説明

画像形成装置

【課題】定着装置の近傍の部品である送風手段に水滴が付着することにより発生する不具合を防止することができるエア吹きつけ装置を具備した画像形成装置を提供すること。
【解決手段】転写後の転写材を第1定着部材と第2定着部材とで形成されるニップ部を介して搬送しながら加熱処理する定着装置と、エア吹きつけ装置と、を有する画像形成装置において、エア吹きつけ装置は、送風手段と、送風手段の駆動により発生された空気流を定着装置のニップ部を通過した転写材に向けて吹きつける吹きつけダクトと、吹きつけダクトと連通可能に接続され、送風手段により送り出された空気を吹きつけダクト内部に導く接続ダクトと、吹きつけダクトと接続ダクトとの連通状態と、非連通状態とを切り替える切り替え部材と、を備え、切り替え部材は、送風手段の駆動時には連通状態をとり、非駆動時には非連通状態をとる、ことを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電子写真方式を用いてトナー画像を作製する形式の複写機、プリンタ、あるいは複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、感光体ドラムの表面に帯電、露光、現像処理を施して原稿あるいは画像データに従ったトナー画像を作製し、次いで、トナー画像を用紙等の転写材に転写するか、一度、中間転写体に転写した後に転写材に二次転写する画像形成装置はよく知られている。
【0003】
斯様な画像形成装置には、例えば、加熱源を内蔵した第1定着ローラと、加熱源は内蔵せず、前記第1定着ローラと圧接しながら回転する第2定着ローラとを有する定着手段(定着装置)が備えられている。そして、両定着ローラにより転写後の転写材をニップ部でニップ(挟む)しながら搬送と同時に加熱、加圧作用を転写材に付与して、トナー画像を転写材に定着させる。
【0004】
しかしながら、転写材を挟持、搬送しながら加熱、加圧作用を付与する構成とした定着手段の場合、環境条件あるいは転写材の斤量や種類等により、転写材が定着手段からうまく分離しない場合がある。そのため、従来は定着手段の出口側に適宜の分離手段を配置していた。
【0005】
分離手段(分離装置)としては、樹脂またはフィルムからなる分離爪を因子とした構成が考えられるが、近年、有用な手段としてエア分離手段が提案され、実施されるに至っている。
【0006】
エア分離手段を用いる第1の提案は、例えば、定着ローラ等の回転体の下流であって、当該回転体の表面に対向するように剥離案内板を近接配置させる。そして、回転体の表面と剥離案内板とで形成された間隙に向けてパルス状の圧搾空気を吐出させる方法である(例えば、特許文献1参照)。この方法は、定着ローラ等の回転体やトナー画像に損傷を与えることがなく、また、圧搾気体流が前述した間隙で整流され、圧搾気体の利用効率が高いので圧搾気体の吐出を連続的なものとせずにパルス状にすることができる。
【0007】
また、第2の提案は、定着手段の下流側近傍に剥離案内板を近接配置させ、転写材の先端が転写手段のニップ部を通過する時間においては、定着手段を構成する回転体表面と剥離案内板とで形成された間隙から高い圧力の空気を吹きつける。また、それ以外の時間には低い圧力の空気を吹きつける方法である(例えば、特許文献2参照)。この方法は、定着ローラ等の回転体の損傷を与えることがない。また、吹きつけた空気はニップにより遮られ、例えば、定着ローラの軸方向に沿って流れるので、排紙部に滞留する高湿度の空気を定着装置外に排出でき、排紙部における露結も除去できる。結果として、定着装置およびその近傍の部品に水滴が付着する露結が記録材に付着して画質を低下させることから解放されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−212954号公報
【特許文献2】特開2007−86132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、定着装置の近傍の部品に水滴が付着することを防止するためには、記録材の分離時以外の時間においてコンプレッサ等の送風手段から電磁弁を介して制御された低い圧力の空気を吹きつける必要がある。換言すれば、連続的定着処理が行われている間中、また、最終の定着処理が終わってから所定時間の間、(即ち、排紙部における滞留空気が装置外に排出される間)、送風手段がノズルを介して空気を吹きつける必要があり、エネルギーの有効活用という点で改善の余地がある。本願発明は、送風手段が空気を吹きつけ続けなくとも、定着装置の近傍の部品である送風手段に水滴が付着することにより発生する不具合を防止することができるエア吹きつけ装置を具備した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明に係わる画像形成装置は下記の構成要件によって達成することができる。
【0011】
1.像担持体と、
前記像担持体上に形成されたトナー画像を転写材に転写する転写部材と、
転写後の転写材を第1定着部材と第2定着部材とで形成されるニップ部を介して搬送しながら加熱処理する定着装置と、
エア吹きつけ装置と、
を有する画像形成装置において、
前記エア吹きつけ装置は、
送風手段と、
前記送風手段の駆動により発生された空気流を前記定着装置のニップ部を通過した転写材に向けて吹きつける吹きつけ部を有する吹きつけダクトと、
前記吹きつけダクトと連通可能に接続され、前記送風手段により送り出された空気を前記吹きつけダクト内部に導く接続ダクトと、
前記吹きつけダクトと前記接続ダクトとが連通する連通状態と、前記吹きつけダクトと前記接続ダクトとが連通しない非連通状態とを切り替える切り替え部材と、
を備え、
前記切り替え部材は、前記送風手段の駆動時には前記連通状態をとり、送風手段の非駆動時には前記非連通状態をとる、
ことを特徴とする画像形成装置。
【0012】
2.前記吹きつけダクトは、前記吹きつけ部よりも上方に該吹きつけ部から進入する空気を排出する排出部を有する、
ことを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0013】
3.前記切り替え部材は、前記送風手段の駆動時には、前記連通状態をとるとともに、前記排出部を塞ぐ、
ことを特徴とする前記2に記載の画像形成装置。
【0014】
4.前記接続ダクトと前記吹きつけダクトは、前記接続ダクトと前記吹きつけダクトとの連通部位にて、前記送風手段の駆動により発生された空気流が水平方向に流れるように配置されている、
ことを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0015】
5.前記吹きつけダクトの吹きつけ部から進入し、前記排出部から排出される空気を前記画像形成装置の外部に導くように、前記吹きつけダクトに接続された排出ダクトを備える、
ことを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0016】
6.前記吹きつけダクトと前記排出ダクトとは、前記排出部から排出された空気が前記吹きつけダクトと前記排出ダクトとの境界を鉛直方向に流れるように配置されている、
ことを特徴とする前記5に記載の画像形成装置。
【0017】
7.前記切り替え部材を回転可能に支持する支持部材と、
前記吹きつけダクトと前記接続ダクトを前記非連通状態に保つ方向に前記切り替え部材を付勢する弾性部材と、を備え、
前記切り替え部材は、前記送風手段の駆動により発生された空気流により回転されて、前記連通状態をとる、
ことを特徴とする前記1から6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0018】
8.前記切り替え部材を駆動する駆動部材と、
前記駆動部材を駆動制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は前記送風手段の動作状態に基づいて前記駆動部材を制御する、
ことを特徴とする前記1から6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0019】
本願発明は、送風手段の非駆動時には切り替え部材が送風手段への水滴の付着を妨げるので、送風手段が空気を吹き続けなくとも、送風手段に水滴が付着することにより発生する不具合を防止することができるエア吹きつけ装置を具備した画像形成装置を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】デジタルカラー複写機からなる画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】定着手段の一構成を示す図である。
【図3】送風手段として送風ファンを用いたときの定着手段の排紙側近傍の雰囲気により生じる不具合について説明するための模式図である。
【図4】エア吹きつけ装置の第1の実施の形態を概念的に示す説明用の図である。
【図5】エア吹きつけ装置の第2の実施の形態を概念的に示す説明用の図である。
【図6】エア吹きつけ装置の第3の実施の形態を概念的に示す説明用の図である。
【図7】エア吹きつけ装置の第4の実施の形態を概念的に示す説明用の図である。
【図8】エア吹きつけ装置の第5の実施の形態を概念的に示す説明用の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本願発明に係わる実施の形態について図面を基に説明する。
【0022】
図1は、デジタルカラー複写機からなる画像形成装置の構成を示す概略図である。
【0023】
図に示す画像形成装置Hは、上部に自動原稿送り装置1を有し、内部に画像読み取り部2、画像形成部3、ベルトユニット4のためのベルト設置部、給紙部5、反転排紙・再給紙部6、反転搬送手段であるADU7および定着装置9を有している。
【0024】
自動原稿送り装置1は、原稿載置台101、原稿分離手段103、原稿搬送部105、原稿排紙手段107、原稿排紙台109、および、原稿反転手段111を有している。原稿載置台101上の原稿(不図示)は、原稿分離手段103によって1枚ずつ分離され、原稿搬送部105を介して画像読み取り位置に向けて搬送される。原稿読み取り位置は原稿搬送部105の下方部に設けられており、画像読み取り部2を構成するスリット201を介して原稿の画像が読み取られ、読み取られた原稿は原稿排紙手段107によって原稿排紙台109上に排出される。
【0025】
なお、両面画像記録モードにおいては、片面が読み取られた原稿は原稿反転手段111に挟持された後、当該原稿反転手段111の逆方向回転で反転搬送されて再び画像読み取り位置に導かれ、最終的に原稿排紙台109上に排出される。150は各種の操作釦や表示部を含む操作表示部で、画像形成開始釦(プリント釦)、画像形成枚数設定用のテンキーの他に、画像形成モード(片面モード、両面モード)、濃度調整あるいは倍率変更の選択に使用される液晶表示選択手段等が備えられている。以下、説明の便宜上、操作表示部150を単に表示部150と呼称する場合がある。
【0026】
画像読み取り部2は、スリット201、第1ミラーユニット205、第2ミラーユニット207、結像レンズ209、および、結像レンズ209により結像された光像を光電変換して画像情報を得るライン状の撮像素子(以下、CCDという)211を有している。画像情報は、適宜の画像処理を施された後、一旦、後記する制御手段S内のメモリに蓄積される。画像読み取り部2によって読み取られた各色の画像情報は、メモリより順次取り出され、色毎の露光光学系にそれぞれ電気信号として入力される。
【0027】
画像形成部3は色分解画像に応じたトナー像を後述する像担持体上に形成するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(BK)の4組の画像形成手段30(30Y、30M、30C、30BK:以下、画像形成ユニットという)を有する。各々の画像形成ユニット30は、像担持体としての感光体ドラム310、帯電器320、画像書き込み手段である露光光学系330、現像装置340、転写手段350、クリーニング部材360等からなる。図においては、イエローの画像形成ユニットを構成する部材にのみ参照符号を付し、他の画像形成ユニットについては基本的に同じ構成を有していることから、参照符号を省略してある。
【0028】
現像装置340は、現像剤担持体を有し、また、磁性キャリアと、現像装置毎に異なった色の非磁性トナー(以下、単にトナーという)とを含む現像剤を収納している。クリーニング部材360は転写後の感光体ドラム310上に残留するトナーを除去し、除去されたトナーは廃トナーボックスDTまで搬送され、収納される。上述の画像形成ユニット30は、中間転写ベルト401の一平面Aの進行方向に沿って、上から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(BK)の順に配列されている。
【0029】
中間転写体或いは像担持体としての中間転写ベルト401、中間転写ベルト401を懸架する支持ローラ405、406、407、および、バックアップローラ410等がベルトユニット4を構成する。409はクリーニング手段としてのブレードを示す。
【0030】
二次転写機構部8は、中間転写ベルト401上に担持されるようになったトナー画像を転写材P(後述)に転写させるものである。図示のように、転写機構8はローラからなる複数の支持手段(支持ローラ)813、815およびローラからなる押圧手段810(押圧ローラ)と、それら手段に懸架された転写ベルト800を有する。押圧手段810は転写ベルト800の支持手段として機能するとともに、対向するバックアップローラ410と協働して、転写ベルト800と中間転写ベルト401との圧着を保つ転写部材でもある。
【0031】
前述の押圧手段810には所定極性(トナーの帯電極性と逆極性)の電圧を出力するバイアス電源(不図示)が接続されており、制御手段S(後記)を介して通電制御されるようになっている。
【0032】
搬送ローラ830は転写後の転写材Pを下流の定着装置9に送り込むためのものである。前記定着装置9は、未定着トナー像を有する側の転写材Pと接触するように位置づけた第1定着部材としての第1定着ローラ900を有する。また、第1定着ローラ900と圧着しながら回転する第2定着部材としての第2定着ローラ901を有し、両定着部材からなる定着手段90を主要な構成要素とする。なお、前記第1定着ローラ900には、公知の如く、ハロゲンランプ等の加熱源(不図示)が内蔵されている。上述のように、定着ローラ対からなる定着手段90は、両者の圧着により形成されるニップ部(挟持部)で転写材Pを挟持(ニップ)して転写材Pを搬送するとともに、加熱源による加熱と加圧作用を付与することにより、トナー画像を転写材Pに定着させる。
【0033】
定着ローラの層構成は適宜に決定することができ、例えば、第1定着ローラ900は金属ローラ上にシリコンゴム層を設けるとともに、フッ素コーティングした表層を有する構成とすることができる。また、第2定着ローラは、金属ローラ上にシリコンゴム層を設けるとともに、フッ素系チューブからなる表層を有する構成とすることができる。なお、定着手段の態様としては、前述の第1定着ローラ900、第2定着ローラ901の代わりに、ローラとベルトを組み合わせた構成とすることができる。
【0034】
具体的には、図2に示される構成とすることができる。図2において、支持ローラ903はベルト908を懸架し、かつ、当該ベルトを挟んで押圧ローラ906と圧着する。支持ローラ905は加熱源Lを内蔵したローラである。また、Nはニップ部を示す。ベルト908は、例えば、ポリイミド基体上にシリコンゴム層と、表層としてフッ素系チューブを設けることにより構成することができる。
【0035】
図1に戻り、定着手段90の排紙側、即ち、転写材Pの搬送方向に対して定着手段90のニップ部の下流側に示されるのは、第1定着ローラ900に転写材Pが巻き付くことを防止する手段として機能するエア吹きつけ装置95(エア分離手段と同義)である。また、エア吹きつけ装置95の更に下流に示されるのは定着部排紙ローラ990である。エア吹きつけ装置95は、シロッコファン、クロスフローファン等からなる送風ファン(後述)を含む。空気流(気体流)発生手段或いは送風手段としての上述の如き送風ファンの使用は、組み立て時の取り扱い性がよく、装置の小型化や、構成の簡素化を図ることができ、また、製作が安価で済むという利点がある。
【0036】
エア吹きつけ装置95は、送風ファンの駆動により発生される気体流を転写材Pの搬送方向に対して定着手段90のニップ部Nの下流(排紙)側に導いて吐出させるダクト(後述)を含む。また、ダクトの先端部はニップ部Nの排紙側に向けて折曲された態様にある。これは、第1定着ローラ900に張り付いた状態で搬送される転写材Pを第1定着ローラ900から分離させるのに適した部位に向けて空気流を吐出させることを意図したものであり、仕様によって適宜の形状とすることができる。
【0037】
なお、送風ファンによる風量は転写材の種類や斤量に応じて選択使用されるように、風量設定テーブルが後述する制御手段S内の適宜のメモリに設けられており、転写材の種類および斤量の情報から自動的に選択設定される。エア吹きつけ装置95の機械的構成の詳細は後述するが、本実施の形態における送風ファンは、例えば、一連のジョブが終了するまで駆動状態に保たれ、ジョブ終了後は非駆動状態となるように制御される。
【0038】
給紙トレイP1、P2、P3は、それぞれ用紙等の転写材Pを収納するためのものである。送り出し部には給紙ローラ503、513、523と、分離ローラ506、516、526、および、搬送ローラR1、R2、R3が備えられている。これらのローラにより繰り出された転写材Pは搬送ローラR5からR7が配設されている用紙搬送経路に沿って搬送される。レジストローラ59は、二次転写領域560に近接した位置に設けられている。
【0039】
排紙ローラ600は転写材Pを排紙トレイ650に排紙するためのものである。
【0040】
反転排紙・再給紙部6は、定着処理後の転写材Pを反転して機外に排紙させることができる。また、両面画像形成モードにおいては、第1面に画像形成され、定着処理された転写材Pを搬送ローラ610、620等によりレジストローラ59に導き、再給紙させることにより、転写材Pの第2面に対する画像形成がなされることになる。なお、両面画像形成時における転写材の搬送経路は基本的に公知であり、また、本願発明とは直接関係がないという理由で、詳細な説明は省略する。
【0041】
制御手段Sは機械作動のプログラムに基づいて、一連の画像形成プロセスに係わる制御、給紙制御、エア吹きつけ装置の駆動制御等、全ての制御を行う。換言すれば、制御手段Sは、演算制御処理を行うCPUと、各種動作プログラムを記憶しているROM、演算結果データを記憶するRAM等を有する。そして、インターフェースを介して各種センサの出力を前記CPUに取り込むとともに表示手段、駆動手段等を駆動制御する。なおFは装置内の空気を機外に排出するための排風ファンを示す。
【0042】
ここで、上述の構成を有する画像形成装置の動作を簡単に述べる。画像形成装置Hの電源がオンされ、定着手段90を構成する第1定着ローラ900の表面温度が目標設定温度に達すると、操作表示部150に画像記録が可能なる旨の表示がなされる。ユーザが操作表示板150上の画像形成開始釦(スタート釦)を押すことにより画像記録動作が開始され、反時計方向に回転する感光体ドラム310の表面は帯電器320により所定の極性に帯電される。次いで、露光光学系330による第1の色信号、即ち、イエロー(Y)の画像信号に対応する露光が施され、当該イエロー(Y)の画像に対応する潜像が感光体ドラム310上に形成される。潜像は、現像バイアス電圧が印加されている現像装置340により反転現像されてイエロー(Y)のトナー像に変換された後、転写手段350の作用によって中間転写ベルト401上に転写される。第1の色信号による画像形成開始から所定の時間後に順次開始される他の色信号による画像形成は、上記と同様のプロセスにより、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(BK)の各画像形成ユニット30によってなされる。
【0043】
それぞれの画像形成ユニットで形成された感光体ドラム310上の各トナー像は、イエロー(Y)のトナー像のある画像領域と重畳するように順次転写され、中間転写ベルト401上に重ね合わせのカラートナー像が形成される。一方、画像形成プロセスに応じて給紙ローラ503(513、523)により給紙された転写材Pは、レジストローラ59に先端が当接されて停止している。そして、転写材Pは、レジストローラ59の回転再開により、中間転写ベルト401上のカラートナー像領域と重畳するタイミングで再給送される。
【0044】
次いで、転写材Pは二次転写領域においてバックアップローラ410と押圧手段810とにより中間転写ベルト401および転写ベルト800とともに押圧され、この間に、中間転写ベルト401上のカラートナー像が転写材P上に転写される。転写処理を受けた転写材Pは中間転写ベルト401から分離された後、搬送ローラ830に挟持され、次いで、定着手段90により挟持、搬送されながら、加熱、加圧処理される。転写材Pは、定着手段90を通過直後にエア吹きつけ装置95からの所定風量の空気流により第1定着ローラ900からの分離を促進され、次いで、選択された形態で排紙ローラ600により排紙トレイ650上に排出される。斯様な動作が、原稿に従った所定枚数の画像記録終了まで繰り返される。エア吹きつけ装置95は、一連のジョブにおける最初の転写材Pから最後の転写材Pが定着手段90のニップから解放されるまで駆動され、その後、非駆動状態に制御される。
【0045】
次に、送風手段として送風ファンを用いたエア吹きつけ装置と定着手段90の排紙側近傍の雰囲気により生じる不具合について、比較例としての図3を用いて簡単に説明する。図における定着手段90は、図2に示した構成と同一であるので、同じ符号を付し、また、重複した説明は省く。エア吹きつけ装置95は、吹きつけダクト952と、その上部に設けられたシロッコファンからなる送風ファン951を有する。送風ファン951の駆動により発生された空気流(矢示)は吹きつけダクト952内に送り出され、吹きつけ部953を介して定着手段90のニップ部を通過した直後の転写材Pの先端部に向けて吹きつけられる。換言すれば、支持ローラ903と押圧ローラ906との押圧により形成されるベルト908と押圧ローラ906とでニップ搬送されながら加熱処理された転写材は、次いで、エア吹きつけ装置95の空気吹きつけ作用を受けてベルト908から確実に分離される。しかしながら、定着手段90により加熱処理された転写材P中の水分が蒸発するため、ニップ部下流側近傍(定着排紙部近傍の意)における雰囲気は、高温、高湿となる。そのため、例えば、転写材Pがニップ部Nを通過した後に送風ファンの駆動を非駆動に切り替えた場合、排紙部近傍に滞留する湿度の高い空気は、吹きつけ部953から吹きつけダクト952内に進入、上昇し、やがて、送風ファン951に達する。一方、送風ファン951には、当該送風ファンを駆動するための、例えば、ブラシレスモータ等の電子部品が一体的に取り付けられており、それに高湿度の空気が触れたり、露結を生じたりすると、結果として送風ファンの正常動作を阻害し、破損させる問題がある。
【0046】
図4から図8は、上述の問題に対応した本願発明に係わるエア吹きつけ装置の実施の形態を概念的に示す説明用の図である。図4はエア吹きつけ装置の第1の実施の形態を示す。図における定着手段の構成は、図2、図3に示した構成と同じ構成であり、符号は統一してある。また、エア吹きつけ装置95における既出の部材(手段)と同一の部材についても同じ符号を付して有る。図中、二点鎖線で示すのは定着手段90等を支持するための側板(符号無し)である。接続ダクト954は、側板間に跨る上板に位置固定されており、その上部には送風ファン951が設けられている。また、接続ダクト954は、前記送風ファン951により送り出された空気を吹きつけダクト952内部に導くべく、吹きつけダクト952と連通可能に接続されている。ここで言う、連通可能とは、空気流路の形成が可能であることを意味する。図に示す如く、接続ダクト954と吹きつけダクト952とは位相がずれて形成されており、送風ファン951から下方に送り出された空気流が水平方向に流れる連通部位955を介して吹きつけダクト952に入り込む構成にある。
【0047】
連通部位955は、接続ダクト954と吹きつけダクト952との境界であり、この練通部位955には、支軸Jを支点として回動可能に切り替え部材Dが設けられている。図中の切り替え部材Dは初期位置から90度回動された水平位置にある。すなわち、切り替え部材Dは接続ダクト954と吹きつけダクト852とを連通させた位置にある。連通状態における切り替え部材Dは、後述する吹きつけダクトの排出部を塞ぐ位置である。なお、連通状態の際に排出部を塞ぐことは必須ではなく、仕様によって適宜の形状とすることができる。また、切り替え部材Dの初期位置は、接続ダクト954と吹きつけダクト952との連通部位955を閉鎖する位置にある。
【0048】
切り替え部材Dの駆動手段としては、例えば、切り替え部材Dを初期位置の方向に付勢するバネと、バネの付勢力に抗して切り替え部材Dを連通状態とする向きに駆動する偏芯カム等、公知の技術により達成することができる。また、自重を利用して切り替え部材Dを初期位置に位置せしめる一方、プーリとモータを利用して、一端を切り替え部材Dに係止したワイヤを巻き上げることで連通状態とするように回動させることもできる。更に、吹きつけダクト952と接続ダクト954を非連通状態に保つ方向に切り替え部材Dを付勢する弾性部材(不図示)を備える構成をとってもよい。この場合、切り替え部材Dを送風ファンの駆動により発生された空気流(風圧)により回転(回動)させて、吹きつけダクト952と接続ダクト954とを連通させることができる。
【0049】
説明を戻して、吹きつけダクト952の吹きつけ部953と反対側には、送風ファンの非駆動時に、吹きつけ部953から進入する吹きつけ部近傍に滞留している空気を装置内の所定場所に排出する排出部956が設けられている。また、第1の実施の形態においては、排出される高湿の空気が送風ファン951に触れないように、排出部956には排出ダクト957が設けられている。この排出ダクト357は、送風ファン951の頂上位置と同程度の高さ位置を有するが、場合により短くもできる。なお、排出ダクト957は必須の構成ではない。また、吹きつけダクト952と排出ダクト957が一体構成であってもよい。
【0050】
図1で説明したように、画像形成装置には当該装置内の空気を機外に排出するための排風ファン(図1のF参照)が設けられている。従って、排出部956から排出される空気が前述の排風ファンFの作用を受けて機外に排出されるように、排出部956と排風ファンFとの、例えば、位置関係を作ることが望ましい。換言すれば、図示の構成とは異なり、吹きつけダクトの排出部側を排風ファンの作用範囲との関係で角度をつけても、曲げてもよい。
【0051】
更に、排出部956側とは反対側にある、排出ダクト957の一端を機外と接するように構成してもよい。また、前述の排風ファンの作用を確実に受けられるように、前述した排出ダクトの一端を排風ファンの近接位置まで延ばしてもよく、設計上の自由度は広い。これら構成は後述する他の実施の形態においても適用される。
【0052】
以上の構成を有するエア吹きつけ装置95の動作を簡略に説明する。画像形成プロセスに応じた所定のタイミングで送風ファン951が駆動されると、その周囲の空気は送風ファン951に吸い込まれ、接続ダクト954に送り出される。次いで、送り出された空気流は切り替え部材Dの回動で連通状態となった連通部位955を介して吹きつけダクト952の内部に送り込まれ、口細に形成された吹きつけ部953から吐出される。所定の転写材に対するエア吹きつけ動作が終了すると、送風ファン951は非駆動とされ、切り替え部材Dは初期位置に戻って接続ダクト954と吹きつけダクト952とを非連通状態に切り替える。定着処理後の転写材から放出された水分を含み、吹きつけ部953の近傍に滞留する高湿の雰囲気(空気)は吹きつけ部953から進入して吹きつけダクト951内を上昇し、やがて、画像形成装置内に配設されている排風ファンFにより機外に排出される。
【0053】
図示の構成において、排出ダクト957が吹きつけダクト952に接続された態様である場合、吹きつけ部953から進入した吹きつけ部953の近傍に滞留する高湿の雰囲気(空気)は、両ダクトの境界である排出部956(図4に示すような連通状態時の切り替え部材Dの位置)を鉛直方向に上昇した後、機外に排出される。すなわち、上記の高湿の空気が上昇する経路を妨げる位置に連通部位955がないので、上記の高湿の空気が吹きつけダクト952内を通って送風ファン951に到達することが抑制される。
【0054】
更に、図4や後述する図5と図6のように、連通部位955は、送風ファン951から下方に送り出された空気流を水平方向に流し、その空気流を吹きつけダクト952内に導いている。言い換えると、連通部位955は、吹きつけ部953から進入した高湿の空気が、吹きつけダクト952内を上昇する経路にない。すなわち、図4〜図6のように、連通部位955を設けることによって、上記の高湿の空気が吹きつけダクト952内を通って送風ファン951に到達することが抑制される。その結果、送風手段である送風ファン951への水滴の付着が抑制去れ、送風ファンの送風ファンの不具合をより効果的に防止することができる。
【0055】
エア吹きつけ装置に係わる第2の実施の形態を図5に基づいて説明する。なお、図5に示すエア吹きつけ装置95の構成は図4に示される構成と基本的に同じである。異なる所は、吹きつけダクト952と接続ダクト954が接続している、水平に位置するダクトを長くしている点である。この場合、連通部位955を境にして、図の左側が吹きつけダクト952、図の右側が接続ダクト954となる。また、回動可能な切り替え部材Dは、図示のような初期位置である連通部位955の位置を初期位置として配置される。この構成は、例えば、吹きつけダクト952の排出部926から排出される高湿の空気に送風ファン951や電子部品等が晒される危険性をより減少させることが可能である。
【0056】
次に、エア吹きつけ装置の第3の実施の形態につき、図6に基づいて説明する。なお、二点鎖線で示される側板の枠内におけるエア吹きつけ装置の構成は、基本的に図4と同じ構成を有するので図示は省略する。図4の構成と異なる点は、切り替え部材Dを回転式に代えてスライド式に構成した点である。本実施の形態におけるスライド式の切り替え部材Dは、吹きつけダクト952と接続ダクト954の境界に形成されたスリット958中を上下方向に移動可能であり、例えば、直進型のソレノイドを駆動源とする。そして、駆動源が送風ファン591の駆動とほぼ同時に駆動されて切り替え部材を上昇させることで、接続ダクト954と吹きつけダクト952との状態は初期位置である非連通状態から連通状態に切り替えられる。
【0057】
また、送風ファン951が非駆動に切り替えられるタイミングに対応してソレノイドを駆動することにより、切り替え部材Dを初期位置に戻す。これにより、切り替え部材Dは接続ダクト954と吹きつけダクト952とを非連通状態にする。上述の駆動源や送風ファンに対する駆動制御は、先に述べたように、制御手段Sを介して実施される。
【0058】
次に、エア吹きつけ装置の第4の実施の形態につき、図7に基づいて説明する。本実施の形態における構成は、図4、図5における送風ファン591と吹きつけダクト952の位置関係を逆にした構成を有する。送風ファン951の直下に設けた接続ダクト954と折曲した部位を有する吹きつけダクト952との境界は、図示されている連通部位955の位置である。連通部位955には、支軸Jを中心として回転(回動)可能な切り替え部材Dが配設されている。切り替え部材Dは、図示の初期位置において接続ダクト954と吹きつけダクト952とを非連通状態に維持し、送風ファン951の駆動の間は90度回転して接続ダクト954と吹きつけダクト952とを連通状態に保つ。切り替え部材Dを初期位置に保つ手段は、例えば、バネを利用することができ連通状態にするための切り替え部材Dを回転させる駆動源は、送風ファン951の駆動時における空気流とすることができる。或いは、前述した公知技術の適用或いはその組み合わせ等により適宜に構成することができる。なお、第4の実施の形態においては、第1の実施の形態のように排出ダクト957が設けられている。
【0059】
また、上位機構成における切り替え部材Dを回転式でなく、図6に示すスライド式とすることもできる。例えば、第5の実施の形態を示す図8のように、接続ダクト954と吹きつけダクト952とにスリット958を設けるとともに、板状の切り替え部材Dを挿入する。そして、切り替え部材Dを一方に移動させた場合、例えば接続ダクト954の風路を塞ぐと同時に吹きつけダクト952の風路を解放し、逆に吹きつけダクト952の風路を塞ぐ位置に移動させた場合、接続ダクト952の風路を解放するように構成すればよい。
【0060】
なお、本願発明は上述の実施の形態に拘束されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱することのない応用、変形を包含するものである。
【0061】
例えば、本実施の形態において、接続ダクト954と吹きつけダクト952とを別の部材として扱ったが、本願発明はこれに限定されるものではなく、接続ダクト954と吹きつけダクト952とが一体構成であってもよい。
【0062】
また、排出部956の位置は、本実施の形態に限定されない。すなわち、排出部956は、吹きつけ部953から進入する空気を装置内の所定場所に排出することができるように、吹きつけダクト952における吹きつけ部953よりも上方の位置にあればよい。そのため、例えば、本実施の形態に示す以外にも、上記位置を満たす吹きつけダクト852の位置に穴などの開口を設け、この開口を排出部956としてもよい。
【0063】
また、この排出部956は、送風手段である送風ファン951に水滴が付着することにより発生する不具合を防止するという効果を高めている。すなわち、仮に切り替え部材Dのみでは吹きつけ部953から進入する空気を防ぎきれない場合があったとしても、この空気が排出部956により排出されるので、上記の不具合の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 自動原稿送り装置
2 画像読み取り部
3 画像形成部
4 ベルトユニット
5 給紙部
9 定着装置
90 定着手段
95 エア吹きつけ装置
951 送風ファン(送風手段)
952 吹きつけダクト
953 吹きつけ部
954 接続ダクト
955 連通部位
956 排出部
957 排出ダクト
958 スリット
D 切り替え部材
S 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体上に形成されたトナー画像を転写材に転写する転写部材と、
転写後の転写材を第1定着部材と第2定着部材とで形成されるニップ部を介して搬送しながら加熱処理する定着装置と、
エア吹きつけ装置と、
を有する画像形成装置において、
前記エア吹きつけ装置は、
送風手段と、
前記送風手段の駆動により発生された空気流を前記定着装置のニップ部を通過した転写材に向けて吹きつける吹きつけ部を有する吹きつけダクトと、
前記吹きつけダクトと連通可能に接続され、前記送風手段により送り出された空気を前記吹きつけダクト内部に導く接続ダクトと、
前記吹きつけダクトと前記接続ダクトとが連通する連通状態と、前記吹きつけダクトと前記接続ダクトとが連通しない非連通状態とを切り替える切り替え部材と、
を備え、
前記切り替え部材は、前記送風手段の駆動時には前記連通状態をとり、送風手段の非駆動時には前記非連通状態をとる、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記吹きつけダクトは、前記吹きつけ部よりも上方に該吹きつけ部から進入する空気を排出する排出部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記切り替え部材は、前記送風手段の駆動時には、前記連通状態をとるとともに、前記排出部を塞ぐ、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記接続ダクトと前記吹きつけダクトは、前記接続ダクトと前記吹きつけダクトとの連通部位にて、前記送風手段の駆動により発生された空気流が水平方向に流れるように配置されている、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記吹きつけダクトの吹きつけ部から進入し、前記排出部から排出される空気を前記画像形成装置の外部に導くように、前記吹きつけダクトに接続された排出ダクトを備える、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記吹きつけダクトと前記排出ダクトとは、前記排出部から排出された空気が前記吹きつけダクトと前記排出ダクトとの境界を鉛直方向に流れるように配置されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記切り替え部材を回転可能に支持する支持部材と、
前記吹きつけダクトと前記接続ダクトを前記非連通状態に保つ方向に前記切り替え部材を付勢する弾性部材と、を備え、
前記切り替え部材は、前記送風手段の駆動により発生された空気流により回転されて、前記連通状態をとる、
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記切り替え部材を駆動する駆動部材と、
前記駆動部材を駆動制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は前記送風手段の動作状態に基づいて前記駆動部材を制御する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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