものが知られている。
【0007】
1)ベルトを掛け回すローラの端部にベルト規制部材を設ける(特許文献1、2、3、4)
2)ベルト内周の両端或は片端にリブを固着し、ベルトを掛け回すローラの端部や溝の側面にて規制する(特許文献5)
3)ベルトの端部位置を検出し、ベルトを掛け回すローラのアライメントを移動し寄り制御を行う(特許文献6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−075697号公報
【特許文献2】特開2000−075698号公報
【特許文献3】特開2000−075699号公報
【特許文献4】特開2000−075700号公報
【特許文献5】特開平9−090787号公報
【特許文献6】特開平8−234597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来例ではそれぞれ以下のような課題がある。
【0010】
1)特許文献1〜4では、ベルトがベルト規制部材に常に突き当たっているため、端部に応力が集中し、耐久による端部波打ちや座屈、更には削れや破断が生じる。特に、ベルト端の真直度がよくない場合や、突き当て面の平面度や振れがよくない場合、更に応力集中が激しくなり耐久性を損なう。また、発生した削れ粉による画像品質の低下や、電気系統に侵入し短絡を起こす可能性がある。
【0011】
2)特許文献5では、リブに弾性体を用いることやリブ接着全面で寄り力を受けるため、応力は改善される。但し、ベルトに対して精度良くリブを接着することが難しく、結果的にベルトの蛇行を十分に押さえることが困難であるため、局所的な応力集中が起き、リブ剥がれによる短寿命等の問題が懸念される。また、このようなベルトは消耗品であることが多く、短寿命によりランニングコストに対して不利となる。
【0012】
3)特許文献6は有効であるが、ベルトの位置を検出する手段、ローラのアライメントを変化させる構成及び制御手段が必要であり、装置の大型化が考えられる。
【0013】
本発明は、外部加熱ベルトにより画像加熱部材の表面に与える熱量を増大させた外部加熱ベルト構成において上記従来技術の問題点を解決するためになされたものである。その目的とするところは、次のような画像加熱装置を提供することにある。即ち、外部加熱ベルトを画像加熱部材の表面へ圧接させる付勢力に前奥にばらつきがあった場合のベルト走行方向の偏りをそれ自身の動作で制御する。これにより、ベルトの寄る力を低減させ、外部加熱ベルトと規制部材の摺動による摩耗を原因とするベルト寿命の低下を低減することが可能な画像加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明に係る画像加熱装置の代表的な構成は、画像を担持した記録材に接して前記画像を加熱する回転可能な画像加熱部材と、前記画像加熱部材の表面に接触して前記画像加熱部材の回転に従動して回転し前記画像加熱部材を外部より加熱する無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を支持し、前記画像加熱部材を押圧する第一支持ローラと、前記ベルト部材を支持し、前記ベルト部材と前記画像加熱部材との接触面における前記ベルト部材の移動方向において最下流側で前記画像加熱部材を押圧する第二支持ローラと、を備えた画像加熱装置であって、前記第一と第二支持ローラを保持する支持ローラ保持部材を、前記接触面に対して法線方向を回転軸とし回動可能とする回動機構を有し、前記第二支持ローラのそれぞれの端部が、前記支持ローラ保持部材に対して、前記第一支持ローラと前記第二支持ローラとの中心を結ぶ直線方向へ移動可能となるように支持されている方向に移動可能に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検知手段や駆動装置を用いることなく、外部加熱ベルトであるベルト部材を画像加熱部材へ圧接させる付勢力にばらつきがあっても、それ自身の動作により支持ローラの軸間距離を前奥で変動させることができる。これにより、ベルト走行方向が画像加熱部材の回転方向と一致するようにベルト部材を画像加熱部材の走行方向へ倣わせることができ、ベルト部材の寄り力を抑えることでベルト寿命を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例における画像形成装置の概略構成図
【図2】定着装置の要部の一部切り欠き正面模式図
【図3】図2の(3)−(3)線に沿う拡大右側面図
【図4】外部加熱ベルトアセンブリの右側面図
【図5】外部加熱ベルトアセンブリの分解斜視図
【図6】同アセンブリの加圧−加圧解除機構の斜視図
【図7】同アセンブリの一部切り欠き平面模式図
【図8】定着装置の制御系統のブロック図
【図9】中間フレームが定着ローラに対して傾いているときに、外部加熱ベルトに働く力の関係を説明した図
【図10】回動軸の配設位置の説明図
【図11】加圧力と支持ローラの定着ローラに対する位置関係を説明する模式図
【図12】図11における矢印方向から見た模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0018】
[第1の実施例]
(1)画像形成装置例
図1は本発明に関わる画像加熱装置を定着装置9として備える画像形成装置50の一例の概略構成図である。この装置50は中間転写方式でインライン方式の電子写真カラーレーザビームプリンタである。パソコン等のホスト装置70から制御回路部60に入力する画像信号に基づいて記録材Pにフルカラー画像を形成することができる。
【0019】
装置50内には第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdが併設され、並行処理により各々異なった色のトナー像を電子写真プロセスにより形成する。画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ専用の像担持体、本例では回転駆動される電子写真感光ドラム3a、3b、3c、3dを具備し、各ドラム3a、3b、3c、3d上にそれぞれ異なる色のトナー像が形成される。
【0020】
各ドラム3a、3b、3c、3dに隣接して中間転写体としての循環移動する中間転写ベルト130が設置され、ドラム3a、3b、3c、3d上に形成された各色のトナー像がベルト130上に順次に重ね合わされて1次転写される。そして、そのベルト上のトナー像が2次転写ローラ11で記録材P上に2次転写される。トナー像が転写された記録材Pは、定着装置9において加熱及び加圧によりトナー像の定着を受けて、記録画像形成物として装置外のトレイ6に排出される。
【0021】
ドラム3a、3b、3c、3dの外周には、それぞれドラム帯電器2a、2b、2c、2d、現像器1a、1b、1c、1d、1次転写帯電器24a、24b、24c、24d及びクリーナ4a、4b、4c、4dが設けられている。装置内の上方部にはレーザスキャナ5a、5b、5c、5dが設置されている。
【0022】
ドラム3a、3b、3c、3dは帯電器2a、2b、2c、2dにより一様に帯電処理される。そして、レーザスキャナ5a、5b、5c、5dから発せられたレーザ光をポリゴンミラーを回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズによりドラム3a、3b、3c、3dの母線上に集光して露光La、Lb、Lc、Ldする。これにより、ドラム3a、3b、3c、3d上に画像信号に応じた潜像が形成される。
【0023】
本実施例において、現像器1a、1b、1c、1dには、現像剤としてそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナーが、図示しない供給装置により所定量充填されている。現像器1a、1b、1c、1dは、それぞれドラム3a、3b、3c、3d上の潜像を現像して、シアントナー画像、マゼンタトナー画像、イエロートナー画像及びブラックトナー画像として可視化する。
【0024】
ベルト130は矢示の方向にドラム3と同じ周速度をもって回転駆動されている。ドラム3a上に形成担持された第1色のイエロートナー画像は、ドラム3aとベルト130との当接部(1次転写ニップ部)を通過する。その通過過程で、1次転写帯電器24aからベルト130に印加される1次転写バイアスにより形成される電界と圧力により、ベルト130の外周面に1次転写されていく。
【0025】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次にベルト130上に重畳転写され、装置50に入力したカラー画像情報に対応した合成カラートナー画像が形成される。
【0026】
1次転写が終了したドラム3a、3b、3c、3dは、それぞれのクリーナ4a、4b、4c、4dにより転写残トナーをクリーニング、除去され、引き続き次の潜像の形成以下に備えられる。ベルト130上に残留したトナー及びその他の異物は、ウエブクリーナ20のクリーニングウエブ(不織布)21をベルト130の表面に当接して、拭い取るようにしている。
【0027】
2次転写ローラ11は、ベルト130を懸回張設させた3本のローラ13・14・15のうちのローラ14に対してベルト130を挟ませて圧接させることで、ベルト130との間に2次転写ニップ部を形成している。ローラ11には、2次転写バイアス源によって所定の2次転写バイアスが印加されている。
【0028】
ベルト130上に重畳転写された合成カラートナー画像の記録材Pへの転写は2次転写ニップ部でなされる。即ち、記録材Pが給紙カセット10からレジストローラ12、転写前ガイドを通過して2次転写ニップ部に所定のタイミングで給送され、ニップ部で挟持搬送される。同時にローラ11に2次転写バイアスがバイアス電源からに印加される。この2次転写バイアスによりベルト130から記録材Pへ合成カラートナー画像が転写される。ニップ部を通ってトナー画像の転写を受けた記録材Pはベルト130から分離されて定着装置9へ導入され、熱と圧力を受けて未定着画像が固着像として定着される。
【0029】
片面コピーモードの場合は、定着装置9を出た記録材Pはフラッパ16の上側のシートパスを通って装置外の排紙トレイ6に排出される。
【0030】
両面コピーモードが選択されている場合には、定着装置9を出た第1面側画像形成済みの記録材Pがフラッパ16により再循環搬送機構側のシートパス17側に導入される。さらにスイッチバックシートパス18内に入り、次いで該シートパス18から引き出し搬送されて再搬送シートパス19に誘導される。そして、該シートパス19からレジストローラ12、転写前ガイドを通過して2次転写ニップ部に表裏反転状態で所定のタイミングで再導入される。
【0031】
これにより、記録材Pの第2面側に対して、ベルト130上のトナー画像の2次転写がなされる。2次転写ニップ部にて第2面に対するトナー画像の2次転写を受けた記録材Pはベルト130から分離されて定着装置9へ再導入され、トナー画像の定着処理を受けて両面コピーとして装置外の排紙トレイ6に排出される。
【0032】
モノクロなどモノカラーモードは指定された色の画像形成部が画像形成動作することでなされる。他の画像形成部はドラムの回転はなされるが画像形成動作はなされない。
【0033】
(2)定着装置
図2は定着装置9の要部の一部切り欠き正面模式図、図3は図2の(3)−(3)線に沿う拡大右側面図である。図4は外部加熱ベルトアセンブリの右側面図、図5は外部加熱ベルトアセンブリの分解斜視図、図6は同アセンブリの加圧−加圧解除機構の斜視図である。図7は外部加熱ベルトアセンブリの一部切り欠き平面模式図、図8は定着装置の制御系統のブロック図である。
【0034】
以下の説明において、定着装置9に関して、正面とは装置を記録材入口側からみた面(またはその側)、後面とはその反対側の面(またはその側:記録材出口側)である。また、左右とは装置を正面から見て左(長手方向の一端側、手前側)または右(長手方向の他端側、奥側)である。定着装置9またはこれを構成している部材の長手方向とは、回転体の軸線方向(スラスト方向)、又は記録材搬送路面内において記録材搬送方向に直交する方向又はその方向に並行な方向である。また、短手方向とは記録材搬送方向に並行な方向である。
【0035】
上又は下とは重力方向において上又は下である。上流側と下流側とは記録材搬送方向に関して或いは回転可能な画像加熱部材の移動方向に関して上流側と下流側である。
【0036】
定着装置9は、画像を加熱する回転可能な画像加熱部材としての定着ローラ101と、定着ローラ101とニップ部Nを形成する加圧部材としての加圧ローラ102と、定着ローラ101を外部より加熱する外部加熱ベルトアセンブリ110と、を有する。そして、ニップ部Nで未定着トナー画像Kを担持した記録材Pを挟持搬送して加熱する。なお、本実施例おいて、定着装置9に対する大小各種幅サイズの記録材の導入は記録材幅中心を基線とする中央基準搬送でなされる。
【0037】
1)定着ローラ101
定着ローラ101は定着装置枠体の左右の本体側板202L・202R間に左右の軸部101aがそれぞれ軸受部材220を介して回転可能に支持されて配設されている。定着ローラ101は所定の外径と肉厚とした中空芯金(金属パイプ)の外周面をトナー離型層、或いは弾性層とトナー離型層を順次に被覆したものである。中空芯金の内部には発熱体としてハロゲンヒータ111が配置されている。
【0038】
定着ローラ101の右側軸部101aにはドライブギアGが固着して配設されている。ギアGには制御回路部(制御手段)60で制御される駆動源M1から駆動力が伝達される。これにより、定着ローラ101が図3において矢印Aの時計方向に所定の速度で回転駆動される。
【0039】
また、ハロゲンヒータ111には制御回路部60で制御される電源部111a(図8)から不図示の給電系統を介して電力が供給される。これにより、ヒータ111が発熱して定着ローラ101が内部から加熱される。定着ローラ101の長手方向中央部の外面には温度検知手段としてのサーミスタ121を弾性支持部材(不図示)により弾性的に接触させてある。このサーミスタ121により定着ローラ101の表面温度が検知され、その検知温度情報が制御回路部60にフィードバックされる。
【0040】
制御回路部60はサーミスタ121から入力する検知温度(検知される温度に関する情報)が所定の目標温度(定着温度:所定の温度に対応する情報)に維持されるように電源部111aからヒータ111に対する供給電力を制御している。即ち、ヒータ111をON/OFFすることで、定着ローラ101の表面温度が所定の目標温度で制御(温度調節)される。
【0041】
2)加圧ローラ102
加圧ローラ102は定着ローラ101の下側において定着ローラ101に並行に配列されており、本体側板202L・202R間に左右の軸部102aがそれぞれ軸受部材221を介して回転可能に支持されて配設されている。加圧ローラ102は所定の外径と肉厚とした中空芯金(金属パイプ)の外周面をトナー離型層、或いは弾性層とトナー離型層を順次に被覆したものである。中空芯金の内部には発熱体としてハロゲンヒータ112が配置されている。
【0042】
左右の軸受部材221はそれぞれ本体側板202L・202Rに対して上下方向にスライド移動可能であり、加圧手段としての加圧ばね(付勢部材)222の圧縮反力により上方に押し上げ付勢されている。これにより、加圧ローラ102の上面が定着ローラ101の下面に所定の押圧力で押し当ることで、定着ローラ101と加圧ローラ102との間に記録材搬送方向において所定幅の定着ニップ部Nが形成される。この加圧ローラ102は定着ローラ101の回転に伴なって矢印の反時計方向Bに従動回転する。
【0043】
ハロゲンヒータ112には制御回路部60で制御される電源部112aから不図示の給電系統を介して電力が供給される。これにより、ヒータ112が発熱して加圧ローラ102が内部から加熱される。加圧ローラ102の長手方向中央部の外面には温度検知手段としてのサーミスタ122を弾性支持部材(不図示)により弾性的に接触させてある。このサーミスタ122により加圧ローラ102の表面温度が検知され、その検知温度情報が制御回路部60にフィードバックされる。
【0044】
制御回路部60はサーミスタ122から入力する検知温度が所定の目標温度に維持されるように電源部112aからヒータ112に対する供給電力を制御している。即ち、ヒータ112をON/OFFすることで、加圧ローラ102の表面温度が所定の目標温度で制御される。
【0045】
定着ローラ101が回転駆動されると共にヒータ111への通電と外部加熱ベルトアセンブリ110による外部加熱でローラ101の表面温度が所定の目標温度に立ち上げられる。また加圧ローラ102が従動回転すると共にヒータ112への通電によりローラ102の表面温度が所定の目標温度に立ち上げられる。この状態において、定着ニップ部Nに画像形成部側から未定着トナー画像Kを担持した記録材Pが導入される。記録材Pはニップ部Nを挟持搬送されることで熱と圧力を受けて未定着トナー画像Kが固着像として定着される。Dは記録材Pの搬送方向である。
【0046】
3)外部加熱ベルトアセンブリ110
外部加熱ベルトアセンブリ110は定着ローラ101の上面側に配設されており、定着ローラ101を外部より加熱する外部加熱手段である。アセンブリ110は定着ローラ101の外部加熱部材となる外部加熱ベルト105を有する。ベルト105は可撓性を有する回転可能な無端状のベルト部材(エンドレスベルト)である。本実施例においては、ステンレスやニッケル等の金属製の可撓性を有する無端状のベルト部材を基材とし、その外周面を、トナー付着を防止するために耐熱性の摺動層としてフッ素系樹脂被覆したものである。
【0047】
ベルト105は複数の支持ローラとしての間隔をあけた並行2本の第一支持ローラ103と第二支持ローラ104との間に張架されている。第一支持ローラ103と第二支持ローラ104は定着ローラ101の回転方向において最上流側と最下流側との位置関係に配列されている。第一支持ローラ103は左右の軸部103aが、それぞれ、左右の軸受板206に設けられた軸受丸穴206aに嵌入されて左右の軸受板206・206間に回転可能に支持されて配設されている。
【0048】
第二支持ローラ104は左右の軸部104aが、それぞれ、左右の軸受板206に設けられた前後方向の軸受長穴206bに嵌入されて左右の軸受板206・206間に回転可能に支持されて配設されている。第二支持ローラ104は軸受長穴206bにより第一支持ローラ103に近づく方向と遠のく方向とにスライド移動する自由度を有する。即ち、左右の軸受板206は第二支持ローラ104を回動自在かつ、第一支持ローラ103の回転中心Oa(図4)と第二支持ローラ104の回転中心Obを結んだ直線方向である矢印F方向に移動可能なように支持している。
【0049】
つまり、複数の支持ローラである第一と第二の支持ローラ103と104のうちの最下流側に位置する第二支持ローラ104は、最上流側に位置する第一支持ローラ103との中心間距離が移動距離に対して線形に増減する方向に移動可能に支持されている。
【0050】
そして、第二支持ローラ104は軸受長穴206bに嵌め入れられた加圧手段(付勢手段)としての加圧ばね(付勢部材)109の圧縮反力により第一支持ローラ103から遠のく方向に常時移動付勢されている。即ち、最下流側に位置する第二支持ローラ104は、最上流側に位置する第一支持ローラ103に対して軸間距離が増大する方向に付勢手段109によって付勢されている。この構成により第二支持ローラ104はベルト105に張りを与えるテンションローラとしても機能する。本実施例では、同じ軸受板206が複数の支持ローラ103・104を支持している。
【0051】
左右の軸受板206はそれぞれ上部の中央部に設けられた丸穴206cが支持ローラ保持部材としての中間フレーム208の左右側端面にそれぞれ設けられた軸207に対して嵌係合されることで中間フレーム208の左右側に保持されている。左右の軸受板206は中間フレーム208に対してでそれぞれ軸207を中心に独立して回動可能とされている。即ち、中間フレーム208はその下面側に第一及び第二支持ローラ103・104を左右の軸受板206を介して回転可能に保持している。その第一及び第二支持ローラ103・104間にベルト105が掛け回されている。
【0052】
また、第一及び第二支持ローラ103・104の間において、この両ローラに張架されたベルト105の上方側のベルト部分の外面に接触してベルト表面をクリーニングするクリーニングローラ108が配設されている。ローラ108は左右の軸部104aが、それぞれ、左右の軸受板206に設けられた上下方向の軸受長穴206dに嵌入されて左右の軸受板206・206間に回転可能に支持されて配設されている。また、付勢部材(不図示)によりベルト105の表面に対して所定の圧力で押し付けられた状態にされている。
【0053】
中間フレーム208の上面には中間フレーム208の長手方向中央部に縦軸(中間フレーム208の上面に対して法線方向の軸)209が配設されている。そして、中間フレーム208はその軸209を加圧フレーム201の長手方向中央部に設けた孔201aに下から差し込んでCリング(不図示)で抜け止めると共にスラスト方向の移動を規制している。
【0054】
即ち、中間フレーム208は、軸209及び加圧フレーム201側に配設されている中間コロ210によって加圧フレーム201の下面と一定の間隔を保ちながら、加圧フレーム201に対して軸209を中心に所定の角度回転可能(旋回可能)に支持されている。
【0055】
本実施例における旋回動作について説明する。本実施例では、軸209はベルト105を介して、定着ローラ101の表面に対向する位置に設けられ、より詳しくは、定着ローラ101の回転軸線に直行する線を軸線とするものである。この軸209を中心に中間フレーム208が回動する結果、定着ローラ101の回転軸線方向において接触面Neの一方側と他方側との接触量を調整するように接触面Neを回動することができる。
【0056】
本実施例では、上記の軸209、孔201a、加圧フレーム201が回動機構を構成している。即ち、支持ローラ103・104を保持させた中間フレーム208を、定着ローラ101とベルト105との後述する接触面Neの中心に対して法線方向の軸209を中心に回転可能とする回動機構を構成している。定着ローラ101の回転軸線方向において接触面Neの一方側と他方側との接触量を調整するように接触面Neを回動することができれば、軸209の配置は本実施例に限定されるものではない。
【0057】
加圧フレーム201はその前側が左右の本体側板202L・202R間に固定されたステイ軸203を中心に上下方向に回動可能に支持されて配設されている。そして、加圧フレーム201よりも上方の定着装置枠体側の不動のばね受座223と加圧フレーム上面との間に加圧ばね204が圧縮されて配設されている。加圧ばね204は加圧フレーム201の上面の左右側に一対配設されている。この加圧ばね204の圧縮反力により加圧フレーム201は軸203を中心に下方に常時回動付勢されている。
【0058】
加圧フレーム201の後側の下方には本体側板202L・202R間にカム軸224が回転可能に支持されて配設されている。このカム軸224には左右側に一対の偏心カム225が固定して配設されている。その一対の偏心カム225は同形状で同位相である。カム軸224は制御回路部60で制御される駆動源M2により偏心カム225の大隆起部が上向きとなった図3・図4の2点鎖線示の第1回転角状態と小隆起部が上向きとなった実線示の第2回転角状態とに180°間欠回転制御される。
【0059】
カム軸224が第1回転角状態に転換されることで、加圧フレーム201は偏心カム225の大隆起部により加圧ばね204の加圧力に抗して軸203を中心に持ち上げ回動されて図3・図4の2点鎖線示の上昇位置に保持される。この状態においてはアセンブリ110は定着ローラ101から持ち上げられて第一支持ローラ103と第二支持ローラ104とベルト105が定着ローラ101から離間している退避状態に保持されている(アセンブリ110の加圧解除状態)。
【0060】
このように、加圧フレーム201は本体側板202の間に固定されたステイ軸203のまわりに回動し、加圧バネ204による加圧力を受け定着ローラ101の方向に付勢される。カム225は回転することにより加圧フレーム201を昇降させ、外部加熱ベルト105の定着ローラ101に対する当接/退避動作を行っている。
【0061】
制御回路部60は画像形成装置50のスタンバイ状態においては、駆動源M1をOFFにして定着ローラ101の駆動を停止している。ヒータ111・112に対する通電もOFFにしている。また、カム軸224を第1回転角状態にしてアセンブリ110を加圧解除状態にしている。
【0062】
制御回路部60は、画像形成信号の入力に基づいて、駆動源M1をONにして定着ローラ101を回転駆動させる。これに伴い加圧ローラ102が従動回転する。また、ヒータ111・112に対する通電をONにして、定着ローラ101および加圧ローラ102の表面温度をそれぞれ所定の目標温度に立ち上げる。また、駆動源M2によりカム軸224を第1回転角状態から第2回転角状態に転換する。そうすると、偏心カム225の小隆起部が上向に回動していくにつれて、加圧フレーム201が加圧ばね204の加圧力により軸203を中心に持ち下げ回動されていく。
【0063】
そうすると、第一支持ローラ103と第二支持ローラ104に張架されているベルト105の下行側部分が定着ローラ101の上面に接触し、さらに第一支持ローラ103と第二支持ローラ104がベルト105を挟んで定着ローラ101の上面に当接する。
【0064】
このとき、ベルト105の下行側部分が定着ローラ101の曲面に倣って第一と第二支持ローラ103・104間に押し込まれる。これにより、第二支持ローラ104が加圧ばね109の付勢力に抗して第一支持ローラ103に近づく方向にスライド移動して加圧ばね109の圧縮反力が増してベルト105の張りが強まる。そのため、ベルト105の下行側部分が定着ローラ101の曲面に対して十分に倣って押圧されて密着する。
【0065】
そして、偏心カム225の小隆起部が最終的に上向に回動することで偏心カム225は加圧フレーム201に対して非接触となる。この状態において、第一支持ローラ103と第二支持ローラ104はベルト105を挟んで定着ローラ101の上面に対して加圧ばね204の加圧力にて所定の圧力で均等に押圧された当接状態になる(アセンブリ110の加圧状態)。
【0066】
このアセンブリ110の加圧状態において、第一及び第二支持ローラ103・104に張架されているベルト105の下行側部分が定着ローラ101に対して腹当てに接触して定着ローラ101と広い接触面Neを形成している。この状態において、ベルト105は定着ローラ101との摩擦力で定着ローラ101の回転に伴なって矢印の反時計方向Cに従動して回転する。また、第一支持ローラ103、第二支持ローラ104、クリーニングローラ108は、ベルト105の回転に従動して回転する。
【0067】
第一支持ローラ103及び第二支持ローラ104はそれぞれ、所定の外径と肉厚とした金属パイプであり、内部には発熱体としてハロゲンヒータ114・115が配置されている。ハロゲンヒータ114・115にはそれぞれ制御回路部60で制御される電源部114a・115a(図8)から不図示の給電系統を介して電力が供給される。これにより、ヒータ114・115が発熱して第一支持ローラ103及び第二支持ローラ104が内部から加熱される。そして、この加熱される第一支持ローラ103及び第二支持ローラ104に張架されて定着ローラ101の回転に従動して回転するベルト105が加熱される。
【0068】
図3のように、第一支持ローラ103とベルト105との接触領域(ローラ103のベルト掛け回し部分)D1においてベルト105の長手方向中央部の外面には温度検知手段としてのサーミスタ123を弾性支持部材(不図示)により弾性的に接触させてある。このサーミスタ123によりベルト105の表面温度が検知され、その検知温度情報が制御回路部60にフィードバックされる。
【0069】
制御回路部60はサーミスタ123から入力する検知温度が所定の目標温度に維持されるように電源部114aからヒータ114に対する供給電力を制御している。即ち、ヒータ114をON/OFFすることで、ベルト105の表面温度が所定の目標温度で制御される。
【0070】
また、第二支持ローラ104とベルト105との接触領域(ローラ104のベルト掛け回し部分)D2においてベルト105の長手方向中央部の外面には温度検知手段としてのサーミスタ124を弾性支持部材(不図示)により弾性的に接触させてある。このサーミスタ124によりベルト105の表面温度が検知され、その検知温度情報が制御回路部60にフィードバックされる。
【0071】
制御回路部60はサーミスタ124から入力する検知温度が所定の目標温度に維持されるように電源部115aからヒータ115に対する供給電力を制御している。即ち、ヒータ115をON/OFFすることで、ベルト105の表面温度が所定の目標温度で制御される。
【0072】
上記のように定着ローラ101に対して加圧状態にされたアセンブリ110のベルト105は回転する定着ローラ101に対して接触面Neで接触して従動回転する。そして、第一及び第二支持ローラ103・104により加熱されて接触面Neにおいて定着ローラ101の表面を外部加熱する。
【0073】
ベルト105の目標温度は定着ローラ101の目標温度よりも高く設定してある。そのため、定着ローラ101の表面温度が定着ニップ部Nにおいて記録材Pとの接触により降下することに対してレスポンス(熱の感応精度)良くベルト105から定着ローラ101に熱が供給される。
【0074】
4)ベルト105の寄り移動抑制構成
アセンブリ110には、ベルト105が定着ローラ101に接触して定着ローラ101の回転に従動して回転しているときに支持ローラ103・104の長手方向に沿う移動を規制するためにベルト105の両側部に設けられた規制部材を有する。規制部材211はベルト105の第一及び第二支持ローラ103・104に対する相対変位を規制する。
【0075】
本実施においては、この規制部材211は第一及び第二支持ローラ103・104の左右両端部に、それぞれ、支持ローラの同軸上に設けられ、支持ローラの外径よりも大きい外径を有するリング形状(円形フランジ、円形鍔座)で設けられている。
【0076】
図9は回転する定着ローラ101に対するアセンブリ110の加圧状態において、中間フレーム208が、定着ローラ101に対してある角度傾いているときの中間フレーム208が保持する部材の概略図である。ベルト105は定着ローラ101に対して加圧接触していて定着ローラ101との摩擦力で定着ローラ101の回転に従動して回転する。即ち、ベルト105は定着ローラ101との接触面Neにおいて定着ローラ101の回転方向と同じ方向の摩擦力を受けて従動回転する。
【0077】
また、支持ローラ103・104を保持させた中間フレーム208は、定着ローラ101とベルト105との接触面Neに対して法線方向の、前記回動機構の軸209を中心に回転可能である。
【0078】
このとき、接触面Neにおけるベルト105のある質点に働く摩擦力が、軸209周りに中間フレーム208を回転させるモーメントは以下に示す式(1)になる。
【0079】
m=−rfcos(θ−ρ)・・・式(1)
ここで(r,θ)は接触面Neに投影された軸209の位置を原点としたときの質点の座標、fは質点が受ける摩擦力、ρは定着ローラ101と中間フレーム208の交差角である。また、モーメントの向きが反時計方向のときを正としている。
【0080】
X軸負の領域に働くモーメントの和M1及びX軸正の領域に働くモーメントの和M2は、上記の式を各領域で積分して各々次の式(2)、式(3)のようになる。
【0081】
M1=f/2×LxLy1^2×sinρ・・・式(2)
M2=−f/2×LxLy2^2×sinρ・・・式(3)
ここで、Lxは定着ローラ101とベルト105の接触面Neに対して、軸209の投影位置からベルト長手方向端までの距離である。Ly1は回動軸209の位置から接触面Ne下流側端部までの距離である。Ly2は回動軸209の位置から接触面Ne上流側端部までの距離である。
【0082】
この式より、X軸負の領域に働くモーメントM1は常に正となり、交差角ρを小さくする方向に力が働く。一方、X軸正の領域に働くモーメントM2は常に負となり、交差角ρを大きくする方向に力が働く。また、これらのモーメントは、距離Ly1及び距離Ly2の二乗に比例しているため、軸209の位置によって、モーメントの総和(M1+M2)が変化する。
【0083】
図10は本実施例の形態を示すもので、軸209の位置を、定着ローラ101とベルト105の接触面Neに投影したとき、接触面Neにおける定着ローラ101の回転方向Aに対して接触面Neの中心よりも上流側に配置した場合である。本実施例では、支持ローラ103とオーバーラップする領域に配置されている。
【0084】
この場合、接触面Neに関して、回動軸209よりも下流側の接触領域が上流側の接触領域よりも大きくなるため、モーメントの総和は正になる。このとき、中間フレーム208の回動によって交差角ρは小さくなり定着ローラ101と支持ローラ103及び104は平行になる。また、モーメントの絶対値はsinρに比例するので、交差角ρが小さくなるほどモーメントが働かなくなり、ベルト寄りが発生しない姿勢で中間フレーム209が安定する。
【0085】
図11は加圧ばね204の付勢力によって第一と第二支持ローラ103・104が定着ローラ101へ侵入(当接)したときの模式図である。まず、加圧ばね109によって、ベルト105内の第一と第二支持ローラ103・104がベルト105を所定の張力でそれぞれの中心軸間距離が略同一になるように支持された状態に保持される。
【0086】
その状態において、カム225を回動することにより、第一と第二支持ローラ103・104は加圧ばね204の発生する付勢力により、侵入量L1だけ定着ローラ101へ食い込んだ状態になるまで定着ローラ101の外周面に対して付勢される。
【0087】
加圧ばね204は加圧フレーム201の上面の左右側(長手方向両端側)に設けられて2か所で定着ローラ101へ支持ローラ103及び104を付勢するため、その左右の加圧ばね204の持つ付勢力のばらつき分、侵入量L1はローラ長手方向で異なってしまう。この時、侵入量L1が大きいほうが、従動搬送されるベルト105の搬送速度は大きくなり、逆に侵入量L1が小さい方は大きい方に比べベルト105の搬送速度が相対的に遅くなる。
【0088】
このようにシームレスに構成されたベルト105の搬送速度に差がある場合、ベルト105そのものに速度の大きい側から速度の小さい側へ向かってスラスト移動する力が働く。そのため、例えば図11での矢視図(矢印Hの方向から見た図)である図12に示す長手方向左側の加圧力が大きく、長手方向右側の加圧力が小さい場合、ベルト105は矢印D方向に向かってスラスト移動(ベルト寄り移動)を行う。
【0089】
また、支持ローラ103及び104の侵入量L1が大きい場合、図11に示す点Pから点Qまでのベルト長は侵入量L1が小さい場合に比べて長くなる。そのため、侵入量L1が大きい場合、小さい場合に比べて支持ローラ103及び104の中心軸間距離は小さくなる方向に力が働く。
【0090】
例えば図11での矢視図である図12に示す長手方向左側の加圧力が大きく、長手方向右側の加圧力が小さい場合、軸間距離W1は軸間距離W2よりも短くなる。そのため、ベルト105の搬送方向と、定着ローラ101の回転方向に交差角が発生し、ベルト105に矢印E方向に向かってスラスト移動する力が働く。
【0091】
本実施例では、前記のように、第一と第二の支持ローラ103と104のうち接触面Neの定着ローラ回転方向において最下流側に位置する第二支持ローラ104が支持ローラ保持部材208に対して図4のように支持されている。即ち、最上流側に位置する第一支持ローラ103との中心間距離が移動距離に対して線形に増減する方向に移動可能に支持されている。
【0092】
これにより、定着ローラ101に対する外部加熱ベルトアセンブリ110の付勢力に長手方向で差があった場合、第二支持ローラ104が軸間距離を所定距離だけ移動する。これにより、搬送速度差でベルト105がスラスト移動しようとする力を、その長手方向の付勢力差を利用し、軸間距離を補正することで逆方向にベルト105をスラスト移動させる力を発生させて打ち消すことができる。
【0093】
その結果、付勢力のばらつきを吸収し、安定したベルト搬送がなされる。即ち、検知手段や駆動装置を用いることなく、ベルト105を定着ローラ101へ圧接させる付勢力にばらつきがあっても、それ自身の動作により支持ローラ103・104の軸間距離を前奥で変動させることができる。これにより、ベルト走行方向が定着ローラ101の回転方向と一致するようにベルト105を定着ローラ101の走行方向へ倣わせることができ、ベルト105の寄り力を抑えることでベルト寿命を向上させることが可能である。
【0094】
[その他の装置構成]
1)本発明に係る画像加熱装置は、実施例の定着装置としての使用に限られない。記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢を増大させる光沢増大装置(画像改質装置)としても有効に使用することができる。
【0095】
2)画像加熱部材101はローラ体に限られない。回転駆動されるエンドレスベルト体にすることもできる。
【0096】
3)ベルト105を張架する複数の支持ローラは実施例の第一と第二の2本のローラ103・104に限られない。3本以上の支持ローラでベルト105を張架する構成とすることもできる。この場合も、その複数の支持ローラのうち画像加熱部材の移動方向において最下流側に位置する支持ローラは、最上流側の支持ローラと最下流側の支持ローラの中心間距離が移動距離に対して線形に増減する方向に移動可能に支持した構成にする。また、最下流側に位置する支持ローラは、最上流側に位置する支持ローラに対して、軸間距離が増大する方向に付勢手段によって付勢する。
【0097】
4)ベルト105を加熱する加熱手段は実施例のヒータ114・115による加熱に限られない。ベルト105に電磁誘導発熱する金属層を具備させ、その金属層を誘導コイルで誘導発熱させて熱する加熱手段構成にすることもできる。
【0098】
5)加圧部材102はローラ体に限られない。回転駆動されるエンドレスベルト体にすることもできる。また、表面(定着ローラや記録材との当接面)の摩擦係数が小さい非回転部材(加圧パッドなど)の形態にすることもできる。
【符号の説明】
【0099】
9・・画像加熱装置、P・・記録材、K・・画像、101・・画像加熱部材、A・・画像加熱部材の回転方向、103,104・・支持ローラ、105・・ベルト部材、208・・支持ローラ保持部材、Ne・・接触面、209,201,201a・・回動機構、209・・回転軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を担持した記録材に接して前記画像を加熱する回転可能な画像加熱部材と、前記画像加熱部材の表面に接触して前記画像加熱部材の回転に従動して回転し前記画像加熱部材を外部より加熱する無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を支持し、前記画像加熱部材を押圧する第一支持ローラと、前記ベルト部材を支持し、前記ベルト部材と前記画像加熱部材との接触面における前記ベルト部材の移動方向において最下流側で前記画像加熱部材を押圧する第二支持ローラと、を備えた画像加熱装置であって、
前記第一と第二支持ローラを保持する支持ローラ保持部材を、前記接触面に対して法線方向を回転軸とし回動可能とする回動機構を有し、前記第二支持ローラのそれぞれの端部が、前記支持ローラ保持部材に対して、前記第一支持ローラと前記第二支持ローラとの中心を結ぶ直線方向へ移動可能となるように支持されている方向に移動可能に支持されていることを特徴とする画像加熱装置。
【請求項2】
前記第二支持ローラは前記第一支持ローラに対して軸間距離が増大する方向に付勢手段によって付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
【請求項3】
前記画像加熱部材は弾性層を持つことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像加熱装置。
【請求項4】
前記ベルト部材が前記画像加熱部材の回転に従動して回転しているときに前記支持ローラの長手方向に沿う移動を規制するために前記ベルト部材の両側部に設けられた規制部材を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の画像加熱装置。
【請求項5】
前記規制部材は前記支持ローラの同軸上に設けられ、前記支持ローラの外径よりも大きな外径を有するリング形状になっていることを特徴とする請求項4に記載の画像加熱装置。
【請求項6】
前記画像加熱部材に当接してニップ部を形成する加圧部材を有し、前記ニップ部で画像を担持した記録材を挟持搬送して加熱することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像加熱装置。
【請求項1】
画像を担持した記録材に接して前記画像を加熱する回転可能な画像加熱部材と、前記画像加熱部材の表面に接触して前記画像加熱部材の回転に従動して回転し前記画像加熱部材を外部より加熱する無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を支持し、前記画像加熱部材を押圧する第一支持ローラと、前記ベルト部材を支持し、前記ベルト部材と前記画像加熱部材との接触面における前記ベルト部材の移動方向において最下流側で前記画像加熱部材を押圧する第二支持ローラと、を備えた画像加熱装置であって、
前記第一と第二支持ローラを保持する支持ローラ保持部材を、前記接触面に対して法線方向を回転軸とし回動可能とする回動機構を有し、前記第二支持ローラのそれぞれの端部が、前記支持ローラ保持部材に対して、前記第一支持ローラと前記第二支持ローラとの中心を結ぶ直線方向へ移動可能となるように支持されている方向に移動可能に支持されていることを特徴とする画像加熱装置。
【請求項2】
前記第二支持ローラは前記第一支持ローラに対して軸間距離が増大する方向に付勢手段によって付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
【請求項3】
前記画像加熱部材は弾性層を持つことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像加熱装置。
【請求項4】
前記ベルト部材が前記画像加熱部材の回転に従動して回転しているときに前記支持ローラの長手方向に沿う移動を規制するために前記ベルト部材の両側部に設けられた規制部材を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の画像加熱装置。
【請求項5】
前記規制部材は前記支持ローラの同軸上に設けられ、前記支持ローラの外径よりも大きな外径を有するリング形状になっていることを特徴とする請求項4に記載の画像加熱装置。
【請求項6】
前記画像加熱部材に当接してニップ部を形成する加圧部材を有し、前記ニップ部で画像を担持した記録材を挟持搬送して加熱することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−50517(P2013−50517A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187163(P2011−187163)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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