説明

画像形成装置

【課題】 高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 潜像担持体61に液滴によって画像信号に対応した液滴像Wを形成する。そして、潜像担持体61上の液滴像Wの位置へ電荷付与部63により注入帯電して該潜像担持体61上に画像信号に対応した潜像Sを形成している。すなわち、ニップ部NPにおいて、液滴像Wが介在する位置でのみ電荷付与部63から潜像担持体61への注入帯電が行われ、潜像担持体61に潜像Sが形成される。したがって、画像信号に対応した液滴像Wと同一形状の潜像Sが潜像担持体61上に形成される。よって、潜像担持体61への静電潜像形成を安定して行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、潜像担持体に電荷注入することにより潜像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザビームプリンタ、複写機やファクシミリ装置などの画像形成装置では、光導電層を持つ感光体を帯電させた後、画像信号に対応した光ビームを感光体に照射して潜像を形成し、これを現像剤で顕像化している。また、画質を向上させるために、例えば特許文献1に記載されているように、小粒径トナーに対して現像キャリアとして重合法で作成された樹脂キャリアを用いるとともに、感光体としてアモルファスシリコンドラムを用いることが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−345054号公報([0002]、[0008])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光ビームを用いて潜像を形成する画像形成装置では、潜像の電位分布はガウシアン分布となり、スポット径は一般的に60〜80μm程度である。したがって、トナー粒径を小さくしたとしても、潜像自体が大きく、かつブロード(ガウシアン分布)となっているため、高画質化には一定の限界があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、画像信号に対応するトナー像を形成する画像形成装置であって、上記目的を達成するため、撥水性樹脂で形成された表面層を有し、所定の回転軸回りに回転移動する潜像担持体と、潜像担持体の回転軸を含む仮想水平面よりも高い潜像担持体表面位置に向けて画像信号に応じて液滴を噴射して潜像担持体に付着させて画像信号に対応する液滴像を形成する液滴噴射ヘッドと、潜像担持体の回転方向における液滴像形成位置の下流側で、液滴像が形成された潜像担持体表面に当接してニップ部を形成する電荷付与部材と、電荷付与部材に帯電バイアスを印加してニップ部において潜像担持体を注入帯電させて液滴像に対応する潜像を形成する電荷付与制御手段と、潜像を現像する現像手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
このように構成された発明では、画像信号に応じて液滴が潜像担持体に噴射付着されて画像信号に対応した液滴像が形成される。そして、ニップ部では潜像担持体上の液滴を介して電荷付与部材により注入帯電が実行されて該潜像担持体に画像信号に対応した潜像が形成される。このように本発明は従来とは全く異なる方法により潜像を形成している。すなわち、液滴を用いて潜像を形成しているため、光ビームを用いた潜像形成とは異なりシャープな潜像が得られる。しかも、潜像担持体の表面層は撥水性樹脂で形成されているため、潜像担持体に液滴が付着した際に液滴が潜像担持体の表面層で広がるのを防止することができ、シャープな潜像を確実に形成することができ、画像品質を高めることができる。
【0008】
なお、潜像担持体は所定の回転軸回りに回転移動しており、その回転移動している潜像担持体の表面に液滴を噴射付着させるため、液滴噴射ヘッドは液滴を潜像担持体の回転軸を含む仮想水平面よりも高い潜像担持体表面位置に向けて噴射しているが、より付着性能を高めるためには、液滴噴射ヘッドの配設位置および液滴の噴射方向を工夫するのが望ましい。例えば、液滴噴射ヘッドを潜像担持体の回転軸を通る仮想鉛直線上に配置し、該仮想鉛直線に沿って液滴を噴射するように構成してもよい。
【0009】
また、液滴噴射ヘッドが第1および第2配設条件を満足させながら潜像担持体表面位置に液滴を付着させるように構成してもよく、ここで、「第1配設条件」は、潜像担持体の表面位置における接線に平行で、しかも回転移動方向に順方向のものを接線ベクトルとしたとき、潜像担持体表面位置での接線ベクトルを基点として該接線ベクトルが重力ベクトルと回転移動方向回りになす角度αが
0゜≦α<90゜
となるという配設条件であり、「第2配設条件」は、液滴噴射ヘッドからの液滴の噴射方向が潜像担持体表面位置の接線とほぼ直交するという配設条件である。
【0010】
さらに、液滴噴射ヘッドが第3および第4配設条件を満足させながら潜像担持体表面位置に液滴を付着させるように構成してもよく、ここで、「第3配設条件」は、潜像担持体の表面位置における接線に平行で、しかも回転移動方向に順方向のものを接線ベクトルとしたとき、潜像担持体表面位置での接線ベクトルを基点として該接線ベクトルが重力ベクトルと回転移動方向回りになす角度αが
90゜<α≦180゜
となるという配設条件であり、「第4配設条件」は、潜像担持体表面位置での接線ベクトルを基点として該接線ベクトルが液滴噴射ヘッドからの液滴の噴射方向と平行な噴射ベクトルと回転移動方向回りになす角度βが
0゜<β<90゜
となるという配設条件である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<ニップ部での液滴介在による効果>
本願発明の主要な構成要件のひとつが液滴を用いて液滴像を形成するとともに、該液滴像を介して潜像担持体を注入帯電させて液滴像に対応する潜像を形成する点である。このように液滴を用いることの技術的意義について検証結果を踏まえて詳述し、その後で本発明にかかる実施形態について説明する。
【0012】
潜像担持体に電荷注入することで該潜像担持体に潜像を形成するという技術に関しては、従来より周知であるが、潜像担持体に当接して電荷を付与する電荷付与部材(従来技術における帯電部材や書込部材などに相当)と潜像担持体との接触状態によって接触抵抗が変動し、潜像担持体への潜像の形成精度に大きな影響を与えることがある。これは、潜像担持体と電荷付与部材とのニップ部において潜像担持体を注入帯電する際に潜像担持体への帯電効率を向上させるには、該ニップ部における潜像担持体と電荷付与部材との接触状態が非常に重要であることを示している。そこで、本願発明者は種々の物質を該ニップ部に介在させるとともに、それらの介在により潜像担持体と電荷付与部材との接触状態の改善が認められるか否かを検証したところ、エタノールなどの液滴像をニップ部に介在させた状態で注入帯電を行うことで潜像担持体の帯電効率を高めることが可能となるという知見を得た。
【0013】
上記検証を行うべく、潜像担持体に帯電ローラ(本発明の「電荷付与部材」に相当)を接触させ、その接触部分において帯電ローラによって潜像担持体表面を注入帯電する際に、潜像担持体と帯電ローラとのニップ部に種々の物質を介在させ、それぞれの場合の潜像担持体表面の帯電効率を比較した。この際、ニップ部の一の部分には物質を介在させ、他の部分には物質を介在させない状態で注入帯電を行い、それぞれの部分の帯電効率を比較している。
【0014】
図1は、上記した方法により得た潜像担持体の帯電効率の示す図である。同図は潜像担持体表面の表面電位を示す図であり、横軸を時間(S)、縦軸を表面電位(V)としたものである。潜像担持体と帯電ローラとのニップ部に介在させる物質として、低級アルコールであるエタノールを用いている。同図中の実線は、ニップ部においてエタノールが介在している一の部分の表面電位を示しており、破線はエタノールの介在していない他の部分の表面電位を示している。なお、時刻0で、帯電ローラによって潜像担持体の表面電位が所定の表面電位V0となるように予め設定した帯電バイアスが帯電ローラに印加されている。
【0015】
図1から明らかなように、帯電ローラに帯電バイアスが印加されると、液滴像が介在している潜像担持体の表面位置は瞬時に略設定電位V0に注入帯電される。ところが、液滴像が介在していない潜像担持体の表面位置は、液滴像が介在している潜像担持体の表面位置に比べ帯電効率が悪く、注入帯電されない。このように、この検証結果から、ニップ部において、エタノール等の液滴を部分的に介在させることによって、潜像担持体表面の任意の位置に注入帯電を行い該潜像担持体表面に任意の形状の潜像を形成することができるという知見が得られた。
【0016】
そこで、本実施形態はこれらの知見に基づき液滴を利用して潜像担持体に潜像を形成している。以下、図面を参照しつつ、各実施形態について詳述する。
【0017】
<第1実施形態>
図2は本発明にかかる画像形成装置の第1実施形態を示す図である。また、図3は図2の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のトナー(現像剤)を重ね合わせてフルカラー画像を形成するカラー印刷処理、およびブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する単色印刷処理を選択的に実行する画像形成装置である。この画像形成装置1では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令(印刷指令)がメインコントローラ3に与えられると、このメインコントローラ3のCPU31からの指令に応じてエンジンコントローラ4がエンジン部EG各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、普通用紙、厚紙およびOHP用透明シートなどのシート(記録材)SHに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0018】
本実施形態の画像形成装置1では、図2に示すように、ハウジング本体2内に、電源回路基板、メインコントローラ3(図3)およびエンジンコントローラ4(図3)を内蔵する電装品ボックス(図示省略)が設けられている。また、画像形成ユニット6、転写定着ユニット7および給紙ユニット8もハウジング本体2内に配設されている。
【0019】
これらの構成ユニットのうち転写定着ユニット7は、略水平に配置された2つのローラ71,72と、この2本のローラ71、72間に張架されて図示矢印方向D73へ循環移動自在となっている中間転写ベルト73とを備えている。そして、図示を省略する駆動モータからの駆動力によりローラ71,72の一方が駆動ローラとして回転駆動され、これによって中間転写ベルト73が方向D73に回転駆動される。また、ローラ71の内部にはハロゲンヒータ等の発熱体74が内蔵されている。そして、エンジンコントローラ4のCPU41からの指令に応じて転写定着制御部42が作動し、発熱体74をコントロールすることで最適な定着温度に制御される。このように、ローラ71は加熱ローラとして機能している。一方、この加熱ローラ71に対向して加圧ローラ75が配置されて加熱ローラ71を押圧付勢している。このように、この実施形態では、2つのローラ71,75によって後述するようにして形成された画像が給紙ユニット8により搬送されてくるシートSHに転写定着される。
【0020】
また、転写定着ユニット7には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の画像形成ステーションY,M,Cの潜像担持体61に対向して配置された1次転写ローラ76がドラム状の潜像担持体61に向かって近接し、また潜像担持体61から離間移動する。このため、イエロー、マゼンタおよびシアン用の1次転写ローラ21が潜像担持体61に向かって近接移動すると、中間転写ベルト73を挟んで該潜像担持体61に当接する(図2中の実線)。そして、この当接位置が1次転写位置となっており、該1次転写位置でトナー像が中間転写ベルト73に転写される。逆に、カラー印刷を行わないときには、イエロー、マゼンタおよびシアン用の1次転写ローラ76が潜像担持体61から離間移動する(図2中の破線)。一方、ブラック(K)の画像形成ステーションKの潜像担持体61に対向して配置された1次転写ローラ76については、中間転写ベルト73を挟んで該潜像担持体61に当接されたまま回転するように構成されている。したがって、図2の実線で示すように、全1次転写ローラ76を潜像担持体61側に位置させることでカラー印刷処理が実行可能となる。一方、同図の破線で示すように、ブラック用の1次転写ローラ76を残して他の1次転写ローラ76を潜像担持体61から離間させることでモノクロ印刷処理のみを実行しつつ中間転写ベルト73が画像形成ステーションY,M,Cから離間してイエロー、マゼンタおよびシアン色については非印刷状態とすることができる。なお、ブラック用の1次転写ローラ76についても、必要に応じて潜像担持体61から離間移動させるように構成してもよい。
【0021】
画像形成ユニット6は、複数(本実施形態では4つ)の異なる色の画像を形成する画像形成ステーションY(イエロー用),M(マゼンタ用),C(シアン用),K(ブラック用)を備えている。これらの画像形成ステーションY,M,C,Kは、図2に示すように、この順序で中間転写ベルト73の回転移動方向D73に沿って配置されている。また、各画像形成ステーションY,M,C,Kには、図4および図5に示すように、潜像担持体61が回転軸AX回りに回転方向D61に回転自在に設けられている。この実施形態では、潜像担持体61の表面に撥水性を持たせるために、表面層611を撥水性樹脂で形成している。ここで、撥水性樹脂としてはフッ素樹脂が望ましく、例えば四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオルエチレン)、ポリトリフルオルクロルエチレン等があり、その他にフッ化ビニル・三フッ化エチレン・フッ化ビニリデン・六フッ化プロピレン・ジクロルジフルオルエチレン等の重合体および共重合体を用いることができる。
【0022】
また、各潜像担持体61の周囲には、液滴噴射ヘッド62、電荷付与部63、現像部64、除電部65およびクリーナ部66が配設されている。そして、これらの機能部によって液滴像形成動作、電荷付与動作(潜像形成動作)、現像動作、除電動作およびクリーニング動作が実行される。なお、各画像形成ステーションY,M,C,Kの配置順序は任意である。
【0023】
各画像形成ステーションY,M,C,Kの潜像担持体61は1次転写位置TR1で中間転写ベルト73の上向きのベルト面に当接されるように配置されている。また、これらの潜像担持体61はそれぞれ専用の駆動モータに接続され、図示矢印D61に示すように、中間転写ベルト73の搬送方向に所定周速で回転駆動される。
【0024】
液滴噴射ヘッド62は潜像担持体61の上方位置で、しかも先端部を潜像担持体61を向けた状態で回転軸AXを通る仮想鉛直線VL上に配置されている。また、この液滴噴射ヘッド62の長軸方向(回転軸AXと平行な方向)の長さは潜像担持体61の軸方向の長さとほぼ一致しており、その潜像担持体61側の先端部には所定の液滴を噴射するための複数の噴射口621を備えており、それらの噴射口621は潜像担持体61の回転軸AX方向に並んだ状態で配設されている。また、液滴噴射ヘッド62には、図2に示すように配管671により上記液滴を構成する純水やエタノールなどの液体を貯留する液体貯留タンク672と接続されている。このため、CPU41からの指令に応じてヘッド制御部43が画像形成指令に含まれる画像信号に対応して作動することで液滴噴射ヘッド62の先端噴射口621から仮想鉛直線VLに沿って潜像担持体61の表面に向けて液滴WLが噴射されて画像信号に対応する液滴像Wが形成される。例えば、全ての噴射口621から液滴が吐出された場合には、液滴像形成位置622で潜像担持体61の表面上に一本のライン状の液滴像が形成される。なお、液滴噴射ヘッド62から潜像担持体61に吐出される液滴WLとしては、純水を用いることができるが、例えば、揮発性を有するエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールを用いてもよい。なお、本実施形態では上述した実験結果より、液滴としてエタノールを用いて液滴像Wを形成している。
【0025】
潜像担持体61の回転方向D61において、液滴像形成位置622の下流側には帯電ローラなどにより構成された電荷付与部63が潜像担持体61の回転方向D61に従動する方向D63に回転自在に配設されている。そして、この電荷付与部63は潜像担持体61に当接することによりニップ部NPを形成している。また、この電荷付与部63には、電荷付与制御部44が電気的に接続されており、所定のバイアスが電荷付与部63に印加されることによって、潜像担持体61はニップ部NPにおいて電荷付与部63により注入帯電されて液滴位置が選択的に帯電されて画像信号に対応する潜像S(図4)が潜像担持体61の表面層611に形成される。
【0026】
こうして形成された潜像Sは現像部64の現像ローラ641から供給されるトナーによって顕像化される(現像工程)。すなわち、現像制御部45から現像ローラ641に印加される現像バイアスにより現像ローラ641から潜像位置にトナーが付着されてトナー像が形成される。なお、この実施形態では、図2に示すように、現像部64は現像ローラ641に加えて、トナーを一時的に貯留する内部タンク642および供給ローラ643を備えている。また、内部タンク642にはトナーを貯留するトナー貯留タンク68が接続されており、適当なタイミングで内部タンク642にトナーを補充可能となっている。
【0027】
こうして形成されたトナー像は1次転写位置TR1で中間転写ベルト73の表面に転写される。また、この実施形態では、潜像担持体61の回転方向D61において1次転写位置の下流側に、潜像担持体61の表面を除電する除電部65が設けられており、除電制御部46により駆動制御されて潜像担持体61の表面を除電する。また、この除電部65の下流側にて潜像担持体61に当接するようにクリーナ部66が設けられている。このクリーナ部66は、潜像担持体61の表面に当接することで1次転写後に潜像担持体61の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0028】
給紙ユニット8は、シートSHが積層保持されている給紙カセット81と、給紙カセット81からシートSHを一枚ずつ給送するピックアップローラ82とからなる給紙部を備えている。そして、ピックアップローラ82により給紙カセット81から取り出されたシートSHがレジストローラ対(図示省略)を介して2次転写位置TR2に送られて中間転写ベルト73上に形成された画像が転写定着される。また、こうして転写定着処理を受けたシートSHは排紙ローラ対83を経由してハウジング本体2の上面部に設けられた排紙トレイ9に搬送される。
【0029】
なお、図3において、符号33はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース32を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ3に設けられた画像メモリである。また、符号48はCPU41が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶したり、CPU41における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するメモリである。
【0030】
次に潜像担持体11上にトナー像Tを形成する工程について図6を参照しつつ詳述する。図6は本実施形態において潜像担持体61上にトナー像Tが形成されるまでの工程を示す模式図である。
【0031】
(1)液滴像形成工程(図6(a))
ヘッド制御部43からの制御信号に従って複数の噴射口621のうち選択された噴射口621から潜像担持体61の表面に向けて液滴が吐出される。そして、液滴像形成位置622において画像信号に対応した液滴像Wが潜像担持体61上に形成される。液滴噴射ヘッド62は液滴像形成位置622において潜像担持体61の鉛直上方に固定されているが、潜像担持体61は矢印方向D61に回転している。したがって、複数の噴射口621の液滴噴射タイミングを画像信号に応じて制御することにより、潜像担持体61上には画像信号に対応した液滴像Wを形成することができる(図6(a)平面図参照)。
【0032】
(2)潜像形成工程(図6(b))
液滴像形成工程で形成された液滴像Wは、潜像担持体61の回転に伴って、潜像担持体61と電荷付与部63とが形成するニップ部NPに搬送される。そして、電荷付与制御部44から電荷付与部63に所定のバイアスが印加されることによって、ニップ部NPにおいて、潜像担持体61上の液滴像Wの位置へ注入帯電が選択的に実行される。このように注入帯電が実行されることによって、潜像担持体61の表面に画像信号に対応した潜像Sが形成される(図6(b)平面図参照)。なお、ニップ部NPに介在する液滴WLの作用効果は上記した実験結果に基づいている。
【0033】
また、液滴像Wを形成する液滴として揮発性を有するエタノールを用いている。そのため、ニップ部NPにおいて潜像担持体61の表面の液滴像Wの位置へ注入帯電が実行されて潜像Sが形成された後、形成された潜像Sが潜像担持体61の回転に伴って次の現像工程位置へ搬送される過程で該液滴像Wは揮発する。
【0034】
(3)現像工程(図6(c))
潜像形成工程で形成された潜像Sは、潜像担持体61の回転に伴って現像位置(潜像担持体61と現像ローラ641とが対向している位置)に搬送される。このとき、上記したように、潜像Sが現像位置へ搬送される過程で、液滴像Wは潜像担持体61の表面から揮発除去されている。そして、現像位置において、現像ローラ641から潜像担持体61へトナーが付与されることによって潜像Sは現像されて、潜像担持体61の表面に画像信号に対応したトナー像Tが形成される(図6(c)平面図参照)。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、液滴によって画像信号に対応した液滴像Wを潜像担持体61に形成する。そして、潜像担持体61上の液滴像Wの位置へ電荷付与部63により注入帯電して該潜像担持体61上に画像信号に対応した潜像Sを形成している。すなわち、ニップ部NPにおいて、液滴像Wが介在する位置でのみ電荷付与部63から潜像担持体61への注入帯電が行われ、潜像担持体61に潜像Sが形成される。したがって、画像信号に対応した液滴像Wと同一形状の潜像Sが潜像担持体61上に形成される。よって、潜像担持体61への静電潜像形成を安定して行うことができる。このように、潜像担持体61に液滴像Wを介して電荷付与部63により注入帯電を実行した場合、液滴像Wを介さない場合に比べて注入帯電効率が極めて向上するとともに安定した注入帯電が行われることは、上記した「ニップ部での液滴介在による効果」の項で説明したとおりである。また、このように形成された潜像Sを現像してトナー像Tを得ているので、良好なトナー像Tを得ることができる。
【0036】
また、液滴WLを用いて潜像Sを形成しているため、光ビームを用いた潜像形成とは異なりシャープな潜像が得られる。例えば液滴噴射ヘッド62としてインクジェット方式のヘッドを採用した場合、液滴の容量を2ピコリットル程度に設定することができる。この場合には液滴の直径は約15μm程度となり、スポット径が60〜80μm程度となってしまう光ビーム露光方式に比べて高細密な潜像を形成することができる。しかも、この実施形態では、潜像担持体61の表面層611を撥水性樹脂で形成しているため、潜像担持体61に液滴が付着した際に液滴が潜像担持体61の表面層611で広がるのを防止することができ、シャープな潜像を確実に形成することができ、画像品質を高めることができる。
【0037】
また、この実施形態では、液滴WLとして、揮発性を有するエタノールを用いて液滴像Wを形成している。したがって、ニップ部NPに液滴像Wが介在した状態で、該ニップ部NPにおいて潜像担持体61へ電荷付与部63によって潜像Sが形成された後、該潜像Sが潜像担持体61の回転に伴ってニップ部NPから離れていく過程で潜像担持体61の表面からエタノールである液滴像Wは揮発する。よって、液滴像Wを潜像担持体61の表面から除去するのになんらかの手段を講じる必要がない。また、液滴像Wが低級アルコールであるエタノールによって形成されているため、その洗浄効果により潜像担持体61の表面をさらに清潔に保つことができる。
【0038】
<第2実施形態>
図7は本発明にかかる画像形成装置の第2実施形態を示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、液滴噴射ヘッド62の配設位置である。ここでは、潜像担持体61に対する液滴噴射ヘッド62の配設位置を明確にするため、図7(後の図8も同様)には潜像担持体61の回転軸AXを通過する仮想水平線HLおよび仮想鉛直線VLが記載されて4つの象限[I]〜[IV]が設けられている。そして、この第2実施形態では、潜像担持体61に対して液滴噴射ヘッド62は第1象限[I]内に位置している。
【0039】
ここで、液滴噴射ヘッド62から噴射されて潜像担持体61に付着した液滴WLに対して作用する応力について検討してみる。この液滴WLには、重力により潜像担持体61の表面を滑り落ちようとする応力Fgが作用する。これに対し、液滴噴射ヘッド62を上記のように配置した場合には、潜像担持体61の表面位置における接線TGに平行で、しかも潜像担持体61の回転移動方向D61に順方向のものを接線ベクトルVtとしたとき、潜像担持体表面位置での接線ベクトルVtを基点として該接線ベクトルVtが重力ベクトルVgと回転移動方向D61回りになす角度αは鋭角となる。そして、液滴噴射ヘッド62からの液滴の噴射方向D62が潜像担持体表面位置の接線TGとほぼ直交する場合には、こうして潜像担持体61の表面に付着した液滴WLに対して潜像担持体61の回転移動方向D61と反対方向に応力Ftが作用する。したがって、液滴WLに対して回転移動方向D61に順方向の応力Fgと逆方向の応力Ftが互いに相殺する方向に作用することとなり、潜像担持体表面上での液滴WLの移動を抑制することができる。
【0040】
以上のように、この第2実施形態では、下記の2つの配設条件(1)および(2)が満足されるように、潜像担持体61に対して液滴噴射ヘッド62が配設されている:
・配設条件(1)…本発明の「第1配設条件」
潜像担持体61に対して液滴噴射ヘッド62を第1象限[I]内に位置させる、言い換えれば潜像担持体表面位置での接線ベクトルVtを基点として該接線ベクトルVtが重力ベクトルVgと回転移動方向D61回りになす角度αが
0゜≦α<90゜
となる;
・配設条件(2)…本発明の「第2配設条件」
液滴噴射ヘッド62からの液滴の噴射方向D62が潜像担持体表面位置の接線とほぼ直交する。
このため、液滴WLに対して作用する2つの応力Fg、Ftが互いに相殺されて潜像担持体61の表面に付着した液滴WLの移動を抑制し、液滴像Wを正確に形成することができ、その結果、画像信号に対応する画像を正確に、しかも高精度に形成することができる。特に、潜像担持体61の表面層611を撥水性樹脂で形成した場合には、表面層611での液滴WLに対する応力バランスが崩れると、液滴WLが付着位置からずれ易く、液滴WLの作用する応力をコントロールすることは非常に重要となっている。
【0041】
<第3実施形態>
また、上記第2実施形態では、潜像担持体61に対して液滴噴射ヘッド62を第1象限[I]内に配設しているが、図8に示すように、第2象限[II]内に配設する、つまり、
・配設条件(3)…本発明の「第3配設条件」
潜像担持体表面位置での接線ベクトルVtを基点として該接線ベクトルVtが重力ベクトルVgと回転移動方向D61回りになす角度αが
90゜<α≦180゜
となっている
を満足するように構成してもよい。ただし、この場合には、潜像担持体61の表面に付着した液滴WLに対して潜像担持体61の回転移動方向D61と反対方向に、2つの応力Ft、Fgが作用することとなる。そこで、この第3実施形態では、これらの回転移動方向D61と逆方向の応力(Ft、Fg)による影響を消滅あるいは緩和するために、以下の配設条件、
・配設条件(4)…本発明の「第4配設条件」
潜像担持体表面位置での接線ベクトルVtを基点として該接線ベクトルVtが液滴噴射ヘッド62からの液滴の噴射方向D62と平行な噴射ベクトルViと回転移動方向D61回りになす角度βが
0゜<β<90゜
となる
を満足するように構成している。
【0042】
このように構成された画像形成装置では、同図(b)に示すように、噴射方向D62を潜像担持体表面の垂線に対して回転移動方向D61の逆方向に傾けて噴射しているため、液滴WLに対して回転移動方向D61と順方向の応力Fiが作用している。この応力Fiによって回転移動方向D61と逆方向の応力(Ft、Fg)が減ぜられて第2実施形態と同様の作用効果、つまり潜像担持体61の表面に付着した液滴WLの移動を抑制し、液滴像Wを正確に形成することができ、その結果、画像信号に対応する画像を正確に、しかも高精度に形成することができる。
【0043】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、潜像担持体61の表面層611を撥水性樹脂で形成しているが、電荷付与部63の表面層についても撥水性樹脂により形成してもよい。このように構成することによって電荷付与部63への液滴付着を防止することができ、電荷付与を安定して行うことができる。
【0044】
また、上記実施形態では、カラー画像形成装置に対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、単色の画像形成を行う画像形成装置に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】潜像担持体の帯電効率の示す模式図。
【図2】本発明にかかる画像形成装置の第1実施形態を示す図。
【図3】図2の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】図2の画像形成装置の要部拡大図。
【図5】図2の画像形成装置の要部拡大図。
【図6】潜像担持体にトナー像が形成されるまでの工程を示す模式図。
【図7】本発明にかかる画像形成装置の第2実施形態の要部拡大図。
【図8】本発明にかかる画像形成装置の第3実施形態の要部拡大図。
【符号の説明】
【0046】
1…画像形成装置、 44…電荷付与制御部、 61…潜像担持体、 62…液滴噴射ヘッド、 63…電荷付与部、 64…現像部(現像手段)、 611…(潜像担持体の)表面層、 622…液滴像形成位置、 AX…(潜像担持体の)回転軸、 D61…(潜像担持体の)回転移動方向、 D62…噴射方向、 HL…仮想水平線、 NP…ニップ部、 S…潜像、 T…トナー像、 TG…接線、 Vg…重力ベクトル、 Vi…噴射ベクトル、 Vt…接線ベクトル、 VL…仮想鉛直線、 W…液滴像、 WL…液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に対応するトナー像を形成する画像形成装置において、
撥水性樹脂で形成された表面層を有し、所定の回転軸回りに回転移動する潜像担持体と、
前記潜像担持体の回転軸を含む仮想水平面よりも高い前記潜像担持体表面位置に向けて前記画像信号に応じて液滴を噴射して前記潜像担持体に付着させて前記画像信号に対応する液滴像を形成する液滴噴射ヘッドと、
前記潜像担持体の回転方向における液滴像形成位置の下流側で、前記液滴像が形成された前記潜像担持体表面に当接してニップ部を形成する電荷付与部材と、
前記電荷付与部材に帯電バイアスを印加して前記ニップ部において前記潜像担持体を注入帯電させて前記液滴像に対応する潜像を形成する電荷付与制御手段と、
前記潜像を現像する現像手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記液滴噴射ヘッドは前記潜像担持体の回転軸を通る仮想鉛直線上に配置され、該仮想鉛直線に沿って液滴を噴射する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記液滴噴射ヘッドは下記の第1および第2配設条件を満足させながら前記潜像担持体表面位置に液滴を付着させる請求項1記載の画像形成装置。
第1配設条件は、前記潜像担持体の表面位置における接線に平行で、しかも前記回転移動方向に順方向のものを接線ベクトルとしたとき、潜像担持体表面位置での接線ベクトルを基点として該接線ベクトルが重力ベクトルと前記回転移動方向回りになす角度αが
0゜≦α<90゜
となる。
第2配設条件は、前記液滴噴射ヘッドからの液滴の噴射方向が前記潜像担持体表面位置の接線とほぼ直交する。
【請求項4】
前記液滴噴射ヘッドは下記の第3および第4配設条件を満足させながら前記潜像担持体表面位置に液滴を付着させる請求項1記載の画像形成装置。
第3配設条件は、前記潜像担持体の表面位置における接線に平行で、しかも前記回転移動方向に順方向のものを接線ベクトルとしたとき、潜像担持体表面位置での接線ベクトルを基点として該接線ベクトルが重力ベクトルと前記回転移動方向回りになす角度αが
90゜<α≦180゜
となる。
第4配設条件は、潜像担持体表面位置での接線ベクトルを基点として該接線ベクトルが前記液滴噴射ヘッドからの液滴の噴射方向と平行な噴射ベクトルと前記回転移動方向回りになす角度βが
0゜<β<90゜
となる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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