説明

画像形成装置

【課題】より高い現像性を得ることができる画像形成装置を得る。
【解決手段】磁性トナー供給部22に現像ベルト32を用いている。この現像ベルト32によって、現像剤貯留部20内の磁性トナー24を磁気ドラム10に供給するようにしている。このように、現像ベルト32を用いることで、現像剤担持体としてロールを用いた場合と比較して、現像ニップ領域が広くなり、磁気ドラム10の表面に磁性トナー24を確実に付着させることができ、高い現像性が得られる。また、現像に十分な搬送量を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一回の潜像形成で必要部数の印刷が可能な磁気印写装置が知られている。この磁気印写装置では、磁気記録媒体(磁気潜像保持体)に磁気的に形成された磁気潜像を保持させ、現像領域でその磁気記録媒体に磁性トナーを供給して磁気潜像をトナー像として顕像化し、転写領域で紙などの記録媒体を磁気記録媒体へ押し当て、顕像化されたトナー像を記録媒体へ転写し、更に転写後の記録媒体を定着領域に搬送して定着処理することにより印写を完成させる。この方式は、一般にマグネトグラフィと呼ばれている。
【0003】
上記においては、磁気記録媒体における磁化状態は半永久的に保たれるから、1回潜像形成すると、現像・転写のプロセスを繰り返すだけできわめて多数のコピーが得られる。また、マルチコピーを得るのに潜像を記録し直す必要がないので、高速化への対応が可能である。さらに、磁気は静電気と違って環境に対して安定である上、解像度の高い画像を得ることもできる。
【0004】
一方、磁気潜像は容易に磁気的に形成および消去可能であり、刷版が不要なため、コストの低減が可能である。
【0005】
前記マグネトグラフィに関しては、粉体の磁性トナーを利用したいわゆる乾式の画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。具体的なプロセスとしては、例えば磁性トナーは磁気記録媒体に対して離間位置に配置された供給ロールによって供給される。供給ロールは磁性トナー層をその周面上に保持し、磁性トナー層を磁気記録媒体へ接触させて、磁気記録媒体の磁気潜像へ磁性トナーを供給し、付着させる。
【0006】
一方、磁性トナーを液体中に分散させた液体現像剤を用いた画像形成装置(いわゆる液体マグネトグラフィ)も検討されている(例えば、特許文献3、4参照)。このプロセスにおいては、トナーが液体中に含まれるため、高画質化のためにトナー粒径を小さくしてもトナークラウド等の問題が発生することはない。
【特許文献1】特開平6−4008号公報
【特許文献2】特開平9−156150号公報
【特許文献3】特公平5−87834号公報
【特許文献4】特開平5−188827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、より高い現像性を得ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、画像形成装置において、表面が撥水性を有する磁気潜像保持体と、磁性トナー及び水性媒体を含む液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、前記現像剤貯留手段内の磁性トナーを保持し、前記磁気潜像保持体へ供給する現像ベルトと、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記現像ベルトの内側に配置され、前記液体現像剤に一部浸漬されて、現像ベルト上に前記磁気トナーを保持させるマグネットロールと、前記マグネットロールと共に前記現像ベルトを張架し、前記磁気潜像保持体の表面と対面させる張架ロールと、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の画像形成装置において、前記マグネットロールの表面に周方向に沿って、N極とS極を交互に配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の画像形成装置において、前記張架ロールが磁力を有し、前記マグネットロールの、前記磁気潜像保持体の回転方向下流側に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、現像剤担持体としてロールを用いた場合と比較して、現像ニップ領域が広くなり、磁気潜像保持体の表面に磁性トナーを確実に付着させることができ、高い現像性が得られる。また、現像に十分な搬送量を確保できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、マグネットロールの磁力によって、現像ベルトに磁性トナーを確実に吸着させることができ、該現像ベルトで磁性トナーを確実に搬送することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、同極の磁石を周方向に沿って配置した場合と比較して、広い面積で現像ベルトに磁性トナーを吸着させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、現像性が高くなると、画像かぶりが生じやすくなる場合があるが、現像ニップ領域の下流側に磁力を有する張架ロールを配置することで、磁気潜像部以外に付着したかぶりトナーを吸着し、画像かぶりの無い現像が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る画像形成装置について説明する。
【0017】
まず、画像形成装置100の概要について説明する。
【0018】
図1及び図2(図1の現像領域を拡大図)に示すように、この画像形成装置100には、撥水性を有する磁気ドラム(磁気潜像保持体)10が備えられており、装置本体に対して回転可能に軸支されている。この磁気ドラム10の周囲には、磁気ドラム10の回転方向に沿って、磁気ヘッド12、現像装置14、転写装置16及び消磁装置18が順番に設けられている。
【0019】
磁気ドラム10は、磁気ヘッド12の各チャンネルのコイルに電流が流れることで該磁気ヘッド12の磁極先端部から漏洩磁束が生じて、表面が磁化される。これによって、磁気ドラム10の表面には、磁気潜像(磁気潜像部(ハッチング部)34)が形成される。
【0020】
現像装置14は、現像剤貯留部20と磁性トナー供給部22とに大別され、現像剤貯留部20には貯留槽21が設けられ、水性媒体中に磁性トナー24を分散させた液体現像剤23が貯留されている。
【0021】
一方、磁性トナー供給部22には、表面に複数のS極とN極が周方向に沿って交互に配置されたマグネットロール28が備えられており、該マグネットロール28の、磁気ドラム10の回転方向に沿った下流側には、かぶり防止ロール(張架ロール)30が配設されている。このかぶり防止ロール30とマグネットロール28には現像ベルト32が巻掛けられており、かぶり防止ロール30及びマグネットロール28によって、現像ベルト32が張架されている。
【0022】
そして、マグネットロール28の一部が現像ベルト32と共に液体現像剤23内に浸漬されるようになっており、現像ベルト32上に吸着された磁性トナー24は、磁気ドラム10方向へ搬送され、磁気ドラム10表面の磁気潜像部34は顕像化されトナー像26となる。
【0023】
ここで、磁気潜像部34以外の部分で磁気ドラム10の表面に付着している磁性トナー36は、かぶり防止ロール30によって現像ベルト32の表面に保持される。
【0024】
また、転写装置16は転写定着ロール38を備えており、磁気ドラム10に対してニップ形成するように配置されている。そして、磁気ドラム10上のトナー像26にタイミングを合わせて、磁気ドラム10と転写定着ロール38の間へ用紙40が送給される。この用紙40を磁気ドラム10側へ押圧することにより、磁気ドラム10上のトナー像が用紙40に転写され、定着される。
【0025】
なお、新しい画像形成を行なう場合には、磁気ヘッド12で磁気潜像を形成する前に、磁気ヘッド12と転写装置16の間に配置された消磁装置18によって、磁気ドラム10上の磁気潜像を完全に消去する。
【0026】
ここで、磁気ドラム10から用紙40へのトナー像の転写効率が100%未満の場合、転写後の磁気ドラム10上にトナー像26の一部分が残留することになる。このため、この場合は、消磁装置18の、磁気ドラム10の回転方向上流側に、磁気ドラム10上に残留したトナー像26を除去するためのクリーナを配設する。
【0027】
次に、本実施形態の画像形成装置の各構成を順次説明する。
【0028】
(磁気潜像保持体)
磁気ドラム(磁気潜像保持体)10の構成は、例えばアルミニウムなどの金属でできたドラム上に、Ni、Ni−Pなどの下地層をおよそ1〜30μmの厚さで形成し、この上にCo−Ni、Co−P、Co−Ni−P、Co−Zn−P、Co−Ni−Zn−Pなどの磁気記録層を0.1μm以上10μm以下程度の厚さで形成し、更にNi、Ni−Pなどの保護層を0.1μm以上5μm以下程度の厚さで形成する。下地層のメッキにピンホールなどの欠陥があると、磁気記録層にも欠陥ができてしまうので細密でむらのないメッキを行うことが好適である。
【0029】
メッキ以外にも、スパッタや蒸着などの方法もある。更に、下地層及び保護層については、非磁性であることが望ましい。各層の表面はテープ研磨などで表面精度を保つことが、磁気潜像を形成する磁気ヘッド12との間隙が精度良く維持する上で好適である。
【0030】
磁気記録層の膜厚は0.1μm以上10μm以下の範囲とすることが望ましく、磁気記録層の磁気特性は、保磁力が16000A/m以上80000A/m以下(200エルステッド以上1000エルステッド(Oe)以下)程度、残留磁束密度を100mT以上200mT以下(1000ガウス以上2000ガウス(G)以下)程度とすることが好適である。
【0031】
以上は、水平磁気記録式の場合の磁気ドラムの構成であるが、垂直磁気記録式の場合には、非磁性層の上にCo−Ni−Pなどの記録層を設けた構成としたり、該記録層の下に透磁率の高い軟磁性層を設けた構成としてもよく、いずれかに限定されるものではない。また磁気潜像保持体としては、本実施形態におけるドラム状のものに限られず、ベルト状に形成されたものでもよい。
【0032】
本実施形態では、撥水性を有する磁気ドラム10を用いる。ここで撥水性とは水をはじく性質のことを意味し、具体的には純水との接触角が70度以上であることをいう。本実施形態では磁気ドラム10の純水に対する接触角が、70度以上であることが望ましく、100度以上であることがより望ましい。接触角が70度に満たないと、後述する水性媒体を使用した液体現像剤23により現像を行っても、現像後に磁気ドラム10上に液体が残存したり画像かぶりが発生したりする場合がある。
【0033】
なお、上記磁気ドラム10表面の接触角は、接触角計(協和界面科学(株)製:CA−X)を用い、25℃、50%RHの環境下で、純水を磁気ドラム10の表面に3.1μl滴下し、15秒後の接触角を求めた。測定は端部、中央部で周方向に4点測定し、これらの平均値を接触角とした。
【0034】
磁気ドラム10の表面を上記好適な接触角を有する表面とするには、前記のようにして構成される磁気ドラム10表面に表面コートを行うことが望ましい。表面コートとしては、フッ素潤滑めっき、フッ素原子やシリコン原子を含有するポリマーを用いたコーティング等が挙げられる。フッ素潤滑メッキとは、無電解ニッケルめっきにフッ素樹脂(ポリ四弗化エチレン:PTFE)を複合・共析させた機能めっきであり、形成される皮膜中にはPTFE粒子が均一に析出しており無電解ニッケルめっきとPTFE樹脂の両特性を兼ね備える。
【0035】
また、前記フッ素原子やシリコン原子を含有するポリマーを使用したコーティングとしては、例えば、含フッ素環状構造を有するポリマー、フルオロオレフィンとビニルエーテルとの共重合体、光重合型フッ素樹脂組成物等を前記保護層表面に塗布してもよいし、該保護層表面にフッ素原子含有ポリマーをスパッタリングし全面を被覆してもよい。
【0036】
これらのうちでは、下層のめっき層との密着性や耐久性等の観点から、フッ素潤滑めっきが好適である。なお、上記フッ素潤滑めっきやフッ素樹脂コーティングは、前記保護層を形成した上に行ってもよいし、フッ素潤滑めっき等により形成した層をそのまま保護層としてもよい。
【0037】
表面コートにより形成される表面層の膜厚は0.1μm以上5μm以下とすることが望ましく、0.3μm以上3μm以下とすることがより望ましい。
【0038】
(磁気潜像形成手段)
磁気潜像形成装置(磁気潜像形成手段)は、基本的には磁気ヘッド12とその駆動回路から成る。磁気ヘッド12には、おもにフルライン型磁気ヘッドとマルチチャンネル型磁気ヘッドがあり、フルライン型磁気ヘッドの場合には磁気ヘッド12を走査する必要はないが、マルチチャンネル型磁気ヘッドの場合には磁気ドラム10に対して磁気ヘッド12を走査する必要がある。走査の方法にはシリアル走査とヘリカル走査とがあり、ヘリカル走査の方は潜像形成工程だけ特別に磁気ドラム10の回転速度を変更してやれば記録速度を速くすることが可能である。
【0039】
一方、フルライン型磁気ヘッドの場合としては、例えば解像度600dpiとするとA4サイズの紙の幅方向の記録幅をカバーするためには500チャネル程度のヘッドが必要である。それらを並べてフルライン化すればヘッドを走査する必要がなく極めて高速な記録が可能になる。また上記フルライン化するためには、ヘッドコアとヘッドコアとの重ね合わせが必要になるが、高解像度になるにしたがいトラックピッチも狭くなるためヘッドコアに挿入されるコイルも可能な限り薄いもの、例えば平面状のシートコイルが用いられる。
【0040】
ここで、磁気ヘッド12の磁極先端部から漏洩磁束が生じることで、磁気ドラム10が磁化され、磁気潜像が形成されるが、磁気ヘッド12からの出力は、磁気ドラム10における磁気記録層の保磁力の2〜3倍必要である。ここで形成した磁気潜像は消磁装置18で消去しない限り消えることはなく、現像、転写、定着、クリーニングの各工程を繰り返せばマルチコピー機能を有する。また、磁気潜像は湿度の影響を受けにくいため、静電式に比べ環境安定性に優れている。
【0041】
(現像装置)
図2に示すように、現像装置14は現像剤貯留部20と磁性トナー供給部22とに大別され、現像剤貯留部20では、貯留槽21内に磁性トナー24と水性媒体とを含む液体現像剤23が貯留されるが、該貯留槽21内の隅部には、撹拌部材25が配設されている。この撹拌部材25が所定の回転速度で撹拌し続けることで、液体現像剤23中の磁性トナー24の濃度のばらつきが低減される。
【0042】
また、貯留槽21には、トナー濃度検知装置27が配設されている。このトナー濃度検知装置27は図示しない制御装置と接続されており、液体現像剤23のトナー濃度が所定の範囲内となるように管理されるようになっている。
【0043】
一方、磁性トナー供給部22に備えられたマグネットロール28は、現像ベルト32の搬送速度に同期させて回転するようになっており、マグネットロール28の表面には、複数のS極とN極が周方向に沿って交互に配置されている。
【0044】
例えば、隣り合う磁石が互いに同極の場合、互いに反発し合う領域では、マグネットロール28から離れる方向へ磁力線が形成され、磁性トナー24が現像ベルト32に付着しない。しかし、隣り合う磁石を互いに異極とすることで、マグネットロール28のN極から出てS極へ戻るように磁力線が形成されるため、より広い面積で磁性トナー24を現像ベルト32へ吸着させることができる。
【0045】
マグネットロール28の磁力により現像ベルト32上吸着された液体現像剤23は、その表面張力により現像ベルト32に担持され、現像ベルト32の搬送とともに移動し、現像ニップ領域へ搬送される。より多くの液体現像剤23を現像ニップ領域へ搬送するためには、少なくとも表面に発泡ウレタン等の親水性材料が配されていることが望ましい。
【0046】
また、かぶり防止ロール30の表面にもマグネットロール28と同様、複数のS極とN極が周方向に沿って交互に配置されている。これにより、磁気潜像部34以外の部分で磁気ドラム10の表面に付着している磁性トナー36を現像ベルト32上へ吸着させることができることとなるが、かぶり防止ロール30の磁力は、磁気ドラム10上の磁気潜像部34の磁力よりも小さいものとする。
【0047】
なお、かぶり防止ロール30は、マグネット式のロールに限るものではない。磁気潜像部34以外の部分で磁気ドラム10の表面に付着している磁性トナー36の付着力よりも強く、磁気潜像部34で磁気ドラム10の表面に付着している磁性トナー24の付着力よりも小さい力を付与することができればよい。
【0048】
例えば、図示はしないが、マグネット式のロールの代わりに微振動可能なロールを用いてもよい。さらに、現像ベルト32の搬送速度を変え、現像ベルト32と磁気ドラム10の回転速度差をつけることにより、現像ベルト32と磁気ドラム10との間で摩擦力が得られるようにしてもよい。
【0049】
(液体現像剤)
図1に示すように、本実施形態では、磁気現像のための現像剤として、水性媒体中に磁性トナー24を分散させた液体現像剤23を用いるが、ここで、上記水性媒体とは、水を50質量%以上含む溶媒を意味する。また、「水」とは、蒸留水、イオン交換水、超純水等、精製した水を意味する。
【0050】
液体現像剤23を用いた、いわゆる液体マグネトグラフィでは、通常、現像直後の像保持体上のトナー像は、多量の余剰現像液を含むことから、用紙等の記録媒体へのトナー画像の転写の前に乾燥工程を設けて、余剰現像液を除去しなければならない場合がある。
【0051】
しかし、本実施形態では、液体現像剤23における分散媒として水性媒体を用いることにより、水が水素結合により表面張力が大きいため、撥水性の磁気ドラム10と組み合わせることで、現像の際に液体現像剤23が磁気ドラム10と接触しても分散媒である液体が磁気ドラム10に転移しにくく、液体を磁気ドラム10上に残さない状態でトナー像を用紙40に転写させることができる。したがって、磁気ドラム10上の残留溶媒を除去するためのスクイズロール等が不要であり、トナー像が転写された用紙40もほとんど乾燥させる必要がない。
【0052】
さらに、現像の際には表面張力の大きい水性媒体は磁気ドラム10表面にほとんど濡れ広がることはなく、一方現像剤中に高い易動性を有して均一に分散している磁性トナー24は、磁気ドラム10との接触と同時に磁気潜像部34のみに磁力で転移するため、画像かぶりがほとんど発生しにくい現像環境をつくり出される。
【0053】
なお本明細書において、前記分散等に関する「均一」とは、系内に磁性粉、重合体粒子等の1次粒子が十数個以上集まった程度の大きさの凝集体が存在しないことをいう。以下もこれに準ずる。
【0054】
本実施形態に適用される画像形成プロセスは、いわゆる電子写真プロセスや、誘電体上にイオンなどで静電潜像を形成するプロセス(イオノグラフィ)、帯電した誘電体にサーマルヘッドの熱により画像情報に応じて静電潜像を形成するプロセスなど、静電潜像を利用するものではなく、像保持体上に磁気潜像を形成してトナー像を形成するプロセスであり、その構成は、現像剤として水性媒体を含む液体現像剤、像保持体として撥水性を有する像保持体を用いる以外特に制限されない。
【0055】
一方、磁性トナーとしては、一般的に高分子化合物中に磁性粉を含む磁性重合体粒子を用いる。なお、上記磁性重合体粒子とは、磁性粉が重合体中に分散されてなる磁性粉分散粒子で構成されるものである。
【0056】
−高分子化合物−
高分子化合物としては従来から磁気記録装置に使用されている樹脂を使用することができる。具体的には、スチレン及びその置換体の単独重合体及びそれらの共重合体樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルと他のビニル系モノマーとの多元共重合体樹脂、スチレンと他のビニル系モノマーとのスチレン系共重合体樹脂、及び上記各樹脂の一部を架橋したものが使用できる。更にはポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は指環族炭化水素樹脂、石油樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ワックス系樹脂等の単体又はこれらの混合体などが挙げられる。
【0057】
前記のように、磁性トナーとしての前記磁性重合体粒子は水性媒体中に分散されるが、磁性重合体粒子を水系の分散媒に均一、安定に分散させることは、高分子化合物が疎水性であること、磁性重合体粒子表面が通常の高分子粒子とは異なる特性を有していることから、通常の重合体粒子の構成では容易になし得ない場合がある。
【0058】
本実施形態では、上記観点から、特に以下のように重合体を構成する単量体種や組成を制御して得られた高分子化合物を用いることにより、磁性重合体粒子の水性媒体に対する良好な分散性が得られ、前記撥水性を有する磁気潜像保持体に対してより優れた現像性等が発揮される。以下、本実施形態に好適に用いられる高分子化合物の構成について説明する。
【0059】
前記高分子化合物としては、エチレン性不飽和単量体の重合体を含み、該エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体及び疎水性単量体を含み、かつ、前記重合体の水酸基量が0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下であるものを用いることが望ましい。
【0060】
本実施形態における液体現像剤は、前記のように磁性トナー粒子(磁性重合体粒子)を水性媒体中に分散させて構成される。したがって、磁性トナー粒子として、一定以上の磁力を保持しつつ水性媒体中への良好な分散性を得るためには、粒子表面に水酸基を存在させることが有効である。そして、このためには粒子を構成する重合体の構成成分が水酸基を有していることが望ましい。
【0061】
本実施形態における高分子化合物として好適に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合体は、水酸基を有する親水性単量体及び疎水性単量体の共重合比により、水性媒体における分散性と重合体粒子の安定性との視点、さらには、重合体粒子に一定量含まれる磁性粉の含有量との関係から、重合体の水酸基量を最適の範囲としている。
【0062】
前記水酸基量は、磁性粉の含有量によって異なるので、磁性粉を除いた重合体成分の水酸基量として定義されるものであり、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下であることが望ましく、0.2mmol/g以上4.0mmol/g以下であることがより望ましく、0.3mmol/g以上3.0mmol/g以下であることがさらに好適である。
【0063】
水酸基量が0.1mmol/gに満たないと、重合体粒子の水性媒体への分散性が悪くなる場合がある。5.0mmol/gを超えると、水中での重合体粒子の膨潤性が大きくなり操作性が悪くなる場合がある。
【0064】
なお上記水酸基量は、一般的な滴定法により求めることができる。例えば、上記ポリマーに無水酢酸のピリジン溶液等の試薬を一定量加え、加熱して、水を加えて加水分解し、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、該上澄みをフェノールフタレイン等の指示薬を用いて、エタノール性水酸化カリウム溶液等で滴定することにより、その水酸基量を求めることができる。
【0065】
前記エチレン性不飽和単量体とは、ビニル基などのエチレン性不飽和基を有する単量体をいう。そして、下記親水性単量体及び疎水性単量体ともに本実施形態におけるエチレン性不飽和単量体に含まれる。
【0066】
上記水酸基を有する親水性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ヘキシルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸エステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0067】
尚ここで、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表す表現であり、以下においてこれに準ずる。
【0068】
これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一つを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、重合反応の制御性等の観点から好ましい。
【0069】
また、本実施形態の磁性重合体粒子は重合体中に水酸基に加えてカルボキシル基を有していることが望ましい。この場合には、エチレン性不飽和単量体として、さらにカルボキシル基を有する単量体を用いることが望ましい。
【0070】
本実施形態で用いるカルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリロイルオキシエチルモノフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノヘキサヒドロフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノマレエートおよびメタクリロイルオキシエチルモノスクシネートなどを挙げることができる。
【0071】
これらの中では、メタクリロイルオキシエチルモノフタレートを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、重合体粒子中の磁性粉の分散、重合反応の制御性等の観点から好ましい。
【0072】
前記疎水性のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;炭素数1〜18(より好適には、2〜16)のアルキル基若しくはアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等);炭素数1〜12(より好適には、2〜10)のアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エキトシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アリクレート、n−ブトキシメチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等);アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート等);アクリロニトリル、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0073】
これらの中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましく、更には、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0074】
前記親水性単量体と共重合可能な疎水性単量体の含有量としては、全単量体成分中、1質量%以上99質量%以下であることが好ましく、5質量%以上95質量%以下であるこことがより好ましい。特に、エチレン性不飽和単量体として前記水酸基を有する単量体に加えてメタクリロオキシエチルモノフタレートなどのカルボキシル基を有する単量体を用いる場合には、疎水性単量体の含有量は、全単量体成分中、20質量%以上99質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好適である。
【0075】
含有量が1質量%未満では、重合体中の水酸基量が多くなりすぎ、重合体の作製の際に均一な重合ができなくなる場合があり、99質量%を超えると、重合体として水酸基による親水性の効果が得られなくなる場合がある。
【0076】
その他の単量体としては、後述する水性媒体に分散される反応性の混合物(前記エチレン性不飽和単量体等を含むもの)には、必要に応じて架橋剤を混合することができる。単量体混合液中に架橋剤を添加することにより、重合中の凝集が抑制され、分散安定性が確保される。
【0077】
用いる架橋剤としては、公知の架橋剤を選択して用いることができ、好適なものとしては、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより望ましく、更には、ジビニルベンゼンが特に好適である。
【0078】
さらに、本実施形態における高分子化合物には定着性向上の観点から非架橋樹脂を含有させることができる。非架橋樹脂としては、熱、紫外線、電子線等の外部エネルギー、あるいは溶剤蒸気、重合体からの溶剤揮発等で紙、フィルム等の被定着媒体に粒子を定着させる重合体であれば特に制限されない。
【0079】
具体的には、例えばスチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;などの単独重合体又は共重合体を例示することができる。
【0080】
−磁性粉−
一方磁性粉としては、磁性を示すMO・FeまたはM・Feの一般式で表されるマグネタイト、フェライト等を好ましく用いることができる。ここで、Mは2価あるいは1価の金属イオン(Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、Cd、Li等)であり、Mとしては単独あるいは複数の金属を用いることができる。例えばマグネタイト、γ酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトの如き鉄系酸化物を挙げることができる。中でも安価なマグネタイトをより好ましく用いることができる。
【0081】
また、他の金属酸化物として、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Sn、Ba、Pb等の金属を単独あるいは複数用いた非磁性の金属酸化物および上記磁性を示す金属酸化物を使用できる。例えば非磁性の金属酸化物として、Al、SiO、CaO、TiO、V、CrO、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、ZnO、SrO、Y、ZrO系等を使用することができる。
【0082】
後述する疎水化処理前の磁性粉の平均一次粒子径は、0.02μm以上2.0μm以下の範囲であることが好ましい。磁性粉の平均一次粒子径が上記範囲にないと、磁性粉が凝集し易くなり、重合性単量体中への均一な分散が難しくなる場合がある。
【0083】
前記磁性粉はその表面が疎水化処理されていることが望ましい。疎水化処理の方法としては特に制限されず、各種カップリング剤、シリコーンオイル、樹脂などの疎水化剤を磁性粉の表面に被覆処理すること等により行うことができるが、これらの中ではカップリング剤により表面被覆処理することが好ましい。
【0084】
磁性粉の表面は基本的に親水性であるため、疎水化処理を行うことにより前記疎水性単量体に対する親和性を高めることができ、高分子化合物中での親水性単量体及び疎水性単量体の相溶性の向上に伴い、磁性粉の粒子中での分散均一性を高めることができる。
【0085】
磁性粉の含有量としては、求める磁力によって決定されるのであるが、本実施形態においては、磁性重合体粒子構成成分の総量に対して2質量%以上50質量%以下とすることが望ましく、4質量%以上30質量%以下とすることがより好適である。含有量を上記範囲とすることにより、十分な磁力が得られ、また重合体粒子として水性媒体に対する分散安定性を高めることができる。
【0086】
−その他の成分−
本実施形態の磁性重合体粒子には、更にポリマーの着色を目的とした染料、有機顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどを含有させることができる。その場合には磁性粉が分散された前記単量体等の混合物に前記各添加剤を直接混合することもできるが、例えば、特に有機顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料を混合する場合は、例えば前記非架橋樹脂にあらかじめロールミル、ニーダー、エクストルーダー等の公知の方法で混合分散し、これを前記重合性単量体等の混合物に混合することが望ましい。
【0087】
以上の各単量体等を含む磁性重合体粒子の作製方法としては、例えば、まず前記エチレン性不飽和単量体、重合開始剤及びその他の必要な成分とを混合して単量体等の混合液を作製する。混合の方法は特に制限されない。
【0088】
また、上記混合液への磁性粉の分散には公知の方法が適用できる。すなわち、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用できる。なお、あらかじめ単量体成分を別途重合し、得られた重合体に磁性粉を分散させる場合には、ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー、エクストルーダー等の混練機が使用できる。
【0089】
本実施形態に好適に用いられる磁性重合体粒子を得るには、公知の方法が利用でき、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、シード重合法等が好適に用いられる。さらに、膜乳化法として知られる乳化方法を使って懸濁重合することもできる。
【0090】
このようにして得られた磁性重合体粒子は、個数平均粒径が0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、1.0μm以上8.0μm以下であることがより好ましい。個数平均粒径が0.5μmに満たないと、小粒径過ぎて取り扱いが困難になる場合があり、5μmを超えると、画像形成材料として用いたときに高画質が得られない場合がある。
【0091】
また、前記高分子化合物がカルボキシル基を有する場合には、カルボキシル基量が0.005mmol/g以上0.5mmol/g以下であることが望ましい。カルボキシル基量が前記範囲にあると、水酸基に比べて少ない官能基数であっても良好な水性媒体への分散性、膨潤抑制効果が得られ、他の官能基が存在する場合の変動に対してもこれらの特性を維持できる。
【0092】
カルボキシル基量は、0.008mmol/g以上0.3mmol/g以下がより望ましく、0.01mmol/g以上0.1mmol/g以下であることがさらに好適である。
【0093】
上記カルボキシル基量は一般的な滴定法により求めることができる。例えば、上記高分子化合物に水酸化カリウムのエタノール溶液等の試薬を加えて中和反応を行い、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、過剰の水酸化カリウムが含まれる該上澄みを自動滴定装置を用いて、イソプロパノール塩酸溶液等で滴定することにより、そのカルボキシル基量を求めることができる。
【0094】
本実施形態における液体現像剤は、前記の磁性重合体粒子を水などの水性媒体中に分散させた粒子分散体である。
【0095】
水性媒体としては、水、若しくは水にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を加えたものが好適に用いられる。この中でも水単独が特に好ましい。水溶性有機溶媒を添加する場合の添加量は、懸濁させる単量体の性状にもよるが、全溶媒に対し30質量%以下が望ましく、10質量%以下がより好適である。
【0096】
液体現像剤の製造に当たっては、通常の水系の粒子分散体に使用することのできる各種副資材、例えば、分散剤、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、帯電制御剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等を併用してもよい。
【0097】
具体的に、上記界面活性剤としては、例えばアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等、いずれの公知の界面活性剤も使用可能である。また、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント;等も挙げられる。
【0098】
前記分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体であれば有効に用いることができる。例えば、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられ、これら共重合体は、ランダム、ブロックおよびグラフト共重合体等いずれの構造でもあってもよい。
【0099】
また、本実施形態において、蒸発性制御や界面特性制御の目的で、水溶性有機溶媒の使用が可能である。水溶性有機溶媒としては、水に添加したときに2相に分離しない有機溶剤であって、例えば一価もしくは多価のアルコール類、含窒素溶媒、含硫黄溶媒、その他その誘導体等が挙げられる。
【0100】
さらに、水性媒体に導電率、インクのpHの調整等を目的として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等の添加が可能である。
【0101】
また、その他に、必要に応じて、防カビ、防腐、防錆等を目的として安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸等を添加してもよい。また、酸化防止剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、キレート化剤等も添加してもよい。
【0102】
本実施形態において、液体現像剤における磁性重合体粒子の分散粒子径は、平均粒子径で0.1μm以上20μm以下とすることが望ましく、1μm以上8μm以下の範囲とすることが望ましい。なお、上記磁性重合体粒子の分散平均粒子径は、コールターカウンター マルチサイザー3(ベックマン・コールター(株))により求めた体積平均粒径である。
【0103】
なお、液体現像剤中の磁性トナーとして、前記本実施形態に好適に設計された磁性重合体粒子を用いた場合には、前述のように粒子中で磁性粉が均一に分散しているため、粒子表面にほとんど磁性粉が存在しない。また、粒子表面に水酸基を有するため、水性媒体に対して良好な分散性を示す。
【0104】
このため、上記液体現像剤を用いた場合には、液中でのミクロな表面張力のばらつきがなく、しかも現像時の磁力に対する粒子の移動性も粒子間でばらつきが小さいため、前述の磁気ドラム表面の撥水特性に基づく現像後の磁気ドラム上への液体の付着や、画像かぶりの発生が、より効率的に低減される。
【0105】
前記液体現像剤の製造は、以下の手順により行うことができるが、これに限られるものではない。
【0106】
まず、主溶媒の水と前記各添加剤とを含む分散媒をマグネチックスターラー等を用いて調製し、これに前記磁性重合体粒子を分散させる。分散には公知の方法が適用できる。すなわち、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用できる。また、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ分散させる方法、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で分散する方法、超音波によって分散する方法等が挙げられる。
【0107】
液中で磁性重合体粒子同士が単独の分散状態になったことを分取した分散液の顕微鏡観察等により確認し、その後、防腐剤等の添加物を加えて溶解していることを確認した後、得られた分散液を、例えば孔径100μmの膜フィルターを用いて濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去することにより画像形成用記録液としての液体現像剤が得られる。
【0108】
本実施形態における液体現像剤の粘度は、用いる画像形成システムにもよるが、1mPa・s以上500mPa・s以下が好ましい。液体現像剤の粘度が1mPa・s未満の場合、磁性重合体粒子の量や添加剤の量が十分でないことから十分な画像の濃度が得られない場合がある。また、液体現像剤の粘度が500mPa・sより大きいと、粘度が高すぎるためハンドリングが難しくなったり、現像性が低下したりする場合がある。
【0109】
(転写装置)
転写方式としては、一般に静電転写方式、圧力転写方式、これらを併用した静電圧力方式などがあるが、前記のように、本実施形態ではトナー粒子が電荷を有していないため、静電転写方式や静電圧力方式は使用できない。一方、前記圧力転写方式は、通常は磁気ドラム10及び転写媒体間の圧力により、トナー像を塑性変形させながら転写媒体の表面に付着させ転写するものであり、シアリング転写と併用することができる。
【0110】
図1における磁気ドラム10を挟んで現像装置14の反対側には、転写定着ロール38が磁気ドラム10に対してニップ形成するように配置されており、磁気ドラム10上のトナー像26にタイミングを合わせて、用紙40が磁気ドラム10及び転写定着ロール38間のニップへ送給される。
【0111】
転写定着ロール38は、例えば、ステンレス基体、シリコーンゴム層、フッ素ゴム層により構成されており、ニップを通過する用紙40を磁気ドラム10に押圧することにより、磁気ドラム10上のトナー像が用紙40に転写される。
【0112】
本実施形態では、磁気ドラム10から用紙40にトナー像26が転写されると同時に、該トナー像26が用紙40に定着される構成となっている。すなわち、用紙40が転写定着ロール38と磁気ドラム10によるニップ領域を通過する際、転写定着ロール38により用紙40が磁気ドラム10から押圧され、用紙40にトナー像が転写されると共に、これにより、トナー像を構成するトナー粒子が軟化すると共に用紙40の繊維中に浸潤する。
【0113】
用いるトナー粒子によっては、この状態でも用紙40への固定が可能であるが、定着が十分でない場合には、転写定着ロール38に加熱手段を設け、該転写定着ロール38を加熱することで、トナー像が溶融し用紙40の繊維の中まで入り込み固着して定着像41となる。この状態では、用紙40を折り曲げたり、粘着テープを貼った後剥しても定着像41が剥がれることはない。
【0114】
なお、本実施形態では用紙40への転写と同時に定着を行っているが、転写工程と定着工程とを別々として、転写を行った後に定着を行ってもよい。
【0115】
(消磁装置)
消磁装置18には、永久磁石式と電磁石式との2通りがある。永久磁石式の場合には、磁気ドラム10の円周方向に磁化して局所的に磁束が漏洩しないようにするもので、電力等のエネルギーが不要で安価である。ただし、磁気潜像を消去しない場合には、消磁装置18を磁気ドラム10に対して移動させ磁気的な距離を大きくして消去磁界を弱くする必要がある。
【0116】
これに対して電磁石式は、ヨークとコイルとから成り電流を流す必要があるが、磁気潜像を消去する必要がない場合には電流を切ることにより消去磁界がゼロになるため制御が比較的自由である。
【0117】
本実施形態では、前記永久磁石式及び電磁石式のいずれも用いることができる。
【0118】
(作用・効果)
まず、この画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
【0119】
図1に示す磁気ヘッド12が、例えば図示しない情報機器と接続され、該情報機器から送られた2値化された画像データを受ける。磁気ヘッド12は、磁気ドラム10の側面上を走査しながら磁力線を放出することによって、磁気ドラム10に磁気潜像部34を形成する。なお、図1では磁気潜像部34は磁気ドラム10における斜線を付した部分で示される。
【0120】
次に、現像装置14では、マグネットロール28によって、現像剤貯留部20内の磁性トナー24が矢印方向に回転する現像ベルト32に吸着され、現像ベルト32で搬送される。そして、マグネットロール28とかぶり防止ロール30との間で磁気ドラム10上の磁気潜像部34に供給される。これによって磁気潜像部34は顕像化されてトナー像26となる。
【0121】
現像されたトナー像26は、矢印方向に回転する磁気ドラム10によって搬送され、転写定着ロール38との接触位置において用紙40に転写され、同時に定着される。
【0122】
一方、新しい画像形成を行なう場合、消磁装置18によって、磁気ドラム10に形成された磁気潜像部34が消去される。この消磁装置18によって磁気ドラム10は画像形成前の磁性層の帯磁状態にばらつきがない状態に戻される。
【0123】
以上の動作を繰返すことによって、前記情報機器から次々に送られてくる画像を連続的に短時間で形成する。なお、上記画像形成装置100に備えられる磁気ヘッド12、現像装置14、転写定着ロール38、及び消磁装置18は、すべて磁気ドラム10の回転速度と同期をとって動作している。
【0124】
ところで、本実施形態では、磁性トナー供給部22に現像ベルト32を用いている。この現像ベルト32によって、現像剤貯留部20内の磁性トナー24を磁気ドラム10に供給するようにしている。
【0125】
このように、現像ベルト32を用いることで、現像剤担持体としてロールを用いた場合と比較して、現像ニップ領域(磁性トナー24を現像ベルト32に供給可能な領域)が広くなる。これにより、磁気ドラム10の表面に磁性トナー24を確実に付着させることができ、高い現像性が得られる。また、現像に十分な搬送量を確保できる。
【0126】
また、現像ベルト32の内側に、マグネットロール28を配設することで、マグネットロール28の磁力によって、現像ベルト32に磁性トナー24を確実に吸着させることができ、該現像ベルト32によって磁性トナー24を確実に搬送することができる。
【0127】
そして、このマグネットロール28の表面に複数のS極とN極を周方向に沿って交互に配置することで、同極の磁石を周方向に沿って配置した場合と比較して、より広い面積で磁性トナー24を現像ベルト32へ吸着させることができる。
【0128】
さらに、現像ベルト32を張架するロールの表面に複数のS極とN極を周方向に沿って交互に配置してかぶり防止ロール30とし、マグネットロール28の、磁気ドラム10の回転方向下流側に配置している。
【0129】
現像性が高くなると、画像かぶりが生じやすくなる場合があるが、現像ニップ領域の下流側にかぶり防止ロール30を配置することで、磁気潜像部34以外に付着した磁性トナー36を現像ベルト32に吸着させることができ、画像かぶりの無い現像が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の要部を拡大した拡大図である。
【符号の説明】
【0131】
10 磁気ドラム(磁気潜像保持体)
12 磁気ヘッド(磁気潜像形成手段)
20 現像剤貯留部(現像剤貯留手段)
22 磁性トナー供給部
23 液体現像剤
24 磁性トナー
28 マグネットロール(現像剤供給手段)
30 かぶり防止ロール(張架ロール、現像剤供給手段)
32 現像ベルト(現像剤供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が撥水性を有する磁気潜像保持体と、
磁性トナー及び水性媒体を含む液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
前記現像剤貯留手段内の磁性トナーを保持し、前記磁気潜像保持体へ供給する現像ベルトと、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像ベルトの内側に配置され、前記液体現像剤に一部浸漬されて、現像ベルト上に前記磁気トナーを保持させるマグネットロールと、
前記マグネットロールと共に前記現像ベルトを張架し、前記磁気潜像保持体の表面と対面させる張架ロールと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記マグネットロールの表面に周方向に沿って、N極とS極を交互に配置したことを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記張架ロールが磁力を有し、前記マグネットロールの、前記磁気潜像保持体の回転方向下流側に配置されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−92941(P2009−92941A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263477(P2007−263477)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】