説明

画像形成装置および駆動電圧生成回路

【課題】アクチュエータを駆動するための駆動電圧生成回路を、必要な特性をもつが、電流定格の高い(高価な)部品を使用せず、少ない部品点数で構成することで、そのコストを安価に抑える。
【解決手段】容量性負荷をインク吐出用のアクチュエータとして用いた複数のヘッドを有する画像形成装置において、アクチュエータに印加する駆動電圧を出力する駆動電圧生成回路に電流増幅回路を複数備え、各々の電流増幅回路は、複数のバイポーラトランジスタと複数の抵抗素子によって構成され、各々の電流増幅回路のバイポーラトランジスタの出力電流負荷が均等になるよう動作する回路からなり、各々の電流増幅回路から出力された駆動電圧波形を結合させ、各々のヘッドのアクチュエータを制御する各々のヘッドドライバに、結合させた駆動電圧波形を印加する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および駆動電圧生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アクチュエータにピエゾ素子を用いたインクジェットプリンタでは、インク滴の滴サイズやインク滴の吐出速度を制御するために、ピエゾ素子に駆動波形と呼ぶ電圧波形を印加する。このピエゾ素子の容量性負荷が大きい場合や、駆動波形の電圧変動幅が増大した場合や、駆動波形のスルーレートが急峻な場合は、ピエゾ素子に供給する電流の最大値が増加するので、駆動波形の生成回路は大電流出力に対応できるようにしなければならない。
【0003】
大電流出力に対応する回路構成としては、個々のトランジスタをより定格電流の大きなものに変更する方法や、または複数の増幅回路を並列に配置し電流負荷を分散させる方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、電圧波形生成回路への過負荷を回避する目的で、複数の駆動波形発生回路を用意し、この駆動波形発生回路への負荷が一定水準以下に収まるように、個々のピエゾ素子がどの駆動波形発生回路から駆動波形の供給を受けるかを制御する装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、今までの回路構成では、大電流定格のトランジスタに変更する場合には周波数応答性が低下して急峻な駆動波形を出力できなくなる問題や、複数の駆動回路に負荷分散させた場合には一部の回路に負荷が偏るケースが発生するために低定格品を採用できず結局高価になるという問題や、または特許文献1に開示の技術のように負荷の偏りを制御するために、スイッチ回路や制御信号の追加で部品の追加や回路の複雑化によりコストアップとなる問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、画像形成装置において容量性負荷を用いたアクチュエータを駆動するための駆動電圧生成回路における電流増幅回路を、必要な特性をもつが、電流定格の高い(高価な)部品を使用せず、少ない部品点数で構成することで、そのコストを安価に抑えることができる画像形成装置および駆動電圧生成回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、容量性負荷をインク吐出用のアクチュエータとして用いた複数のヘッドを有する画像形成装置において、前記アクチュエータに印加する駆動電圧を出力する駆動電圧生成回路に電流増幅回路を複数備え、各々の電流増幅回路は、複数のバイポーラトランジスタと複数の抵抗素子によって構成され、各々の電流増幅回路のバイポーラトランジスタの出力電流負荷が均等になるよう動作する回路からなり、各々の電流増幅回路から出力された駆動電圧波形を結合させ、各々のヘッドのアクチュエータを制御する各々のヘッドドライバに、結合させた前記駆動電圧波形を印加する構成としたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、容量性負荷をインク吐出用のアクチュエータとして用いた複数のヘッドを有する画像形成装置における、前記アクチュエータに印加する駆動電圧を出力する駆動電圧生成回路であって、電流増幅回路を複数備え、各々の電流増幅回路は、複数のバイポーラトランジスタと複数の抵抗素子によって構成され、各々の電流増幅回路のバイポーラトランジスタの出力電流負荷が均等になるよう動作する回路からなり、各々の電流増幅回路から出力される駆動電圧波形を結合させ、各々のヘッドのアクチュエータを制御する各々のヘッドドライバに、結合させた前記駆動電圧波形を印加するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容量性負荷をインク吐出用のアクチュエータとして用いる画像形成装置において、アクチュエータに供給する駆動電圧の電流増幅を、安価な構成部品の電流定格内で行えるので、画像形成装置およびその駆動電圧生成回路のコストを安価に抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、一実施形態であるインクジェット記録装置の外観の一例を示す図である。
【図2】図2は、同実施形態のインクジェット記録装置の全体の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、同実施形態のインクジェット記録装置の電気的システム構成を示す図である。
【図4】図4は、駆動電圧生成部について説明する図である。
【図5】図5は、駆動波形によるピエゾ素子の駆動について説明する図である。
【図6】図6は、一般的な電流アンプ回路の回路構成について説明する図である。
【図7】図7は、負荷電流の偏りについて説明する図である。
【図8】図8は、同実施形態における電流アンプ間の電流負荷を均等にすることができる回路構成ついて説明する図である。
【図9】図9は、同実施形態における電流調整機能付き電流アンプ回路について説明する図である。
【図10】図10は、同実施形態における電流調整用抵抗の配置について説明する図である。
【図11】図11は、同実施形態における負荷変動での波形変形を抑制する抵抗の配置について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像形成装置の一実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施形態であるインクジェット記録装置の外観の一例を示す図である。同図に示すインクジェット記録装置1は、装置本体に、給紙トレイ2と、排紙トレイ3と、カートリッジ装填部6と、操作部7と、を備える。
【0013】
給紙トレイ2は、インクジェット記録装置1に装着した記録媒体である用紙を装填するために備えられており、画像が記録(形成)された用紙は、排紙トレイ3にてストックされる。
【0014】
カートリッジ装填部6は、インクジェット記録装置1の前面4の一端部側に備えられ、前面4から前方側に突き出し、上面5よりも低くなるよう備えられている。
【0015】
また、カートリッジ装填部6の前面4から突き出た上面には、操作キーや表示器などの操作部7が備えられる。なお、カートリッジ装填部6は、インクカートリッジ10の脱着を行うために開閉可能な前カバー8を有している。
【0016】
図1においてインクカートリッジ10は4個(着色剤:黒、シアン、マゼンタ、イエロー)しか図示していないが、この他に処理液用カートリッジが1〜4個(処理液を必要とする着色剤インク用に)装着される。なお、噴射信頼性が高い色など処理液が必要でない場合もある。
【0017】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置の概略構成について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態のインクジェット記録装置の全体の概略構成を示す図である。
【0018】
図2に示すインクジェット記録装置1は、ラインプリンタとも呼ばれ、印字時には、ライン上に印字幅分の印字ヘッド11(以下、ヘッド11と記す)を固定して配置し、搬送されてきた記録用紙に印字するようになっている。このヘッド11には、インクを吐出するための複数のピアゾ素子とこの複数のピアゾ素子に対応した複数のノズルが配置される。通常、印字ヘッドユニット12(以下、ヘッドユニット12と記す)に搭載されるヘッド11は、複数のものが千鳥状に並べて配置されるものであるが、ラインヘッドとして、1つのユニットを搭載しても構わない。
【0019】
このヘッドユニット12には、通常、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインクを吐出する複数のヘッド11を用紙搬送方向に配置し、インク吐出方向を下方に向けて装着している。なお、インク色の数及び用紙搬送方向に対しての配列順序はこれに限るものではない。
【0020】
また、図面には記載していないが、ヘッドユニット12には、各ヘッド11に各色のインクを供給するためのサブタンクを搭載している。この各色のサブタンクにはインク供給チューブを介して、カートリッジ装填部に装着されたインクカートリッジ(インクタンク)からインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填部にはインクカートリッジ(インクタンク)内のインクを送液するための供給ポンプユニットが設けられている。
【0021】
通常、インクジェット記録装置1のヘッドユニット12は、ヘッド11のノズル開口部のインク乾燥防止のため、維持ユニット13でキャップした状態で待機している。ユーザが印字開始を始めるとヘッドユニット12は維持ユニット13でのキャップを解除し、印字開始するためのホームポジションへ移動する。印字は通常この位置で固定して行われる。印字が終わり、ヘッドユニット12をキャップさせたい場合は、待機状態として維持ユニット13へ移動しキャップさせる。長時間印字させない場合や電源を落とす場合は、この維持ユニット13でヘッド11のノズル開口部をキャップした状態にしておく。
【0022】
図2の給紙ユニット14には、用紙をセットする給紙トレイが搭載されており、この給紙トレイから用紙を1枚ずつ分離し給送するようになっている。この給紙トレイは任意の用紙サイズに適用できるよう構成されており、用紙がセットされた際にセンサで検知して、用紙サイズと用紙の方向(縦か横か)も判別できるようになっている。また、センサにより給紙トレイの用紙が無くなった時や給紙時のエラ−も検知できるようになっている。また、連続で印字する時は、紙間も変更可能であり、用紙サイズや搬送速度(印字速度)に応じてその都度調整することも可能である。
【0023】
給紙された用紙は、エアー吸着用ファン15によって発生される負圧によって、エアー吸着用の搬送ベルト16に吸着され一枚毎に搬送される。そこで用紙がヘッドユニット12を通過する時に各ヘッド11よりインクを吐出させて文字や画像を印字する。印字終了した用紙は、排紙ユニット17へ搬送され排紙トレイに蓄積される。
【0024】
また、図1に示さないが、空吐出する際の廃液インクを収める廃液ユニット18がヘッドユニット12の下の所定の位置に配置されている。通常、この廃液ユニットは満タンになるとセンサで検知しユーザが廃液として捨てるようになっている。
【0025】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置の電気的システム構成について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態のインクジェット記録装置の電気的システム構成を示す図である。
【0026】
図3に示すインクジェット記録装置1は、大まかに、複数のヘッド11を備え印字を行うヘッドユニット12と、用紙を給紙トレイから給紙し搬送させるための給紙ユニット14と、ヘッド11のメンテナンス等を行うための維持ユニット13と、ヘッドユニット12を制御するヘッドコントロールボード19や各ユニットを制御する各種コントロールボード20から構成されている。
【0027】
ヘッドコントロールボード19は、外部のPC30からの印刷データに基づきヘッド11の各ピエゾ素子に対するインク滴の吐出やインク滴の吐出量を制御する。その際、駆動電圧生成部191は、後述するピエゾ素子に対する駆動電圧の生成を行う。このヘッドコントロールボード19、および各種コントロールボード20は、CPUや、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ又はDRAMなどの揮発性メモリ等のメモリを実装した制御手段である。ヘッドコントロールボード19のメモリには、ヘッドユニット12を制御するための制御プログラム等が記憶されている。
【0028】
各ユニットと情報処理装置であるPC30とはUSBで接続され、PC30と各ユニットとのデータやコマンドのやりとりはUSB通信によって行われる。本インクジェット記録装置1では、給紙ユニット14と維持ユニット13はRS232Cで通信しているが、共通化を図るため、RS232CをUSBに変換している。これは市販の変換ケーブルを使用しており、これによりPC30とは全てのユニットがUSB通信できることになり、PC30では、接続された全てのユニットを異なるUSB機器として認識し、各識別IDにより通信、制御することができる。
【0029】
また、ヘッドユニット12は、複数のヘッド11を制御できるヘッドコントロールボード19をそれぞれUSBで接続し、USBハブでまとめてPC30と接続するようになっている。図3では、ライン上に配置した10個のヘッド11を1枚のヘッドコントロールボード19で制御するように示しているが、印字サイズ等により1枚のヘッドコントロールボード19で制御できるヘッド11の数は10個に限定するものではない。
【0030】
上記構成では、ヘッド11の構成を変更したい場合、それに対応したヘッドコントロールボード19をUSBで接続するだけで変更に対応することができるようになる。また、PC30からみれば、USB機器として認識されるので今まで通リ容易に対応が可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、給紙ユニット14からの所定のディスクリート信号をヘッドコントロールボード19にパラレルに接続する構成としている。よってヘッドコントロールボード19を追加する場合、このディスクリート信号をパラレルに接続していけば容易に対応することができる。
【0032】
次に、駆動電圧生成部191にいて説明する。図4は、駆動電圧生成部191について説明する図である。
【0033】
駆動電圧生成部191は、波形データ生成部41、D/Aコンバータ42、電圧増幅回路であるオペアンプ等の電圧アンプ43、および電流増幅回路である電流アンプ回路44(以下、電流アンプ44と記す)を備えている。ヘッドユニット12には、ヘッド11を構成するピエゾ素子46と、駆動電圧生成部191からの駆動波形およびヘッドコントロールボード19から渡される所定の制御信号(階調データ)に従いこのピエゾ素子46によるインク液の吐出を制御するヘッドドライバ45を備える。なお、波形データ生成部41は、波形データを記憶した不揮発性メモリを用いて実現してもよいし、ヘッドコントロールボード19に備わるCPUが所定の制御プログラムに従い波形データを生成するようにすることで実現してもよい。
【0034】
上記構成のもと、波形データ生成部41で生成された波形データは、D/Aコンバータ42でアナログ電圧に変換され電圧アンプ43で電圧増幅される。電圧増幅された波形は電流アンプ44で電流増幅され、ヘッドドライバ45に送られる。この駆動電圧生成部191からヘッドユニット12側へ出力される電圧波形は、ピエゾ素子46を駆動するための波形であり、駆動波形と呼ばれる。
【0035】
次に、駆動波形によるピエゾ素子46の駆動について、図5を用いて説明する。図5は、駆動波形によるピエゾ素子46の駆動について説明する図である。
【0036】
ピエゾ素子46をアクチュエータとするインクジェット記録装置1では、ヘッドドライバ45に駆動波形と階調データを入力し、次段の各ピエゾ素子46に対して、形成する画像に応じて選択的に駆動波形を伝達し、狙いのピエゾ素子46から指定した階調のインク滴を吐出させる。
【0037】
ところで、電流アンプ44が出力すべき電流は、駆動するピエゾ素子46の数が多いほど、また電圧の変動が大きいほど大きくなる。つまり、形成する画像の印字率が高く濃度の濃いチャートであれば、多数のピエゾ素子46を多数回駆動させる必要があり、電流アンプ回路は大電流を出力する必要がある。一方、チャートの印字率も濃度も低い場合には電流アンプ回路は微少な電流を出力すればよい。
【0038】
続いて、一般的な電流アンプ回路の回路構成について、図6を用いて説明する。図6は、一般的な電流アンプ回路の回路構成について説明する図である。
【0039】
一般的な電流アンプ回路には、図6に示す電流アンプ44のように、バイポーラトランジスタ(以下、トランジスタと略記)を用いた2段以上のB級アンプ方式が用いられる。この方式でピエゾ素子46に大電流を供給するケースでは、後段のソーストランジスタ44aおよびシンクトランジスタ44bが、大きなコレクタ−エミッタ間電流を流す必要がある。このとき、各トランジスタにはコレクタ−エミッタ間電圧とコレクタ−エミッタ間電流の積となる損失が発生するので、一般的には、この損失を許容できる部品を選定する必要があるが、単純に許容損失の大きなトランジスタを選定すると部品が大型で高価になる。このため、比較的安価なトランジスタを用いた複数の回路を用意し、ピエゾ素子46をグループ分けして各電流アンプ回路に負荷を分担させることでコストを抑える手法も知られている(前述)。
【0040】
次いで、負荷電流の偏りについて、図7を用いて説明する。図7は、負荷電流の偏りについて説明する図である。
【0041】
ここでは、一例として、ヘッド1・11−1にマゼンタ(M)とイエロー(Y)のインク吐出ノズルを持ち、ヘッド2・11−2にシアン(C)とブラック(K)のインク吐出ノズルを持ち、ヘッド1・11−1の駆動を行う駆動波形は電流アンプ1・44−1で出力し、ヘッド2・11−2の駆動を行う駆動波形は電流アンプ2・44−2で出力するインクジェット記録装置1を考える。なお、図7のヘッドドライバ1・45−1およびヘッドドライバ2・45−2はそれぞれヘッド1・11−1およびヘッド2・11−2のアクチュエータを制御するものである。この装置で高濃度の赤色チャートを出力するにはMとYのインクを同時に多数出力する必要があり、電流アンプ1・44−1のみに高負荷がかかる。一方でCとKは吐出しないのであれば、電流アンプ2・44−2は動作しないで良い。このように、形成する画像によってはインク吐出を行うノズルの分布に偏りが発生し、その結果各電流アンプの電流負荷にも偏りが発生する。
【0042】
次に、本実施形態において特徴的な電流アンプ間の電流負荷を均等にすることができる回路構成ついて、図8を用いて説明する。図8は、電流アンプ間の電流負荷を均等にすることができる回路構成ついて説明する図である。なお、図8では、2つの電流アンプを例示しているが、その数は任意であって、3つ以上の電流アンプを用いるようにしてもよい。
【0043】
本実施形態では、チャートによらず複数の電流アンプが均等の電流負荷で電流を出力するインクジェット記録装置1を提供する。つまり、例えば図8に示すように、2つの電流アンプ44−1,44−2を用いた装置の場合、その出力を結合させる回路構成で、2回路で一つの駆動波形を生成したのち、複数のヘッドドライバ(図8では、ヘッドドライバ1・45−1,ヘッドドライバ2・45−2)に分岐させて本実施形態におけるアクチュエータであるピエゾ素子46を駆動する。これにより例えばMとYについてだけ大きな電流負荷が発生した場合にも、2つの電流アンプ(電流アンプ1・44−1,電流アンプ2・44−2)で電流を供給することができる。つまり、それぞれの電流アンプの電流負荷を低減(図8の例では半減)させることができる。また、画像形成時にCMYKの各色のアクチュエータのすべてに対する駆動波形が大電流を出力するケースは、印刷媒体への過剰なインク塗布となるために発生しないことから、各電流アンプの出力を結合することで、個々の電流アンプが出力する最大電流を低減することができる。
【0044】
ただし、一般に複数の電流アンプを用いて一つの駆動波形を生成する場合、個々の電流アンプの部品特性のばらつきにより一部の回路に電流が偏ってしまってその回路における最大電流が増大するため、何らかの負荷均一化制御が必要になる。本実施形態では、後述のように、複数のバイポーラトランジスタと複数の抵抗素子のみからなる電流調整機能付き電流アンプを複数並列に接続して、個々の(複数のトランジスタからなる)電流アンプが出力する最大電流を抑えるとともに、個々の電流アンプが均等の負荷で電流を供給する回路を実現する。
【0045】
(実施例1)
ここでは、実施例1として、電流調整機能付き電流アンプ回路の構成について、図9を用いて説明する。図9は、電流調整機能付き電流アンプ回路について説明する図である。
【0046】
電流調整機能付き電流アンプ回路の具体的な構成としては、図9に示すように前段50がトランジスタ51a,51bからなるエミッタコモンの増幅回路で、後段60がトランジスタ61a,61b,61c,61dからなるコレクタコモンの増幅回路であるインバーテッドダーリントン方式とし、この後段の増幅回路を少なくとも2つ以上並列に接続する構成とする。この構成により電流負荷を分散させることができるので、個々のトランジスタが出力する最大電流を低減する効果が得られる。
【0047】
(実施例2)
次に、電流調整機能付き電流アンプ回路における負荷均等化のための電流調整用抵抗の配置について、図10を用いて説明する。図10は、電流調整用抵抗の配置について説明する図である。
【0048】
電流調整機能は前段トランジスタのコレクタ端子51a,51bと後段トランジスタ61a,61b,61c,61dのベース端子間に抵抗71a,71b,71c,71dを配置することで実現する。これは、例えば一方の増幅回路のソース側トランジスタ61aがもう一方のソース側トランジスタ61bよりも多くのコレクタ−エミッタ電流を流した場合、トランジスタ61a,61bのhFEに応じた電流が流れるため、抵抗71aにより大きな電流が流れて抵抗71aの端子間に電流×抵抗値の電位差を発生する。これにより、トランジスタ51a−61a間には51a−61b間よりも大きな電位差を生じ、後段トランジスタ61aの電流を抑制する作用を生じる(逆も同様であり、シンク側も同様である)。よって、抵抗71a,71b,71c,71dは、相対的に大きな電流が流れた増幅回路(トランジスタ)の電流を抑制するバランサーとして機能して、各回路の電流負荷を均等化することができる。
【0049】
(実施例3)
次に、負荷変動に伴う駆動波形の変形を抑制するための抵抗の配置について、図11を用いて説明する。図11は、負荷変動での波形変形を抑制する抵抗の配置について説明する図である。
【0050】
ピエゾ素子46をアクチュエータとする場合、ピエゾ素子46の容量が大きい場合と小さい場合で駆動波形が変形するという問題もある。つまり、多数のノズルから同時にインク吐出する場合にはヘッドドライバ45内のスイッチ回路(アナログスイッチ)47が多数オンすることで、ヘッドドライバ45の合成抵抗が極めて小さくなり、その負荷容量が大きくなってアクチュエータへ瞬間的に大電流が流れ込む。この大電流は伝送路の寄生インダクタンスによって電圧波形の変形を引き起こしピエゾ素子46の駆動に異常をきたす。
【0051】
そこで、図11に示すように、前段トランジスタ51a,51bのエミッタ端子と後段トランジスタ61a,61b,61c,61dの各コレクタ端子間に抵抗72a,72bを配置した構成とする。なお、図11に示した構成は、上述の実施例2の構成に抵抗72a,72bをさらに配置したものであるが、これに限るものではなく、上述の実施例1の構成に抵抗72a,72bを同様に配置した構成とすることもできる。この構成により、同時オンするノズル数が多くとも電流アンプ44からピエゾ素子46までの抵抗値を一定以上に保つことができ、瞬間的な電流の流れ込みを抑制することができる。その結果、駆動波形の変形を抑制することができる。
【0052】
以上、説明したように、安価な部品(定格電流の小さいトランジスタおよび抵抗)を用いて、かつ最低限の部品点数で構成される上述の電流アンプ44を、ピエゾ素子46等の容量値が変動しうる容量性負荷をインク吐出用のアクチュエータとして用いる画像形成装置に採用することで、アクチュエータに供給する駆動電圧の電流増幅を、安価な構成部品の電流定格内で行えるので、電流増幅回路および画像形成装置のシステム全体のコストを安価に抑えることができる。
【0053】
なお、上記にて、発明を実施するための実施の形態について説明を行ったが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を損なわない範囲で変更することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 インクジェット記録装置
11 印字ヘッド(ヘッド)
12 印字ヘッドユニット(ヘッドユニット)
13 維持ユニット
14 給紙ユニット
15 エアー吸着用ファン
16 搬送ベルト
17 排紙ユニット
18 廃液ユニット
19 ヘッドコントロールボード
20 各種コントロールボード
30 PC
41 波形データ生成部
42 D/Aコンバータ
43 電圧アンプ
44 電流アンプ回路
45 ヘッドドライバ
46 ピエゾ素子
47 スイッチ回路(アナログスイッチ)
191 駆動電圧生成部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2006−088695公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性負荷をインク吐出用のアクチュエータとして用いた複数のヘッドを有する画像形成装置において、
前記アクチュエータに印加する駆動電圧を出力する駆動電圧生成回路に電流増幅回路を複数備え、
各々の電流増幅回路は、複数のバイポーラトランジスタを含んで構成され、各々の電流増幅回路のバイポーラトランジスタの出力電流負荷が均等になるよう動作する回路からなり、
各々の電流増幅回路から出力された駆動電圧波形を結合させ、各々のヘッドのアクチュエータを制御する各々のヘッドドライバに、結合させた前記駆動電圧波形を印加する構成とした
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電流増幅回路は、
バイポーラトランジスタによるB級アンプ方式であり、
前段が複数のバイポーラトランジスタを用いたエミッタコモンの増幅回路であり、後段が複数のバイポーラトランジスタを用いたコレクタコモンの増幅回路であるインバーテッドダーリントン方式で構成され、
少なくとも後段は、複数の前記コレクタコモンの増幅回路を並列接続した
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記前段のバイポーラトランジスタのコレクタ端子と前記後段のバイポーラトランジスタのベース端子間に、前記後段のバイポーラトランジスタのベース端子と対になった抵抗を接続したことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記前段のバイポーラトランジスタの各々のエミッタ端子と前記後段の各バイポーラトランジスタの全コレクタ端子間に、それぞれ抵抗を接続したことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
容量性負荷をインク吐出用のアクチュエータとして用いた複数のヘッドを有する画像形成装置における、前記アクチュエータに印加する駆動電圧を出力する駆動電圧生成回路であって、
電流増幅回路を複数備え、
各々の電流増幅回路は、複数のバイポーラトランジスタを含んで構成され、各々の電流増幅回路のバイポーラトランジスタの出力電流負荷が均等になるよう動作する回路からなり、
各々の電流増幅回路から出力される駆動電圧波形を結合させ、各々のヘッドのアクチュエータを制御する各々のヘッドドライバに、結合させた前記駆動電圧波形を印加するようにした
ことを特徴とする駆動電圧生成回路。
【請求項6】
前記電流増幅回路は、
バイポーラトランジスタによるB級アンプ方式であり、
前段が複数のバイポーラトランジスタを用いたエミッタコモンの増幅回路であり、後段が複数のバイポーラトランジスタを用いたコレクタコモンの増幅回路であるインバーテッドダーリントン方式で構成され、
少なくとも後段は、複数の前記コレクタコモンの増幅回路を並列接続した
ことを特徴とする請求項5に記載の駆動電圧生成回路。
【請求項7】
前記前段のバイポーラトランジスタのコレクタ端子と前記後段のバイポーラトランジスタのベース端子間に、前記後段のバイポーラトランジスタのベース端子と対になった抵抗を接続したことを特徴とする請求項6に記載の駆動電圧生成回路。
【請求項8】
前記前段のバイポーラトランジスタの各々のエミッタ端子と前記後段の各バイポーラトランジスタの全コレクタ端子間に、それぞれ抵抗を接続したことを特徴とする請求項6に記載の駆動電圧生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−250386(P2012−250386A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123316(P2011−123316)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】