説明

画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】複数のクリーニングブラシを備えた装置構成の場合でも像担持体表面への傷の発生を防止できる画像形成装置及び、画像形成装置用プロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】特定の電荷輸送性ポリオールとイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有する最表面層を備えた像担持体1を装備すると共に、トナー像転写後に該像担持体表面に残留したトナーを除去するバイアス電圧が印加された複数のクリーニングブラシ7を備えた画像形成装置とする。記像担持体の弾性仕事率を45%以上(好ましくは、45%以上60%以下)に制御する。弾性仕事率(%)=弾性変形の仕事量×100/(塑性変形の仕事量+弾性変形の仕事量)[評価条件]ダイヤモンド圧子を用いた微小表面硬度計、温度22℃、相対湿度55%の環境条件下、一定負荷速度で圧子を押し込んで全仕事量(負荷過程)と弾性変形の仕事量(除荷過程)を測定。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等に適用できる画像形成装置、特には、樹脂により形成された最表面層を有する像担持体と、該像担持体に接触して転写残トナーを除去するためのブラシを複数使用する構成のクリーニング装置とを備えた画像形成装置及び、画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等に応用されている像担持体を用いた電子写真方式とは、例えば、コロナ放電等によって像担持体表面を暗所で帯電させ、次いで画像露光して像担持体上に静電潜像を形成し、現像部において、その静電潜像を現像剤にて可視化させ、その可視像(トナー像)を転写材へ転写、定着して画像を形成した後、転写後に像担持体上に残存した現像剤(トナー)を種々のクリーニング工程を経て潜像担持体上から除去し、再び像担持体上に静電潜像を形成するプロセスを繰り返して行う方式である。このような電子写真プロセスでは、像担持体(以後、感光体と呼称することがある。)の表面がトナー像形成のために繰り返し使用されるため、記録媒体へのトナー像の転写後に、記録媒体に転写されずに感光体上に残った転写残トナーを除去する必要がある。
【0003】
従来、上記クリーニング手段に用いられる方式としては、感光体の表面に当接するように設けられたブレードを適正な押圧力で感光体に圧接させることによって残留トナーを除去するブレードクリーニング方式が一般的である。特に、プロセスカートリッジ式の構成を有する画像形成装置では、構成が簡単であり、またコストが安い等の利点から弾性材料からなるブレードを感光体の移動方向に対し、カウンタ方向に感光体表面に当接して残留トナーを掻き落とす方法が広く実用化されている。
【0004】
最近では、高画質化とランニングコスト低減への要求が急速に高まってきており、この高画質化への一つの対応として現像剤として用いるトナーの小粒径化が進められており、従来のトナー製造方法である粉砕法に代わって懸濁重合法や乳化重合法等によるトナー製造方法が種々検討されてきている。これらの重合法により製造されるトナーは粒径が揃っているために、画像の再現性が高い。そのため、特に高精細画像が要求されるフルカラー複写機等において重合法で製造されたトナーが使用される例が多い。
ところが、小粒径かつ球形トナーは、粉砕トナーに比べて感光体との接触面積が大きいために摩擦力が作用して滑りにくく、逆に転がりやすい。その結果、球形トナーは、感光体とクリーニングブレードとの間に潜り込んで隙間を転がり抜けてしまうために、画像にスジ状の異常画像が形成されてしまうという問題がある。
【0005】
更に、ブレードと感光体との摩擦抵抗が高い場合には、クリーニングブレードのエッジと感光体との間の機械的な圧力バランスが崩れて、クリーニングブレードは感光体に均等に当接されなくなり、感光体の回転に伴ってブレードは微振動を引起し、また、繰り返し変形を受けると、劣化して、先端に微小な亀裂が生じる。そして、経時使用でブレードの劣化が進行すると、この亀裂が成長して、先端に小さな欠けが生じてしまうためにトナーや外添剤がすり抜けやすい傾向にある。
【0006】
上記のようなクリーニングブレードの当接による不具合を解消するために、粉砕トナー使用時よりも感光体へのブレード当接圧を高くする方法が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、特許文献1のように単にクリーニングブレードの圧接力を増してもブレードエッジ部が歪みやすいために、クリーニング性を向上させる効果は小さく、逆に感光体及びブレードへの負荷から寿命を低減させてしまう等の不具合をもたらす場合が多い。
また、一般的にクリーニングブレードに用いられる弾性材料としては、密着度が高く、機械的耐久性、化学的安定性、トナー等の掻き取り力などに卓越しているポリウレタンゴムが用いられる。しかしながら、ポリウレタンゴムは、動作環境変化、特に温湿度変化の影響を受け易く、いかなる環境下においても長期間安定した良好なクリーニング性を維持可能とする条件、即ち、クリーニングブレードのゴム物性、及びブレードを装着する条件設定を厳密に調整し、しかもそのバランスを取ることは極めて困難である。
【0007】
そこで、前述のような小粒径、且つ球形トナーを有効にクリーニングする方式として、像担持体表面上のトナーを静電作用によりクリーニングする静電クリーニング方式が検討されている。例えば、1本のブラシロールを配備し、ブラシに正の電圧を印加した領域と負の電圧を印加した領域を設け、各領域それぞれに配置した回収ロールを用いてクリーニングするクリーニング装置が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、近年のカラー画像形成装置では写真画像等の高密度画像が連続して出力されるケースが増えており、特許文献2のように1本の静電ブラシロールで長期間にわたり安定したクリーニングを続けるのは難しい。
【0008】
そこで、トナーのブレードすり抜けによるクリーニング不良を解消するために、クリーニング補助部材としてクリーニングブラシを設けることが提案されている(特許文献3参照)。通常、このクリーニングブラシは、像担持体回転方向でクリーニングブレードの上流側に配置し、転写後の像担持体上の転写残トナーを掻き取るとともに、クリーニングブレードのクリーニングを容易にする目的も有している。
特許文献3の手法により、感光体表面のうち特に非作像領域に付着したトナーの除去性能が向上するが、クリーニングブラシは、入力トナーが大きくなると、十分にクリーニングができなくなるという欠点がある。即ち、クリーニングブラシは、繊維状であるから、入力トナーが多いと、クリーニングブラシと接触しきれないトナーが存在し、静電吸着されずにクリーニング不良となる傾向がある。また、クリーニングブレードは、前述のように動作環境変化、特に温湿度変化の影響を受け易く、クリーニング条件を厳密に制御するのが難しいという難点がある。
【0009】
このような課題を解決するために、複数のクリーニングブラシを用いてトナーを静電的に吸引しつつ掻き取るクリーニング装置が提案されている(特許文献4、5参照)。
特許文献4及び5の静電クリーニング方式は、小粒径トナーや球形トナーのクリーニング時にも確実なクリーニング性を備え、感光体表面の機械的な摺擦力がブレード方式に比べて弱いので、クリーニング性能の経時劣化が少なく、且つ感光体への負荷を軽減できる。そのため、特に高速機においては、このような静電ブラシ方式はブレード方式に対して有利である。
特許文献4、5のクリーニング方式によればクリーニングの信頼性を向上させることができる。しかしながら、2本のブラシロールを用いたことにより、感光体の摩耗を促進させてしまい、感光体表面に周方向のスジ状の傷が付きやすくなってしまう問題がある。一旦このようなスジ状の傷が付くと、ブラシ先端が同じ箇所(傷)をなぞることが多く、次第に感光体上には深い溝状の傷へと成長した部分にトナーが多量に付着するようになり、記録媒体上ではそのスジ状の傷に対応する部分が黒スジとなって現れ画像品質を低下させる問題がある。
【0010】
そこで、感光体表面の傷や摩耗を低減することにより感光体寿命を向上させることが検討されており、種々の提案がなされている。
例えば、電荷輸送性付与基を有する硬化性シロキサン樹脂を三次元網目構造状に硬化させた表面保護層を有する感光体と静電ブラシクリーニングとを組み合わせる方法が提案されている(特許文献6参照)。この方法によれば、感光体の駆動トルク上昇によってブレードが微振動し、その振動が周辺の部材と共鳴して一種の高周波音が発生するブレード鳴き等の異音の発生や、ブレードが感光体の回転方向下流側につられて反転するブレードめくれの課題を解消できるとしている。
特許文献6記載の架橋保護層によって耐摩耗性の向上に関しては、ある程度の効果が認められる。しかし、この架橋保護層を形成する塗膜は体積収縮に起因すると考えられる亀裂が生じることがある。また、露光部電位の上昇を抑える目的で正孔輸送構造を多量に結合させると、膜強度が低下して所望の耐摩耗性が得られなくなる。更に、帯電器等から発生するオゾン、NOx等の酸化性ガスによって感光体表面の電気抵抗の低下(低抵抗化)が起こり、解像度低下、文字太りの原因となる。
【0011】
上記画像劣化に関連する酸化性ガス及び水分の吸着を防止する手段として、例えば、架橋構造を有するシロキサン樹脂を含有する層を含む感光体と該感光体が加熱装置を具備する構成とすることが提案されている(特許文献7参照)。
しかし、この構成は画像劣化防止に有効であるが、装置の始動時に長いウォーミングアップ時間を必要とすること、待機中に無駄なエネルギーを必要とすること等、多くの課題を残しているのが実情である。
【0012】
また、フィラーを分散した表面保護層を有する感光体上の転写残トナーをブレードレス方式(ブラシクリーニング)によってクリーニングする方法が提案されている(特許文献8参照)。
ここで提案されているフィラーを含有する保護層を形成した感光体を長期的に使用した場合、耐摩耗性が改善される。しかし、経時で表面形状が変化[保護層内に分散されている比較的硬度の高いフィラーが要因と想定される感光体の周方向におけるスジ状の凹凸形状(ミクロンオーダー)の形成]して、感光体表面に突出したフィラー以外の箇所をクリーニングブラシの先端が局所的に繰返し摺擦することによって傷が深くなり、その結果、異常画像になる傾向がある。
【0013】
更に、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を、光エネルギーによって硬化、架橋させた表面層を形成した感光体が提案されている(特許文献9参照)。
しかし、ラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性化合物を光エネルギー照射により硬化する際、電荷輸送性構造等による吸収から表面層内部への光透過が制限され、硬化反応が阻害される現象が起こることがあり、この場合には表面層全体にわたって均一に硬化されないために使用経時で摩耗速度が加速する心配がある。また、重合を開始させるには、まず光重合開始剤によってラジカルを発生させるが、そのためには光重合開始剤に光を吸収させなければならず、最表面から内部まで均一に硬化させるために、光重合開始剤の吸収波長に適合した発光エネルギーを持つ複数のUVランプを必要とする場合もある。
従って、特許文献9で提案されている感光体を用いた場合、複数のブラシロールを用いたクリーニングプロセスでは、感光体の不規則な摩耗を促進させ、スジ状の傷が付きやすいという課題を避けられないのが現状である。
【0014】
更に、電荷輸送材料と、架橋構造を有する樹脂(メチロール基を有するフェノール誘導体またはシロキサン系樹脂を含む)を含有する表面保護層を形成した感光体と、静電ブラシクリーニングを組み合わせた画像形成装置が提案されている(特許文献10参照)。
ここで提案されている感光体は、透明性、耐絶縁破壊性、熱的・機械的強度等の点で良好な結果を示す。しかし、その反面、例えば、メチロール基の一部が酸化されて感光体中の電荷移動を妨げるキャリアトラップとなって画像濃度の低下が問題となる。また、摩耗量が低減されたことによってオゾンやNOx等に基づく低抵抗物質の堆積速度が摩耗速度を上回り、その結果、解像度の低下、画像流れ等の副作用が発生し、これが画像形成装置の寿命律速になるという新たな問題が生じる。このような現象は、特に画像形成装置の停止時に、帯電器近傍に位置した部位で顕著に見られ、加熱装置(例えば、ヒータ)の搭載が不可欠である。また、感光体に当接する接触部材との摩擦抵抗が高いことから、傷の発生に関しては、ある程度の効果が期待できるが、使用されるプロセス条件によっては偏摩耗が発生してしまう場合がある。
【0015】
長期にわたる画像形成においても高耐久で異常画像発生がなく安定した画像を得るため、特定の構造を有するポリオールとイソシアネート化合物とから形成された架橋性樹脂を含有する表面保護層(または最表面層)を設けた感光体(あるいは像担持体)が提案されている(特許文献11、12参照)。
しかし、特許文献11、12に記載の表面保護層(若しくは最表面層)を設けた感光体(あるいは像担持体)の構成のみでは、複数のブラシロールをクリーニングプロセスに用いた場合に、耐摩耗が十分ではなく傷が付きやすいという課題が避けられない状況にあった。
【0016】
前述のように、複数のブラシロールをクリーニングプロセスに用いた場合でも感光体(像担持体)表面への傷の発生を防止でき、使用環境によらず長期にわたって優れた耐摩耗性と高画質を維持できる画像形成装置の開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記クリーニング装置を用いる画像形成装置における従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、特に複数のクリーニングブラシを用いる画像形成装置において、使用環境によらず長期にわたって優れた耐摩耗性と高画質を維持し、多種多様な高精細画像を高速かつ大量に印刷する場合や、厳密な色再現性が要求される商業印刷の分野で使われる場合においても、クリーニングブラシ(クリーニングブラシ繊維)による感光体(像担持体)表面への傷の発生を防止できる画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ(略称:「プロセスカートリッジ」)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔7〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0019】
〔1〕:上記課題は、下記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオールと、芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有する最表面層を備えた像担持体を装備すると共に、トナー像転写後に該像担持体表面に残留したトナーを除去するバイアス電圧が印加された複数のクリーニングブラシを備え、且つ、前記像担持体の下記評価方法により算出される弾性仕事率が45%以上であることを特徴とする画像形成装置により解決される。
[評価方法]
ダイヤモンド圧子を用いた負荷−除荷試験により、温度22℃、相対湿度55%の環境条件下、圧子を押し込んで全仕事量(負荷過程)と弾性変形の仕事量(除荷過程)を測定し、下記式により弾性仕事率を求める。
弾性仕事率(%)=弾性変形の仕事量×100/(全仕事量)
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、Yは1つの水酸基が結合した炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を表し、Xは電荷輸送性分子構造を含んでなる2〜4価の炭化水素結合を主とする有機残基を表す。nは2〜4の整数を表す。該水酸基とXとは、炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキレン基、もしくはオキシアルキレン基を介して結合している。)
【0022】
〔2〕:上記〔1〕に記載の画像形成装置において、前記弾性仕事率が、45%以上60%以下であることを特徴とする。
【0023】
〔3〕:上記〔1〕又は〔2〕に記載の画像形成装置において、前記バイアス電圧が印加された複数のクリーニングブラシが、トナー像転写後に前記像担持体表面に残留して除去されるトナーの帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシ及び、前記トナーの帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシからなることを特徴とする。
【0024】
〔4〕:上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の画像形成装置において、前記評価方法におけるダイヤモンド圧子の最大荷重における変位から求められる前記像担持体のユニバーサル硬度が、200N/mm以上230N/mm以下であることを特徴とする。
【0025】
〔5〕:上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の画像形成装置において、前記芳香族系イソシアネートが分子中に芳香環を有し、該芳香族系イソシアネートの有するイソシアネート基が、アルキレン基を介して芳香環に結合していることを特徴とする。
【0026】
〔6〕:上記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の画像形成装置において、前記最表面層が、前記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオール及び、分子中に電荷輸送性分子構造を含まないポリオールの少なくとも1種類を含む両ポリオールと、芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有することを特徴とする。
【0027】
〔7〕:上記課題は、〔1〕乃至〔6〕のいずれかに記載の画像形成装置本体に対して、着脱自在に装着し得る画像形成装置用プロセスカートリッジであって、
前記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオールと、芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有する最表面層を備えた像担持体と、帯電手段、画像露光手段、現像手段、クリーニング手段、から選ばれた少なくとも1つの手段とをカートリッジ容器に組み込んで一体に構成したことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジにより解決される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の画像形成装置によれば、バイアス電圧が印加された複数のクリーニングブラシが、弾性仕事率が45%以上とされた像担持体との接触状態を均質に維持しながら動作することにより、クリーニングブラシの摺擦に起因する像担持体表面へ深い傷を発生させることなく、長期にわたって良好なクリーニング性を達成することができると共に、前記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオールと芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有する最表面層を備えた像担持体を装備することにより、優れた耐摩耗性に加えて良好な電荷輸送機能が発揮され、且つ、像担持体の交換寿命を決定してコスト高の要因となっていた像担持体表面の傷の発生を抑制できる。更に、前記最表面層を備えた像担持体を装備することにより、像担持体のみならず、汎用のブラシ繊維の採用、像担持体に対するクリーニングブラシの回転駆動、画像形成装置の未使用時におけるクリーニングブラシの長期間接触放置などにおいても劣化(例えば、ブラシ毛倒れ、特にブラシ先端部の曲がり癖等)が無く、クリーニングブラシの耐久性をも向上させることができる。これらにより、従来静電クリーニング方式において問題とされていた課題が解消され、多種多様な高精細画像を高速かつ大量に印刷する分野及び、厳密な色再現性が要求される商業印刷の分野などの用途に適用することができる。
画像形成装置用のプロセスカートリッジによれば、長期にわたって良好なクリーニング性と耐摩耗性及び良好な電荷輸送機能を維持する像担持体を備えているため、プロセス線速が高速で繰り返し使用しても異常画像の発生がなく安定した高品質画像を継続的に出力することができる。また、プロセスカートリッジとすれば、保存、搬送等が容易であり、交換を短時間に行うことができるなど取扱性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る画像形成装置を説明するための一構成例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置を説明するための別の構成例(タンデム型のフルカラー構成)を示す概略図である。
【図3】図2に示す画像形成装置におけるイエロー(Y)用のクリーニング装置(100Y)と、その周囲構成とを示す要部拡大構成図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置用プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【図5】本発明の画像形成装置に備えられる像担持体の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の画像形成装置に備えられる像担持体の別の構成例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の画像形成装置に備えられる像担持体の更に別の構成例を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明における像担持体の弾性仕事率を説明するためのグラフ(微小表面硬度計を用いて測定されるダイヤモンド圧子の押し込み深さと荷重の関係を示す)である。
【図9】実施例における耐久性試験後の像担持体を超深度形状測定顕微鏡により観測した表面形状の一例を示す写真である。
【図10】比較例における耐久性試験後の像担持体を超深度形状測定顕微鏡により観測した表面形状の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るクリーニング装置を用いた画像形成装置の実施形態について詳細に説明する。
即ち、本発明における画像形成装置は、下記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオールと、芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有する最表面層を備えた像担持体を装備すると共に、トナー像転写後に該像担持体表面に残留したトナーを除去するバイアス電圧が印加された複数のクリーニングブラシを備え、且つ、前記像担持体の下記評価方法により算出される弾性仕事率が45%以上であることを特徴とするものである。
[評価方法]
ダイヤモンド圧子を用いた負荷−除荷試験により、温度22℃、相対湿度55%の環境条件下、圧子を押し込んで全仕事量(負荷過程)と弾性変形の仕事量(除荷過程)を測定し、下記式により弾性仕事率を求める。
弾性仕事率(%)=弾性変形の仕事量×100/(全仕事量)
【0031】
【化2】

【0032】
(式中、Yは1つの水酸基が結合した炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を表し、Xは電荷輸送性分子構造を含んでなる2〜4価の炭化水素結合を主とする有機残基を表す。nは2〜4の整数を表す。該水酸基とXとは、炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキレン基、もしくはオキシアルキレン基を介して結合している。)
【0033】
ここで、前記弾性仕事率が、45%以上60%以下であることが好ましい。即ち、後述のように、前記弾性仕事率の値が45%よりも小さいと、前記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオールと芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋反応後に未反応の水酸基が残存する等、架橋密度が低くなる問題があり、弾性仕事率の値が60%を超えるとタック性が増大して像担持体の表面が汚染されやすく、トナーフィルミング等の不具合が発生しやすくなる。
なお、弾性仕事率に関しては、後述の像担持体を構成する最表面層(以降、「架橋表面層」と呼称することがある。)の説明において詳述する。
また、前記評価方法において、ダイヤモンド圧子の最大荷重における変位から求められる前記像担持体のユニバーサル硬度が、200N/mm以上であることが好ましく、200N/mm以上230N/mm以下であることがより好ましい。
【0034】
本発明の画像形成装置に用いられる像担持体の最表面層は、後述するように、耐摩耗性、耐傷性、静電安定性に対して良好な効果が期待されるものである。その効果は、バイアス電圧が印加された複数のクリーニングブラシを備えた画像形成装置、特に、トナー像転写後に像担持体表面に残留したトナーを除去するトナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを備えた画像形成装置に対して適していることが判明し、その効果は顕著である。
【0035】
一般的な静電クリーニング方式では、像担持体の駆動軸と、クリーニングブラシの駆動軸とが平行な位置関係にあることが多く、像担持体の母線方向及び、回転軸方向にブラシを押し当てる圧力の分布にムラが生じることは不可避であり、接触圧の高い箇所は必然的に傷の発生確率が高く、これによって像担持体の摩耗量にバラツキを引き起こし、ハーフトーン画像を出力した際には、濃度ムラとなって画像品質の低下を招いていた。
しかしながら、この圧力分布ムラを吸収することを考えると、本発明の画像形成装置に装備される前記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオールと芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有する最表面層を備えた像担持体は、その弾性仕事率を制御したものであることから回転軸の駆動精度やブラシを押し当てる圧力のバラツキの影響を受けることなく、高品質の画像を提供できる。
弾性仕事率が前記45%以上(好ましくは、45%以上60%以下)であること、そしてユニバーサル硬度が200N/mm以上230N/mm以下の範囲にある像担持体を得るためには、像担持体の最表面層を、電荷輸送性ポリオールと芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物とを架橋反応させるポリウレタン樹脂によって構成されることが有効であり、特に、水酸基を同一分子内に2つ以上有する電荷輸送性ポリオールと芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物によって形成されることが好ましい。 更に、分子中に電荷輸送性分子構造を含まないポリオールを少なくとも1種類含有することにより、緻密な三次元網目構造の形成が可能となるため、像担持体及びクリーニングブラシが回転しながら摺擦する際の力(エネルギー)を最表面層内で吸収、分散しやすくなる。
【0036】
その結果、従来クリーニングブラシの先端が像担持体表面の同じ箇所を繰り返しなぞることによって、周期的な規則性をもって形成されていた複数の溝(凹凸段差)の形成が抑制され、像担持体の交換寿命を飛躍的に伸ばすことが可能になった。つまり、従来の画像品質低下は、クリーニングブラシが像担持体表面を摺擦することで発生する傷の生成速度が、クリーニングブラシとの非接触箇所に比べて加速していたために、傷が深く、最表面層の膜厚が局所的に薄くなっていたことが原因であるが、本発明の弾性仕事率が制御された像担持体を用いることにより、傷の生成箇所に規則性・方向性が無く、複数のクリーニングブラシを備えた場合であってもその接触圧力による像担持体への負荷が一定の箇所に集中することなく、分散、低減されることにより、スジ状傷に起因するクリーニング不良の改善を図ることができる。
【0037】
更に、後述する電荷輸送性ポリオールと芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物によって形成される本発明の架橋性樹脂を含有する最表面層(架橋樹脂層)は、傷によって最表面層の膜厚が局所的に薄くなった場合においても、耐摩耗性や硬度等の機械的強度を維持したまま、下層との良好な接着性を可能にする。
【0038】
従来、クリーニングブラシによる傷が発生しないように、例えば、接触圧力を低く設定したり、柔らかく、繊維径の細いブラシを用いることも一手段であるが、特に近年の高画質化の要求に応えられる小粒径、且つ球形トナーを用いた場合、転写残トナーのすり抜けを避けることは実使用上難しい。また、クリーニングブラシを構成する繊維の材質や特性値を制御することにより、像担持体への傷発生を抑制し、小粒径、且つ球形トナーのクリーニング性の改善を図る手段も考えられる。しかしながら、ブラシ繊維の材質や、例えば、曲げ回復力、曲げ弾性等、特別優れた特性を持つ繊維、あるいは異種繊維を選択して構成されたブラシは、製造上の要求レベルが高く、コストを押し上げる要因となるために適切ではない。
上記課題に対して、本発明の像担持体を用いれば、設計の自由度が高く、汎用のブラシ繊維を用いた場合でも、像担持体に対して回転駆動させても、あるいは画像形成装置の未使用時において、長期間接触放置されたとしても、毛倒れ、特にブラシ先端部の曲がり癖等が付き難く、像担持体のみならず、クリーニングブラシの耐久性をも向上させることができるために、長期にわたって良好なクリーニング性能を維持できる画像形成装置が提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0039】
一般に、ポリオールとイソシアネート化合物とを架橋して形成されるウレタン架橋樹脂は、三次元網目構造を形成するため、耐摩耗性の高いバインダー樹脂として、像担持体の表面層として好適に用いられる。しかしながら、ポリオール化合物として電荷輸送性ポリオールを用いた場合、その構造によっては三次元網目構造の形成に不利となり、耐摩耗性の低下に加えて、耐傷性までも劣化させることから、本発明のように静電クリーニング方式(バイアス電圧が印加された複数のクリーニングブラシを配備)を用いた画像形成装置においては、致命的な欠陥となる。
【0040】
表面層として電荷輸送性ポリオールとイソシアネート化合物とを架橋して形成されるウレタン架橋樹脂を用いた従来の像担持体の場合、例えば、次のような現象が確認されている。
反応性基である水酸基を1つしか持たない電荷輸送性ポリオールでは、強靭な樹脂層の形成が困難なために、必然的に他の多官能性ポリオール化合物を併用することが避けられない。また、反応性の水酸基を2つ以上持った電荷輸送性ポリオールであっても、その構造によっては、電荷輸送機能を担う分子構造それ自体がポリウレタン結合の主鎖構造の中に組込まれる場合があり、その結果、立体的なひずみから電荷輸送能の阻害を受けやすく、感度低下や残留電位の上昇を引き起こす。
【0041】
これに対して、表面層(最表面層)を前記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオールと芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有するものとすれば、上記不具合を解決し、高い耐摩耗性、耐傷性、安定した電荷輸送性能を達成できる。その由について以下説明する。
即ち、本発明の電荷輸送性ポリオールは、ポリウレタン鎖に2つ以上の架橋点を有しながら、電荷輸送性を担う分子構造が複数のポリウレタン結合の主鎖に直接組み込まれることが無い。このような結合では、電荷輸送機能を有する部位がペンダント型にぶら下った構造を形成できるために、立体的なひずみを生じ難いことから、電荷輸送能の低下を生じることなく、安定した電気特性を維持できるものと考えられる。
【0042】
また、本発明に用いられる電荷輸送性ポリオールの電荷輸送性分子構造としては、スチルベン系、α−フェニルスチルベン系が好ましく、この化合物自体が非常に良好な電荷輸送能を有しているため、電荷輸送性ポリオール構造としても同様に非常に良好な電荷輸送能を発揮する。従って、耐摩耗性と優れた電気特性を併せ持つことから、本発明の画像形成装置に用いられる像担持体を形成するために極めて有用である。
【0043】
更に、電荷輸送性ポリオールの2つ以上の水酸基が分子末端にあると、耐摩耗性、耐傷性が高まることがわかった。即ち、このような構造は、水酸基にとって、最も立体障害の少ないコンフォメーションで存在することができる。従って、非常に反応しやすい状態であるために、架橋反応において、未反応のまま残存する水酸基は殆ど無く、網目構造がより密に形成される。このことから、感度低下や残留電位の上昇を引起す電荷トラップを抑制し、且つ、架橋密度の高い耐摩耗性、耐傷性に優れた塗膜を形成が可能となる。
【0044】
一方、電荷輸送性ポリオールを用いる場合、少なくともそれに対するイソシアネート化合物が相当量必要となるため、イソシアネート化合物の特徴が像担持体の電子写真特性に大きく影響を与えることになる。
【0045】
イソシアネート化合物が、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのように芳香環を持たない脂肪族系イソシアネートの場合、高速かつ長期にわたって連続的に電子写真プロセス(帯電、露光、現像、転写、クリーニングを繰り返すプロセス)を行うと、露光部電位の上昇が発生し、やがて画像濃度低下等の異常画像を発生させてしまう。
そのため、本発明におけるイソシアネート化合物として、分子中に芳香環を有する芳香族系イソシアネートを少なくとも含むことが好ましい。即ち、芳香族系イソシアネートを用いて電荷輸送性ポリオールとの架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有する最表面層を備えた像担持体とすれば、上記静電疲労付加直後の露光部残留電位の上昇を大幅に低減できることが判明した。
【0046】
芳香族系イソシアネートを用いて、電荷輸送性ポリオールとの架橋結合により形成した架橋性樹脂構成が、良好な電気特性を与える理由について説明する。
脂肪族系イソシアネート化合物を用いた場合には、最表面層中に占めるイソシアネート化合物には、π電子は殆ど存在しないために、電荷輸送への寄与が低くなっていることが原因と考えられる。そのため、電子写真プロセスを繰り返す静電疲労付加を連続的に与えると、電荷輸送能の低さによって電荷移動が阻害され、残留電位として蓄積される。これに対して、前記芳香族系イソシアネートは、電荷輸送機能を有するπ電子を多数持っていることから、像担持体表面に形成される樹脂膜(最表面層)中において、π電子密度が高いことが膜中の電荷輸送能を高め、残留電位の蓄積を抑制していると考えられる。
【0047】
更に、分子中に芳香環を有する芳香族系イソシアネートが持つイソシアネート基が、アルキレン基を介して芳香環に結合していると電気特性と耐磨耗性とを両立することが可能となる。即ち、芳香環は、共役二重結合によってほぼ平面の立体構造を有しており、分子のコンフォメーションの自由度が小さい。そのため、三次元網目構造を形成する際に、水酸基に対して架橋反応が可能な距離に接近する動きが制限される。そこで、前記芳香環を有する芳香族系イソシアネートが持つイソシアネート基が、アルキレン基を介して芳香環に結合した構造をしている場合、アルキル基はσ結合で自由に回転できることから、分子のコンフォメーションの自由度が高く、架橋構造を形成しやすくなり、耐摩耗性が向上するものと考えられる。
【0048】
以下、本発明に係る画像形成装置の一例を、図面に基づいて説明する。
図1の概略図に、本発明に係る画像形成装置を説明するための一構成例を示す。
図1おいて、像担持体(1)には帯電装置(2)が対向配置される。図1に示す画像形成装置における帯電装置(2)は、ローラ式の帯電装置を用いる接触帯電方式であるが、本発明では帯電装置(2)にはコロナ帯電装置、接触帯電装置、近接帯電装置(非接触帯電装置)などのいずれの帯電装置も用いることができる。なお、本発明の帯電装置においてはコロナ帯電装置に比べて設置スペースが小さく、オゾンの生成が0.1〜0.3ppmと少なく、高圧電源をより小型にでき、省エネルギー、省資源、環境性に優れた接触帯電法、近接帯電法が好ましい。
【0049】
接触帯電法は像担持体に接触して帯電する方式である。一方、近接帯電法では帯電部材と感光体間を数十μm離して帯電する方式である。両者とも放電を伴う帯電方式であるため、オゾンの生成は有るが、前記したようにオゾン生成は極めて少なく、環境に配慮した帯電方式である。
接触帯電法は帯電部材のトナー汚染や、放電破壊に対する余裕度が、非接触帯電法に比べて少なくなるが、Gapが0μmであることによって、印加電圧を低めに設定できる。従って、オゾンやNOxなどのコロナ生成物の生成量が少なくなる。
近接帯電法の場合、像担持体から帯電部材が離れているため、帯電部材によって生じていた摩耗が低減し、また、クリーニング部材からのトナーすり抜けが有る場合、帯電部材におけるトナー汚れが少なくなり、放電破壊に対する余裕度が高くなる。
【0050】
接触帯電もしくは近接帯電法では、帯電部材に直流電圧若しくは交流電圧を重畳した直流電圧が印加される。接触帯電、非接触帯電共に、パッシェンの法則に従った帯電が行われ、帯電開始電圧Vthは接触帯電の時が最も低く、Gapが大きくなるにつれ、開始電圧Vthは高くなる。像担持体(1)の帯電電圧を−400〜−800Vにするためには−1000V〜−2000Vの直流電圧を印加するか、−450〜−900Vの直流電圧に、700V〜2000V/800〜4500Hzの交流電圧(正弦波、三角波)を重畳して印加する。交流電圧を重畳するのは、像担持体と帯電部材間に隙間が有った場合に、帯電が不均一になり、画像ムラを防止するためであり、画像形成に必要な帯電電圧と同等、あるいは少し高めの直流電圧に、帯電開始電圧Vthの2倍以上のPeak to Peak電圧を有する交流電圧を重畳した直流電圧に設定する。
【0051】
ローラ方式の帯電部材は、例えば、φ5〜φ15(mm)のSUS製丸棒を芯金として、弾性部材が被覆される。感光体を帯電する弾性部材には、エピクロルヒドリンゴム単体、若しくはウレタンゴムやエピクロルヒドリンゴムに、導電性カーボン、炭素繊維粉末、イオン導電剤などの抵抗制御材を添加し、必要に応じてフッ素系樹脂などの撥水剤を添加して、比抵抗を10〜1014(Ω・cm)に調整したものが使用される。具体的には、接触帯電部材と非接触帯電部材で感光体に対向する面の電気抵抗が、帯電方式によって変えられる。非接触帯電部材では最表層面を10〜10(Ω・cm)に、接触帯電部材の場合は1012〜1014(Ω・cm)に設定される。これは帯電部材と感光体間に空隙が有ることによって、帯電開始電圧Vthが高い方にずれて帯電性に違いが生じるためであり、均一帯電を行うためには、帯電部材の体積抵抗は低くする必要がある。ただし、あまり下げすぎると、放電破壊の要因になるため、10Ω・cm以上有ることが望ましい。
【0052】
更に帯電部材の表面粗度は接触帯電部材に比べ、10点平均粗さRzを50〜200(μm)程度にした方が均一帯電、帯電効率を高めるには有利である。硬度はJIS−A硬度で30〜90度程度の弾性部材を使用する。
【0053】
接触帯電法の場合、帯電効率を高めるために、ニップ(帯電部材と感光体が接触した時の接触幅)を大きく取った方(1〜5mm)が望ましいため、接触帯電部材では硬度の低い弾性部材を使用する。一方、非接触帯電部材の場合はニップが得られない分、帯電効率が悪くなるが、使用される帯電部材の硬度に限定されないという利点がある。
【0054】
帯電装置(2)により一様に帯電された像担持体(1)は、次に画像露光装置(3)により出力されたLD素子やLED素子アレイを光源とする光のドットパターンの画像情報が照射される。これにより、像担持体(1)には明暗電位差の静電潜像が形成される。明暗電位差は少なくとも250V以上有ることが望ましく、通常は350〜600(V)有ることが好ましい。
【0055】
静電潜像は現像装置(4)により現像され、トナー像として可視化される。現像に使用される現像剤には一成分系及び二成分系があるが、高解像の画像品質を得るのには二成分系の現像剤を使用するのが有利である。二成分系の現像剤はトナーと、キャリアと呼ばれる磁性紛から構成される。
【0056】
キャリアは鉄、フェライト、ニッケルの様な磁性を有する粉体(磁性紛)に帯電性及び帯電安定性、耐久性等向上させるために、ポリフッ化炭素、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂等で被覆されたものが用いられ、キャリアの平均粒径は40〜80μm程度である。
【0057】
トナーは機械的粉砕製法による粉砕トナーと、化学的に製造される重合トナーがある。粉砕トナーは、形状が不定形(平均円形度は0.9前後)でとがったところがあるためクリーニングには有利である。しかし、形状や粒径が不揃いなために、転写効率や現像忠実性には少し劣り、また、微小粒径のトナーが含まれる他、割れやすいために、リサイクルで使用を継続した場合、ラインが綺麗なラインにならず切れ切れになったり、薄汚れたノイズが発生するなど画像品質の低下が起こりやすい傾向がある。従って、より解像度の高い高品位画像には不十分な面があるが、6.3〜8(本/mm)の解像度は十分に解像するため、一般的な画像品質には問題は無い。
【0058】
一方、重合トナーを製造する手段として懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、マイクロカプセル重合法、スプレードライ等がある。例えば、懸濁重合法の場合、バインダー樹脂に着色剤や帯電制御剤等の添加剤を均一化処理し、分散媒、分散剤を添加後、重合して製造される。重合法は工程が簡素化されているため、粉砕法に比べて製造コストが安い。また、粒径が比較的良く揃っており、殆どがほぼ球形(平均円形度0.95〜0.995)であり、粒径もほぼ揃っている。従って、帯電を均一に揃えやすく、潜像にほぼ忠実に現像され、また転写効率が高くなるため、シャープ性、高解像度に優れた画像が再現可能である。使用されるトナーの平均粒径は4〜8μm程度である。しかしその反面、形状が球形又は球形に近いため、粉砕トナーに比べ、クリーニング性能が劣るという欠点がある。このため、球形トナーを使用する場合にはクリーニング性が重要になってくる。
【0059】
一般に、二成分系の現像剤ではトナーとキャリアはトナー濃度で3〜8重量%になるように混合される。例えば、二成分系の現像剤を用いて現像されて顕像化されたトナー像は転写装置(5)(図1ではベルト形状であるが、ローラ形状やコロナ放電方式の転写装置も使用可能である)により、給紙トレイ(9)より搬送された被転写体(コピー用紙)に転写され、分離装置(6)で感光体(1)より分離され、定着装置(8)に運ばれハードコピーとされ、排紙トレイにストックされる。
トナー像を転写した後の像担持体(1)は、本発明のバイアス電圧が印加された複数のクリーニングブラシを配設したクリーニング装置(7)により清掃され、図示しない除電装置により感光体の残留電荷が除電され画像形成プロセスは終了する。
【0060】
次に、図2は、本発明に係る画像形成装置を説明するための別の構成例(タンデム型のフルカラー構成)を示す概略図であり、以下に説明するような例も本発明の範疇に属するものである。
フルカラー方式の画像形成装置は、回転可能な像担持体イエロー(1Y)、マゼンタ(1M)、シアン(1C)、ブラック(1K)の周りに、前記図1に示す複写システムを4系統組み込み込んだものであり、少なくとも帯電装置(2Y)、(2M)、(2C)、(2K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)から成る現像装置(4Y)、(4M)、(4C)、(4K)、クリーニング装置(100Y)、(100M)、(100C)、(100K)を配置したものである。フルカラー方式の画像形成装置では、フルカラーの原稿をG(グリーン)、R(レッド)、B(ブルー)に相当する光に色分解し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色の現像剤で像担持体に形成された静電潜像を現像し、中間転写ベルト(200)に4色のトナーを重ね転写した後、被転写体(コピー用紙)(300)に一括転写して熱定着し、ハードコピーとする。
【0061】
次に、本実施形態に係る画像形成装置のクリーニング装置の構成について説明する。
図3は、前記図2に示す画像形成装置におけるイエロー(Y)用のクリーニング装置(100Y)と、その周囲構成とを示す要部拡大構成図である。即ち、ここではイエロー用のクリーニング装置(100Y)を代表として選択し説明する。
図3において、クリーニング手段であるクリーニング装置(100Y)は、2本のブラシ部材として、第一のクリーニングブラシ(102Y)、及び第二のクリーニングブラシ(112Y)を備えている。以下、クリーニングブラシをブラシと略称することがある。
これら各ブラシ部材は、回転軸(104Y)、(114Y)と、各回転軸の周面に植毛されたブラシ繊維(103Y)、(113Y)とからなり、ブラシ繊維の先端を所定の先端力で像担持体(1Y)に接触させながら回転することにより、中間転写体にトナー像が転写された後の像担持体表面に残留したトナーを除去するようになっている。
更に、第一のクリーニングブラシおよび第二のクリーニングブラシにより除去されたトナーを回収するための、二本のブラシ部材それぞれに当接する第一回収ローラ(105Y)及び第二回収ローラ(115Y)、及び、各回収ローラに回収されたトナーを掻き落す第一スクレーパー(106Y)及び第二スクレーパー(116Y)を備えている。ブラシと像担持体(1Y)との食い込み量は、0.1〜3.0mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2.5mm、更に好ましくは、0.8〜2.0mmである。
【0062】
また、図3に示す本実施形態のブラシ繊維(103Y)、(113Y)としては導電性を有するものを用いており、且つ、上記2つのクリーニングブラシにおいて、像担持体の回転方向上流側に位置するブラシの回転軸(104Y)に、トナーの帯電極性とは逆極性のバイアス電圧を印加する電源と、感光体回転方向下流側に位置するブラシの回転軸に、トナーの帯電極性と同極性のバイアス電圧を印加する電源と、回収ロールに、ブラシの回転軸(104Y)への印加電圧と同極性で、且つ絶対値の高いバイアス電圧を印加する電源と、回収ロール(115Y)に、ブラシの回転軸(114Y)への印加電圧と同極性で、かつ絶対値の高いバイアス電圧を印加する電源とを備えている。この構成によれば、像担持体(1Y)表面に残留する正極性、及び負極性に帯電した転写残トナーを効率的にクリーニングすることができる。
つまり、本実施形態におけるトナーの正規帯電極性は負極性であるが、トナーは転写ニップにおいて正極性のバイアスの作用を受ける結果、一部が正極性に帯電するトナーが存在し、転写残トナーの帯電分布は、負極性のトナーと正極性のトナーとが混在した状態になっている。そこで、それぞれ異なる電圧が印加された2本のブラシローラを設けることによって、それぞれのブラシローラが、印加された電圧とは逆極性に帯電したトナーを除去できる。
【0063】
前記ブラシの植毛形態には大別して直毛状とループ状があり、効果の面で多少の違いがあるもののいずれも使用可能であり、システム条件によって使い分けることが望ましい。
クリーニングブラシに使用されるブラシの材質には、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、カーボン繊維等があり、繊維メーカーはユニチカ、東レ、カネボウ、クラレ、三菱レーヨンなどがある。
【0064】
ブラシに使用される繊維の繊維径は、30(デニール)以下が好ましく、より好ましくは、1〜20(デニール)、更に好ましくは、5〜10(デニール)であり、ブラシの密度は、1万本/inch〜30万本/inchが好ましく、より好ましくは、5万本/inch〜20万本/inch、更に好ましくは、8万本/inch〜15万本/inchである。繊維径が1(デニール)より細い場合には、高密度で作製した時に密に充填された状態になって転写残トナーを回収・保持し難くなってしまう。一方、30(デニール)より太い場合には、製造上の理由から高密度に作製することは困難であり、転写残トナーの回収効率が悪くなる。また、ブラシ密度は、1万本/inchより低いと、繊維1本1本の隙間にトナーが侵入し、凝集を始め、回収(クリーニング)能力を弱めてしまう。一方、ブラシ密度が30万本/inchより高い場合では、細い繊維を使って密度を上げる必要があり、あらゆる環境下において剛性の高い繊維を使ったとしても、ブラシ繊維の腰は弱くなり、クリーニング効果が著しく低下してしまう。
【0065】
一方、ループ状のクリーニングブラシを使用する場合、ブラシに使用される繊維の繊維径は5〜20(デニール)、密度は24〜48フィラメント/450ループ、ループの長さ(繊維長さ)は2〜5mmである。
なお、デニールは、下記式により算出される値である。
デニール=糸の重さ(g)×9000÷糸の長さ(m)
クリーニングブラシに導電性を付与する手段としては、上記繊維にカーボンなどの導電性材料を配合するか、あるいは絶縁性の繊維に導電材料をコーティングすることも可能であり、その抵抗値としては、繊維単体で10〜10Ωのものが好ましく、より好ましくは、10〜10Ωである。
【0066】
第一回収ローラ(105Y)及び第二回収ローラ(115Y)は、そのローラ基材がステンレスなどの金属、あるいは導電性に優れた樹脂材料からなる。また、表面摩擦係数を小さくする目的で、ローラ基材に対して、PFAなどのフッ素系樹脂を塗布したり、フッ素系樹脂と金属との共析メッキ処理を施したりしてもよい。更に、ローラ基材として、導電性ゴムや導電性樹脂などからなるものを用いてもよい。
【0067】
更に、回収ローラ(105Y、115Y)に接触配置されている前記スクレーパー(106Y、116Y)との摩擦によって生じる、回収ロール表面への傷を抑制する目的で、上記回収ロール中にフィラーを含有させて強度の増加、及び摩擦抵抗の低減を図ることも有効である。
例えば、有機フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機フィラー材料としては、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などが挙げられる。また、これらの材料の他に、公知の材料の使用も可能であり、上述したフィラーは単独もしくは2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0068】
第一回収ローラ(105Y)及び第二回収ローラ(115Y)の下方にそれぞれ配設された第一スクレーパー(106Y)及び第二スクレーパー(116Y)は、その一端側が片持ち支持され、且つ自由端側を第一回収ローラ(105Y)及び第二回収ローラ(115Y)に突き当てている。これらのスクレーパーは、前記それぞれの回収ローラに接触して、回収ローラからトナーを落とし、そのトナーは、トナー搬送コイル(図示せず)を通して回収される。
【0069】
第一スクレーパー(106Y)及び第二スクレーパー(116Y)の材料としては、第一回収ローラ(105Y)及び第二回収ローラ(115Y)の表面が金属材料からなる場合にはナイロン系シート材やゴムブレードなどの摩擦抵抗の比較的高いものを用いることが望ましい。一方、第一回収ローラ(105Y)及び第二回収ローラ(115Y)表面が導電性ゴムや導電性樹脂などの非金属からなる場合には、金属を用いることが好ましい。
第一クリーニングブラシ(102Y)及び第二クリーニングブラシ(112Y)のブラシは、その回転に伴って、像担持体(1Y)との当接部であるクリーニング位置を通過した後、第一回収ローラ(105Y)及び第二回収ローラ(115Y)との当接部である回収位置を経由してから、再びクリーニング位置に進入する。
【0070】
図においては、クリーニング位置でブラシ表面と、像担持体(2Y)表面とを互いに逆方向に表面移動させるカウンター方向の構成を示したが、互いに順方向に表面移動させる構成としてもよい。また、回収位置でブラシ表面と、第一回収ローラ(105Y)と第二回収ローラ(115Y)とを互いにカウンター方向に表面移動させる構成を示したが、順方向としてもよい。
【0071】
また、第一クリーニングブラシ(102Y)及び第二クリーニングブラシ(112Y)を回転させることに加えて、軸線方向に揺動させる構成を付加すると、ブラシに対するトナー侵入量を軸線方向に分散させることができるため、ブラシの局所部位に多量の転写残トナーが一気に進入した結果、引き起されるクリーニング性能の低下を抑えることも可能になる。
【0072】
本発明の画像形成装置における第一クリーニングブラシ(102Y)及び第二クリーニングブラシ(112Y)の諸設定値の一例を下記に示す。なお、下記設定値はあくまでも例であり本発明はこれに限定されるものではない。
・ 材質:導電性ポリエステル(繊維内部に導電性カーボンを内包し、繊維表面はポリエステル)
・ 抵抗:1×10[Ω・cm]
・ 植毛密度:10[万本/inch
・ 起毛長さ:5[mm]
・ 繊維太さ:15[デニール]
・ 第一クリーニングブラシへの印加バイアス:+200[V]
・ 第二クリーニングブラシへの印加バイアス:−300[V]
・ 駆動:像担持体の回転方向に対して逆回転
・ 像担持体へのブラシ繊維喰い込み量:1[mm]
・ 回転方向:像担持体の回転方向に対して逆回転
【0073】
また、第一回収ローラ(105Y)及び第二回収ローラ(115Y)の諸設定値の一例を下記に示す。なお、下記設定値はあくまでも例であり本発明はこれに限定されるものではない。
・ 芯金材質:SUS(ステンレス鋼)
・ 材質:PVDF(厚み100[μm])の表層にアクリル系UV硬化樹脂層(厚み5[μm])
・ ユニバーサル硬度:450[N/mm
・ 弾性仕事率:45[%]
・ ローラ直径:10[mm]
・ ブラシに対する喰い込み量:1[mm]
・ 第一回収ローラへの印加バイアス:+500[V]
・ 第二回収ローラへの印加バイアス:−600[V]
回転方向:像担持体の回転方向に対して逆回転
【0074】
また、第一スクレーパ(106Y)及び第二スクレーパ(116Y)の諸設定値の一例を下記に示す。なお、下記設定値はあくまでも例であり本発明はこれに限定されるものではない。
・ 材質:ステンレス
・ 第一回収ローラ(105Y)及び第二回収ローラ(115Y)に対する当接角度:20[°]
・ 回収ローラに対する喰い込み量:1[mm]
・ 厚み:60[μm]
・ 自由長:8[mm]
【0075】
以上、イエロー用のクリーニング装置(100Y)について説明してきたが、他色(シアン、マゼンタ、ブラック)用のクリーニング装置は、イエロー用のものと同様の構成になっている。
また、像担持体としてドラム状の感光体を用いた例について説明したが、他の形状の像担持体を用いても、本発明の適用が可能である。例えば、無端ベルト状の像担持体をクリーニングするクリーニング装置にも、本発明の適用が可能である。また、中間転写ベルトをクリーニングするベルトクリーニング装置にも、本発明の適用が可能である。中間転写体の電気的特性(体積抵抗率、表面抵抗率など)、厚さ、構造(単層、二層、それ以上の複層)、材料、材質等は、作像条件などにより適切なものを種々選択して採用することができる。
【0076】
近年の画像形成装置では、感光体表面を負極性に帯電し、且つ負帯電性トナーを用いるいわゆる反転現像方式が主流になっているが、正極性トナーを用いる反転現像方式や、負又は正極性トナーを用いる正転現像方式でも、本発明の適用が可能である。また、本発明はトナーとキャリアからなる二成分現像剤を用いたものに限らず、一成分現像剤を用いたものであっても適用可能である。
【0077】
次に、本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジ(略称:プロセスカートリッジ)は、前記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオールとイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有する最表面層を備えた像担持体と、帯電手段、画像露光手段、現像手段、クリーニング手段、から選ばれた少なくとも1つの手段とをカートリッジ容器に組み込んで一体とされ、画像形成装置本体に対して着脱自在に装着し得る構成とされたことを特徴とするものである。
本発明のバイアス電圧が印加された複数のクリーニングブラシが配設されたクリーニング装置が画像形成装置に対して着脱可能なプロセスカートリッジに装備されている一例を図4に示す概略図を参照して説明する。クリーニングブラシの機能は前記図1乃至3で説明した内容と全く同じである。
図4において、像担持体(1)を中心に、帯電部材(帯電ローラ)(2)、現像装置(4)、クリーニングブラシを配設したクリーニング装置(7)からなるプロセスカートリッジである。尚、図4中の符号3は露光器、符号5は搬送ローラを示す。
プロセスカートリッジに本発明のクリーニング手段、及び像担持体を搭載することは極めて有効である。即ち、本発明のクリーニング手段及び像担持体の搭載によって、トナークリーニング性が高くなると共に、像担持体や帯電部材の耐久性が高くなり、画像品質も維持されるため、プロセスカートリッジの信頼性が向上してその交換頻度が少なくなり、コスト低減につながる。つまり、前記部材を一体構成とし、画像形成装置に着雑可能なプロセスカートリッジとすることにより、これらの部材に関連した異常が生じた場合に、プロセスカートリッジを交換することにより、直ちに故障を回復させることができる。またメンテナンスを行う場合には、時間の節約ができ、コスト的に有利となる。
【0078】
以下、本発明に用いられる像担持体を図面に沿って説明する。
図5は本発明の画像形成装置に備えられる像担持体の一構成例を模式的に示す断面図である。図5において、導電性支持体(201)上に感光層(202)が設けられ、更に感光層(202)上に架橋表面層(203)が設けられてなる。
図6は本発明の画像形成装置に備えられる像担持体の別の構成例を模式的に示す断面図である。図6において、導電性支持体(201)と感光層(202)との間に下引き層(204)が設けられており、更に感光層(202)上に架橋表面層(203)が設けられてなる。
図7は本発明の画像形成装置に備えられる像担持体の更に別の構成例を模式的に示す断面図である。図7において、導電性支持体(201)上に下引き層(204)が設けられ、その上に、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層(205)と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層(206)とが積層された構成をとっており、更に電荷輸送層(206)上に架橋表面層(203)が設けられてなる。
本発明の画像形成装置に備えられる像担持体の構成は、導電性支持体上に、感光層、最表面層(架橋表面層)が形成されていれば、上記その他の層等が任意に組み合わされていても構わない。以下に、像担持体を構成する導電性支持体、感光層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層、最表面層(架橋表面層)について説明する。
【0079】
<導電性支持体>
導電性支持体としては、体積抵抗1010 Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、あるいは酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板、及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0080】
上記の他、前記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
このような導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂とを適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0081】
<感光層>
次に感光層について説明する。感光層は積層構造でも単層構造でもよい。
積層構造の場合は、感光層は電荷発生物質を含んだ電荷発生層と電荷輸送物質を含んだ電荷輸送層から構成される。また、単層構造の場合には、感光層は少なくとも電荷発生物質を含んだ層から構成される。
以下、積層構造の感光層、及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
[感光層が積層構造からなるもの]
<電荷発生層>
電荷発生層は、画像露光により潜像電荷を発生分離させることを目的とし、電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂(以降、「結着樹脂」と呼称することがある。)を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0082】
無機系材料には、結晶セレン、アモルファスセレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファスシリコン等が挙げられる。アモルファスシリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でタ−ミネ−トしたものや、ホウ素原子、リン原子等をド−プしたものが良好に用いられる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系染料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾ−ル系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0083】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
【0084】
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層の膜厚は0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0085】
<電荷輸送層>
電荷輸送層は、帯電電荷を保持させ、かつ露光により電荷発生層で発生した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的達成のために電気抵抗が高いことが要求され、また保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的と達成するためには、誘電率が小さくかつ電荷移動性が良いことが要求される。これらの要件を満足させるための電荷輸送層は、電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解乃至分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。
【0086】
電荷輸送物質には、電子輸送物質と正孔輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、及びその他公知の材料が挙げられる。
これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
【0087】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。
【0088】
電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂(バインダー樹脂)を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、電荷輸送層の形成には電荷発生層34と同様な塗工法が可能である。
【0089】
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレ−ト、ジオクチルフタレ−ト等一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂(バインダー樹脂)100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレ−ト、ジオクチルフタレ−ト等の汎用の可塑剤がそのまま使用でき、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコ−ンオイル、メチルフェニルシリコ−ンオイル等のシリコ−ンオイル類や、側鎖にパ−フルオロアルキル基を有するポリマ−あるいはオリゴマ−が使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。
電荷輸送層の膜厚は、5〜50μm程度が適当であり、解像度、地汚れ等の画像特性及び帯電電位、感度等の電気特性上、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
【0090】
[感光層が単層構造からなるもの]
次に感光層が単層構造の場合について述べる。
単層構造は導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質を結着樹脂(バインダー樹脂)中に分散した感光層を設けたものである。感光層は、電荷発生物質とバインダー樹脂の他に必要に応じて電荷輸送物質を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は既に述べたものと同様のものが使用できる。
【0091】
バインダー樹脂としては、既に電荷輸送層で挙げた結着樹脂(バインダー樹脂)のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。樹脂成分100重量部に対する電荷発生物質の量は1〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、更に好ましくは50〜150重量部である。感光層は、電荷発生物質、バインダー樹脂を必要に応じて電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。感光層の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
【0092】
<下引き層>
本発明の像担持体においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層の形態は、光源に使用される波長域によって変わることがある。例えば、650〜780nmの長波長領域に発振波長を有するLD素子やLEDアレイ等の光源を用いた場合は、アルミニウムからの光の反射に起因したモアレが発生するため、下引き層若しくはそれに類似の反射防止薄膜の形成は必要不可欠であるが、発振波長が400〜420nm程度のLD素子を使用した場合には、表層近傍での吸収が多くなるため、本発明の具体例に記載するような下引き層は必ずしも必要でなく、アルミナのような1μm以下の薄膜や、ホールの注入を阻止するような半導体膜であってもよい。以下は長波長領域(赤外領域)に発振波長を有する光源を使用した場合の説明である。
【0093】
下引き層の形成は、支持体側からの電荷注入を阻止して帯電特性を安定させ、接着性を向上させ、モアレを防止し、上層の塗工性を改良し、残留電位を低減するなどを目的とする。一般に、下引き層には樹脂を主成分とし、単位時間内に電位減衰を起こしにくい程度に高抵抗化した薄膜が形成される。下引き層は、その上に溶剤を用いて感光層を塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
【0094】
また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を分散し、含有させる方法が好ましく用いられる。これにより、支持体表面の欠陥部の被覆、モアレ画像の防止、感光層のキャリア注入性等が改善される。下引き層を構成する粒子は、単独でも2種以上を混合して用いてもよく、更に平均粒径の異なる2種以上の金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物等から構成されていてもよい。金属酸化物中でも、酸化チタンは、適当な導電性を有しており、導電性キャリアを電子とするN型半導性粒子であるため、支持体からの正孔注入を効率的にブロックする。更に、他の金属酸化物に比べて屈折率が高く、下引き層に用いた際に光の透過率が低くなるため、画質低下への影響が少ない理由で特に好ましく用いることができる。
【0095】
下引き層の形成の際には、必要に応じてその他の添加剤を適当な溶剤に混合・分散させた下引き層用塗工液が用いられる。溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤、エチルセロソルブ、メチルセルソルブ等が挙げられ、これらは単独、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0096】
下引き層用塗工液中に、金属酸化物を分散させる場合の方法としては、ボールミル、ロールミル、サンドミル、超音波分散機等による方法が挙げられる。また、浸漬塗工法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法等が挙げられる。
乾燥温度は、10℃〜250℃、好ましくは100℃〜200℃の範囲で5分〜5時間、好ましくは10分〜2時間の送風乾燥または静止乾燥により行なうことができる。
【0097】
更に、下引き層として、シランカップリング剤等を使用して、例えば、ゾル−ゲル法等により形成した金属金属化合物も有用である。
この他に、本発明の下引き層としては Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン:ユニオンカーバイト社の商品名)等の有機物や、SnO,TiO,CeO等の無機物を真空薄膜作製法にて設けた1010〜1013(Ω・cm)オーダーの電気抵抗を持つ薄膜が良好に使用できる。下引き層の膜厚は0〜40μmが適当であり、好ましくは1〜20μm、更に好ましくは、3〜10μmが適当である。
【0098】
<中間層>
本発明の感光体においては、導電性支持体と下引き層、又は導電性支持体と感光層、又は下引き層と電荷発生層との間に中間層を設けることも可能である。
導電性支持体からの電荷注入によって発生する地汚れを抑制し、更に環境変動による影響のない、安定した電子写真特性を長期わたって維持するために、中間層を設けることも有効な手段である。更に、この技術によって、適当な導電性を下引き層に持たせることができるために厚膜化が可能となり、特に接触帯電手段を有する画像形成装置に用いた場合に発生しやすいリーク防止効果が向上する。
【0099】
中間層には、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物の他に、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子等を含有する有機金属化合物等を用いて形成される。これらの化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物或いは重縮合物として用いることができる。なかでも、有機金属化合物を含むものは、残留電位が低くなり環境による電位変化が少なく、また、繰り返し使用による電位の変化が少ないこと等の性能上において優れている。
【0100】
中間層の形成には、上記金属有機化合物の外にも、シランカップリング剤を混合して用いてもよい。シランカップリング剤を使用する場合、有機金属化合物とシランカップリング剤との混合割合は、必要に応じて適宜設定することができるが、電子写真特性上、塗膜形成後の体積抵抗率が1010〜1013Ω・cmになるように混合比を設定するのが好ましい。中間層のバルク抵抗は、通常の方法で測定される。
例えば、電極上に中間層を形成し後、対向電極を蒸着法などにより形成し、サンドイッチセルのようなサンプルを形成する。これを用い、暗状態において、電圧−電流特性を評価することにより、バルク抵抗が測定できる。この際、対向電極として、導電性ゴムや金属箔を圧着して測定することも可能である。
【0101】
中間層の形成の際には、有機金属化合物を適当な溶剤に混合した中間層用塗工液が用いられる。この中間層用塗工液に用いられる溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶剤が挙げられ、これらは単独、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0102】
中間層を形成する塗工法としては、浸漬塗工、スプレー塗工、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工等が挙げられ、乾燥温度は10℃〜250℃、好ましくは100℃〜200℃の範囲で5分〜6時間、好ましくは10分〜2時間の送風乾燥または静止乾燥により行なうことができる。なお、中間層の塗膜の熱硬化は、中間層塗布後直ちに行なってもよいが、下引き層、感光層、又は電荷発生層を形成する際の過熱によって行ってもよい。中間層の膜厚は、残留電位の上昇や感度低下を引き起こすことなく、電気的なブロッッキング機能を有する3μm以下が好ましく、更に好ましくは、0.05〜2μm程度が適当である。
【0103】
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤は、有機物を含む層ならばいずれに添加してもよく、公知の酸化防止剤をすべて使用することが可能であり、2種以上の酸化防止剤を混合して添加することにより効果が顕著に高まる場合もある。
本発明に用いることができる酸化防止剤として、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類などが挙げられる。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0〜10重量%である。
【0104】
<最表面層(架橋表面層)>
本発明の画像形成装置に備えられる像担持体の最表面層(架橋表面層)の構成材料について説明する。
像担持体の最表面層は、下記一般式(1)で表される、電荷輸送性ポリオール(電荷輸送性ユニットと2つ以上の水酸基を有する)と、芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有し、これを電荷輸送層、あるいは感光層上に塗布、乾燥することにより形成される。
【0105】
【化3】

【0106】
(式中、Yは1つの水酸基が結合した炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を表し、Xは電荷輸送性分子構造を含んでなる2〜4価の炭化水素結合を主とする有機残基を表す。nは2〜4の整数を表す。該水酸基とXとは、炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキレン基、もしくはオキシアルキレン基を介して結合している。)
【0107】
上記Yが、1つの水酸基が結合した炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。また、Yにおける炭素数1〜4の置換又は無置換のアルコキシ基としては、上記炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキル基を有するアルコキシ基を表し、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブチルオキシ基等が挙げられる。これらの置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0108】
一般式(1)におけるXは、電子供与性又は電子受容性、いわゆる電荷輸送性の分子構造を含んでなる炭化水素結合を主とする有機残基を表し、上記Yが、1つの水酸基が結合した炭素数1〜4の基である場合には2〜4価である。
【0109】
電子供与性を有する分子構造としては、正孔輸送化合物があり、例えば、トリフェニルアミン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体、などが挙げられる。
【0110】
電子受容性を有する分子構造としては、電子輸送化合物があり、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどが挙げられる。特に、窒素原子を分子構造中に含む(例えば、トリアリールアミン構造)正孔輸送化合物は電荷輸送能が良好であり、好ましく用いられる。
【0111】
特に、前記一般式(1)におけるXとしては、下記一般式(2)〜(6)で表される電荷輸送性分子構造から誘導される有機残基が有効に用いられ、このような有機残基の導入により、耐摩耗性、耐傷性に優れた最表面層を形成することができると共に、長期間にわたって安定した高画質を維持できる画像形成装置用の像担持体を提供することができる。これらを以下に例示し、具体例を示す。
【0112】
【化4】

【0113】
(式中、少なくともA、A、Aの何れかが一般式(1)中のYと結合し、該Yと結合するA、A、Aは置換又は無置換のアリレン基、アラルキレン基もしくはアルキレン基を表し、Yと結合しないA、A、Aは置換又は無置換のアリール基、アラルキル基もしくはアルキル基を表す。A、A及びAは同一であっても異なってもよい。)
【0114】
【化5】

【0115】
(式中、少なくともR、R、Arの何れかが一般式(1)中のYと結合し、該Yと結合するR、R、Arは置換又は無置換のアリレン基、アラルキレン基もしくはアルキレン基を表し、Yと結合しないR、R、Arは置換又は無置換のアリール基、アラルキル基もしくはアルキル基を表す。R、R及びArは同一であっても異なってもよい。Ar1は置換又は無置換のアリレン基を表す。)
【0116】
【化6】

【0117】
(式中、少なくともAr、Ar、R、Rの何れかが一般式(1)中のYと結合し、該Yと結合するAr、Ar、R、Rは置換又は無置換のアリレン基、アラルキレン基もしくはアルキレン基を表し、Yと結合しないAr、Ar、R、Rは置換又は無置換のアリール基、アラルキル基もしくはアルキル基を表す。Ar、Ar、R及びRは同一であっても異なってもよい。Arは置換又は無置換のアリレン基を表す。)
【0118】
【化7】

【0119】
(式中、少なくともビフェニリル、R、Rの何れかが一般式(1)中のYと結合し、該Yと結合するR、Rは置換又は無置換のアリレン基、アラルキレン基もしくはアルキレン基を表し、Yと結合しないR、Rは置換又は無置換のアリール基、アラルキル基もしくはアルキル基を表す。R、Rは同一であっても異なってもよい。また、Y又はRと結合するビフェニリルはビフェニリデン基を表す。)
【0120】
【化8】

【0121】
(式中、少なくともA、A、A、Aの何れかが一般式(1)中のYと結合し、該Yと結合するA、A、A、Aは置換又は無置換のアリレン基、アラルキレン基もしくはアルキレン基を表し、Yと結合しないA、A、A、Aは置換又は無置換のアリール基、アラルキル基もしくはアルキル基を表す。A、A、A及びAは同一であっても異なってもよい。Aは置換又は無置換のアリレン基を表す。)
【0122】
上記一般式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)においてYと結合しないA、A、A、R、R、Ar、Ar、Ar、R、R、R、R、A、A、A、Aの置換又は無置換のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、トリフェニレニル基等が挙げられる。その置換基としてハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0123】
一般式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)においてYと結合しないA、A、A、R、R、Ar、Ar、Ar、R、R、R、R、A、A、A、Aの置換又は無置換のアラルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。その置換基としてハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0124】
一般式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)においてYと結合しないA、A、A、R、R、Ar、Ar、Ar、R、R、R、R、A、A、A、Aの置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。その置換基として、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0125】
また一般式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)においてYと結合するアリレン基、アラルキレン基もしくはアルキレン基は、上記アリール基、アラルキル基もしくはアルキル基の2価基が挙げられる。その置換基も同様である。
さらに、一般式(2)においてYと結合するA、A、A としては、スチルベニリデン基、α−フェニルスチルベニリデン基が挙げられる。
一般式(6)のA における置換又は無置換のアリレン基としては、上記フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、トリフェニレニル基等のアリール基の2価基が挙げられる。
【0126】
また、本発明において最表面層に含有される架橋性樹脂を形成する一方の成分としてイソシアネート化合物が用いられるが、このようなイソシアネート化合物としては、分子中に芳香環を有する芳香族系イソシアネートが有効に用いられる。即ち、一般的に芳香族イソシアネートと称される化合物は、芳香環に直接イソシアネート基が結合している化合物の総称として使われる場合が多いが、本発明における芳香族系イソシアネートは、分子中に芳香環を有していればよく、芳香環とイソシアネート基の間にアルキレン基を有する化合物も含まれる。
【0127】
本発明に用いる芳香族系イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びその重合体であるポリメリックMDI、キシレンジイソシアネート(XDI)などがあり、また、TDI、MDIあるいはXDIとトリメチロールプロパン等のポリオールとのアダクト型が挙げられる。
【0128】
このような芳香族系イソシアネートとしては市販品を用いることができる。例えば、大日本インキ化学工業社製のバーノックD500、バーノックD750、バーノックD800、三井武田ケミカル社製のコスモネートTシリーズ、コスモネートMシリーズ、コスモネートND、タケネート500及びそのアダクト型であるタケネートD-110N等が挙げられる。
【0129】
これらの中でも、キシレンジイソシアネートやキシレンジイソシアネートのアダクト型は、芳香環とイソシアネート基がメチレン基で結合した構造を有していることから、架橋構造を形成しやすく、好ましく用いられる。また、バーノックD750は、トリレンジイソシアネートのアダクト型であり、静電疲労による残留電位が小さく、好ましく用いられる。
【0130】
また、前記芳香族イソシアネート1分子中に占める全イソシアネート基の含有比率NCO%([NCO基]/[イソシアネート化合物]:wt%)が、3〜50であることが好ましく、より好ましくは10%〜50%である。NCO%が大きいほど形成される架橋点が多くなる。即ち、架橋密度が高くなるため、耐摩耗性が向上することが考えられる。NCO%が3より小さいと、水酸基/イソシアネート基を当量とした場合のポリオールに対するイソシアネート化合物の含有量が相対的に大きくなってしまい、架橋密度が低下し、耐摩耗性が不十分となってしまう可能性がある。また、NCO%が50より大きい場合、イソシアネート化合物の反応性が高くなり過ぎて、塗工液中で反応が進んでしまうなどして、塗工液の寿命が短くなり、製造工程でのハンドリングの悪化や、有機廃液の増加といった環境負荷を招くおそれがある。
【0131】
なお、芳香族イソシアネート化合物と併用して、本発明の目的とする像担持体の特性(耐摩耗性、耐傷性、電子写真特性など)を損なわない程度に脂肪族ポリイソシアネート化合物を用いてもよい。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの鎖状イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート、イソシアヌレート類、前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの、あるいはイソシアネート化合物からなるトリマー(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー等)などが挙げられる。
【0132】
更に、トリメチロールプロパンと、脂肪族ポリイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等)あるいは脂環式ポリイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート等)のアダクトなども好ましく用いられる。トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートからなるアダクトの例を下記構造式(7)に示す。
【0133】
【化9】

【0134】
芳香族ポリイソシアネートと併用する脂肪族ポリイソシアネートとしては市販品を用いることができる。例えば、上記トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートからなるアダクトとしてスミジュールHT(住化バイエルン社製)が挙げられる。
また、ポリイソシアネートとしては、電荷発生性分子骨格を有するポリイソシアネートあるいは電荷輸送性分子骨格を有するポリイソシアネートなども用いられる。
【0135】
本発明における像担持体の最表面層には、前記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオール(反応性電荷輸送性物質)のほかに、必要に応じて他のポリオール化合物を含有することができる。該ポリオールとしては、官能基数が2以上であればよく、ジオールや3価以上のポリオールが用いられる。下記にポリオールを例示するが、本発明に用いられるポリオールはこれに限定されるものではない。
【0136】
ジオールとしては、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
【0137】
3価以上のポリオールとしては、多価脂肪族アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0138】
また、ポリエーテル骨格を有するポリオール、ポリエステル骨格を有するポリオール、アクリル骨格を有するポリオール、エポキシ骨格を有するポリオール、ポリカーボネート、骨格を有するポリオール、電荷発生性分子骨格を有するポリオールあるいは電荷輸送性分子骨格を有するポリオールなども用いられる。
【0139】
本発明においては、各種ポリオールを組み合せて複数で用いることができる。この場合、複数のポリオール化合物の少なくとも1種類は、水酸基数に対する分子量の割合([分子量]/[水酸基数]:OH当量)が150未満であることが好ましく、より好ましくは30以上、150未満であり、さらに好ましくは40以上、120未満である。
OH当量が150未満のポリオールを組み合せることにより、耐摩耗性の高い最表面層を形成することができる。即ち、OH当量の小さいポリオールの含有量を大きくすると、架橋密度が増加して、よりきめの細かい三次元網目構造を形成して耐摩耗性が向上すると考えられる。
ここで、上記OH当量が150未満であるポリオールの含有量は、複数のポリオール全量に対して質量比で10〜90%であることが好ましい。150未満であるポリオールの含有量が10%より小さいと、耐摩耗性向上効果があまり発揮されない。また、90%よりも大きいと、架橋密度が高くなるために、保護層の耐摩耗性は高くなるが、官能基の数が多くなるために反応性も高くなり、塗工液とした場合の貯蔵安定性が低下して寿命が短くなってしまう。そのため、製造工程での不具合が発生しやすく、大量の有機廃液を発生させてしまう恐れがある。また、架橋点が多くなることから、架橋時の体積収縮が大きくなり、塗膜の割れやハジキによる欠陥が発生してしまう場合がある。
【0140】
また、前記複数のポリオールの少なくとも1種類が、OH当量150以上、1500未満のポリオールであることが好ましい。複数のポリオールの少なくとも1種類を、OH当量が150以上、1500未満のポリオールとすると、成膜性が良好でかつ形成された最表面層は高い耐摩耗性を有し、しかも最表面層形成用塗工液とした場合の貯蔵安定性が高く非常に良好な保存性を示す。
この理由としては、上記規定されたOH当量を有するポリオールは、分子量が比較的大きいため、塗工液に適度な粘性を持たせ、OH当量の小さいポリオールやポリイソシアネート、本発明に用いられる反応性電荷輸送物質の均一な混合状態を保持し、ウェット状態の塗膜のレベリング性、均一性が向上するためと考えられる。
【0141】
前記電荷輸送性ポリオールからなる成分(D)と架橋性樹脂(バインダー樹脂)(R)との混合割合(D/R)が質量比で1/10〜15/10が好ましく、3/10〜10/10がより好ましい。電荷輸送性ポリオールからなる成分(D)が1/10未満であると、電荷輸送能が不十分となって残留電位が上昇してしまうことがあり、一方、成分(D)が15/10を超えると、バインダー樹脂成分が少なくなり過ぎて架橋反応による三次元網目構造の形成が阻害され、耐摩耗性が低下してしまうことがある。
【0142】
また、最表面層には、更に必要に応じて、平滑性や、化学的安定性を向上させる目的で、種々の添加剤を加えても構わない。
最表面層は、例えば、浸漬塗工、スプレー塗工、ブレード塗工、ナイフ塗工等の常法の塗工方法を用いて前記感光層上に形成される。これらの中でも、量産性、塗膜品質などの面から浸漬塗工、スプレー塗工が特に好ましい。
本発明の最表面層の膜厚は、0.5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは、1〜40μmであり、更に好ましくは2〜20μmである。0.5μmより薄いと、摩耗による消失や傷などに対する余裕度が小さ過ぎて、十分な耐久性を確保できないことが多い。一方、50μmよりも厚いと、残留電位の上昇などの不具合を発生させてしまう場合がある。従って、摩耗や傷に対する余裕度の確保と残留電位の発生が少なくなるような好適な膜厚で最表面層を形成する必要がある。
【0143】
本発明の像担持体の弾性仕事率は43%以上であることを特徴とする。
前述のように、本発明における弾性仕事率は、ダイヤモンド圧子(略称「圧子」)を用いた微小表面硬度計による負荷−除荷試験により測定される。
即ち、圧子がサンプルに接触した点(a)から一定負荷速度で圧子を押し込み(負荷過程)、設定荷重に達したときの最大変位(b)で一定時間静止し、更に一定除荷速度で圧子を引き上げ(除荷過程)、最終的に圧子に荷重がかからなくなった点を塑性変位(c)とする。このとき、得られるダイヤモンド圧子の押し込み深さと荷重の曲線が図8のように記録され、この曲線から圧子が表面層に行った全仕事量(塑性変形の仕事量+弾性変形の仕事量)に対する弾性変形の仕事量の割合を求めることで本発明の弾性仕事率とする。つまり、弾性仕事率数は下記式で表される。
弾性仕事率(%)=弾性変形の仕事量×100/(塑性変形の仕事量+弾性変形の仕事量)
即ち、 弾性仕事率(%)=弾性変形の仕事量×100/(全仕事量)
【0144】
また、ユニバーサル硬度については前記評価方法におけるダイヤモンド圧子の最大荷重での変位から求めることができ、耐摩耗性の観点から190N/mm以上230N/mm以下以上である架橋表面層が好ましい。
【0145】
前記弾性仕事率の測定は、一定温湿度下で行われ、本発明で弾性仕事率とは、温度22℃、相対湿度55%の環境条件下で行なわれた上記試験の測定値を示す。
本発明では、フィッシャーインストルメンツ H−100(フィッシャーインストルメンツ製)、ビッカース圧子を用いて設定荷重9.8mNの条件で測定を行っているが、これと同等の性能を有するいかなる装置で測定された値でもよい。
測定においては本発明の最表面層(架橋表面層)を有する感光層をアルミニウムシリンダー上に作製したものを用いた。弾性仕事率は基板のバネ特性の影響を受けるため、基板としては剛直な金属版、スライドガラスなどが適当である。
更に、架橋表面層の下層(例えば、電荷輸送層、電荷発生層など)の硬度や弾性の要素も影響するため、これらの影響を減らすように最大変位が架橋表面層膜厚の1/10になるように規定加重を調整した。架橋表面層のみを単独で基板上に作製すると、下層成分の混入、下層との接着性が変わり、必ずしも感光体の表面架橋層を正確に再現できないため、好ましくない。
本発明の架橋表面層における弾性仕事率は、様々な条件が相互に関係しているため、一定の弾性仕事率を得るための方向性は一様でないが、(1)架橋表面層用塗工液に含有される組成物、それらの含有割合、(2)塗工液の希釈溶媒、固形分濃度、(3)塗工方法、(4)硬化手段、条件、(5)下層の溶解性、などによって影響を受けることが分かっており、架橋反応後に未反応の水酸基が残存する等、架橋密度が低い場合に弾性仕事率の値は30%以下となる。また、弾性仕事率の値が60%を超えるとタック性が増大し、像担持体の表面が汚染されやすく、トナーフィルミング等の不具合を発生してしまう。
【0146】
次に、本発明の画像形成装置において、現像手段により静電潜像を可視像とするトナーについて説明する。
<トナー>
本発明の画像形成装置で用いるトナーとしては、材料、製法などについて特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉砕分級法、水系媒体中で油相を乳化、懸濁または凝集させトナー母体粒子を形成させる、懸濁重合法、乳化重合法、ポリマー懸濁法等がある。
使用されるトナーは、熱可塑性樹脂を主成分とするバインダー樹脂中に、着色剤、微粒子、そして帯電制御剤、離型剤等を含有させたものであり、従来公知の電子写真用トナーとして使用されるものを特に制限なく使用できる。このトナーは、重合法、造粒法などの各種のトナー製法によって作成された不定形または球形のトナーである。また、磁性トナー及び非磁性トナーのいずれも使用可能である。
【0147】
トナーのバインダー樹脂としては以下のものを、単独あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
スチレン系バインダー樹脂として、ポリスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;アクリル系バインダーとして、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートが挙げられ、その他、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂肪族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。
【0148】
ポリエステル樹脂は、スチレン系やアクリル系樹脂に比して、トナーの保存時の安定性を確保しつつ、より溶融粘度を低下させることが可能である。このようなポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応によって得ることができる。
【0149】
上記アルコール成分としては、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどのジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノーAなどのエーテル化ビスフェノール類、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価のアルコール単位体、その他の2価のアルコール単位体、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエスリトール、ジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の三価以上の高アルコール単量体を挙げることができる。
【0150】
ポリエステル樹脂を得るために用いられるカルボン酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価の有機酸単量体、これらの酸の無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸からの二量体、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸エンボール三量体酸、これら酸の無水物等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。
【0151】
また、前記エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールAとエポクロルヒドリンとの重縮合物等があり、例えば、エポミックR362、R364、R365、R366、R367、R369(以上、三井石油化学工業(株)製)、エポトートYD−011、YD−012、YD−014、YD−904、YD−017、(以上、東都化成(株)製)エポコ−ト1002、1004、1007(以上、シェル化学社製)等の市販のものが挙げられる。
【0152】
トナーに用いる着色剤としては、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、ハンザイエローG、ローダミン6Gレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、染顔料など、従来公知のいかなる染顔料をも単独あるいは混合して使用し得る。使用量は一般にバインダー樹脂100重量部に対し0.1〜50重量部である。
【0153】
また、トナーに磁性体を含有させて磁性トナーとすることも可能である。磁性体としては、鉄、コバルトなどの強磁性体、マグネタイト、ヘマタイト、Li系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Ni−Znフェライト、Baフェライトなどの微粉末が使用できる。
【0154】
トナーの摩擦帯電性を充分に制御する目的で、いわゆる帯電制御剤、例えば、モノアゾ染料の金属錯塩、ニトロフミン酸およびその塩、サリチル酸、ナフトエ塩、ジカルボン酸のCo、Cr、Fe等の金属錯体アミノ化合物、第4級アンモニウム化合物、有機染料などを必要に応じて含有させることもできる。帯電制御剤の使用量は、主帯電制御剤量、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.3〜5重量部の範囲がよい。
【0155】
更に、トナーには必要に応じて離型剤を添加してもよい。離型材料としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ホホバワックス、ライスワックス、モンタン酸ワックス等を単独または混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
また、トナーには、添加剤を添加することができる。良好な画像を得るためには、トナーに十分な流動性を付与することが肝要である。それらは、条件を満たせば公知のものが使用可能である。例えば、シリカ微粒子、疎水性シリカ、脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムなど)、金属酸化物(チタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモンなど)、フルオロポリマー等を含有してもよい。
【0157】
特に好適な添加剤としては、疎水化されたシリカ、チタニア、酸化チタン、アルミナ微粒子があげられる。シリカ微粒子としては、HDK H 2000、HDK H 2000/4、HDK H 2050EP、HVK21、HDK H 1303(以上クラリアントジャパン)やR972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(以上日本アエロジル)がある。また、チタニア微粒子としては、P−25(日本アエロジル)やSTT−30、STT−65C−S(以上チタン工業)、TAF−140(富士チタン工業)、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−150A(以上テイカ)などがある。特に疎水化処理された酸化チタン微粒子としては、T−805(日本アエロジル)やSTT−30A、STT−65S−S(以上チタン工業)、TAF−500T、TAF−1500T(以上富士チタン工業)、MT−100S、MT−100T(以上テイカ)、IT−S(石原産業)などがある。
疎水化処理された無機微粒子、シリカ微粒子及びチタニア微粒子、アルミナ微粒子を得るためには、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシランやメチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤で処理して得ることができる。
【0158】
トナーは、以下のような、体積平均粒径(Dv)、体積平均粒径(Dv)/個数平均粒径(Dn)、平均円形度、形状係数SF−1、SF−2、などを有していることが好ましい。
即ち、トナーの体積平均粒径(Dv)としては、3〜8μmが好ましく、4〜7μmがより好ましく、5〜6μmがさらに好ましい。ここで、体積平均粒径は、Dv=(Σ(nD3)/Σn)1/3(式中、nは粒子個数、Dは粒子径である)と定義される。
【0159】
体積平均粒径が3μm未満であると、二成分現像剤では現像器における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0160】
トナーにおける体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)としては、例えば、1.25以下が好ましく、1.00〜1.20がより好ましく、1.10〜1.20がさらに好ましい。
体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dn)が、1.25以下であると、トナーの粒度分布が比較的シャープであり、定着性が向上するが、1.00未満であると、二成分現像剤では現像器における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させたり、クリーニング性を悪化させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、1.20を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0161】
体積平均粒径、及び体積平均粒径と個数平均粒子径との比(Dv/Dn)は、例えば、ベックマン・コールター社製の粒度測定器「マルチサイザーII」を用いて測定することができる。
本発明に用いるトナーの平均円形度は、0.930〜1.000が好ましく、0.940〜0.99がより好ましい。なお、平均円形度は、トナーの形状と投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値である。
平均円形度が0.930未満であると、球形から離れた不定形の形状のトナーとなり、満足できる転写性やチリのない高画質画像が得られないことがあり、一方、0.98を超えると、ブレードクリーニングなどを採用している画像形成システムでは、感光体上及び転写ベルトなどのクリーニング不良が発生し、画像上の汚れ、例えば、写真画像等の画像面積率の高い画像形成の場合において、給紙不良等で未転写の画像を形成したトナーが感光体上に転写残トナーとなって蓄積した画像の地汚れが発生したり、あるいは感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまうことがある。
【0162】
平均円形度は、例えば、トナーを含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知し、解析する光学的検知帯の手法などにより計測することができ、例えば、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100(シスメックス社製)等を用いて計測することができる。
【0163】
トナーにおける略球形状は、下記数式(I)で表されるトナーの球形(丸み)の程度を表す形状係数SF−1で表され、該形状係数SF−1は、トナーを二次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの2乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
【0164】
【数1】

【0165】
[ただし、数式(I)中、MXLNGは、トナーを二次元平面に投影してできる形状の最大長を表す。AREAは、トナーを二次元平面に投影してできる図形の面積を表す。]
【0166】
上記形状係数SF−1は、100〜180が好ましく、105〜140がより好ましい。前記SF−1が100の場合にはトナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。前記SF−1の値が180を超えるとクリーニング性は向上するが、球形形状が大きくはずれるために、帯電量分布が広くなり地かぶりが多くなり画像品位が低下する。また、移動における空気の抵抗で、電界による現像及び転写が電気力線に忠実でなくなるために、細線間にトナーが現像され画像均一性が低下し、画像品位が低下することがある。
【0167】
トナーの凹凸の程度は下記数式(II)で表される形状係数SF−2で表される。形状係数SF−2は、トナーを二次元平面に投影してできる図形の周長PERIの2乗を図形面積AREAで除して、100/4πを乗じた値である。
【0168】
【数2】

【0169】
[ただし、数式(II)中、PERIは、トナーを二次元平面に投影してできる図形の周長を表す。AREAは、トナーを二次元平面に投影してできる図形の面積を表す。]
【0170】
SF−2は100〜180が好ましく、105〜140がより好ましい。前記SF−2が100の場合にはトナー表面に凹凸が存在しないことを意味し、前記SF−2が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
【0171】
ここで、前記形状係数SF−1及びSF−2は、例えば、走査型電子顕微鏡(S−800、日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3、ニレコ社製)に導入し、解析して上記数式1及び数式2から計算により求めることができる。
また、トナーは、以下の形状規定によって表すことができる。略球形状のトナーの長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする)で規定するとき、長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7〜1.0の範囲であることが好ましい。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満であると、真球形状から離れるため、ドット再現性および転写効率が劣り、高品位な画像が得られなくなってしまう場合がある。一方、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、扁平形状に近くなり、球形トナーのような高転写率は得られなくなってしまうことが考えられる。特に、(r3/r2)が1.0では、長軸を回転軸とする回転体となり、トナーの流動性を向上させることができる。
【0172】
トナーの着色としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。着色としては、例えば、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーから選択される少なくとも1種とすることができ、各色のトナーは着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができるが、カラートナーであるのが好ましい。
【0173】
<現像剤>
現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した画像形成装置に使用する場合には、寿命向上等の点から二成分現像剤が好ましい。このニ成分現像方式では、トナーとキャリアとを混合して、両者を相互に摩擦帯電させ、トナーに適当量の正または負の電荷を付与している。
二成分現像剤方式の現像装置では、通常、像担持体に相対するように配設された現像ローラを備える。現像ローラは、表面に磁極が形成された磁性ローラであり、像担持体との間に一定の間隙(現像ニップ)が形成されるように配設され、この現像ローラの表面には、二成分現像剤中の磁性キャリア粒子が磁力線に沿って穂立ちして磁気ブラシを形成する。そして現像ローラが回転すると、表面の磁気ブラシが感光体の表面を摺擦し、磁気ブラシに付着していたトナーが像担持体に付着して潜像が現像される。
【0174】
キャリアに対するトナーの割合は、キャリア100重量部当り、トナー2〜25重量部、好ましくは3〜20重量部の割合である。キャリア粒径としては、その重量平均粒径(Dw)が20〜100μmであり、好ましくは22〜50μm、更に好ましくは22〜30μmの範囲である。重量平均粒径(Dw)が上記範囲よりも大きいと、最密状態に配置されていても曲率半径が大きく、像担持体と接していない面積が増えるためにトナー像の欠けや抜けが発生する。更には、潜像に対してトナーが忠実に現像されなくなって、ドット径のバラツキが大きくなり粒状性が低下し、高い画像濃度を得るためにトナー濃度を高くした場合には、地汚れが発生しやすくなる。逆に重量平均粒径(Dw)が20μm未満のキャリアでは、キャリア自身の流動性が悪くなり、1個当たりの磁力が小さくなるので、現像スリーブ上での動きが悪くなる。
【0175】
本発明において、キャリア、キャリア芯材に関して言う重量平均粒径(Dw)は、個数基準で測定された粒子の粒径分布(個数頻度と粒径との関係)に基づいて算出されたものである。この場合の重量平均粒径(Dw)は次式で表される。
Dw={1/Σ(nD)}×{Σ(nD)}
上式中、Dは各チャネルに存在する粒子の代表粒径(μm)を示し、nは各チャネルに存在する粒子の総数を示す。
【0176】
なお、チャネルとは、粒径分布図における粒径範囲を等分に分割するための長さを示すもので、本発明では、2μmの長さを採用した。また、各チャネルに存在する粒子の代表粒径としては、各チャネルに保存する粒子粒径の下限値を採用した。キャリアの粒径分布を測定するための粒度分析計としては、マイクロトラック粒度分析計(モデルHRA
9320−X100:Honewell社製)を用いた。その測定条件は以下の通りである。
(1)粒径範囲:100〜8μm
(2)チャネル長さ(チャネル幅):2μm
(3)チャネル数:46
(4)屈折率 :2.42
【0177】
また、結着樹脂中に金属化合物を分散させた磁性体分散型の芯材粒子を用いることもできる。用いられる金属化合物粒子としては、下記式(a)又は(b)で表される磁性を有するマグネタイト又はフェライトが挙げられる。
MO・Fe ・・・(a)
M・Fe ・・・(b)
[式(a)、(b)中、Mは3価、2価又は1価の金属イオンを示す。]
【0178】
Mとしては、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Sn、Ba、Pb及びLiが挙げられ、これらは、単独あるいは複数で用いることができる。
【0179】
上記の磁性を有する金属化合物粒子の具体的化合物としては、例えば、マグネタイト、Zn−Fe系フェライト、Mn−Zn−Fe系フェライト、Ni−Zn−Feフェライト、Mn−Mg−Fe系フェライト、Ca−Mn−Fe系フェライト、Ca−Mg−Fe系フェライト、Li−Fe系フェライト及びCu−Zn−Fe系フェライトの如き鉄系酸化物が挙げられる。
【0180】
金属化合物粒子としては、上記の磁性を有する金属化合物と下記の非磁性の金属化合物とを混合して用いてもよい。
非磁性の金属化合物としては、例えば、Al、SiO、CaO、TiO、V、CrO、MnO、α−Fe、CoO、NiO、CuO、ZnO、SrO、Y及びZrOが挙げられる。この場合、1種類の金属化合物を用いることもできるが、2種以上の金属化合物を混合してもよい。組み合わせの具体例としては、例えば、Al、SiO、CaO、TiO、V、CrO、MnO、α−Fe、CoO、NiO、CuO、ZnO、SrO、Y及びZrOが挙げられる。
【0181】
結着樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコーン系樹脂等を例示することができる。また、バインダー樹脂は、樹脂化合物を溶融して用いても良いし、モノマーと溶媒が均一に分散又は溶解されているような溶液中から、モノマーを重合させることにより粒子を生成する重合法の製造方法を用いることも可能である。
【0182】
磁性体分散型の芯材粒子の結着樹脂に使用されるモノマーとしては、ラジカルの重合性モノマーを用いることができる。例えば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、p−ターシャリーブチルスチレンの如きスチレン誘導体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ベンジルの如きメタクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルエーテル、イソブチルエーテル、β−クロルエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルエーテル、p−クロルフェニルエーテル、p−ブロムフェニルエーテル、p−ニトロフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテルの如きビニルエーテル;ブタジエンの如きジエン化合物を挙げることができる。
これらのモノマーは単独または混合して使用することができ、好ましい特性が得られるような好適な重合体組成を選択することができる。
【0183】
架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンの如き芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールアクロキシジメタクリレート、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド及びジビニルスルフォンが挙げられる。これらは、2種類以上を適宜混合して使用しても良い。架橋剤は、重合性混合物に予め混合しておくこともできるし、必要に応じて適宜重合の途中で添加することもできる。
【0184】
その他の結着樹脂のモノマーとして、エポキシ樹脂の出発原料としてなるビスフェノール類とエピクロルヒドリン;フェノール樹脂のフェノール類とアルデヒド類;尿素樹脂の尿素とアルデヒド類;メラミンとアルデヒド類が挙げられる。
【0185】
芯材粒子を分級する方法としては、ふるい分け機、重力分級機、遠心分級機、慣性分級機などの従来公知の分級方法を使用することができるが、生産性が良好で分級点の変更が容易にできることから重力分級機、遠心分級機、慣性分級機といった風力分級機を使用することが好ましい。
【0186】
前記キャリアは、前記芯材粒子の表面に樹脂層を形成することによって製造される。キャリア被覆層に使用される樹脂としては、弾性を有するものであれば、公知の材料を何ら限定されることなく使用できるが、表面部分での環境安定性、トナー粒子との摩擦帯電性等から、被覆層を形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂またはその変成品(例えば、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成品);パーフルオロアルキルエーテル、ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂や、これらの複合樹脂等が挙げられる。中でも、よりトナー成分の固着を防止する点で被覆層用の材料として好ましいのはシリコーン樹脂またはその変成品、弗素樹脂、特にはシリコーン樹脂またはその変成品である。
【0187】
シリコーン樹脂としては、公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができ、オルガノシロキサンを含む線状/非線状シリコーン樹脂をアルキド、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどで変成したシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0188】
更に、以下に示すものを単独または上記シリコーン樹脂と混合して使用することも可能である。
例えば、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体などのスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0189】
キャリア芯材粒子表面に被覆層を形成するための方法としては、スプレードライ法、浸漬法、あるいはパウダーコーティング法など公知の方法が使用できる。特に、流動層型コーティング装置を用いる方法は、均一な被覆層を形成するのに有効である。
キャリア芯材粒子表面上に被覆層の厚みは、通常0.02〜1μm、好ましくは0.03〜0.8μmである。被覆層の厚みはきわめて小さいことから、芯材粒子表面上に被覆層を形成したキャリアとキャリア芯材粒子の粒径は実質的に同じである。
前述のシリコーン樹脂からなる被覆層にアミノシランカップリング剤を含有させることにより、耐久性の良好なキャリアを得ることができる。含有量は、0.001〜30重量%が好ましい。
【0190】
また、被覆層の補強の目的で被覆層中に他の硬質な微粒子成分を含有させることができる。なかでも金属酸化物粒子、無機酸化物粒子は均一な粒子径で、かつ被覆層の成分と高い親和性が得られ、著しい被覆層の補強効果を示すため、好ましく用いられる。
このような微粒子としては、従来公知の材料を単独、または混合して用いることが可能であり、代表的にはSi酸化物、Ti酸化物、Al酸化物などがある。
被覆層中に含有させる硬質微粒子の含有量として2〜70重量%が好ましく、より好ましくは5〜40重量%の範囲である。含有量は用いる微粒子の粒子径、比表面積によって、適切に選ばれるが、2重量%未満では被覆層の耐摩耗効果が発現しにくく、70重量%を超えると、微粒子の脱離が生じやすくなる。
【実施例】
【0191】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中使用する「部」は、すべて重量部を表す。
先ず、像担持体1〜16を以下のようにして作製した。
【0192】
<像担持体の作製例1>
導電性円筒状支持体として、直径30mmのアルミニウムシリンダーを用意した。このアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、電荷輸送層塗工液を、順次、塗布・乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、25μmの電荷輸送層を形成した。
【0193】
〔下引き層塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製): 6重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製): 4重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製): 40重量部
メチルエチルケトン: 200重量部
【0194】
〔電荷発生層塗工液〕
下記構造式(8)で表されるビスアゾ顔料: 2.5部
【0195】
【化10】

ポリビニルブチラール(エスレックBM−1:積水化学工業(株)製):2.0部
シクロヘキサノン: 200部
メチルエチルケトン: 80部
【0196】
〔電荷輸送層塗工液〕
ビスフェノールZ型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成製): 10部
下記構造式(9)で表される電荷輸送物質: 7部
【0197】
【化11】

【0198】
テトラヒドロフラン: 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液(KF50−100CS、
信越化学工業製): 1部
【0199】
次に、電荷輸送層上に、下記組成の架橋表面層塗工液を用いてスプレー塗工し、150℃で30分加熱して5.0μmの架橋表面層を設け、像担持体1を作製した。
【0200】
〔架橋表面層塗工液〕
下記構造式(10)で表される電荷輸送性ポリオール: 15部
【0201】
【化12】

【0202】
イソシアネート(キシレンジイソシアネート;タケネート500、
三井武田ケミカル社製): 7部
ポリオール(ポリエステルポリオール;数平均分子量1000、
サンエスターNo.22、三洋化成工業製): 25部
シクロヘキサノン: 65部
テトラヒドロフラン: 215部
<架橋表面層塗工液組成分の混合条件>
NCO/OH=1.0
電荷輸送性ポリオール/ポリエステルポリオール=2/1
溶剤混合比:テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=10/3
【0203】
<像担持体の作製例2>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有された電荷輸送性ポリオールを下記構造式(11)で表されるポリオールに変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体2を作製した。
【0204】
【化13】

【0205】
<像担持体の作製例3>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有された電荷輸送性ポリオールを下記構造式(12)で表されるポリオールに変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体3を作製した。
【0206】
【化14】

【0207】
<像担持体の作製例4>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有された電荷輸送性ポリオールを下記構造式(13)で表されるポリオールに変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体4を作製した。
【0208】
【化15】

【0209】
<像担持体の作製例5>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有された芳香族イソシアネートを下記のイソシアネートに変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体5を作製した。
ナフタレンジイソシアネート(コスモネートND、三井武田ケミカル社製)
【0210】
<像担持体の作製例6>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有された芳香族イソシアネートを下記のイソシアネートに変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体6を作製した。
トリレンジイソシアネート(コスモネートT−65、三井武田ケミカル社製)
【0211】
<像担持体の作製例7>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有された芳香族イソシアネートとポリオールとを下記のものに変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体7を作製した。
芳香族イソシアネート:トリレンジイソシアネートのポリオールアダクト(バーノックD750、大日本インキ化学工業社製)
ポリオール:下記構造式(14)で表されるポリオール[スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートからなるスチレン−アクリル共重合体](LZR−170、藤倉化成社製)なお、式(14)中l=28、m=42、n=30(数平均分子量1000以上、重量平均分子量約31000)を示す。
【0212】
【化16】

【0213】
<像担持体の作製例8>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有されたポリオールを下記構造式(15)で表されるポリオールに変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体8を作製した。
【0214】
【化17】

【0215】
<像担持体の作製例9>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液を下記のように変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体9を作製した。
【0216】
〔架橋表面層塗工液〕
下記構造式(10)で表される電荷輸送性ポリオール: 25部
【0217】
【化18】

【0218】
イソシアネート(キシレンジイソシアネート;タケネート500、
三井武田ケミカル社製): 8部
シクロヘキサノン: 70部
テトラヒドロフラン: 235部
<架橋表面層塗工液組成分の混合条件>
NCO/OH=1.0
溶剤混合比:テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=10/3
【0219】
<像担持体の作製例10>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有された電荷輸送性ポリオールとポリエステルポリオールとの混合比を下記のように変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体10を作製した。
〔架橋表面層塗工液〕
前記構造式(10)で表される電荷輸送性ポリオール: 20部
イソシアネート(キシレンジイソシアネート;タケネート500、
三井武田ケミカル社製): 8部
ポリオール(ポリエステルポリオール;数平均分子量1000、
サンエスターNo.22、三洋化成工業製): 7部
シクロヘキサノン: 65部
テトラヒドロフラン: 215部
<架橋表面層塗工液組成分の混合条件>
NCO/OH=1.0
電荷輸送性ポリオール/ポリエステルポリオール=10/1
溶剤混合比:テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=10/3
【0220】
<像担持体の作製例11>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有されたポリオールを下記のようにに変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体11を作製した。
〔架橋表面層塗工液〕
前記構造式(10)で表される電荷輸送性ポリオール: 14部
イソシアネート(キシレンジイソシアネート;タケネート500、
三井武田ケミカル社製): 7部
ポリオール(ポリエステルポリオール;数平均分子量2000、
サンエスター24620、三洋化成工業製): 47部
シクロヘキサノン: 70部
テトラヒドロフラン: 235部
<架橋表面層塗工液組成分の混合条件>
NCO/OH=1.0
電荷輸送性ポリオール/ポリエステルポリオール=2/1
溶剤混合比:テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=10/3
【0221】
<像担持体の作製例12>
像担持体の作製例11において架橋表面層塗工液に含有された電荷輸送性ポリオールとポリエステルポリオールとの混合比を下記のように変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体12を作製した。
〔架橋表面層塗工液〕
前記構造式(10)で表される電荷輸送性ポリオール: 20部
イソシアネート(キシレンジイソシアネート;タケネート500、
三井武田ケミカル社製): 7部
ポリオール(ポリエステルポリオール;数平均分子量2000、
サンエスター24620、三洋化成工業製): 15部
シクロヘキサノン: 70部
テトラヒドロフラン: 235部
<架橋表面層塗工液組成分の混合条件>
NCO/OH=1.0
電荷輸送性ポリオール/ポリエステルポリオール=10/1
溶剤混合比:テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=10/3
【0222】
<像担持体の作製例13>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有されていた電荷輸送性ポリオールを未添加とした以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体13を作製した。
【0223】
<像担持体の作製例14>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有された電荷輸送性ポリオールを下記構造式(16)で表される化合物に変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体14を作製した。
【0224】
【化19】

【0225】
<像担持体の作製例15>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有された電荷輸送性ポリオールを下記構造式(17)で表される化合物に変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体15を作製した。
【0226】
【化20】

【0227】
<像担持体の作製例16>
像担持体作製例1において架橋表面層塗工液に含有された電荷輸送性ポリオールを下記構造式(18)で表される化合物に変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体16を作製した。
【0228】
【化21】

【0229】
<像担持体の作製例17>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液に含有された芳香族イソシアネートを下記構造式(7)で表される化合物に変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体17を作製した。
構造式(7)で表される化合物:トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートからなるアダクト[脂肪族イソシアネート](スミジュールHT、住友バイエルン社製)
【0230】
【化22】

【0231】
<像担持体の作製例18>
像担持体の作製例1において架橋表面層塗工液を下記のように変更した以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体15を作製した。
【0232】
〔架橋表面層塗工液〕
下記構造式(16)で表される電荷輸送性化合物: 40部
【0233】
【化23】

【0234】
イソシアネート(キシレンジイソシアネート;タケネート500、
三井武田ケミカル社製): 7部
シクロヘキサノン: 65部
テトラヒドロフラン: 215部
【0235】
<架橋表面層塗工液組成分の混合条件>
NCO/OH=1.0
溶剤混合比:テトラヒドロフラン/シクロヘキサノン=10/3
【0236】
<像担持体の作製例19>
像担持体の作製例1において架橋表面層を設けず、電荷輸送層の膜厚を30μmとした以外は全て像担持体の作製例1と同様にして像担持体19を作製した。
【0237】
以上のように作製した像担持体1〜19を、フィッシャーインストルメンツ製の表面被覆物性能試験機フィッシャースコープH−100を使用して、弾性仕事率及びユニバーサル硬度を測定した。結果を下記表1に示す。
【0238】
【表1】

【0239】
(実施例1〜12、比較例1〜7)
次に、像担持体1〜19を電子写真プロセス用カートリッジに装着し、これを画像形成装置[(株)リコー製 IPSIO CX9000改造機]に搭載し、以下により評価した。
画像形成装置の帯電部材には非接触帯電部材を使用した。像担持体(感光体)と帯電部材間との隙間は53μm〜58μmであった。この帯電部材に直流電圧−680V、交流電圧1500V/1350Hzの交流電圧を重畳した直流電圧を印加し、像担持体の表面電位を−700V(静電潜像形成前の帯電電位)に設定した。クリーニングブラシとして、第一のクリーニングブラシ(残留除去されるトナーの帯電極性と逆極性のバイアス電圧を印加)及び第二のクリーニングブラシ(残留除去されるトナーの帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加)を配備した。また、静電潜像を現像するための現像剤には、乳化重合法を用いて作製された重量平均粒径が約6.3μm、平均円形度が0.988の球形トナー(リコー社製)と、重量平均粒径が約35μmのシリコーン樹脂を被膜したキャリア(リコー社製)をトナー濃度で6重量%になるように混合されたものを使用した。
【0240】
評価法としては、常温常湿(23℃、55%RH)の環境下で、A4、画素密度が600dpi×600dpiで画像面積率が6%となる原稿を用いて、連続5枚ずつ印刷する条件で、NBSリコー製MyPaperに複写印刷する通算5万枚の耐久性試験を実施し、摩耗特性、機内電位(スタート時に暗部電位:−700V、明部電位:−100Vに設定)、像担持体(感光体)表面の観察、ハーフトーン画像の画質評価を行なった。結果を下記表2に示す。
【0241】
[摩耗量の評価]
摩耗量については、渦電流式膜厚計(フィッシャースコープMMS、フィッシャー社製)を用いて、通紙試験前後の膜厚を測定し、これらの差を摩耗量とした。
[感光体表面の観察]
像担持体(感光体)表面の観察には、超深度形状測定顕微鏡(VK−8500、キーエンス(株)製)を用いた。50倍の対物レンズを使用し、観察視野における最大凹凸段差を測定した。なお、図9、図10にそれぞれ実施例および比較例における像担持体の表面形状の一例を示す。
[ΔVD及びΔVLの評価]
明部電位については、現像部に電位計プローブを装着し、帯電、画像露光後、現像部位まで移動した際の感光体表面電位を測定した。なお、ΔVD、及びΔVLは、それぞれ、初期時と5万枚通紙試験後の暗部電位、明部電位の電位変化量を表す。
ΔVD=(初期時における暗部電位:−700V)−(5万枚通紙後における暗部電位)
ΔVL=(初期時における明部電位:−100V)−(5万枚通紙後における明部電位)
[ハーフトーン画像の評価]
初期及び5万枚通紙後に各画像形成要素について単色ハーフトーン画像を出力し、目視及び顕微鏡で画質を評価した。画質評価ランクは以下のように行った。
◎:良好
○:局所的にやや濃度ムラがある
△:濃度ムラが発生するが、実使用上問題なし
×:濃度ムラが目立つ
【0242】
【表2】

【0243】
前記作成した像担持体1、5、9、11、14、17を用いて、低温低湿(10℃、25%RH)の環境下で通算1万枚の耐久性試験を実施した。評価結果を下記表3に示す。
【0244】
【表3】

【0245】
実施例13〜16では帯電電位(暗部電位)や露光部電位(明部電位)の変化量は小さく、画質も安定しているのに対して、比較例8、9においては、ポリウレタン構造の立体的なひずみから電荷移動性の低下が特に顕著となり、帯電電位(暗部電位)や露光部電位(明部電位)の変化量が大きいために安定した画像が得られない。
【0246】
前記作成した像担持体2、6、9、15、18を用いて、高温高湿(32℃、80%RH)の環境下で通算1万枚の耐久性試験を実施した。評価結果を下記表4に示す。
【0247】
【表4】

【0248】
実施例17〜19では帯電電位(暗部電位)や露光部電位(明部電位)の変化量は小さく、画質も安定しているのに対して、比較例10、11においては、反応性の水酸基を1つしか持たないためポリウレタンの三次元網目構造の形成が阻害されるために摩耗特性が劣化し、感光体表面にはブラシの摺擦痕が生じる。その結果、高温高湿下では、形成された凹凸形状の谷部に帯電性生物が蓄積され、画像流れを引起したり、この表面形状に起因するスジ状の画像欠陥が発生する。
【0249】
表2、3、4に示す結果から、前記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオール(2つ以上の水酸基を有する)と、芳香族系イソシアネートとの架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有する最表面層を備えた像担持体を装備すると共に、トナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを備え、且つ、前記像担持体の前記評価方法(ダイヤモンド圧子を用いた微小表面硬度計による負荷−除荷試験)により算出される弾性仕事率が45%以上とされた実施例1〜12は、摩耗量、ΔVD及びΔVL、ハーフトーン画像、像担持体(感光体)表面の観察、画質の総合評価においていずれも良好な結果を示している。像担持体(感光体)表面の観察では、図9に示すように感光体表面にブラシ痕が見られない。
一方、架橋表面層塗工液に電荷輸送性ポリオールを用いない比較例1、架橋表面層塗工液のアルコール組成分として1つの水酸基を有する化合物を用いた比較例2、3、4、6、架橋表面層塗工液のイソシアネート化合物として脂肪族系化合物のみを用いた比較例5、架橋表面層を設けなかった比較例7においては、明部電位の上昇による異常画像、あるいは像担持体表面に深いブラシによる傷が発生(例えば、図10に示すように感光体表面にブラシ痕が発生)しており、これが解像度の低下や黒スジの発生に現われるように画質の低下を引起すことがわかる。
即ち、本発明の画像形成装置によれば、像担持体の耐摩耗性及び耐傷性が改善され、クリーニングブラシが像担持体との接触状態を均質に維持しながら動作することにより、クリーニングブラシの摺擦に起因する像担持体表面へ深い傷を発生させることなく、長期にわたって良好なクリーニング性を達成することができ、高画質な画像を長期間維持することが可能になった。
更に、耐摩耗性に優れた本発明の電荷輸送性ポリオールと、イソシアネート化合物との架橋結合により形成される架橋性樹脂を最表面層に形成した像担持体を用いることにより、良好な電荷輸送機能が高速機への搭載を可能にし、且つ、像担持体の交換寿命を決定し、コスト高の要因となっていた像担持体表面の傷を抑制できることから、従来の静電クリーニング方式の課題が解決する画像形成装置、及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供できる。
【符号の説明】
【0250】
(図1)
1 像担持体
2 帯電装置
3 画像露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 分離装置
7 クリーニング装置
8 定着装置
9 給紙トレイ
(図2、図3)
1Y、1M、1C、1K 像担持体(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)
2Y、2M、2C、2K 帯電装置(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)
イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)から成る
4Y、4M、4C、4K 現像装置(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)
100Y、100M、100C、100K クリーニング装置(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)
102Y 第一のクリーニングブラシ
112Y 第二のクリーニングブラシ
104Y、114Y 回転軸
103Y、113Y ブラシ繊維
105Y 第一回収ローラ
115Y 第二回収ローラ
106Y 第一スクレーパー
116Y 第二スクレーパー
200 中間転写ベルト
300 被転写体(コピー用紙)
(図4)
1 像担持体
2 帯電部材(帯電ローラ)、
3 露光器、
4 現像装置、
5 搬送ローラ
7 クリーニング装置
(図5〜図7)
201 導電性支持体
202 感光層
203 架橋表面層
204 下引き層
205 電荷発生層
206 電荷輸送層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0251】
【特許文献1】特開平06−318022号公報
【特許文献2】特開昭60−125481号公報
【特許文献3】特開平08−160825号公報
【特許文献4】特開平06−130875号公報
【特許文献5】特開平4−330482号公報
【特許文献6】特開2005−017480号公報
【特許文献7】特開2000‐241998号公報
【特許文献8】特開2004−093855号公報
【特許文献9】特開2006−243342号公報
【特許文献10】特開2006−259588号公報
【特許文献11】特開2004−117766号公報(特許第3818585号公報)
【特許文献12】特開2007−293197号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオールと、芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有する最表面層を備えた像担持体を装備すると共に、トナー像転写後に該像担持体表面に残留したトナーを除去するバイアス電圧が印加された複数のクリーニングブラシを備え、且つ、前記像担持体の下記評価方法により算出される弾性仕事率が45%以上であることを特徴とする画像形成装置。
[評価方法]
ダイヤモンド圧子を用いた負荷−除荷試験により、温度22℃、相対湿度55%の環境条件下、圧子を押し込んで全仕事量(負荷過程)と弾性変形の仕事量(除荷過程)を測定し、下記式により弾性仕事率を求める。
弾性仕事率(%)=弾性変形の仕事量×100/(全仕事量)
【化1】

(式中、Yは1つの水酸基が結合した炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を表し、Xは電荷輸送性分子構造を含んでなる2〜4価の炭化水素結合を主とする有機残基を表す。nは2〜4の整数を表す。該水酸基とXとは、炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキレン基、もしくはオキシアルキレン基を介して結合している。)
【請求項2】
前記弾性仕事率が、45%以上60%以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記バイアス電圧が印加された複数のクリーニングブラシが、トナー像転写後に前記像担持体表面に残留して除去されるトナーの帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシ及び、前記トナーの帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記評価方法におけるダイヤモンド圧子の最大荷重における変位から求められる前記像担持体のユニバーサル硬度が、200N/mm以上230N/mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記芳香族系イソシアネートが分子中に芳香環を有し、該芳香族系イソシアネートの有するイソシアネート基が、アルキレン基を介して芳香環に結合していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記最表面層が、前記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオール及び、分子中に電荷輸送性分子構造を含まないポリオールの少なくとも1種類を含む両ポリオールと、芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置本体に対して、着脱自在に装着し得る画像形成装置用プロセスカートリッジであって、
前記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリオールと、芳香族系イソシアネートを少なくとも含むイソシアネート化合物との架橋結合により形成された架橋性樹脂を含有する最表面層を備えた像担持体と、帯電手段、画像露光手段、現像手段、クリーニング手段、から選ばれた少なくとも1つの手段とをカートリッジ容器に組み込んで一体に構成したことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−175015(P2011−175015A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37587(P2010−37587)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】