説明

画像形成装置

【課題】1対のギヤの磨耗量を測定するのに1つのセンサで済ませる。
【解決手段】モータにより回転駆動されるギヤ列を有し、その下流にギヤの回転を検知するセンサを有する画像形成装置であって、前記ギヤが摩耗していない初期状態において、前記モータを一時的に逆転させ、その際に得られるセンサ信号を、モータ駆動信号を基準となるタイミングにして記録領域に記録するセンサ信号記録手段と、摩耗量の測定時において、前記モータを一時的に逆転させ、その際に得られるセンサ信号と前記記録領域に記録された初期状態におけるセンサ信号とを比較して摩耗量を測定する摩耗量測定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置の機構部に用いられるギヤ(歯車)の摩耗量を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、一般家庭で使われる日用品、家電製品をはじめとし、二輪車、自動車や、パソコン、複写機、プリンタ等のOA機器に至るまで、新製品が発売される、もしくはリース契約期間が切れるなどのきっかけで、耐用年数を全うする前に破棄されてきた。
【0003】
そこで、(1)資源・エネルギー消費量の削減、(2)最終廃棄物量の削減、(3)有害物排出の防止といった地球環境保全の観点から、近年、相次いで各種リサイクル法が制定されている。
【0004】
そして、これら法令制定に先立ち、回収された製品の分解/分別がしやすいようにするリサイクル対応設計への取り組みが既に行われている。そこでは、回収された製品の品質状態や生産・稼働履歴がある一定条件を満たした場合、リユース可能なものは再び製品に組み込み、それ以外のものについては分別を行ってリサイクル材として再資源化を図る取り組みが行なわれている。
【0005】
複写機等の画像形成装置に組み込まれているギヤについては、稼動履歴だけでなく、磨耗量を測定し、寿命判定を行う必要がある。
【0006】
今までは1対のギヤの磨耗量を測定するために、エンコーダ(ロータリエンコーダ)等の複数のセンサをギヤの軸に取り付け、それらのセンサの出力に基づいて磨耗量を測定する方法が既に知られている。特許文献1には、ギヤの寿命判定を行う目的で、ギヤの磨耗量を測定するために、いくつかの軸上にとりつけられた複数のセンサからの信号に基づいて磨耗量を算出する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような、1対のギヤの磨耗量を測定するのに複数のセンサを取り付ける方法では、本来の画像形成装置としての機能と関係のないセンサを取り付けることとなることから、コストがかかり、その分のスペースも必要となってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、モータにより回転駆動されるギヤ列を有し、その下流に前記ギヤ列の回転を検知するセンサを有する画像形成装置において、1対のギヤの磨耗量を測定するのに1つのセンサで済ませることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、モータにより回転駆動されるギヤ列を有し、その下流にギヤの回転を検知するセンサを有する画像形成装置であって、前記ギヤが摩耗していない初期状態において、前記モータを一時的に逆転させ、その際に得られるセンサ信号を、モータ駆動信号を基準となるタイミングにして記録領域に記録するセンサ信号記録手段と、摩耗量の測定時において、前記モータを一時的に逆転させ、その際に得られるセンサ信号と前記記録領域に記録された初期状態におけるセンサ信号とを比較して摩耗量を測定する摩耗量測定手段とを備える画像形成装置を要旨としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像形成装置にあっては、モータにより回転駆動されるギヤ列を有し、その下流に前記ギヤ列の回転を検知するセンサを有する画像形成装置において、1対のギヤの磨耗量を測定するのに1つのセンサで済ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置の機構部の構成例を示す図である。
【図2】測定対象のギヤの周辺の構成例を示す図である。
【図3】ギヤのバックラッシ量の例を示す図である。
【図4】制御部の構成例を示す図である。
【図5】センサ信号の比較の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0013】
図1は画像形成装置1の機構部の構成例を示す図であり、搬送ユニットに沿って複数の現像装置を並設させたタンデム方式のカラー画像形成装置の例である。近年、カラー複写機やカラープリンタ等、高画質のカラー画像を形成する画像形成装置が国内・国外において広く実用化されており、タンデム方式のカラー画像形成装置はそのような画像形成処理を高速で実現することができる。
【0014】
図1において、画像形成装置1は、複数の光源から出射される光ビーム18Y(Y:Yellow)、18M(M:Magenta)、18C(C:Cyan)、18K(K:Black)を、画像形成装置1内部に並設された複数の像担持体15Y、15M、15C、15Kに照射して静電潜像を形成し、形成した静電潜像に対して現像部17Y、17M、17C、17Kにより異なる色の現像剤を付着することで、像担持体15Y、15M、15C、15K上に実像となるトナー像を形成させる。
【0015】
そして、各像担持体15Y、15M、15C、15K上に形成されたトナー像を、ローラ11、12、14により支持されて回転移動する中間転写ベルト13に対し、裏側から1次転写ローラ16Y、16M、16C、16Kで押圧することで転写し、転写したトナー像を記録材19に裏側から2次転写ローラ10で押圧することで転写する。その後、定着を行う。これにより多色画像を形成する。
【0016】
また、この種の画像形成装置1には、回転移動する中間転写ベルト13に対して高速でトナー像の転写が行われることから、各色の位置合わせ精度の安定化を図るために、位置ずれ補正機能が搭載されている。例えば、各色の位置ずれ要因の1つとして、中間転写ベルト13の速度ムラにより位置ずれが発生することが解っており、この要因を解決すべく、中間転写ベルト13を支持しているローラ11、12、14の軸上に速度の検知手段を設け、その検知結果から、ベルト駆動用モータを制御し、速度ムラを低減することで画像の位置ずれを防止している。この検知手段には、しばしばエンコーダ(ロータリエンコーダ)等のセンサが用いられている。このセンサは機能上、中間転写ベルト13を等速に駆動させるためのものであるが、このセンサでギヤの磨耗量を測定し、リユース可否または寿命の判定を行うことができる。
【0017】
図2は測定対象のギヤの周辺の構成例を示す図である。
【0018】
図2においては、モータ21によりギヤ22が駆動され、このギヤ22によりギヤ23が駆動されるようになっている。ギヤ23の軸24にはセンサ25が設けられている。なお、軸24は、図1におけるローラ11、12、14等の軸に相当する。なお、中間転写ベルト13を駆動するローラ11、12、14だけでなく、ギヤによってモータの駆動を伝達させ、その下流にエンコーダ等のセンサを備えている画像形成装置内の駆動機構であれば適用することができる。
【0019】
作像をしている際、モータ21は例えば図中の矢印方向といったように、1方向にしか回らない。その際、ギヤ22とギヤ23の歯の噛み合っている部分は摩擦によって経時で歯が磨耗していき、磨耗した量だけバックラッシ量(ガタ量)が増える。
【0020】
図3はギヤのバックラッシ量の例を示す図である。
【0021】
図3(a)は摩耗が生じていない初期状態のギヤ22とギヤ23の噛み合い部分を示しており、歯が当たっていない側の隙間の距離がバックラッシ量である。
【0022】
図3(b)は初期状態から駆動を繰り返して磨耗したギヤ22とギヤ23の噛み合い部分を示している。破線は摩耗が生じる前の歯の位置を示しているが、摩耗により歯が実線のように摩耗した結果、バックラッシ量はギヤ22とギヤ23の歯が磨耗した分だけ大きくなる。
【0023】
図4は摩耗量の測定および寿命判定を行う制御部101の構成例を示す図である。制御部101は画像形成装置1の主たる制御装置内の一機能として設けてもよいし、別途設けてもよい。
【0024】
図4において、制御部101は、センサ信号記録部102と記録領域(記憶領域)103と摩耗量測定部104と摩耗量判定部105とを備えている。
【0025】
センサ信号記録部102は、ギヤが摩耗していない初期状態において、モータ駆動信号によりモータを一時的に逆転させ、その際に得られるセンサ信号を、モータ駆動信号を基準となるタイミングにして記録領域103に記録し、再びモータ駆動信号によりモータを一時的に正回転させ、バックラッシの影響をキャンセルする機能を有している。モータの逆回転は、現在噛み合っている歯のバックラッシ量程度の一時的なものであるため、下流の駆動対象物を逆回転させることで不都合が生じる恐れがあるものであっても、問題はない領域である。なお、バックラッシ量の測定のためのセンサ信号の記録は、一時的な逆回転時に限らず、再度の一時的な正回転時に行ってもよい。
【0026】
記録領域103には、モータ駆動信号が有効になった時点からの経過時点と対応付けてセンサ信号が記録される。なお、所定の基準位置からのギヤの歯の位置を示す情報と対応付けて記録してもよい。
【0027】
また、センサ信号記録部102は、初期状態だけでなく、摩耗量測定部104による摩耗量の測定時のセンサ信号についても、記録領域103に記録するようにしてもよい。
【0028】
摩耗量測定部104は、摩耗量の測定時において、モータ駆動信号によりモータを一時的に逆転させ、その際に得られるセンサ信号と記録領域103に記録された初期状態におけるセンサ信号とを比較して摩耗量を測定する機能を有している。比較のためのタイミングはモータ駆動信号が基準となる。センサがエンコーダである場合、2つのセンサ信号(エンコーダ信号)の位相差からタイムラグを検出し、所定の係数(予め実験等により設定)をかけることで摩耗量に換算することができる。
【0029】
また、摩耗量測定部104は、測定の後、再びモータ駆動信号によりモータを一時的に正回転させ、バックラッシの影響をキャンセルする機能を有している。
【0030】
なお、摩耗量測定部104は、センサ信号記録部102による初期状態でのセンサ信号の記録が一時的な逆回転時ではなく再度の一時的な正回転時に行われている場合には、同じく再度の一時的な正回転時におけるセンサ信号を比較に用いる。
【0031】
摩耗量判定部105は、摩耗量測定部104により測定された摩耗量を予め設定された閾値と比較し、閾値に到達するか超えている場合にはリユース不可等の寿命判定を行う機能を有している。
【0032】
動作にあっては、画像形成装置1の製造時もしくは出荷前等のタイミングで、制御部101のセンサ信号記録部102は、ギヤが摩耗していない初期状態において、モータ駆動信号によりモータを一時的に逆転させ、その際に得られるセンサ信号を、モータ駆動信号を基準となるタイミングにして記録領域103に記録する。
【0033】
その後、摩耗量の測定時において、制御部101の摩耗量測定部104は、モータ駆動信号によりモータを一時的に逆転させ、その際に得られるセンサ信号と記録領域103に記録された初期状態におけるセンサ信号とを比較し、その位相差からタイムラグを検出し、摩耗量に換算して出力する。
【0034】
図5はセンサ信号の比較の例を示す図であり、図5(a)は記録領域103に記録された初期状態におけるセンサ信号を示し、図5(b)は摩耗量の測定時に得られたセンサ信号を示している。両者の時間軸はモータ駆動信号が有効になった時点を基準にしている。
【0035】
ここで、センサ信号のパルスの位相差から摩耗による遅れが検出でき、その時間値に係数をかけることで摩耗量に換算する。
【0036】
次いで、摩耗量判定部105は、摩耗量測定部104により測定された摩耗量を予め設定された閾値と比較し、閾値に到達するか超えている場合にはリユース不可等の寿命判定を行い、判定結果を出力する。判定結果は画像形成装置1のオペレーションパネルに表示したり、所定の形式でデータ出力したりする。
【0037】
また、記録領域103のセンサ信号として、所定の基準位置からのギヤの歯の位置を示す情報を併せて記録する場合には、個々の歯の組み合わせを区別できるため、摩耗量の測定を行う場合に現在の歯の位置に対応するセンサ信号を記録領域103から取得して比較を行う。この場合、更に、摩耗量測定部104は、モータ駆動信号によりモータを正回転させてギヤの歯の組み合わせを変え、別の歯の組合せにおいても同様の測定を行い、摩耗量判定部105は複数の摩耗量の測定結果から総合的に寿命判定を行うようにすることができる。
【0038】
以上説明した実施形態によれば、1対のギヤの磨耗量を測定するのに1つのセンサで済ませることができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0040】
1 画像形成装置
10 2次転写ローラ
11 ローラ
12 ローラ
13 中間転写ベルト
14 ローラ
15Y〜15K 像担持体
16Y〜16K 1次転写ローラ
17Y〜17K 現像部
18Y〜18K 光ビーム
19 記録材
21 モータ
22、23 ギヤ
24 軸
25 センサ
101 制御部
102 センサ信号記録部
103 記録領域
104 摩耗量測定部
105 摩耗量判定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特開2009−74841号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより回転駆動されるギヤ列を有し、その下流にギヤの回転を検知するセンサを有する画像形成装置であって、
前記ギヤが摩耗していない初期状態において、前記モータを一時的に逆転させ、その際に得られるセンサ信号を、モータ駆動信号を基準となるタイミングにして記録領域に記録するセンサ信号記録手段と、
摩耗量の測定時において、前記モータを一時的に逆転させ、その際に得られるセンサ信号と前記記録領域に記録された初期状態におけるセンサ信号とを比較して摩耗量を測定する摩耗量測定手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記センサ信号記録手段は、センサ信号の記録の後に、再び前記モータを一時的に正回転させてバックラッシの影響をキャンセルし、
前記摩耗量測定手段は、摩耗量を測定の後に、再び前記モータを一時的に正回転させてバックラッシの影響をキャンセルする
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
モータにより回転駆動されるギヤ列を有し、その下流にギヤの回転を検知するセンサを有する画像形成装置であって、
前記ギヤが摩耗していない初期状態において、前記モータを一時的に逆転させ、再び前記モータを一時的に正回転させて、その際に得られるセンサ信号を、モータ駆動信号を基準となるタイミングにして記録領域に記録するセンサ信号記録手段と、
摩耗量の測定時において、前記モータを一時的に逆転させ、再び前記モータを一時的に正回転させて、その際に得られるセンサ信号と前記記録領域に記録された初期状態におけるセンサ信号とを比較して摩耗量を測定する摩耗量測定手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記摩耗量測定手段により測定された摩耗量を予め設定された閾値と比較することにより寿命判定を行う摩耗量判定手段
を更に備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記センサ信号記録手段は、所定の基準位置からのギヤの歯の位置を示す情報を併せて記録し、
前記摩耗量測定手段は、現在の歯の位置に対応するセンサ信号を前記記録領域から取得して比較を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記摩耗量測定手段は、1回目の測定の後に前記モータを正回転させて前記ギヤの歯の組み合わせを変え、別の歯の組合せについて測定を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項の画像形成装置において、
前記センサはエンコーダであり、
前記摩耗量測定手段は2つのセンサ信号の位相差からタイムラグを検出し、所定の係数をかけることで摩耗量に換算する
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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