説明

画像形成方法及び印画物

【課題】インクジェット法により、記録媒体上に画像を形成する場合に、長期間のブロッキング耐久性と、耐指紋付着性に優れた画像形成方法を提供する。
【解決手段】記録媒体上にインク組成物をインクジェット法で付与するインク付与工程と、前記インク組成物を付与した記録媒体上に、有機粒子分散液を付与する分散液付与工程とを含み、前記分散液が水と、F原子およびSi原子の少なくとも1種を含む界面活性剤と、体積平均粒子径15μm以上60μm以下かつガラス転移温度Tgが100℃以上の有機粒子とを含むことを特徴とする画像形成方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成方法及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷等の商業用印刷機により印刷された印刷物は、排紙部で大量かつ高速に積み重ねられていく。そうすると、印刷物に印刷(記録)されたインク(画像)が、積み重ねられた別の印刷物と密着してしまい、それらの密着した印刷物を引き離すと、インクが印刷物から剥がれて別の印刷物に付着する現象(ブロッキング)が生じることがある。このブロッキングを抑制するため、オフセット印刷では、印画後に、ブロッキング抑制剤としてデンプン等の粉末(パウダー)を散布し印刷物表面に付着させることにより、インク同士の貼り付きを防止している。
特許文献1には、粉末を印刷物面に少量散布する方法が提案されている。
【0003】
一方、特許文献2には、水系溶媒と界面活性剤を含む媒体中に分散させた微粒子を付与して、皮膜化させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−130621号公報
【特許文献2】特開2004−174835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、印刷された膜(画像)の耐擦性について着目されてはいるものの、印刷された画像を手で触ったときの指紋の付着のしにくさである耐指紋付着性については何ら検討されていない。
【0006】
また、特許文献2では、長期の印刷の積み重ね時に印刷物同士が密着してインクが他の印刷物の裏面に付着する現象である「長期のブロッキング耐久性」に関しては何ら検討されていない。また、耐指紋付着性に関しては何ら検討されておらず、まだ改良の余地がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記の事情に照らし成されたものであり、長期のブロッキング耐久性と、耐指紋付着性に優れた画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
項1.記録媒体上にインク組成物をインクジェット法で付与するインク付与工程と、
前記インク組成物を付与した記録媒体上に、有機粒子分散液を付与する分散液付与工程とを含み、前記分散液が水と、F原子およびSi原子の少なくとも1種を含む界面活性剤と、体積平均粒子径15μm以上60μm以下かつガラス転移温度Tgが100℃以上の有機粒子とを含むことを特徴とする画像形成方法。
項2.前記有機粒子の体積平均粒子径が、20μm以上40μm以下であることを特徴とする項1に記載の画像形成方法。
項3.前記有機粒子の水に対する溶解度が5質量%以下であることを特徴とする項1又は2に記載の画像形成方法。
項4.前記界面活性剤がF原子を含むノニオン系の界面活性剤であることを特徴とする項1〜項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
項5.前記F原子およびSi原子の少なくとも1種を含む界面活性剤のうち、Si原子を少なくとも含む界面活性剤がポリシロキサン骨格を有することを特徴とする項1〜項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
項6.前記有機粒子が、ポリメチル(メタ)アクリレートであることを特徴とする項1〜項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
項7.ポリマーを含むポリマー含有組成物を画像上に付与するポリマー付与工程と、
前記ポリマーを皮膜化する皮膜化工程とをさらに含む
項1〜項6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
項8.前記分散液が、更に水溶性有機溶媒を含むことを特徴とする項1〜項7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
項9.前記水溶性有機溶媒が、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒又はニトリル系溶媒のいずれかであることを特徴とする項1〜項8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
項10.項1〜項9のいずれかの画像形成方法によって製造される、印画物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクジェット法により記録媒体上に画像を記録する際に、印画物の長期間のブロッキング抑制が良好で、さらに指紋の付着が抑制された印画物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の画像形成方法は、記録媒体上にインク組成物をインクジェット法で付与するインク付与工程と、前記インク組成物を付与した記録媒体上に、有機粒子分散液を付与する分散液付与工程とを含み、前記分散液が水と、F原子およびSi原子の少なくとも1種を含む界面活性剤と、体積平均粒子径15μm以上60μm以下かつガラス転移温度Tgが100℃以上の有機粒子とを含むことを特徴とする。以下本発明の詳細を説明する。
【0011】
本発明の画像形成方法は、後述の分散液付与工程において、有機粒子分散液を付与する。まず、本発明で用いる有機粒子分散液について説明する。
<有機粒子分散液>
本発明の有機粒子分散液は、水と、F原子およびSi原子の少なくとも1種を含む界面活性剤と、体積平均粒子径15μm以上60μm以下かつガラス転移温度Tgが100℃以上の有機粒子とを含む。
【0012】
本発明において、有機粒子分散液とは、後述する有機粒子を後述する水性媒体を含む溶液中に分散した液体のことを指す。また、ここでいう分散とは、有機粒子が他の媒体中に細粒として浮遊していることを指す。
【0013】
(有機粒子)
本発明の分散液は、体積平均粒子径15μm以上60μm以下かつガラス転移温度Tg100℃以上の有機粒子を有する。
【0014】
本発明の有機粒子は、水難溶性及び水不溶性のいずれであってもよいが、水不溶性のものであることが好ましい。具体的には、水100質量部(25℃)に対する溶解量が、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
【0015】
本発明の有機粒子は、15μm〜60μmの体積平均粒子径を有する。体積平均粒子径は、好ましくは、15μm以上40μm以下であり、20μm以上40μm以下とすることがより好ましい。本発明における体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計マイクロトラックMT3000II(日機装(株)製)によって測定される値である。測定は、20質量%の粒子水分散物100μlに対してイオン交換水10mlを加えて測定用サンプル液を調製し、これを25℃に調温して行なえばよい。
本発明の有機粒子は、実質的に皮膜化しないことが好ましい。
【0016】
本発明の有機粒子のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上である。有機粒子を実質的に皮膜化させないために、Tgの上限値は高いほうが好ましい。具体的には、100℃以上400℃以下であり、120℃以上400℃以下がより好ましく、130℃以上400℃以下が最も好ましい。Tgが100℃以上の有機粒子を用いることは、耐指紋付着性の観点で好ましい。このメカニズムは以下のように推察される。Tgが100℃以上の有機粒子を用いることで、有機粒子が実質的に皮膜化しないため、長期間のブロッキング耐久性が向上されているものであると思われる。
【0017】
ここで、本発明において微粒子のガラス転移点温度(Tg)は、実測によって得られる測定Tgを適用する。具体的には、測定Tgは、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて通常の測定条件で測定された値を意味する。
【0018】
ガラス転移温度Tgはポリマー粒子固形分0.5gになる量をとりわけ、Tgを測定する。測定条件は、サンプル量5mgをアルミパンに密閉し、窒素雰囲気下、以下の温度プロファイルで2回目の昇温時の測定データのDSCのピークトップの値をTgとする。
30℃→−50℃ (50℃/分で冷却)
−50℃→140℃ (20℃/分で昇温)
140℃→−50℃ (50℃/分で冷却)
−50℃→140℃ (20℃/分で昇温)
【0019】
但し、ポリマーの分解等により測定が困難な場合は、下記計算式で算出される計算Tgを適用する。
計算Tgは下記の式(S)で計算する。
1/Tg=Σ(X/Tg) (S)
ここで、計算対象となるポリマーはi=1からnまでのn種のモノマー成分が共重合しているとする。Xはi番目のモノマーの重量分率(ΣX=1)、Tgはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tg)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用する。
【0020】
有機粒子としては、既に分散体として市販されているものを用いてもよい。分散体として市販されている有機粒子を用いる場合は、凍結乾燥等の公知の方法で一度粉体化して用いることができる。
【0021】
本発明における体積平均粒子径15μm以上60μm以下かつガラス転移温度Tgが100℃以上の有機粒子の具体例としては、限定的ではないが、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレン等が挙げられる。これらの中でも、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリスチレンが好ましく、ポリメチル(メタ)アクリレートが更に好ましい。なお、ポリメチル(メタ)アクリレートとは、ポリメチルアクリレート及びポリメチルメタアクリレート(PMMA)のうち少なくとも1種をいう。
【0022】
本発明におけるポリメチル(メタ)アクリレート粒子の具体例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート(Tg>100℃)、MX−1500(総研化学社製、15μm、Tg>140℃)、MX−2000(総研化学社製、20μm、Tg>140℃)、MX−3000(総研化学社製、30μm、Tg>140℃)、MX−1500(総研化学社製、架橋PMMA15μm、Tg>140℃)、MX−2000(総研化学社製、架橋PMMA20μm、Tg>140℃)、MX−3000(総研化学社製、架橋PMMA30μm、Tg>140℃)、MR−20G(総研化学社製、架橋PMMA20μm、Tg>140℃)、MR−30G(総研化学社製、架橋PMMA30μm、Tg>140℃)、MR−60G(総研化学社製、架橋PMMA60μm、Tg>140℃)、M(松本油脂社製、非架橋PMMA15〜20μm、Tg約105℃)、MHB―R(松本油脂社製、架橋PMMA15〜25μm)、M−310(松本油脂社製、架橋PMMA15〜20μm)、M−312(松本油脂社製、架橋PMMA15〜20μm)、スペミックスXC−1A(住友化学、35μm、架橋PMMA、Tg>140℃)、MB−20(松本油脂、20μm、PMMA、Tg約105℃)等が挙げられる。
より好ましくは、MX−1500(総研化学社製、架橋PMMA15μm、Tg>140℃)、MX−2000(総研化学社製、架橋PMMA20μm)、MX−3000(総研化学社製、架橋PMMA30μm)、MR−20G(総研化学社製、架橋PMMA20μm)、MR−30G(総研化学社製、架橋PMMA30μm)、MHB―R(松本油脂社製、架橋PMMA15〜25μm)、M−310(松本油脂社製、架橋PMMA15〜20μm)、M−312(松本油脂社製、架橋PMMA15〜20μm)、スペミックスXC−1A(住友化学、35μm、架橋PMMA、Tg>140℃)、MX−1500(総研化学社製、架橋PMMA15μm、Tg>140℃)、MB−20(松本油脂、20μm、PMMA、Tg約105℃)であり、更に好ましくはMX−2000(総研化学社製、架橋PMMA20μm)、MX−3000(総研化学社製、架橋PMMA30μm)、MR−20G(総研化学社製、架橋PMMA20μm)、MR−30G(総研化学社製、架橋PMMA30μm)、スペミックスXC−1A(住友化学、35μm、架橋PMMA、Tg>140℃)、MX−1500(総研化学社製、架橋PMMA15μm、Tg>140℃)、MB−20(松本油脂、20μm、PMMA、Tg約105℃)である。
【0023】
本発明におけるポリスチレン粒子の具体例としては、限定的ではないが、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体(Tg>100℃)、ポリスチレン(Tg>100℃)、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体(Tg>100℃)、SGP−70C(総研化学社製、ポリスチレン20μm、Tg>140)、SGP−150C(総研化学社製、55μm、Tg>140℃)等が挙げられる。好ましくは、SGP−70C(総研化学社製、ポリスチレン20μm)、SGP−150C(総研化学社製、55μm、Tg>140℃)である。
【0024】
本発明におけるポリエチレン粒子の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(Tg>125℃)等が挙げられる。
【0025】
本発明におけるポリメチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエステル粒子およびポリエチレン粒子以外有機粒子の具体例としては、限定的ではないが、ポリアクリロニトリル(Tg>104℃)、ポリカーボネート(Tg>150℃)等が挙げられる。
【0026】
有機粒子分散液に含有させる有機粒子の含有量は、有機粒子分散液全量に対して、1〜60質量%が好ましい。より好ましくは10〜55質量%であり、更に好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
【0027】
本発明の有機粒子は、架橋密度が0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜40質量%がより好ましい。架橋密度は公知の方法で測定することができる。
【0028】
(水)
本発明の有機粒子分散液は、水を含有し、有機粒子を水に分散させた状態で構成される。
【0029】
分散液中に含有させる水の含有量は、限定的ではないが、分散液全量に対して、1質量%〜80質量%含まれることが好ましく、10質量%〜70質量%含まれることがより好ましく、15質量%〜60質量%含まれることが特に好ましい。
【0030】
(水溶性有機溶媒)
本発明における分散液は、水溶性を有する有機溶媒を含んでいてもよい。
【0031】
水溶性とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性の媒体中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであればよい。具体的には、25℃で水に対する溶解度が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0032】
水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、ニトリル系溶媒等が挙げられる。形成した画像に適度な撥水性を持たせる観点から、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒を用いることが好ましく、さらに好ましくは、アルコール系溶媒、アミド系溶媒が挙げられ、特に好ましくは、アルコール系溶媒が挙げられる。
【0033】
アルコール系溶媒としては、限定的ではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルグリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、乳酸エチル、乳酸メチル、トリメチロールプロパン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
アルコール系溶媒でも好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノエチルグリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、乳酸エチル、乳酸メチル、トリメチロールプロパン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2−ヘキサンジオールが挙げられ、さらに好ましくは、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノエチルグリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、1,2−ヘキサンジオールが挙げられる。
【0034】
アミド系溶媒としては、限定的ではないが、例えば、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミドなどが挙げられるが、より好ましくは、2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリノンが挙げられ、さらに好ましくは、2−ピロリドンが挙げられる。
【0035】
スルホン系溶媒としては、限定的ではないが、例えば、スルホラン、ジメチルスルホンなどが挙げられ、好ましくはスルホランである。
【0036】
ニトリル系溶媒としては、限定的ではないが、例えば、アセトニトリルが挙げられる。
【0037】
上記水溶性有機溶媒は、水溶性有機溶媒を単体で用いても、水溶性有機溶媒を二つ以上併用してもよい。
【0038】
水溶性有機溶媒を併用する場合、2種以上のアルコール系溶媒の組合せ、アミド系とアルコール系溶媒の組み合わせ、スルホン系溶媒とアルコール系溶媒の組み合わせ、ニトリル系溶媒とアルコール系溶媒の組み合わせなどが挙げられるが、2種以上のアルコール系溶媒の組合せ、ニトリル系溶媒とアルコール系溶媒の組み合わせが好ましく、2種以上のアルコール系溶媒の組合せの組合せがさらに好ましい。
有機粒子分散液中の水溶性の有機溶媒の含有量は、0.1〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは、1〜75質量%であり、さらに好ましくは、5〜70質量%である。
【0039】
(F原子およびSi原子の少なくとも1種を含む界面活性剤)
本発明の分散液は、F原子およびSi原子の少なくとも1種を含む界面活性剤を含む。F原子およびSi原子の少なくとも1種を含む界面活性剤とは、F原子を含む界面活性剤、Si原子を含む界面活性剤、またはF原子とSi原子の両方を含む界面活性剤のいずれかを指す。
【0040】
本発明においては、Si原子を含む界面活性剤、F原子を含む界面活性剤又はF原子とSi原子の両方を含む界面活性剤は、いずれも好適に用いられるが、F原子を含む界面活性剤を使用することが好ましい。それぞれ1種で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0041】
以下、本発明におけるSi原子を含む界面活性剤、F原子を含む界面活性剤およびF原子とSi原子の両方を含む界面活性剤について述べる。
【0042】
−Si原子を含む界面活性剤−
本発明におけるSi原子を含む界面活性剤とは、親水性基及び疎水性基を有する通常の界面活性剤において、主鎖又は側鎖の構造がSi原子を含む界面活性剤であれば限定的ではない。
【0043】
本発明のSi原子を含む界面活性剤は、ポリシロキサン骨格(−[Si(CHO]−で表される骨格、は1,000〜100,000の整数)を有することが好ましく、側鎖又は末端が変性された変性ポリシロキサンであることが更に好ましい。ここでいう末端とは、両末端又は片末端のことを指す。ここでいう変性とは、アミノ変性、エポキシ変性、カルビノール変性、カルボキシル変性又はポリエーテル変性等が挙げられ、ポリエーテル変性が好ましい。
【0044】
ポリシロキサン骨格を有する重合体の側鎖又は末端基がアミノ基で変性されているSi原子を含む界面活性剤としては、限定的ではないが、具体的には、KF−868(以下、信越シリコーン社製)、KF−865、KF−864、KF−859、KF−393、KF−860、KF−880、KF−8004、KF−8002、KF−8005、KF−862、X−223820W、KF−869、KF−861、X−22−3939A、KF−877、PAM−E、KF−8010、X−22−161A、X−22−161B,KF−8012、KF−8008、X−22−1660B−3、KF−857、KF−8001、KF−862、X−22−9192又はKF−868等が挙げられる。
【0045】
ポリシロキサン骨格を有する重合体の側鎖又は末端基がエポキシ基で変性されているSi原子を含む界面活性剤としては、限定的ではないが、具体的には、X−22−343(以下、信越シリコーン社製)、KF−101、KF−1001、X−22−2000、X−22−2046、KF−102、X−22−4741、KF−1002、X−22−3000T、X−22―163、KF−105、X−22−163A、X−22−163B,X−22−163C、X−22―169AS、X−22−169B、X−22−173DX、X−22−9002等が挙げられる。
【0046】
ポリシロキサン骨格を有する重合体の側鎖又は末端基がカルビノール基で変性されているSi原子を含む界面活性剤としては、限定的ではないが、具体的には、X−22−4039(以下、信越シリコーン社製)、X−22−4015、X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003、X−22−170BX、X−22−170DX等が挙げられる。
【0047】
ポリシロキサン骨格を有する重合体の側鎖又は末端基がカルボキシル基で変性されているSi原子を含む界面活性剤としては、限定的ではないが、具体的には、X−22−3701E、X−22−162C又はX−22−3710等が挙げられる。
【0048】
ポリシロキサン骨格を有する重合体の側鎖又は末端基がポリエーテル基で変性されているSi原子を含む界面活性剤としては、限定的ではないが、具体的には、X−22−4952、X−22−4272,X−22−6266、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、X−22−4515、KF−6011,KF−6012、KF−6015、KF−6017、X−22−2516又はKF−6004等が挙げられる。
【0049】
本発明のSi原子を含む界面活性剤は、分子量が100以上5000未満のものが好ましく、100以上3000未満のものが更に好ましく、100以上2000未満のものが最も好ましい。
【0050】
−F原子を含む界面活性剤−
本発明のF原子を含む界面活性剤とは、親水性基及び疎水性基を有する界面活性剤において、該疎水性基中の炭素原子(C)に結合した水素原子(H)の一部又は全部をフッ素原子(F)で置換したものであれば限定的ではない。
【0051】
本発明のF原子を含む界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、ベタイン系のものが挙げられる。画像の撥水性を十分に得るために、ノニオン系がより好ましい。
【0052】
本発明のF原子を含む界面活性剤の具体例としては、限定的ではないが、メガファックF443(DIC社製)、S−141(セイミケミカル社製)、S−145(セイミケミカル社製)、S−393(セイミケミカル社製)、ゾニールFS300(デュポン社製)、F−444(DIC社製)、TF−2066(DIC社製)、F−430(DIC社製)、F−472SF(DIC社製)、F−477(DIC社製)、F−552(DIC社製)、F−553(DIC社製)、F−554(DIC社製)、F−555(DIC社製)、R−94(DIC社製)、RS−72−K(DIC社製)、RS−75(DIC社製)、TF−1366(DIC社製)、TF−1367(DIC社製)、TF−1437(DIC社製)、TF−1535(DIC社製)、TF−1537(DIC社製)、FC−430(3M社製)、FC−4432(3M社製)、FC4430(3M社製)、フタージェント100(ネオス社製)、フタージェント250(ネオス社製)、フタージェント251(ネオス社製)、フタージェント222F(ネオス社製)、フタージェント208G(ネオス社製)、ダイフロイル♯1(ダイキン社製)、ダイフロイル♯3(ダイキン社製)、ダイフロイル♯10(ダイキン社製)、ダイフロイル♯20(ダイキン社製)、ダイフロイル♯50(ダイキン社製)、ダイフロイル♯100(ダイキン社製)、デムナムS−20(ダイキン社製)、デムナムS−65(ダイキン社製)、デムナムS−200(ダイキン社製)などが挙げられる。
【0053】
さらに、動的な界面活性能を発揮するという観点で、分子量が100以上5000未満のものが好ましく、より好ましくは、分子量が100以上2000未満である。
【0054】
−F原子とSi原子の両方を含む界面活性剤−
本発明のF原子とSi原子の両方を含む界面活性剤とは、親水性基及び疎水性基を有する通常の界面活性剤において、F原子とSi原子を両方含む界面活性剤であれば限定的ではない。具体的には、X−22−822(信越シリコーン社製)、FL―100−100cs(信越シリコーン社製)、FL−100−450cs(信越シリコーン社製)等が挙げられる。
【0055】
本発明のF原子またはSi原子の少なくともいずれか1つを含む界面活性剤の含有量は、有機粒子分散液全量に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%であり、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
【0056】
本発明の界面活性剤は、Si原子を含む界面活性剤又はF原子を含む界面活性剤以外の界面活性剤を含んでいてもよいが、界面活性剤の全量に対して、Si原子を含む界面活性剤又はF原子を含む界面活性剤の含有量が40質量%〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは、60質量%〜90質量%である。
【0057】
(その他の添加剤)
本発明の分散液は、上記成分以外にその他の添加剤を用いて構成することができる。その他の添加剤としては、例えば、分散剤、乳化剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0058】
本発明の分散液は、上記成分を混合し、公知又は市販の分散機構を用いて分散することができる。例えば乳化装置で混合させることで得ることができる。
【0059】
次に、本発明の画像形成方法に含まれる各工程の詳細を説明する。
<インク付与工程>
本発明のインク付与工程は、インクジェット法により記録媒体上にインク組成物を付与する工程である。
【0060】
(インクジェット法)
インクジェット法は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット法、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0061】
インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0062】
インクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。本発明のインクジェット記録方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度及び画像の耐擦過性の向上効果が大きい。
【0063】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、0.5〜15pl(ピコリットル)が好ましく、1〜12plがより好ましく、更に好ましくは2〜10plである。
【0064】
(記録媒体)
本発明のインク付与工程は、記録媒体上にインク組成物を付与する。
記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。
【0065】
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しおらい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、シルバーダイヤ、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
【0066】
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。これらは、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙であることがより好ましい。
【0067】
(インク組成物)
本発明で使用するインク組成物は、色材及び水を含有するものであれば限定的でなく、公知又は市販のものを使用することができる。
【0068】
(色材)
色材としては、公知の染料、顔料等を特に制限なく用いることができる。中でも、インク着色性の観点から、水に殆ど不溶であるか、又は難溶である色材であることが好ましい。具体的には例えば、各種顔料、分散染料、油溶性染料、J会合体を形成する色素等を挙げることができ、顔料であることがより好ましい。本発明においては、水不溶性の顔料自体または分散剤で表面処理された顔料自体を色材とすることができる。
【0069】
本発明における顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機及び無機顔料を用いることができる。例えば、アゾレーキ、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、酸化チタン、酸化鉄系、カーボンブラック系等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能であれば、いずれも使用できる。更に、前記顔料を界面活性剤や高分子分散剤等で表面処理したものや、グラフトカーボン等も勿論使用可能である。前記顔料のうち、特に、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、カーボンブラック系顔料を用いることが好ましい。
【0070】
本発明に用いられる有機顔料の具体的な例を以下に示す。以下の色材は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
オレンジ又はイエロー用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメント・オレンジ31、C.I.ピグメント・オレンジ43、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー13、C.I.ピグメント・イエロー14、C.I.ピグメント・イエロー15、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・イエロー93、C.I.ピグメント・イエロー94、C.I.ピグメント・イエロー128、C.I.ピグメント・イエロー138、C.I.ピグメント・イエロー151、C.I.ピグメント・イエロー155、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー185等が挙げられる。
【0071】
マゼンタまたはレッド用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメント・レッド2、C.I.ピグメント・レッド3、C.I.ピグメント・レッド5、C.I.ピグメント・レッド6、C.I.ピグメント・レッド7、C.I.ピグメント・レッド15、C.I.ピグメント・レッド16、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド53:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド123、C.I.ピグメント・レッド139、C.I.ピグメント・レッド144、C.I.ピグメント・レッド149、C.I.ピグメント・レッド166、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド178、C.I.ピグメント・レッド222C.I.ピグメント・バイオレット19等が挙げられる。
【0072】
グリーンまたはシアン用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメント・ブルー15、C.I.ピグメント・ブルー15:2、C.I.ピグメント・ブルー15:3、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー16、C.I.ピグメント・ブルー60、C.I.ピグメント・グリーン7、米国特許4311775号明細書に記載のシロキサン架橋アルミニウムフタロシアニン等が挙げられる。
【0073】
ブラック用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメント・ブラック1、C.I.ピグメント・ブラック6、C.I.ピグメント・ブラック7等が挙げられる。
【0074】
本発明における着色材が顔料である場合、分散剤によって水系溶媒に分散されていてもよい。分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性の分散剤でも非水溶性の分散剤の何れでもよい。
【0075】
本発明におけるポリマー分散剤のうち水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物を用いることができる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子などが挙げられる。
【0076】
また、天然物を原料として化学修飾した親水性高分子化合物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子などが挙げられる。
【0077】
また、合成系の水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物等が挙げられる。
【0078】
ポリマー分散剤のうち非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部の両方を有するポリマーを用いることができる。例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
ポリマー分散剤の酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、100以下mgKOH/g以下が好ましい。更には、酸価は、25〜100mgKOH/gがより好ましく、25〜100が更に好ましく、30〜90が特に好ましい。
【0079】
色材の平均粒子径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。平均粒子径は、200nm以下であると色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好になり、10nm以上であると耐光性が良好になる。また、色材の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材を2種以上混合して使用してもよい。
【0080】
色材のインク中における含有量としては、画像濃度の観点から、インクに対して、1〜25質量%であることが好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
【0081】
(ポリマー微粒子)
本発明のインクは必要に応じてポリマー微粒子を含有することが好ましい。これにより、画像の耐擦過性等をより向上させることができる。
【0082】
本発明におけるポリマー微粒子としては、例えば、熱可塑性、熱硬化性あるいは変性を有するアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、又はフッ素系の樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等のポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等のアミノ系材料、あるいはそれらの共重合体又は混合物などのアニオン性基を有する樹脂の粒子が挙げられる。これらのうち、アニオン性のアクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(アニオン性基含有アクリルモノマー)及び必要に応じて該アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。前記アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びホスホン基からなる群より選ばれる1以上を有するアクリルモノマーが挙げられ、中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等)が好ましく、特にはアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。ポリマー微粒子は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0083】
本発明におけるポリマー微粒子の分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましい。上記重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(ポリスチレン換算)で測定される。
【0084】
ポリマー微粒子の平均粒子径は、体積平均粒子径で10〜400nmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、10〜100nmの範囲が更に好ましく、特に好ましくは10〜50nmの範囲である。この範囲とすることにより、製造適性、保存安定性当が向上する。ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定することにより求められるものである。
【0085】
ポリマー微粒子のインク組成物中における含有量としては、画像の光沢性などの観点から、インクに対して、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、更に好ましくは3〜10%である。
【0086】
(水)
本発明のインク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは30〜80質量%であり、更に好ましくは50〜70質量%である。
【0087】
(有機溶媒)
本発明のインク組成物は、必要に応じて上記水に加えて水溶性有機溶媒を含有していてもよい。このような水溶性有機溶媒としては、吐出性の観点から、アルキレンオキシアルコールが好ましい。更にはアルキレンオキシアルコールの少なくとも1種とアルキレンオキシエーテルの少なくとも1種とを含む2種以上の親水性有機溶媒を含有する場合が特に好ましい。
【0088】
前記アルキレンオキシアルコールとしては、好ましくは、プロピレンオキシアルコールである。プロピレンオキシアルコールとしては、例えば、サンニックスGP250、サンニックスGP400(三洋化成工業(株)製)が挙げられる。
【0089】
前記アルキレンオキシアルキルエーテルとしては、好ましくは、アルキル部位の炭素数が1〜4のエチレンオキシアルキルエーテル又はアルキル部位の炭素数が1〜4のプロピレンオキシアルキルエーテルである。アルキレンオキシアルキルエーテルとしては、例えば、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルなどが挙げられる。
また、上記の親水性有機溶媒に加え、必要に応じて、乾燥防止、浸透促進、粘度調整などを図る目的で、他の有機溶媒を含有してもよい。
【0090】
(その他の添加剤)
本発明のインク組成物は、上記の成分に加え、必要に応じて、その他の添加剤を含むことができる。その他の添加剤としては、例えば、活性エネルギー線により重合する重合性化合物、重合開始剤、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、ワックス、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インクを調製後に直接添加してもよく、インクの調製時に添加してもよい。
【0091】
<分散液付与工程>
本発明の分散液付与工程は、既述のインク組成物を付与した記録媒体の上に、前記の有機粒子分散液を付与する工程である。
【0092】
前記有機粒子分散液は、少なくともインク付与工程により記録された画像上に付与されていればよく、前記有機粒子分散液を、記録媒体全体に付与してもよい。
【0093】
前記有機粒子分散液を画像上に付与する方法としては、特に制限されない。例えば、前記有機粒子分散液を噴霧により付与する方法、前記有機粒子分散液を供給したローラ等の部材を介して付与する方法を採用することができる。
前記有機粒子分散液のローラ等の部材への供給は、前記有機粒子分散液を直接又は間接的にローラ等の部材に付着させればよい。例えば、前記有機粒子分散液を含浸させた布材(ウェブ部材)をローラ表面に接触させる方法、前記有機粒子分散液をローラ表面に噴霧する方法、前記有機粒子分散液をロールコーターでローラ表面に塗布する方法等が挙げられる。
【0094】
前記有機粒子分散液の付与量は、限定的でないが、前記有機粒子分散液に含まれる既述の有機粒子の記録媒体への付与量として、0.1〜1000個/mが好ましく、1〜500個/mがより好ましい。前記有機粒子の付与量は、前記有機粒子分散液中に分散させる前記有機粒子の量、前記ローラへの前記有機粒子分散液の供給量などにより適宜調整できる。前記有機粒子分散液を含浸させた布材をローラ表面に接触させる方法においては、布材への前記有機粒子分散液の含浸量、布材の送出し量等で調整できる。
【0095】
本発明の画像形成方法には、インク付与工程と分散液付与工程との間に、又は分散液付与工程の後に、インク乾燥ゾーン等の装置を設けて、乾燥工程を行ってもよい。
【0096】
本発明では、インク付与工程、分散液付与工程をこの順序で行うことが好ましい。また、後述するポリマー付与工程又は皮膜化工程を有していてもよい。ポリマー付与工程と、皮膜化工程とを有する場合は、分散液付与工程とポリマー付与工程を同時に行っても良い。
【0097】
<ポリマー付与工程>
本発明の画像形成方法は、ポリマーを含むポリマー含有組成物を前記画像上に付与するポリマー付与工程を備えていてもよい。本発明におけるポリマー付与工程は、ポリマー含有組成物を前記有機微粒子分散液中に予め分散させた状態で付与してもよい。ポリマー含有組成物に含まれるポリマーは、後述する皮膜化工程において皮膜化することを特徴とする。
ポリマー含有組成物を付与する工程は限定されないが、例えば、転写法、スプレー法、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。本発明では特に、前記ポリマー含有組成物をインクジェット法により画像上に付与することが好ましい。
【0098】
本発明方法においては、ポリマー含有組成物の画像上への付与量は、好ましくは25mg/inch以上100mg/inch以下、より好ましくは30mg/inch以上70mg/inch以下である。
【0099】
<ポリマー含有組成物>
本発明のポリマー付与工程で用いるポリマー含有組成物は、ポリマーを含有すれば限定されない。また、ポリマー含有組成物中のポリマーは加熱等により皮膜化することを特徴とする。
【0100】
(ポリマー)
本発明に用いることができるポリマーとしては、アクリル酸(又はメタクリル酸)あるいはその誘導体(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸、又はメタアクリル酸メチル等)の重合体若しくは共重合体であるアクリル酸系ポリマー、あるいはウレタン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム(MBR)若しくはアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等のゴム系ポリマー、でんぷん、変性でんぷん、ゼラチン、カゼイン、若しくは大豆蛋白などの天然高分子化合物、あるいはカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、若しくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のセルロース変性ポリマー、あるいはポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリアセタール樹脂、グアーガム、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸系ポリマーを用いることが好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸ポリマーとは、メタクリル酸ポリマーまたはアクリル酸ポリマーを意味する。
前記ポリマーの数平均分子量は、特に制限はないが、1,000〜500,000であることが好ましく、1,000〜200,000であることがさらに好ましく、1,000〜100,000であることがより好ましく、1,000〜70,000であることが最も好ましい。
【0101】
前記ポリマー含有組成物におけるポリマーの含有量は、1質量%〜50質量%であることが好ましく、2質量%〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0102】
前記ポリマー含有組成物には、更に、耐光性向上剤を含有させることが、記録物の耐光性の更なる向上及び前記ポリマー自体の劣化防止の点で好ましい。耐光性向上剤としては、紫外光や可視光による記録画像の変退色を抑制する作用を持つものであればよく、好ましくはヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、クエンチャー(消光剤)からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物及びシアノアクリレート系化合物、並びに酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セレン及び酸化セリウム等の金属酸化物が挙げられる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール等のフェノール系、クロマン系、クラマン系、ハイドロキノン誘導体、ベンゾトリアゾール系(紫外線吸収能を有しないもの)、スピロインダン系等が挙げられる。クエンチャーとしては、例えば、ニッケル、コバルト等の無機金属錯体等が挙げられる。これらのうち、特に水溶性HALS、ベンゾトリアゾール系化合物〔紫外線吸収能を有するもの(紫外線吸収剤として用いられるもの)及びこれを有しないもの(酸化防止剤として好ましく用いられるもの)の両方を含む〕及びフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0103】
前記耐光性向上剤は、前記ポリマー含有組成物中、好ましくは0.01〜30質量%、更に好ましくは0.1〜20質量%含有される。
【0104】
前記ポリマーのガラス転移温度Tg、あるいは融点Tmは、特に制限はないが、−50℃〜90℃が好ましく、−30℃〜70℃がさらに好ましく、−30℃〜60℃が最も好ましい。ポリマーのTg、あるいは融点Tmは、JIS K6900に従い測定することができる。なお、ポリマーにTgとTmの両方が存在する場合、Tg及びTmのうち低い方が上記の範囲に入ることが好ましく、Tg及びTmのうちいずれか一方しか存在しない場合は、その値が上記の範囲に入ることが好ましい。
【0105】
(水)
本発明のポリマー含有組成物は、水を含有することが好ましい。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは30〜80質量%であり、更に好ましくは50〜70質量%である。
【0106】
<皮膜化工程>
本発明の画像形成方法は、前記ポリマーを皮膜化する皮膜化工程を備えていてもよい。以下に皮膜化工程について詳細に説明する。
【0107】
本発明の皮膜化工程は、前記ポリマーを皮膜化することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明における皮膜化は、加熱、熱風乾燥等により行うことができる。ポリマー含有組成物が付与された画像を加熱することにより皮膜化工程を行うことが好ましく、前記ポリマー含有組成物が付与された画像に加熱ローラを押圧することにより行うことがさらに好ましい。加熱により皮膜化する際の加熱温度は、ポリマーのガラス転移温度よりも高いことを必要とする。これにより、ポリマーの皮膜化を促進することが可能となる。
【0108】
本発明の皮膜化工程は、例えば、インク組成物及びポリマー含有組成物が付与された記録媒体(印画物)を加熱ローラで押圧することにより行うことができる。この際、加熱ローラ表面に粒子含有組成物を付着しておくことで、15μm〜60μmの粒子を印画物表面に付与するとともにポリマーを皮膜化することができ、粒子付与工程と皮膜化工程を一工程でできるため好ましい。
【0109】
押圧の方法は限定的でなく、例えば、(i)加圧ローラを更に使用し、これら一対のローラ(加熱ローラ及び加圧ローラ)の間を、記録された画像面が加熱ローラ表面に接するように通過させる方法、(ii)2つの加熱ローラを用い、これら一対の加熱ローラの間を通過させる方法、(iii)搬送ベルト上で搬送されてくる印画物を、記録された画像面が加熱ローラ表面に接するように通過させる方法、(iv)これら方法の組合せ等が挙げられる。
【0110】
加熱ローラの表面温度(加熱温度)は、ポリマー含有組成物中のポリマーを皮膜化できる温度であれば限定的でなく、ポリマーのTg以上であればよい。これにより、画像の膜強度を向上させることができる。
【0111】
加熱の方法は、特に制限されないが、ニクロム線ヒーター等の発熱体で加熱する方法、温風又は熱風を供給する方法、ハロゲンランプ、赤外線ランプなどで加熱する方法など、非接触で加熱する方法を好適に挙げることができる。
【0112】
前記加熱ローラとしては、金属製の金属ローラであってもよく、金属製の芯金の表面に弾性体からなる被覆層及び必要に応じて表面層(離型層ともいう)が設けられたローラであってもよい。金属ローラ及び金属製の芯金は、例えば、鉄製、アルミニウム製、SUS製等の円筒体で構成することができる。被覆層は、特に、離型性を有するシリコーン樹脂またはフッ素樹脂で形成されるのが好ましい。また、加熱ローラの一方の芯金内部には、発熱体が内蔵されていることが好ましく、ローラ間に記録媒体を通すことによって、加熱処理と加圧処理とを同時に施したり、あるいは必要に応じて、2つの加熱ローラを用いて記録媒体を挟んで加熱してもよい。発熱体としては、例えば、ハロゲンランプヒーター、セラミックヒーター、ニクロム線等が好ましい。
【0113】
押圧する際の圧力としては、表面平滑化の点からは、0.1MPa〜3.0MPaの範囲が好ましく、より好ましくは0.1MPa〜1.0MPaの範囲であり、更に好ましくは0.1MPa〜0.5MPaの範囲である。
【0114】
記録媒体が加熱ローラを通過する際の好ましいニップ時間は、1ミリ秒〜10秒であり、より好ましくは2ミリ秒〜1秒であり、更に好ましくは4ミリ秒〜100ミリ秒である。また、好ましいニップ幅は、0.1mm〜100mmであり、より好ましくは0.5mm〜50mmであり、更に好ましくは1mm〜10mmである。
【0115】
記録媒体を搬送するベルト基材としては限定的でなく、例えば、シームレスのニッケル電鍮が好ましく、基材の厚さは10μm〜100μmが好ましい。また、ベルト基材の材質としては、ニッケル以外にもアルミニウム、鉄、ポリエチレン等を用いることができる。シリコーン樹脂あるいはフッ素樹脂を設ける場合は、これら樹脂を用いて形成される層の厚みは、1μm〜50μmが好ましく、更に好ましくは10μm〜30μmである。
【0116】
また、前記圧力(ニップ圧)を実現するには、例えば、加熱ローラ等のローラ両端に、ニップ間隙を考慮して所望のニップ圧が得られるように、張力を有するバネ等の弾性部材を選択して設置すればよい。
【0117】
記録媒体の搬送速度は、200mm/秒〜700mm/秒の範囲が好ましく、より好ましくは300mm/秒〜650mm/秒であり、更に好ましくは400mm/秒〜600mm/秒である。
本発明の画像形成方法では、画像記録工程、粒子付与工程、ポリマー付与工程または皮膜化工程のいずれかの後に、インク乾燥ゾーン等の装置を設けて乾燥工程を行ってもよい。
【0118】
<処理液付与工程>
本発明の画像形成方法は、記録媒体にインク組成物と接触することで凝集体を形成することができる処理液を付与する処理液付与工程を備えていてもよい。
【0119】
処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。
【0120】
処理液付与工程は、インク組成物を用いたインク付与工程の前又は後のいずれに設けてもよい。
【0121】
本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後にインク付与工程を設けた態様が好ましい。すなわち、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物中の色材(好ましくは顔料)を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
【0122】
処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集成分(例えば、2価以上のカルボン酸又はカチオン性有機化合物)の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集成分の付与量が0.1〜1.0g/mとなる量が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8g/mである。凝集成分の付与量は、0.1g/m以上であると凝集反応が良好に進行し、1.0g/m以下であると光沢度の点で好ましい。
【0123】
本発明における処理液は、既述のインク組成物と接触することで凝集体を形成可能なように構成されたものである。具体的には、処理液は、インク組成物中の色材(顔料等)などの分散粒子を凝集させて凝集体を形成可能な凝集成分を少なくとも含むことが好ましく、必要に応じて、他の成分を用いて構成することができる。インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
【0124】
処理液は、インク組成物と接触して凝集体を形成可能な凝集成分の少なくとも1種を含有することができる。インクジェット法で吐出された前記インク組成物に処理液が混合することにより、インク組成物中で安定的に分散している顔料等の凝集が促進される。
【0125】
処理液の例としては、インク組成物のpHを変化させることにより凝集物を生じさせることができる液体が挙げられる。このとき、処理液のpH(25℃)は、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜6であることが好ましく、1.2〜5であることがより好ましく、1.5〜4であることが更に好ましい。この場合、吐出工程で用いる前記インク組成物のpH(25℃)は、7.5〜9.5(より好ましくは8.0〜9.0)であることが
好ましい。中でも、本発明においては、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、前記インク組成物のpH(25℃)が7.5以上であって、処理液のpH(25℃)が1.5〜3である場合が好ましい。前記凝集成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0126】
処理液は、凝集成分として、酸性化合物の少なくとも1種を用いて構成することができる。酸性化合物としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボキシル基を有する化合物、あるいはその塩(例えば多価金属塩)を使用することができる。中でも、インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシル基を有する化合物がより好ましく、カルボキシル基を有する化合物であることが更に好ましい。
【0127】
カルボキシル基を有する化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩(例えば多価金属塩)等の中から選ばれることが好ましい。これらの化合物は、1種単独で用いるほか2種以上併用してもよい。
【0128】
本発明における処理液は、上記酸性化合物に加えて、水系溶媒(例えば、水)を更に含んで構成することができる。
酸性化合物の処理液中における含有量としては、凝集効果の観点から、処理液の全質量に対して、5〜95質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。
【0129】
また、多価金属塩を添加した処理液が挙げられ、高速凝集性を向上させることができる。多価金属塩としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、およびランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
【0130】
金属の塩の処理液中における含有量としては、凝集効果の観点から、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜7質量%であり、更に好ましくは2〜6質量%の範囲である。
【0131】
また、処理液は、凝集成分として、カチオン性有機化合物の少なくとも1種を用いて構成することができる。カチオン性有機化合物としては、例えば、ポリ(ビニルピリジン)塩、ポリアルキルアミノエチルアクリレート、ポリアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリエチレンイミン、ポリビグアニド、ポリグアニド、又はポリアリルアミン及びその誘導体などのカチオン性ポリマーを挙げることができる。
【0132】
前記カチオン性ポリマーの重量平均分子量としては、処理液の粘度の観点では分子量が小さい方が好ましい。処理液をインクジェット方式で記録媒体に付与する場合には、1,000〜500,000の範囲が好ましく、1,500〜200,000の範囲がより好ましく、更に好ましくは2,000〜100,000の範囲である。重量平均分子量は、
1000以上であると凝集速度の観点で有利であり、500,000以下であると吐出信頼性の点で有利である。但し、処理液をインクジェット以外の方法で記録媒体に付与する場合には、この限りではない。
【0133】
さらに、前記カチオン性有機化合物として、例えば、1級、2級、又は3級アミン塩型の化合物が好ましい。このアミン塩型の化合物の例として、塩酸塩もしくは酢酸塩等の化合物(例えば、ラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミンなど)、第4級アンモニウム塩型化合物(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウムなど)、ピリジニウム塩型化合物(例えば、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイドなど)、イミダゾリン型カチオン性化合物(例えば、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリンなど)、高級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物(例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミンなど)等のカチオン性の化合物や、例えば、アミノ酸型の両性界面活性剤、カルボン酸塩型両性界面活性剤(例えば、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなど)、硫酸エステル型、N−オレオイル―N−メチルタウリンナトリウム等のスルホン酸型、又は燐酸エステル型等の両性界面活性剤など所望のpH領域でカチオン性を示す両性界面活性剤などを挙げることができる。
中でも、2価以上のカチオン性有機化合物が好ましい。
【0134】
カチオン性有機化合物の処理液中における含有量としては、凝集効果の観点から、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。
【0135】
上記のうち、凝集成分としては、凝集性及び画像の耐擦過性の点で、2価以上のカルボン酸、又は2価以上のカチオン性有機化合物が好ましい。
【0136】
処理液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。なお、粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて20℃の条件下で測定されるものである。
【0137】
また、処理液の表面張力としては、インク組成物の凝集速度の観点から、20〜60mN/mであることが好ましく、20〜45mN/mであることがより好ましく、25〜40mN/mであることがさらに好ましい。なお、表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
【0138】
本発明における処理液は、凝集成分に加え、一般には水溶性有機溶媒を含むことができ、本発明の効果を損なわない範囲内で、更にその他の各種添加剤を用いて構成することができる。水溶性有機溶媒の詳細については、既述のインク組成物におけるものと同様である。
【0139】
前記その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられ、既述のインク組成物に含まれるその他の添加剤の具体的な例に挙げたものが適用できる。

【実施例】
【0140】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0141】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(いずれも東ソー(株)製の商品名)を用いて3本直列につなぎ、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。また、条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行なった。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製した。酸価は、JIS規格(JIS K0070:1992)に記載の方法により求めた。
有機粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計マイクロトラックMT3000II(日機装(株)製)によって測定した。測定は、20質量%の有機粒子水分散物100μlに対してイオン交換水10mlを加えて測定用サンプル液を調製し、これを25℃に調温して行なった。
【0142】
ガラス転移温度Tgはポリマー粒子固形分0.5gになる量をとりわけ、得られたポリマー粒子固形分を用い、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220によりTgを測定した。測定条件は、サンプル量5mgをアルミパンに密閉し、窒素雰囲気下、以下の温度プロファイルで2回目の昇温時の測定データのDSCのピークトップの値をTgとした。
30℃→−50℃ (50℃/分で冷却)
−50℃→140℃ (20℃/分で昇温)
140℃→−50℃ (50℃/分で冷却)
−50℃→140℃ (20℃/分で昇温)
【0143】
<インク組成物の調製>
(シアンインクC1の組成)
下記の組成となるように、シアンインクC1を調製した。
・シアン顔料(ピグメント・ブルー15:3) : 4質量%
・アクリル系分散剤: 2質量%
(酸価65.2mgKOH/g、重量平均分子量44600)
・アクリル系樹脂(重量平均分子量66000) : 4質量%
・サンニックスGP250 :10質量%
(三洋化成工業(株)製、水溶性有機溶媒)
・トリプロピレングリコールモノエチルエーテル :10質量%
(和光純薬工業(株)製、水溶性有機溶媒)
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) : 1質量%
・マイクロクリスタリンワックス : 2質量%
(日本精蝋(株)製HI−MIC1090)
上記成分にイオン交換水を加えて100質量%となるように調整した。
【0144】
アクリル系分散剤は下記のスキームにしたがって合成した。
即ち、攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加え窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、メチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温し4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥してアクリル系分散剤を96g得た。
得られた樹脂の組成はH−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このアクリル系分散剤の酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
【0145】
アクリル系樹脂は下記スキームにしたがって合成した。
即ち、攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットルの三口フラスコで形成された反応容器に、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。
次に、反応容器内の温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。
滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。
得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は66000であり、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出した。使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製)を用いた。
次に、共重合体の重合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去した。これにより、固形分濃度28.0%のアクリル系樹脂の水分散物(エマルション)を得た。
【0146】
(マゼンタインクM1の組成)
前記シアンインクC1の組成中のシアン顔料を、顔料の量が同量になるようにマゼンタ顔料(ピグメント・レッド122)に変更したこと以外は、シアンインクC1と同様の組成とした。
【0147】
(イエローインクY1の組成)
前記シアンインクC1の組成中のシアン顔料を、顔料の量が同量になるようにイエロー顔料(ピグメント・イエロー74)に変更したこと以外は、シアンインクC1と同様の組成とした。
【0148】
(ブラックインクK1の組成)
前記シアンインクC1の組成中のシアン顔料を、顔料の量が同量になるようにブラック顔料(カーボンブラック)に変更したこと以外は、シアンインクC1と同様の組成とした。
【0149】
<処理液の調製>
下記組成となるように各成分を混合し、処理液を調製した。
・マロン酸(2価のカルボン酸、和光純薬工業(株)製) 15.0質量%
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製) 20.0質量%
・N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム(界面活性剤) 1.0質量%
・イオン交換水 64.0質量%
【0150】
処理液の物性値は、粘度2.6mPa・s、表面張力37.3mN/m、pH1.6であった。なお、表面張力の測定は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて、白金プレートを用いたウィルヘルミ法にて25℃の条件下で行なった。粘度の測定は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて30℃の条件下で行なった。pHは、東亜DKK(株)製のpHメータWM−50EGを用い、原液のまま25℃にて測定した。
【0151】
<有機粒子分散液の調製>
(有機粒子分散液1の調製)
・イソプロピルアルコール 45.0質量%
・イオン交換水 24.0質量%
・PMMA有機粒子(綜研化学(株)製、MX−3000、体積平均粒子径30μm、Tg:140℃以上) 30.0質量%
・メガファックF443(F系界面活性剤、DIC社製) 1.0質量%
上記組成の液1Lをシルバーソン製乳化装置で1000rpm、60分混合させ、有機粒子分散液1を調製した。
【0152】
(有機粒子分散液2の調製)
有機粒子分散液1の調製において、イソプロピルアルコールの代わりに、ジエチレングリコールを使用し、メガファックF443の代わりに、KF−353(Si系界面活性剤、信越シリコーン社製)を使用した以外は、有機粒子分散液1と同様に作製した。
【0153】
(有機粒子分散液3の調製)
有機粒子分散液1の調製において、PMMA有機粒子の代わりに、SGP−70C(総研化学社製、架橋ポリスチレン有機粒子、体積平均粒子径20μm、Tg140℃以上)を使用し、イソプロピルアルコールの代わりに、グリセリンを使用し、メガファックF443の代わりに、ノベックFC4430(F系界面活性剤、3M社製)を使用した以外は、有機粒子分散液1と同様に作製した。有機粒子のTgは140℃以下では観測されなかった。
【0154】
(有機粒子分散液4の調製)
有機粒子分散液1の調製において、PMMA粒子の代わりに、スミペックスXC−1A(住友化学、体積平均粒子径35μm、架橋PMMA、Tg>140℃)を使用した以外は、有機粒子分散液1と同様に実施した。
【0155】
(有機粒子分散液5の調製)
有機粒子分散液1の調製において、PMMA粒子の代わりに、SGP−150C(総研化学、体積平均粒子径55μm、架橋ポリスチレン、Tg>140℃)を使用した以外は、有機粒子分散液1と同様に実施した。
【0156】
(有機粒子分散液6の調製)
有機粒子分散液1の調製において、PMMA粒子の代わりに、MX−1500(総研化学、体積平均粒子径15μm、架橋PMMA、Tg>140℃)を使用した以外は、有機粒子分散液1と同様に実施した。
【0157】
(有機粒子分散液7の調製)
有機粒子分散液1の調製において、PMMA粒子の代わりに、MB−20(製造元:松本油脂、粒径:20μm、成分:PMMA、Tg105℃)を使用した以外は、有機粒子分散液1と同様に実施した。
【0158】
(有機粒子分散液8の調製:皮膜化するポリマーを含む分散液)
・イソプロピルアルコール 45.0質量%
・イオン交換水 19.0質量%
・PMMA有機粒子 30.0質量%
(綜研化学(株)製、MX−3000、体積平均粒子径30μm、Tg:140℃以上)
・メガファックF443 1.0質量%
(F系界面活性剤、DIC社製)
・C−800WA 5質量%
(皮膜化するポリマー、根上工業社製、6μm、Tg:−13℃)
上記組成の液1Lをシルバーソン乳化装置で1000rpm、60分混合させ、有機粒子分散液8を調製した。
【0159】
(有機粒子分散液11の調製)〜比較分散液〜
有機粒子分散液1の調製において、PMMA粒子、メガファックF443を除き、イオン交換水を55質量%にした以外は、粒子分散液1と同様に作成した。
【0160】
(有機粒子分散液12の調整)〜比較分散液〜
有機粒子分散液1の調製において、メガファックF443を除いた以外は、粒子分散液1と同様に作成した。
【0161】
(有機粒子分散液13の調整)〜比較分散液〜
有機粒子分散液1の調製において、PMMA有機粒子をウレタン有機粒子(P−400T、根上工業社製、15μm、Tg−34℃)に変更した以外は、有機粒子分散液1と同様に作成した。
【0162】
<実施例1>
(画像記録及び評価)
以下に示すように、上記インク組成物(シアンインクC1、マゼンタインクM1、イエローインクY1、ブラックインクK1)/有機粒子分散液1を用いて画像を記録すると共に、下記評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0163】
―画像形成―
GELJET GX5000プリンターのインクジェットヘッド(リコー社製のフルラインヘッド)を用意し、これに繋がるシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックの各色の貯留タンクを上記で得たシアンインクC1、マゼンタインクM1、イエローインクY1、ブラックインクK1に各々詰め替えた。記録媒体としてシルバーダイヤ(日本製紙(株)製)を、500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージ上に固定し、これに上記で得た反応液をワイヤーバーコーターで約1.5μm(マロン酸0.34g/m相当)の厚みとなるように塗布し、塗布直後に50℃で2秒間乾燥させた。
その後、GELJET GX5000プリンターのインクジェットヘッド(リコー社製のフルラインヘッド)を、前記ステージの移動方向(副走査方向)と直交する方向に対して、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)が75.7°傾斜するように固定配置し、記録媒体を副走査方向に定速移動させながらインク液滴量8.0pL、吐出周波数24kHz、解像度1200dpi×600dpiの吐出条件にてライン方式で吐出し、ベタ画像を印画して評価サンプルを得た。印画直後、70℃で7秒間乾燥させた。
次に各有機粒子分散液を0.2g/mとなるようにスプレーで全面に吹き付け、有機粒子分散液を付与した。その後、70℃で7秒間乾燥させた。
【0164】
次いで、記録媒体を、60℃に加熱された一対の定着ローラ間を300mm/秒で通過させ、ニップ圧0.25MPa、ニップ幅4mmにて定着処理を実施した。なお、定着ローラは、内部にハロゲンランプが内装された加熱ローラと、該加熱ローラに圧接する対向ローラとで構成されたものである。
【0165】
<ブロッキング耐久性評価基準>
得られた印画物を二つ作製し、画像記録を行った画像同士を合わせて、0.5cmx3cmの面積でプレス機により、100N、35℃の条件で1分間押さえつけた後、合わせた画像を剥がして、画像の様子を目視で観察した。下記基準で評価を行い、短期ブロッキング評価とした。さらに、上記条件で10分間押さえつけた場合についても実施し、下記基準で評価を行い、長期のブロッキング評価とした。
−基準−
A:自然に剥がれ、互いの紙への色移りもみられなかった。
B:くっつきが生じ、互いの紙への色移りが多少みられた。
C:くっつきが強く、互いの紙へ多く色移りし、実用上問題があるレベルであった。
【0166】
<耐指紋付着性評価>
得られた印画物について、画像に対して、親指を5分接触させた後、接触させた部分を目視で観察した。下記評価基準を用いて、10人で測定を行った。10人で測定を行った結果、もっとも多い評価結果を評価結果とした。
−基準−
A:特に変化がみられず、指紋跡が移ることはなかった。
B:指紋跡が多少移っていたが、実用上問題ないレベルであった。
C:指紋跡がはっきり移り、実用上問題があるレベルであった。
【0167】
<実施例2〜実施例9>
有機粒子分散液1の代わりに、表1に示すように有機粒子分散液2〜8を使用して、実施例1と同様の方法で実施例2〜9を実施した。
【0168】
<比較例1〜比較例3>
有機粒子分散液1の代わりに、表1に示すように有機粒子分散液11〜13を使用して、実施例1と同様の方法で比較例1〜比較例3を実施した。
【0169】
上記、耐指紋付着性、ブロッキング耐久性の評価結果を表1に示す。
【0170】
【表1】



【0171】
表1中、IPAはイソプロピルアルコール、DEGはジエチレングリコールの略称である。
【0172】
以上から、本発明により、長期間のブロッキング耐久性、指紋付着性が改良でき、長期保存性を有するインクジェット画像を提供できることがわかった。さらに本発明は、水溶性のインク組成物と、水を含む粒子分散液を用いているため、環境への負荷を低減することも可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上にインク組成物をインクジェット法で付与するインク付与工程と、
前記インク組成物を付与した記録媒体上に、有機粒子分散液を付与する分散液付与工程とを含み、
前記分散液が水と、
F原子およびSi原子の少なくとも1種を含む界面活性剤と、
体積平均粒子径15μm以上60μm以下かつガラス転移温度Tgが100℃以上の有機粒子とを含むこと
を特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記有機粒子の体積平均粒子径が、20μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記有機粒子の水に対する溶解度が5質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記界面活性剤がF原子を含むノニオン系の界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記F原子およびSi原子の少なくとも1種を含む界面活性剤のうち、Si原子を少なくとも含む界面活性剤がポリシロキサン骨格を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記有機粒子が、ポリメチル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
ポリマーを含むポリマー含有組成物を画像上に付与するポリマー付与工程と、
前記ポリマーを皮膜化する皮膜化工程とをさらに含む
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記分散液が、更に水溶性有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記水溶性有機溶媒が、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒又はニトリル系溶媒のいずれかであることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかの画像形成方法によって製造される、印画物。


【公開番号】特開2012−40851(P2012−40851A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186554(P2010−186554)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】