説明

画像形成装置用クリーニングブレード

【課題】摩擦係数を下げて、スリップ距離を縮めることにより優れたクリーニング性能を発揮でき、かつ安価に簡便に製造することができる。
【解決手段】水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、カルボキシル基を導入したアクリロニトリルブタジエンゴム(XNBR)、カルボキシル基を導入し水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(HXNBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)またはエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)のいずれか1種からなるゴム成分に、樹脂粉末として熱可塑性フルオロ樹脂粉末のみが配合された熱可塑性エラストマーから成形され、前記ゴム成分100質量部に対して熱可塑性フルオロ樹脂粉末が1質量部以上80質量部以下の割合で配合され、かつ、前記熱可塑性フルオロ樹脂粉末の平均粒子径は0.1μm以上20μm以下であることを特徴とする画像形成装置用クリーニングブレード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置用クリーニングブレードに関し、詳しくは、ゴム成分に樹脂粉末を配合した熱可塑性エラストマーから成形されているものである。
【背景技術】
【0002】
静電式写真複写機では、一般に、感光体の表面に放電により静電荷を与え、その上に画像を露光して静電潜像を形成し、次に逆極性を帯びたトナーを静電潜像に付着させて現像し、そのトナー像を記録紙に転写し、最後にトナー像が転写された記録紙を加熱加圧し、トナーを記録紙上に定着させることによって複写を行っている。従って、複数枚の記録紙に順次複写を行うためには、上記工程において感光体より記録紙にトナー像を転写した後、感光体の表面に残留するトナーを除去する必要がある。その除去方法の一つとして、クリーニングブレードを感光体表面に圧接し、感光体を摺接してクリーニングするブレード・クリーニング方式が知られている。このブレード・クリーニング方式のためのクリーニングブレードとしては弾性部材が好ましく用いられている。
【0003】
当該方式で用いられる画像形成装置用クリーニングブレードとしては、従来よりポリウレタンゴム製のクリーニングブレードが用いられ、これにより感光体上の粉砕トナーや異形化処理された重合トナーのクリーニングを行っていた。ウレタンゴム製のクリーニングブレードは耐熱性が低く、感光体との摩擦によりクリーニングに重要なクリーニングブレードのエッジ部分が磨耗して丸くなりトナーが除去できなくなるという問題を有していた。しかしながら、従来の粉砕トナーや異形化処理された重合トナーでは、クリーニングブレードと感光体との接地圧(以下、線圧という。)が低くてもクリーニングが可能であったため、ポリウレタンゴム製クリーニングブレードに勝る耐摩耗性を有する材料の開発は進んでいなかった。
【0004】
しかし、近年、省エネルギー、低コスト、高画質化のトレンドにより、小粒径、球形重合トナーが開発された結果、クリーニングブレードの線圧を上げないと、残留するトナーの除去が困難となってクリーニング不良が生じやすくなっている。
一方、従来のポリウレタンゴム製のクリーニングブレードで線圧を上げようとすると摩擦力が大きくなり、エッジ部分の磨耗が激しくなるため、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレードでは線圧を上げることが難しいという問題がある。
さらに、ポリウレタンゴム製クリーニングブレードでは、高温高湿時の摺動振動に基づく鳴き現象が見られるという問題点もあった。
このようなエッジ部分の摩耗や鳴きに対する対策として摩擦係数低下の要請が強くなっている。
【0005】
低摩擦係数を実現するため、複層構造にしたり、表面のコーティングもしくは改質を行ったりされてきた。
例えば、特開2003−103686号公報(特許文献1)には、ポリウレタンゴム製クリーニングブレードのエッジ部にフレキシブル・ダイアモンドライク・カーボン(FDLC)からなる層をプラズマ化学気相蒸着法により形成することで、基材となる弾性体の基本特性を損なうことなく、低摩擦係数を実現し、かつ耐摩耗性に優れたクリーニングブレードが得られることが記載されている。FDLC層により低摩擦係数が実現され、摺動振動に基づく鳴き現象は改善される。
しかしながら、エッジ部にのみFDLCを付着しているだけであり、さらにFDLCのポリウレタンゴムに対する接着が不十分でエッジの変形に追従できず、FDLCが剥がれてしまう可能性もあるため、耐久性や耐摩耗性は実用的に十分とはいえないと認められる。さらに、基材である弾性体にFDLC層を形成するためプラズマ化学気相蒸着を行う必要があり、製造工程管理が複雑となり、製造コストも上昇するという問題がある。
複層構造にした場合も同様に製造コストが上昇し、現実的に量産が困難であるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−103686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、摩擦係数を下げて、エッジ部分のスティック−スリップ挙動におけるスリップ距離を縮めることにより優れたクリーニング性能を発揮でき、かつ安価に簡便に製造することができる画像形成装置用クリーニングブレードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、カルボキシル基を導入したアクリロニトリルブタジエンゴム(XNBR)、カルボキシル基を導入し水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(HXNBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)またはエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)のいずれか1種からなるゴム成分に、樹脂粉末として熱可塑性フルオロ樹脂粉末のみが配合された熱可塑性エラストマーから成形され、
前記ゴム成分100質量部に対して熱可塑性フルオロ樹脂粉末が1質量部以上80質量部以下の割合で配合され、かつ、前記熱可塑性フルオロ樹脂粉末の平均粒子径は0.1μm以上20μm以下であることを特徴とする画像形成装置用クリーニングブレードを提供している。
【0009】
回転する感光体に対してクリーニングブレードのエッジを接触させた時に起こる画像形成装置用クリーニングブレードのエッジ部分の挙動を示すと図1のようになる。まず(A)→(B)はスティック状態である。このときブレードの反発力F≦静摩擦係数Fsとなっており、クリーニングブレード片10は感光体12と相対的に移動する。感光体位置P0−P1間はスティック距離L1である。ブレードの反発力Fがしだいに増し、ブレードの反発力F>静摩擦係数Fsとなると、クリーニングブレード片10は感光体12表層を滑りながら戻ることになる。これが(B)→(C)に示したスリップ状態である。スリップ中は荷重Wが小さくなり、動摩擦係数Fkが小さくなるため、トナーのすり抜けが発生しやすい。感光体位置P0−P2間はスリップ距離L2である。感光体位置P0に戻るにつれて荷重Wが回復し、ブレードの反発力F=動摩擦係数Fkとなる。すると、再び静摩擦係数Fsが発生し、スティック状態に移行する。これが(C)→(A)に示した再スティック状態である。
【0010】
本発明者らは、このようなクリーニングブレードのエッジ部分の挙動の解析に基づき、摩擦係数を下げてスリップ状態の時間を極力短くするために鋭意検討を行った結果、特定のゴム成分に樹脂粉末として特定粒子径の熱可塑性フルオロ樹脂粉末のみが配合された熱可塑性エラストマーからなるクリーニングブレードが前記目的を達成し、実際のクリーニング試験でも優れたクリーニング性能を発揮できることを知見した。
【0011】
本発明で用いるゴム成分は、水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、カルボキシル基を導入したアクリロニトリルブタジエンゴム(XNBR)、カルボキシル基を導入し水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(HXNBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)またはエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)のいずれか1種である。
【0012】
本発明の画像形成装置用クリーニングブレードを構成する熱可塑性エラストマーにおいては、前記ゴム成分に樹脂粉末として熱可塑性フルオロ樹脂粉末のみが配合されている。
熱可塑性フルオロ樹脂粉末の配合量はゴム成分100質量部に対して1質量部以上80質量部以下であり、好ましくは5質量部以上70質量部以下である。熱可塑性フルオロ樹脂粉末の配合量が1質量部より少ないと摩擦係数を下げる効果が得られにくく、一方で80質量部より多いと熱可塑性フルオロ樹脂粉末がゴム中の欠陥となり耐摩耗性が悪化するおそれがある。
【0013】
熱可塑性フルオロ樹脂粉末の平均粒子径は0.1μm以上20μm以下である。
これは、熱可塑性フルオロ樹脂粉末の平均粒子径が0.1μmより小さいと分散不良が生じ摩擦係数を下げる効果が得られにくく、一方で20μmより大きいと熱可塑性フルオロ樹脂粉末がゴム中の欠陥となり耐摩耗性が悪化するおそれがある。
前記平均粒子径は、1.0μm以上15μm以下であることが好ましく、1.0μm以上10μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上5μm以下であることが特に好ましい。
【0014】
本発明で用いる熱可塑性フルオロ樹脂とは、主鎖に炭素鎖を持ち側鎖にフッ素の結合をもつポリマーであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、テトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂粉末、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)樹脂粉末、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(EPE)樹脂粉末、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン(FEP)樹脂粉末、テトラフルオロエチレン・エチレン(ETFE)樹脂粉末、トリフルオロクロロエチレン(CTFE)樹脂粉末、トリフルオロクロロエチレン・エチレン(ECTFE)樹脂粉末、ポリビニルフルオライド(PVF)樹脂粉末またはポリビニリデンフルオライド(PVDF)樹脂粉末から選択された1種または複数種であることが好ましい。
【0015】
上記いずれの樹脂も触媒乳化重合、懸濁重合、触媒溶液重合、気相重合および電離性放射線照射重合などの各種重合方式で製造されたものを使用できる。また、市販品を適宜利用でき、例えばPFAである三井・デュポンフロロケミカル社製ゾニールシリーズ、FEPである三井・デュポンフロロケミカル社製テフロン(登録商標)FEP100、ETFEである旭硝子社製アフロンCOP、CTFEであるダイキン工業社製ネオフロンCTFE、PVDFである呉羽化学社製KFポリマー、PVFであるデュポン社製Tedlar等が挙げられる。
【0016】
本発明の画像形成装置用クリーニングブレードを構成する熱可塑性エラストマーにおいては、前記ゴム成分および熱可塑性フルオロ樹脂粉末以外に本発明の目的に反しないかぎり公知の添加剤が配合されていてもよい。前記添加剤としては、補強剤、架橋剤、共架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、ゴム用軟化剤などが挙げられる。
なかでも、前記熱可塑性エラストマーには、前記ゴム成分と熱可塑性フルオロ樹脂粉末以外に、カーボンブラックからなる補強剤を前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜100質量部配合され、かつ架橋剤と加硫促進剤と加硫促進助剤と老化防止剤とを含む充填剤を含有し、該充填剤の合計質量が前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜90質量部配合されていることが好ましい。
【0017】
以上のような熱可塑性エラストマーからなる本発明の画像形成装置用クリーニングブレードは低摩擦係数特性を有することが特徴である。
その指標とする静摩擦係数が2.0以下であり、動摩擦係数が0.7以下である。
静摩擦係数が2.0より大きく、動摩擦係数が0.7より大きい場合、図1に示したスリップ状態が長くなりトナーのすり抜け量が多くなる。静摩擦係数および動摩擦係数は低いほど好ましいが、通常は静摩擦係数が1.0以上、動摩擦係数が0.1以上である。
なお、摩擦係数は実施例に記載の方法で測定する。
【0018】
さらに、本発明の画像形成装置用クリーニングブレードは、優れたクリーニング性能を発揮するために、200mm/秒で回転する感光体に対してクリーニングブレードのエッジを接触させた時に起こるスティック−スリップ挙動におけるスリップ距離が1〜100μmとしている。
前記スリップ距離は1〜80μmであることが好ましい。前記スリップ距離が1μmより小さいとクリーニングブレードが固いことを示し、感光体の凹凸に追従できず期待するクリーニング性能が得られない。一方、前記スリップ距離が100μmより大きいとスティック−スリップ挙動が大きくなりクリーニング不良が発生するおそれがある。
なお、スリップ距離は実施例に記載の方法で測定する。
【0019】
本発明のクリーニングブレードは、厚さ1mm〜3mm、幅10mm〜40mm、長さ200mm〜500mmとしていることが好ましい。
該クリーニングブレードのエッジの感光体への接触角度は10°〜35°としていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の画像形成装置用クリーニングブレードは、HNBR、XNBR、HXNBR、SBRまたはEPDMのいずれか1種のみからなる特定のゴム成分に、粒子径が制御された熱可塑性フルオロ樹脂粉末を特定の割合で含むことにより、静摩擦係数および動摩擦係数ともに低く抑えることができ、かつエッジ部分のスティック−スリップ挙動におけるスリップ距離も短く縮めることができ、その結果優れたクリーニング性能を発揮することができる。
本発明の画像形成装置用クリーニングブレードは、ゴム成分に熱可塑性フルオロ樹脂粉末を混練して得られる熱可塑性エラストマーを常法で成形すれば得られるので、既存の設備を利用して安価にかつ簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の画像形成装置用クリーニングブレードの実施形態について詳述する。
図2に本発明のクリーニングブレード1を示す。クリーニングブレード1においては、通常、クリーニングブレード片10が接着剤により支持部材21に接合されている。支持部材21は剛体の金属、弾性を有する金属、プラスチックまたはセラミック等で形成されたものが用いられるが、金属製が好ましく、クロムフリーSECC製が特に好ましい。
クリーニングブレード片10と支持部材21とを接合するために用いる接着剤としては、ポリアミド系もしくはポリウレタン系ホットメルト接着剤や、エポキシ系もしくはフェノール系接着剤等が挙げられる。これらのなかではホットメルト接着剤を用いることが好ましい。
【0022】
図3に、本発明のクリーニングブレード1が装着された画像形成装置を示す。図3中において、11は帯電ローラ、12は感光体、13は中間転写ベルト、14は定着ローラ、15a〜15dはトナー、16は鏡、17はレーザー、18は被転写体、19aは一次転写ローラ、19bは二次転写ローラ、22はトナー回収ボックスである。
【0023】
図3に示す画像形成装置において、以下の工程で画像が形成される。
まず、感光体12が図中の矢印の方向に回転し、帯電ローラ11によって感光体12が帯電された後に、鏡16を介してレーザー17が感光体12の非画像部を露光して除電し、画線部に相当する部分が帯電した状態になる。次に、トナー15aが感光体12上に供給されて、帯電画線部にトナー15aが付着し1色目の画像が形成される。このトナー画像は一次転写ローラ19aを介して中間転写ベルト13上へ転写される。同様にして、感光体12上に形成されたトナー15b〜15dの各色の画像が中間転写ベルト13上に転写され、転写ベルト13上に4色のトナー15(15a〜15d)からなるフルカラー画像が一旦形成される。このフルカラー画像は二次転写ローラ19bを介して被転写体(通常は紙)18上へ転写され、所定の温度に加熱されている定着ローラ14を通過することで被転写体18の表面へ定着される。
前記工程において、複数枚の記録紙に順次複写を行うために、中間転写ベルト13上へ転写されず感光体12上に残留したトナーは、感光体12表面に圧接されたクリーニングブレード1のクリーニングブレード片10で感光体12を摺擦することにより除去され、トナー回収ボックス22で回収される。
【0024】
本発明のクリーニングブレードは、ゴム成分に樹脂粉末として熱可塑性フルオロ樹脂粉末のみが配合された熱可塑性エラストマーから成形される。
ゴム成分は、HNBR、XNBR、HXNBR、SBRまたはEPDMのいずれか1種からなる。なかでも、HNBRまたはHXNBRを用いることが好ましい。
【0025】
前記HNBRは、NBRのポリマー主鎖にあるブタジエンに含まれる二重結合を化学的に水素化することによって得られるもので、水素化後の残存二重結合が10%以下であるHNBRを用いることが好ましい。
また、HNBRの結合アクリロニトリル量は21%〜46%であることが好ましく、21%〜44%であることがより好ましい。結合アクリロニトリル量を21%〜46%としているのは、結合アクリロニトリル量が21%未満であると機械的物性が低下するためであり、結合アクリロニトリル量が46%を超えると熱可塑性エラストマーのガラス転移温度Tgが高くなり、低温低湿時のクリーニング性能が悪くなりやすいためである。
さらに、HNBRのムーニー粘度ML1+4(100℃)は20〜160であることが好ましく、40〜150であることがより好ましい。HNBRのムーニー粘度ML1+4(100℃)を20〜160としているのは、HNBRのムーニー粘度ML1+4(100℃)が20未満であると分子量が低下し耐摩耗性が悪くなりやすいためであり、HNBRのムーニー粘度ML1+4(100℃)が160を超えると過剰な分子量分布から混練や成形が困難となるためである。
【0026】
前記XNBRは、NBRの第三成分としてアクリル酸またはメタクリル酸を三元共重合し、側鎖または末端にカルボキシル基を導入したものである。下記化学式1にNBRの化学構造式を示し、下記化学式2にNBRの第三成分としてアクリル酸(R=H)もしくはメタクリル酸(R=CH)を三元共重合してカルボキシル基を導入したXNBRの化学構造を示す。
前記HXNBRは、XNBRのポリマー主鎖にあるブタジエンに含まれる二重結合を化学的に水素化することによって得られる。
【0027】
【化1】

(式中、n1およびm1は1以上の整数を表す。)
【0028】
【化2】

(式中、n2、m2及びl2は1以上の整数を表し、RはHまたはメチル基(CH)を表す。)
【0029】
前記カルボキシル基を導入したXNBRまたはHXNBRでは、カルボキシル基の含有率は0.5〜30質量%としていることが好ましい。これは、カルボキシル基の含有率が0.5質量%未満であると橋架けの反応性が低く、30質量%を超えるとカルボキシル基が反応し過ぎてゴム焼けし機械的物性が低下するおそれがあることに因る。より好ましくは10〜20質量%である。
前記XNBRまたはHXNBRとしては、既に共重合された市販品を使用することができる。例えばBayer社製のKrynacシリーズやTherbanシリーズを用いることができる。
【0030】
SBRは少なくともスチレン単量体とブタジエン単量体の共重合体であればよい。スチレン単量体とブタジエン単量体と共重合と可能なその他の単量体を含んでいても良い。スチレン量等の物性に関しては任意の種類のSBRを用いることができるが、例えば結合スチレン量が10〜30%のSBRが好ましい。また、その合成法は乳化重合であっても溶液重合であっても良い。
【0031】
EPDMにはゴム成分のみからなる非油展タイプのEPDMとゴム成分とともに親展油を含む油展タイプのEPDMとが存在するが、本発明ではいずれのタイプのものも使用可能である。EPDMにおけるジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエンまたはシクロオクタジエンなどが挙げられる。
【0032】
本発明で用いる熱可塑性フルオロ樹脂粉末としてはPTFE樹脂粉末が最も好ましい。
熱可塑性フルオロ樹脂粉末の平均粒子径は1.0μm以上5μm以下であることが特に好ましい。
熱可塑性フルオロ樹脂粉末の配合量は、ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部がより好ましく、5〜30質量部がさらに好ましい。
【0033】
本発明の画像形成装置用クリーニングブレードを構成する熱可塑性エラストマーにおいては、前記ゴム成分および熱可塑性フルオロ樹脂粉末以外に本発明の目的に反しないかぎり補強剤、架橋剤、共架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、ゴム用軟化剤などの公知の添加剤が配合されていてもよい。なかでも、補強剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤を配合することが好ましい。
【0034】
補強剤としてはゴムとの相互作用を導くフィラーとしてカーボンブラックを用いることが好ましい。
前記カーボンブラックとしては、SAFカーボン(平均粒径18〜22nm)、SAF−HSカーボン(平均粒径20nm前後)、ISAFカーボン(平均粒径19〜29nm)、N−339カーボン(平均粒径24nm前後)、ISAF−LSカーボン(平均粒径21〜24nm)、I−ISAF−HSカーボン(平均粒径21〜31nm)、HAFカーボン(平均粒径26〜30nm)、HAF−HSカーボン(平均粒径22〜30nm)、N−351カーボン(平均粒径29nm前後)、HAF−LSカーボン(平均粒径25〜29nm)、LI−HAFカーボン(平均粒径29nm前後)、MAFカーボン(平均粒径30〜35nm)、FEFカーボン(平均粒径40〜52nm)、SRFカーボン(平均粒径58〜94nm)、SRF−LMカーボン、GPFカーボン(平均粒径49〜84nm)等が例示される。
【0035】
さらに、補強剤としてホワイトカーボン(例えば乾式シリカもしくは湿式シリカなどのシリカ系充填剤、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩等)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マグネシウム・シリケート、クレー(ケイ酸アルミニウム)、シラン改質クレーもしくはタルクなどの無機補強剤や、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂、木粉等の有機補強剤を配合してもよい。
【0036】
前記補強剤の配合量は前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部〜100質量部であることが好ましく、1質量部〜70質量部であることがより好ましく、1質量部〜50質量部であることがさらに好ましい。
【0037】
前記架橋剤としては、硫黄、有機過酸化物、耐熱性架橋剤または樹脂架橋剤などが挙げられる。なかでも、硫黄または有機過酸化物を用いることが好ましく、硫黄を用いることがより好ましい。
硫黄としては、通常回収硫黄を粉砕し微粉としたものが使用される。分散性などを改良した表面処理硫黄も適宜使用することができる。また、未加硫ゴムからのブルームを避けるために不溶性硫黄も使用することができる。
硫黄に有機含硫黄化合物を組み合わせて用いてもよい。有機含硫黄化合物としては、例えば、N,N’−ジチオビスモルホリン、ジフェニルジスルフィド、ペンタブロモジスルフィド、ペンタクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩などが挙げられる。なかでも、ジフェニルジスルフィドが好ましい。
【0038】
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ−3−ヘキセン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−tert−ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)−3−ヘキセン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が挙げられる。なかでもジクミルパーオキシドが好ましい。
【0039】
耐熱性架橋剤としては、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6−ビス(ジベンジルチオカルバモイルジスルフィド)ヘキサン等が挙げられる。
樹脂架橋剤としては、タッキーロール201、タッキーロール250−III(以上、田岡化学工業(株)製)、ヒタノール2501(日立化成工業(株)製)などアルキルフェノール樹脂または臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。なかでも、アルキルフェノール樹脂が好ましい。
【0040】
前記架橋剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、通常はゴム成分100質量部に対して0.1質量部〜30質量部の範囲から選択される。より具体的には、硫黄の配合量はゴム成分100質量部に対し0.1質量部〜20質量部の割合で配合することが好ましく、0.1質量部〜10質量部の割合で配合することがより好ましく、0.1質量部〜5質量部の割合で配合することがさらに好ましい。有機過酸化物の配合量はゴム成分100質量部に対し0.1質量部〜20質量部の割合で配合することが好ましく、0.1質量部〜10質量部の割合で配合することがより好ましく、0.1質量部〜5質量部の割合で配合することがさらに好ましい。
【0041】
前記加硫促進剤としては、無機促進剤または有機促進剤のいずれを用いることが可能である。
無機促進剤としては、消石灰、MgO等の酸化マグネシウム、酸化チタンまたはリサージ(PbO)等が挙げられる。
有機促進剤として、チウラム類、チアゾール類、チオウレア類、ジチオカーバミン酸塩類、グアニジン類およびスルフェンアミド類等が例示される。
チウラム類としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドまたはジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
チアゾール類としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドまたはN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等が挙げられる。
チオウレア類としては、N,N’−ジエチルチオウレア、エチレンチオウレアまたはトリメチルチオウレア等が挙げられる。
ジチオカーバミン酸塩類としては、ジメチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカーバミン酸銅、ジメチルジチオカーバミン酸鉄(III)、ジエチルジチオカーバミン酸セレン、ジエチルジチオカーバミン酸テルル等が挙げられる。
グアニジン類としては、ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等が挙げられる。
スルフェンアミド類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等が挙げられる。
これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、加硫促進剤としては、ジベンゾチアジルスルフィドまたは/およびテトラメチルチウラムモノスルフィドを用いることが好ましい。
【0042】
前記加硫促進剤の配合量はゴム成分100質量部に対して0.1質量部〜15質量部であることが好ましく、0.1質量部〜10質量部であることがより好ましく、0.5質量部〜5質量部であることがさらに好ましい。
【0043】
前記加硫促進助剤として、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化銅、三酸化二鉄、酸化ニッケル、酸化カルシウム、酸化ナトリウムまたは酸化鉛等の金属酸化物が挙げられ、なかでも酸化亜鉛が好適な例として挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
加硫促進助剤としての金属酸化物の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対し0.1質量部〜30質量部が好ましく、1質量部〜15質量部がより好ましく、1質量部〜10質量部がさらに好ましい。金属酸化物の配合量が0.1質量部未満であると加硫促進助剤としての効果を十分に得られないと共に機械的物性の向上が期待できず、一方金属酸化物の配合量が30質量部を越えると金属酸化物を微分散させることが難しくなるからである。
【0044】
さらに、加硫促進助剤として金属酸化物以外の公知の加硫促進助剤を組み合わせてもよい。金属酸化物以外の加硫促進助剤としてはステアリン酸、オレイン酸もしくは綿実脂肪酸等の脂肪酸等が挙げられる。その配合量は特に限定されず種類によって適宜選択すればよいが、例えば前記ゴム成分100質量部に対し0.1質量部〜20質量部であることが好ましく、0.1質量部〜10質量部であることがより好ましい。
【0045】
前記老化防止剤とは、老化と呼ばれる酸化劣化、熱劣化、オゾン劣化、疲労劣化などの一連の劣化を防止する配合剤のことをいい、アミン類やフェノール類からなる一次老化防止剤と、硫黄化合物やフォスファイト類からなる二次老化防止剤とに分類される。一次老化防止剤は各種ポリマーラジカルに水素を供与して自動酸化の連鎖反応を停止させる機能を有し、二次老化防止剤はヒドロキシペルオキシドを安定なアルコールに変えることにより安定化作用を示すものである。
【0046】
近年の画像形成装置用クリーニングブレードはあらゆる環境にさらされるため、クリーニングブレードには老化に対する防止対策が必要となる。まず、感光体とクリーニングブレードとの摩擦によりポリマーが破壊されポリマーの破壊によって発生したラジカルが自動酸化反応を促進し、酸化劣化として磨耗が促進されるため、クリーニングブレードには酸化劣化の防止対策が必要である。また、クリーニングブレードは高温環境にさらされるため、熱劣化の防止対策も重要である。さらに、帯電機構によりオゾンが発生するため、オゾン劣化の防止対策も必要である。そのため、数種の老化防止剤を組み合わせることにより、前記の各劣化を防止することができる。特に、酸化劣化によるクリーニングブレードのエッジ磨耗を防止するための老化防止剤を配合することは重要である。
【0047】
前記老化防止剤としては、アミン類、フェノール類、イミダゾール類、リン類またはチオウレア類等が挙げられる。
アミン類としては、フェニル−α−ナフチルアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンポリマー、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、p,p’−ジクミルジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0048】
フェノール類としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン等が挙げられる。
イミダゾール類としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。
【0049】
その他、トリス(ノニル化フェニル)フォスファイトなどのリン類、1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオウレア、トリブチルチオウレアなどのチオウレア類、オゾン劣化防止用ワックス等を用いてもよい。
これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、老化防止剤としては、p、p’−ジクミルジフェニルアミンまたは/および2−メルカプトベンゾイミダゾールを用いることが好ましい。
【0050】
前記老化防止剤の配合量はゴム成分100質量部に対して0.1質量部〜15質量部であることが好ましい。老化防止剤の配合量が0.1質量部未満であると老化防止の効果が発揮されず機械的物性の低下や磨耗が激しく進行してしまうおそれがあるためであり、配合量が15質量部を超えると過剰な配合により分散不良が生じ機械的物性の低下を招くおそれがある。老化防止剤の配合量は0.1質量部〜10質量部であることがより好ましく、0.5質量部〜5質量部であることがさらに好ましい。
【0051】
前記共架橋剤は、それ自身も架橋すると共にゴム分子とも反応して架橋し全体を高分子化する働きをするものを総称しており、一般的に、メタクリル酸エステル、メタクリル酸もしくはアクリル酸の金属塩に代表されるエチレン性不飽和単量体、多官能ポリマー類またはジオキシム等が挙げられる。
【0052】
前記エチレン性不飽和単量体としては、(a)アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類、(b)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類、(c)前記(a)、(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物、(d)(a)〜(c)の金属塩、(e)1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、(f)スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、(g)トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジンなどの複素環を有するビニル化合物、(h)その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなどが挙げられる。
【0053】
前記ゴム用軟化剤としては、具体的には、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、セバチン酸誘導体、安息香酸誘導体およびリン酸誘導体などが挙げられる。
より具体的には、ジブチルフタレート(DBP)、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート等のジオクチルフタレート(DOP)、ジイソオクチルフタレート(DIOP)、高級アルコール−フタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、アジピン酸ポリエステル、ジブチルジグリコール−アジペート、ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペート、イソオクチル−トール油脂肪酸エステル、トリブチルフォスフェート(TBP)、トリブトキシエチル−フォスフェート(TBEP)、トリクレジルフォスフェート(TCP)、クレジル−ジフェニクルフォスフェート(CDP)、ジフェニルアルカン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ゴム用軟化剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、必要に応じてゴム成分100質量部に対して0質量〜5質量部の範囲から選択することができる。
【0054】
その他の添加剤としては、アミド化合物、脂肪酸、脂肪酸金属塩またはワックス等が挙げられる。
アミド化合物としては、脂肪族系アミド化合物または芳香族系アミド化合物が挙げられる。脂肪族系アミド化合物の脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、パルミトレイン酸、エイコセン酸、エルシン酸、エライジン酸、トランス−11−エイコセン酸、トランス−13−ドコセン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸が挙げられる。脂肪族系アミド化合物としては、具体的にはエチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミドなどが挙げられ、特に、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドが好ましい。
脂肪酸としては、ラウリル酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミステリン酸またはオレイン酸が挙げられ、脂肪酸金属塩としては、前記脂肪酸と亜鉛、鉄、カルシウム、アルミニウム、リチウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、セリウム、チタン、ジルコニウム、鉛またはマンガンとの金属塩が挙げられる。
ワックスとしては、パラフィン系ワックス、モンタン系ワックス、アマイド系ワックス等が挙げられる。
これらの添加剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、本発明においてはゴム成分100質量部に対して0質量部〜10質量部の範囲から選択することができる。
【0055】
本発明の画像形成装置用クリーニングブレードは公知方法により製造することができ、具体的には以下のような製造方法が挙げられる。
まず本発明の画像形成装置用クリーニングブレードを構成する熱可塑性エラストマーを作製する。熱可塑性エラストマーは、一軸押出機、1.5軸押出機、二軸押出機、オープンロール、ニーダー、バンバリーミキサーまたは熱ロールなどの混練装置を用いて、前記各成分を混合することにより得ることができる。各成分の混合順序は特に限定されず、全ての成分を一度に混練装置に投入して混合してもよいし、一部の成分を混練装置に投入して予め混練しておき、得られた混合物に残りの成分を添加し混練してもよい。好ましくは、架橋剤以外の成分を予め混練しておき、得られた混合物に架橋剤を添加し混練するという方法がよい。
得られた熱可塑性エラストマーを圧縮成形あるいは射出成形などの公知の成形方法を用いて成形することにより本発明の画像形成装置用クリーニングブレードが得られる。
【0056】
より具体的には以下のような製造方法が挙げられる。
まず、架橋剤以外の成分を一軸押出機、1.5軸押出機、二軸押出機、オープンロール、ニーダー、バンバリーミキサーまたは熱ロールなどの混練装置を用いて混練する。混練温度は80℃〜120℃、混練時間は5〜6分である。混練温度が80℃未満、混練時間が5分未満ではゴム成分が十分に可塑化せず混練りが不十分となりやすいからであり、混練温度が120℃を超え、混練時間が6分を超えてはゴム成分が分解するおそれがあるからである。
【0057】
ついで、得られた混合物に架橋剤を添加し、前記のような混練装置を用いて混練する。混練温度は80℃〜90℃、混練時間は5分〜6分である。混練温度が80℃未満、混練時間が5分未満では混合物が十分に可塑化せず混練りが不十分となりやすいからであり、混練温度が90℃を超え、混練時間が6分を超えては架橋剤が分解するおそれがあるからである。
【0058】
以上のようにして得られた熱可塑性エラストマーより本発明のクリーニングブレードを成形している。該クリーニングブレードは、厚さ1mm〜3mm、幅10mm〜40mm、長さ200mm〜500mmの短冊状に成形・加工することが好ましい。また、クリーニングブレードのエッジの感光体との接触角度は10°〜35°とすることが好ましい。
成形方法としては特に限定されず、射出成形や圧縮成形など公知の成形方法を用いればよい。具体的には、例えば、熱可塑性エラストマーを金型内にセットして、155℃〜175℃にて10分〜30分間プレス加硫するという方法が挙げられる。加硫温度が155℃未満、加硫時間が10分未満では加硫不足になるからであり、加硫温度が175℃を超え、加硫時間が30分を超えてはゴム焼けが発生するおそれがあるからである。
【0059】
以上のようにして得られる本発明のクリーニングブレードにおいては、静摩擦係数が1.0以上2.0以下であり、動摩擦係数が0.3以上0.7以下である。
さらに、200mm/秒で回転する感光体に対してクリーニングブレードのエッジを接触させた時に起こるスティック−スリップ挙動におけるスリップ距離が10〜100μm、好ましくは30〜100μmとなっている。
【0060】
本発明のクリーニングブレードにおいては、画像形成装置に装着して行う通紙試験後におけるクリーニング性能値が0.5以下である。クリーニング性能値を0.5以下としているのは、0.5より大きくなるとトナーのすり抜け量が多くなり印刷画像に悪影響を及ぼす恐れがあることによる。下限は限りなく0に近い方が良いが、0.1以上である。クリーニング性能値が0とはトナーを全てクリーニングしたこととなり最も良好なクリーニング性能を示すこととなる。
【0061】
画像形成装置に装着して行う通紙試験後におけるクリーニング性能値は、下記の要領で測定し評価している。
まず通紙試験を行う。具体的には、熱可塑性エラストマーからなる2mm厚シートよりブレード状の大きさに打ち抜いたクリーニングブレードを支持体に接着して支持し、該クリーニングブレードを感光体に接触させた状態で画像形成装置に装着する。画像形成装置は感光体が回転しトナーが現像可能なプリンターである。トナーとしては体積平均粒径が5〜10μmで、球形化度0.90〜0.99の真球重合トナーを用いる。温度23℃、相対湿度55%の条件下、感光体の回転速度を200〜500mm/秒として、4%の印字濃度で150,000枚印刷する。
通紙試験後に、あらかじめ感光体への単位面積あたりのトナー量を計算しておき、すり抜け前トナー量Taとする。次に感光体を回転させ、クリーニングブレードでトナーをクリーニングさせる。その後、クリーニングブレード後方の感光体上に存在するトナー量を単位面積に換算し、すり抜け後トナー量Tbとする。すり抜け前トナー量Taに対するすり抜け後トナー量Tbの比(Tb/Ta)がクリーニング性能値である。
【0062】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
(実施例1〜9、比較例1〜7)
ゴム成分、熱可塑性フルオロ樹脂粉末であるPTFE樹脂粉末あるいはETFE樹脂粉末、充填剤を下記表に示す配合量計量し、二軸押出機、オープンロール、バンバリーミキサーまたはニーダーなどのゴム混練装置に投入して80℃〜120℃に加熱しながら5分〜6分間混練りした。
得られた混合物と下記表に示す配合量の架橋剤をオープンロール、バンバリーミキサーまたはニーダーなどのゴム混練装置に投入して、80℃〜90℃に加熱しながら5分〜6分間程度混練りした。
得られた熱可塑性エラストマーを金型内にセットし、155℃〜175℃にて10分〜30分間程度プレス加硫して、2mm厚のシートを作製した。
さらに、2mm厚のシートから幅20mm、長さ320mmのクリーニングブレード片を切り出した。当該クリーニングブレード片をクロムフリーSECC製の支持部材にホットメルト(ダイヤモンド製材質)を用いて貼り付け、シート中心部をカットしてクリーニングブレードを作製した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
上記表のゴム成分、熱可塑性フルオロ樹脂粉末、充填剤、架橋剤の配合量の単位は質量部である。
上記表に記載の成分のうち下記成分については、具体的に下記製品を用いた。
・SBR;JSR(株)製「1502(商品名)」(結合スチレン量23.5%)
・EPDM;住友化学(株)製「エスプレン670F(商品名)」
・HNBR;日本ゼオン(株)製「Zetpol2010H(商品名)」(結合アクリロニトリル量36%、ムーニー粘度145)
・XNBR;Bayer社製「Krynac X750(商品名)」
・HXNBR;Bayer社製「Therban XT VPKA8889(商品名)」
・PTFE樹脂粉末;三井・デュポンフロロケミカル(株)製「ゾニールTLP10F−1(商品名)」(1次粒子径0.2μm、平均粒子径2.0〜4.0μm)
・ETFE樹脂粉末;旭硝子社製「Fluon ETFE Z−8820X(商品名)」(平均粒子径5〜30μm)
・カーボンブラック;東海カーボン(株)製「シーストISAF(商品名)」
・酸化亜鉛;三井金属(株)製「酸化亜鉛2種(商品名)」
・ステアリン酸:日本油脂(株)製「つばき(商品名)」
・老化防止剤A;p,p’−ジクミルジフェニルアミン(DCDP)(大内新興化学工業(株)製「ノクラックCD(商品名)」)
・老化防止剤B;2−メルカプトベンゾイミダゾール(MBI)(大内新興化学工業(株)製「ノクラックMB(商品名)」)
・加硫促進剤A;ジベンゾチアジルスルフィド(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーDM(商品名)」)
・加硫促進剤B;テトラメチルチウラムモノスルフィド(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTS(商品名)」)
・硫黄;鶴見化学工業(株)製、粉末硫黄
・有機過酸化物:ジクミルパーオキシド(日本油脂(株)製「パークミルD(商品名)」)
【0066】
得られたクリーニングブレードについて下記試験を行った。
(1)摩擦係数の測定
図4に示すように、支持部材に貼り付ける前の幅20mmのクリーニングブレード片10を表面性測定機(新東科学(株)製「タイプ14」)(図示せず)に角度20°で装着し、荷重W(60gf)をかけながら感光体材料を塗布したガラス基板3(以後「OPC塗布ガラス」という)を移動速度100mm/秒でクリーニングブレード片に対してカウンター方式(図中の矢印の向き)で移動させた時のOPC塗布ガラス3に対するクリーニングブレード片10の摺動抵抗より静摩擦係数と動摩擦係数を算出した。なお、静摩擦係数と動摩擦係数の測定は5回行い、最大値と最小値を除く3回の平均値を静摩擦係数と動摩擦係数の値とした。
【0067】
(2)スリップ距離の測定
実施例および比較例で作製したクリーニングブレードを、感光体が回転しトナーが現像可能な画像形成装置(自社製)に装着した。
φ30mmの透明な円柱ガラスを準備し、表層に感光体の表層材料と同じ透明な材料を塗布した。当該円柱ガラスを感光体のかわりに上記画像形成装置に装着した。
図5に示すように円柱ガラス4の側面に高速度カメラ5を設置すると、円柱ガラスの内部でのガラスの屈折によりクリーニングブレードのエッジ挙動の様子が内側から撮影できる。高速度カメラ5はPhotron社製「FASTCAM−APX−RS−250K」を用いた。
円柱ガラス4を線速200mm/秒で回転させたときのエッジの挙動を、撮影速度100,000fps、露光時間10μsの条件で撮影し、図1に示すように映像からスリップ距離を算出した。
なお、本試験は常温23℃、相対湿度55%で行った。
【0068】
(3)クリーニング性能評価
実施例および比較例で作製したクリーニングブレードを、感光体が回転しトナーが現像可能な画像形成装置(自社製)に装着した。なお、トナーとしては体積平均粒径が5〜10μmで、球形化度0.90〜0.99の真球重合トナーを用いた。
感光体の回転速度200〜500mm/秒の条件で、4%印字画像を150,000枚印刷した。ついで、予め感光体への単位面積あたりのトナー量(すり抜け前トナー量Ta)を計算しておき、感光体を回転させクリーニングブレードにトナーをクリーニングさせた。その後、クリーニングブレード後方の感光体上に存在するトナー量を単位面積あたりに換算し、すり抜けトナー量Tbを得た。これら得られた値から下記式に基づいてクリーニング性能値を算出した。
クリーニング性能値=すり抜けトナー量Tb/すり抜け前トナー量Ta
なお、本試験は常温23℃、相対湿度55%で行った。
【0069】
(4)総合評価
静摩擦係数が2.0以下、動摩擦係数が0.7以下であれば低摩擦特性を有しているといえる。また、クリーニング性能評価においてクリーニング性能値が0.5以下であればクリーニング性能に優れている。
これらを鑑み、クリーニングブレードとして非常に優れているものは「◎」と、優れているものは「○」と、劣るものは「×」と評価した。
【0070】
熱可塑性フルオロ樹脂粉末を含まない比較例1〜5は静摩擦係数および動摩擦係数ともに大きく、スリップ距離も長くなるために、トナーのすり抜け量が多くクリーニング性能に劣っていた。
熱可塑性フルオロ樹脂粉末をわずかに含む比較例6は、静摩擦係数および動摩擦係数、スリップ距離ともに比較例1〜5よりは改善されているが、クリーニング性能は十分とはいえない。
一方、熱可塑性フルオロ樹脂粉末の配合量が多い比較例7は、熱可塑性フルオロ樹脂粉末がゴム中の欠陥となり耐摩耗性が悪化し、結果的にクリーニング性能が悪かった。
これに対し、実施例1〜9では、静摩擦係数および動摩擦係数が低く抑えられ、スリップ距離も短く、優れたクリーニング性能を有することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】回転する感光体に対してクリーニングブレードのエッジを接触させた時に起こるスティック−スリップ挙動を説明するための模式図である。
【図2】本発明の画像形成装置用クリーニングブレードの断面模式図である。
【図3】本発明の画像形成装置用クリーニングブレードを搭載したカラー用画像形成装置の模式図である。
【図4】摩擦係数の測定方法を説明するための図である。
【図5】スリップ距離の測定装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0072】
1 画像形成装置用クリーニングブレード
10 クリーニングブレード片
11 帯電ローラ
12 感光体
13 中間転写ベルト
14 定着ローラ
15 トナー
16 鏡
17 レーザー
18 被転写体
19a、19b 転写ローラ
21 支持部材
22 トナー回収ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、カルボキシル基を導入したアクリロニトリルブタジエンゴム(XNBR)、カルボキシル基を導入し水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(HXNBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)またはエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)のいずれか1種からなるゴム成分に、樹脂粉末として熱可塑性フルオロ樹脂粉末のみが配合された熱可塑性エラストマーから成形され、
前記ゴム成分100質量部に対して熱可塑性フルオロ樹脂粉末が1質量部以上80質量部以下の割合で配合され、かつ、前記熱可塑性フルオロ樹脂粉末の平均粒子径は0.1μm以上20μm以下であることを特徴とする画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項2】
200mm/秒で回転する感光体に対してクリーニングブレードのエッジを接触させた時に起こるスティック−スリップ挙動におけるスリップ距離が1〜100μmである請求項1に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項3】
静摩擦係数が1.0以上2.0以下、動摩擦係数が0.1以上0.7以下である請求項1または請求項2に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項4】
前記熱可塑性フルオロ樹脂粉末が、テトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂粉末、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)樹脂粉末、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(EPE)樹脂粉末、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン(FEP)樹脂粉末、テトラフルオロエチレン・エチレン(ETFE)樹脂粉末、トリフルオロクロロエチレン(CTFE)樹脂粉末、トリフルオロクロロエチレン・エチレン(ECTFE)樹脂粉末、ポリビニルフルオライド(PVF)樹脂粉末またはポリビニリデンフルオライド(PVDF)樹脂粉末から選択された1種または複数種である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーが、前記ゴム成分と熱可塑性フルオロ樹脂粉末以外に、カーボンブラックからなる補強剤を前記ゴム成分100質量部に対して0.1〜100質量部含有し、かつ架橋剤と加硫促進剤と加硫促進助剤と老化防止剤とを含む充填剤を含有し、該充填剤の合計質量が前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜90質量部である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。
【請求項6】
厚さ1mm〜3mm、幅10mm〜40mm、長さ200mm〜500mmとしている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置用クリーニングブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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