説明

画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置

【課題】電荷の作用により画像の書き込みや消去が可能な媒体本体を挟むように媒体本体の両面に形成される下部電極及び上部電極の少なくともいずれか一方を媒体本体と離間させた記録媒体を用い、下部電極又は上部電極に電子やイオンを照射して電荷を注入し、注入された電荷の作用により、媒体本体と電荷が注入された下部電極又は上部電極との間で選択的に放電を発生させ、下部電極又は上部電極に選択的に注入された電荷が、隣接する電荷が注入されていない下部電極や上部電極に作用することがなく、クロストークの発生を確実に防止でき、滲みのない高品質な画像を形成できる画像形成方法の提供。
【解決手段】下部電極又は上部電極の少なくともいずれか一方に電子やイオンを照射して電荷を注入する電荷注入工程を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷の作用により画像の書き込みや消去が可能な記録媒体に電子やイオンを照射して電荷を注入することにより、画像の書き込みや消去を行う画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にデジタルペーパと称される記録媒体として、微小なボールを二色(例えば白黒)に色分けし、各色毎の電気特性の違いによりボールを回転して任意の一色を表示するツイストボール方式、微小なボール中に二色(例えば白黒)の微粉末を混入し、各色の微粉末が持つ電気特性の違いにより一色のみを浮上させて表示する電気泳動方式、液晶板あるいは微小な液晶ブロックの液晶シャッターを開閉して、シャッターを開けた部分の背景色を表示する液晶方式等が開発されている。
また、これらの記録媒体には、表面に電子やイオンを照射して電荷を付与することにより非接触で静電潜像を形成できるので、様々なイオンフロー方式の印字ヘッドを用いた画像形成方法及び画像形成装置についても検討がなされている。
【0003】
例えば、(特許文献1)には、「可視情報を繰り返し記録及び消去可能な可逆表示素子を有する可逆記録表示媒体と、可逆記録表示媒体に可視情報を記録する記録手段と、記録された可視情報を消去する消去手段とを備えた書換装置において、前記記録手段は、可逆記録表示媒体に静電荷像を形成する手段からなることを特徴とする可逆記録表示媒体の書換装置」が開示されている。
しかしながら、(特許文献1)の書換装置は、静電荷像を形成する手段としてコロナ放電等によるイオン流を制御して媒体に照射するものや、マルチスタイラスによる書き込み、マスクとコロトロンとの組合せによる方法等を用いているが、高画質化、カラー化を図るためには、記録媒体との位置合わせやイオン照射のタイミング等の制御に高い精度が要求され、高画質化、カラー化が困難であるという課題を有していた。また、記録媒体の表面にイオンを照射して静電荷像を形成しているため、静電気等の外乱によって画像の乱れが発生し易く、画像品質の信頼性に欠けるという課題を有していた。
【0004】
次に、(特許文献2)には、「表示媒体と書き込み装置は少なくとも書き込み時には近接させられるように着脱が可能であり、しかも該書き込み装置は画像信号に応じて該表示媒体に電荷を付与させることができ、かつ該表示媒体との平面位置関係を相対的に変えうる機構を有するイオン銃アレイを具備していることを特徴とする書き込み装置」が開示されている。
しかしながら、(特許文献2)の書き込み装置は、イオン銃アレイと表示媒体との平面位置関係を相対的に変えながら、画像信号に応じて該表示媒体に電荷を付与させるものであるため、(特許文献1)と同様に高画質化、カラー化を図るためには、初期状態でのイオン銃アレイと表示媒体との位置合わせやイオン照射のタイミング等の制御に高い精度が要求され、高画質化、カラー化が困難であるという課題を有していた。
また、(特許文献1)、(特許文献2)の装置では、媒体とヘッドを相対的に移動させながら所望の位置に画像を書き込む必要があるため、駆動装置が複雑で取り扱い性に欠けるという課題を有していた。また、媒体とヘッドを相対的に移動させるため、ヘッドの汚れや媒体の傷或いは汚れが発生し易く、画像品質の信頼性に欠けるという課題を有していた。
さらに、記録媒体自体にTFT回路や制御用IC等を搭載したものも開発されてきているが、コストが高く量産性、信頼性に欠けると共に、サイズが大型化し、取り扱い性に欠けるという課題を有していた。
【0005】
そこで、本願出願人はこれらの課題を解決するために、鋭意、検討を行い(特許文献3)を出願した。
(特許文献3)には、「媒体本体の下面及び上面にそれぞれ所定のパターンで形成された下部電極及び上部電極を備えた記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、前記下部電極又は前記上部電極の少なくともいずれか一方に電子やイオンを照射して電荷を注入する電荷注入工程を有することを特徴とする画像形成方法。」が開示されている。
(特許文献3)は、電荷の作用により画像の書き込みや消去が可能な媒体本体を挟むように媒体本体の両面に電極を形成した記録媒体を用い、電子やイオンを照射して電荷を注入することにより、媒体本体の両面に形成された電極の任意の交差位置で選択的に電位差を生じさせ、画像の書き込みや消去を行うことができるので、電子やイオンの照射位置の位置合わせが不要で、位置ずれのない高品質な画像を形成することができ、カラー化が容易な画像品質の信頼性に優れた画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置である。
【特許文献1】特開2000−85175号公報
【特許文献2】特開2000−231126号公報
【特許文献3】PCT/JP2006/310014号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(特許文献3)の画像形成方法においては、例えば、下部電極及び上部電極をそれぞれ短冊状に分割して形成し、媒体本体の両面に互いに直交するように配置した記録媒体を用いた場合、下部電極と上部電極が交差する位置で、媒体本体に電荷を作用させることができ、任意の画像を表示させることができる。つまり、記録媒体の下部電極及び上部電極をそれぞれ短冊状に分割して形成することにより、任意の下部電極及び上部電極に選択的に電荷を注入してマトリックス駆動を行うものである。
しかしながら、この記録媒体では媒体本体と下部電極及び上部電極が接触しているため、1つの下部電極或いは上部電極に選択的に電荷を注入した場合でも、その電荷が、隣接する下部電極或いは上部電極にも影響を及ぼし、クロストークが発生して画像が滲み、画像品質が低下してしまうという課題を有していた。
このようなクロストークの問題は、(特許文献3)の記録媒体に限らず、媒体本体に形成した下部電極と上部電極によってマトリックス駆動を行うものにおいて、共通の重大な課題であり、その改善が望まれていた。
【0007】
本発明は上記課題を解決するもので、電荷の作用により画像の書き込みや消去が可能な媒体本体を挟むように媒体本体の両面に形成される下部電極及び上部電極の少なくともいずれか一方を媒体本体と離間させた記録媒体を用い、下部電極又は上部電極に電子やイオンを照射して電荷を注入することにより、注入された電荷の作用によって、媒体本体と電荷が注入された下部電極又は上部電極との間で選択的に放電を発生させることができ、下部電極又は上部電極に選択的に注入された電荷が、隣接する電荷が注入されていない下部電極や上部電極に作用することがなく、クロストークの発生を確実に防止することができ、滲みのない高品質な画像を形成することができる画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の画像形成方法は、媒体本体の下面及び上面にそれぞれ所定のパターンで形成された下部電極及び上部電極と、前記下部電極又は前記上部電極の少なくともいずれか一方と,前記媒体本体と,の間に配設され前記媒体本体と前記下部電極又は前記上部電極とを離間させたスペーサと、を備えた記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、前記下部電極又は前記上部電極の少なくともいずれか一方に電子やイオンを照射して電荷を注入する電荷注入工程を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)媒体本体の下面及び上面にそれぞれ所定のパターンで下部電極及び上部電極が形成された記録媒体に対し、電荷注入工程において、下部電極又は上部電極の少なくともいずれか一方に電子やイオンを照射して電荷を注入することにより、画像の書き込みや消去を行うことができ、電荷を注入するための印字ヘッドなどの位置決めや走査等が不要で画像形成の工程及び画像形成装置の機構を簡素化することができ画像形成の作業性に優れる。
(2)電荷を注入するための印字ヘッドなどと記録媒体を相対的に移動させる必要がないので、印字ヘッドの汚れや記録媒体の傷或いは汚れが発生し難く、画像品質の信頼性、記録媒体の耐久性を向上させることができる。
(3)記録媒体が下部電極又は上部電極の少なくともいずれか一方と、媒体本体と、の間に配設され媒体本体と下部電極又は上部電極とを離間させたスペーサを備えているので、下部電極又は上部電極に注入された電荷の作用によって、媒体本体と電荷が注入された下部電極又は上部電極との間で選択的に放電を発生させることができ、下部電極又は上部電極に選択的に注入された電荷が、隣接する電荷が注入されていない下部電極や上部電極に作用することがなく、クロストークの発生を確実に防止することができ、滲みのない高品質な画像を形成することができ、画像品質の信頼性に優れる。
【0009】
ここで、この画像形成方法に用いる記録媒体の媒体本体は、電荷の作用により画像が形成されるものであればよい。媒体本体に、透過型のネマティック液晶やスメクティック液晶等の液晶材料を用いた液晶方式或いは白色又は黒色を選択的に表示可能なツイストボール方式,電気泳動方式,粉体移動方式等の画像表示材料が封入されたものが好適に用いられる。
これらの媒体本体に、加法混色法における三原色(R,G,B)を持つカラーフィルタや減法混色法における三原色(Y,M,C)を持つカラー反射層を組み合わせることによりカラー表示を行うことができる。また、カラーフィルタ等を組み合わせる代わりに、減法混色法における三原色(Y,M,C)等に着色したツイストボールや微粒子等の画像表示材料を表示原色の色毎に配列してカラー表示を行うこともできる。また、1枚の媒体本体を複数の領域に分割し、領域毎に異なる色を表示するようにしてもよい。
【0010】
下部電極及び上部電極のパターンは、表示する画像の種類に応じて適宜、選択することができる。表示する画像が、予め決められた文字や数字などの場合は、下部電極又は上部電極のいずれか一方を文字や数字を構成するセグメント単位に分割して形成し、他方は画像表示領域に共通の平板電極とすればよい。また、下部電極及び上部電極をそれぞれ短冊状に分割して形成し、媒体本体の両面に互いに直交するように配置した場合、下部電極と上部電極が交差する位置を選択して任意の画像を表示させることができる。
【0011】
スペーサは、媒体本体と下部電極或いは上部電極との間の隙間を略一定に保って下部電極或いは上部電極を保持することができるものであればよく、フォトレジスト等により形成することができる。スペーサは媒体本体と下部電極或いは上部電極の間を各画素に対応するマトリックス状の放電空間に分割するように配置してもよいし、複数の画素を行単位又は列単位の放電空間に分割するように配置してもよい。尚、媒体本体と下部電極或いは上部電極との間の隙間は10μm〜200μmが好ましい。隙間が10μmより狭くなるにつれ、放電空間を確保することができず、クロストークの改善効果が低下し易くなる傾向があり、200μmより広くなるにつれ、放電の発生効率が低下し、下部電極或いは上部電極に注入する電荷量を増大させる必要があり、省エネルギー性が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0012】
下部電極及び上部電極の外表面に電極保護層が形成されている場合、下部電極及び上部電極を保護することができ、隣接する電極が導通することを防止できる。
電極保護層の材質としては、ガラス、アラミド、ポリイミド、PET、ポリアミド等の合成樹脂等が好適に用いられる。それらの板材やシートに先に下部電極や上部電極をスクリーン印刷、蒸着、スパッタ、エッチング等により形成した後、媒体本体を両側から挟むか、下層から順次積層してこの記録媒体を形成することができる。
尚、電極保護層が、1012Ω・cm〜1014Ω・cmの抵抗値を有する場合には、電極保護層で覆われた下部電極や上部電極にも電荷を注入することができる。
下部電極又は上部電極のいずれか一方の配置に対応させて、カラーフィルタやカラー反射層若しくは着色されたツイストボールや微粒子の表示原色が縞状に配置された記録媒体を用いた場合、色ずれのない高品質なカラー画像を得ることができる。
【0013】
尚、この記録媒体に画像を形成するための印字ヘッドは、選択的に電子又はイオンを照射することができるものであればよく、ワイヤ電極や針電極等に高電圧を印加してコロナ放電を発生させるもの、電極を加熱して熱電子を放出させるもの、電極に印加する電圧と電極の温度を制御して電子やイオンを照射する加熱放電型印字ヘッド(例えば特開2003−326756号やWO2005/056297)等を用いることができる。
また、SED(表面電界ディスプレイ)に使用される電子放出デバイスや、FED(電界放出型ディスプレイ)に使用される電子放出デバイス、電子放出部にカーボンナノチューブを使用したカーボンナノチューブFEDも用いることができる。これらの場合、アノード電極の電圧が高ければ、真空中でなくとも放出された電子及びイオン化された物質により電荷を注入できる。このとき、電荷を注入された電極がアノード電極として働くが、アノード電圧は媒体本体を介して反対側の面に形成された電極に印加される。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成方法であって、前記下部電極又は前記上部電極に電子やイオンを照射して電荷を注入する前記電荷注入工程と、前記上部電極又は前記下部電極への接地若しくは前記上部電極又は前記下部電極に前記電荷注入工程で前記下部電極又は前記上部電極に注入された電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)媒体本体の両面に予め所定のパターンで形成された下部電極と上部電極が配設されているので、電荷注入工程により下部電極又は上部電極の一方に電荷を注入し、媒体側電圧制御工程により上部電極又は下部電極への接地若しくは上部電極又は下部電極に電荷注入工程で下部電極又は上部電極に注入された電荷と逆極性の電圧印加を行うことにより、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に電位差を発生させて画像を形成することができ、画像の位置ずれが発生することがなく、画像品質の信頼性に優れる。
(2)電荷注入工程及び媒体側電圧制御工程で媒体本体の両面にそれぞれ注入及び印加された電荷が溜まった状態で保持されるので、画像形成後は無電源で画像を表示することができ省エネルギー性に優れると共に、静電気等の影響によって画像が乱れることを防止でき画像品質の安定性に優れる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成方法であって、前記電荷注入工程において、前記下部電極及び前記上部電極にそれぞれ逆極性の電荷を注入する構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電荷注入工程において、下部電極及び上部電極にそれぞれ逆極性の電荷を注入することにより、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に大きな電位差を発生させることができ、高品質な画像を形成することができる。
(2)電荷注入工程で媒体本体の表裏にそれぞれ注入された電荷が溜まった状態で保持されるので、画像形成後は無電源で画像を表示することができ省エネルギー性に優れると共に、静電気等の影響によって画像が乱れることを防止でき画像品質の安定性に優れる。
【0016】
ここで、請求項1で説明した各種の電子放出デバイスを含む印字ヘッドを記録媒体の表裏にそれぞれ配置することにより、下部電極及び上部電極にそれぞれ逆極性の電荷を注入することができる。尚、下部電極及び上部電極のそれぞれに対向配置する印字ヘッドは、同じものでもよいし、異なるものでもよい。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の画像形成方法であって、前記電荷注入工程が、電子放出部位を有する放電電極と前記放電電極を選択的に加熱する加熱手段とを備えた加熱放電型印字ヘッドにより行われる構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電荷注入工程が、電子放出部位を有する放電電極と放電電極を選択的に加熱する加熱手段とを備えた加熱放電型印字ヘッドにより行われることにより、放電電極の電子放出部位から放出される電子や電子の放出に伴って発生する大量のイオンを照射して選択的に電荷を注入することができ、画像形成の効率性に優れる。
(2)電荷注入工程に用いる加熱放電型印字ヘッドは、放電電極への選択的加熱で放電を行わせる方式であるため、加熱の制御に5V駆動のような低耐電圧対応のドライバICを使用することができ、放電の制御が容易で、記録媒体に非接触で電子やイオンを照射して電荷を注入することができるので、記録媒体の傷或いは汚れが発生し難く、画像品質の信頼性、記録媒体の耐久性を向上させることができる。
【0018】
ここで、加熱放電型印字ヘッド(例えば特開2003−326756号やWO2005/056297)は、放電電極に放電制御電圧を印加すると共に、加熱手段で放電電極の選択的な加熱を行うことにより放電の発生を制御できるので、加熱手段による加熱箇所を選択することで容易に放電電極の任意の電子放出部位(加熱位置近傍)から選択的に電子を放出させて放電を発生させることができる。
尚、放電電極を加熱する加熱手段としては、放電電極の任意の電子放出部位を選択的に加熱できるものであればよく、放電電極に密着して加熱するものでもよいし、放電電極から離間して加熱するものでもよい。
放電電極と密着させて加熱する加熱手段としては、従来の感熱式のファクシミリに使用されるサーマルプリントヘッドと同様の構成を好適に用いることができる。具体的には、発熱抵抗体と電気的に接続されたドライバICで発熱抵抗体の発熱を制御するものである。
放電電極と離間して加熱する加熱手段としては、レーザ光を照射する方式や赤外線を照射する方式等を好適に用いることができる。レーザ光を照射する方式としては、レーザ照射部とポリゴンミラーやガルバノミラーを組合せたもの、レーザ照射部をシリアル走査させるもの等が好適に用いられる。また、レーザ光や赤外線を光ファイバーや集光レンズで集光して放電電極に照射してもよい。特に多本数の光ファイバーを高密度かつ高精度に配列した光ファイバーアレイを用いた場合、同時に複数の電子放出部位に対し、レーザ光や赤外線を選択的に照射することができ、高速記録が可能である。
【0019】
放電制御電圧とは、その電位差だけでは放電電極と下部電極又は上部電極との間で放電は起こらないが、放電電極を加熱することにより放電が起こる電圧域を言う。また、ここでの放電とは放電電極から電子が放出されることを言う。放電電極と下部電極又は上部電極が離間して形成された放電空間が、大気等のイオン生成可能な雰囲気である場合には、放出された電子が酸素や窒素をイオン化し、それらを媒体本体の下部電極又は上部電極に到達させることができ、多量のイオンで効率的に電荷を注入することができる。
放電電極に印加する放電制御電圧としては様々な波形を選択することができ、三角波、矩形波、台形波、sin波等を単独で或いは組合せて用いたり、さらにこれらに直流電圧や交流電圧を重畳したりできる。例えば、電荷注入工程において、放電電極に交流電圧のみを印加すると正負のイオンが生成される。そこで、負のイオンのみを選別するには交流電圧に負の直流電圧を重畳し、正のイオンのみを選別するには交流電圧に正の直流電圧を重畳したものを放電電極に印加する。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成方法であって、前記電荷注入工程が、前記加熱放電型印字ヘッドの前記放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加工程と、前記加熱手段により前記放電電極の前記電子放出部位を選択的に加熱する放電電極加熱工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項4の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電荷注入工程が、加熱放電型印字ヘッドの放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加工程と、加熱手段により放電電極の電子放出部位を選択的に加熱する放電電極加熱工程を有するので、放電制御電圧印加工程において放電電極に放電制御電圧を印加した状態で放電に備えることができ、高電圧となる放電制御電圧を制御する必要がなく、
放電電極加熱工程で放電電極の電子放出部位を選択的に加熱するだけで放電を発生させることができ、放電電極から下部電極又は上部電極に対して電子やイオンを照射して簡便かつ確実に電荷を注入することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像形成方法であって、前記放電電極加熱工程と前記媒体側電圧制御工程が、同期して行われる構成を有している。
この構成により、請求項5の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)放電電極加熱工程と媒体側電圧制御工程が同期して行われることにより、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に電位差を発生させることができ、高品質な画像を形成することができる。
【0022】
ここで、記録媒体若しくは画像形成装置に下部電極又は上部電極への接地又は電圧印加を制御する媒体側電圧制御用ICを備えることにより、画像データに基づいて選択的に下部電極又は上部電極への接地又は電圧印加を行うことができ、放電電極加熱工程と媒体側電圧制御工程のタイミングを容易に同期させることができ取り扱い性に優れる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の画像形成方法であって、前記加熱放電型印字ヘッドが前記下部電極及び前記上部電極とそれぞれ対向配置され、前記放電制御電圧印加工程で前記下部電極に対向配置される前記加熱放電型印字ヘッドの前記放電電極に印加される前記放電制御電圧と、前記上部電極に対向配置される前記加熱放電型印字ヘッドの前記放電電極に印加される前記放電制御電圧が、互いに逆極性の電荷を発生させる電圧である構成を有している。
この構成により、請求項5の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)加熱放電型印字ヘッドが記録媒体の下部電極及び上部電極とそれぞれ対向配置され、放電制御電圧印加工程において、下部電極に対向配置される加熱放電型印字ヘッドの放電電極に印加される放電制御電圧と、上部電極に対向配置される加熱放電型印字ヘッドの放電電極に印加される放電制御電圧が、互いに逆極性の電荷を発生させる電圧であることにより、放電電極加熱工程で加熱手段によりそれぞれの放電電極の電子放出部位を選択的に加熱することで、それぞれの放電電極から下部電極及び上部電極に対して逆極性の電荷を注入することができ、その電位差によって画像を形成することができる。
(2)媒体本体の両面に予め下部電極と上部電極が配設されているので、下部電極と上部電極のそれぞれに対向配置された加熱放電型印字ヘッドから下部電極及び上部電極に逆極性の電荷を注入することにより、下部電極と上部電極が交差する位置に電位差を発生させて画像を形成することができ、画像の位置ずれが発生することがなく、画像品質の信頼性に優れる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の画像形成方法であって、前記放電電極加熱工程が、前記下部電極に対向配置される前記加熱放電型印字ヘッドと前記上部電極に対向配置される前記加熱放電型印字ヘッドの間で同期して行われる構成を有している。
この構成により、請求項7の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)下部電極に対向配置される加熱放電型印字ヘッドと上部電極に対向配置される加熱放電型印字ヘッドの間で、放電電極加熱工程が同期して行われることにより、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に大きな電位差を発生させることができ、高品質な画像を形成することができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の内いずれか1項に記載の画像形成方法であって、前記電荷注入工程が、前記媒体本体の画像表示領域外の領域で前記下部電極又は前記上部電極に形成された電荷注入部に対して行われる構成を有している。
この構成により、請求項1乃至8の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電荷注入工程が、媒体本体の画像表示領域外の領域で下部電極又は上部電極に形成された電荷注入部に対して行われることにより、画像表示領域外の領域で下部電極又は上部電極に電荷を注入して画像表示領域の画像の書き込みや消去を行うことができるので、画像表示領域を有効に利用することができ、印字ヘッド等の位置決めや走査等が不要で画像形成の工程及び画像形成装置の機構を簡素化することができ、画像形成の作業性に優れる。
【0026】
ここで、電荷注入部は下部電極又は上部電極の少なくともいずれか一方の端部や途中から延設されて媒体本体の画像表示領域外の領域に形成されていればよい。また、下部電極や上部電極に形成される電荷注入部の取り出し位置は任意に選択することができる。
下部電極及び上部電極のそれぞれに1つずつ電荷注入部を設ける場合は、2つの電荷注入部を媒体本体の一辺側に直列又は並列に並べて配置したり、直交する二辺側や対向する二辺側に1つずつ配置したりできる。2つの電荷注入部が、媒体本体の一辺側に並んで配置されている場合は、電荷注入部に電荷の注入を行う2つの印字ヘッドなどを一列に並べて配置することができ、画像形成装置のコンパクト化を図ることができる。
下部電極及び上部電極の両端側にそれぞれ電荷注入部を設けた場合、合計4つの電荷注入部は、媒体本体の一辺乃至四辺のいずれか1箇所以上に任意の組合せで配置することができる。例えば、一辺に1つずつ配置してもよいし、直交する二辺や対向する二辺に2つずつ直列又は並列に並べて配置してもよい。特に、一辺に1つずつ配置した場合、放熱性に優れ好ましい。
尚、下部電極及び上部電極に2つずつの電荷注入部を設けた場合、下部電極及び上部電極のそれぞれについていずれか1つの電荷注入部を選択して電荷を注入することができるので、記録媒体の向きを気にせずに使用することができ、取扱い性、汎用性に優れる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の画像形成方法であって、前記電荷注入工程が、前記媒体本体の画像表示領域外の領域で前記下部電極又は前記上部電極の少なくともいずれか一方に形成された電荷注入部に対向して配置され、前記記録媒体に一体に形成された放電電極により行われる構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電荷注入工程が、媒体本体の画像表示領域外の領域で下部電極又は上部電極の少なくともいずれか一方に形成された電荷注入部に対向して配置され、記録媒体に一体に形成された放電電極により行われるので、画像表示領域外の領域で放電電極に放電制御電圧を印加し、各種の加熱手段により放電電極を選択的に加熱することにより、放電電極から電荷注入部に対して電子やイオンを照射して電荷を注入することができ、画像表示領域を有効に利用することができる。
(2)下部電極又は上部電極の少なくとも一方に対応する電子放出部位を有する放電電極が、予め電荷注入部に対向して媒体本体と一体に形成されているので、画像形成装置には放電電極を加熱する加熱手段のみを設ければよく、画像形成装置の小型化、機構の簡素化を図ることができ、画像形成の作業性に優れる。
【0028】
ここで、放電電極と電荷注入部との間にスペーサを配設することにより、電荷注入部と放電電極の間に放電空間を形成することができる。スペーサは、電荷注入部と放電電極との間の隙間を略一定に保って放電電極を保持することができるものであればよく、フォトレジスト等により形成することができる。スペーサは電荷注入部と放電電極の間に1つの共通な放電空間を形成するように電荷注入部の外周に配置してもよいし、電荷注入部と放電電極の間を下部電極又は上部電極のパターンに対応させて複数の放電空間に分割するように配置してもよい。
尚、記録媒体の放電電極を加熱する加熱手段としては、請求項4で説明したものと同様のものが好適に用いられる。
【0029】
下部電極又は上部電極の一方のみに電荷注入部及び放電電極が形成されている場合、一方の電極へ放電電極からの電荷の注入を行うと共に他方の電極への接地又は電圧印加を行うが、他方の電極に印加する電圧の極性を放電電極に印加する放電制御電圧の極性と逆極性にすることで、下部電極と上部電極が交差する(重なる)位置に確実に電位差を発生させて画像を形成することができる。
下部電極及び上部電極の両方に電荷注入部及び放電電極が形成されている場合、各々の放電電極に印加する放電制御電圧を互いに逆極性の電荷を発生させる電圧にすることで、一方の放電電極からは正イオン、他方の放電電極からは負イオンが照射されるので、下部電極と上部電極に逆極性の電荷を注入することができ、下部電極と上部電極が交差する(重なる)位置に確実に電位差を発生させて画像を形成することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の画像形成方法であって、前記電荷注入工程が、前記媒体本体の前記放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加工程と、加熱手段により前記放電電極の前記下部電極又は前記上部電極に対応する電子放出部位を選択的に加熱する放電電極加熱工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項10の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)放電制御電圧印加工程で記録媒体の放電電極に放電制御電圧が印加された状態で、放電電極加熱工程において加熱手段で放電電極の電子放出部位を選択的に加熱することにより、放電電極から下部電極又は上部電極に対して電子やイオンを照射することができ、電荷を注入することができる。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成方法であって、前記放電電極加熱工程と前記媒体側電圧制御工程が、同期して行われる構成を有している。
この構成により、請求項11の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)放電電極加熱工程と媒体側電圧制御工程が同期して行われることにより、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に大きな電位差を発生させることができ、高品質な画像を形成することができる。
【0032】
請求項13に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成方法であって、前記放電電極が前記下部電極及び前記上部電極に接続された電荷注入部とそれぞれ対向配置され、前記放電制御電圧印加工程で前記下部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極に印加される前記放電制御電圧と、前記上部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極に印加される前記放電制御電圧が、互いに逆極性の電荷を発生させる電圧である構成を有している。
この構成により、請求項11の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)放電電極が下部電極及び上部電極に接続された電荷注入部とそれぞれ対向配置され、放電制御電圧印加工程において、下部電極に接続された電荷注入部と対向配置された放電電極に印加される放電制御電圧と、上部電極に接続された電荷注入部と対向配置された放電電極に印加される放電制御電圧が、互いに逆極性の電荷を発生させる電圧であることにより、一方の放電電極からは正イオン、他方の放電電極からは負イオンが照射され、下部電極と上部電極に逆極性の電荷を注入することができ、下部電極と上部電極が交差する(重なる)位置に確実に電位差を発生させて画像を形成することができる。
【0033】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の画像形成方法であって、前記放電電極加熱工程が、前記下部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極と前記上部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極の間で同期して行われる構成を有している。
この構成により、請求項13の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)放電電極加熱工程が、下部電極に接続された電荷注入部と対向配置された放電電極と上部電極に接続された電荷注入部と対向配置された放電電極の間で同期して行われることにより、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に大きな電位差を発生させることができ、高品質な画像を形成することができる。
【0034】
請求項15に記載の発明は、請求項11乃至14の内いずれか1項に記載の画像形成方法であって、前記放電電極加熱工程に用いる加熱手段が、前記放電電極と絶縁されて前記電子放出部位に対応して配設され前記記録媒体に一体に形成された放電電極加熱部である構成を有している。
この構成により、請求項11乃至14の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)放電電極加熱工程が、放電電極と絶縁されて電子放出部位に対応して配設され記録媒体に一体に形成された放電電極加熱部により行われるので、電子やイオンの照射位置精度を向上させることができ、高精細な画像を形成することができる。
(2)記録媒体が放電電極加熱部を有するので、画像形成装置には加熱手段を設ける必要がなく、画像形成装置の小型化、機構の簡素化を図ることができ、画像形成の作業性に優れる。
【0035】
ここで、放電電極と放電電極加熱部との間は放電電極保護層により絶縁されている。放電電極保護層の材質としては、絶縁性及び放電電極加熱部による加熱に耐える耐熱性を有すると共に、放電電極加熱部が発する熱を放電電極に伝達できる熱伝達性を有するものが好適に用いられる。具体的には、ガラスやポリイミド,芳香族ポリアミド,ポリフェニレンオキシド,ポリベンズイミダゾール,ボリフェニルキノキサリン,ポリアリレート,ポリエーテルイミド,ポリエーテルスルフォン,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルエーテルケトン,アラミド等の合成樹脂等が好適に用いられる。
また、放電電極加熱部としては、TaSiO2、RuO2等で形成された発熱抵抗体が好適に用いられる。尚、放電電極加熱部に加熱部保護層が覆設されている場合、放電電極加熱部の破損を確実に防止することができると共に、放電電極加熱部に直接、手が触れることを防止でき、取り扱い性、安全性に優れる。加熱部保護層の材質としては、前述の放電電極保護層と同様のものが好適に用いられる。
【0036】
請求項16に記載の発明は、請求項11乃至14の内いずれか1項に記載の画像形成方法であって、前記放電電極加熱工程に用いる加熱手段が、前記放電電極に対向して配置される外部加熱手段である構成を有している。
この構成により、請求項11乃至14の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)放電電極加熱工程が、放電電極に対向して配置される外部加熱手段により行われることにより、記録媒体に放電電極加熱部などの加熱手段を設ける必要がなく、記録媒体の取り扱い性に優れる。
ここで、外部加熱手段としては前述の加熱手段と同様のものが好適に用いられる。
【0037】
請求項17に記載の発明は、請求項1乃至16の内いずれか1項に記載の画像形成方法であって、前記電荷注入工程により注入する電荷の極性を切り替える電荷切り替え工程を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至16の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電荷注入工程により注入する電荷の極性を切り替える電荷切り替え工程を有することにより、別途、画像消去手段を用いることなく画像を消去することができ、記録媒体を繰り返し使用することができ汎用性に優れる。
(2)電荷切り替え工程により、電荷注入工程で注入する電荷の極性を切り替えることができるので、画像が書き込まれた記録媒体を予め初期化することなく、画像データに基づいて任意の画像を形成することができ、画像の形成に要する時間を短縮することができる。
(3)電荷切り替え工程により、電荷注入工程で注入する電荷の極性を切り替えるだけで、白黒画像を反転させて形成することができ汎用性に優れる。
【0038】
ここで、電荷切り替え工程は、画像の書き込み又は消去を行う際に、前もって行うこともできるし、画像を書き込みながら逐次行うこともできる。画像の書き込み前に電荷切り替え工程を行えば、反転画像を形成したり、既に書き込まれた画像と同じ画像をなぞり書きして画像を消去したりすることができる。予め媒体本体の両面に下部電極及び上部電極が形成されているので、位置ずれが発生することがなく、なぞり書きにより確実に画像を消去することができる。また、画像データに基づいて、逐次、電荷切り替え工程を行いながら、電荷注入工程で全てのデータに対応した電荷の注入を行えば、任意の画像を上書きすることができる。
【0039】
請求項18に記載の発明は、請求項1乃至17の内いずれか1項に記載の画像形成方法であって、画像の1ライン中に印字する画素数に応じて前記電荷注入工程により注入する電荷の量を変化させる構成を有している。
この構成により、請求項1乃至17の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)画像の1ライン中に印字する画素数に応じて電荷注入工程により注入する電荷の量を変化させることによって、1ライン中に印字する画素数に応じた電荷を過不足なく注入して画像を形成することができ、濃度斑や画像の抜けなどの発生を防止することができ、画像品質の信頼性に優れる。
【0040】
ここで、画像の1ライン中に印字する画素数は、画像データに基づいて予め知ることができる。尚、一画素は表示原色一色当たりの基本表示単位を表すものとする。例えば、記録媒体が加法混色法における三原色(R,G,B)でフルカラー表示を行うものである場合は、各色について一画素ずつの合計三画素がカラー表示の基本単位となる。
記録媒体に画像を形成するための印字ヘッドとして、ワイヤ電極や針電極等に高電圧を印加してコロナ放電を発生させるものを用いる場合は、電極に印加する電圧を調整することにより、電荷の量を変化させることができる。また、電極を加熱して熱電子を放出させるものを用いる場合は、電極を加熱する温度を調整することにより、電荷の量を変化させることができる。記録媒体に一体に形成された放電電極や加熱放電型印字ヘッドを用いる場合は、放電電極に印加する放電制御電圧の電圧値や放電電極を加熱する温度を調整することにより、電荷の量を変化させることができる。
【0041】
請求項19に記載の発明は、請求項1乃至17の内いずれか1項に記載の画像形成方法であって、画像データの濃度に応じて前記電荷注入工程により注入する電荷の量を変化させる構成を有している。
この構成により、請求項1乃至17の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)画像データの濃度に応じて電荷注入工程により注入する電荷の量を変化させることによって、階調記録を行うことができ、画像品質を向上させることができる。
【0042】
ここで、電荷注入工程により注入する電荷の量は、請求項18と同様の方法で調整することができる。記録媒体の画像表示材料がツイストボール方式である場合は、一画素当たりに複数のツイストボールを配置することにより、電荷の量に応じて反転するツイストボールの数が変化して濃淡を表現することができる。記録媒体の画像表示材料が液晶方式或いは電気泳動方式,粉体移動方式等である場合は、電荷の量に応じて液晶の配列の変化量或いは帯電粒子の移動数量が変化して濃淡を表現することができる。
【0043】
請求項20に記載の発明は、請求項1乃至19の内いずれか1項に記載の画像形成方法であって、前記記録媒体の画像を消去する初期化工程を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至19の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)記録媒体の画像を消去する初期化工程を有することにより、記録媒体に書き込まれた既存の画像を画像形成前に確実に消去することができ、記録媒体を繰り返し使用する際の画像品質の信頼性に優れる。
【0044】
ここで、初期化工程に用いる初期化手段としては、例えばスコロトロンやコロトロンの帯電器が好適に用いられる。下部電極又は上部電極の少なくともいずれか一方に、画像形成時と逆極性の電荷を一様に注入することにより、短時間で確実に画像を消去できる。
記録媒体の媒体本体に封入された画像表示材料が、加熱により画像が消去するタイプのものである場合には、画像形成装置に設けたヒータなどで記録媒体を加熱して画像を消去することができる。また、記録媒体自身にチタン酸バリウム等を主成分とするPTC(POSITIVE TEMPERATURE COEFFICIENT:正温度係数)抵抗体などの発熱抵抗体と、その発熱抵抗体に電力を供給するための電力供給用電極と、を有する媒体加熱層が形成されている場合は、画像形成装置にヒータ等の画像消去用加熱手段を設けることなく簡便かつ確実に記録媒体を加熱して画像を消去できる。
尚、記録媒体の媒体本体に封入された画像表示材料が、一部の液晶材料方式や粉体移動方式等のように、上下の電極の電位差が保持された状態でのみ画像が表示されるタイプのものである場合は、下部電極と上部電極を短絡させるだけで簡便かつ確実に短時間で画像を消去することができ、画像形成装置に特別な初期化手段を設ける必要がなく、画像形成装置の機構を簡素化することができ取扱い性に優れる。
【0045】
本発明の請求項21に記載の画像形成装置は、請求項2に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極又は前記上部電極と対向配置され前記下部電極又は前記上部電極に電子やイオンを照射して電荷を注入する印字ヘッドと、前記上部電極又は前記下部電極への接地又は前記印字ヘッドから注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)記録媒体の下部電極又は上部電極と対向配置され下部電極又は上部電極に電子やイオンを照射して電荷を注入する印字ヘッドを有するので、非接触で画像の書き込みや消去を行うことができ、印字ヘッドと記録媒体を相対的に移動させる必要がなく、機構を簡素化することができ、印字ヘッドの汚れや記録媒体の傷或いは汚れが発生し難く、画像品質の信頼性、記録媒体の耐久性を向上させることができる。
(2)上部電極又は下部電極への接地又は印字ヘッドから注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部を有するので、下部電極と上部電極が交差する位置に確実に電位差を発生させて画像を形成することができ、画像の位置ずれが発生することがなく、画像品質の信頼性に優れ、特に逆極性の電圧印加を行った場合には、媒体本体の表裏に発生する電位差を大きくすることができ、高品質な画像を形成することができる。
【0046】
ここで、印字ヘッドは請求項1で説明したものと同様のものが好適に用いられる。
記録媒体の上部電極又は下部電極の端部に電極端子が形成されている場合、電極端子を画像形成装置のコネクタに挿通するだけで、簡便に電極端子を介して上部電極又は下部電極との導通を取ることができ、媒体側電圧制御部による接地や電圧印加を確実に行うことができ取り扱い性に優れる。また、電極端子が媒体本体の画像表示領域外の領域に配置されている場合は、媒体側電圧制御部との接続を簡便に行うことができると共に、画像表示領域を有効に利用することができる。
尚、請求項6で説明したように、媒体側電圧制御用ICを備えることにより、画像データに基づいて上部電極又は下部電極への接地や電圧印加を制御できるが、媒体側電圧制御用ICは画像形成装置側に設けてもよいし、記録媒体側に設けてもよい。
【0047】
本発明の請求項22に記載の画像形成装置は、請求項3に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極及び前記上部電極とそれぞれ対向配置され前記下部電極及び前記上部電極に互いに逆極性の電荷を注入する印字ヘッドを備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)記録媒体の下部電極及び上部電極とそれぞれ対向配置され下部電極及び上部電極に互いに逆極性の電荷を注入する印字ヘッドを有することにより、記録媒体と画像形成装置との間を電気的に接続する必要がなく、非接触で画像の書き込みや消去を行うことができ、印字ヘッドと記録媒体を相対的に移動させる必要がなく、機構を簡素化することができ、印字ヘッドの汚れや記録媒体の傷或いは汚れが発生し難く、画像品質の信頼性、記録媒体の耐久性を向上させることができる。
(2)印字ヘッドにより下部電極及び上部電極に互いに逆極性の電荷を注入することができるので、下部電極と上部電極が交差する位置に確実に大きな電位差を発生させて画像を形成することができ、画像の位置ずれが発生することがなく、高品質な画像を形成することができる。
【0048】
ここで、印字ヘッドは請求項1で説明したものと同様のものが好適に用いられるが、下部電極及び上部電極にそれぞれ逆極性の電荷を注入することができればよいので、下部電極及び上部電極のそれぞれに対向配置する印字ヘッドは、同じものでもよいし、異なるものでもよい。
【0049】
請求項23に記載の発明は、請求項21又は22に記載の画像形成装置であって、前記印字ヘッドが、電子放出部位を有する放電電極と、前記放電電極の前記電子放出部位を選択的に加熱する加熱手段と、を備えた加熱放電型印字ヘッドである構成を有している。
この構成により、請求項21又は22の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)印字ヘッドが、電子放出部位を有する放電電極と放電電極の電子放出部位を選択的に加熱する加熱手段とを備えた加熱放電型印字ヘッドであることにより、放電電極の電子放出部位から放出される電子や電子の放出に伴って発生する大量のイオンを照射して選択的に電荷を注入することができ、画像形成の効率性に優れる。
(2)印字ヘッドとして加熱放電型印字ヘッドを用いることにより、放電電極に放電制御電圧を印加した状態で、放電電極への加熱の有無を制御するだけで、放電の有無を制御してイオンの発生制御を行うことができるので、放電電極に印加する電圧の制御が不要で、加熱手段による加熱の制御に使用する5V駆動のような低耐電圧対応のドライバICを使用することができ、電荷注入の制御が容易で取り扱い性に優れる。
ここで、加熱放電型印字ヘッドについては請求項4で説明した通りであるので、説明を省略する。
【0050】
請求項24に記載の発明は、請求項21乃至23の内いずれか1項に記載の画像形成装置であって、前記印字ヘッドが、前記媒体本体の画像表示領域外の領域で前記下部電極又は前記上部電極に形成された電荷注入部と対向配置されている構成を有している。
この構成により、請求項21乃至23の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)印字ヘッドが、媒体本体の画像表示領域外の領域で下部電極又は上部電極に形成された電荷注入部と対向配置されていることにより、媒体本体の画像表示領域を有効に利用することができ、画像の書き込みや消去の工程を全て画像表示領域外から行うことができると共に、印字ヘッドを電荷注入部の配置に合わせて媒体本体の外周側にまとめて配置することができ、画像形成装置の構造を簡素化してコンパクト化を図ることができる。
ここで、電荷注入部については請求項9で説明した通りであるので、説明を省略する。
【0051】
本発明の請求項25に記載の画像形成装置は、請求項15に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極又は前記上部電極に接続された電荷注入部に対向配置された前記放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、前記放電電極に配設された前記放電電極加熱部を駆動する加熱部駆動部と、前記上部電極又は前記下部電極への接地又は前記放電電極から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)記録媒体の下部電極又は上部電極に接続された電荷注入部に対向配置された放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、放電電極に配設された放電電極加熱部を駆動する加熱部駆動部と、上部電極又は下部電極への接地又は放電電極から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部と、を有することにより、下部電極又は上部電極に対応して放電電極及び放電電極加熱部が一体に形成された専用の記録媒体を用いて画像を形成することができ、印字ヘッドが不要で画像形成装置の小型化、機構の簡素化を図ることができ、電子やイオンの照射位置精度を向上させることができ、高精細な画像を形成することができる。
【0052】
ここで、加熱部駆動部としては、放電電極加熱部を駆動して放電電極の任意の電子放出部位を選択的に加熱できるものであればよい。放電電極加熱部に電気的に接続された加熱制御用ICを備えることにより、画像データに基づいて放電電極の加熱を制御できる。尚、加熱制御用ICは画像形成装置側に設けてもよいし、記録媒体側に設けてもよい。
【0053】
本発明の請求項26に記載の画像形成装置は、請求項15に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極及び前記上部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極に互いに逆極性の電荷を発生させる放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、それぞれの前記放電電極に配設された前記放電電極加熱部を駆動する加熱部駆動部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)下部電極に接続された電荷注入部と対向配置された放電電極及び上部電極に接続された電荷注入部と対向配置された放電電極に互いに逆極性の電荷を発生させる放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、それぞれの放電電極に配設された放電電極加熱部を駆動する加熱部駆動部と、を有することにより、下部電極及び上部電極に対応して放電電極及び放電電極加熱部が一体に形成された専用の記録媒体を用いて画像を形成することができ、印字ヘッドや媒体側電圧制御部が不要で画像形成装置の小型化、機構の簡素化を図ることができ、電子やイオンの照射位置精度を向上させることができ、高精細な画像を形成することができる。
【0054】
ここで、放電制御電圧印加部は、下部電極及び上部電極のそれぞれに接続された電荷注入部に対向配置された放電電極に互いに逆極性の電荷を発生させる放電制御電圧を印加することにより、一方の電荷注入部に負のイオンを照射し、他方の電荷注入部に正のイオンを照射することができる。下部電極及び上部電極に照射するイオンは、互いに逆極性であればよく、負のイオン或いは正のイオンをどちら側の電極に照射するかは適宜、選択することができる。特に、放電制御電圧印加部が、放電電極に印加する放電制御電圧を切り替えて、発生させる電荷の極性を逆転させる電圧切り替え部を有する場合、印字ヘッドでなぞり書きすることによって画像を消去したり、上書きしたりでき汎用性に優れる。
【0055】
本発明の請求項27に記載の画像形成装置は、請求項16に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極又は前記上部電極に接続された電荷注入部に対向配置された前記放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、前記放電電極の前記電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段と、前記上部電極又は前記下部電極への接地又は前記放電電極から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)記録媒体の下部電極又は上部電極に接続された電荷注入部に対向配置された放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、放電電極の電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段と、上部電極又は下部電極への接地又は放電電極から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部と、を有することにより、下部電極又は上部電極に対応して放電電極が一体に形成された専用の記録媒体を用いて高精細な画像を形成することができ、記録媒体に放電電極加熱部を設ける必要がなく、記録媒体の取り扱い性に優れる。
【0056】
ここで、外部加熱手段としては、請求項4で説明した放電電極と密着又は離間して加熱する加熱手段と同様のものが好適に用いられる。
【0057】
本発明の請求項28に記載の画像形成装置は、請求項16に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極及び前記上部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極に互いに逆極性の電荷を発生させる放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、それぞれの前記放電電極の前記電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)下部電極に接続された電荷注入部と対向配置された放電電極及び上部電極に接続された電荷注入部と対向配置された放電電極に互いに逆極性の電荷を発生させる放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、それぞれの放電電極の電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段と、を有することにより、下部電極及び上部電極に対応して放電電極が一体に形成された専用の記録媒体を用いて高精細な画像を形成することができ、記録媒体に放電電極加熱部を設ける必要がなく、記録媒体の取り扱い性に優れる。
【0058】
請求項29に記載の発明は、請求項21,25,27の内いずれか1項に記載の画像形成装置であって、前記媒体側電圧制御部が、前記上部電極又は前記下部電極に接触する媒体側電圧印加部と、前記媒体側電圧印加部を走査して前記上部電極又は前記下部電極に順次、電圧印加を行う走査部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項21,25,27の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)媒体側電圧制御部が、上部電極又は下部電極に接触する媒体側電圧印加部と、媒体側電圧印加部を走査して上部電極又は下部電極に順次、電圧印加を行う走査部を有することにより、走査部で媒体側電圧印加部を走査するだけで、複数の上部電極又は下部電極の中から選択的に電圧印加を行うことができるので、上部電極又は下部電極に印加する電圧のオン、オフを切り換える必要がなく、制御を簡素化することができる。
【0059】
ここで、上部電極及び下部電極は、媒体本体の表裏にそれぞれ所定のパターンで形成されているが、その端部を一列又は一行に並べて配置することにより、媒体側電圧印加部を一方向に走査させて電圧印加を行う上部電極又は下部電極を順次、選択することができる。特に、上部電極又は下部電極が、媒体本体の行方向又は列方向に短冊状に分割されて形成されている場合は、その行単位又は列単位で1ラインずつ画像の形成を行うことができる。
【0060】
本発明の請求項30に記載の画像形成装置は、請求項20に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極又は前記上部電極の少なくともいずれか一方に一様に電荷を注入して画像を消去する初期化用ヘッドを備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)記録媒体の下部電極又は上部電極の少なくともいずれか一方に一様に電荷を注入して画像を消去する初期化用ヘッドを有することにより、印字ヘッドや記録媒体に一体に形成された放電電極から照射されるイオンの極性を切り替えて画像を消去する必要がなく、短時間で簡便かつ確実に画像を消去することができ、記録媒体を繰り返し使用する際の画像品質の信頼性に優れる。
【0061】
ここで、初期化用ヘッドとしては、下部電極又は上部電極の少なくともいずれか一方に、画像形成時と逆極性の電荷を一様に注入することができればよい。スコロトロンやコロトロンの帯電器を用いてもよいし、請求項1で説明した画像形成に用いる各種の電子放出デバイスを含む印字ヘッドと同様のものを用いてもよい。
尚、請求項21乃至30で説明した画像形成装置は、記録媒体を表示部とする画像表示装置としても用いることができる。その場合、媒体本体の両面にそれぞれ注入又は印加された電荷が溜まった状態で保持されるので、画像形成後は無電源で画像を表示することができ省エネルギー性に優れると共に、静電気等の影響によって画像が乱れることを防止でき画像品質の安定性に優れる。
【発明の効果】
【0062】
以上のように、本発明の画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)媒体本体の下面及び上面にそれぞれ所定のパターンで下部電極及び上部電極が形成された記録媒体に対し、電荷注入工程において、下部電極又は上部電極の少なくともいずれか一方に電子やイオンを照射して電荷を注入することにより、画像の書き込みや消去を行うことができ、電荷を注入するための印字ヘッドなどの位置決めや走査等が不要で画像形成の工程及び画像形成装置の機構を簡素化することができる画像形成の作業性に優れた画像形成方法を提供することができる。
(2)電荷を注入するための印字ヘッドなどと記録媒体を相対的に移動させる必要がなく、印字ヘッドの汚れや記録媒体の傷或いは汚れの発生を防止できる画像品質の信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
(3)記録媒体の下部電極又は上部電極の少なくともいずれか一方と、媒体本体と、の間が、スペーサによって離間しているので、下部電極又は上部電極に注入された電荷の作用によって、媒体本体と電荷が注入された下部電極又は上部電極との間で選択的に放電を発生させることができ、下部電極又は上部電極に選択的に注入された電荷が、隣接する電荷が注入されていない下部電極や上部電極に作用することがなく、クロストークの発生を確実に防止することができ、滲みのない高品質な画像を形成することができる画像品質の信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0063】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)媒体本体の下面及び上面にそれぞれ所定のパターンで下部電極及び上部電極が形成された記録媒体に対し、電荷注入工程により下部電極又は上部電極の一方に電荷を注入し、媒体側電圧制御工程により上部電極又は下部電極への接地若しくは上部電極又は下部電極に電荷注入工程で下部電極又は上部電極に注入された電荷と逆極性の電圧印加を行うことにより、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に大きな電位差を発生させることができ、位置ずれのない高品質な画像を形成することができる画像品質の信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0064】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電荷注入工程により、下部電極及び上部電極にそれぞれ逆極性の電荷を注入することができるので、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に大きな電位差を発生させることができ、高品質な画像を形成することができる画像品質の信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0065】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電子放出部位を有する放電電極と放電電極を選択的に加熱する加熱手段とを備えた加熱放電型印字ヘッドを用いることにより、電荷注入工程において大量のイオンを照射して注入する電荷の量を増大させることができる画像形成の効率性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0066】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)放電制御電圧印加工程と放電電極加熱工程により駆動される加熱放電型印字ヘッドを用いることにより、放電制御電圧印加工程において放電電極に放電制御電圧を印加した状態で放電に備えることができ、放電電極加熱工程において加熱手段で放電電極の電子放出部位を選択的に加熱するだけで放電を発生させることができ、高電圧となる放電制御電圧を制御する必要がなく、下部電極又は上部電極に対して電子やイオンを照射して簡便かつ確実に電荷を注入することができる制御が容易で画像形成の効率性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0067】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)放電電極加熱工程と媒体側電圧制御工程を同期させることにより、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に電位差を発生させて高品質な画像を形成することができる画像品質の信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0068】
請求項7に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)放電制御電圧印加工程において、下部電極及び上部電極のそれぞれに対向配置される加熱放電型印字ヘッドの放電電極に印加する放電制御電圧を、互いに逆極性の電荷を発生させる電圧とすることにより、それぞれの放電電極から下部電極及び上部電極に対して逆極性の電荷を注入することができ、下部電極と上部電極が交差する位置に確実に電位差を発生させて位置ずれのない高品質な画像を形成することができる画像品質の信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0069】
請求項8に記載の発明によれば、請求項7の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)下部電極及び上部電極のそれぞれに対向配置される加熱放電型印字ヘッドの間で、放電電極加熱工程を同期させることにより、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に大きな電位差を発生させて高品質な画像を形成することができる画像形成の効率性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0070】
請求項9に記載の発明によれば、請求項1乃至8の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電荷注入工程を媒体本体の画像表示領域外の領域で下部電極又は上部電極に形成された電荷注入部に対して行うことにより、画像表示領域外の領域から画像表示領域の画像の書き込みや消去を行うことができ、画像表示領域を有効に利用することができ、印字ヘッド等の位置決めや走査等が不要で画像形成の工程及び画像形成装置の機構を簡素化することができる画像形成の作業性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0071】
請求項10に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電荷注入工程を記録媒体の画像表示領域外の領域に一体に形成された放電電極から行うことにより、画像表示領域を有効に利用することができ、画像形成装置には加熱手段のみを設ければよく、画像形成装置の小型化、機構の簡素化を図ることができる画像形成の作業性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0072】
請求項11に記載の発明によれば、請求項10の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)放電制御電圧印加工程で放電制御電圧が印加された記録媒体の放電電極に対し、放電電極加熱工程において加熱手段による選択的な加熱を行うだけで、放電電極から下部電極又は上部電極に対して電子やイオンを照射して電荷を注入することができる画像形成の作業性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0073】
請求項12に記載の発明によれば、請求項11の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)放電電極加熱工程と媒体側電圧制御工程を同期させることにより、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に大きな電位差を発生させて高品質な画像を形成することができる画像形成の効率性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0074】
請求項13に記載の発明によれば、請求項11の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)放電制御電圧印加工程において、下部電極及び上部電極のそれぞれに接続された電荷注入部と対向配置された放電電極に印加される放電制御電圧を、互いに逆極性の電荷を発生させる電圧とすることにより、一方の放電電極からは正イオン、他方の放電電極からは負イオンを照射して、下部電極と上部電極に逆極性の電荷を注入することができ、下部電極と上部電極が交差する(重なる)位置に確実に電位差を発生させて画像を形成することができる画像品質の信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0075】
請求項14に記載の発明によれば、請求項13の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)下部電極及び上部電極のそれぞれに接続された電荷注入部と対向配置された放電電極に対する放電電極加熱工程を同期させることにより、下部電極と上部電極が交差する位置で確実に媒体本体の表裏に大きな電位差を発生させて画像を形成することができる画像品質の信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0076】
請求項15に記載の発明によれば、請求項11乃至14の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)放電電極加熱工程を記録媒体に一体に形成された放電電極加熱部により行うことにより、電子やイオンの照射位置精度を向上させて高精細な画像を形成することができ、画像形成装置には加熱手段を設ける必要がなく、画像形成装置の小型化、機構の簡素化を図ることができる画像形成の作業性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0077】
請求項16に記載の発明によれば、請求項11乃至14の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)画像形成装置に設けた外部加熱手段によって放電電極加熱工程を行うことにより、記録媒体に加熱手段を設ける必要がなく、記録媒体の取り扱い性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0078】
請求項17に記載の発明によれば、請求項1乃至16の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電荷切り替え工程を有することにより、電荷注入工程で注入する電荷の極性を適宜、切り替えることができるので、画像の消去や上書き、反転画像の形成などを簡便に行うことができ、画像の形成に要する時間を短縮でき、記録媒体を繰り返し使用することができる汎用性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0079】
請求項18に記載の発明によれば、請求項1乃至17の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)画像の1ライン中に印字する画素数に応じて電荷注入工程により注入する電荷の量を変化させることによって、画像の形成に必要な電荷を過不足なく注入することができ、濃度斑や画像の抜けなどの発生を防止することができる画像品質の信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0080】
請求項19に記載の発明によれば、請求項1乃至17の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電荷注入工程で注入する電荷の量を画像データの濃度に応じて変化させることにより、簡便に階調記録を行って画像品質を向上させることができる画像形成の作業性、信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0081】
請求項20に記載の発明によれば、請求項1乃至19の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)記録媒体に書き込まれた既存の画像を初期化工程によって画像形成前に確実に消去することができ、記録媒体を繰り返し使用する際の画像品質の信頼性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0082】
請求項21に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)記録媒体の下部電極又は上部電極と対向配置された印字ヘッドにより、下部電極又は上部電極に電子やイオンを照射して電荷を注入することができるので、非接触で画像の書き込みや消去を行うことができ、印字ヘッドと記録媒体を相対的に移動させる必要がなく、機構を簡素化することができ、印字ヘッドの汚れや記録媒体の傷或いは汚れが発生し難く、画像品質の信頼性、記録媒体の耐久性を向上させることができるメンテナンス性、信頼性に優れた画像形成装置を提供することができる。
(2)媒体側電圧制御部によって記録媒体の上部電極又は下部電極への接地又は印字ヘッドから注入される電荷と逆極性の電圧印加を行うことができるので、下部電極と上部電極が交差する位置に確実に電位差を発生させて位置ずれのない高品質な画像を形成することができ、特に逆極性の電圧印加を行った場合には、媒体本体の表裏に発生する電位差を増大させて画像品質を向上させることができる画像品質の信頼性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0083】
請求項22に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)記録媒体の下部電極及び上部電極のそれぞれと対向配置された印字ヘッドにより、下部電極及び上部電極に互いに逆極性の電荷を注入することができるので、記録媒体と画像形成装置との間を電気的に接続する必要がなく、非接触で画像の書き込みや消去を行うことができ、印字ヘッドと記録媒体を相対的に移動させる必要がなく、機構を簡素化することができ、印字ヘッドの汚れや記録媒体の傷或いは汚れが発生し難く、画像品質の信頼性、記録媒体の耐久性を向上させることができるメンテナンス性、信頼性に優れた画像形成装置を提供することができる。
(2)印字ヘッドにより下部電極及び上部電極に互いに逆極性の電荷を注入することができるので、下部電極と上部電極が交差する位置に確実に大きな電位差を発生させて位置ずれのない高品質な画像を形成することができる画像品質の信頼性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0084】
請求項23に記載の発明によれば、請求項21又は22の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電子放出部位を有する放電電極と放電電極の電子放出部位を選択的に加熱する加熱手段とを備えた加熱放電型印字ヘッドを用いることにより、放電電極の電子放出部位から放出される電子や電子の放出に伴って発生する大量のイオンを照射して選択的に電荷を注入することができる画像形成の効率性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0085】
請求項24に記載の発明によれば、請求項21乃至23の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)画像の書き込みや消去の工程を全て画像表示領域外の領域で電荷注入部と対向配置された印字ヘッドから行うことができるので、媒体本体の画像表示領域を有効に利用することができると共に、印字ヘッドを電荷注入部の配置に合わせて媒体本体の外周側にまとめて配置することができる構造が簡素でコンパクト性、取り扱い性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0086】
請求項25に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、放電電極に配設された放電電極加熱部を駆動する加熱部駆動部と、を有すると共に、媒体側電圧制御部により上部電極又は下部電極への接地又は放電電極から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行うことができるので、下部電極又は上部電極に対応して放電電極及び放電電極加熱部が一体に形成された専用の記録媒体を用いて高精細な画像を形成することができ、印字ヘッドが不要な簡素な構造で、コンパクト性、取り扱い性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0087】
請求項26に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)記録媒体の下部電極及び上部電極のそれぞれに接続された電荷注入部と対向配置された放電電極に互いに逆極性の電荷を発生させる放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、それぞれの放電電極に配設された放電電極加熱部を駆動する加熱部駆動部と、を有することにより、下部電極及び上部電極に対応して放電電極及び放電電極加熱部が一体に形成された専用の記録媒体を用いて高精細な画像を形成することができ、印字ヘッドや媒体側電圧制御部が不要で、機構を簡素化することができるコンパクト性、取り扱い性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0088】
請求項27に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、放電電極の電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段と、上部電極又は下部電極への接地又は放電電極から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部と、を有することにより、下部電極又は上部電極に対応して放電電極が一体に形成された専用の記録媒体を用いて高精細な画像を形成することができ、記録媒体に放電電極加熱部を設ける必要がなく、記録媒体の取り扱い性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0089】
請求項28に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)記録媒体の下部電極及び上部電極のそれぞれに接続された電荷注入部と対向配置された放電電極に互いに逆極性の電荷を発生させる放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、それぞれの放電電極の電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段と、を有することにより、下部電極及び上部電極に対応して放電電極が一体に形成された専用の記録媒体を用いて高精細な画像を形成することができ、記録媒体に放電電極加熱部を設ける必要がなく、記録媒体の取り扱い性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0090】
請求項29に記載の発明によれば、請求項21,25,27の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)媒体側電圧制御部が、上部電極又は下部電極に接触する媒体側電圧印加部と、媒体側電圧印加部を走査して上部電極又は下部電極に順次、電圧印加を行う走査部を有することにより、走査部で媒体側電圧印加部を走査するだけで、複数の上部電極又は下部電極の中から選択的に電圧印加を行うことができ、上部電極又は下部電極に印加する電圧の制御が不要な画像形成の作業性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0091】
請求項30に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)初期化用ヘッドを用いて記録媒体の下部電極又は上部電極の少なくともいずれか一方に一様に電荷を注入することにより、短時間で簡便かつ確実に画像を消去することができ、記録媒体を繰り返し使用する際の画像品質の信頼性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0092】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1における画像形成方法に用いる記録媒体について、以下図面を参照しながら説明する。
図1は実施の形態1における画像形成方法に用いる記録媒体を示す部分破断模式斜視図である。
図1中、1は本発明の実施の形態1における画像形成方法に用いる記録媒体、2は白色と減法混色法における三原色(Y,M,C)の表示原色の内のいずれか一色を選択的に表示可能な電気泳動方式の画像表示材料2aが表示原色の色毎に縞模様状に配置されて封入された媒体本体、3は媒体本体2の表示原色の各色に対応させて行方向に分割されて短冊状に形成され媒体本体2の下面側に配設された記録媒体1のITO等の透明な下部電極、3aは媒体本体2の画像表示領域外の領域で下部電極3の端部に形成された記録媒体1の電荷注入部、3Aはフォトレジスト等により形成され各々の下部電極3と媒体本体2との間を行単位に分割するように配設されて媒体本体2と下部電極3とを離間させたスペーサ、3Bは媒体本体2と下部電極3との間に形成された放電空間、4は媒体本体2の上面に列方向に分割されて短冊状に形成され下部電極3と直交するように配設された記録媒体1の上部電極、4aは媒体本体2の画像表示領域外の領域で上部電極4の端部に形成された記録媒体1の電極端子、5a,5bはガラス、アラミド、ポリイミド、PET、ポリアミド等の合成樹脂等の材質で形成され下部電極3及び上部電極4に覆設された記録媒体1の電極保護層、6は電極端子4aに接続され上部電極4への電圧印加を制御する記録媒体1の媒体側電圧制御用ICである。
尚、図1では、説明の都合上、記録媒体1の一部として3行分の下部電極3及び4列分の上部電極4のみを示している。
【0093】
図2は実施の形態1における画像形成方法に用いる記録媒体の媒体本体を示す模式平面図である。
図2に示すように、媒体本体2には白色と減法混色法における三原色(Y,M,C)の表示原色の内のいずれか一色を選択的に表示可能な電気泳動方式の画像表示材料2aが表示原色の色毎に縞模様状に配置されて封入されている。
下部電極3を透明電極とすることにより、下部電極3が形成された媒体本体2の下面側を表示面として、反射光による画像表示を行うことができる。
尚、1行の下部電極3と1列の上部電極4が交差する位置の表示原色の1色分が、記録媒体1の一画素(基本表示単位)に相当し、3行の下部電極3と1列の上部電極4が交差する位置の表示原色の三原色(Y,M,C)分が、記録媒体1のカラー表示の基本単位となる。
本実施の形態では、下部電極3の1行当たりに画像表示材料2aを2行ずつ配置したが、画像表示材料2aの配置はこれに限定されるものではなく、1行当たりに配置する画像表示材料2aの数は任意に選択することができる。
【0094】
以上のように構成された記録媒体を用いた実施の形態1における画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置について説明する。
図3は実施の形態1における画像形成方法に用いる記録媒体を示す模式平面図であり、図4は実施の形態1における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図である。
図3において、下部電極3と上部電極4が重なり合っている領域wが、媒体本体2の画像表示領域である。
尚、図4においては、図3における記録媒体1のA−O−A線の断面を同一面上に展開して示している。
図4中、15は実施の形態1における画像形成方法に用いる画像形成装置、16は記録媒体1を載置して保持する画像形成装置15の媒体載置部、20は電荷注入部3aに対して選択的に電子やイオンを照射して電荷を注入する画像形成装置15の印字ヘッド、21は媒体側電圧制御用IC6を介して上部電極4へ印字ヘッド20から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う画像形成装置15の媒体側電圧制御部である。
尚、印字ヘッド20は、選択的に電子やイオンを照射できるものであればよく、ワイヤ電極や針電極等に高電圧を印加してコロナ放電を発生させるもの、電極を加熱して熱電子を放出させるもの、放電電極に印加する電圧と放電電極の温度を制御して電子やイオンを照射する加熱放電型印字ヘッド(例えば特開2003−326756号やWO2005/056297)、SED(表面電界ディスプレイ)に使用される電子放出デバイス、FED(電界放出型ディスプレイ)に使用される電子放出デバイス、電子放出部にカーボンナノチューブを使用したカーボンナノチューブFED等を用いることができる。
【0095】
以上のように構成された画像形成装置の動作に基づいて、実施の形態1における画像形成方法を説明する。
電荷注入工程において、印字ヘッド20から選択された電荷注入部3aへ電子や負イオンを照射し、負電荷を注入すると共に、媒体側電圧制御工程において、媒体側電圧制御部21から選択された電極端子4aに正電圧を印加する。
電荷注入工程及び媒体側電圧制御工程を行うことにより、選択された電荷注入部3aに接続された下部電極3と、選択された電極端子4aに接続された上部電極4が交差する位置で、下部電極3と上部電極4の間に電位差が発生する。この電位差により、下部電極3から放電が発生し、媒体本体2の裏面に電子やイオンが照射され電荷が付与される。その結果、媒体本体2の表裏に電位差が生じ、その電位差に従って画像表示材料2aが移動して画像が形成される。
記録媒体1と印字ヘッド20を相対的に移動させることなく、電荷注入部3aから電荷を注入して画像の形成を行うことができるので、記録媒体1は画像形成装置15の媒体載置部16上に載置するだけでよく、媒体載置部16及び印字ヘッド20の移動機構が不要で、画像形成装置15の機構を簡素化してコンパクト化することができる。
【0096】
本実施の形態では、記録媒体1に配設された媒体側電圧制御用IC6を介して媒体側電圧制御部21から上部電極4への電圧の印加を行ったが、媒体側電圧制御用IC6は媒体側電圧制御部21に設けてもよい。尚、媒体側電圧制御用IC6を用いる代わりに、上部電極4の電極端子4aに接触する媒体側電圧印加部と、媒体側電圧印加部を走査して上部電極4に順次、電圧印加を行う走査部と、を備えた媒体側電圧制御部を用いてもよい。走査部で媒体側電圧印加部を走査するだけで、複数の上部電極4の中から選択的に電圧印加を行うことができるので、上部電極4に印加する電圧のオン、オフを切り換える必要がなく、制御を簡素化することができる。
また、本実施の形態では、電荷注入工程において、下部電極3側に負電荷を注入し、媒体側電圧制御工程において、上部電極4側に正電圧を印加したが、下部電極3側に正電荷を注入し、媒体側電圧制御工程において、上部電極4側に負電圧を印加してもよい。尚、媒体側電圧制御工程においては、電荷注入工程で注入される電荷と逆極性の電圧を印加する代わりに、接地を行ってもよい。
【0097】
印字ヘッド20が、電子放出部位を有する放電電極と放電電極を選択的に加熱する加熱手段とを備えた加熱放電型印字ヘッドである場合、電荷注入工程は、加熱放電型印字ヘッドの放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加工程と、加熱手段により放電電極の電子放出部位を選択的に加熱する放電電極加熱工程と、を有する。放電制御電圧印加工程において放電電極に放電制御電圧を印加した状態で放電に備えることができるので、高電圧となる放電制御電圧を制御する必要がなく、放電電極加熱工程で放電電極の電子放出部位を選択的に加熱するだけで放電を発生させることができ、放電電極から下部電極3又は上部電極4に対して電子やイオンを照射して簡便かつ確実に電荷を注入することができる。
このとき、電荷注入工程の放電電極加熱工程と前述の媒体側電圧制御工程を同期させて行った場合、下部電極3と上部電極4が交差する位置で確実に媒体本体2の表裏に電位差を発生させることができ、高品質な画像を形成することができる。
【0098】
尚、画像の1行中に表示する画素数に応じて、電荷注入工程により注入する電荷の量を変化させることにより、1ライン中に印字する画素数に応じた電荷を過不足なく注入して画像を形成することができ、濃度斑や画像の抜けなどの発生を防止することができ、画像品質の信頼性に優れる。
また、画像データの濃度に応じて、画素毎に電荷注入工程により注入する電荷の量を変化させることにより、画像表示材料2aの移動量を変化させて階調記録を行うことができ、画像の高品質性に優れる。
本実施の形態では、下部電極3を行方向に分割し、上部電極4を列方向に分割してマトリックス状に配置したが、下部電極3を列方向に分割し、上部電極4を行方向に分割してもよい。尚、下部電極3及び上部電極4のパターンは、本実施の形態に限定されるものではなく、表示する画像の種類に応じて適宜、選択することができる。表示する画像が、予め決められた文字や数字などの場合は、表示面側の下部電極3を文字や数字を構成するセグメント単位に分割して形成し、上部電極4は画像表示領域wに共通の平板電極とすればよい。
また、本実施の形態では、媒体本体2の裏面側にスペーサ3Aを配置し、媒体本体2と下部電極3との間を離間させたが、下部電極3又は上部電極4の少なくともいずれか一方を媒体本体2と離間させればよく、スペーサは媒体本体2の表裏のいずれか一方、若しくは両方に形成することができる。
【0099】
実施の形態1の画像形成方法は以上のように構成されているので以下の作用を有する。
(1)媒体本体2の下面及び上面にそれぞれ所定のパターンで下部電極3及び上部電極4が形成された記録媒体1に対し、電荷注入工程において、下部電極3に電子やイオンを照射して電荷を注入することにより、画像の書き込みや消去を行うことができ、電荷を注入するための印字ヘッド20の位置決めや走査等が不要で画像形成の工程及び画像形成装置15の機構を簡素化することができ画像形成の作業性に優れる。
(2)記録媒体1が下部電極3と媒体本体2との間に配設され、媒体本体2と下部電極3とを離間させたスペーサ3Aを備えているので、下部電極3に注入された電荷の作用によって、媒体本体2と電荷が注入された下部電極3との間で選択的に放電を発生させることができ、下部電極3に選択的に注入された電荷が、隣接する電荷が注入されていない下部電極3に作用することがなく、クロストークの発生を確実に防止することができ、滲みのない高品質な画像を形成することができ、画像品質の信頼性に優れる。
(3)電荷を注入するための印字ヘッド20と記録媒体1を相対的に移動させる必要がないので、印字ヘッド20の汚れや記録媒体1の傷或いは汚れが発生し難く、画像品質の信頼性、記録媒体1の耐久性を向上させることができる。
(4)媒体本体2の両面に予め所定のパターンで形成された下部電極3と上部電極4が配設されているので、電荷注入工程により下部電極3に電荷を注入し、媒体側電圧制御工程により上部電極4に電荷注入工程で下部電極3に注入された電荷と逆極性の電圧印加を行うことにより、下部電極3と上部電極4が交差する位置で確実に媒体本体2の表裏に大きな電位差を発生させて画像を形成することができ、画像の位置ずれが発生することがなく、画像品質の信頼性に優れる。
(5)電荷注入工程及び媒体側電圧制御工程で媒体本体2の両面にそれぞれ注入及び印加された電荷が溜まった状態で保持されるので、画像形成後は無電源で画像を表示することができ省エネルギー性に優れると共に、静電気等の影響によって画像が乱れることを防止でき画像品質の安定性に優れる。
(6)電荷注入工程が、媒体本体2の画像表示領域w外の領域で下部電極3の端部に形成された電荷注入部3aに対して行われることにより、画像表示領域w外の領域で下部電極3に電荷を注入して画像表示領域wの画像の書き込みや消去を行うことができるので、画像表示領域wを有効に利用することができ、印字ヘッド20の位置決めや走査等が不要で画像形成の工程及び画像形成装置15の機構を簡素化することができ、画像形成の作業性に優れる。
(7)記録媒体1が電極端子4aに接続され上部電極4への電圧印加を制御する媒体側電圧制御用IC6を備えることにより、画像データに基づいて選択的に上部電極4への電圧印加を行うことができ、電荷注入部3aへの電荷の注入と上部電極4への電圧印加のタイミングを容易に同期させることができ取り扱い性に優れる。
【0100】
実施の形態1の画像形成方法に用いる画像形成装置は以上のように構成されているので以下の作用を有する。
(1)記録媒体1の下部電極3と対向配置され下部電極3に電子やイオンを照射して電荷を注入する印字ヘッド20を有するので、非接触で画像の書き込みや消去を行うことができ、印字ヘッド20と記録媒体1を相対的に移動させる必要がなく、機構を簡素化することができ、印字ヘッド20の汚れや記録媒体1の傷或いは汚れが発生し難く、画像品質の信頼性、記録媒体の耐久性を向上させることができる。
(2)上部電極4への印字ヘッド20から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部21を有するので、下部電極3と上部電極4が交差する位置に確実に大きな電位差を発生させて高品質な画像を形成することができる。
(3)印字ヘッド20が、媒体本体2の画像表示領域w外の領域で下部電極3の端部に形成された電荷注入部3aと対向配置されていることにより、媒体本体2の画像表示領域wを有効に利用することができ、画像の書き込みや消去の工程を全て画像表示領域w外から行うことができると共に、印字ヘッド20を電荷注入部3aの配置に合わせて媒体本体2の外周側に配置することができ、画像形成装置15の構造を簡素化してコンパクト化を図ることができる。
【0101】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図5は実施の形態2における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図である。
図5において、実施の形態2における画像形成方法に用いる記録媒体1aが、実施の形態1と異なるのは、電極端子4aの代わりに、上部電極4の端部に電荷注入部4bが形成されている点である。
また、実施の形態2における画像形成方法に用いる画像形成装置が、実施の形態1と異なるのは、画像形成装置15aが媒体側電圧制御部21の代わりにもう1つの印字ヘッド20aを備えており、媒体側電圧制御用IC6を介して上部電極4へ電圧印加を行う代わりに、電荷注入部4bと離間して対向配置された印字ヘッド20aから、電荷注入部4bに対して選択的に正イオンを照射して電荷を注入している点である。
電荷注入工程において、2箇所の電荷注入部3a,4bにそれぞれ逆極性の電荷が注入されることにより、選択された電荷注入部3aに接続された下部電極3と、選択された電荷注入部4bに接続された上部電極4が交差する位置で放電が発生し、媒体本体2の表裏に生じた電位差に従って画像表示材料2aが移動して画像が形成される。
【0102】
実施の形態2の画像形成方法は以上のように構成されているので、実施の形態1の(2),(3)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)負又は正のイオンを照射可能な印字ヘッド20,20aを各々の電荷注入部3a,4bに対向させて配置し、電荷注入工程において、下部電極3及び上部電極4にそれぞれ逆極性の電荷を注入することにより、下部電極3と上部電極4が交差する位置で確実に媒体本体2の表裏に大きな電位差を発生させることができ、高品質な画像を形成することができる。
(2)電荷注入工程で媒体本体2の両面にそれぞれ注入された電荷が溜まった状態で保持されるので、画像形成後は無電源で画像を表示することができ省エネルギー性に優れると共に、静電気等の影響によって画像が乱れることを防止でき画像品質の安定性に優れる。
【0103】
実施の形態2の画像形成方法に用いる画像形成装置は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(1)記録媒体1の下部電極3及び上部電極4とそれぞれ対向配置され下部電極3及び上部電極4に互いに逆極性の電荷を注入する印字ヘッド20,20aを有することにより、記録媒体1と画像形成装置15aとの間を電気的に接続する必要がなく、非接触で画像の書き込みや消去を行うことができ、印字ヘッド20,20aと記録媒体1aを相対的に移動させる必要がなく、機構を簡素化することができ、印字ヘッド20,20aの汚れや記録媒体1aの傷或いは汚れが発生し難く、画像品質の信頼性、記録媒体1aの耐久性を向上させることができる。
(2)印字ヘッド20,20aにより下部電極3及び上部電極4に互いに逆極性の電荷を注入することができるので、下部電極3と上部電極4が交差する位置に確実に大きな電位差を発生させて画像を形成することができ、画像の位置ずれが発生することがなく、高品質な画像を形成することができる。
(3)印字ヘッド20,20aが、媒体本体2の画像表示領域w外の領域で下部電極3及び上部電極4の端部にそれぞれ形成された電荷注入部3a,4bと対向配置されていることにより、媒体本体2の画像表示領域wを有効に利用することができ、画像の書き込みや消去の工程を全て画像表示領域w外から行うことができると共に、印字ヘッド20,20aを電荷注入部3a,4bの配置に合わせて媒体本体2の外周側にまとめて配置することができ、画像形成装置15aの構造を簡素化してコンパクト化を図ることができる。
【0104】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における画像形成方法について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1又は2と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図6は実施の形態3における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図である。
図6において、実施の形態3における画像形成方法に用いる記録媒体1bが、実施の形態1と異なるのは、フォトレジスト等により全ての電荷注入部3aの外周を囲むように電荷注入部3a及び電極保護層5aの上面に突設されたスペーサ7と、電荷注入部3aと後述する放電電極8との間に形成された放電空間7aと、スペーサ7上に渡設され電荷注入部3aに離間して対向配置された放電電極8と、放電電極8に接続された放電制御電圧入力用端子9を備えている点である。
【0105】
スペーサ7は、電荷注入部3aと放電電極8との間の隙間を略一定に保って放電電極8を保持することができるものであればよい。スペーサ7は、複数の電荷注入部3aと放電電極8の間に1つの共通な放電空間7aを形成するように配置する代わりに、各々の電荷注入部3aと放電電極8の間を行単位の放電空間7aに分割するように配置してもよい。
本実施の形態では、各々の電荷注入部3aに対応した複数の電子放出部位を有する放電電極8を長方形状の一枚の平板状に形成したが、例えば複数の電子放出部位の一端部を共通電極で接続して櫛型に形成したり、複数の電子放出部位の両端部を共通電極で接続して梯子型等に形成したりできる(例えば、WO2005/056297参照)。尚、長方形状や正方形状等の平板状に形成した放電電極8は、電子放出部位以外が共通電極となる。
【0106】
実施の形態3における画像形成方法に用いる画像形成装置が、実施の形態1と異なるのは、画像形成装置15bが、印字ヘッド20の代わりに、放電制御電圧入力用端子9を介して放電電極8に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部25と、放電電極8の電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段30と、を有する点である。
また、実施の形態3における画像形成方法、実施の形態1と異なるのは、電荷注入工程が、画像形成装置15bの放電制御電圧印加部25により放電制御電圧入力用端子9を介して放電電極8に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加工程と、画像形成装置15bの外部加熱手段30により放電電極8の電子放出部位を選択的に加熱する放電電極加熱工程と、画像形成装置15bの媒体側電圧制御部21から選択された電極端子4aに正電圧を印加する媒体側電圧制御工程と、を備えている点である。
記録媒体1bが放電電極8に接続された放電制御電圧入力用端子9を有するので、画像形成装置15bから放電電極8に対して簡便に放電制御電圧を印加することができ、取扱い性に優れる。
【0107】
放電制御電圧印加工程により、放電電極8に放電制御電圧が印加された状態で、放電電極加熱工程により、選択された電荷注入部3aに対応する放電電極8の電子放出部位を加熱することにより、電荷注入部3aと放電電極8との間で放電が発生し、電子放出部位から放出された電子が、放電空間7a中の酸素や窒素をイオン化し、それらを電荷注入部3aに到達させることができ、多量のイオンで効率的に電荷を注入することができる。
放電電極加熱工程及び媒体側電圧制御工程により、選択された電荷注入部3aに接続された下部電極3と、選択された電極端子4aに接続された上部電極4が交差する位置で放電が発生し、媒体本体2の表裏で生じた電位差に従って画像表示材料2aが移動して画像が形成される。
【0108】
外部加熱手段30としては、レーザ光を照射する方式や赤外線を照射する方式を用いた。レーザ光を照射する方式としては、具体的には従来の電子写真方式と同様のレーザスキャナユニットを用いた。本実施の形態では、レーザ照射部にポリゴンミラー又はガルバノミラーを組合せて放電電極8に対してレーザ光のみをスキャンさせるものを用いたが、放電電極8に対してレーザ照射部自体をシリアル走査させるものも同様に用いることができる。また、レーザ光や赤外線を光ファイバーや集光レンズで集光して放電電極8に照射してもよい。特に多本数の光ファイバーを高密度かつ高精度に配列した光ファイバーアレイを用いた場合、同時に複数の電子放出部位に対し、レーザ光や赤外線を選択的に照射することができ、高速記録が可能となる。
尚、放電電極8の外部加熱手段30側にカーボン等を含有する黒色の塗料を塗布したり、クロムを蒸着したりして熱吸収層を形成した場合、外部加熱手段30から照射される熱を確実に吸収して放電電極8に伝達することができ、放電電極8の加熱の効率性に優れる。
また、その他の外部加熱手段30として、接触型のサーマルヘッドを使用してもよい。その場合は、ラインヘッドでもよいし、シリアルヘッドをスキャンさせてもよい。
【0109】
実施の形態3の画像形成方法は以上のように構成されているので、実施の形態1の(2),(4),(5),(7)の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)電荷注入工程が、媒体本体2の画像表示領域w外の領域で下部電極3の端部に形成された電荷注入部3aに対向して配置され、記録媒体1bに一体に形成された放電電極8により行われるので、画像表示領域w外の領域で放電電極8に放電制御電圧を印加し、外部加熱手段30により放電電極8を選択的に加熱することにより、放電電極8から電荷注入部3aに対して電子やイオンを照射して電荷を注入することができ、画像表示領域wを有効に利用することができる。
(2)下部電極3に対応する電子放出部位を有する放電電極8が、予め電荷注入部3aに対向し、スペーサ7を介して媒体本体2と一体に形成されているので、画像形成装置15bには外部加熱手段30のみを設ければよく、画像形成装置15bの小型化、機構の簡素化を図ることができ、画像形成の作業性に優れる。
(3)放電制御電圧印加工程で記録媒体1bの放電電極8に放電制御電圧が印加された状態で、放電電極加熱工程において外部加熱手段30で放電電極8の電子放出部位を選択的に加熱することにより、放電電極8から下部電極3に対して電子やイオンを照射することができ、電荷を注入することができる。
(4)放電電極加熱工程が、放電電極8に対向して配置される外部加熱手段30により行われることにより、記録媒体1bに加熱手段を設ける必要がなく、記録媒体1bの取り扱い性に優れる。
【0110】
実施の形態3の画像形成方法に用いる画像形成装置は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(1)記録媒体1bの下部電極3に接続された電荷注入部3aに対向配置された放電電極8に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部25と、放電電極8の電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段30と、上部電極4への放電電極8から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部21と、を有することにより、下部電極3に対応して放電電極8が一体に形成された専用の記録媒体1bを用いて高精細な画像を形成することができ、記録媒体1b自身に加熱手段を設ける必要がなく、記録媒体1bの取り扱い性に優れる。
【0111】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4における画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1乃至3と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図7は実施の形態4における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図である。
図7において、実施の形態4における画像形成方法に用いる記録媒体1cが、実施の形態3と異なるのは、上部電極4の端部に形成された電荷注入部4b側にも、電荷注入部3a側と同様に、スペーサ7、放電空間7a、放電電極8、放電制御電圧入力用端子9を備えている点である。
【0112】
実施の形態4における画像形成方法に用いる画像形成装置が、実施の形態3と異なるのは、画像形成装置15cが媒体側電圧制御部21の代わりに、電荷注入部4bに対向配置された放電電極8に対し、放電制御電圧入力用端子9を介して、放電制御電圧印加部25で印加される電圧と逆極性の電圧を印加する放電制御電圧印加部25aを有する点と、電荷注入部4bに対向配置された放電電極8の電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段30aを有する点である。尚、外部加熱手段30aは、外部加熱手段30と同様のものである。
また、実施の形態4における画像形成方法が、実施の形態3と異なるのは、電荷注入工程が、画像形成装置15cの放電制御電圧印加部25,25aにより放電制御電圧入力用端子9を介して2箇所の放電電極8にそれぞれ放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加工程と、画像形成装置15cの外部加熱手段30,30aにより2箇所の放電電極8の電子放出部位をそれぞれ選択的に加熱する放電電極加熱工程と、を有し、放電制御電圧印加工程で2箇所の放電電極8にそれぞれ印加される放電制御電圧の極性が互いに逆極性である点である。
【0113】
放電制御電圧印加工程により、2箇所の放電電極8に互いに逆極性の放電制御電圧が印加された状態で、放電電極加熱工程により、選択された電荷注入部3a,4bに対応する放電電極8の電子放出部位をそれぞれ加熱することにより、電荷注入部3aと放電電極8との間及び電荷注入部4bと放電電極8との間でそれぞれ放電が発生し、電荷注入部3aに対しては、負の放電制御電圧が印加された放電電極8から負イオンが照射され、電荷注入部4bに対しては、正の放電制御電圧が印加された放電電極8から正イオンが照射される。
2箇所の放電電極8に対して放電電極加熱工程を行うことにより、選択された電荷注入部3aに接続された下部電極3と、選択された電荷注入部4bに接続された上部電極4が交差する位置で放電が発生し、媒体本体2の表裏に生じた電位差に従って画像表示材料2aが移動して画像が形成される。
【0114】
実施の形態4の画像形成方法は以上のように構成されているので、実施の形態1の(2)の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)放電電極8が下部電極3及び上部電極4に接続された電荷注入部3a,4bとそれぞれ対向配置され、放電制御電圧印加工程において、下部電極3に接続された電荷注入部3aと対向配置された放電電極8に印加される放電制御電圧と、上部電極4に接続された電荷注入部4bと対向配置された放電電極8に印加される放電制御電圧が、互いに逆極性の電荷を発生させる電圧であることにより、一方の放電電極8からは正イオン、他方の放電電極8からは負イオンが照射され、下部電極3と上部電極4に逆極性の電荷を注入することができ、下部電極3と上部電極4が交差する(重なる)位置に確実に電位差を発生させて画像を形成することができる。
(2)電荷注入工程が、媒体本体2の画像表示領域w外の領域で下部電極3及び上部電極4の端部にそれぞれ形成された電荷注入部3a,4bに対向して配置され、記録媒体1cに一体に形成された放電電極8により行われるので、画像表示領域w外の領域で放電電極8に放電制御電圧を印加し、外部加熱手段30,30aにより放電電極8を選択的に加熱することにより、放電電極8から電荷注入部3a,4bに対して電子やイオンを照射して電荷を注入することができ、画像表示領域wを有効に利用することができる。
(3)下部電極3及び上部電極4に対応する電子放出部位を有する放電電極8が、予め電荷注入部3a,4bに対向して媒体本体2と一体に形成されているので、画像形成装置15cには放電電極8を加熱する外部加熱手段30のみを設ければよく、画像形成装置15cの小型化、機構の簡素化を図ることができ、画像形成の作業性に優れる。
(4)放電電極加熱工程が、下部電極3に接続された電荷注入部3aと対向配置された放電電極8と上部電極4に接続された電荷注入部4bと対向配置された放電電極8の間で同期して行われた場合、下部電極3と上部電極4が交差する位置で確実に媒体本体2の表裏に大きな電位差を発生させることができ、高品質な画像を形成することができる。
(5)放電制御電圧印加工程で記録媒体1cの放電電極8に放電制御電圧が印加された状態で、放電電極加熱工程において外部加熱手段30,30aで放電電極8の電子放出部位を選択的に加熱することにより、放電電極8から下部電極3及び上部電極4に対して電子やイオンを照射することができ、電荷を注入することができる。
(6)放電電極加熱工程が、放電電極8に対向して配置される外部加熱手段30,30aにより行われることにより、記録媒体1cに加熱手段を設ける必要がなく、記録媒体1cの取り扱い性に優れる。
【0115】
実施の形態4の画像形成方法に用いる画像形成装置は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(1)下部電極3に接続された電荷注入部3aと対向配置された放電電極8及び上部電極4に接続された電荷注入部4bと対向配置された放電電極8に互いに逆極性の電荷を発生させる放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部25,25aと、それぞれの放電電極8の電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段30,30aと、を有することにより、下部電極3及び上部電極4に対応して放電電極8が一体に形成された専用の記録媒体1cを用いて高精細な画像を形成することができ、記録媒体1cに加熱手段を設ける必要がなく、記録媒体1cの取り扱い性に優れる。
【0116】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5における画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1乃至4と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図8は実施の形態5における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図である。
図8において、実施の形態5における記録媒体1dが、実施の形態3と異なるのは、放電電極8に覆設された放電電極保護層10と、放電電極保護層10に放電電極8の電子放出部位に対応して配設された放電電極加熱部11と、放電電極加熱部11に覆設された加熱部保護層11aと、を備えている点である。
放電電極保護層10の材質としては、絶縁性及び放電電極加熱部11による加熱に耐える耐熱性を有すると共に、放電電極加熱部11が発する熱を放電電極8に伝達できる熱伝達性を有するものが好適に用いられる。具体的には、ガラスやポリイミド,芳香族ポリアミド,ポリフェニレンオキシド,ポリベンズイミダゾール,ボリフェニルキノキサリン,ポリアリレート,ポリエーテルイミド,ポリエーテルスルフォン,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルエーテルケトン,アラミド等の合成樹脂等を用いた。
また、放電電極加熱部11としては、TaSiO2、RuO2等で形成された発熱抵抗体を用いた。尚、加熱部保護層11aの材質は、放電電極保護層10と同様である。
【0117】
実施の形態5における画像形成方法に用いる画像形成装置が、実施の形態3と異なるのは、画像形成装置15dが外部加熱手段30を備えていない点であり、実施の形態5における画像形成方法が、実施の形態3と異なるのは、電荷注入工程の放電電極加熱工程が、外部加熱手段30の代わりに、媒体本体2に一体に形成された放電電極加熱部11によって行われる点である。尚、放電電極加熱部11は、画像形成装置15dの加熱部駆動部(図示せず)によって駆動され、放電電極8の任意の電子放出部位を選択的に加熱する。
【0118】
実施の形態5の画像形成方法は以上のように構成されているので、実施の形態1の(2),(4),(5),(7)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)電荷注入工程が、媒体本体2の画像表示領域w外の領域で下部電極3の端部に形成された電荷注入部3aに対向して配置され、記録媒体1dに一体に形成された放電電極8により行われるので、画像表示領域w外の領域で放電電極8に放電制御電圧を印加し、放電電極加熱部11により放電電極8を選択的に加熱することにより、放電電極8から電荷注入部3aに対して電子やイオンを照射して電荷を注入することができ、画像表示領域wを有効に利用することができる。
(2)放電電極加熱工程が、放電電極8と絶縁されて電子放出部位に対応して配設され記録媒体1dに一体に形成された放電電極加熱部11により行われるので、電子やイオンの照射位置精度を向上させることができ、高精細な画像を形成することができる。
(3)放電制御電圧印加工程で記録媒体1dの放電電極8に放電制御電圧が印加された状態で、放電電極加熱工程において放電電極加熱部11で放電電極8の電子放出部位を選択的に加熱することにより、放電電極8から下部電極3に対して電子やイオンを照射することができ、電荷を注入することができる。
(4)記録媒体1dが放電電極加熱部11を有するので、画像形成装置15dには外部加熱手段30などの加熱手段を設ける必要がなく、画像形成装置15dの小型化、機構の簡素化を図ることができ、画像形成の作業性に優れる。
【0119】
実施の形態5の画像形成方法に用いる画像形成装置は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(1)記録媒体1dの下部電極3に接続された電荷注入部3aに対向配置された放電電極3に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部25と、放電電極8に配設された放電電極加熱部11を駆動する加熱部駆動部と、上部電極4へ放電電極8から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部25と、を有することにより、下部電極3に対応して放電電極8及び放電電極加熱部11が一体に形成された専用の記録媒体1dを用いて画像を形成することができ、印字ヘッド20が不要で画像形成装置15dの小型化、機構の簡素化を図ることができ、電子やイオンの照射位置精度を向上させることができ、高精細な画像を形成することができる。
【0120】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6における画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1乃至5と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図9は実施の形態6における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図である。
図9において、実施の形態6における画像形成方法に用いる記録媒体1eが、実施の形態4と異なるのは、上部電極4の端部に形成された電荷注入部4b側にも、電荷注入部3a側と同様に、放電電極8に覆設された放電電極保護層10と、放電電極保護層10に放電電極8の電子放出部位に対応して配設された放電電極加熱部11を備えている点である。
【0121】
実施の形態6における画像形成方法に用いる画像形成装置が、実施の形態4と異なるのは、画像形成装置15eが外部加熱手段30,30aを備えていない点であり、実施の形態6における画像形成方法が、実施の形態4と異なるのは、電荷注入工程の放電電極加熱工程が、外部加熱手段30,30aの代わりに、媒体本体2に一体に形成された放電電極加熱部11によって行われる点である。
【0122】
実施の形態6の画像形成方法は以上のように構成されているので、実施の形態1の(2)及び実施の形態4の(1),(4)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)放電電極加熱工程が、放電電極8と絶縁されて電子放出部位に対応して配設され記録媒体1eに一体に形成された放電電極加熱部11により行われるので、電子やイオンの照射位置精度を向上させることができ、高精細な画像を形成することができる。
(2)記録媒体1eが放電電極加熱部11を有するので、画像形成装置1eには外部加熱手段30などの加熱手段を設ける必要がなく、画像形成装置15eの小型化、機構の簡素化を図ることができ、画像形成の作業性に優れる。
【0123】
尚、実施の形態1乃至6の画像形成方法に用いる記録媒体1乃至1eについて、媒体本体2の画像表示材料2aとしてマイクロカプセル型の電気泳動方式を用いたものを説明したが、マイクロカプセル型に限らず、水平型や垂直型の電気泳動方式も用いることができる。
また、画像表示材料2aとして電気泳動方式以外にも、複数の表示原色の内のいずれか一色を選択的に表示可能なツイストボール方式,粉体移動方式等の画像表示材料も用いることができる。
さらに、透過型のネマティック液晶やスメクティック液晶等の液晶材料を用いた液晶方式或いは白色又は黒色を選択的に表示可能なツイストボール方式,粉体移動方式等の画像表示材料も用いることができる。その場合、カラーフィルタやカラー反射層と組み合わせることにより、カラー表示を行うことができる。
尚、実施の形態1乃至6の記録媒体1〜1eでは、媒体本体2の表裏に電荷が溜まった状態で保持されるので、電界をかけた状態でのみ配列方向が変化する液晶材料を画像表示材料として用いた場合でも、無電源で画像を表示することができ、画像表示材料の選択の幅を広げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は上記課題を解決するもので、電荷の作用により画像の書き込みや消去が可能な媒体本体を挟むように媒体本体の両面に形成される下部電極及び上部電極の少なくともいずれか一方を媒体本体と離間させた記録媒体を用い、下部電極又は上部電極に電子やイオンを照射して電荷を注入することにより、注入された電荷の作用によって、媒体本体と電荷が注入された下部電極又は上部電極との間で選択的に放電を発生させることができ、下部電極又は上部電極に選択的に注入された電荷が、隣接する電荷が注入されていない下部電極や上部電極に作用することがなく、クロストークの発生を確実に防止することができ、滲みのない高品質な画像を形成することができる画像形成方法及びそれに用いる画像形成装置の提供を行って、静電現像方式の記録媒体及びそれを用いる画像形成装置の普及を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】実施の形態1における画像形成方法に用いる記録媒体を示す部分破断模式斜視図
【図2】実施の形態1における画像形成方法に用いる記録媒体の媒体本体を示す模式平面図
【図3】実施の形態1における画像形成方法に用いる記録媒体を示す模式平面図
【図4】実施の形態1における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図
【図5】実施の形態2における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図
【図6】実施の形態3における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図
【図7】実施の形態4における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図
【図8】実施の形態5における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図
【図9】実施の形態6における画像形成方法に用いる画像形成装置を示す要部模式断面図
【符号の説明】
【0126】
1,1a,1b,1c,1d,1e 記録媒体
2 媒体本体
2a 画像表示材料
2b カラーフィルタ
3 下部電極
3a,4b 電荷注入部
3b 抵抗層
3A スペーサ
3B 放電空間
4 上部電極
4a 電極端子
5a,5b 電極保護層
6 媒体側電圧制御用IC
7 スペーサ
7a 放電空間
8 放電電極
9 放電制御電圧入力用端子
10 放電電極保護層
11 放電電極加熱部
11a 加熱部保護層
15,15a,15b,15c,15d,15e 画像形成装置
16 媒体載置部
20,20a 印字ヘッド
21 媒体側電圧制御部
25,25a 放電制御電圧印加部
30,30a 外部加熱手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体本体の下面及び上面にそれぞれ所定のパターンで形成された下部電極及び上部電極と、前記下部電極又は前記上部電極の少なくともいずれか一方と,前記媒体本体と,の間に配設され前記媒体本体と前記下部電極又は前記上部電極とを離間させたスペーサと、を備えた記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、前記下部電極又は前記上部電極の少なくともいずれか一方に電子やイオンを照射して電荷を注入する電荷注入工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記下部電極又は前記上部電極に電子やイオンを照射して電荷を注入する前記電荷注入工程と、前記上部電極又は前記下部電極への接地若しくは前記上部電極又は前記下部電極に前記電荷注入工程で前記下部電極又は前記上部電極に注入された電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御工程と、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記電荷注入工程において、前記下部電極及び前記上部電極にそれぞれ逆極性の電荷を注入することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記電荷注入工程が、電子放出部位を有する放電電極と前記放電電極を選択的に加熱する加熱手段とを備えた加熱放電型印字ヘッドにより行われることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記電荷注入工程が、前記加熱放電型印字ヘッドの前記放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加工程と、前記加熱手段により前記放電電極の前記電子放出部位を選択的に加熱する放電電極加熱工程と、を有することを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記放電電極加熱工程と前記媒体側電圧制御工程が、同期して行われることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記加熱放電型印字ヘッドが前記下部電極及び前記上部電極とそれぞれ対向配置され、前記放電制御電圧印加工程において、前記下部電極に対向配置された前記加熱放電型印字ヘッドの前記放電電極に印加される前記放電制御電圧と、前記上部電極に対向配置された前記加熱放電型印字ヘッドの前記放電電極に印加される前記放電制御電圧が、互いに逆極性の電荷を発生させる電圧であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記放電電極加熱工程が、前記下部電極に対向配置された前記加熱放電型印字ヘッドと前記上部電極に対向配置された前記加熱放電型印字ヘッドの間で同期して行われることを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記電荷注入工程が、前記媒体本体の画像表示領域外の領域で前記下部電極又は前記上部電極に形成された電荷注入部に対して行われることを特徴とする請求項1乃至8の内いずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記電荷注入工程が、前記媒体本体の画像表示領域外の領域で前記下部電極又は前記上部電極の少なくともいずれか一方に形成された電荷注入部に対向して配置され、前記記録媒体に一体に形成された放電電極により行われることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記電荷注入工程が、前記媒体本体の前記放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加工程と、加熱手段により前記放電電極の前記下部電極又は前記上部電極に対応する電子放出部位を選択的に加熱する放電電極加熱工程と、を有することを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記放電電極加熱工程と前記媒体側電圧制御工程が、同期して行われることを特徴とする請求項11に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記放電電極が前記下部電極及び前記上部電極に接続された電荷注入部とそれぞれ対向配置され、前記放電制御電圧印加工程で前記下部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極に印加される前記放電制御電圧と、前記上部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極に印加される前記放電制御電圧が、互いに逆極性の電荷を発生させる電圧であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記放電電極加熱工程が、前記下部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極と前記上部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極の間で同期して行われることを特徴とする請求項13に記載の画像形成方法。
【請求項15】
前記放電電極加熱工程に用いる加熱手段が、前記放電電極と絶縁されて前記電子放出部位に対応して配設され前記記録媒体に一体に形成された放電電極加熱部であることを特徴とする請求項11乃至14の内いずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項16】
前記放電電極加熱工程に用いる加熱手段が、前記放電電極に対向して配置された外部加熱手段であることを特徴とする請求項11乃至14の内いずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項17】
前記電荷注入工程により注入する電荷の極性を切り替える電荷切り替え工程を有することを特徴とする請求項1乃至16の内いずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項18】
画像の1ライン中に印字する画素数に応じて前記電荷注入工程により注入する電荷の量を変化させることを特徴とする請求項1乃至17の内いずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項19】
画像データの濃度に応じて前記電荷注入工程により注入する電荷の量を変化させることを特徴とする請求項1乃至17の内いずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項20】
前記記録媒体の画像を消去する初期化工程を有することを特徴とする請求項1乃至19の内いずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項21】
請求項2に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極又は前記上部電極と対向配置され前記下部電極又は前記上部電極に電子やイオンを照射して電荷を注入する印字ヘッドと、前記上部電極又は前記下部電極への接地又は前記印字ヘッドから注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項22】
請求項3に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極及び前記上部電極とそれぞれ対向配置され前記下部電極及び前記上部電極に互いに逆極性の電荷を注入する印字ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項23】
前記印字ヘッドが、電子放出部位を有する放電電極と、前記放電電極の前記電子放出部位を選択的に加熱する加熱手段と、を備えた加熱放電型印字ヘッドであることを特徴とする請求項21又は22に記載の画像形成装置。
【請求項24】
前記印字ヘッドが、前記媒体本体の画像表示領域外の領域で前記下部電極又は前記上部電極に形成された電荷注入部と対向配置されていることを特徴とする請求項21乃至23の内いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項25】
請求項15に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極又は前記上部電極に接続された電荷注入部に対向配置された前記放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、前記放電電極に配設された前記放電電極加熱部を駆動する加熱部駆動部と、前記上部電極又は前記下部電極への接地又は前記放電電極から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項26】
請求項15に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極及び前記上部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極に互いに逆極性の電荷を発生させる放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、それぞれの前記放電電極に配設された前記放電電極加熱部を駆動する加熱部駆動部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項27】
請求項16に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極又は前記上部電極に接続された電荷注入部に対向配置された前記放電電極に放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、前記放電電極の前記電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段と、前記上部電極又は前記下部電極への接地又は前記放電電極から注入される電荷と逆極性の電圧印加を行う媒体側電圧制御部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項28】
請求項16に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極及び前記上部電極に接続された前記電荷注入部と対向配置された前記放電電極に互いに逆極性の電荷を発生させる放電制御電圧を印加する放電制御電圧印加部と、それぞれの前記放電電極の前記電子放出部位を選択的に加熱する外部加熱手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項29】
前記媒体側電圧制御部が、前記上部電極又は前記下部電極に接触する媒体側電圧印加部と、前記媒体側電圧印加部を走査して前記上部電極又は前記下部電極に順次、電圧印加を行う走査部と、を備えたことを特徴とする請求項21,25,27の内いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項30】
請求項20に記載の画像形成方法に用いる画像形成装置であって、前記記録媒体の前記下部電極又は前記上部電極の少なくともいずれか一方に一様に電荷を注入して画像を消去する初期化用ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−165075(P2008−165075A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356587(P2006−356587)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【特許番号】特許第4117011号(P4117011)
【特許公報発行日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(302004366)有限会社 福岡テクノ研工業 (16)
【Fターム(参考)】