説明

画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】耐摩耗性とトナー離型性に優れ、トナー成分に含有されるシリカの付着による異常画像発生を長期間抑制可能な画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】支持体201上に、感光層202及び、3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物及びポリビニルアセタール化合物を含有する表面保護層203を備えた電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、トナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナーを用いて可視像を形成する現像手段と、可視像を記録媒体に転写する転写手段と、転写像を定着させる定着手段とを有する画像形成装置とする。前記感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される手段とを一体に構成しプロセスカートリッジとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性が高く、且つトナー離型性に優れ、特定のトナー(トナー母体粒子の表面にシリカ微粒子が添着してなるトナー)成分に含有される該シリカの付着による異常画像などの発生を長期にわたって抑制することが可能な電子写真感光体、及び特定のトナーを用いることにより、優れた耐久性と共に、安定で高品質の画像形成を長期間にわたり実現できる画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機感光体(OPC)はさまざまな利点から、無機感光体に代わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。この理由としては、例えば(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、などが挙げられる。
【0003】
最近、画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面の層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を上げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。
【0004】
したがって有機感光体の高耐久化においては摩耗量を低減することが不可欠であるが、更にはクリーニング性を高くする手段としてトナー離型性を高くすることも同時に要求される。特に、摩耗量が減少することによって表面にトナー成分に含有されているシリカが感光体に付着した場合は付着シリカの除去が非常に困難であったため、繰り返しの使用において付着シリカを起点としてシリカやトナー成分が感光体上に徐々に付着していき、付着物が画像に現れる異常画像の発生につながるという問題を有しており、耐摩耗性と高離型性を兼ね備える良好な表面性を有する有機感光体が必要とされている。
【0005】
このような感光体表面の耐摩耗性と高離型性を両立する技術としては、例えば、(1)表面保護層に有機シラン化合物と、ポリビニルブチラールを含有したもの(特許文献1参照)、(2)表面保護層にシロキサン樹脂と、ポリビニルブチラールを含有したもの(特許文献2参照)、(3)表面保護層に硬化連鎖重合性官能基及び珪素原子を有する酸化防止剤、劣化防止剤、遮光剤又は潤滑材を重合した化合物を含有したもの(特許文献3参照)、(4)表面層にポリオルガノシロキサンを構成成分として含有する共重合体が分散され、かつ該表面層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を硬化した架橋樹脂層を用いたもの(特許文献4参照)、(5)感光体最外層表面の純水との接触角が100°以上になるようにフッ素樹脂微粒子を10重量%以上含有したもの(特許文献5参照)、(6)電子写真感光体の周面がディンプル形状の凹部を複数有することで、高いクリーニング性を得る方法(特許文献6参照)、(7)感光層が、特定の構造単位を有するポリエステル樹脂、及びカルボン酸とアルコールとがエステル結合してなる炭素数20〜150のワックスを含有するもの(特許文献7)、などが挙げられる。しかしながら、これらのいずれにおいても、有機感光体に求められる電気的、及び機械的耐久性と高離型性を長期に渡って維持するための耐久性を十二分に満足するには至っていない。
【0006】
以上の点から、前記先行技術文献においても良好な表面性を有する有機感光体として、未だ充分満足できる総合特性を有しているとは言えないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、耐摩耗性が高く、且つトナー離型性に優れ、特にトナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナー成分に含有されるシリカの付着による異常画像などの発生を長期にわたって抑制することが可能な表面保護層を有する電子写真感光体を用いることにより、優れた耐久性と共に、安定で高品質の画像形成を長期間実現できる画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(以降、「硬化物」と呼称することがある。)及び、ポリビニルアルコールとアルデヒドのアセタール化反応により合成されたポリビニルアセタール化合物を含有する特定の表面保護層を有する電子写真感光体を配備し、電子写真感光体表面に形成された静電潜像を少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナーを用いて現像する現像手段を備えた画像形成装置からなる構成により、前記課題が効果的に達成できることを知見した。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、以下の〔1〕〜〔7〕に記載する発明によって上記課題が解決される。以下、本発明について具体的に説明する。
【0009】
〔1〕:上記課題は、電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体は支持体上に少なくとも感光層及び表面保護層を有してなり、該表面保護層が、3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物及び、ポリビニルアルコールとアルデヒドのアセタール化反応により合成されたポリビニルアセタール化合物を含有することを特徴とする画像形成装置により解決される。
【0010】
〔2〕:上記〔1〕に記載の画像形成装置において、前記ポリビニルアセタール化合物が、下記一般式(I)で表されることを特徴とする。
【0011】
【化1】

【0012】
[式(I)中、RとRは互いに異なる炭素数1から3のアルキル基を示す。k、l、m、nは組成比(mol%)を表し、kまたはlの一方は0であってもよいが、kとlの合計、m及びnはいずれも0よりも大きい値を有し、k、l、m及びnの総和は100である。]
【0013】
〔3〕:上記〔2〕に記載の画像形成装置において、前記ポリビニルアセタール化合物の数平均分子量が10万以上で、且つ水酸基を含む繰り返し単位の組成比nが、25mol%以上であることを特徴とする。
【0014】
〔4〕:上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の画像形成装置において、前記ポリビニルアセタール化合物のガラス転移温度が70℃以上であることを特徴とする。
【0015】
〔5〕:上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の画像形成装置において、前記ポリビニルアセタール化合物の含有量が、前記3官能以上のラジカル重合性モノマー100質量部に対し、5〜100質量部であることを特徴とする。
【0016】
〔6〕:上記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の画像形成装置において、前記疎水化処理されたシリカ微粒子の一次平均粒径が100〜200nmであることを特徴とする。
【0017】
〔7〕:上記課題は、少なくとも電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段とを有し、〔1〕乃至〔6〕のいずれかに記載の画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジにより解決される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(硬化物)及び、ポリビニルアルコールとアルデヒドのアセタール化反応により合成されたポリビニルアセタール化合物を含有する表面保護層を有する電子写真感光体を用いることにより、優れた耐摩耗性とトナー離型性を発揮すると共に、トナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナーを使用した場合にも、該シリカの付着による異常画像などの発生を長期にわたって抑制することが可能であり、これにより、優れた耐久性と共に、安定した高品質の画像形成を長期間にわたり実現できる画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の画像形成装置における電子写真感光体の層構成例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置における電子写真感光体の別の層構成例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明における画像形成装置は、電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体は支持体上に少なくとも感光層及び表面保護層を有してなり、該表面保護層が、3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(硬化物)及び、ポリビニルアルコールとアルデヒドのアセタール化反応により合成されたポリビニルアセタール化合物を含有することを特徴とするものである。
ここで、前記ポリビニルアセタール化合物が、下記一般式(I)で表されることが好ましい。
【0021】
【化2】

【0022】
[式(I)中、RとRは互いに異なる炭素数1から3のアルキル基を示す。k、l、m、nは組成比(mol%)を表し、kまたはlの一方は0であってもよいが、kとlの合計、m及びnはいずれも0よりも大きい値を有し、k、l、m及びnの総和は100である。]
【0023】
即ち、本発明の画像形成装置においては、電子写真感光体表面に形成される静電潜像を現像手段により現像して可視像を形成するトナーとして、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナーを用いるものであり、該画像形成装置に配備される電子写真感光体の表面保護層は、少なくとも3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(硬化物)及び、ポリビニルアルコールとアルデヒドのアセタール化反応により合成されたポリビニルアセタール化合物を含有するものである。このような構成により、高い耐摩耗性と高い離型性が得られると共に、前記トナーを使用した場合にもシリカの付着による異常画像などの発生を長期にわたって抑制することができる。ポリビニルアセタール化合物としては、前記一般式(I)で表されるものが好ましく用いられ、これによって長期にわたって高い離型性が得られることがわかった。
【0024】
特に、前記ポリビニルアセタール化合物(樹脂)のガラス転移温度が70℃以上であるものを用いることによって、樹脂が低い粘性を示すことからより優れた離型性の効果が得られる。また、前記ポリビニルアセタール化合物の数平均分子量が10万以上で、且つ水酸基を含む繰り返し単位の組成比nが、25mol%以上であるものを用いることが望ましい。つまり、化合物内に多くの水酸基を有することから極性が高く、疎水性シリカの付着低減効果が非常に高いものと推定される。
前記ポリビニルアセタール化合物を用いれば、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナーに対して優れた離型性を発揮し、トナーから脱離したシリカが表面保護層に付着することで引き起こされる異常画像の発生を抑制する優れた効果を得ることができる。
その理由は定かではないが、以下のような効果が得られるものと推定される。
【0025】
即ち、本発明において静電潜像を現像するために用いられるトナーの構成成分に含有される疎水化処理されたシリカ微粒子(疎水性シリカ)は、トナーの流動性や帯電特性に対して有効な役割を担うが、疎水性シリカ表面の水酸基量が少なく相対的に炭素成分が増加しているため、シリカの極性は小さく(低極性に)なっている。
そのため、例えば、通常用いられている感光体(感光体表面の極性が小さく、疎水性シリカと類似の性質を有する)の場合には、感光体表面に疎水性シリカが付着しやすいものと考えられる。
それに対して、本発明に用いる電子写真感光体の表面保護層に含有されるポリビニルアセタール化合物は、該化合物内に多くの水酸基を含有することに由来して、高い極性を有する。そのため、表面保護層と、低極性の疎水性シリカとの付着力は低減し、本発明における画像形成装置においては、感光体表面に疎水性シリカが付着しにくくなっているものと考えられる。
【0026】
前述のように、本発明の画像形成装置に配備される電子写真感光体の表面保護層は、3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(硬化物)及び、ポリビニルアルコールとアルデヒドのアセタール化反応により合成されたポリビニルアセタール化合物を含有するものである。
3官能以上のラジカル重合性モノマーを用いることにより、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化反応によって3次元の網目構造の形成が発達して架橋密度が高い表面保護層が得られ、高い耐摩耗性が達成されると共に、同時に短時間で硬化され高硬度の架橋結合を構成して耐久性の向上が達成される。更に、表面保護層中に電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が組み込まれるために安定な電気特性が長期にわたって得られる。更に、ポリビニルアセタール化合物との相溶性に優れるため、網目構造中にポリビニルアセタール化合物中の水酸基を均一に分布させることが可能となるため、高い離型性と耐摩耗性を両立することが可能となった。
本発明に対して、例えば、官能基を有しない低分子電荷輸送物質を表面保護層中に含有させた場合、その相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、表面保護層の機械的強度も低下し、また電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が見られる。
【0027】
また従来、電子写真感光体の表面保護層として、3官能以上のラジカル重合性モノマーと共に、2官能以上の電荷輸送性化合物を用いた場合には、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため、表面保護層の内部応力が高くなり、硬化樹脂中に歪みが発生し、クラックや傷の発生が頻発する問題を有していた。しかし、本発明におけるポリビニルアセタール化合物を含有した場合には、表面保護層中に存在するポリビニルアセタール樹脂が内部応力を緩和し、クラックや傷の発生を抑制することが可能となった。
【0028】
従って、本発明における3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(硬化物)、及びポリビニルアセタール化合物を含有してなる表面保護層が設けられた電子写真感光体が配備され、現像手段により少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナーを用いて現像する画像形成装置によれば、長期にわたって高離型性が維持され、優れた画質を安定して出力できる画像形成装置を実現することが可能となる。
以下、電子写真感光体について詳しく説明する。
【0029】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、支持体上に少なくとも感光層及び表面保護層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
<表面保護層>
表面保護層は、前述のように、3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(硬化物)及び、ポリビニルアセタール化合物を含有する。ポリビニルアセタール化合物は、ポリビニルアルコールとアルデヒドのアセタール化反応、即ち、ポリビニルアルコール(PVA;ポリビニルアルコール樹脂)をアルデヒドでアセタール化して得られる樹脂である。
【0030】
上記ポリビニルアセタール化合物としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール樹脂とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂とアセトアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルアセトアセタール樹脂(狭義のポリビニルアセタール樹脂)、ポリビニルアルコール樹脂とn−ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらのポリビニルアセタール化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
ポリビニルアセタール化合物の製造方法としては、特に限定されるものではない。一例としては、ポリビニルアルコール樹脂を温水もしくは熱水に溶解し、得られた水溶液を0〜95℃程度の所定の温度に保持した状態で、アルデヒド及び酸触媒を添加し、攪拌しながらアセタール化反応を進行させる。次いで、反応温度を上げて熟成することにより反応を完結させる。その後、中和、水洗及び乾燥の諸工程を行う。このようにして、粉末状のポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。
【0032】
また、前記ポリビニルアセタール化合物のうち、特にポリビニルアセタール化合物のガラス転移温度が70℃以上であるものを用いることで、より優れた効果を得られる。
ガラス転移温度が70℃以上のポリビニルアセタール化合物を得る方法としては、アセチル基量により大きく異存し、アセチル基量を減らすことでガラス転移温度を高くすることが可能となる。
ガラス転移温度は、JIS K 7121に記載されている示差走査熱量測定(DSC)法により求めることができる。
【0033】
これらのポリビニルアセタール化合物は前記製造方法により得ることができるが、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、エスレックBX−L、エスレックBH−3、エスレックBX−1、エスレックBX−5、エスレックKS−10、エスレックKS−1、エスレックKS−3、エスレックKS−5(いずれも積水化学工業社製)、デンカブチラール#5000-A、デンカブチラール#5000-D、デンカブチラール#6000-C、デンカブチラール#6000-EP、デンカブチラール#6000-CS、デンカブチラール#6000-AS(いずれも電気化学工業社製)等が挙げられる。
【0034】
前述のようにガラス転移温度が70℃以上であるもの、更には数平均分子量が10万以上で、且つ水酸基を含む繰り返し単位の組成比nが、25mol%以上であるものを用いることがより望ましいが、このような分子量や水酸基量は、用いるポリビニルアルコール樹脂やアセタール化反応により、調整することが可能である。
尚、ポリビニルアセタール化合物の分子量は反応に用いるポリビニルアルコール樹脂の重合度をもとに、計算分子量として求めることができる。
水酸基量は、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することで得られるために、13C−NMR評価にてアセタール化度を評価することで求めることができる。
【0035】
前記アセタール化反応に用いるアルデヒドとしては、特に限定されず、例えば、炭素数が1〜10のアルデヒド等が挙げられる。より具体的には、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が好ましく、より好ましくは、炭素数が4のブチルアルデヒドである。
【0036】
表面保護層中における前記ポリビニルアセタール化合物の含有量は、耐摩耗性、高離型性のバランスの点から、3官能以上のラジカル重合性モノマー100質量部に対し、5〜100質量部が好ましい。ポリビニルアセタール化合物の含有量が、5質量部未満であると、離型性が低下してしまい、100質量部を超えると、摩耗性の低下が見られ、寿命が低下してしまう。
【0037】
〈3官能以上のラジカル重合性モノマー〉
本発明に用いられる3官能以上のラジカル重合性モノマーとは、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば、縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。
前記ラジカル重合性官能基としては、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。
これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
【0038】
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(a)で表される官能基が挙げられる。
【0039】
【化3】

【0040】
[ただし、式(a)中、X1は、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基〔R10は、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基を表す。〕、又はS−基を表す。]
【0041】
上記式(a)の置換基を有していてもよいアリーレン基としては置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、また、アルキル基としてはメチル基、エチル基等が、アラルキル基としてはベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等が、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0042】
上記一般式(a)で表される基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基、などが挙げられる。
【0043】
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(b)で表される官能基が挙げられる。
【0044】
【化4】

【0045】
[ただし、式(b)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、−COOR79基〔R79は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または−CONR8081(R80及びR81は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表し、互いに同一または異なっていてもよい。)を示す。〕を表す。また、Xは上記式(a)のXと同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y、Xの少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。]
【0046】
上記一般式(b)の置換基を有していてもよいアリール基としては置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等が、置換基を有していてもよいアルコキシ基としては置換基を有していてもよいメトキシ基あるいはエトキシ基等が、置換基を有していてもよいアルキル基としては置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等が、置換基を有していてもよいアラルキル基としては置換基を有していてもよいベンジル、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等が挙げられる。
【0047】
上記一般式(b)で表される基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
【0048】
なお、これらX、X、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0049】
これらのラジカル重合性官能基の中では、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
【0050】
前記3官能以上のラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記において、HPA変性はヒドロキシプロピルアクリレート変性を指し、ECH変性はエピクロロヒドリン変性を指し、EO変性はエチレンオキシ変性を指し、PO変性はプロピレンオキシ変性を指す。
【0051】
前記3官能以上のラジカル重合性化合物の含有量は、耐摩耗性と電気特性との点から、表面保護層全量(100質量部)中、30質量部〜70質量部が好ましい。前記含有量が、30質量部未満であると、耐摩耗性が低下してしまい、70質量部を超えると、電荷輸送性が低下してしまう。
【0052】
また、前記表面保護層は、少なくとも、3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(硬化物)とポリビニルアセタール化合物を含有するものであるが、更なる機能付与の目的で、更にラジカル重合性モノマー、機能性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。
【0053】
前記ラジカル重合性モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、などが挙げられる。
【0054】
前記機能性モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したものやラジカル重合性官能基を有する反応性添加剤、例えば、PO変性−2−ネオペンチルグリコールジアクリレートのような反応性シリコーン系添加剤も有効に使用できる。これらの機能性モノマーとしては1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
前記ラジカル重合性モノマーや機能性モノマーの含有量は、表面保護層を形成する塗工液固形分(100質量部)中、0.01質量部〜30質量部が好ましく、0.05質量部〜20質量部がより好ましい。
【0056】
前記ラジカル重合性オリゴマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
ただし、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーや機能性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると表面保護層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招くおそれがある。このため、本発明に用いる3官能以上のラジカル重合性化合物100質量部に対し100質量部以下が好ましい。
【0057】
〈電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物〉
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とは、正孔輸送性構造又は電子輸送性構造を有しており、かつラジカル重合性官能基を有する化合物を意味する。
前記正孔輸送性構造としては、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール、などが挙げられる。
前記電子輸送性構造としては、例えば、縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基、ニトロ基、などが挙げられる。
前記ラジカル重合性官能基としては、炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合可能な基であればいずれでもよく、ラジカル官能基が1官能又は2官能のものが好ましい。
【0058】
前記ラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であってもいずれでもよい。
【0059】
ラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物として、トリアリールアミン構造を有する電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーは好ましく用いられる。ここで、ラジカル重合性基としてはアクリロイル基あるいはメタクリロイル基を有するものが好ましい。
トリアリールアミン構造を有する電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーは鎖部分から懸下する窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているために立体的位置取りに融通性ある状態で固定されている。これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また電子写真感光体の保護層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造をとりうるものと推測される。
以下に電荷輸送性構造としてトリアリールアミン構造を有するラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物の具体例(No.1〜No.38)を示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【0060】
【化5】

【0061】
【化6】

【0062】
【化7】

【0063】
【化8】

【0064】
【化9】

【0065】
【化10】

【0066】
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、表面保護層に電荷輸送性能を付与するために重要であり、該電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は、表面保護層全量(100質量部)中、20質量部〜80質量部が好ましく、30質量部〜70質量部がより好ましい。前記含有量が、20質量部未満であると、表面保護層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れることがあり、80質量部を超えると、表面保護層の架橋密度の低下や離型性の低減を招き、高い耐摩耗性と離型性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30質量部〜70質量部の範囲が最も好ましい。
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の合成例を下記に例示する。
【0067】
<電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の合成例>
本発明における前記電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば、特許第3164426号公報記載の方法に基づいて合成される。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物[下記構造式(B)]の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物[下記構造式(A)]113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え、室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体としてシリカゲル、展開溶媒としてトルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。
得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして下記構造式(B)の白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。融点は64.0〜66.0℃である。
【0068】
【化11】

【0069】
上記で得られた上記構造式(B)で表される白色結晶の元素分析値(単位は%)を、計算値と併せて下記表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(例示化合物No.7)
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物[前記構造式(B)]82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして(例示化合物No.7)の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。融点は117.5〜119.0℃である。
得られたトリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(例示化合物No.7)の元素分析値(単位は%)を、計算値と併せて下記表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
〈重合開始剤〉
前記表面保護層は、少なくとも、3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(硬化物)と、ポリビニルアセタール化合物を含有するものであるが、3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化反応を効率よく進行させるために重合開始剤を使用してもよい。
前記重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられるが、重合効率の観点から光重合開始剤が好ましい。
【0074】
前記熱重合開始剤としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;などが挙げられる。
【0076】
その他の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
なお、光重合促進効果を有するものを単独又は前記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
前記重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100質量部に対し、0.5質量部〜40質量部が好ましく、1質量部〜20質量部がより好ましい。
【0078】
〈フィラー〉
前記表面保護層は、少なくとも、3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(硬化物)及び、ポリビニルアルコールとアルデヒドのアセタール化反応により合成されたポリビニルアセタール化合物を含有するものであるが、これら成分以外に、耐摩耗性の向上を目的としてフィラーを含有させることが好ましい。
【0079】
前記フィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラーのいずれかが用いられる。
前記有機性フィラーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末などが挙げられる。
前記無機フィラーとしては、例えば、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物;フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物;チタン酸カリウム、窒化硼素などが挙げられる。これらの中でも、フィラーの硬度の点から無機フィラーを用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。
【0080】
前記フィラーの平均一次粒径は、表面保護層の光透過率や耐摩耗性の点から0.01μm〜0.5μmであることが好ましい。前記フィラーの平均一次粒径が、0.01μm未満であると、分散性の低下等を引き起こし、耐摩耗性の向上効果が十分に発揮されないことがあり、0.5μmを超えると、表面保護層分散液中においてフィラーの沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生することがある。
前記フィラーの表面保護層における含有量は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、表面保護層の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。したがって、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0081】
前記フィラーは、少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、表面処理することがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、更には耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。
【0082】
前記表面処理剤としては、特に制限はなく、従来用いられている表面処理剤をすべて使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。
前記表面処理剤の使用量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、フィラー質量(100質量部)中、3質量部〜30質量部が好ましく、5質量部〜20質量部がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こすことがある。
【0083】
前記表面保護層塗工液には、必要に応じて、各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能である。
前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能である。前記可塑剤の使用量は、表面保護層塗工液の全固形分(100質量部)中、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
前記レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用可能である。前記レベリング剤の使用量は、表面保護層塗工液の全固形分(100質量部)中、3質量部以下が好ましい。
【0084】
前記表面保護層は、少なくともポリビニルアセタール化合物と、3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを含有する表面保護層塗工液を塗布し、3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを反応させて硬化し、反応物(硬化物)とすることにより形成される。
【0085】
なお、前記表面保護層塗工液は、必要に応じて溶媒により希釈して塗布する。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記溶媒による希釈率は、組成物の溶解性、塗工法、目的とする表面保護層の厚みなどにより変わり、適宜選択することができる。
【0086】
前記塗布は、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法などにより行うことができる。
本発明においては、前記表面保護層塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え、硬化させて、表面保護層を形成するが、前記外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。
熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行われる。
【0087】
前記加熱温度は、100℃以上170℃以下が好ましい。前記加熱温度が、100℃未満であると、反応速度が遅く、完全に反応が終了しないことがあり、170℃を超えると、反応が不均一に進行し表面保護層中に大きな歪みが発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。前記光のエネルギーとしては、主に紫外光(UV)に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。
照射光量は、50mW/cm以上1,000mW/cm以下が好ましい。前記照射光量が、50mW/cm未満であると、硬化反応に時間を要することがあり、1,000mW/cmを超えると、反応の進行が不均一となり、表面保護層の荒れが激しくなることがある。放射線のエネルギーとしては電子線(EB)を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
前記表面保護層の厚みは、表面保護層が用いられる感光体の層構造によって異なるため、以下に示す電子写真感光体の層構造の説明にしたがって記載する。
【0088】
<電子写真感光体の層構造>
本発明の電子写真感光体の層構造について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の画像形成装置における電子写真感光体の層構成例を示す概略断面図であり、支持体201上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層202が設けられた単層構造の表面に、表面保護層203を設けた構成を示したものである。
図2は、本発明の画像形成装置における電子写真感光体の別の層構成例を示す概略断面図であり、支持体201上に、電荷発生機能を有する電荷発生層204と、電荷輸送機能を有する電荷輸送層205とが積層された積層構造の表面に、表面保護層203を設けたものである。
【0089】
(支持体)
前記支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着法、又はスパッタリング法により、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
【0090】
また、前記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、支持体として用いることができる。
前記導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉;導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を溶剤に分散させた塗布液を塗布することにより設けることができる。
前記溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどが挙げられる。
更に、適当な円筒基体上に、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、支持体として良好に用いることができる。
【0091】
(感光層)
前記感光層は、積層構造でも単層構造でもよい。
前記感光層が積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、前記感光層が単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。
以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて説明する。
【0092】
〔積層構造の感光層〕
(電荷発生層)
前記電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料としては、例えば、結晶セレン、アモルファス−セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、アモルファス−シリコン等が挙げられる。アモルファス−シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有する
アゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
また、前記電荷発生層のバインダー樹脂としては、上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、(1)アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料、(2)ポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
【0095】
前記(1)の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−2
36051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特
開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
また、前記(2)の具体例としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
【0096】
また、前記電荷発生層には、低分子電荷輸送物質を含有させることができる。
前記低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
前記電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正孔輸送物質としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
前記電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前記真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられる。
前記キャスティング法としては、前記無機系もしくは有機系電荷発生物質、必要に応じてバインダー樹脂を、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
前記電荷発生層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜5μmが好ましく、0.05μm〜2μmがより好ましい。
【0098】
(電荷輸送層)
前記電荷輸送層は、電荷輸送機能を有する層であり、少なくとも電荷輸送物質及び結着樹脂が含有されるものが一般的である。
前記電荷輸送物質としては、前記電荷発生層について記載する箇所に記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。特に高分子電荷輸送物質を用いることは、表面保護層塗工時における下層の溶解性の低減効果を示し、とりわけ有用である。
【0099】
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0100】
前記電荷輸送物質の含有量は、前記結着樹脂100質量部に対し、20質量部〜300質量部が好ましく、40質量部〜150質量部がより好ましい。ただし、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
前記電荷輸送層の下層部分の塗工に用いられる溶媒としては、前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、電荷輸送層の下層部分の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
【0101】
前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して30質量部以下が好ましい。
前記レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以下が好ましい。
前記電荷輸送層の下層部分の厚みは、5μm〜40μmが好ましく、10μm〜30μmがより好ましい。
【0102】
前記表面保護層が電荷輸送層の表面(表面部分)である場合、前述の表面保護層作製方法に記載したように、かかる電荷輸送層の下層部分上に前記ラジカル重合性組成物を含有する塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、熱や光の外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、表面保護層が形成される。
前記表面保護層の厚みは、1μm〜20μmが好ましく、2μm〜10μmがより好ましい。前記厚みが、1μm未満であると、厚みムラによって耐久性がバラツクことがあり、20μmを超えると、電荷輸送層全体の厚みが厚くなり電荷の拡散から画像の再現性が低下することがある。
【0103】
<単層構造の感光層>
前記単層構造の感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層であり、本発明の表面保護層を感光層上に設けることによって有用に用いられる。
単層構造の感光層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解乃至分散し、これを塗布し、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層、電荷輸送層において、既に述べたものと同様なものが使用できる。前記結着樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、先に挙げた高分子電荷輸送物質も使用可能であり、表面保護層への感光層組成物の混入を低減できる点で有用である。
前記感光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5μm〜30μmが好ましく、10μm〜25μmがより好ましい。
【0104】
単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は、感光層全量(100質量部)中、1質量部〜30質量部が好ましく、感光層に含有される結着樹脂は感光層全量(100質量部)中、20質量部〜80質量部が好ましく、電荷輸送物質は10質量部〜70質量部が良好に用いられる。
【0105】
(中間層)
本発明の電子写真感光体においては、表面保護層と電荷輸送層、又は表面保護層と単層構造の感光層との間に中間層を設けることが可能である。
前記中間層は、ラジカル重合性組成物を含有する表面保護層中に感光層組成物の混入により生ずる硬化反応の阻害や表面保護層の凹凸を防止する。また、感光層と表面保護層の接着性を向上させることも可能である。
【0106】
前記中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として含有する。前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、などが挙げられる。
前記中間層の形成方法としては、特に制限はなく、一般に用いられる塗工法を採用することができる。
前記中間層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.05μm〜2μmが好ましい。
【0107】
(下引き層)
本発明の電子写真感光体においては、支持体上に下引き層を設けることができる。
前記下引き層は、一般には樹脂を主成分として含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。前記樹脂としては、前記下引き層上に表面保護層、感光層、電荷発生層、又は中間層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが好ましい。
【0108】
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
前記下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0109】
前記下引き層は、前記感光層と同様に溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。
前記下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。その他、前記下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。
前記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5μm以下が好ましい。
【0110】
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、単層構造の感光層、表面保護層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
【0111】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコールエステル、トコフェロール類、などが挙げられる。
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン、などが挙げられる。
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン、などが挙げられる。
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、などが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン、などが挙げられる。
なお、これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、添加する層の総質量に対し0.01質量部〜10質量部が好ましい。
【0112】
[トナー]
本発明の画像形成装置に好適に用いられるトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるものである。即ち、トナー母体粒子の表面に少なくとも1種類以上の疎水化処理されてなるシリカ微粒子が付着してなるものである。
本発明に用いるトナー母体粒子は樹脂、顔料、帯電制御剤、離型剤を溶融混練し、冷却した後に粉砕、分級する混練粉砕法も用いることが可能であるが、粒径、形状を均一にするため、乳化重合法や溶解懸濁法といった重合トナー工法を用いて作製されたものを用いることがより好ましい。
以下に、ポリエステル重合法トナーを一例として挙げ、その構成材料及び製造方法について、具体的に説明する。
【0113】
<ポリエステル>
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。
多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。
【0114】
2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど)、アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど)、脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)、上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物、上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物等が挙げられる。
これらのうち、好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)、3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェ ノールノボラック、クレゾールノボラックなど)、上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0115】
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。
【0116】
2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など)、アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)等が挙げられる。このうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)等が挙げられる。
なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0117】
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイド等、公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。
【0118】
ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。
酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。
また、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
【0119】
ポリエステルには、上記の重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルを含有することが好ましい。ウレア変性のポリエステルは、上記の重縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。
【0120】
多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど)、脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど)、芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど)、芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど)、イソシアネート類、前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの、およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0121】
多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0122】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40質量%、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは2〜20質量%である。0.5質量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40質量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0123】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは平均1.5〜3個、さらに好ましくは平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0124】
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)等が挙げられる。
【0125】
2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタンなど)、脂環式ジアミン(4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど)、および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)等が挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0126】
アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物等が挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0127】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり1/2未満であったりすると、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0128】
また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0129】
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法等により製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
【0130】
上記(PIC)を反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いてもよい。例えば、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)等のイソシアネート(PIC)に対して不活性な溶剤が適用できる。
【0131】
また、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)等が挙げられる。
【0132】
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。
【0133】
ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0134】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置100に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでもよい。
【0135】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。
また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0136】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。
また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0137】
<着色剤>
着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。
【0138】
着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15質量%、好ましくは3〜10質量%である。着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
マスターバッチの製造、またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の重合体、あるいはこれらとビニル化合物との共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して使用できる。
【0139】
<荷電制御剤>
荷電制御剤としては公知のものをいずれも使用できる。例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、及びサリチル酸誘導体の金属塩等である。
【0140】
具体的には、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。このうち、特にトナーを負極性に制御する物質が好ましく使用される。
【0141】
荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5質量部の範囲であるものとする。10質量部を超える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、荷電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
【0142】
<離型剤>
離型剤としては、融点が50〜120℃の低融点のワックスが、バインダー樹脂との分散の中でより離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これにより定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布することなく高温オフセットに対し効果を示す。
このようなワックス成分としては、以下のものが挙げられる。
ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス、及びパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。
また、これら天然ワックスの外に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。
さらに、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド、及び低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等も適用できる。
荷電制御剤、離型剤はマスターバッチ、バインダー樹脂とともに溶融混練することもできるし、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えてもよい。
【0143】
<製造方法>
次に、トナーの製造方法について説明する。なお下記においては、具体例を示すものとし、本発明に適用するトナーの製造方法は、下記に限定されるものではない。
【0144】
(a)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を、単独あるいは2種以上組み合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好適である。
有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100質量部に対し、通常0〜300質量部、好ましくは0〜100質量部、さらに好ましくは25〜70質量部である。
【0145】
(b)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体は、水単独でもよいし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。
トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。
【0146】
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0147】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果を発揮することができる。
好適なフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)等が挙げられる。
【0148】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を右する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
【0149】
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。
例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1μm、及び3μm、ポリスチレン微粒子0.5μm及び2μm、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1μm、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。
また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0150】
上記の樹脂微粒子、無機化合物分散剤と併用して使用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させてもよい。
例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸等の酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えば、アクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等の酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等の含窒素化合物、またはその複素環を有するもの等のホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類等が使用できる。
【0151】
分散方法としては、特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波等の公知の方式をいずれも適用できる。
この中でも、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0152】
(c)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。
この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート等が挙げられる。
【0153】
(d)上記反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。
また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する等の方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解等の操作によっても除去できる。
【0154】
(e)本発明においては、上述のようにして得られたトナー母体粒子に、疎水性シリカを混合攪拌等で添着(付着)させ、トナーを得る。
前記トナー表面に付着する外添剤は、一次平均粒径100〜200nmの疎水性シリカが好ましく用いられる。一次平均粒径が100nm以下の場合、トナークリーニング性が低下し、スジ状の異常画像が発生し、200nm以上の場合、トナー流動特性や帯電特性が悪化し、地汚れ等が発生する。
なお、疎水性シリカにおける一次平均粒径は、SEM、TEM等の電子写真顕微鏡を用いた観察像から50個の粒子の直径を測定し、平均値を導出することで求めることが可能である。
【0155】
疎水性シリカとは、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、表面処理剤として、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、等が挙げられる。
【0156】
疎水化度は50〜90%であることが好ましい。疎水化度が50%より小さい場合、高温高湿度下でのトナーの電荷のリークが大きくなり、トナー飛散や感光体カブリを引き起こしやすくなる。また疎水化度が90%より大きい場合は低温低湿度下でのトナーの帯電が過剰にチャージアップしやすくなり、画像の濃度不良が発生したりすることがある。また余剰の疎水化剤が存在することによりトナーの流動性が悪くなるなどの悪影響を及ぼす。
以下に、疎水化度の測定方法を示す。
【0157】
(疎水化度の測定方法)
200mlのビーカーに水50mlを入れ、さらに0.2gの外添剤微粒子を添加する。そして、マグネットスターラーで緩やかに攪拌しつつ、滴下時に先端が水中に浸漬されたビューレットからメタノールを加え、浮かんでいる外添剤微粒子が沈み始め、完全に沈んだ時の滴下メタノールのml数を読み、次式から求める。
疎水化度(%)=[滴下メタノールのml数/(50+滴下メタノールのml数)]×100
【0158】
更に、前記疎水性シリカに加え、その他の外添剤を併用することも可能であり、無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
前記外添剤の前記トナーにおける含有量としては、0.01〜5.0重量%が好ましく、0.01〜2.0重量%がより好ましい。
【0159】
[画像形成装置]
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、クリーニング手段、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。なお、帯電手段と、露光手段とを合わせて静電潜像形成手段と称することもある。
【0160】
(静電潜像形成手段)
前記静電潜像形成手段は、電子写真感光体上に静電潜像を形成する手段である。
前記電子写真感光体としては、本発明の前記電子写真感光体を用いる。
前記静電潜像の形成は、例えば、前記電子写真感光体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。
前記静電潜像形成手段は、例えば、前記電子写真感光体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記電子写真感光体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記電子写真感光体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
【0161】
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
【0162】
前記帯電部材の形状としてはローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等、どのような形態をとってもよく、電子写真装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは、例えば、Zn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。又はブラシを用いる場合、例えば、ファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電器とする。
【0163】
前記帯電器は、上記のような接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電器を用いることが好ましい。
前記帯電器が電子写真感光体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって電子写真感光体表面を帯電するものが好ましい。
また、帯電器が、電子写真感光体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、該帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって電子写真感光体表面を帯電するものが好ましい。
【0164】
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0165】
(現像手段)
前記現像手段は、前記静電潜像を、前記トナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する手段である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を前記トナー乃至現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0166】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0167】
前記現像器内では、例えば、前記トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該電子写真感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0168】
前記現像器に収容させる現像剤としては前記記載の方法で作製したトナーを用いる。
近年、高画質化を達成するため、小粒径で球形に近い形状のトナーが用いられているが、本発明においては、トナークリーニングが困難になることから、一次平均粒径100〜200nmである外添剤として疎水性シリカをトナー表面に用いることによって、クリーニング性の向上や感光体とトナー間または、中間転写ベルトとトナー間の付着力低減効果を図っている。更にトナー間の付着力を低減し、流動性や帯電特性の向上を図ることができる。
【0169】
しかしながら、該シリカは電子写真感光体表面へ付着しやすく、さらに付着したシリカが徐々に蓄積したり、あるいはトナー樹脂が付着することで、付着物が画像として現れる異常画像を発生しやすい。従って少なくとも本発明の3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化物と、ポリビニルアセタール化合物からなる表面保護層を用いた電子写真感光体、及びトナー母体粒子の表面に少なくとも1種類以上の疎水化処理されてなるシリカ微粒子が付着してなるトナーを用いることで優れた離型性を得ることができるため、異常画像のない良好な画像を得ることが可能となる。
【0170】
(転写手段)
前記転写手段は、前記可視像を記録媒体に転写する手段であるが、中間記録媒体を用い、該中間記録媒体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間記録媒体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを含む態様がより好ましい。
【0171】
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記電子写真感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間記録媒体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の記録媒体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0172】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記電子写真感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0173】
(定着手段)
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0174】
(除電手段)
前記除電工程は、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0175】
(クリーニング手段)
前記クリーニング工程は、前記電子写真感光体上に残留する前記電子写真トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0176】
(リサイクル手段)
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記電子写真用カラートナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0177】
(制御手段)
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0178】
本発明の画像形成装置は、本発明における表面保護層を有する電子写真感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、記録媒体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成装置である。場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した前記プロセスを必ずしも有するものではない。
【0179】
ここで、図3は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電ローラ3が用いられる。その他の帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
【0180】
次に、均一に帯電された感光体1上に静電潜像を形成するために画像露光部5が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0181】
次に、感光体1上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット6が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0182】
次に、感光体上で可視化されたトナー像を記録媒体9上に転写するために転写チャージャ10が用いられる。また、転写をより良好に行うために転写前チャージャを用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0183】
次に、記録媒体9を感光体1より分離する手段として分離チャージャや、分離爪が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャとしては、前記帯電手段が利用可能である。
【0184】
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシや、クリーニングブレード15が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行うためにクリーニング前チャージャを用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
【0185】
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ2、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。尚、図3中の符号8はレジストローラを示す。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段を用いた画像形成装置である。
前記画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱可能としたものであってもよい。
【0186】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の前記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段とを有し、画像形成装置本体に着脱可能である。
図4は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【0187】
図4のプロセスカートリッジは、本発明の前記電子写真感光体(感光ドラム)101を内蔵し、帯電手段(帯電装置)102、現像手段(現像装置)104、転写手段(転写装置)106、クリーニング手段(クリーニングブレード)107を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図4中の符号103は露光手段(露光)、105は記録媒体をそれぞれ示す。
【0188】
次に、図4に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、電子写真感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。
この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段108により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の電子写真感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0189】
本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジは、耐摩耗性が高く、平滑な表面性を有し、電気特性の変動が殆どない表面保護層を有する電子写真感光体を用いているので、摩耗による画像劣化を抑制し、長期にわたって、高精細、高画質な画像を形成することができる。
【実施例】
【0190】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」はすべて質量部である。
まず画像形成装置にて評価するため、これに用いるトナーと電子写真感光体を下記により作製した。
【0191】
[トナー製造例1]
(母体粒子の作製)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物529部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で5時間反応させた後、反応槽中に無水トリメリット酸44部を添加し、常圧下、180℃で2時間反応させて、未変性ポリエステル樹脂を合成した。
得られた未変性ポリエステル樹脂は、数平均分子量が2500、重量平均分子量が6700、ガラス転移温度が43℃、酸価が25mgKOH/gであった。
【0192】
水1200部、カーボンブラックPrintex35(デクサ社製;DBP吸油量=42ml/100mg、pH=9.5)540部及び未変性ポリエステル樹脂1200部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。二本ロールを用いて、得られた混合物を150℃で30分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチを調製した。
【0193】
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、未変性ポリエステル樹脂378部、カルナバワックス110部、サリチル酸金属錯体E−84(オリエント化学工業社製)22部及び酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下、80℃まで昇温し、80℃で5時間保持した後、1時間かけて30℃まで冷却した。次に、反応容器中に、マスターバッチ500部及び酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合して原料溶解液を得た。
【0194】
得られた原料溶解液1324部を反応容器に移し、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填し、送液速度が1kg/時、ディスク周速度が6m/秒の条件で3パスして、C.I.ピグメントレッド及びカルナバワックスを分散させ、ワックス分散液を得た。
【0195】
次に、ワックス分散液に未変性ポリエステル樹脂の65質量%酢酸エチル溶液1324部を添加した。上記と同様の条件でウルトラビスコミルを用いて1パスして得られた分散液200部に、少なくとも一部にベンジル基を有する第4級アンモニウム塩で変性した層状無機鉱物モンモリロナイト(クレイトンAPA; Southern Clay Products社製)3部を添加し、T.K.ホモディスパー(特殊機化工業社製)を用いて、30分間攪拌し、トナー材料の分散液を得た。
得られたトナー材料の分散液の粘度を、以下のようにして測定した。
【0196】
直径20mmのパラレルプレートを備えたパラレルプレート型レオメータAR2000(ディー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、ギャップを30μmにセットし、トナー材料の分散液に対して、25℃において、せん断速度30000秒-1で30秒間せん断力を加えた後、せん断速度を0秒-1から70秒-1まで20秒間で変化させた時の粘度(粘度A)を測定した。また、パラレルプレート型レオメータAR2000を用いて、トナー材料の分散液に対して、25℃において、せん断速度30000秒-1で30秒間せん断力を加えた時の粘度(粘度B)を測定した。
【0197】
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部及びジブチルスズオキシド2部を仕込み、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステル樹脂を合成した。
得られた中間体ポリエステル樹脂は、数平均分子量が2100、重量平均分子量が9500、ガラス転移温度が55℃、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が51mgKOH/gであった。
【0198】
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、中間体ポリエステル樹脂410部、イソホロンジイソシアネート89部及び酢酸エチル500部を仕込み、100℃で5時間反応させて、プレポリマーを合成した。得られたプレポリマーの遊離イソシアネート含有量は、1.53質量%であった。
【0199】
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン170部及びメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応させ、ケチミン化合物を合成した。得られたケチミン化合物のアミン価は、418mgKOH/gであった。
【0200】
反応容器中に、トナー材料の分散液749部、プレポリマー115部及びケチミン化合物2.9部を仕込み、TK式ホモミキサー(特殊機化製)を用いて5000rpmで1分間混合して、油相混合液を得た。
【0201】
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、水683部、反応性乳化剤(メタクリル酸のエチレンオキシド付加物の硫酸エステルのナトリウム塩)エレミノールRS−30(三洋化成工業社製)11部、スチレン83部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部及び過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400rpmで15分間撹拌し、乳濁液を得た。乳濁液を加熱して、75℃まで昇温して5時間反応させた。次に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30部を添加し、75℃で5時間熟成して、樹脂粒子分散液を調製した。
【0202】
次に、水990部、樹脂粒子分散液83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5重量%水溶液エレミノールMON−7(三洋化成工業社製)37部、高分子分散剤カルボキシメチルセルロースナトリウムの1質量%水溶液セロゲンBS−H−3(第一工業製薬社製)135部及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、水系媒体を得た。
【0203】
得られた水系媒体1200部に、油相混合液867部を加え、TK式ホモミキサーを用いて、13000rpmで20分間混合して、分散液(乳化スラリー)を調製した。
さらに、撹拌機及び温度計をセットした反応容器中に、乳化スラリーを仕込み、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、分散スラリーを得た。続いて、分散スラリー100質量部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて12000rpmで10分間混合した後、濾過した。
得られた濾過ケーキに10質量%塩酸を加えて、pHを2.8に調整し、TK式ホモミキサーを用いて12000rpmで10分間混合した後、濾過した。さらに、得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて12000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、最終濾過ケーキを得た。
得られた最終濾過ケーキを、循風乾燥機を用いて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子を得た。
得られたトナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子を下記により添着(付着)した。
【0204】
(外添剤の付着)
得られたトナー母体粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水化度65%、平均一次粒子径120nmの疎水性シリカ1.5部を添加し、ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製)にて周速33m/sの条件の下、3分間混合した。混合後の粉体を目開き38μmのメッシュに通過させ、粗大粉を取り除き疎水性微粉末を外添した静電荷像現像用トナー1を作製した。
【0205】
[トナー製造例2]
以下の外添剤を添着(付着)させた以外は、トナー製造例1と同様に、静電荷像現像用トナー2を作製した。
(外添剤の付着)
得られたトナー母体粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水化度65%、平均一次粒子径200nmの疎水性シリカ1.5部を添加し、ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製)にて周速33m/sの条件の下、3分間混合した。混合後の粉体を目開き38μmのメッシュに通過させ、粗大粉を取り除き疎水性微粉末を外添した静電荷像現像用トナー2を作製した。
【0206】
[トナー製造例3]
以下の外添剤を添着(付着)付着させた以外は、トナー製造例1と同様に、静電荷像現像用トナー3を作製した。
(外添剤の添付着)
得られたトナー母体粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水化度65%、平均一次粒子径70nmの疎水性シリカ1.5部を添加し、ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製)にて周速33m/sの条件の下、3分間混合した。混合後の粉体を目開き38μmのメッシュに通過させ、粗大粉を取り除き疎水性微粉末を外添した静電荷像現像用トナー3を作製した。
【0207】
[トナー製造例4]
以下の外添剤を添着(付着)させた以外は、トナー製造例1と同様に、静電荷像現像用トナー4を作製した。
(外添剤の付着)
得られたトナー母体粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水化度65%、平均一次粒子径250nmの疎水性シリカ1.5部を添加し、ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製)にて周速33m/sの条件の下、3分間混合した。混合後の粉体を目開き38μmのメッシュに通過させ、粗大粉を取り除き疎水性微粉末を外添した静電荷像現像用トナー4を作製した。
【0208】
[トナー製造例5]
以下の外添剤を添着(付着)させた以外は、トナー製造例1と同様に、静電荷像現像用トナー5を作製した。
(外添剤の付着)
得られたトナー母体粒子100部に対し、表面処理のない平均一次粒子径140nmのシリカ1.5部を添加し、ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製)にて周速33m/sの条件の下、3分間混合した。混合後の粉体を目開き38μmのメッシュに通過させ、粗大粉を取り除き疎水性微粉末を外添した静電荷像現像用トナー5を作製した。
【0209】
[感光体作製例1]
<電子写真感光体の作製>
アルミニウムシリンダ上に、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、及び電荷輸送層塗工液を、浸漬塗工によって順次塗布し、乾燥して、厚み3.5μmの下引き層、厚み0.2μmの電荷発生層、及び厚み23μmの電荷輸送層を形成した。
【0210】
〔下引き層塗工液〕
・アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL;
大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60;
大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4質量部
・酸化チタン・・・40質量部
・メチルエチルケトン・・・50質量部
【0211】
〔電荷発生層塗工液〕
・下記構造式(2)で表されるビスアゾ顔料・・・2.5質量部
・ポリビニルブチラール(XYHL;UCC社製)・・・0.5質量部
・シクロヘキサノン・・・200質量部
・メチルエチルケトン・・・80質量部
【0212】
【化12】

【0213】
〔電荷輸送層塗工液〕
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート(パンライトTS−2050;帝人化成株式会社製)・・・10質量部
・下記構造式(3)で表される電荷輸送物質・・・7質量部
・テトラヒドロフラン・・・100質量部
・1質量部のシリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液(KF50−100CS;信越化学工業株式会社製)・・・1質量部
【0214】
【化13】

【0215】
次に、前記電荷輸送層上に、下記組成の表面保護層塗工液を用いて、スプレー塗工し、メタルハライドランプ、照射強度:500mW/cm、照射時間:20秒の条件で光照射を行い、更に130℃で30分間乾燥し、厚み4.0μmの表面保護層を形成した。以上により、電子写真感光体1を作製した。
なお、下記表面保護層塗工液中のポリビニルアセタール化合物(ポリビニルアセタール樹脂)に関して、ガラス転移温度、分子量(数平均分子量)、及び水酸基を含む繰り返し単位の組成比n(以下、「水酸基量」と略称)を示す。
【0216】
〔表面保護層塗工液〕
・ポリビニルアセタール樹脂[エスレックBX−1;積水化学工業社製、
(ガラス転移温度90℃、分子量10万、水酸基量33mol%)]・・・20質量部
・3官能以上のラジカル重合性化合物[(トリメチロールプロパントリアクリレート)、
TMPTA;東京化成株式会社製)]・・・75質量部
・電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.7)・・・95質量部
・光重合開始剤[(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、
イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)]・・・10質量部
・テトラヒドロフラン・・・1,200質量部
【0217】
[感光体作製例2]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液において、ポリビニルアセタール化合物を、以下のものに変更した以外は感光体作製例1と同様にして電子写真感光体2を作製した。
・ポリビニルアセタール樹脂[エスレックBX−5 積水化学工業社製、
(ガラス転移温度86℃、分子量13万、水酸基量33mol%)]・・・20質量部
【0218】
[感光体作製例3]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液において、ポリビニルアセタール化合物を、以下のものに変更した以外は感光体作製例1と同様にして電子写真感光体3を作製した。
・ポリビニルアセタール樹脂[エスレックKS−5;積水化学工業社製、
(ガラス転移温度110℃、分子量13万、水酸基量25mol%)]・・・20質量部
【0219】
[感光体作製例4]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液において、ポリビニルアセタール化合物を、以下のものに変更した以外は感光体作製例1と同様にして電子写真感光体4を作製した。
・ポリビニルアセタール樹脂[エスレックKS−3;積水化学工業社製、
(ガラス転移温度110℃、分子量10.8万、水酸基量25mol%)]・・・20質量部
【0220】
[感光体作製例5]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液において、ポリビニルアセタール化合物を、以下のものに変更した以外は感光体作製例1と同様にして電子写真感光体5を作製した。
・ポリビニルアセタール樹脂[エスレックBX−L;積水化学工業社製、
(ガラス転移温度74℃、分子量2万、水酸基量37mol%)]・・・20質量部
【0221】
[感光体作製例6]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液において、ポリビニルアセタール化合物を、以下のものに変更した以外は感光体作製例1と同様にして電子写真感光体6を作製した。
・ポリビニルアセタール樹脂[エスレックBH−S 積水化学工業社製、
(ガラス転移温度64℃、分子量6.6万、水酸基量22mol%)]・・・20質量部
【0222】
[感光体作製例7]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液において、3官能以上のラジカル重合性化合物を、以下のものに変更した以外は、感光体作製例1と同様にして、電子写真感光体7を作製した。
・3官能以上のラジカル重合性化合物[ジペンタエリスリトール ヘキサアクリレート、
(KAYARAD DPHA;日本化薬株式会社製)]・・・75質量部
【0223】
[感光体作製例8]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液において、例示化合物7で表される電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を、以下のものに変更した以外は、感光体作製例1と同様にして、電子写真感光体8を作製した。
・電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.38)・・・95質量部
【0224】
[感光体作製例9]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液を、下記の表面保護層塗工液に代えた以外は、感光体作製例1と同様にして、電子写真感光体9を作製した。
【0225】
〔表面保護層塗工液〕
・ポリビニルアセタール樹脂[エスレックBX−1;積水化学工業社製、
(ガラス転移温度90℃、分子量10万、水酸基量33mol%)]・・・5質量部
・3官能以上のラジカル重合性化合物[ トリメチロールプロパントリアクリレート、
(TMPTA;東京化成株式会社製)]・・・90質量部
・電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物7)・・・95質量部
・光重合開始剤[1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、
(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)]・・・10質量部
・テトラヒドロフラン・・・1,200質量部
【0226】
[感光体作製例10]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液を、下記の表面保護層塗工液に代えた以外は、感光体作製例1と同様にして、電子写真感光体10を作製した。
【0227】
〔表面保護層塗工液〕
・ポリビニルアセタール樹脂[エスレックBX−1:積水化学工業社製、
(ガラス転移温度90℃、分子量10万、水酸基量33mol%)]・・・45質量部
・3官能以上のラジカル重合性化合物[トリメチロールプロパントリアクリレート、
(TMPTA;東京化成株式会社製)]・・・45質量部
・電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物7)・・・95質量部
・光重合開始剤[1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、
(イルガキュア184;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)]・・・10質量部
・テトラヒドロフラン・・・1,200質量部
【0228】
[感光体作製例11]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液において、ポリビニルアセタール化合物を、下記構造式(4)で表されるラジカル重合性化合物に代えた以外は、感光体作製例1と同様にして、電子写真感光体11を作製した。
【0229】
【化14】

【0230】
[感光体作製例12]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液において、ポリビニルアセタール化合物を、下記構造式(5)で表されるラジカル重合性化合物に代えた以外は、感光体作製例1と同様にして、電子写真感光体12を作製した。
【0231】
【化15】

【0232】
[感光体作製例13]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液において、ポリビニルアセタール化合物を、下記構造式(6)で表されるラジカル重合性化合物に代えた以外は、感光体作製例1と同様にして、電子写真感光体13を作製した。
【0233】
【化16】

【0234】
[感光体作製例14]
<電子写真感光体の作製>
感光体作製例1の表面保護層塗工液において、3官能以上のラジカル重合性化合物を、以下のものに変更した以外は、感光体作製例1と同様にして、電子写真感光体14を作製した。
・2官能のラジカル重合性化合物[下記構造式(7)で表される2官能アクリレート、
(KAYARAD NPGDA;日本化薬製)]・・・75質量部
【0235】
【化17】

【0236】
(実施例1〜10、比較例1〜4)
次に、作製した各電子写真感光体を、プロセスカートリッジに装着し、また作製した静電荷像現像用トナー1を使用して、株式会社リコー製imagio MPC4500にて連続して合計50万枚の実機通紙試験を行い、以下のようにして、摩耗量測定、機内電位測定、及び画像評価を行った。
実施例1〜10、比較例1〜4に用いた感光体とその表面保護層の主用成分をまとめて下記表3に示す。また、評価結果を下記表4に示す。
【0237】
<摩耗量>
50万枚通紙前後に、渦電流式膜厚計(フィッシャースコープMMS、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を使用して、電子写真感光体の膜厚を測定し、初期と50万枚後の差を摩耗量とした。
【0238】
<機内電位>
50万枚通紙後に、前記実機通紙試験で用いた株式会社リコー製imagio MPC4500に表面電位計をセットし、全面白パターン、及び全面黒パターンのA4サイズ画像を1枚出力した際の表面電位を測定し、暗部電位、及び明部電位を求めた。
【0239】
<画像評価>
50万枚通紙後に、前記実機通紙試験で用いた株式会社リコー製imagio MPC4500を用いて、全面白パターン、全面黒パターン、及び全面ハーフトーンパターンのA3サイズ画像を2枚出力し、異常画像の有無を確認した。
【0240】
【表3】

【0241】
【表4】

【0242】
(実施例11〜13、比較例5)
次に、電子写真感光体1をプロセスカートリッジに装着し、作製した静電荷像現像用トナー2〜5を使用し、前記同様、株式会社リコー製imagio MPC4500にて連続して合計50万枚の実機通紙試験を行い、以下のようにして、摩耗量測定、機内電位測定、及び画像評価を行った。結果を下記表5に示す。
【0243】
【表5】

【0244】
表4、5の結果から、表面保護層に3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(硬化物)及び、ポリビニルアルコールとアルデヒドのアセタール化反応により合成されたポリビニルアセタール化合物を含有する本発明の構成とされた電子写真感光体を備えた実施例1〜13の画像形成装置は、トナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナーを用いて多数枚現像した場合でも画像欠陥(スジ状の欠陥)が無いか、あっても問題のないレベルである。
以上のように、電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段と、転写手段と、定着手段とを有する画像形成装置に配備される電子写真感光体の表面保護層が、少なくとも3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物(以降、「硬化物」と呼称することがある。)及び、ポリビニルアルコールとアルデヒドのアセタール化反応により合成されたポリビニルアセタール化合物を含有する構成により、高い耐摩耗性と高い離型性が得られると共に、前記トナーを使用した場合にもシリカの付着による異常画像などの発生を長期にわたって抑制することができる。
即ち、本発明の画像形成装置は、長期間にわたって安定して高画質な画像を出力できるので、例えば、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機、直接又は間接の電子写真多色画像現像方式を用いたフルカラー複写機、フルカラーレーザープリンター、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ、レーザー製版、及びフルカラー普通紙ファックスなどに幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0245】
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電ローラ
5 画像露光部
6 現像ユニット
8 レジストローラ
9 記録媒体
10 転写チャージャ
15 クリーニングブレード
101 電子写真感光体(感光ドラム)
102 帯電手段(帯電装置)
103 露光手段(露光)
104 現像手段(現像装置)
105 記録媒体
106 転写手段(転写装置)
107 クリーニング手段(クリーニングブレード)
201 支持体
202 感光層
203 表面保護層
204 電荷発生層
205 電荷輸送層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0246】
【特許文献1】特開2003−316057号公報
【特許文献2】特開2001−272807号公報
【特許文献3】特許第4208367号公報
【特許文献4】特許第4160512号公報
【特許文献5】特開平6−95413号公報
【特許文献6】特許第3938209号公報
【特許文献7】特許第4214655号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー母体粒子の表面に疎水化処理されたシリカ微粒子が添着してなるトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体は支持体上に少なくとも感光層及び表面保護層を有してなり、該表面保護層が、3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との反応物及び、ポリビニルアルコールとアルデヒドのアセタール化反応により合成されたポリビニルアセタール化合物を含有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ポリビニルアセタール化合物が、下記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【化1】


[式(I)中、RとRは互いに異なる炭素数1から3のアルキル基を示す。k、l、m、nは組成比(mol%)を表し、kまたはlの一方は0であってもよいが、kとlの合計、m及びnはいずれも0よりも大きい値を有し、k、l、m及びnの総和は100である。]
【請求項3】
前記ポリビニルアセタール化合物の数平均分子量が10万以上で、且つ水酸基を含む繰り返し単位の組成比nが、25mol%以上であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ポリビニルアセタール化合物のガラス転移温度が70℃以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ポリビニルアセタール化合物の含有量が、前記3官能以上のラジカル重合性モノマー100質量部に対し、5〜100質量部であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記疎水化処理されたシリカ微粒子の一次平均粒径が100〜200nmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
少なくとも電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段とを有し、請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−257701(P2011−257701A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134141(P2010−134141)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】