説明

画像形成装置およびその制御方法、並びにプログラム

【課題】ネットワークマウント処理は画像形成装置の資源に多大な負荷を与えるため、マウント期間を最小限にしたい。一方で印刷データをネットワークを介して参照する期間は、印刷ジョブの構成や画像形成装置内のキャッシュ可能な容量によって変化する。
【解決手段】外部装置に接続され、当該外部装置にて管理されているPDL形式のファイルの印刷を行う画像形成装置であって、印刷対象であるファイルのサイズを取得する取得手段と、当該画像形成装置の受信バッファが格納可能なサイズと、前記ファイルのサイズとを比較する比較手段と、前記ファイルを含む前記外部装置のフォルダをマウントするネットワークマウント手段とを有し、前記ネットワークマウント手段は、当該ファイルに対する処理の開始の際に、前記ファイルのサイズが前記受信バッファのサイズを超える場合、前記ファイルを含む前記外部装置のフォルダをマウントする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
画像形成装置およびその制御方法、並びにプログラムに関する。特に、画像形成装置における蓄積印刷データの記憶領域制御に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においてPDF等の非ストリーム型であるPDL形式のデータフォーマットに対する印刷処理を実現するには、2つの方法がある。一つは、非ストリームデータをストリーム型に変換して画像形成装置に転送する方法である。もう一つは、非ストリーム型データを画像形成装置上に全蓄積し、PDLデータの解析処理を画像形成装置上の蓄積データに対してランダムアクセスする方法である。前者はデータ変換装置が必要になる点、後者は画像形成装置にPDLファイルを全蓄積可能な記憶容量を確保する点が課題となる。特に後者に関してデータ全体の蓄積用領域を実現する手段として、ネットワークで接続された外部の情報処理装置を画像形成装置にネットワークマウントし、画像形成装置の資源として利用する形態のシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−250742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置は印刷ジョブを同時に複数受信し、受信した順番に逐次画像形成処理を行う。画像形成装置の用紙やトナーなどの消耗品が切れた場合、ジョブリストには、PDL展開およびRIP処理が終了した、印刷待ちのジョブが多数リストに積まれる。前述の特許文献1によれば、画像形成装置が外部の記憶装置をマウント終了させるタイミングを印刷完了時、あるいはタイマによる期間終了までとしている。このため、特許文献1の方式では複数ジョブが投入され、出力処理が一時的に停止状態の場合、ネットワークマウントを解除できない印刷ジョブが連続発生すると想定される。
【0005】
ネットワークマウント処理はCPUやネットワークのリソースを消費するが、参照先の異なる多数のジョブが存在すると、ジョブ数分だけファイルシステムを個別にマウントさせる必要がある。そのため、ジョブの増加に伴い、ネットワークマウント数が増加すると、画像形成装置の全体パフォーマンスに悪影響を与える。このため、画像形成装置がジョブ単位で異なる情報処理装置の記憶領域をマウントする場合、ジョブの処理状況に合わせてマウントの開始と終了のタイミングを管理し、ネットワークマウント数が一定以下になるよう制御する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明は以下の構成を有する。すなわち、外部装置に接続され、当該外部装置にて管理されているPDL形式のファイルの印刷を行う画像形成装置であって、印刷対象であるファイルのサイズを取得する取得手段と、当該画像形成装置の受信バッファが格納可能なサイズと、前記ファイルのサイズとを比較する比較手段と、前記ファイルを含む前記外部装置のフォルダをマウントするネットワークマウント手段とを有し、前記ネットワークマウント手段は、当該ファイルに対する処理の開始の際に、前記ファイルのサイズが前記受信バッファのサイズを超える場合、前記ファイルを含む前記外部装置のフォルダをマウントする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、状況に応じて、ネットワークマウントによる外部記憶装置を画像形成装置のバッファとして活用し、画像形成装置のリソースの消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】情報処理装置と画像形成装置とを含むネットワーク構成例の図。
【図2】画像形成装置のHW構成例の図。
【図3】画像形成装置のSW構成例の図。
【図4】画像形成装置における各モードのPDLデータフロー図。
【図5】画像形成装置のデータ処理のフローチャート。
【図6A】画像形成装置の受信データの内部蓄積によるシーケンス図。
【図6B】画像形成装置の受信データの外部参照−印刷完了前解放のシーケンス図。
【図6C】画像形成装置の受信データの外部参照−印刷完了後解放のシーケンス図。
【図7】画像形成装置のネットワークマウント状態のUI画面の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0010】
<システム構成>
図1は本発明におけるシステム構成図である。本実施形態に係る情報処理装置102〜104と、画像形成装置101とがネットワーク100を介して接続されている。ネットワークを介して接続された外部装置である情報処理装置102〜104は、PDF(Portable Document Format)などのPDL形式の印刷データを保存するSMB(Server Message Block)ファイルサーバである。情報処理装置102〜104により、印刷対象となるデータが管理されている。画像形成装置101は、情報処理装置102〜104のファイルサーバにアクセスし、印刷したいファイルをブラウジングして、選択・取得し、印刷処理を行う。なお、本実施形態において、ファイルサーバとしての機能を有する情報処理装置は、3台構成としているが、これに限定するものではなく、必要に応じて増減してもよいことは言うまでもない。
【0011】
[ハードウェア構成]
図2に、本実施形態に係る一例としての画像形成装置101のハードウェアブロック図を示す。SystemBus220には、CPU201、RAM202、UI I/F203、Netowrk I/F204、ROM205、HDD206が接続されており、各コンポーネント間で相互に通信が可能である。SystemBus220上のコンポーネントは、ImageBus I/F207を経由して、ImageBus230に接続されたRIP208、プリンタ画像処理部209、印刷エンジンI/F210へアクセスする。
【0012】
図3に示す各制御部は、CPU201上で実行され、処理中の一時的なデータはRAM202に保持される。UI I/F203は操作部211に接続されており、操作部211の信号を各モジュールへ通知する。Network I/F204は、ネットワーク100経由で情報処理装置102〜104からPDL形式のデータを受信し、HDD206へ格納する。ROM205には画像形成装置101の起動・実行に必要な各種パラメータおよび、プログラムが格納されており、必要に応じて各ソフトウェアモジュールからアクセスされる。HDD206は、ネットワーク100経由で受信したPDL(Page Description Language)データの一時的な格納やRIP208、プリンタ画像処理部209のデータスワップ領域として各モジュールからアクセスされる。
【0013】
ImageBus I/F207は、画像形成装置101のSystemBus220およびImageBus230を取り持つ。また、ImageBus I/F207は、制御系ソフトウェアが動作するSystemBus220側とImageBus230上で動作するページ画像処理に関するモジュールの通信を取り持つ。ImageBus230に接続されたRIP208は、PDLのコードを中間データとして展開する。プリンタ画像処理部209は、RIP208が生成したイメージファイルに対してプリンタエンジン212に対応した解像度変換や補正処理を行う。エンジンI/F210は、エンジン制御部314がエンジンI/F210を通して、プリンタエンジン212を制御するための通信I/Fである。
【0014】
[ソフトウェア構成]
図3に、本実施形態に係る一例としての画像形成装置101のソフトウェア構成図を示す。Network I/F204は、ネットワーク制御部301にTCP/IPのSocket I/Fを提供する。ネットワーク制御部301は、SMBのサーバ/クライアントプロトコルに対応し、画像形成装置101が情報処理装置102〜104のSMBサーバのディレクトリにアクセスする手段を提供する。印刷ジョブ制御部304は、CPU201上で実行され、RAM202上のデータおよび、HDD206に保持された一時データを参照して印刷制御を行う。
【0015】
FS制御部302は、ファイルシステムである情報処理装置との連携を制御する。ネットワークマウント制御部303は、ファイルサーバとしての情報処理装置102〜104のフォルダをネットワーク介してマウントするための制御を行う(以下、ネットワークマウント)。
【0016】
情報処理装置102〜104が管理しているファイルを参照して印刷する際、印刷ファイルの情報と印刷条件から、PullPrintモードで動作するか、NetworkMountモードで動作するか判断する。PullPrintモードは、データ受信制御部305と受信バッファ306を用いて動作するモードである。NetworkMountモードは、FS制御部302と連携してネットワークマウント制御部303を起動し、情報処理装置102〜104にある外部ファイルを仮想的に内部ファイルとして扱うモードである。PullPrintモード、およびNetworkMountモードのいずれも、受信データの一次バッファである受信バッファ306として、HDD206およびRAM202を用いる。
【0017】
PDL解析部307はCPU201上で動作し、外部から受信したPDFファイルの解析を行うモジュールであり、インデックス解析部308とページ解析部309から構成される。インデックス解析部308は、PDFファイル内に存在するPDFのインデックス情報を検出・解析するモジュールで印刷ジョブ制御部304に対して、PDFファイルの総ページ数を通知する。ページ解析部309は、PDFファイル内のPDLコマンドに従ってPDL展開処理を行い、中間ページデータを生成する。生成した中間ページデータは、HDD206上の印刷ページ制御部310内の中間データ保存部311に保存される。RIP制御部313は、HDD206上の中間データ保存部311の中間ページデータを読み出し、RIP208モジュールでRIP処理を行い、印刷データとして印刷データ保存部312に書き込む。
【0018】
エンジン制御部314は、印刷データ保存部312の印刷データを読み出し、エンジンI/F210を経由してプリンタエンジン212の画像形成処理を実行する。印刷ページ制御部310は、PDL解析部307のPDL展開処理とRIP制御部313のRIP処理とエンジン制御部314のページ印刷処理とを可能な限り、非同期で先行動作させる。ここで先行動作とは、後続の処理等に関連せず、自身が処理可能となった時点で処理を行う動作を意味する。なお、データの記憶部などの状態によっては、前段の処理が一時的に停止する場合が考えられる。例えば、PDL解析部307は、中間データ保存部311の領域が枯渇しない範囲においてRIP制御部313に対して先行動作できる。同様にRIP制御部313は印刷データ保存部312が枯渇しない範囲においてRIP処理を先行動作できる。
【0019】
<データ処理フロー>
図4にて各モードに応じたデータ処理フローを説明する。図4(A)は、PullPrintモードで印刷する場合を示している。図4(B)、(C)はそれぞれ、NetworkMountモードで印刷する場合を示している。
【0020】
図4(A)に示すPullPrintモード410は、一般的なネットワークプリントの動作の流れを示している。画像形成装置101は、最初にSMBクライアントとして情報処理装置102〜104にアクセスし、PDFファイルのサイズを確認する。「PDFファイルサイズ<受信バッファ306のサイズ」の条件が成り立つことを確認後、画像形成装置101は、データ受信411を行い、PDFファイルを受信バッファ306に格納する処理を行う。つまり、このモードの場合には、画像形成装置の受信バッファ306に印刷対象であるPDFファイル全体が格納可能であることを意味する。
【0021】
その後、画像形成装置101は、受信ファイル412をページ解析部309によりPDL展開処理413を行う。そして、PDL展開処理413にて生成された中間データ414に対し、RIP制御部313によりRIP処理415を行う。次に、RIP処理415にて生成された印刷データ416に対し、エンジン制御部314により印刷処理417を行う。このとき、中間データ414は中間データ保存部311に、印刷データ416は印刷データ保存部312に保存される。なお、各データが一時的に溢れた場合は、後段の処理が進み、データが保存されている各領域が解放されるまで、前段の処理を一時停止する。
【0022】
図4(B)、(C)に示すNetworkMountモード420、430は、画像形成装置101の受信バッファ306が、印刷したいPDFファイルのデータ量と比較して少ない場合の受信プリント動作である。PullPrintモード410と同様にSMBクライアントとして情報処理装置102〜104にアクセスし、PDFファイルのサイズを確認する。このとき、PDFファイルのサイズが受信バッファ306のサイズを超えている場合、印刷対象であるPDFファイル全体が受信できないため、SMBサーバである情報処理装置をネットワークマウントする。これにより、都度、必要なデータ範囲を部分的に画像形成装置101のRAM202にキャッシュする。
【0023】
NetworkMountモードに関して、図4(B)と図4(C)との違いは、ネットワークマウントを解除するタイミングにある。図4(B)のNetworkMountモード420の場合は、PDFファイルに対するPDL展開処理423がPDFの全ページ分終了し、中間データ424が中間データ保存部311に格納された段階でネットワークマウントが解除される。一方、図4(C)のNetworkMountモード430の場合は、印刷処理437が完了した段階でネットワークマウントが解除される。
【0024】
NetworkMountモード430が選択されるのは、元のPDFファイルのデータから全印刷ページデータを複数回生成する場合である。これは例えば、PDFファイルのページ数が印刷データ保存部312の保存可能枚数を超えている場合で、かつ、複数部の印刷が指定されている場合、などが挙げられる。
【0025】
<モード切替およびネットワークマウント解除>
図5にPullPrintモードおよびNetworkMountモードの切り替え判断と、ネットワークマウント時のマウント解除の判断フローを示す。なお、本処理フローは、画像形成装置101が備えるCPU201が記憶部であるHDD206等に格納されたプログラムを読み出し、実行することで実現される。
【0026】
S501にて、ユーザは、図7に示すUI画面から情報処理装置102〜104のファイルをブラウズし、印刷するファイルを選択する。UI画面については、図7を用いてより詳細に説明する。ここでのファイルの選択については、図7の画面710〜740が対応する。S502にて、画像形成装置101は、ユーザからファイル選択画面740を介して、選択したPDFファイル741を印刷するようプリントボタン742の押下を受け付ける。
【0027】
S503にて、印刷ジョブ制御部304は、S502にて選択されたPDFファイルのファイルサイズをネットワーク制御部301を介して情報処理装置102〜104に確認する。ファイルサイズが受信バッファ306に収まる場合は(S503にてYES)S504へ進む。ファイルサイズが受信バッファ306を超える場合は(S503にてNO)S508へ進む。S504〜S507は図4(A)に示したPullPrintモードである。S504では、データ受信制御部305は、ネットワーク制御部301のSMBクライアント機能と連携して、情報処理装置102〜104上にあるPDFファイルを受信し、受信バッファ306にコピーする。
【0028】
S505では、印刷ジョブ制御部304は、受信バッファに転送したPDFファイルのPDL展開処理の開始をPDL解析部307に対して指示する。そして、PDL解析部307は、PDFファイルのデータから中間ページデータを生成する。S506にて、RIP制御部313は、生成された中間ページデータに対するRIP処理を行い、印刷データを生成する。S507にて、エンジン制御部314は、RIP済みの印刷データをプリンタエンジン212へ転送し、印刷処理を行う。そして、本処理フローを終了する。
【0029】
S508では、印刷ジョブ制御部304は、先行するジョブに対するネットワークマウントが解除されたか否かを確認する。本実施形態において、ここでの確認では、予めネットワークマウントを行う数を閾値として定義しておき、その数以下であれば、ネットワークマウントを実行するように判定する。ネットワークマウント中の場合は(S508にてNO)、ネットワークマウント数が閾値以下になるまでWaitする。先行するジョブのネットワークマウントが解除されている場合、つまり、ネットワークマウント数が閾値以下である場合は(S508にてYES)、S509へ進む。なお、S508の判定において、ネットワークマウント数に閾値を設け、それを基準に判定しているが、これに限定するものではない。例えば、CPUの負荷率などの閾値を設け、これを基準として判定しても構わない。
【0030】
S509では、印刷ジョブ制御部304は、現在のジョブに対し、FS制御部302を介してネットワークマウント制御部303に情報処理装置の対象フォルダをネットワークマウントするよう指示する。このとき、ネットワークマウントが行われる情報処理装置には、S502にて選択されたジョブのジョブIDに対応するPDFファイルが保存されている。
【0031】
S510にて、印刷ジョブ制御部304は、PDL解析部307のインデックス解析部308にPDFファイルの総ページ数を問い合わせる。そして、印刷ジョブ制御部304は、取得したPDFファイルの総ページ数と、印刷ページ制御部310の印刷データ保存部312に保存可能なページ数とを比較する。このとき、PDFファイルの全ページを印刷データ保存部312に蓄積できない場合、印刷ジョブ制御部304は、印刷ジョブの仕上げ条件(フィニッシングに係る印刷設定)を確認し、全ページ蓄積した状態で印刷処理が必要か判断を行う。なお、ここでの確認は、フィニッシングに係る印刷設定に限定するものでは無く、全ページの蓄積が必要な印刷設定を確認するような構成であって構わない。
【0032】
ここで確認する仕上げ条件の例として、複数部印刷、製本印刷、逆順印刷などが挙げられる。複数部印刷、製本印刷、逆順印刷の場合は、印刷ジョブの全ページがPDL展開処理・RIP処理の終了まで、印刷データ保存部312に蓄積されている必要がある。
【0033】
複数部印刷では1部目のみPDL展開処理・RIP処理を行い、印刷処理を複数回行うことで処理時間を短縮しつつ、複数部出力を実現している。これはPDFファイルの全ページが印刷データ保存部312に蓄積出来る場合のみ成り立つ。印刷データ保存部312のキャッシュサイズが小さくPDFの全ページを格納できない場合、キャッシュ溢れで消えてしまったページデータに対し、PDLの再展開処理・再RIP処理が必要になる。
【0034】
製本印刷も、複数部印刷と同様にPDL展開処理・RIP処理を終えた印刷ページを全ページ分キャッシュしてから、「ページ順の入れ替え」、「2up」、「両面処理」を行う。8ページのPDFデータを製本処理する場合、「1/8」、「2/7」「3/6」「4/5」のページ順で2up処理する。印刷データ保存部312のキャッシュが足りず溢れてしまった場合は、溢れたページのみ再生成処理が必要になる。例えば、印刷データ保存部312に6ページしか格納できない場合、印刷データ保存部312をキャッシュから溢れた2ページ分についてPDL展開処理・RIPの再処理が必要になる。
【0035】
逆順印刷も同様に、印刷データ保存部312に保存されたページを最終ページから出力するため、全ページが印刷データ保存部312に収まらない場合は、溢れたページについてPDL展開処理・RIPの再処理が必要になる。
【0036】
複数部印刷、製本印刷、逆順印刷など「全ページ蓄積後の印刷」が必要で、かつ「PDFファイルのページ数>印刷データの保存可能ページ数」である場合、印刷データ保存部312にジョブの印刷に必要とする、全ページを保存できない。このため、印刷データ保存部312をキャッシュ的に利用する必要があり、印刷時に印刷データ保存部312に該当ページが残っていない場合はPDL展開処理・RIP処理を行い再生成する。よって、ジョブ全体の印刷が完了するまでPDL解析部307は、ネットワークマウントされたPDFファイルが必要となる。この場合、図4(C)に示すNetworkMountモード430にて処理を行うこととなる。
【0037】
従って、S510の条件を満たす場合(S510にてYES)、印刷データ保存部312に保存されたデータに対し、印刷ジョブ制御部304は、PDL展開処理、RIP処理、印刷処理(S516〜S518)を行う。そして、S519にて、印刷ジョブ制御部304は、最終部判定処理を行う。ここでは、印刷ジョブ制御部304は、処理対象のジョブに対する最終部が印刷されたか否かを判定する。最終部の印刷が完了していない場合は(S519にてNO)、S516に戻り、印刷ジョブ制御部304は、残りの部数に対する処理を繰り返す。最終部の印刷が完了した場合(S519にてYES)、S520へ進む。S520にて、印刷ジョブ制御部304は、対象フォルダのネットワークマウントを解除する。そして、本処理フローを終了する。
【0038】
一方、「全ページの蓄積」が必要なケースであっても「PDFファイルのページ数<印刷データの保存可能ページ数」である場合は、印刷データ保存部312にRIP済みの画像データが全ページ分格納されている。そのため、PDL展開処理・RIP処理を再実行する必要はない。この場合、図4(B)に示すNetworkMountモード420にて処理を行うこととなる。
【0039】
従って、S510の条件を満たさない場合(S510にてNO)、処理対象となるジョブのデータに対し、最終ページまでPDL展開処理を行う(S511、S512)。その後、S513にて、印刷ジョブ制御部304は、ただちにPDFファイルのネットワークマウントを解除する。その後、印刷ジョブ制御部304は、生成された中間データに対し、RIP処理、印刷処理を適用する(S514、S515)。そして、本処理フローを終了する。
【0040】
<PDF印刷動作>
(PullPrintモード)
図6にPDF印刷動作のシーケンス図を示す。図6Aは情報処理装置のPDFファイルをPullPrintモードにて動作する場合のシーケンス図である。これは、図4(A)のPullPrintモード410に対応する。画像形成装置101内の処理においては、図5の処理フローを対応付けて説明する。
【0041】
S6101で、印刷ジョブ制御部304は、情報処理装置102〜104に対してPDFファイルのファイルサイズを問い合わせる。S6102にて、情報処理装置102〜140は、問い合わせの応答として画像形成装置101に要求されたPDFファイルのファイルサイズを通知する。印刷ジョブ制御部304は、S6103で図5のS503の判断を行い、S504に進み(S503にてYES)、ファイル取得方法をPullPrintモードとしての受信モードにする。S6104〜S6107は、データ受信処理(S504)であり、印刷ジョブ制御部304がデータ受信制御部305に対してデータの受信を指示する。そして、データ受信制御部305は、ネットワーク100経由で受信したPDFファイルを受信バッファ306へ書き込む。データの受信が終わり次第、データ受信制御部305は、印刷ジョブ制御部304にその旨を通知する。そして、通知の後、印刷ジョブ制御部304は、PDL解析部307にPDL展開要求を発行する(S6108)。
【0042】
続けて、印刷ジョブ制御部304は、RIP制御部313に中間データ保存部311のRIP処理待ちの中間データのページ数を確認する(S6109、S6110)。そして、印刷ジョブ制御部304は、RIP処理が先行可能な中間データのページ数を判断する。そして、S6114およびS6115から構成されるPDL展開処理は、中間データ保存部311に空きがある限り、RIP処理に対して先行する。また、PDL展開処理(S6114、S6115)は、非同期にページ単位で繰り返される(S6116)。
【0043】
同様に印刷ジョブ制御部304は、印刷データ保存部312の印刷処理に対して先行可能な印刷ページ数を算出する(S6111、S6112)。そして、S6117およびS6118から構成されるRIP処理は、印刷データ保存部312に空きがある限り、印刷処理に対してRIP処理が先行する。また、RIP処理(S6117、S6118)は、非同期にページ単位で繰り返される。最後に、印刷ジョブ制御部304は、印刷データ保存部312に保存された印刷データをエンジン制御部314を通じて印刷する(S6120、S6121)。また、印刷処理(S6120、S6121)は、非同期にページ単位で繰り返される。そして、本ジョブ処理を終了する。
【0044】
(NetworkMountモード(PDL展開後に解放))
図6Bは情報処理装置のPDFファイルをネットワークマウント(PDL展開後の解放型)する場合のシーケンス図である。これは、図4(B)のNetworkMountモード420に対応する。
【0045】
画像形成装置101は、情報処理装置102〜104のPDFファイルのサイズを取得する(S6201、S6202)。S6203にて、印刷ジョブ制御部304は、図5のS503の判定を行い、S508にて動作モード(NetworkMountモード420に相当)を設定する。そして、S6204にて、印刷ジョブ制御部304は、設定した動作モードに合わせて、ネットワークマウント数が一定以下になるまで待つ。前ジョブのネットワークマウントが解除されたら、印刷ジョブ制御部304は、図5のS509のマウント処理を行う。このマウント処理のシーケンスがS6205〜S6208であり、マウントが完了したら、S511に進む。そして、印刷ジョブ制御部304は、PDL展開処理の開始要求(S6209)とPDFの総ページ通知要求(S6210)とを送信する。
【0046】
PDL解析部307は、ネットワークマウント先のPDFファイルを部分的に画像形成装置101の受信バッファ306にキャッシュしながらPDFファイルのインデックス情報を検索する。そして、PDL解析部307は、PDFファイルのインデックス情報を取得する(S6211〜S6214)。S6215にてインデックス解析部308は、総ページ数の情報を検出し、印刷ジョブ制御部304に通知する。
【0047】
続けて印刷ジョブ制御部304は、S6217およびS6218にて、RIP処理待ちの中間データのページ数を取得する。更に、印刷ジョブ制御部304は、S6219およびS6220にて、印刷待ちの印刷データのページ数を取得する。S6221にて、印刷ジョブ制御部304は、印刷ジョブの出力条件をチェックする。そして、「印刷ページデータの全蓄積が不要」かつ「PDFの総ページ数<印刷待ちのページ数」を満たす場合、PDL展開終了後にマウントを解除し、ファイル解放を行うと判断する(S6222)。S6223およびS6224にて、印刷ジョブ制御部304は、PDL展開処理をページ数分繰り返す。そして、印刷ジョブ制御部304は、全ページの解析が終了したら印刷対象であるPDFファイルを含む情報処理装置のフォルダに対するネットワークマウントを解除する(S6227〜S6229)。
【0048】
なお、PDL展開処理、RIP処理、および印刷処理は、PullPrintモードと同様に、各処理部が実行可能になった時点で非同期にページ単位で繰り返される(S6225、S6232、S6235)。
【0049】
[NetworkMountモード(印刷処理後に解放)]
図6Cは、情報処理装置のPDFファイルをネットワークマウント(印刷完了後の解放型)する場合のシーケンス図である。S6301〜S6320は、図6BのS6201〜6220と同様のため、説明を割愛する。
【0050】
S6321では、図6BのS6221と同様に、印刷ジョブの出力条件をチェックする。「印刷ページデータの全蓄積が必要」かつ「PDFの総ページ数>印刷待ちとして蓄積できる最大ページ数」を満たす場合、印刷ジョブ制御部304は、ネットワークマウントの解除によるPDFファイルの解放を印刷処理終了後に行うと判断する(S6322)。
【0051】
なお、PDL展開処理、RIP処理、および印刷処理は、PullPrintモードと同様に、各処理部が実行可能になる各データのページ保存部に空きがある限り、非同期にページ単位で実行される。ここでは、印刷データ保存部312が印刷対象となるPDFファイルの全ページをキャッシュできない。そのため、図6Bとの違いとして、印刷時に該当するページデータが上書きされている場合、印刷ジョブ制御部304は、PDL展開処理・RIP処理を再実行する。この場合、印刷ジョブ制御部304は、S6331にてジョブの最終ページが印刷完了したことを確認し、その後、ネットワークマウントの解除の指示をFS制御部302に出す(S6333〜S6335)。
【0052】
[UI画面例]
図7にネットワークマウント形式で印刷する場合のUI操作画面の例とそのフローを示す。ユーザは画面上に表示された選択肢を選択することで、印刷を指示することが可能となる。
【0053】
選択画面710は、各種印刷機能の選択画面であり、印刷対象となるPDFファイルの参照先を選択する。ここでは、ネットワークに接続された情報処理装置を選択するため、ネットワークの項目711を選択する。次に、サーバ選択画面720で、印刷したいPDFファイルを含む情報処理装置721を選択する。次にフォルダ選択画面730で印刷したいPDFファイルを含むフォルダ731まで階層をたどる。目的のフォルダ内を示すファイル選択画面740にて、印刷対象となるPDFファイル741を選択し、プリントボタン742を押下する。印刷を指示されたPDFファイルは、ジョブ状況画面750にリストアップされる。ジョブ状況画面750において、印刷待ち、印刷中のものはジョブ状況タブ751に、印刷が完了したものはジョブ履歴タブ752に表示される。
【0054】
ジョブ状況画面760〜790においては、ジョブリストで印刷順を待つジョブのネットワークマウント状態をそれぞれ示す。ジョブ状況画面760のジョブ761は、S508で前ジョブのネットワークマウントの解除を待っている状態を示している。ジョブ状況画面770のジョブ771は、図5のS509〜S512、あるいはS509〜S519のネットワークマウントを開始してPDL解析処理を行っている状態を示している。ジョブ状況画面780のジョブ781は、図5におけるS513のマウント解除後で、S514〜S515のRIP処理・印刷処理を行っている状態を示す。
【0055】
S520では、印刷処理が終了しているので、ジョブ状況タブではなく、ジョブ履歴タブ752に表示される。ジョブ状況の詳細画面790は、詳細情報ボタン753を押下した場合に表示される。詳細画面790において、ネットワークのマウント状況を項目791に、データの参照元が外部の情報処理装置か、画像形成装置内部かの情報を項目792に示す。
【0056】
以上により、状況に応じて、ネットワークマウントによる外部記憶装置を画像形成装置のバッファとして活用し、画像形成装置のリソースの消費を抑制することができる。
【0057】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置に接続され、当該外部装置にて管理されているPDL形式のファイルの印刷を行う画像形成装置であって、
印刷対象であるファイルのサイズを取得する取得手段と、
当該画像形成装置の受信バッファが格納可能なサイズと、前記ファイルのサイズとを比較する比較手段と、
前記ファイルを含む前記外部装置のフォルダをマウントするネットワークマウント手段と
を有し、
前記ネットワークマウント手段は、当該ファイルに対する処理の開始の際に、前記ファイルのサイズが前記受信バッファのサイズを超える場合、前記ファイルを含む前記外部装置のフォルダをマウントすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
当該画像形成装置に対する負荷の閾値に従って、前記ネットワークマウント手段によりマウントするか否かを判定する判定手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記判定手段における閾値は、当該画像形成装置によるマウント数、もしくは、CPUの負荷率のうちの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ファイルを構成する全ページに対するPDL解析処理およびRIP処理が完了したデータを蓄積した上で、当該データに対する印刷処理を開始する必要があるかを、印刷設定に基づいて判断する判断手段を更に有し、
前記判断手段により印刷処理の開始の際に全ページのデータの蓄積が不要であると判断した場合は、前記ネットワークマウント手段は、PDL解析処理が終了した段階で、当該ファイルを含むフォルダのマウントを解除することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記判断手段により印刷処理の開始の際に全ページのデータの蓄積が必要であると判断した場合は、前記ネットワークマウント手段は、全ページの印刷処理が終了した段階で、当該ファイルを含むフォルダのマウントを解除することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記判断手段は、前記印刷設定において、複数部印刷、製本印刷、逆順印刷のうちの少なくとも一つの指定がなされている場合、全ページの蓄積が必要であると判断することを特徴とする請求項4または5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記判断手段は更に、前記ファイルを構成する全ページに対するPDL解析処理およびRIP処理が完了したデータのサイズが、当該画像形成装置の記憶部に保持できるサイズであるか否かを判断し、
前記ネットワークマウント手段は、前記判断手段にて当該画像形成装置の記憶部に保存できると判断した場合は、PDL解析処理が終了した段階で、当該ファイルを含むフォルダのマウントを解除することを特徴とする請求項5または6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
外部装置に接続され、当該外部装置にて管理されているPDL形式のファイルの印刷を行う画像形成装置における画像形成方法であって、
取得手段が、印刷対象であるファイルのサイズを取得する取得工程と、
比較手段が、当該画像形成装置の受信バッファが格納可能なサイズと、前記ファイルのサイズとを比較する比較工程と、
ネットワークマウント手段が、前記ファイルを含む前記外部装置のフォルダをマウントするネットワークマウント工程と
を有し、
前記ネットワークマウント工程において、当該ファイルに対する処理の開始の際に、前記ファイルのサイズが前記受信バッファのサイズを超える場合、前記ファイルを含む前記外部装置のフォルダをマウントすることを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
コンピュータを、
外部装置にて管理されている、印刷対象であるPDL形式のファイルのサイズを取得する取得手段、
当該コンピュータの受信バッファが格納可能なサイズと、前記ファイルのサイズとを比較する比較手段、
前記ファイルを含む前記外部装置のフォルダをマウントするネットワークマウント手段
として機能させ、
前記ネットワークマウント手段は、当該ファイルに対する処理の開始の際に、前記ファイルのサイズが前記受信バッファのサイズを超える場合、前記ファイルを含む前記外部装置のフォルダをマウントすることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−82120(P2013−82120A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223455(P2011−223455)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】