説明

画像形成方法およびトナー

【課題】定着後の画像と画像形成装置内部材との摩擦による汚れを低減できる画像形成方法、及びこれに用いられるトナーを提供すること。
【解決手段】記録媒体の一方の面に画像を形成する第1の画像形成プロセスと、当該記録媒体の他方の面に画像を形成する第2の画像形成プロセスと、を備え、前記第1の画像形成プロセス及び前記第2の画像形成プロセスは、いずれも帯電工程と、露光工程と、現像工程と、転写工程と、クリーニング工程と、定着工程と、を有し、トナーは、結着樹脂と、ワックスと、を含み、前記ワックスは、前記結着樹脂100重量部に対して2〜6重量部含まれ、前記トナーのFT−IRを使用しATR法で測定したピーク比W/Rは、0.040〜0.050であり、前記トナーは、160〜230℃の範囲で定着した際のベタ画像の動摩擦係数が1.0以下であり、且つ、静止摩擦係数が1.5以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた超高速画像形成分野における画像形成方法、及びこれに用いられるトナーに関し、特に定着後の画像と画像形成装置内部材との摩擦による汚れを低減できる画像形成方法、及びこれに用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真作像業界において、印刷速度の高速化が求められている。特にシステム速度が500〜1700mm/secの範囲内にあるような超高速画像形成分野では、高速で回転する感光体上に形成された静電潜像を安定して現像すること、現像されたトナーを印刷物(記録媒体)に高い効率で転写させること、トナーが転写された印刷物をムラなく定着させることが必要であり、各プロセスにおいて低速から中速の分野よりも高い技術が求められる。
【0003】
そこで例えば特許文献1では、超高速画像形成分野において、トナーに結晶性ポリエステルと非晶質樹脂と脂肪酸アミド化合物とを所定の条件を満たすように含有させ、低温定着性に優れると共に、フィルミングを抑制して良好なトナー像を現像することが可能であり、且つ、高い転写率を達成し得る発明が開示されている。
【0004】
ところで、最近では利用者が両面印刷を行う場面が多く、その際印刷紙(記録媒体)は片面印刷後、画像形成装置内の用紙反転機構によって裏返され、再び印刷される。また、画像形成装置内に用紙反転機構を備えていないものは、一台目の画像形成装置で片面印刷後、用紙を当該一台目の画像形成装置から排出してから用紙反転装置を用いて反転させ、二台目の画像形成装置に投入し、反対面の印刷を行う。印刷紙(記録媒体)がカットされていない、いわゆる連帳紙を用いる画像形成装置で両面印刷を行う際は二台使用するケースが多い。
【0005】
ここで、超高速画像形成装置の利用者の視点から考えると、実際に利用者が得るのは定着画像であることから、定着後の印刷画像品質が安定していることが特に重要である。
両面印刷の場合、最初の片面(表面)の定着が不充分であると、完全に定着された画像と比較して、画像表面の摩擦係数が高くなる。その結果、両面印刷におけるもう片面(裏面)の印刷において、画像形成装置に印刷紙(記録媒体)が投入された際に画像形成装置内の搬送機構等の部材との摩擦力が高くなり、定着画像ならびに画像形成装置内部材が汚れてしまう。定着画像の汚れは品質問題につながり、部材汚れは定期的な清掃を要するためメンテナンス性悪化の問題につながることから、定着後の画像と画像形成装置内部材との摩擦による汚れを低減する必要がある。
このような両面印刷における問題に対しては、特許文献1に記載の発明では充分な定着性を有しているとは言えず、さらなる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−241241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記超高速画像形成分野における画像形成方法の問題点を解決するためになされたもので、定着後の画像と画像形成装置内部材との摩擦による汚れを低減できる画像形成方法、及びこれに用いられるトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上記課題を解決するために本発明に係る画像形成方法、及びこれに用いられるトナーは、具体的には下記(1)〜(10)に記載の技術的特徴を有する。
(1):記録媒体の一方の面に画像を形成する第1の画像形成プロセスと、当該記録媒体の他方の面に画像を形成する第2の画像形成プロセスと、を備え、前記第1の画像形成プロセス及び前記第2の画像形成プロセスは、いずれも感光体表面を帯電させる帯電工程と、該帯電工程後の感光体表面に静電潜像を書き込む露光工程と、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて可視化して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を直接又は被転写体を介して記録媒体上に転写して未定着画像を形成する転写工程と、該転写工程後の感光体表面に残存する転写残留トナーをクリーニングするクリーニング工程と、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させる定着工程と、を有し、前記トナーは、結着樹脂と、ワックスと、を含み、前記ワックスは、前記結着樹脂100重量部に対して2〜6重量部含まれ、前記トナーのFT−IR(フーリエ変換赤外分光分析測定装置)を使用しATR法(全反射法)で測定した、前記ワックスの特徴的なスペクトルのピーク高さWと前記結着樹脂の特徴的なスペクトルのピーク高さRとを用いて示されるピーク比W/Rは、0.040〜0.050であり、前記トナーは、160〜230℃の範囲で定着した際のベタ画像の動摩擦係数が1.0以下であり、且つ、静止摩擦係数が1.5以下であることを特徴とする画像形成方法である。
【0009】
(2):前記トナーは、さらに帯電制御剤を含むことを特徴とする上記(1)に記載の画像形成方法である。
【0010】
(3):前記記録媒体は、連帳紙であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の画像形成方法である。
【0011】
(4):前記定着工程は、システム速度が500〜2000mm/secであることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の画像形成方法である。
【0012】
(5):前記定着工程は、シリコンオイルが塗布された定着部材で前記未定着画像を前記記録媒体に定着させることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の画像形成方法である。
【0013】
(6):前記第1の画像形成プロセスと前記第2の画像形成プロセスとの間に、当該記録媒体を反転させる反転工程を備えることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の画像形成方法である。
【0014】
(7):前記第1の画像形成プロセスと、前記第2の画像形成プロセスとは、同一の画像形成装置で行われることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の画像形成方法である。
【0015】
(8):前記第1の画像形成プロセスと、前記第2の画像形成プロセスとは、異なる画像形成装置で行われることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の画像形成方法である。
【0016】
(9):前記トナーは、粉砕式製法で製造された粉砕トナーであることを特徴とする上記(1)乃至(8)のいずれか1項に記載の画像形成方法である。
【0017】
(10):上記(1)乃至(8)のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられ、粉砕式製法で製造されることを特徴とするトナーである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、定着後の画像と画像形成装置内部材との摩擦による汚れを低減できる画像形成方法、及びこれに用いられるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る画像形成方法を適用可能な画像形成装置の一実施の形態における一部の構成を示す概略図である。
【図2】ワックスの特徴的なスペクトルを示すグラフである。
【図3】非晶質樹脂であるポリエステル樹脂の特徴的なスペクトルを示すグラフである。
【図4】非晶質樹脂であるスチレン−アクリル系樹脂の特徴的なスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る画像形成方法は、記録媒体の一方の面に画像を形成する第1の画像形成プロセスと、当該記録媒体の他方の面に画像を形成する第2の画像形成プロセスと、を備え、前記第1の画像形成プロセス及び前記第2の画像形成プロセスは、いずれも感光体表面を帯電させる帯電工程と、該帯電工程後の感光体表面に静電潜像を書き込む露光工程と、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて可視化して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を直接又は被転写体を介して記録媒体上に転写して未定着画像を形成する転写工程と、該転写工程後の感光体表面に残存する転写残留トナーをクリーニングするクリーニング工程と、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させる定着工程と、を有し、前記トナーは、結着樹脂と、ワックスと、を含み、前記ワックスは、前記結着樹脂100重量部に対して2〜6重量部含まれ、前記トナーのFT−IR(フーリエ変換赤外分光分析測定装置)を使用しATR法(全反射法)で測定した、前記ワックスの特徴的なスペクトルのピーク高さWと前記結着樹脂の特徴的なスペクトルのピーク高さRとを用いて示されるピーク比W/Rは、0.040〜0.050であり、前記トナーは、160〜230℃の範囲で定着した際のベタ画像の動摩擦係数が1.0以下であり、且つ、静止摩擦係数が1.5以下であることを特徴とする。
【0021】
次に、本発明に係る画像形成方法についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0022】
《画像形成方法》
図1は、本発明に係る画像形成方法を適用可能な画像形成装置の一実施の形態における一部の構成を示す概略図である。本発明に係る画像形成方法について、画像形成装置の構成と共に説明する。
【0023】
先ず、画像形成に先立ち、帯電装置2によりドラム状感光体1の表面が一様に帯電され(帯電工程)、露光装置8により感光体1上に静電潜像が形成される(露光工程)。次いで、感光体1上に形成された静電潜像は現像装置3により可視化されて、トナー像(可視像)が形成される(現像工程)。
【0024】
しかる後に、感光体1上のトナー像は転写装置5により記録媒体4上に転写されて未定着画像となる(転写工程)。さらに、記録媒体4上の未定着画像は、定着装置6で定着されて記録画像が得られる(定着工程)。一方、感光体1上に残留したトナー(転写残留トナー)は、クリーニングブラシを備えたクリーニング装置7により綺麗に取り除かれる(クリーニング工程)。
【0025】
上記帯電工程から定着工程まで(クリーニング工程を含む)の一連の工程により画像形成が行われ定着画像(記録画像)が得られる。この一連の工程を本発明では画像形成プロセスと称し、本発明に係る画像形成方法では、2つの画像形成プロセスを備えることで両面印刷が可能となる。即ち、本発明に係る画像形成方法は、記録媒体の一方の面に画像を形成する第1の画像形成プロセスと、当該記録媒体の他方の面に画像を形成する第2の画像形成プロセスとを備えてなる。
【0026】
(第1の画像形成プロセス、第2の画像形成プロセス)
第1の画像形成プロセスと、第2の画像形成プロセスとは、同一の画像形成装置で行われても良く、異なる画像形成装置で行われても良い。
同一の画像形成装置で行われる場合、記録媒体4の一方の面の画像形成が第1の画像形成プロセスによって行われた後、例えば後述する反転装置(不図示)によって当該記録媒体4の既印刷(画像形成)面と未印刷(未画像形成)面とが反転される。そして、この未印刷面に対して第2の画像形成プロセスとして、前記第1の画像形成プロセスと同一の経路を辿り画像形成が行われて、両面印刷が為される。
同一の画像形成装置で両面印刷が為されることで、複数の画像形成装置を備える必要がなく、省スペースで両面印刷が可能となる。
【0027】
一方、異なる画像形成装置で行われる場合、第1の画像形成装置により記録媒体4の一方の面の画像形成が第1の画像形成プロセスによって行われた後、第2の画像形成装置により記録媒体4のもう一方の面の画像形成が第2の画像形成プロセスによって行われて、両面印刷が為される。このとき、第1の画像形成プロセスによって一方の面の画像形成がされた記録媒体4は、第1の画像形成装置外に排出された後、後述する反転装置(不図示)によって当該記録媒体4の既印刷(画像形成)面と未印刷(未画像形成)面とが反転される。そして、例えば第1の画像形成装置とは別の装置であり且つ同一の形状の第2の画像形成装置に搬送され、未印刷面に対して第2の画像形成プロセスとして画像形成が行われて両面印刷が為される。
異なる画像形成装置で両面印刷が為されることで、一方の面の印刷と、もう一方の面の印刷とが並行して行われるため、連続印刷であれば上述の同一の画像形成装置による両面印刷の場合と比較して概ね2倍の印刷速度で両面印刷が可能となる。
【0028】
尚、異なる画像形成装置で両面印刷をする場合、必ずしも反転工程(反転装置)を設ける必要はなく、第1の画像形成装置とは対称(例えば、図1の画像形成装置とは上下対称)の第2の画像形成装置を用いて記録媒体4を反転することなく両面印刷する構成としても良い。しかしながら、上述のとおり反転工程を備えることで、第1の画像形成装置と第2の画像形成装置とを同一の形状とすることができるため、第1の画像形成プロセスと第2の画像形成プロセスとの間に反転工程を設けることが好ましい。また、本発明に係る画像形成装置において、第1の画像形成装置と第2の画像形成装置の形状が異なっていても良いことは言うまでもない。
【0029】
次いで、画像形成プロセスを構成する各工程に用いられる部材について詳細に説明する。
(感光体)
本発明に用いられる感光体1には、無機感光体、有機感光体等の従来公知のものを適用できる。さらにその形状は任意であり、ドラム状であっても良く、ベルト状であっても良いが、高速画像形成に対応するためにはドラム状であることが好ましい。
【0030】
(帯電装置)
本発明に用いられる帯電装置2には、接触帯電方式、非接触帯電方式等、従来公知のものを適用できる。
【0031】
(露光装置)
本発明に用いられる露光装置8には、従来公知のものを適用可能であって、上述した感光体1に静電潜像を形成可能であれば良く、感光体1の特性に対応した光を照射可能なものが適宜採用される。
【0032】
(現像装置)
本発明に用いられる現像装置3は、感光体1の移動方向(回転方向)に対して逆方向に回転する逆方向現像ロール11と、感光体1の移動方向(回転方向)に対して順方向に回転する順方向現像ロール12とを対向して配置したセンターフィード方式の構造であることが好ましいが、このセンターフィード方式の構造に限らず従来公知の現像装置を適用可能である。この逆方向現像ロール11と、順方向ロール12とは、互いが最近接する位置よりも、それぞれの現像ロールの回転方向下流側において、感光体1と対向するように配置されている。また、現像装置3はこの他に現像剤規制部材15を備え、さらに、後述するトナー9とキャリア10からなる2成分現像剤13、攪拌部材14a、14bなどを備えていても良い。現像剤規制部材15は、逆方向現像ロール11と、順方向ロール12とが最近接する位置よりも、それぞれの現像ロールの回転方向上流側に配置され、逆方向現像ロール11及び順方向ロール12に保持される2成分現像剤13の量を規制している。
なお、図1では逆方向現像ロール11ならびに順方向現像ロール12を1本ずつ備えた場合を示しているが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、必要に応じて現像ロールの設置本数を3本、または4本以上としても良い。また、現像ロールは磁気吸引力を有するものである。
【0033】
本発明に係る画像形成方法では、記録紙等の記録媒体4の搬送速度(システム速度)が500乃至2000mm/secである超高速画像形成が好ましい。このような高速の画像形成を行う際には、現像装置は1本の現像磁気ロールによる現像では必ずしも充分ではなく、画像印刷濃度を確保するために複数本の現像磁気ロールを使用し、現像領域を増して現像時間を伸ばし現像する方式、所謂センターフィード方式が好ましい。複数本の現像磁気ロールを使用したセンターフィード方式の場合、1本の現像ロールを使用した方式と比較して高い現像能力が得られることにより、高面積画像印刷の場合でも画像印刷濃度を確保することができる。
【0034】
(転写装置)
本発明に用いられる転写装置5は、記録媒体4にトナー像を転写可能であればいかなるものであっても良く、記録媒体4に直接転写する方式であっても良く、中間転写体(被転写体)を介して記録媒体4に転写する方式であっても良い。
【0035】
(定着装置)
本発明に用いられる定着装置6には、定着ローラ、定着ベルト等、従来公知の定着部材を適用できるが、高速画像形成に対応するためには定着ローラであることが好ましい。
また、本発明に係る画像形成方法では、定着工程における記録媒体4の搬送速度(システム速度)が500乃至2000mm/secである超高速画像形成が好ましい。
また、本発明では定着部材にシリコンオイルが塗布されることが好ましいが、シリコンオイル以外のオイルが塗布される定着装置であっても良く、オイル塗布を用いないオイルレス定着方式の定着装置であっても良い。シリコンオイルは不図示のオイル塗布機構により適宜塗布されるものであり、オイル塗布機構の形態は従来公知のものを適用できる。オイル塗布機構は定着部材にシリコンオイルを塗布可能な配置構成であれば良く、定着装置の内部に配置されていても良く、取り替え容易なように定着装置の外部に配置されていても良い。
さらに、本発明で用いられるシリコンオイルは、定着性向上に効果を奏するシリコンオイルであれば如何なるものであっても良く、従来公知のものを適用可能である。
【0036】
(クリーニング装置)
上述のとおり、本発明に係る画像形成方法では超高速画像形成が好ましく、この場合においては、転写後の感光体1上の転写残留トナーのクリーニング性が安定していることが重要である。クリーニング装置7で完全に除去されなかった場合は、転写残留トナーが徐々に感光体1に固着し、トナーフィルミングが発生する。これによって、ベタ画像に白抜けが生じる等の印刷画質上の問題が発生する。
この印刷画質上の問題の原因となるトナーフィルミングを引き起こすクリーニング不良の問題を解決するためには、画像形成装置のシステムに対して、クリーニング部材およびトナーの組み合わせを、好適なものとする必要がある。
そこで、本発明に用いられるクリーニング装置7は、クリーニングブラシ、クリーニングブレード、磁気ブラシ等の公知のクリーニング部材を1または2以上有し、これらを併用しても良い。クリーニングブラシは感光体1表面の転写残留トナーを捕集した後、ブラシに絡まったトナーをエア吸引によって回収するため、大きな動力を必要とし、装置も大きくなり易いが、超高速画像形成の場合においても寿命が長く安定している利点があるため好ましい。
クリーニングブラシのブラシの繊維は、ナイロン、トリアセテート、アクリル、テフロン(登録商標)等の材質を用いることができる。これらの中でも、比較的安価でクリーニング性にも優れていることから、ナイロンが好ましい。
【0037】
(記録媒体)
本発明に係る画像形成方法では、記録媒体4には如何なるものを用いても良いが、紙を用いることが好ましく、特に連帳紙を用いることが好ましい。
【0038】
(反転装置)
本発明に係る画像形成方法では、反転装置(不図示)としてカット紙用の反転装置、連帳紙用の反転装置等、従来公知のものをそのまま適用できる。
具体的に連帳紙用の反転装置としては、特許第3322008号に記載されているような、一本の棒状で回転自在な部材に所定の角度をもたせて巻きつけることで、挿入時から反転した状態で搬出される反転装置が挙げられる。
尚、この画像形成装置外に配置された反転装置において、所定の角度を0度として挿入方向と搬出方向を同一とし、同一画像形成装置内に再度搬送する構成としても良く、所定の角度を0度より大きくし、異なる画像形成装置内に搬送する構成としても良い。また、同一画像形成装置内でもう一方の面を印刷するのであれば、画像形成装置内に反転装置が備え付けられたものであっても良い。
【0039】
《トナー》
本発明に係る画像形成方法で用いられるトナーは、上述した画像形成装置に適用した際に良好な画像品質を発揮するために、結着樹脂及びワックスを含む。本発明では、本発明の効果を発揮するために定着画像表面の動摩擦係数ならびに静止摩擦係数を規定することがポイントである。
【0040】
(動摩擦係数、静止摩擦係数)
本発明において、160〜230℃の範囲で定着した際のベタ画像の定着画像表面の動摩擦係数は1.0以下に、かつ静止摩擦係数を1.5以下にすることが重要である。定着画像表面の摩擦係数を上記した値以下にすることで定着画像と画像形成装置内部材のこすりによって定着画像の一部が剥離して移行する現象を抑制できる。また、定着画像表面の動摩擦係数は0.9以下であることがより好ましく、0.7以下であることが特に好ましい。さらに、定着画像表面の静止摩擦係数は、1.4以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましく、1.1以下であることが特に好ましい。
【0041】
動摩擦係数は(特に記録媒体4に連帳紙を用いた場合の)画像形成時における定着画像と画像形成装置内部材の摩擦力に関係する。即ち、動摩擦係数が1.0以上では画像形成時に、画像形成装置内部材と定着画像との摩擦力が大きく、画像が一部剥離して画像形成装置内部材へのトナー固着ならびに定着画像品質の低下につながる。
また、静止摩擦係数は(特に記録媒体4に連帳紙を用いた場合の)画像形成中に何らかの影響で画像形成が停止し、再び画像形成が開始したときに生じる摩擦力に関係する。即ち、静止摩擦係数が1.5以上では画像形成中断時から再開する際の画像形成装置内部材と定着画像との摩擦力が大きく、画像が一部剥離して画像形成装置内部材へのトナー固着ならびに定着画像品質の低下につながる。
このように、動摩擦係数および静止摩擦係数の双方を制御することで安定した両面印刷画像を得ることがはじめて可能になる。
【0042】
動摩擦係数及び静止摩擦係数の測定は自動摩擦磨耗解析装置(協和界面科学社製)を用いて行うことができる。本発明では、装置のステージ上に160〜230℃の範囲においてテストパターンでベタ画像が印刷された箇所を固定し、その画像内部の1cm区間において走査部のボールに100gの加重をかけて0.1mm/secにて50回の運動・停止を繰り返し、得られた50個の静止摩擦係数・動摩擦係数の平均値を計算することで動摩擦係数及び静止摩擦係数をそれぞれ測定できる。
さらに、前記テストパターンでのベタ画像を得る印刷条件として、記録媒体4上の未定着画像に熱及び圧力を加える定着ニップ部における圧力は160〜200kgfである。
【0043】
動摩擦係数及び静止摩擦係数は、トナーのワックスの含有量やワックスの表面露出量(以下、表面ワックス量とも称する。)を調整して制御することができる。具体的には、ワックスの含有量を増加させると表面の平滑性が増加し、動摩擦係数及び静止摩擦係数が低下する。また、ワックスの表面露出量を増加させると同様に表面の平滑性が増加し、動摩擦係数及び静止摩擦係数が低下する。尚、ワックスの表面露出量の制御は例えば溶融混練した後に粉砕する粉砕トナーであれば、溶融混練における各種条件を変更することで可能である。
【0044】
(ワックス含有量)
さらに本発明では、超高速画像形成に対応すべく、定着画像の平滑性である動摩擦係数及び静止摩擦係数といった特性に加えて、さらに定着性に優れるものでなくてはならない。従って、前記トナーの前記結着樹脂の重量部数に対する前記ワックスの重量部数を4.0〜6.0とすることが重要である。ワックスの含有量が4.0重量部未満であると、充分な定着性を発揮できず、定着不良(オフセット現象等)が発生するため好ましくない。また、ワックスの含有量が6.0重量部より多いと、ワックスの配合量過多による定着強度の不足や、流動性の悪化、及び転写性の悪化などを引き起こすため好ましくない。
【0045】
(FT−IRを使用したATR法でのピーク比W/R)
またさらに本発明では、ワックスの含有量を規定することに加えてFT−IR(フーリエ変換赤外分光分析測定装置)を使用したATR法(全反射法)でのピーク比によるトナー表面のワックス量W/Rを0.040〜0.050に制御することが重要である。前記ワックス量W/R(表面ワックス量)が0.040未満であると、定着性向上の効果が少なく、定着性が不足するため好ましくなく、さらに、後述するように摩擦力低減の効果が充分に得られない。また、前記ワックス量W/Rが0.050より多いと、トナー表面層に露出したワックスによってトナーの流動性が悪くなり、現像剤の流動性低下および、転写性の低下につながるため好ましくない。
【0046】
FT−IR(フーリエ変換赤外分光分析測定装置)を使用したATR法(全反射法)では平らな面が必要となるため、トナーを加圧成型し平滑面を作る。この時の加圧成型は、トナー0.6gに1tを30sec間荷重し、直径20mmのペレットとした。測定は、たとえば、Avatar370(ThermoElectron社製)により測定することができる。
【0047】
本発明では、ワックスの特徴的なスペクトル(2840cm-1)のピーク高さをW(図2、高さのベースラインは(2825−2860cm-1))、結着樹脂の特徴的なスペクトル(例えばポリエステル樹脂の場合、829cm-1「図3、高さのベースラインは784−889cm-1」、スチレン−アクリル系樹脂の場合、699cm-1「図4、高さのベースラインは670−714cm-1」)のピーク高さをRとして、W/Rをピーク強度比として計算した。本発明におけるピーク強度比は、スペクトルを吸光度に直し、そのピーク高さを使用したものである。
【0048】
この表面ワックス量と定着性向上及び摩擦力低減との関係について詳細なメカニズムは定かではないが、トナー表面に存在する前記ワックスが定着性向上及び摩擦力低減に寄与するものと推測する。より具体的には、トナー表面に存在する前記ワックスが、定着ローラ表面に塗布されたシリコンオイルと相互作用することで、定着画像表面にシリコンオイルが保持され、当該定着画像の表面摩擦係数が低減されると共に離型性が向上し、定着画像と画像形成装置内部材の摩擦力低減及び定着性向上に寄与するものと推測される。ただし、トナー表面に存在する前記ワックスが過多となると、トナー表面層に露出したワックスによってトナー粒子間の付着力が高まるためにトナーの流動性が悪くなり、現像剤の流動性低下および、転写性の低下が生じるため、定着及び摩擦力に関する特性以外での不具合が生じるため好ましくない。
【0049】
即ち、本発明では摩擦力低減及び定着性向上に寄与するトナー表面に存在する前記ワックスの量を、上記したFT−IRを使用したATR法測定によって定量化することにより、画像品質保証の指標とするものである。
より詳しくは、本発明に係る画像形成方法によれば、下記(A)〜(C)に示す作用効果が認められる。
(A)定着後のトナー画像表面における動摩擦係数及び静止摩擦係数を制御することで、トナー画像表面と画像形成装置内部材との接触による部材汚れや画像汚れを防止乃至抑制できる。
(B)トナー中に含有されるワックスの量を制御することで、充分な定着性を有すると共に、定着に関する特性以外での不具合の発生を防止できる。
(C)上記(A)及び(B)のいずれをも満たした上で、さらに定着前のトナー表面に存在するワックス量(表面ワックス量)を前記ワックス量W/Rで制御することで初めて本発明の効果を奏するものとなる。つまり、定着前のトナー表面の状態を制御することで、定着後のトナー画像表面の動摩擦係数及び静止摩擦係数を効果的に、且つ充分に低減可能であると共に、定着性を効果的に、且つ充分に向上させることができ、これに加えて例えば定着前の現像工程における攪拌等の影響で生じる定着前トナー表面に存在するワックスが原因となる流動性悪化等、定着及び摩擦力に関する特性以外での不具合を防止できる。トナー粒子中に含まれるワックスの総量を規定するのみならず、その偏在までをも規定することで、画像形成の各プロセスの際に必要充分なワックスの作用をもたらすことが可能となる。
【0050】
また、本発明において、トナーは粉砕トナーであることが好ましい。上述したとおり、前記ワックスは、トナー表面に存在することで摩擦係数に寄与するものである。従って、前記ワックスは有機化合物であることから、粉砕法でトナーを作製したときには割れ界面になるため、粉砕トナーであることが好ましい。トナー表面に存在する前記ワックスは、トナー表面に存在することで定着後においても画像表面に残り易い。上述のとおり前記ワックスはシリコンオイルとの親和性が良く、定着画像表面上に前記ワックスが一定量あればシリコンオイルが定着画像表面に保持され、画像表面の摩擦係数が低減されるために、画像形成装置内部材との摩擦力が低減する。
【0051】
(ワックス)
ワックスとしては、従来公知のものが使用できる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィンワックスやフィッシャー・トロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックスや密ロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス等の天然ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス類、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸及び高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド、合成エステルワックス等及びこれらの各種変性ワックスが挙げられる。
これらの列挙したワックスの中でも、カルナウバワックス及びその変性ワックスやポリエチレンワックス、合成エステル系ワックスが好適に用いられる。特に、カルナウバワックスは最も好適である。その理由はポリエステル樹脂やポリオール樹脂に対してカルナウバワックス及びその変性ワックスや合成エステル系ワックスは適度に微分散するためオフセット防止性と転写性・耐久性ともに優れたトナーとすることが容易なためである。
これらワックスは、1種又は2種以上を併用して用いることができる。また、上述のとおり、トナーの結着樹脂の重量部数に対するワックスの重量部数は、4.0〜6.0である。
【0052】
(結着樹脂)
本発明のトナーの結着樹脂としてはポリエステル樹脂が好ましく、非晶質ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂を用いることができる。これらは単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。
結着樹脂(トナーバインダー)として用いることができる重縮合ポリエステル樹脂としては、ポリオールとポリカルボン酸との重縮合物であるポリエステル樹脂(AX)、(AX)にさらにポリエポキシド(c)などを反応させて得られる変性ポリエステル樹脂(AY)などが挙げられる。(AX)、(AY)などは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて混合物として使用してもよい。
【0053】
ポリオールとしては、ジオール(g)および3価以上のポリオール(h)が、ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸(i)および3価以上のポリカルボン酸(j)が挙げられ、それぞれ2種以上を併用してもよい。
【0054】
ポリエステル樹脂(AX)および(AY)としては、以下のものなどが挙げられ、これらのものを併用することもできる。
(AX1):(g)および(i)を用いた線状のポリエステル樹脂
(AX2):(g)および(i)とともに(h)および/または(j)を用いた非線状のポリエステル樹脂
(AY1):(AX2)に(c)を反応させた変性ポリエステル樹脂
【0055】
ジオール(g)としては、水酸基価180〜1900(mgKOH/g、以下同様)のものが好ましい。具体的には、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコールおよび1,6−ヘキサンジオールなど);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコールなど);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび水素添加ビスフェノールAなど);上記脂環式ジオールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)およびブチレンオキシド(以下BOと略記する)など〕付加物(付加モル数1〜30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールSなど)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、POおよびBOなど)付加物(付加モル数2〜30)などが挙げられる。
【0056】
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物およびこれらの併用であり、とくに好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物、炭素数2〜4のアルキレングリコールおよびこれらの2種以上の併用である。
なお、上記および以下において水酸基価および酸価は、JIS K 0070に規定の方法で測定される。
【0057】
3価以上(3〜8価またはそれ以上)のポリオール(h)としては、水酸基価150〜1900のものが好ましい。具体的には、炭素数3〜36の3〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリエチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、およびジペンタエリスリトール;糖類およびその誘導体、例えば庶糖およびメチルグルコシド;など);上記脂肪族多価アルコールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、POおよびBOなど)付加物(付加モル数1〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、POおよびBOなど)付加物(付加モル数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラックなど:平均重合度3〜60)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2〜30)などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、3〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコールおよびノボラック樹脂のアルキレンオキシド付加物(付加モル数2〜30)であり、とくに好ましいものはノボラック樹脂のアルキレンオキシド付加物である。
【0058】
ジカルボン酸(i)としては、酸価180〜1250(mgKOH/g、以下同様)のものが好ましい。具体的には、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、およびセバシン酸など)およびアルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸など);炭素数4〜36の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、およびメサコン酸など);炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケンジカルボン酸、および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。なお、ジカルボン酸(i)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
【0059】
3価以上(3〜6価またはそれ以上)のポリカルボン酸(j)としては、酸価150〜1250のものが好ましい。具体的には、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など);不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(以下Mnと記載、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による):450〜10000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、α−オレフィン/マレイン酸共重合体、スチレン/フマル酸共重合体など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸であり、とくに好ましいものはトリメリット酸、およびピロメリット酸である。なお、3価以上のポリカルボン酸(j)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
【0060】
また、ジオール(g)、ポリオール(h)、ジカルボン酸(i)またはポリカルボン酸(j)とともに炭素数4〜20の脂肪族または芳香族ヒドロキシカルボン酸(k)、炭素数6〜12のラクトン(l)を共重合することもできる。
ヒドロキシカルボン酸(k)としては、ヒドロキシステアリン酸、硬化ヒマシ油脂肪酸などが挙げられる。ラクトン(l)としては、カプロラクトンなどが挙げられる。
【0061】
ポリエポキシド(c)としては、ポリグリシジルエーテル〔エチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラック(平均重合度3〜60)グリシジルエーテル化物など〕;ジエンオキサイド(ペンタジエンジオキサイド、ヘキサジエンジオキサイドなど)などが挙げられる。これらの中で好ましくは、ポリグリシジルエーテルであり、さらに好ましくは、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびビスフェノールAジグリシジルエーテルである。
【0062】
ポリエポキシド(c)の1分子当たりのエポキシ基数は、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜6、とくに好ましくは2〜4である。
ポリエポキシド(c)のエポキシ当量は、好ましくは50〜500である。下限は、さらに好ましく70、とくに好ましくは80であり、上限は、さらに好ましく300、とくに好ましくは200である。エポキシ基数とエポキシ当量が上記範囲内であると、現像性と定着性が共に良好である。上述の1分子当たりのエポキシ基数およびエポキシ当量の範囲を同時に満たせばさらに好ましい。
【0063】
ポリオールとポリカルボン酸の反応比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.3、とくに好ましくは1.3/1〜1/1.2である。また使用するポリオールとポリカルボン酸の種類は、最終的に調製される結着樹脂(ポリエステル系トナーバインダー)のガラス転移点が45〜85℃となるよう分子量調整も考慮して選択される。
【0064】
本発明において結着樹脂として用いる非晶質ポリエステル樹脂は、通常のポリエステルの製造法と同様にして製造することができる。例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、カルボン酸チタン(以下、チタン含有触媒(a)と称する。)の存在下、反応温度が好ましくは150〜280℃、さらに好ましくは160〜250℃、とくに好ましくは170〜240℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、とくに好ましくは2〜40時間である。また、反応末期の反応速度を向上させるために減圧する(例えば1〜50mmHg)ことも有効である。
【0065】
チタン含有触媒(a)の添加量としては、重合活性などの観点から、得られる重合体の重量に対して、好ましくは0.0001〜0.8%、さらに好ましくは0.0002〜0.6%、とくに好ましくは0.0015〜0.55%である。
また、チタン含有触媒(a)の触媒効果を損なわない範囲で他のエステル化触媒を併用することもできる。他のエステル化触媒の例としては、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒(a)以外のチタン含有触媒(例えばハロゲン化チタン、チタンジケトンエノレート、カルボン酸チタニル、及びカルボン酸チタニル塩)、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、ゲルマニウム含有触媒、アルカリ(土類)金属触媒(例えばアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のカルボン酸塩:酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、および安息香酸カリウムなど)、および酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの他の触蝶の添加量としては、得られる重合体の重量に対して、0〜0.6%が好ましい。0.6%以内とすることで、ポリエステル樹脂の着色が少なくなり、カラー用のトナーに用いるのに好ましい。添加された全触媒中のチタン含有触媒(a)の含有率は、50〜100重量%が好ましい。
【0066】
線状のポリエステル樹脂(AX1)の製造方法としては、例えば、得られる重合体の重量に対して0.0001〜0.8%のチタン含有触蝶(a)と、必要により他の触媒の存在下、ジオール(g)、及びジカルボン酸(i)を、180℃〜260℃に加熱し、常圧及び/又は減圧条件で脱水縮合させて、(AX1)を得る方法が挙げられる。
【0067】
非線状のポリエステル樹脂(AX2)の製造方法としては、例えば、得られる重合体の重量に対して0.0001〜0.8%のチタン含有触媒(a)と、必要により他の触媒の存在下、ジオール(g)、ジカルボン酸(i)、及び3価以上のポリオール(h)を、180℃〜260℃に加熱し、常圧及び/又は減圧条件で脱水縮合させた後、さらに3価以上のポリカルボン酸(j)を反応させて、(AX2)を得る方法が挙げられる。ポリカルボン酸(j)を、ジオール(g)、ジカルボン酸(i)およびポリオール(h)と同時に反応させることもできる。
【0068】
変性ポリエステル樹脂(AY1)の製造方法としては、ポリエステル樹脂(AX2)にポリエポキシド(c)を加え、180℃〜260℃でポリエステルの分子伸長反応を行うことで、変性ポリエステル樹脂(AY1)を得る方法が挙げられる。
ポリエポキシド(c)と反応させる非線状のポリエステル樹脂(AX2)の酸価は、好ましくは1〜60、さらに好ましくは5〜50である。酸価が1以上であると、ポリエポキシド(c)が未反応で残存して樹脂の性能に悪影響を及ぼす恐れがなく、60以下であると、樹脂の熱安定性が良好である。
また、変性ポリエステル樹脂(AY1)を得るのに用いるポリエポキシド(c)の量は、低温定着性および耐ホットオフセット性の観点から、(AX2)に対して、好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.05〜5重量%である。
【0069】
また、本発明における結着樹脂として、上記重縮合ポリエステル樹脂以外に、必要により、他の樹脂を含有させることもできる。
他の樹脂としては、スチレン系樹脂[スチレンとアルキル(メタ)アクリレートの共重合体、スチレンとジエン系モノマーとの共重合体等]、エポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル開環重合物等)、ウレタン樹脂(ジオールおよび/または3価以上のポリオールとジイソシアネートの重付加物等)などが挙げられる。
結着樹脂における上記重縮合ポリエステル樹脂以外の樹脂の含有量は、好ましくは0〜40重量%、さらに好ましくは0〜30重量%、とくに好ましくは0〜20重量%である。
【0070】
ポリエステル樹脂を2種以上併用する場合、および少なくとも1種のポリエステル樹脂と他の樹脂とを混合する場合、予め粉体混合または溶融混合してもよいし、トナー化時に混合してもよい。溶融混合する場合の温度は、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜170℃、とくに好ましくは120〜160℃である。
混合温度が低すぎると充分に混合できず、不均一となることがある。2種以上のポリエステル樹脂を混合する場合、混合温度が高すぎると、エステル交換反応による平均化などが起こるため、結着樹脂(トナーバインダー)として必要な樹脂物性が維持できなくなる場合がある。
【0071】
溶融混合する場合の混合時間は、好ましくは10秒〜30分、さらに好ましくは20秒〜10分、とくに好ましくは30秒〜5分である。2種以上のポリエステル樹脂を混合する場合、混合時間が長すぎると、エステル交換反応による平均化などが起こるため、トナーバインダーとして必要な樹脂物性が維持できなくなる場合がある。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽などのバッチ式混合装置、および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度のもと短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続混合装置としては、エクストルーダー、コンテイニアスニーダー、3本ロールなどが挙げられる。これらのうちエクストルーダーおよびコンテイニアスニーダーが好ましい。
【0072】
粉体を混合する場合は、通常の混合条件および混合装置で混合することができる。
粉体を混合する場合の混合条件としては、混合温度は、好ましくは0〜80℃、さらに好ましくは10〜60℃である。混合時間は、好ましくは3分以上、さらに好ましくは5〜60分である。混合装置としては、へンシェルミキサー、ナウターミキサー、およびバンパリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
【0073】
(着色剤)
着色剤としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色のトナーを得ることが可能な公知の顔料や染料が使用できる。
例えば、黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ピグメントイエロー155、ベンズイミダゾロン、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等が挙げられる。
【0074】
また、橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、キナクリドンレッド、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等が挙げられる。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
【0075】
青色顔料としては、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等が挙げられる。
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等が挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等が挙げられる。
これらは、1種または2種以上を使用することができる。
【0076】
(帯電制御剤)
本発明に用いられるトナーは、必要に応じ帯電制御剤を含有しても良い。
例えば、ニグロシン、炭素数2〜16のアルキル基を含むアジン系染料(特公昭42−1627号公報)、塩基性染料、例えばC.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Basic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue 25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)など、これらの塩基性染料のレーキ顔料、C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩、或いはジブチル又はジオクチルなどのジアルキルスズ化合物、ジアルキルスズボレート化合物、グアニジン誘導体、アミノ基を含有するビニル系ポリマー、アミノ基を含有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂、特公昭41−20153号公報、特公昭43−27596号公報、特公昭44−6397号公報、特公昭45−26478号公報に記載されているモノアゾ染料の金属錯塩、特公昭55−42752号公報、特公昭59−7385号公報に記載されているサルチル酸、ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体、スルホン化した銅フタロシアニン顔料、有機ホウ素塩類、含フッ素四級アンモニウム塩、カリックスアレン系化合物等が挙げられる。ブラック以外のカラートナーは、当然目的の色を損なう帯電制御剤の使用は避けるべきであり、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好適に使用される。
【0077】
(その他)
本発明では、本発明の効果を損なわない範囲で上記したトナー材料以外の従来公知のトナー材料を含有しても良い。また、これらのトナー材料からなるトナー母体に、従来公知の外添剤を添加することが好ましく、例えば、シリカ、酸化チタン等が挙げられる。
【0078】
(キャリア)
本発明のトナーを二成分現像剤用として用いる場合には、キャリア粉と混合して用いられる。この場合のキャリアとしては、公知のものが使用可能であり、例えば鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、ニッケル粉、ガラスビーズ等及びこれらの表面を樹脂などで被覆処理したものなどが挙げられ、粒径は体積平均粒径で25〜200μmが好ましい。
【0079】
(トナーの製造方法)
本発明では、上述したとおりトナーを製造する方法としては溶融混練粉砕法が特に好ましいが、これに限定されるものではなく、従来公知の製造方法が使用できる。
溶融混練粉砕法以外の製造方法としては、例えば、重合法、イソシアネート基含有プレポリマーを用いた重付加反応法、溶剤に溶解し脱溶剤して粉砕する方法のほか、溶融スプレー法によっても製造することができる。これらの製造方法のうち、特定の結晶性高分子および重合性単量体を含有する単量体組成物を水相中で直接的に重合する重合法(懸濁重合法・乳化重合法)、特定の結晶性高分子およびイソシアネート基含有プレポリマーを含有する組成物を水相中でアミン類により直接的に伸長/架橋する重付加反応法、溶剤溶解し脱溶剤して粉砕する方法を採用することが好ましい。
【0080】
トナーを溶融混練する装置としては、バッチ式の2本ロール、バンバリーミキサーや連続式の2軸押出し機、例えば神戸製鋼所社製KTK型2軸押出し機、東芝機械社製TEM型2軸押出し機、KCK社製2軸押出し機、池貝鉄工社製PCM型2軸押出し機、栗本鉄工所社製KEX型2軸押出し機や、連続式の1軸混練機、例えばブッス社製コ・ニーダ等が好適に用いられる。
【0081】
重合法、イソシアネート基含有プレポリマーを用いた重付加反応法においては、水相中での機械的エネルギーを付与して強制的に乳化(液滴の形成)処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い攪拌または超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
【0082】
粉砕については、ハンマーミルやロートプレックス等を用いて粗粉砕し、更にジェット気流を用いた微粉砕機や機械式の微粉砕機などを使用することができ、平均粒径が3〜15μmになるように行なうのが望ましい。さらに、粉砕物は風力式分級機等により、5〜20μmに粒度調整される。
【0083】
外添剤のトナー母体への外添は、トナー母体と外添剤とをミキサー類を用いて混合・攪拌することにより外添剤が解砕されながらトナー表面に被覆される。このとき、無機微粒子や樹脂微粒子等の外添剤を均一にかつ強固にトナー母体に付着させることが耐久性の点で重要である。ついで250メッシュ以上の篩を通過させ、粗大粒子、凝集粒子を除去し、トナーとする方法がある。
【実施例】
【0084】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、下記において「部」は重量部を、「%」は重量%を意味する。
【0085】
[ポリエステル樹脂の合成例]
温度計、攪拌機、冷却器および窒素導入管の付いた反応槽中にビスフェノールAのPO付加物(水酸基価320)443部、ジエチレングリコール135部、テレフタル酸422部およびジブチルチンオキサイド2.5部を入れて、230℃で酸価が7になるまで反応させて、ポリエステル樹脂を得た。
【0086】
(実施例1)
[トナー作成]
下記トナー母体処方に記載のトナー構成材料を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製のヘンシェル20Bによって1500rpmで3分間)で混合し、一軸混練機(Buss社製の小型ブス・コ・ニーダー)にて以下の条件で混練を行い(設定温度:入口部100℃、出口部50℃で、フィード量:2kg/hr)、[トナー混練物]を得た。
得られた[トナー混練物]を混練後圧延冷却し、パルペライザーで粗粉砕し、更に、I式ミル(日本ニューマチック社製IDS−2型にて、平面型衝突板を用い、エア圧力:6.5atm/cm2、フィード量:0.5kg/hrの条件)にて微粉砕を行い、また更に分級を行って(アルピネ社製の132MP)、[トナー母体]を得た。
【0087】
(トナー母体処方)
・ポリエステル樹脂 100部
・カルナバワックス(融点81℃) 4部
・帯電制御剤(ニグロシン) 2部
・着色剤(カーボンブラック) 6部
【0088】
その後、[トナー母体]100重量部、外添剤として下記の外添剤処方に記載のものをヘンシェルミキサー(三井鉱山社製のヘンシェル20B)にて混合してトナーを得た。混合条件は、周速30m/secで、30秒回転、60秒回転停止、のセットを5回繰り返して混合した。ここで得られたトナーを[トナー1]とする。
【0089】
(外添剤処方)
・シリカ(ヘキサメチルジシラザン処理) 0.5部
・酸化チタン(シランカップリング剤処理) 0.5部
【0090】
〔キャリアの製造〕
さらに、得られた〔トナー1〕を二成分現像剤として用いるために、下記キャリア処方に記載のものをホモミキサーで10分間分散し、シリコン樹脂被覆膜形成溶液を得た。芯材として体積平均粒径;70μm焼成フェライト粉を用い、上記被覆膜形成溶液を芯材表面に膜厚0.15μmになるように、スピラコーター(岡田精工社製)によりコーター内温度40℃で塗布し乾燥した。得られたキャリアを電気炉中にて300℃で1時間放置して焼成した。冷却後フェライト粉バルクを目開き125μmの篩を用いて解砕し、[キャリア]を得た。
【0091】
(キャリア処方)
・シリコン樹脂溶液 132.2部
[固形分23重量%]
・アミノシラン 0.66部
[固形分100重量%]
・導電性粒子1 31部
[基体:アルミナ、表面処理;下層=二酸化スズ/上層=二酸化スズを含む
酸化インジウム、粒径:0.35μm,粒子粉体比抵抗:3.5Ω・cm]
・トルエン 300部
【0092】
〔定着評価〕
上記のようにして作製した〔トナー1〕及び後述する〔トナー2〕乃至〔トナー4〕をそれぞれ4重量%と、上記のようにして作製したキャリア96重量%とを混合し、得られた二成分現像剤を用いて図1で示す画像形成装置を用いるリコー製imagio NEO C600改造機2台と、その間に配設された反転装置(不図示)によって両面印刷を行い、印刷紙に連帳紙を用い、A4縦換算で50,000枚/日で、100,000枚の評価画像を出す。評価機の評価条件としては、線速が1700mm/secとなるようにし現像ギャップを1.26mm、ドクタブレードギャップ1.6mm、反射型フォトセンサ機能をOFF、クリーニングブラシの回転速度を1700rpmとした状態であった。感光体、現像装置及び転写装置の実温度領域は30〜48℃になるように制御する。得られた評価画像における定着画像を目視し、画質評価サンプル(評価対照標準サンプル)と照らし合わせて評価を行った。測定結果を下記評価基準に従って評価し、評価結果を下記表1に記載する。
【0093】
〔評価基準〕
○:画質に異常なし
×:画質に異常あり、またはオフセット
【0094】
〔部材汚れ評価〕
部材汚れは、A4縦換算で100,000枚目の評価画像印刷後、目視にて行った。測定結果を下記評価基準に従って評価し、評価結果を下記表1に記載する。
【0095】
〔評価基準〕
○:汚れなし、または画質に支障のない程度の汚れ
×:画質に支障をきたす汚れあり
【0096】
〔摩擦係数測定〕
得られた〔トナー1〕のベタ定着画像の動摩擦係数測定及び静止摩擦係数測定は100,000枚目の評価画像を用いて行った。測定は上述した装置を用いて行い、測定結果を下記表1に示す。尚、100,000枚目の評価画像の定着時の定着温度は210℃、ニップ圧は180kgf、ニップ幅は11mmであり、測定に供したサンプルは片面のみを印刷したものであって、1台目の画像形成装置のみにおいて通紙・印刷したものである。
【0097】
〔ピーク比W/R測定〕
得られた〔トナー1〕のトナー表面のワックスピーク比W/Rを、上述したFT−IRを使用したATR法による検出に従い測定し、測定結果を下記表1に示す。
【0098】
(実施例2)
実施例1において、ワックスの部数を6部にした以外は実施例1と同様にして〔トナー2〕を得た。
【0099】
(比較例1)
実施例1において、ワックスの部数を3部にした以外は実施例1と同様にして〔トナー2〕を得た。
【0100】
(比較例2)
実施例1において、ワックスの部数を7部にした以外は実施例1と同様にして〔トナー2〕を得た。
【0101】
【表1】

【0102】
以上に示した実施例1乃至2と比較例1乃至2とから、本発明に係る画像形成方法及びこれに用いられるトナーによれば、定着性に優れると共に、定着後の画像と画像形成装置内部材との摩擦による画像汚れ及び部材汚れを低減できることがわかる。
【符号の説明】
【0103】
1 :感光体
2 :帯電装置
3 :現像装置
4 :記録媒体
5 :転写装置
6 :定着装置
7 :清掃装置
8 :光学装置
9 :トナー
10:キャリア
11:逆方向現像ロール
12:順方向現像ロール
13:現像剤
14:攪拌部材
15:規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の一方の面に画像を形成する第1の画像形成プロセスと、当該記録媒体の他方の面に画像を形成する第2の画像形成プロセスと、を備え、
前記第1の画像形成プロセス及び前記第2の画像形成プロセスは、いずれも感光体表面を帯電させる帯電工程と、該帯電工程後の感光体表面に静電潜像を書き込む露光工程と、前記静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて可視化して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を直接又は被転写体を介して記録媒体上に転写して未定着画像を形成する転写工程と、該転写工程後の感光体表面に残存する転写残留トナーをクリーニングするクリーニング工程と、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させる定着工程と、を有し、
前記トナーは、結着樹脂と、ワックスと、を含み、
前記ワックスは、前記結着樹脂100重量部に対して2〜6重量部含まれ、
前記トナーのFT−IR(フーリエ変換赤外分光分析測定装置)を使用しATR法(全反射法)で測定した、前記ワックスの特徴的なスペクトルのピーク高さWと前記結着樹脂の特徴的なスペクトルのピーク高さRとを用いて示されるピーク比W/Rは、0.040〜0.050であり、
前記トナーは、160〜230℃の範囲で定着した際のベタ画像の動摩擦係数が1.0以下であり、且つ、静止摩擦係数が1.5以下であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記トナーは、さらに帯電制御剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記記録媒体は、連帳紙であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記定着工程は、システム速度が500〜2000mm/secであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記定着工程は、シリコンオイルが塗布された定着部材で前記未定着画像を前記記録媒体に定着させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記第1の画像形成プロセスと前記第2の画像形成プロセスとの間に、当該記録媒体を反転させる反転工程を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記第1の画像形成プロセスと、前記第2の画像形成プロセスとは、同一の画像形成装置で行われることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記第1の画像形成プロセスと、前記第2の画像形成プロセスとは、異なる画像形成装置で行われることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記トナーは、粉砕式製法で製造された粉砕トナーであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられ、粉砕式製法で製造されることを特徴とするトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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