説明

画像形成装置

【課題】 胴内排紙型の画像形成装置のように、重心が機械中心からずれている機械を容易に運搬できるようにすることが課題である。
【解決手段】 重心から遠い方の端側に配したキャスタにおける足の長さを、重心側端に配したキャスタにおける足の長さより長くすることにより、足の長さの差により生じた画像形成装置本体の傾斜で床に対する相対的な重心位置が重心側端に配したキャスタの方に寄り、重心から遠い方の端側に配したキャスタにかかる荷重を軽くして、取り回しが容易で移動が非常に楽に行える画像形成装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機などの画像形成装置に係り、特に、機械重心が一方に偏っている画像形成装置の運搬を、容易におこなえるようにした画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機などの画像形成装置においても、高速化、小型化、省スペース化が要望され、転写材搬送路の短縮化や排紙スペースの不要化を目的に、図7に一例を示したように、給紙ローラ70、感光体71上に形成したトナー画像を転写材72に転写する転写部73、定着装置74などを垂直に配置したり、スキャナ10の下に排紙部11を設けた胴内排紙機構を採用したものが開発されている。
【0003】
また通常画像形成装置では、ユーザへの搬入や搬出に便利なようにキャスタ75を備え、据え付けに当たって機械が動いたりしないよう、固定脚をキャスタ75の長さ以上に繰り出せるようにしたものが多いが、こういった胴内排紙型の画像形成装置では、当然のことながらその重心Gが前記した給紙ローラ70、転写部73、定着装置74などが存在する方に偏っているから、重心Gのある方を進行方向に向けて移動させると、この重心Gのある方のキャスタ75にかなりの重量がかかって取り回しが困難となり、移動方向を変化させるときなどに多大な力を要することになる。
【0004】
こういったことに対処するため例えば特許文献1には、キャスタの数を減らすことが目的ではあるが、重心のある側の端にキャスタを取り付け、重心から離れた側の端には固定脚のみを設けて、機械の移動に際して機械をキャスタ側に傾け、固定脚側を浮かせて運搬するようにした画像形成装置が示されている。
【0005】
また特許文献2には、四隅にキャスタを設けた画像形成装置において、装置本体の重心とは反対側を進行方向とするよう移動方向の側にあるキャスタであることを示す印をつけることが示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−123118号公報
【特許文献2】特開平10−232528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1に示された方法では、実際の移動時に機械自体をかなり傾ける必要があり、運搬する者の力によっては機械が横転してしまう可能性があってきわめて危険である。また、特許文献2に示された方法では、機械重心位置が変わらないため、装置本体の重心とは反対側のキャスタにもかなりの重量がかかっており、前記したように移動中の取り回しが困難の可能性があると共に、障害物があった場合は乗り越えが難しい可能性があって、問題の解決にはならない。
【0008】
そのため本発明においては、胴内排紙型の画像形成装置のように、重心が機械中心からずれている機械を容易に運搬できるようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明における画像形成装置は、
画像形成装置本体重心が本体中央に対して一方向に偏っており、前記本体底辺四隅に運搬用キャスタを配した画像形成装置であって、
前記キャスタは、重心から遠い方の端側に配したキャスタにおける足の長さを、重心側端に配したキャスタにおける足の長さより長くしたことを特徴とする。
【0010】
このように、重心から遠い方の端側に配したキャスタにおける足の長さを、重心側端に配したキャスタにおける足の長さより長くすることにより、足の長さの差により生じた画像形成装置本体の傾斜で床に対する相対的な重心位置が重心側端に配したキャスタの方に寄り、重心から遠い方の端側に配したキャスタにかかる荷重が軽くなるから、取り回しが容易になって移動が非常に楽に行える画像形成装置を提供することができる。
【0011】
そして、前記重心から遠い方の端側に配したキャスタにおける足の長さは、前記重心側端に配したキャスタの足の長さとの差により生じた画像形成装置本体の傾斜で床に対して相対的に移動した重心位置が、重心側端のキャスタの位置を超えないような長さとしたことを特徴とする。
【0012】
このようにすることにより、重心から遠い方の端側に配したキャスタにかかる荷重は軽くなるが、この重心の床に対する相対的移動は重心側端のキャスタの位置を超えないから、画像形成装置本体が横転することはなく、取り回しに際して危険が伴うことがない。
【0013】
また、前記重心から遠い方の端側に配したキャスタは、画像形成装置本体底辺からの長さを変化できるよう構成されていることを特徴とする。
【0014】
このようにすることにより、画像形成装置設置時は足の長さを短くし、移動時のみ長くすることができるから、より使い勝手の良い画像形成装置を提供することができる。
【0015】
さらに、前記画像形成装置は、前記重心側端に運搬用ハンドルを取り付け可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
このようにすることにより、画像形成装置の移動をより容易におこなうことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上記載のごとく本発明によれば、重心から遠い方の端側に配したキャスタにおける足の長さを、重心側端に配したキャスタにおける足の長さより長くすることにより、足の長さの差で生じた画像形成装置本体の傾斜で床に対する相対的な重心位置が重心側端に配したキャスタの方に寄り、重心から遠い方の端側に配したキャスタにかかる荷重が軽くなるから、取り回しが容易になって移動が非常に楽に行える画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0019】
図1は本発明になる画像形成装置の移動時の構成概略を示した図、図2は本発明になる画像形成装置の据え付け時の構成概略を示した図、図3は本発明になる画像形成装置における長さ調節機構を備えたキャスタの実施例で、(A)は側面図、(B)は画像形成装置の底板を一部破断して示した斜視図、図4は本発明になる画像形成装置における長さ調節機構を備えたキャスタの他の実施例で、(A)は画像形成装置本体底辺からの長さを短くした場合、(B)は同じく長くした場合、図5、図6は重心側に運搬用のハンドルを取り付けられるようにした画像形成装置の例で、図5は図上左側(機械左側)に重心がある画像形成装置の場合、図6は機械背面側(図上右後側)に重心がある画像形成装置の場合である。
【0020】
本発明は、前記した胴内排紙型画像形成装置のように、本体重心Gが画像形成装置本体中央に対して一方向に偏っている画像形成装置において、機械移動時の取り回しを容易にするため図1に示したように、重心から遠い方の端側に配したキャスタにおける足の長さを、重心のある側の端に配したキャスタにおける足の長さより長くしたものである。
【0021】
これを図1を用いて詳細に説明すると、図1において1は画像形成装置本体であり、この画像形成装置本体1は、前記したように例えば胴内排紙型のため、重心Gが画像形成装置本体中心Oから図上左側にLだけずれているものとする。この場合本発明では、重心Gから遠い方の端側に配したキャスタ2の足3の長さaを、重心Gのある側の端に配したキャスタ4における足5の長さbより長くする。
【0022】
このようにすると画像形成装置本体1は、キャスタ2と4の足3、5の長さa、bの差により傾き、床に対する相対的な重心位置6は、画像形成装置本体が傾いていないときの位置7よりもキャスタ4側にcだけズレ、画像形成装置本体中心Oに対しては(L+c)だけズレることになる。なお、このズレ量cは、画像形成装置本体1の横転を防止するため、重心Gのある側の端に配したキャスタ4を超えないようaの長さを調節する。
【0023】
そして画像形成装置本体1が所定の位置まで移動したら、図2に示したように、画像形成装置本体1の内部に設けられ、例えばネジを用いて長さを変更できるようにした固定脚9における足8をキャスタ2の足3の長さaより長くし、画像形成装置本体1をこの固定脚9で支持して動かないように固定する。
【0024】
このように画像形成装置におけるキャスタを構成することで、キャスタ2側にかかる荷重はさらに軽くなり、横転などの危険を伴わずに移動時の取り回しが非常に容易になると共に、障害物などがあった場合も容易に乗り越えたり回避することができ、また画像形成装置本体1の据え付け時は、固定脚9によって容易に動くことがない画像形成装置を提供することができる。
【0025】
なお、図1、図2において、10はスキャナ、11はトナー画像を定着された転写材を排出する排紙部、12は手差し給紙部、13は給紙カセットであり、前記図7で説明したように、排紙部11の下には、感光体や現像装置、定着装置などの電子写真プロセス部材が収納されている。
【0026】
しかしながら図2から明らかなように、キャスタ2の足3の長さaが長い場合、当然のことながら固定脚9の足8も長くなり、あまり長い場合は当然画像形成装置本体1が揺れたりして不安定になる。そのため本発明における画像形成装置は、図3、図4に示したように、重心Gから遠い方の端側に配したキャスタ2の足3の画像形成装置本体底辺からの長さを、変化できるよう構成しても良い。
【0027】
図3は長さ調節機構を備えたキャスタ30の1実施例であり、(A)は側面図、(B)は画像形成装置本体1の底板31を一部破断して示した斜視図で、キャスタ30はその支持部材32に、高さ調節ネジ33、ネジ34の付いたボルト35を設けてある。そしてキャスタ30の長さを長くするときは、高さ調節ネジ33を回転させると、ボルト34が上下してキャスタ30と画像形成装置本体1の底板31との間隔を変化させることができる。
【0028】
そのため画像形成装置本体1を移動するときは、高さ調節ネジ33を回転させてキャスタ30と画像形成装置本体1の底板31との間隔を大きくし、所定場所に据え付けるときは、高さ調節ネジ33を逆に回転させてキャスタ30と画像形成装置本体1の底板31との間隔を小さくする。
【0029】
図4は長さ調節機構を備えたキャスタ40の他の実施例であり、(A)は画像形成装置本体底板31からの長さを短くした場合、(B)は同じく長くした場合で、キャスタ40はその支持部材41の取り付け台42に上部に径の大きな43a、下部に径の小さな43bを配した足43が取り付けられ、その足43aは、画像形成装置本体底板31に設けられた軸受け44に挿通され、足43bの部分は通過が規制され、前記画像形成装置本体の重量が加えられたとしても底板31からの長さを短くした場合の位置を維持するようになっている。そしてその足43aには、上部にネジ部45が設けられて圧縮スプリング46と足43の移動時の長さを規定する調節用ナット47が設けられ、一方、画像形成装置本体底板31には、このキャスタ40の足43の画像形成装置本体底板31からの長さを変更するため、レバー支点48で画像形成装置本体底板31に回動可能に取り付けられたレバー49が設けられている。
【0030】
そして、画像形成装置本体1を移動するときは、図4(B)に示したように、レバー支点48を支点としてレバー49を回動させ、キャスタ40の足43を圧縮スプリング46に抗して下降させて、キャスタ40の画像形成装置本体1の底板31からの長さを長くし、レバー49における直角に曲がった部分を取り付け台42に当接させて固定する。このようにすると、レバー49がつっかい棒の役をし、キャスタ40が短くなるのを防いでくれる。また、キャスタ40の長さを短くするときは、レバー49の固定を外して図4(A)の位置にすることで、キャスタ40と画像形成装置本体1の底板31との間隔を小さくすることができる。
【0031】
このようにキャスタ30または40における足35または43の長さを変化させられるようにすることにより、画像形成装置本体1を移動するときのみ重心Gから遠い方の端側に配したキャスタ30または40における足35または43を長くし、所定場所に据え付けるときは短くすることができるから、図2に示した固定脚9の足8の長さは重心G側の端に設けられたキャスタ4の足5より少し長ければ良くなり、この足8の長さが長くなりすぎて画像形成装置本体1が揺れたり不安定になることを防ぐことができる。
【0032】
また、大型の画像形成装置においては、移動や運搬の際に便利なように取っ手(運搬用ハンドル)を付けることが行われているが、これを図1に示した重心G側とすることで、画像形成装置本体1の運搬や移動が非常に楽になる。図5、図6は、このような考えの元に、重心側に運搬用のハンドルを取り付けられるようにした画像形成装置の例であり、図5は図上左側(機械左側)に重心がある場合、図6は機械背面側(図上右後側)に重心がある場合である。
【0033】
図5に示した画像形成装置50は、最上部にスキャナ51を有し、その下に排紙部52、手前に操作部53が配してあると共に、排紙部52の下に感光体や現像装置、定着装置などの電子写真プロセス部材が収納され、さらにその下に給紙カセットなどが収納された胴内排紙型の画像形成装置である。そして前記図7で説明したように、図上排紙部52の左側に電子写真プロセス部材が収納され、図1に示したように重心Gも機械中心Oより左側にある。
【0034】
そのため、画像形成装置50の左側面に取っ手(運搬用ハンドル)54を設けられるようにすることで、画像形成装置50の運搬や移動時には図1に示したように、重心G側のキャスタ4における足5の長さbより重心Gから遠い方の端側に配したキャスタ2の足3の長さaを長くし、取っ手54を取り付けて運搬や移動を行うことで、より安全に、容易に画像形成装置50を移動させることができる。
【0035】
そして、機械重心が機械背面側(図上右後側)にある場合も同様であり、例えば図6に示した画像形成装置60で重心Gが機械背面側(図上右後側)にある場合、この重心Gのある機械背面側(図上右後側)に取っ手(運搬用ハンドル)61を設ける。すると前記したように、重心G側のキャスタ4における足5の長さbより重心Gから遠い方の端側に配したキャスタ2の足3の長さaを長くし、取っ手61によって運搬や移動を行うことで、より安全に、容易に画像形成装置60を移動させることができる。なお、図中62はスキャナ、63は排紙部、左手前の64は操作部であり、排紙部63の下に感光体や現像装置、定着装置などの電子写真プロセス部材が収納され、さらにその下に給紙カセットなどが収納されている。
【0036】
以上種々述べてきたように本発明によれば、重心から遠い方の端側に配したキャスタにおける足の長さを、重心側端に配したキャスタにおける足の長さより長くすることにより、足の長さの差により生じた画像形成装置本体の傾斜で床に対する相対的な重心位置が重心側端に配したキャスタの方に寄り、重心から遠い方の端側に配したキャスタにかかる荷重が軽くなるから、取り回しが容易になって移動が非常に楽に行える画像形成装置を提供することができる。
【0037】
また、重心から遠い方の端側に配したキャスタにおける足の長さは、重心側端に配したキャスタの足の長さとの差により生じた画像形成装置本体の傾斜で床に対して相対的に移動した重心位置が、重心側端のキャスタの位置を超えないような長さとしたから、重心から遠い方の端側に配したキャスタにかかる荷重は軽くなるが、画像形成装置本体が横転するまで重心が移動しないから、取り回しに際して危険が伴うことがない。
【0038】
さらに、重心から遠い方の端側に配したキャスタは、画像形成装置本体底辺からの長さを変化できるよう構成することにより、画像形成装置設置時は足の長さを短くし、移動時のみ長くすることができるから、より使い勝手の良い画像形成装置とすることができる。
【0039】
そして、重心側端に運搬用ハンドルを取り付け可能に構成することにより、画像形成装置移動をより容易におこなうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、移動や運搬に際し、取り回しが容易で移動が非常に楽に行える画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明になる画像形成装置の移動時の構成概略を示した図である。
【図2】本発明になる画像形成装置の据え付け時の構成概略を示した図である。
【図3】本発明になる画像形成装置における長さ調節機構を備えたキャスタの実施例で、(A)は側面図、(B)は画像形成装置の底板を一部破断して示した斜視図である。
【図4】本発明になる画像形成装置における長さ調節機構を備えたキャスタの他の実施例で、(A)は画像形成装置本体底板からの長さを短くした場合、(B)は同じく長くした場合である。
【図5】重心側に運搬用のハンドルを取り付けられるようにした画像形成装置の例で、図上左側(機械左側)に重心がある場合である。
【図6】重心側に運搬用のハンドルを取り付けられるようにした画像形成装置の例で、機械背面側(図上右後側)に重心がある場合である。
【図7】胴内排紙型画像形成装置における装置内部の構成概略と従来の移動用キャスタ概略を示した図である。
【符号の説明】
【0042】
1 画像形成装置本体
2 キャスタ
3 足
4 キャスタ
5 足
6 床に対する相対的な重心位置
7 画像形成装置本体が傾いていないときの床に対する相対的な重心位置
8 足
9 固定脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置本体重心が本体中央に対して一方向に偏っており、前記本体底辺四隅に運搬用キャスタを配した画像形成装置であって、
前記キャスタは、重心から遠い方の端側に配したキャスタにおける足の長さを、重心側端に配したキャスタにおける足の長さより長くしたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記重心から遠い方の端側に配したキャスタにおける足の長さは、前記重心側端に配したキャスタの足の長さとの差により生じた画像形成装置本体の傾斜で床に対して相対的に移動した重心位置が、重心側端のキャスタの位置を超えないような長さとしたことを特徴とする請求項1に記載した画像形成装置。
【請求項3】
前記重心から遠い方の端側に配したキャスタは、画像形成装置本体底辺からの長さを変化できるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載した画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置は、前記重心側端に運搬用ハンドルを取り付け可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載した画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−11098(P2006−11098A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188911(P2004−188911)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】