説明

画像形成装置用の駆動装置、これを用いた画像形成装置

【課題】DCモータを駆動源とし、被記録媒体に画像を形成するために間欠駆動が必要である搬送ローラを駆動する画像形成装置における問題を解決する。
【解決手段】レジストローラ7、DCモータ12、駆動部材13、遊び14を作る駆動部材15、16を備える。DCモータ12が駆動し、狙いの回転数に達するまでの加速区間に必要な遊び14を設け、DCモータ12が狙いの回転数に達してからレジストローラ7を駆動する。DCモータの加速に必要な遊びはδd[rad]=(Z1/Z2)×Nr×2π(Z1:DCモータギヤ歯数、Z2:遊びを設けるギヤの歯数、Nr:モータが狙いの回転数に達するまでに回転する回数、ただし(Z1/Z2)×Nr<1)とする。遊び幅が狙いの値の時、搬送ローラの駆動開始ポイントが遅れ、駆動源にDCモータを用いてもクラッチを使用せずに搬送ローラを間欠駆動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、FAXなどの画像形成装置、詳しくは、複数の感光体を備えたカラー複写機、カラープリンタ等の画像形成装置用の駆動装置、これを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置では、被記録媒体を搬送するためにレジストローラなどのように、被記録媒体に画像を形成するために、タイミングを計り間欠駆動が必要である搬送ローラは、駆動源であるDCモータと間欠駆動に必要なクラッチの構成や、駆動源をステッピングモータにするといった構成が採用されてきた。
【0003】
このような画像形成装置用の駆動装置においては、例えば特許文献1では、給紙ギヤ、ボス部、基部、及び管状部は樹脂で一体成形されており、基部にスプリングを嵌挿し、さらに管状部を通して伝達スリーブを嵌挿し、給紙ローラに内蔵されたスプリングクラッチで構成されており、伝達スリーブと保持スリーブとの間に回転方向のガタが設けられている。そして、スプリングクラッチを内蔵することで、ゴムローラのゴム所要量を削減でき、樹脂で成形されたボス部及び管状部をフレームに直接取り付けることで、軸受や静電気対策を省略できるので、自動給紙装置のコストを下げることができ、またスプリングクラッチを塵埃から保護することもできるようになっている。ただし、スプリングクラッチも用いているため、部品点数の増加や、コストアップにつながる。
【0004】
特許文献2では、電磁クラッチ等の駆動遮断機構を使用せず、各々のローラを独立したDCモータを駆動源として給紙駆動部の転写紙搬送性能の安定化を図り、信頼性の高い給紙装置及びこれを備えた画像形成装置を提供するため、駆動源であるDCモータと、給紙装置において、搬送手段は転写紙先端が搬送経路に設けたレジストローラ対に到達して一時停止した際にたるみを形成するブレーキ機構を備えている。ただし、ブレーキ機構を備えることにより部品点数が多くなり、またコストも増えてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、駆動源がDCモータである場合には、クラッチの耐久性の問題や部品点数が増え、駆動源がステッピングモータである場合には消費電力が増加するといった問題が生じる。
【0006】
そこで本発明では、DCモータを駆動源とし、被記録媒体に画像を形成するためにタイミングを計り、間欠駆動が必要である搬送ローラを駆動する画像形成装置における上述の課題を解決するために、DCモータから搬送ローラを駆動するまでの駆動列について改良することでDCモータの加速を可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置用の駆動装置のうち請求項1に係るものは、DCモータを駆動源とし、被記録媒体に画像を形成するために、タイミングを計り間欠駆動が必要である搬送ローラを駆動する画像形成装置用の駆動装置において、前記DCモータから前記搬送ローラを駆動するまでの駆動列内に、前記DCモータが加速するために必要な所定量の遊びを設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係るものは、請求項1の画像形成装置用の駆動装置において、前記遊びは、前記駆動源であるDCモータから前記搬送ローラに駆動を伝達するまで駆動列内で、最も回転数が小さい駆動伝達部材に設けることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係るものは、請求項1および2の画像形成装置用の駆動装置において、前記遊びを設けるための駆動部材に付勢部材を設けることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係るものは、請求項1および2の画像形成装置用の駆動装置において、前記DCモータを前記被記録媒体の搬送終了後に逆回転させることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係るものは、請求項1から4のいずれかの画像形成装置用の駆動装置において、前記あそびを設けた駆動部材に緩衝材を設けることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る画像形成装置は、請求項1から5のいずれかに記載の駆動装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動源にDCモータを用いてもクラッチを使用することなく、間欠の駆動力を搬送ローラに伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施対象となり得るプリンタを示す概略構成図
【図2】レジストローラを駆動する概略図
【図3】画像形成装置内側より見たレジストローラの駆動構成を示す図
【図4】DCモータ起動時に遊びを常に設けるための付勢部材を備えた斜視図と断面図
【図5】DCモータ14の起動から停止、逆転までの上流側の駆動部材と下流側の駆動部材の位置関係を示す図
【図6】上流側の駆動部材と下流側の駆動部材の当接面に緩衝材を設けている例を示す図
【図7】DCモータが加速するために必要な所定量の遊びについて説明する図
【図8】DCモータが加速するために必要な所定量の遊びについて説明する図
【図9】DCモータが加速するために必要な所定量の遊びについて説明する図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、DCモータから搬送ローラを駆動するまでの駆動列内にDCモータが加速するために必要な所定量の遊び(ガタ)を設けることで、DCモータを駆動源とした被記録媒体に画像を形成するために、タイミングを計り間欠駆動が必要である搬送ローラを駆動する画像形成装置において、駆動源にDCモータを用いてもクラッチを使用せずに、間欠駆動力を搬送ローラに伝達するものである。
【実施例】
【0016】
以下本発明の実施例を図面を参照して説明する。なお本発明は図示の実施例には限定されず、画像形成を行う種々の装置に適用可能である。
【0017】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本発明の実施対象となり得るプリンタを示す概略構成図である。同図において、プリンタ本体にはプロセスカートリッジ1を備えている。プロセスカートリッジ1は、後述する感光体等を含む現像装置2を有している。このプロセスカートリッジ1や、現像装置2は、画像形成物質を用い、画像を形成するが、寿命到達時に交換される。
【0018】
図中3は光走査装置で、この光走査装置3は、光書込回路の制御信号に基づいて発したレーザービームにより、プロセスカートリッジ1におけるそれぞれの感光体を光走査する。この光走査により、感光体には静電潜像が形成される。なお、光走査装置3は、レーザー発振器から発したレーザービームを、モータによって回転駆動したポリゴンミラーで偏向させながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。
【0019】
また図の下方には、紙収容カセット4、これらに組み込まれた給紙ローラ5などを有する紙収容手段が配設されている。紙収容カセット4は、被記録媒体Pを複数枚重ねて収納しており、それぞれの一番上の被記録媒体Pには給紙ローラ5を当接させている。給紙ローラ5が駆動手段によって図中反時計回りに回転されると、一番上の被記録媒体Pが給紙路6に向けて送り出される。
【0020】
この給紙路6の付近には、レジストローラ対7が配設されている。レジストローラ対7は、被記録媒体Pを挟み込むべく両ローラを回転させるが、挟み込んですぐに回転を一旦停止させる。そして、被記録媒体Pを適切なタイミングで現像装置2に向けて送り出され、感光体8上に形成されたトナー像は、被記録媒体P上に転写される。このトナー像は、被記録媒体Pとともに定着装置9に送られて、被記録媒体Pの表面に定着せしめられる。定着装置9内で画像の定着処理が施された被記録媒体Pは、定着装置9を出た後、排紙ローラ対10を経由して、プリンタ筺体の上面に設けられたスタック部11上にスタックされる。
【0021】
図2にレジストローラ7を駆動する概略図を示す。駆動源であるDCモータ12と駆動を伝達する駆動部材13、および、遊び14を作るための上流側の駆動部材15と下流側の駆動部材16を備えている。DCモータ12が駆動し始めるとDCモータと同軸上のギヤ17を介し、駆動部材13と上流側の駆動部材15を駆動する。この装置では、駆動伝達時には、レジストローラ7は狙いの回転数に達していなくてはならないが、DCモータ12は狙いの回転数に達するまでの加速区間を必要とする。図2は、DCモータ12の加速区間に必要な遊び14を設けることにより、DCモータ12が狙いの回転数に達してから、レジストローラ7を駆動する。
【0022】
図3に画像形成装置内側より見たレジストローラ7の駆動構成を示す。レジストローラ7を駆動する駆動部材軸上の回転数は、DCモータの回転数と駆動列を構成する歯数(ここでは、DCモータ軸上ギヤ17(歯数Z17)、駆動部材13(歯数Z13)、上流側の駆動部材15(歯数Z15))で決まる。図3は、最も回転数の小さいレジストローラ軸上で遊び14を設けている。図4にDCモータ14起動時に、遊び14を常に設けるための付勢部材18(弾性体、好ましくはバネまたはゴム)を備えた斜視図と断面図を示す。
【0023】
図5にDCモータ14の起動から停止、逆転までの上流側の駆動部材と下流側の駆動部材の位置関係を示す。DCモータ14の起動前には遊び14があり、DCモータの加速区間で前記遊びが吸収され、当接時には下流側の駆動部材は狙いの回転数に達しており、連結されたレジストローラに駆動を伝達する。レジストローラが被記録媒体の搬送終了後に、DCモータが一時停止し、前記遊び14だけ逆回転をする。(逆回転時のモータトルクは、レジストローラなどの駆動に必要なトルク以下が望ましい。)これによりDCモータ起動時には常に遊び14が確保させていることになる。
【0024】
図6は、上流側の駆動部材15と下流側の駆動部材16の当接面に緩衝材19を設けている。
【0025】
図7から図9を用いてDCモータが加速するために必要な所定量の遊びについて説明する。
DCモータが加速するための必要な所定量の遊びδd[rad]は次式で表せる。すなわち、
(数1)
δd[rad]=(Z1/Z2)×Nr×2π
ここで、Z1はDCモータギヤ歯数、Z2は遊びを設けるギヤ(上流側)の歯数、Nrはモータが狙いの回転数に達するまでに回転する回数である。ただし条件として、(Z1/Z2)×Nr<1とする。これをグラフ化したものが図8である。
【0026】
本願発明者等が実験を行ったところ、数式1で求められた遊び幅を設けることにより、図9に示されるように、狙いの回転数に達した時に搬送ローラを駆動させ得るが遊び幅の値によって異なることが分かる。図中上側の曲線が、狙いの遊び幅の時のDCモータの立ち上がり曲線、下側の曲線が、遊び幅が不足したときのDCモータの立ち上がり曲線であり、遊び幅が狙いの値の時のほうが搬送ローラの駆動開始ポイントが遅れ、そのために駆動源にDCモータを用いてもクラッチを使用することなく、搬送ローラを間欠駆動する形態を実現できることがわかる。
【0027】
なお前述の遊びは、駆動源であるDCモータから搬送ローラに駆動を伝達するまでの駆動列内で最も回転数が小さい駆動伝達部材に遊びを設けている。これにより、駆動の連結時に衝撃を小さくすることができ、確実に被記録媒体を搬送することができる。また遊びを設けるための駆動部材に付勢部材を設ければ、DCモータ起動時には常に上述の遊びを設けることができる。またDCモータが被記録媒体の搬送終了後に逆回転をするように構成することにより、DCモータ起動時には常に遊びを設けることができる。さらに、遊びを設けた駆動部材に緩衝材を設けることにより、駆動の連結時に衝撃を小さくすることができ、確実に被記録媒体を搬送できる。
【0028】
なお本発明に係る画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機又はインクジェット記録装置の何れか一つ、またはそれらの少なくとも二つの機能を組み合わせた複合機にも採用できる。
【符号の説明】
【0029】
1:プロセスカートリッジ
2:現像装置
3:光走査装置
4:紙収容カセット
5:給紙ローラ
P:被記録媒体
6:給紙路
7:レジストローラ対
8:感光体
9:定着装置
10:排紙ローラ対
11:スタック部
12:DCモータ
13:駆動部材
14:遊び
15、16:駆動部材
17:ギヤ
18:付勢部材
19:緩衝材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開平05−097259号公報
【特許文献2】特開2008−044683号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCモータを駆動源とし、被記録媒体に画像を形成するために、タイミングを計り間欠駆動が必要である搬送ローラを駆動する画像形成装置用の駆動装置において、
前記DCモータから前記搬送ローラを駆動するまでの駆動列内に、前記DCモータが加速するために必要な所定量の遊びを設けたことを特徴とする画像形成装置用の駆動装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置用の駆動装置において、
前記遊びは、前記駆動源であるDCモータから前記搬送ローラに駆動を伝達するまで駆動列内で、最も回転数が小さい駆動伝達部材に設ける
ことを特徴とする画像形成装置用の駆動装置。
【請求項3】
請求項1および2の画像形成装置用の駆動装置において、
前記遊びを設けるための駆動部材に付勢部材を設ける
ことを特徴とする画像形成装置用の駆動装置。
【請求項4】
請求項1および2の画像形成装置用の駆動装置において、
前記DCモータを前記被記録媒体の搬送終了後に逆回転させる
ことを特徴とする画像形成装置用の駆動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの画像形成装置用の駆動装置において、
前記あそびを設けた駆動部材に緩衝材を設ける
ことを特徴とする画像形成装置用の駆動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の駆動装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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