説明

画像形成方法

【目的】新規なヒドラジン誘導体により、現像ムラや砂カブリの問題がなく、安定な現像液を用いて、極めて硬調なネガ階調の写真特性を得ることができる画像形成方法を提供する。
【構成】ハロゲン化銀写真感光材料を化1で表されるヒドラジン誘導体の存在下に現像する。
【化1】


1 、A2 は2価の芳香族基、ヘテロ環基、G1 、G2 はカルボニル基、スルホニル基、オキサリル基、ホスホリル基を、Z1 、Z2 は水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン化銀への吸着促進基を表わし、L1 、L2 、Rは2価の有機基を表わす。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料の現像方法に関し、特に極めて硬調なネガチブ画像、感度の高いネガチブ画像および良好な網点画質を与える写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ヒドラジン化合物をハロゲン化銀写真乳剤や現像液に添加することは、米国特許第3,730,727号明細書(アスコルビン酸とヒドラジンとを組合せた現像液)、同3,227,552号明細書(直接ポジカラー像を得るための補助現像薬として、ヒドラジンを使用)、同3,386,831号明細書(ハロゲン化銀感材の安定剤として脂肪族カルボン酸のβ−モノフェニルヒドラジドを含有)、同2,419,975号明細書や、Mees著「The Theory of Photographic process」第3版(1966年)281頁等で知られている。
【0003】これらの中で、特に米国特許第2,419,975号では、ヒドラジン化合物の添加により硬調なネガチブ画像を得ることが開示されている。即ち、塩臭化銀乳剤にヒドラジン化合物を添加し、12.8という様な高いpHの現像液で現像すると、ガンマ(γ)が10をこえる極めて硬調な写真特性が得られることが、記載されている。しかし、pHが13に近い強アルカリ現像液は、空気酸化され易く、不安定で、長時間の保存や使用に耐えない。ガンマ値が10をこえる超硬調な写真特性は、ネガ画像、ポジ画像いずれにせよ、印刷製版に有用な網点画像(dot image )による連続調画像の写真的再現あるいは、線画の再生に極めて有用である。
【0004】この様な目的のために従来は、塩化銀の含有量が50モル%、好ましくは75モル%をこえるような塩臭化銀乳剤を用い、亜硫酸イオンの有効濃度を極めて低く(通常0.1モル/l以下)したハイドロキノン現像液で現像する方法が一般的に用いられていた(リス現像)。しかし、この方法では、現像液中の亜硫酸イオンが低いために、現像液は、極めて不安定で、3日をこえる保存に耐えない。更に、これらの方法はいずれも塩化銀含量の比較的高い塩臭化銀乳剤を用いることを必要とするため、高い感度を得ることができなかった。従って、高感度の乳剤と安定な現像液を用いて、網点画像や線画の再現に有用な超硬調写真特性を得ることが強く要望されていた。
【0005】この目的のため、米国特許第4,168,977号、同4,224,401号、同4,243,739号、同4,269,929号、同4,272,614号、同4,323,643号明細書などでは、安定な現像液を用いて極めて硬調なネガチブ写真特性を与えるハロゲン化銀写真感光材料が開示されているが、それらに用いられるアシルヒドラジン化合物はいくつかの欠点を有することがわかってきた。即ち、これらのヒドラジン類は、現像処理中に窒素ガスを発生することが知られており、このガスがフィルム中で集まって気泡となり、写真画像を損なうことがある。従って、この気泡の発生を減らすと同時に感材製造のコストを低下させることができる点に於ても、添加量が少なくても極めて硬調な写真特性が得られる化合物が望まれていた。又、これらのヒドラジン類を用いて現像を続けると、未露光部分に無数の円形のカブリ(砂カブリ;pepper fog)が発生し易く、著しく画像品質を損ねていた。
【0006】又、従来のヒドラジン類は、増感硬調化のためには多量必要で、感材の性能に関して特に高感度であることが要求される様な場合には、他の増感技術(例えば、化学増感を強くする;粒子サイズを大きくする;米国特許第4,272,606号や同4,241,164号明細書に示される様な増感を促進する化合物を添加するなど)との併用が望ましいが、これらの増感技術を併用すると、一般に保存中での経時増感および増カブリが起きる場合がある。更に又、従来のヒドラジン類を用いて現像を行うと、現像液の撹拌ムラによって生ずる所謂現像ムラが起こり易い。この現像ムラは、自現機処理で顕著であり、この現像ムラをなくすため、現像処理を強めると、前記した砂カブリ現像が生ずるという欠点を有していた。従って上で述べた様な経時安定性における問題や現像ムラや砂カブリの問題がなく、極少量の添加で有効であり、更に合成が容易な化合物が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は第一に、安定な現像液を用いて、ガンマーが10をこえる極めて硬調なネガ階調の写真特性を得る事ができるハロゲン化銀写真感光材料を提供することである。
【0008】本発明の目的は、第二に、現像ムラや砂カブリに対する問題がない良好な画像品質を与えることができるヒドラジン類を含有するネガ型ハロゲン化銀写真感光材料を提供することである。
【0009】本発明の目的は、第三に、写真性能に悪影響を与えることなく、少ない添加量で、所望の極めて硬調なネガ階調の写真特性を与えることができるヒドラジン類を含有するネガ型ハロゲン化銀写真感光材料を提供することである。
【0010】本発明の目的は、第四に、処理安定性(例えば現像ムラ、砂カブリなどがない等)が良好かつ迅速硬調なる写真特性を与えることができるヒドラジン類を現像処理液中に添加することにより、ハロゲン化銀写真感光材料を硬調に現像する方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の諸目的は、ハロゲン化銀写真感光材料を化1で表される化合物の存在下に現像することにより達成された。
【0012】(式中、A1、A2は2価の芳香族基、ヘテロ環基を、G1、G2はカルボニル基、スルホニル基、オキサリル基、ホスホリル基を、Z1、Z2は水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はハロゲン化銀への吸着促進基を表わし、L1、L2、Rは2価の有機基を表わす。)
【0013】次に化1について詳しく説明する。化1に於て、A1、A2で表わされる2価の芳香族基は同じでも異なっていてもよく、単環又は2環のアリール基であり、例えばフェニレン基、ナフチレン基があげられる。A1、A2で表わされる2価のヘテロ環基は同じでも異なっていてもよく、N、O又はS原子のうち少なくとも一つを含む3〜10員の飽和もしくは不飽和のヘテロ環であり、これらは単環であってもよいし、さらに他の芳香環もしくはヘテロ環と縮合環を形成してもよい。ヘテロ環として好ましくは、5ないし6員の芳香族ヘテロ環基であり、例えば、ピリジレン、イミダゾリレン、キノリレン、ベンズイミダゾリレン、ピリミジレン、ピラゾリレン、イソキノリレン、チアゾリレン、ベンズチアゾリレン基を含むものが好ましい。A1、A2は置換基で置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、スルホ基、カルボキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などである。A1、A2として好ましいのは芳香族基、更に好ましくはフェニレン基である。
【0014】Z1、Z2は同じでも異なっていてもよく、好ましくはG1、G2がカルボニル基の場合には、水素原子、アルキル基(例えばメチル基、トリフルオロメチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−メタンスルホンアミドプロピル基など)、アラルキル基(例えばο−ヒドロキシベンジル基など)、アリール基(例えばフェニル基、3、5ージクロロフェニル基など)、ハロゲン化銀への吸着促進基であり、とくに水素原子が好ましい。ハロゲン化銀への吸着促進基の好ましい例としては、メルカプト基、ジスルフィド結合を有する基又は5ないし6員の含窒素複素環基(例えば5−メルカプト−1−フェニルテトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリアゾール、テトラゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾール、ベゾチアゾールなど)である。またG1、G2がスルホニル基の場合には、Z1、Z2はアルキル基(例えばメチル基など)、アラルキル基(例えばο−ヒドロキシベンジル基など)、アリール基(例えばフェニル基など)、置換アミノ基(例えばジメチルアミノ基など)又はハロゲン化銀への吸着促進基(例えば上記で述べたような)が好ましい。G1、G2がオキサリル基の場合、Z1、Z2はヒドロキシ基、アルキル基(例えばメチル基など)、アラルキル基(例えばο−ヒドロキシベンジル基など)、アリール基(例えばフェニル基、など)、アミノ基又は置換アミノ基{例えば3−ヒドロキシプロピルアミノ基、2,3−ジヒドロキシプロピルアミノ基、ο−ヒドロキシアニリノ基、ο−ヒドロキシメチルアニリノ基、4−(2,2,4,4−テトラメチルピペリジル)アミノ基など}又はハロゲン化銀への吸着促進基(例えば上記で述べたような)が好ましい。G1、G2がホスホリル基の場合には、Z1、Z2としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、フェニル基が好ましく、特にフェノキシ基が好ましい。
【0015】L1、L2は同じでも異なっていてもよい2価の連結基であってアルキレン、アリーレン、2価のヘテロ環基、−O−、−S−、イミノ、−COO−、−CONH−、−NHCONH−、−NHCOO−、−SO2NH−、−CO−、−SO2--SO--NHSO2NH−、−NHCSNH−、−NH−等やこれらの複合したものを挙げることができる。Rはアルキレン、アリーレン(例えばエチレン基、ブチレン基、ドデシレン基、フェニレン基など)、ハロゲン化銀へ吸着する2価の基{例えば(5−メルカプトテトラゾリル)フェニレン基など}、2価のヘテロ環基を表わし、L1、L2で述べた2価の連結基と複合しても良い。以下に本発明の化合物の具体例を示すが、これらに限定されるわけではない。
【0016】
【化2】


【0017】
【化3】


【0018】
【化4】


【0019】
【化5】


【0020】
【化6】


【0021】
【化7】


【0022】
【化8】


【0023】
【化9】


【0024】
【化10】


【0025】
【化11】


【0026】
【化12】


【0027】
【化13】


【0028】
【化14】


【0029】
【化15】


【0030】
【化16】


【0031】
【化17】


【0032】
【化18】


【0033】
【化19】


【0034】
【化20】


【0035】
【化21】


【0036】
【化22】


【0037】
【化23】


【0038】
【化24】


【0039】合成例1 化3の合成1−ホルミル−2−(4−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ヒドラジン2.72gと1,12−ジアミノドデカン1.0gを1,4−ジオキサン100mlに加え加熱還流を4時間行った。放冷後、析出晶を濾取し1,4−ジオキサンで洗った後メタノールで洗い乾燥して目的物を2.1g得た。融点213〜215℃。
【0040】合成例2 化4の合成1−ビス(3−アミノプロピル)−3−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)プロピルアミン4.06gと1−ホルミル−2−(4−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ヒドラジン5.43gを1,4−ジオキサン200mlに加え加熱還流を4時間行った。放冷後、不溶物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィーにより分離精製(展開溶媒:CHCl3/MeOH=10/1)して目的物を1.85g得た。融点115℃(軟化)。
【0041】合成例3 化13の合成1−(4−フェノキシカルボニルアミノフェニル)−2−[(2,3−ジヒドロキシプロピル)アミノオキサリル]ヒドラジン5.30gとエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル1.20gを1,4−ジオキサン100mlに加え加熱還流を3時間行った。放冷後、析出晶を濾取し1,4−ジオキサンで洗った後メタノールで洗い乾燥して目的物を4.5g得た。融点213℃(dec.)。
【0042】本発明の感光材料に於て化1で示される化合物は、表面潜像型ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのが好ましいが、表面潜像型ハロゲン化銀乳剤層に隣接する親水性コロイド層に含有させてもよい。その様な層は下塗層、中間層、フィルター層、保護層、アンチハレーション層など、化1で示される化合物が、ハロゲン化銀粒子へ拡散していくのを妨げない限り、どんな機能をもつ層であってもよい。層中での本発明の化合物の含有量は、用いられるハロゲン化銀乳剤の特性、化合物の化学構造及び現像条件によって異なるので、適当な含有量は、広い範囲にわたって変化しうるが、表面潜像型ハロゲン化銀乳剤中の銀1モル当り約1×10-6〜1×10-2モルの範囲が実際上有用である。
【0043】本発明に於て用いられる化1で表されるヒドラジン化合物を現像液中に混入する場合には、10-6〜10-1モル/lが適当であり、更に好ましくは5×10-5〜5×10-2モル/lの範囲が特に好ましい。
【0044】本発明の感光材料の感光性ハロゲン化銀乳剤層に用いるハロゲン化銀には特に限定はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、沃臭化銀、臭化銀などを用いることができるが、沃臭化銀又は塩沃臭化銀を用いる場合には、沃化銀の含有量は5モル%以下の範囲であることが好ましい。ハロゲン化銀粒子の形態、晶癖、サイズ分布等には特に限定はないが、粒子径0.7ミクロン以下のものが好ましい。
【0045】ハロゲン化銀乳剤は、塩化金酸塩、三塩化金などの様な金化合物やロジウム、イリジウムの如き貴金属の塩や銀塩と反応して硫化銀を形成するイオウ化合物や、第1スズ塩、アミン類の如き還元性物質で粒子を粗大化しないで感度を上昇させることができる。又、ロジウム、イリジウムの如き貴金属の塩、赤血塩などの鉄化合物をハロゲン化銀粒子の物理熟成時又は核生成時に存在せしめることもできる。特に、ロジウム塩又はその錯塩の添加は、短い現像時間で超硬調の写真特性を達成するという本発明の効果を一層助長するので好ましい。
【0046】本発明に於て、表面潜像型ハロゲン化銀乳剤とは、内部感度より表面感度の高いハロゲン化銀粒子から成る乳剤をさし、この乳剤は好ましくは米国特許第4,224,401号明細書にて規定された表面感度と内部感度の差を持つものである。ハロゲン化銀乳剤は単分散であることが望ましく、特に上記の米国特許第4,224,401号にて規定された単分散性を持つ乳剤が好ましい。
【0047】本発明に用いられる写真乳剤は、メチン色素類、その他によって分光増感されてもよい。用いられる色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素、およびヘミオキソノール色素が包含される。特に有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、および複合メロシアニン色素に属する色素である。これらの増感色素は、単独に用いてもよいが、そられの組合せを用いてもよい。増感色素の組合せは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。
【0048】本発明の感光材料の乳剤層や中間層に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いる事ができる。例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類の如きセルロース誘導体;アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体などの糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール等の単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。ゼラチンとしては、石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Phot.Japan,No. 16、P30(1966)に記載された様な酵素処理ゼラチンを用いてもよく、又、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0049】本発明に用いられる写真乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のカブリを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。即ち、アゾール類、例えばベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類;メルカプトピリミジン類、メルカプトトリアジン類、チオケト化合物;アザインデン類;など従来よりカブリ防止剤又は安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。これらの中で、特に好ましいのは、ベンゾトリアゾール類(例えば5−メチルベンゾトリアゾール類)及びニトロインダゾール類(例えば5−ニトロインダゾール)である。これらの化合物は、処理液に含有させても良い。
【0050】本発明の写真感光材料には、写真乳剤層その他の親水性コロイド層に無機又は有機の硬膜剤を含有してもよい。例えばクロム塩(クロムミョウバンなど)、アルデヒド類、(ホルムアルデヒド、グリオキサールなど)、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体(2,3−ジヒドロキシジオキサンなど)、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−S−トリアジンなど)、などを単独又は組み合せて用いることができる。
【0051】本発明を用いて作られる感光材料の写真乳剤層又は他の親水性コロイド層には、塗布助剤、帯電防止、スベリ性改良、乳化分散、接着防止及び写真特性改良(例えば、現像促進、硬調化、増感)など種々の目的で界面活性剤を含んでよい。例えばサポニン(ステロイド系)、アルキレンオキサイド誘導体(ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類など)、グリシドール誘導体(アルケニルコハク酸ポリグリセリドなど)、多価アルコールの脂肪酸エステル類、糖のアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤;アルキルカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル類、アルキルリン酸エステル類などの様な、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基、硫酸エステル基、リン酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤;アミノ酸類、アミノアルキルスルホン酸類、アミノアルキル硫酸又はリン酸エステル類などの両性界面活性剤;脂肪族あるいは芳香族第4級アンモニウム塩類、ピリジニウム、イミダゾリウムなどの複素環第4級アンモニウム塩類などのカチオン界面活性剤を用いることができる。
【0052】本発明に用いる写真感光材料には、写真乳剤層その他の親水性コロイド層に、寸度安定性の改良などの目的で、水不溶又は難溶性合成ポリマー分解物を含むことができる。例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、オレフィン、スチレンなどの単独もしくは組合せ、又はこれらとアクリル酸、メタクリル酸、α、β−不飽和ジカルボン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸等の組合せを単量体成分とするポリマーを用いることができる。
【0053】本発明のハロゲン化銀感光材料を用いて超硬調の写真特性を得るには、従来のリス現像液や米国特許第2,419,975号明細書に記載されたpH13に近い高アルカリ現像液を用いる必要はなく、安定な現像液を用いることができる。即ち、本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、保恒剤としての亜硫酸イオンを充分に(特に0.15モル/l以上)含んだ現像液を用いることができ、また、pH9.5以上、特に10.5〜12.3の現像液によって充分に超硬調のネガ画像を得ることができる。
【0054】本発明の方法に於て用いうる現像主薬には特別な制限はなく、ジヒドロキシベンゼン類、3−ピラゾリドン類、アミノフェノール類などを単独あるいは組み合わせて用いる事ができる。
【0055】現像液にはその他、アルカリ金属の亜硫酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、及びリン酸塩の如きpH緩衝剤、臭化物、沃化物、及び有機カブリ防止剤(特に好ましくは、ニトロインダゾール類又はベンゾトリアゾール類)の如き、現像抑制剤ないし、カブリ防止剤などを含むことができる。又、必要に応じて、硬水軟化剤、溶解助剤、色調剤、現像促進剤、界面活性剤、消泡剤、硬膜剤、フィルムの銀汚れ防止剤(例えば2−メルカプトベンズイミダゾール酸類)などを含んでいてもよい。これら添加剤の具体例は、リサーチディスクロージャー176号の17643などに記載されている。
【0056】定着液としては、一般に用いられている組成のものを用いることができる。定着剤としては、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩のほか、定着剤としての効果が知られている有機硫黄化合物を用いることができる。又、定着液には硬膜剤として水溶性アルミニウム塩などを含んでいても良い。
【0057】本発明では、感光材料中に現像主薬を内蔵させて、アルカリ性のアクチベータ溶液で処理する方式を採用しても良い。(特開昭57−129436号、同57−129433号、同57−129434号、同57−129435号、米国特許4,323,643号などを参照)。処理温度は通常18℃から50℃の間で選ばれるが、18℃より低い温度又は50℃をこえる温度としてもよい。写真処理には自動現像機を用いるのが好ましい。本発明では感光材料を自動現像機に入れてから出てくるまでのトータルの処理時間を60秒〜120秒に設定しても充分に超硬調のネガ階調の写真特性が得られる。
【0058】
【実施例】以下に本発明を実施例により説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
【0059】実施例197モル%のAgBr、3モル%のAgIを含む平均粒径0.25ミクロンの立方体晶から成る沃臭化銀乳剤をダブルジェット法によって調製し、常法により水洗、再溶解したのち、チオ硫酸ナトリウムを用いて化学増感を施した。この沃臭化銀乳剤を13ヶに分割したのち、本発明の化1の化合物、化3、化9、化20、化23及び下記の比較化合物、化25、化26を表1に示した量で加えたのち、ポリエステルフィルム上に1m2当り、銀量3.7gになる様に塗布した。この様にして作成したフィルム試料にウエッヂ露光を与えたのち、下記に示すような組成の現像液を用い、20℃にて1分〜5分現像を行った。
【0060】
【化25】


【0061】
【化26】


【0062】
【化27】


【0063】<現像液>ハイドロキノン 30 g4-ヒト゛ロキシメチル-4-メチル-1-フェニル-3-ヒ゜ラソ゛リト゛ン 0.3g亜硫酸ナトリウム 75 gEDTA・2Na 1.0gリン酸三カリウム 80 g臭化カリウム 2.0gNaOH 13 g5−メチルベンゾトリアゾール 0.3g1-シ゛エチルアミノ-2,3-シ゛ヒト゛ロキシフ゜ロハ゜ン 17 g水を加えて 1 l水酸化カリウムでpH11.5に合わせる。
結果を表1に示す。
【0064】
【表1】


【0065】
a)添加量は銀1モル当りのモル数で示した。
b)濃度1.0を与えるのに必要な露光量を相対感度として表す。(フィルムNo.1のサンプルを3分間現像処理したときの感度を10.0とする。)
c)濃度0.5から2.0の平均勾配をガンマとして表わす。
【0066】表1から明らかな様に本発明の化合物は、比較化合物に比し、20℃1分の現像処理に於ても硬調な写真特性は、ほぼ出来上がっており、かつ長時間現像を行ってもカブリの増加がないことがわかり、その効果は、歴然としている。化1で表わされる構造を有する本発明の化合物の有効性が認められる。更に現像時間の変化による感度変化が比較化合物に比べて極めて少ないことから、現像に対する安定性も高いことがわかる。
【0067】又、現像処理後の各サンプルの未露光部分を見たところ、比較化合物を添加したサンプル(No. 2〜7)に於ては現像時間3分で既に明白な砂カブリが発生しているのにくらべ、本発明の化合物を添加したサンプル(No. 8〜15)では何ら砂カブリを認めなかった。
【0068】実施例2次に実施例1で得られたフィルム試料の一部を40℃30日間加温したのち、実施例1と同様に露光、現像(20℃3分)処理を行い、塗布直後の感度及びカブリの値と比較した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】


【0070】表2から明らかな様に、本発明の化合物は、保存経時による感度変化及びカブリ増加が極めて少ない事がわかる。
【0071】実施例3次に実施例1で得られたフィルム試料の別の一部を用いて網点品質の試験を行った。即ち、150線グレイコンタクトスクリーンを用いて、センシトメトリー用露光ウエッヂを介して、各フィルム試料に露光を与えたのち、前と同様の現像液で38℃30秒間現像し、網点品質をみた。結果を表3に示す。
【0072】網点品質は5段階で視覚的に評価したもので5が最も良く、1が最も悪い品質を表わす。製版用網点原版としては5,4が実用可能で3は粗悪だが、ぎりぎり使用でき、2,1は実用上使用不可能な品質である。
【0073】
【表3】


【0074】表3から明らかな様に、本発明の化合物は良好な網点品質を示す事が分かる。
【0075】
【発明の効果】本発明の画像形成法は、現像ムラや砂カブリの問題がなく、安定な現像液を用いて、ガンマーが10を超える極めて硬調なネガ階調の写真特性を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハロゲン化銀写真感光材料を下記の化1で表される化合物の存在下で現像することを特徴とする画像形成方法。
【化1】


(式中、A1、A2は2価の芳香族基、ヘテロ環基を、G1、G2はカルボニル基、スルホニル基、オキサリル基、ホスホリル基を、Z1、Z2は水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、又はハロゲン化銀への吸着促進基を表わし、L1、L2、Rは2価の有機基を表わす。)

【公開番号】特開平5−197091
【公開日】平成5年(1993)8月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−9645
【出願日】平成4年(1992)1月23日
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)