説明

画像形成装置

【課題】感光体の前回転処理による感光体の短寿命化を抑制しつつ、残留電位が安定する前に画像形成が開始されることによる画質劣化を抑制することを課題とする。
【解決手段】書込装置203による静電潜像の形成を開始する前に、帯電装置201により帯電処理を行いながら、かつ、イレーズ207による除電処理を行いながら、一次転写バイアスを印加しない状態で、感光体202を回転駆動する前回転処理を実施する。この前回転処理において、感光体の帯電電位の絶対値が所定の基準値以上となる回転回数までは感光体を回転駆動させて前回転処理を継続するが、その後も、感光体の帯電電位の時間変化を示す指標値が規定値α以下となる回転回数までは感光体を回転駆動させて前回転処理を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置、特に電子写真方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置において長期にわたって安定かつ高品位の画像を得ることが望まれている。この要望を受けて、特に画像情報をデジタル信号に変換して光によって静電潜像を形成して画像形成を行うレーザープリンタやデジタル複写機では、そのプリント品質や信頼性の向上が図られている。プリント品質や信頼性の向上を図る上では、感光体について、高画質化、高耐久化(特に高耐摩耗性)、高安定化を成立させることが特に重要な課題となる。
【0003】
感光体としては、有機系の感光材料を用いたものが、コスト、生産性及び無公害性等の理由から一般に広く利用されている。かかる有機系の感光体としては、ポリビニルカルバゾール(PVK)に代表される光導電性樹脂、PVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−バインダーに代表される顔料分散型、そして電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られている。
【0004】
有機系の感光体は、感光層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため、一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。感光層の膜削れが進むと、感光体の帯電電位の低下、光感度の劣化、感光体表面のキズなどによる地汚れ、画像濃度低下あるいは画質劣化が促進される傾向があるので、有機系感光体における耐摩耗性を向上させることが大きな課題として挙げられていた。特に、近年では電子写真装置の高速化あるいは装置の小型化に伴う感光体の小径化によって感光体の高耐久化が困難な状況にあるため、より一層の高耐久化が重要な課題となっている。このような観点から、上述した各型の感光体の中でも、光感度、耐久性に優れ、更に電荷発生物質、電荷輸送物質を個別に分子設計できる等の理由から、機能分離型の感光体が主流となっている。
【0005】
機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、感光体の表面を帯電した後、光照射することにより、その光が電荷輸送層を通過して電荷発生層中の電荷発生物質に吸収される。これにより、電荷発生層中に電荷が生成され、その電荷が電荷発生層と電荷輸送層との界面で電荷輸送層に注入され、さらに電界によって電荷輸送層中を移動し、感光体の表面電荷を中和する。その結果、光を照射した箇所の感光体表面電位が落ち、これにより残留した電位(残留電位)の部分が静電潜像となる。
【0006】
感光体の耐摩耗性向上を実現する方法としては、感光体の最表層にフィラーを含有させる方法、もしくは、低分子電荷輸送物質(CTM)の代わりに高分子型電荷輸送物質を用いる方法が広く知られている。しかしながら、このように感光体の最表層に耐摩耗性を付与した感光体を用いた画像形成装置では、図16に示すように、感光体の表面電位を目標帯電電位に近い目標電位範囲内にまで帯電させることができるまでの感光体回転回数が増大するという不具合があった。帯電処理がなされた感光体の表面電位(帯電電位)が目標電位範囲内に達する前に画像形成を開始すると、トナー像の濃度が不足したり、また、画像形成途中でトナー像の濃度が変動して一つの画像中で画像濃度ムラが生じたりして、顕著な画像不良が生じる。そのため、例えば特許文献1に記載の画像形成装置のように、一般には、感光体の帯電電位が目標電位範囲内に達するのを待ってから画像形成が開始されるように、画像形成開始に先立って、帯電装置で帯電処理を行いながら感光体を回転させる感光体の前回転処理が実施される。
【0007】
この感光体の前回転処理では、感光体の回転回数(前処理時回転回数)を不必要に大きくすると感光体の短寿命化を招くので、できるだけ感光体の前処理時回転回数を必要最小限に設定することが望ましい。そのため、特許文献1に記載の画像形成装置では、感光体の累積回転回数等に応じて予め定められた感光体の前処理時回転回数の中から、感光体回転回数計測装置で計測される感光体の累積回転回数、使用環境、画像形成回数等に対応した適切な前処理時回転回数を選択し、選択した前処理時回転回数に基づいて感光体の前回転処理を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の画像形成装置は、感光体の帯電電位が目標電位範囲内に達したら早期のうちに画像形成を開始するという観点で、前回転処理時における感光体の回転回数を設定している。しかしながら、本発明者は、鋭意研究の結果、感光体の帯電電位が目標電位範囲内に達しても、帯電された感光体表面に対して潜像形成用の露光を行ったときの残留電位(露光部電位)が変化して安定しないために、画質劣化が生じるという問題があることを見いだした。
【0009】
図17は、前回転処理における感光体の回転回数と残留電位との関係を示すグラフである。
図16に示したように、前回転処理における感光体の回転回数を増加させることで、感光体の帯電電位は徐々に目標帯電電位に近づき、最終的には、感光体の帯電電位(絶対値)が所定の基準値以上となって目標電位範囲内に入る。一方、図17に示したように、残留電位の変化量は、前回転処理における感光体の回転回数が増加することで徐々に少なくなっていくが、残留電位が安定する前処理時回転回数は、帯電電位が目標電位範囲内に達する前処理時回転回数よりも大きい。したがって、上記特許文献1に記載の画像形成装置のように、帯電電位が目標電位範囲内に達したらなるべく早期のうちに画像形成を開始するという観点で感光体の前処理時回転回数を設定すると、残留電位が安定する前に画像形成が開始されることになる。残留電位の変化量が大きいと、現像ポテンシャルの変化量が大きいので、トナー濃度変動が顕著となる。そのため、残留電位が安定する前に画像形成を開始すると、トナー像の濃度が不足したり、画像形成途中でトナー像の濃度が変動して一つの画像中で画像濃度ムラが生じたりして、画像不良が発生する。
【0010】
ただし、画像形成装置の中には、感光体と対向する転写部材に目標帯電電位とは逆極性の電位を付与することによって感光体と転写部材との間に転写バイアスを印加し、その転写バイアスの作用によって感光体上のトナー像を中間転写体や記録材などの被転写材上へ転写する画像形成装置がある。本発明者の研究の結果、このような画像形成装置において、転写バイアスを印加した状態で前回転処理を実施した場合には、図18に示すとおり、残留電位が変化せず、上述した問題が発生しないことが確認された。これは、帯電処理により感光体に付与された表面電荷(ここでは負電荷とする。)が、転写バイアスによって除電されることに影響する。
【0011】
詳しくは、転写バイアスにより流れる転写電流によって感光体表面には正電荷が注入され、帯電処理によって付与された感光体表面の負電荷が当該正電荷によって打ち消されて除電される。通常は、帯電処理によって付与された負電荷の量に対して転写バイアスによって注入される正電荷は少ないので、転写バイアスによる除電後の感光体表面には負電荷が残る。ここで、帯電電位がすでに目標電位範囲内に入っている場合、次の帯電処理においては前回とほぼ同じ帯電電位(目標帯電電位)にまで感光体表面が帯電する。したがって、当該次の帯電処理後に感光体表面上に存在する負電荷の量は前回と同じである。その後、転写バイアスで注入される正電荷の量は前回と同じ量なので、この転写バイアスによる除電後の感光体表面に残る負電荷の量は前回と同じ量となる。つまり、帯電処理及び転写バイアス印加を繰り返し行っても、感光体には電荷が蓄積することがないので、残留電位が変化することはない。
【0012】
一方、感光体表面に除電光を照射して感光体を除電しながら感光体の前回転処理を実施する場合、静電潜像形成のメカニズムと同様に、除電光によって発生した正電荷が、帯電処理により付与された感光体表面の負電荷との電位差によって感光体表面へ移動する。そして、感光体表面へ移動した正電界が感光体表面の負電荷を打ち消すことにより、感光体が除電される。この場合、正電荷の移動の際に正電荷が感光体層中にトラップされ、トラップされた正電荷が徐々に蓄積することで残留電位が上昇する。この正電荷のトラップによる残留電位の上昇量(変化量)は、帯電処理及び除電光による除電処理の繰り返し回数が増加するにつれて徐々に小さくなり、残留電位はいずれ安定するが、残留電位が安定するまでには、上述したとおり相当の前回転回数を要することになる。
【0013】
なお、感光体表面に除電光を照射して感光体を除電しながら行う感光体の前回転処理を、転写バイアスを印加した状態で実施する場合も、残留電位が変化せず、上述した問題が発生しない。転写バイアス印加後の感光体表面に対して除電光による除電処理を行ったとしても、転写バイアスによる除電効果によって感光体表面には負電荷がほとんど存在しないために、感光体層中に発生した正電荷は感光体表面へと移動しないからである。
【0014】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、感光体の前回転処理による感光体の短寿命化を抑制しつつ、残留電位が安定する前に画像形成が開始されることによる画質劣化を抑制することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、回転駆動する感光体と、上記感光体の表面が目標帯電電位となるように帯電処理を行う帯電手段と、上記帯電手段により帯電処理がなされた感光体表面部分を露光して静電潜像を形成する露光手段と、上記露光手段により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、上記感光体と対向する転写部材に上記目標帯電電位とは逆極性の電位を付与することにより該感光体と該転写部材との間に転写バイアスを印加し、該転写バイアスの作用によって該感光体上に形成されたトナー像を被転写材上へ転写する転写処理を行う転写手段と、上記転写手段によりトナー像が転写された後の感光体の表面に除電光を照射して除電する除電処理を行う除電手段と、上記露光手段による静電潜像の形成を開始する前に、上記帯電手段により帯電処理を行いながら、かつ、上記除電手段による除電処理を行いながら、上記転写バイアスを印加しない状態で、上記感光体を回転駆動する前回転処理を実施し、該感光体の帯電電位の絶対値が所定の基準値以上となる回転回数までは該感光体を回転駆動させて該前回転処理を継続する前回転処理手段とを有する画像形成装置において、上記前回転処理手段は、上記感光体の帯電電位の絶対値が上記所定の基準値以上となる回転回数に達した後も、該感光体の帯電電位の時間変化が規定値以下となる回転回数までは、該感光体を回転駆動させて上記前回転処理を継続することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記感光体の帯電電位を測定する電位測定手段を有し、上記前回転処理手段は、上記前回転処理中における上記電位測定手段の測定結果から得られるn周目の感光体一周分の平均表面電位をVdavg(n)としたとき、以下の式(1)により得られる上記時間変化の指標値DVstbが上記規定値以下となる回転回数までは該感光体を回転駆動させて上記前回転処理を継続することを特徴とするものである。
DVstb=|Vdavg(n)−Vdavg(n+1)|・・・(1)
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、上記被転写材は中間転写体であり、上記感光体と上記中間転写体とを接離させる中間転写体接離手段を有し、上記前回転処理手段は、上記中間転写体接離手段により上記感光体と上記中間転写体とを離間させた状態で上記前回転処理を実施することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記感光体の累積回転回数を計測する累積回転回数計測手段を有し、上記前回転処理手段は、上記前回転処理中の感光体の回転回数が、上記累積回転回数計測手段の計測結果に応じて決められる最大回転回数に達したら、上記時間変化が上記規定値以下でなくても、上記前回転処理を終了することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記感光体の使用環境における温度および湿度の少なくとも一方を検知する検知手段を有し、上記前回転処理手段は、上記前回転処理中の感光体の回転回数が、上記検知手段の検知結果に応じて決められる最大回転回数に達したら、上記時間変化が上記規定値以下でなくても、上記前回転処理を終了することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記前回転処理時に上記除電手段によって上記感光体の表面に照射する除電光の出力値は、画像形成時における除電光の出力値よりも大きいことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記感光体は、導電性支持体上に感光層が形成され、その最表面層としてフッ素樹脂微粒子を含有する保護層を有するものであることを特徴とするものである。
【0016】
感光体の前回転処理による感光体の短寿命化を抑制しつつ、残留電位が安定する前に画像形成が開始されることによる画質劣化を抑制するためには、感光体の残留電位が安定した時点から早期のうちに画像形成を開始することを要する。そのためには、感光体の残留電位が安定した時点を把握することが必要である。感光体の残留電位が安定したか否かは、帯電処理後の感光体表面に対して画像形成時と同様の潜像形成用の露光を行い、その露光部分の感光体表面電位(残留電位)を測定することで、直接的に判断することが可能である。しかしながら、この場合、画像形成を行わない前回転処理中に感光体に対して画像形成時と同様の露光処理を行うことになる。感光体は露光処理によって劣化が進行するので、前回転処理中に露光処理を行うことは感光体の短寿命化につながる。よって、感光体の前回転処理による感光体の短寿命化を抑制する上では、前回転処理中に露光処理を行わずに、感光体の残留電位が安定する時点を把握することが必要となる。
本発明者は、鋭意研究の結果、感光体の帯電電位の時間変化が規定値以下になれば、感光体の残留電位の変化量も許容範囲内となり、残留電位が安定するという知見を得た。この規定値は、感光体の帯電電位が所定の基準値以上となって目標電位範囲内に達した時点における帯電電位の時間変化と比較すると、これよりも小さい時間変化に相当する値である。
本発明は、上記知見に基づき、感光体の帯電電位の絶対値が所定の基準値以上となる回転回数に達した後も、感光体の帯電電位の時間変化が規定値以下となる回転回数までは感光体を回転駆動させて前回転処理を継続することとしている。これにより、感光体の残留電位が安定した時点から早期のうちに画像形成を開始することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上、本発明によれば、前回転処理中に露光処理を行わずに、感光体の残留電位が安定した時点から早期のうちに画像形成を開始することが可能となるので、感光体の前回転処理による感光体の短寿命化を抑制しつつ、残留電位が安定する前に画像形成が開始されることによる画質劣化を抑制することが可能となるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るプリンタの要部の概略構成を示した説明図である。
【図2】同プリンタの画像形成部の概略構成を示した説明図である。
【図3】同プリンタに用いられる感光体の高温高湿環境下における感光特性の一例を示すグラフである。
【図4】同プリンタに用いられる感光体の低温低湿環境下における感光特性の一例を示すグラフである。
【図5】帯電電位の絶対値が500Vである場合について、低温低湿(10℃、15%)、中温中湿(23℃、50%)、高温高湿(27℃、80%)における残留電位(潜像部電位)の経時変化の一例を示すグラフである。
【図6】帯電電位の絶対値が900Vである場合について、低温低湿(10℃、15%)、中温中湿(23℃、50%)、高温高湿(27℃、80%)における残留電位(潜像部電位)の経時変化の一例を示すグラフである。
【図7】同プリンタが備える各部の電気的な接続を示すブロック図である。
【図8】感光層が単層構造で、保護層を有しない感光体の層構成を示す模式図である。
【図9】感光層が単層構造で、保護層を有する感光体の層構成を示す模式図である。
【図10】感光層が積層構造で、保護層を有しない感光体の層構成を示す模式図である。
【図11】感光層が積層構造で、保護層を有する感光体の層構成の一例を示す模式図である。
【図12】感光層が積層構造で、保護層を有する感光体の層構成の他の例を示す模式図である。
【図13】同プリンタの画像形成部における動作シーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【図14】累積印刷枚数および使用環境の温湿度に応じた前回転回数を表すグラフである。
【図15】安定度DVstbと残留電位の変化量との関係を示すグラフである。
【図16】感光体に保護層を有する場合と保護層を有しない場合について、感光体の前回転回数と帯電電位との関係を示すグラフである。
【図17】感光体に保護層を有する場合と保護層を有しない場合について、感光体の前回転回数と残留電位(潜像部電位)の変化量との関係を示すグラフである。
【図18】一次転写バイアスを印加する場合と印加しない場合について、感光体の前回転回数と残留電位(潜像部電位)の変化量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置であるプリンタに適用した一実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係るプリンタの要部の概略構成を示した説明図である。
本プリンタは、図1に示すように、複数の張架ローラに張架された被転写材である中間転写体としての中間転写ベルト101に沿って画像形成部102Y(イエロー),102M(マゼンタ),102C(シアン),102K(黒)が設けられている。また、各画像形成部102Y,102M,102C,102Kにより形成されたトナー像は、転写手段としての一次転写装置106Y,106M,106C,106Kにより中間転写ベルト101上へ転写される。中間転写ベルト101は一次転写装置106の下部に取り付けられている一次転写装置接離機構(以下「一次転写リトラクタ」という。)116により一次転写装置106を介して感光体202方向へ押圧されている。また、中間転写ベルト上に転写されたトナー像のトナー付着量を検出するトナー付着量検知手段としての画像検出装置110が中間転写ベルト101に対向して設けられている。中間転写ベルト101上のトナー像は二次転写装置111により記録材としての転写紙112へ転写される。
【0021】
図2は、画像形成部102Y,102M,102C,102Kの概略構成を示した説明図である。なお、各画像形成部102Y,102M,102C,102Kの構成は同様のものであるので、以下、互いに区別することなく説明する。
感光体202の周りには、感光体表面をマイナス極性に帯電させる帯電手段としての帯電装置201、書き込み光Lで露光するにより感光体表面の電位を落として静電潜像を書き込む露光手段としての書込装置203、静電潜像をマイナス極性帯電トナーによって現像する現像手段としての現像装置205、感光体上の転写残トナーなどをクリーニングするクリーニング手段としての感光体クリーナ206、及び、感光体表面に除電光を照射して除電する除電手段としてのイレーズ(除電装置)207、電位測定手段としての電位センサ210が設けられている。
【0022】
本実施形態の感光体は、感光体表面層にフィラーを含有させた高硬度感光体である。この感光体は、感光体表面層にフィラーを含有しない一般的な感光体と同様に、図3及び図4に例示するような感光特性、すなわち、露光量LDPowerの変化に対する残留電位(露光部電位)VLの変化割合が露光量の増大につれて徐々に小さくなる感光特性をもっている。また、本実施形態の感光体は、図5及び図6に例示するように、目標とする残留電位(露光部電位)VLが経時的に徐々に高まる特性をもっている。したがって、本実施形態の感光体は、画像形成時に使用する露光量範囲内における露光量LDPowerと残留電位(露光部電位)VLとの対応関係が経時的に大きく変化するものである。
【0023】
本実施形態の帯電装置201は、図示しないコロナ放電ワイヤと、このコロナ放電ワイヤに対向したグリッド電極からなる非接触式帯電器であり、グリッド電極のグリッド電圧(帯電バイアス)Vgを目標帯電電位(本実施形態ではマイナス極性)に設定することで、感光体202の表面電位をその目標帯電電位にするものである。なお、帯電装置201は、これに限らず、他の非接触式帯電器や、接触式帯電器を用いることもできる。
【0024】
本実施形態の書込装置203は、光源としてレーザーダイオード(LD)を用い、断続的な書き込み光すなわち繰り返しパルス状の書き込み光Lを照射することで、感光体表面上に1ドットごとの静電潜像(1ドット静電潜像)を形成する。本実施形態では、1ドット静電潜像を形成する際の露光時間(単位露光時間)を変更することで、1ドット静電潜像に付着するトナー付着量を制御して階調制御を行うことが可能となっている。本実施形態では、最大単位露光時間を15分割(それぞれの単位露光時間を以下「露光デューティ」という。)して、16階調の階調制御が可能となっている。したがって、本実施形態では、露光デューティを、0(露光しない)乃至15(最大単位露光時間)の16段階で調整可能となっている。
【0025】
本実施形態の現像装置205は、感光体表面に対向配置される現像剤担持体としての現像ローラを備えており、所定極性(本実施形態ではマイナス極性)に帯電したトナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤を現像ローラ上に担持させて、感光体表面にトナーを供給する。現像ローラには、絶対値が露光部電位VLよりも十分に大きくかつ帯電電位(非露光部電位)Vdよりも十分に小さい現像バイアスVbを印加されている。これにより、感光体表面と現像ローラとが対向する現像領域において、感光体表面上の静電潜像(露光部)に向けてトナーを移動させ、かつ、感光体表面上の非静電潜像(非露光部)にはトナーが移動しないような電界を形成でき、静電潜像をトナーで現像することができる。
【0026】
画像形成を行うときには、まず、感光体202の表面が一様に目標帯電電位(マイナス極性)となるように、帯電装置201により感光体表面を帯電する。次に、帯電された感光体表面部分に対し、画像データに応じた書き込み光Lを書込装置203の光源(LD)から感光体202Yへ露光し、これにより感光体表面の露光部分の電位(絶対値)が下がることにより、感光体表面に静電潜像が形成される。この後、感光体202上に形成された静電潜像(本実施形態では露光部)は、現像装置205の現像ローラ上に担持されたトナーによってトナー像に現像される。具体的には、現像ローラに対し、絶対値が露光部電位VLよりも大きくかつ帯電電位Vdよりも小さい現像バイアスVbを印加して、所定極性(本実施形態ではマイナス極性)に帯電したトナーを静電的に静電潜像に付着させることにより現像する。
【0027】
感光体202上に形成されたトナー像は、一次転写装置106により中間転写ベルト101上に転写される。中間転写ベルト101に転写されずに感光体202上に残った転写残トナーは感光体クリーナ206で回収される。また、中間転写ベルト101上にトナー像を転写した後の感光体表面は、イレーズ207により一様に除電光が照射されることにより、非静電潜像部分が除電されて、一様に除電された状態になる。
【0028】
このようにして各画像形成部102Y,102M,102C,102Kで形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト101上に互いに重なり合うように一次転写される。その後、中間転写ベルト101上に転写された各色トナー像を二次転写装置111により中間転写ベルト101から転写紙112へ転写し、図示しない定着装置によってトナー像が転写紙112に定着され一連の印刷プロセスを終了する。
【0029】
図7は、本実施形態のプリンタが備える各部の電気的な接続を示すブロック図である。
図7に示すように、本実施形態のプリンタには、コンピュータ構成のメイン制御部41が備えられており、このメイン制御部41が各部を駆動制御する。メイン制御部41は、各種演算や各部の駆動制御を実行するCPU(Central Processing Unit)42にバスライン45を介して、コンピュータプログラム等の固定的データを予め記憶するROM(Read Only Memory)44と各種データを書き換え自在に記憶するワークエリア等として機能するRAM(Random Access Memory)43とが接続されて構成されている。
【0030】
メイン制御部41には、電位センサ210が接続されており、電位センサ210は、Y、M、C、K各色の感光体202の電位を検出する。これらの電位センサ210Y,210M,210C,210Kで検出した情報は、メイン制御部41に送り出される。また、メイン制御部41には図示しない帯電装置、書込装置、現像装置も接続されている。メイン制御部41は、電位センサ210で検出された感光体202の電位を記憶し、その値を基に感光体202の前処理回転回数などを適宜変更しながら前回転処理を実施する前回転処理手段としての機能を有している。
【0031】
次に、本実施形態における感光体を構成する各層について、図8乃至12を用いて説明する。
<導電性支持体について>
導電性支持体202Aとしては、体積抵抗率が1010[Ω・cm]以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。
【0032】
この他、支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、導電性支持体として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本実施形態の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0033】
<下引き層について>
本実施形態の感光体においては、導電性支持体202Aと感光層との間に図示しないが下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本実施形態の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本実施形態における下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5[μm]が適当である。
【0034】
<感光層について>
次に感光層について説明する。
感光層は積層構造でも単層構造でもよい。積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層202Cと電荷輸送機能を有する電荷輸送層202Dとから構成される。また、単層構造の場合には、感光層202Bは電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
【0035】
<感光層が単層構造である場合>
次に、感光層が単層構成である場合について、図8及び図9を参照して説明する。
上述した電荷発生物質及び電荷輸送物質を結着樹脂中に分散した感光体が使用できる。感光層は、電荷発生物質および電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。電荷輸送物質としては、電荷輸送層で挙げた電荷輸送物質を使用することができる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層202Dで挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層202Cで挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜150重量部である。感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。感光層の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
【0036】
<感光層が積層構造である場合>
次に、感光層が積層構成である場合について、図10〜図12を参照して説明する。
電荷発生層202Cは、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層202Cには、公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ用いられる。これら電荷発生物質は単独でも、2種以上混合してもかまわない。電荷発生層202Cは、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。必要に応じて電荷発生層202Cに用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。結着樹脂の添加は、分散前あるいは分散後どちらでも構わない。
【0037】
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。電荷発生層202Cは、電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていても良い。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層202Cの膜厚は、0.01〜5[μm]程度が適当であり、好ましくは0.1〜2[μm]である。
【0038】
一方、電荷輸送層202Dは、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層202C上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により単独あるいは2種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。結着樹脂としては、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリール樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルぺンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアリレート、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、フェノキシ樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0039】
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は解像度・応答性の点から、25[μm]以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)に異なるが、5[μm]以上が好ましい。ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。以上のようにして得られた塗工液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等、従来の塗工方法を用いることができる。
【0040】
<感光体の表面保護層202Eについて>
次に、図9、図11、図12を用いて、感光体の表面層が保護層202Eである場合について説明する。
感光体の表面層202Eは、アミン化合物を含有する。また、耐摩耗性を向上させる目的でフィラーを含有させることができる。また、分散剤として酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物の少なくとも一種を添加することができる。上記フィラーには、有機性フィラー材料と無機性フィラー材料がある。有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化クロム、シリカ、酸化錫、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。これらのフィラーの中でも処理効率並びに硬度の点から金属酸化物を用いることが、耐摩耗性の向上に対して有利である。
【0041】
さらに、画像ボケが発生しにくいフィラーとしては、電気絶縁性が高いフィラーが好ましく、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が特に有効に使用できる。また、これらのフィラーを単独で使用することはもちろん、2種類以上を混合して用いることも可能である。また、これらのフィラーの中でも高い絶縁性を有し、熱安定性が高い上に、耐摩耗性が高い六方細密構造であるα型アルミナは、画像ボケの抑制や耐摩耗性の向上の点から特に有用である。フィラーの平均一次粒径は、0.01〜1.0[μm]、好ましくは0.1〜0.5[μm]であることが表面層の光透過率や耐摩耗性の点から好ましく、さらに望ましくは0.3〜0.5[μm]である。フィラーの平均一次粒径が0.01[μm]未満の場合は、耐摩耗性の低下、分散性の低下等を引き起こし、1.0[μm]より大きい場合には、分散液中においてフィラーの沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生したりする可能性がある。フィラーの含有量としては、好ましくは0.1〜50重量%で、より好ましくは5〜30重量%である。0.1重量%未満であると耐摩耗性はあるものの十分ではなく、50重量%を越えると、透明性が損なわれる恐れがある。
【0042】
さらに、これらのフィラーは少なくとも一種の分散剤で分散させて用いられる。これにより、分散性の向上、フィラー添加に起因する残留電位上昇の抑制に対し有効となる。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇に影響するだけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。
【0043】
次に、この分散剤である酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物について説明する。
酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物を含有させると、フィラーの添加によって発生した、残留電位上昇を抑制することができる。酸価とは、1g中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数で定義される。これらの酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物としては、一般に知られている有機脂肪酸や高酸価樹脂等、酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物であれば使用することができる。しかし、非常に低分子のマレイン酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸等の有機酸やアクセプター等はフィラーの分散性を大幅に低下させてしまう可能性があるため、残留電位低減効果が十分に発揮されなくなる場合がある。したがって、感光体の残留電位を低減させ、かつフィラーの分散性を高めるためには低分子量ポリマーや樹脂、共重合体等、さらにはそれらを混合させて使用することが好ましい。
【0044】
それらの有機化合物の構造としては、立体障害が少ないリニアの構造を有することがより好ましい。分散性を向上させるためにはフィラーと結着樹脂との双方に親和性を持たせることが必要であり、立体障害が大きな材料は、それらの親和性が低下することにより、分散性が低下し、前述のような多くの問題を発生させることにつながる。かかる観点から、酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物としては、ポリカルボン酸が好ましい。該ポリカルボン酸は、カルボン酸をポリマーあるいはコポリマー中に含む構造を有する化合物であって、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル酸やメタクリル酸を用いた共重合体、スチレン−カルボキシル含有又はフェノール性ヒドロキシ基含有アクリル共重合体等、カルボン酸を含む有機化合物あるいはその誘導体は使用することが可能である。また、これらの材料は2種以上混合して用いることが可能であり、かつ有用である。場合によっては、これらの材料と有機脂肪酸とを混合させることによって、フィラーの分散性あるいはそれに伴う残留電位の低減効果が高まることがある。
【0045】
本実施形態においては、酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物を用いるが、酸価が30〜300[mgKOH/g]の有機化合物を用いることが好ましい。酸価が必要以上に高いと抵抗が下がりすぎて画像ボケの影響が大きくなり、酸価が低すぎると添加量を多くする必要が生じる上、残留電位の低減効果が不十分となる。有機化合物の酸価は、その添加量とのバランスにより決めることが必要である。同じ添加量でも酸価が高ければ残留電位低減効果が高いというわけではなく、その効果はこれら酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物のフィラーへの吸着性にも大きく関係している。
【0046】
保護層202Eに含有させるフィラー材料は、少なくとも有機溶剤、酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物等とともにボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの従来方法を用いて分散することができる。この中でも、フィラーと酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物との接触効率を高くすることができ、外界からの不純物の混入が少ないボールミルによる分散が分散性の点からより好ましい。使用されるメディアの材質については、従来使用されているジルコニア、アルミナ、メノウ等すべてのメディアを使用することができるが、フィラーの分散性及び残留電位低減効果の点から特にアルミナを使用することがより好ましい。ジルコニアは分散時のメディアの摩耗量が大きく、それらの混入によって残留電位が著しく増加する。さらに、その摩耗粉の混入によって分散性が大きく低下し、フィラーの沈降性が促進される。一方、メディアにアルミナを使用した場合には、分散時にメディアは摩耗されるものの、摩耗量は低く抑えられる上に、混入した摩耗粉が残留電位に与える影響が非常に小さい。また、摩耗粉が混入しても分散性に対して悪影響が少ない。したがって、分散に使用するメディアにはアルミナを使用することがより好ましい。
【0047】
また、酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物は、フィラーや有機溶剤とともに分散前より添加することによって、塗工液中のフィラーの凝集、さらにはフィラーの沈降性を抑制し、フィラーの分散性が著しく向上することから、分散前より添加することが好ましい。一方、結着樹脂や電荷輸送物質は、分散前に添加することも可能であるが、その場合分散性が若干低下する場合が見られる。したがって、結着樹脂や電荷輸送物質は、有機溶剤に溶解された状態で分散後に添加することが好ましい。
【0048】
アミン部位を有する化合物と酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物とを含有する塗工液を保存する場合には、相互作用による塩の生成を抑制するために、酸化防止剤を含有させる必要がある。この塩が生成すると、塗工液の変色を引き起こすだけではなく、製造された電子写真感光体において、残留電位の上昇等の不具合を引き起こす。この塩の生成による塗工液の経時保存の不安定の原因は、アミン部位を有する化合物の構造に由来するものであり、次に示す酸化防止剤を添加することで塗工経時の不安定さを改善することができる。
【0049】
塗工液に含有させる酸化防止剤としては、後述する一般の酸化防止剤が使用できるが、ヒンダードフェノールの化合物が特に効果的である。但し、ここで用いられる酸化防止剤は、後述の目的と異なり、あくまでもアミン部位を有する化合物の塗工液中での保護のために利用される。このため、これらの酸化防止剤は、アミン部位を有する化合物を含有させる前の工程で塗工液に含有させておくことが好ましく、添加量としては、含有される酸価が10〜700[mgKOH/g]の有機化合物に対して、0.1〜200[wt%]で十分な塗工液経時保存安定性を発揮できる。
【0050】
次に、保護層202Eに使用される結着樹脂に関して説明する。
樹脂材料としては、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリール樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアリレート、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、フェノキシ樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。フィラーの分散性、残留電位、塗膜欠陥の点から、特にポリカーボネートあるいはポリアリレートが有効かつ有用である。
【0051】
<中間層について>
本実施形態の感光体においては、感光層202B,202C,202Dと保護層202Eとの間に図示しないが中間層を設けることも可能である。中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく一般に用いられる塗布法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2[μm]程度が適当である。
【0052】
<各層への添加剤について>
本実施形態においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下防止、残留電位の上昇を防止する目的で、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、保護層、中間層等の各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質およびレベリング剤を添加することができる。これらの化合物の代表的な材料を以下に記す。各層に添加できる酸化防止剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0053】
(a)フェノール系化合物2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]グリコールエステル、トコフェロ−ル類など。
(b)パラフェニレンジアミン類N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(c)ハイドロキノン類2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(d)有機硫黄化合物類ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
(e)有機燐化合物類トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0054】
各層には可塑剤を添加できる。可塑剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。
(b)フタル酸エステル系可塑剤フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなど。
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。
(e)脂肪酸エステル誘導体オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなど。
(f)オキシ酸エステル系可塑剤アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなど。
(g)エポキシ可塑剤エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。
(h)二価アルコールエステル系可塑剤ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなど。
(i)含塩素可塑剤塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。
(j)ポリエステル系可塑剤ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなど。
(k)スルホン酸誘導体p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。
(l)クエン酸誘導体クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。
(m)その他ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなど。
【0055】
各層には滑剤を添加できる。滑剤としては、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)炭化水素系化合物流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレンなど。
(b)脂肪酸系化合物ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸など。
(c)脂肪酸アミド系化合物ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなど。
(d)エステル系化合物脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなど。
(e)アルコール系化合物セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなど。
(f)金属石けんステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど。
(g)天然ワックスカルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウなど。
(h)その他シリコーン化合物、フッ素化合物など。
【0056】
各層には紫外線吸収剤を添加できる。紫外線吸収剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど。
(b)サルシレート系フェニルサルシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなど。
(c)ベンゾトリアゾール系(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなど。
(d)シアノアクリレート系エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−カルボメトキシ−3−(パラメトキシ)アクリレートなど。
(e)クエンチャー(金属錯塩系)ニッケル[2,2’−チオビス(4−t−オクチル)フェノレート]ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。
(f)HALS(ヒンダードアミン)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。
【0057】
次に、本実施形態における前回転処理について説明する。
図13は、図2に示した画像形成部102の動作シーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
フルカラープリント開始信号が入力されるまで、各画像形成部102を構成する各装置、中間転写ベルト101、二次転写装置111は停止しており、感光体202と中間転写ベルト101とは離間状態、つまり一次転写リトラクタ116は一次転写装置106を感光体側へ押圧していない状態となっている。なお、この状態をスタンバイ状態と呼ぶ。
【0058】
フルカラープリント(コピー)開始信号が入力されると、それまでスタンバイ状態にある感光体202の回転駆動が開始されて前回転処理が開始される。この感光体202の回転開始と同時にイレーズ207がONとなる。このとき、イレーズ207の光量は画像形成時の光量よりも大きく設定されており、本実施形態では画像形成時の光量に対して110〜200%の光量に設定している。感光体202の回転開始から所定時間T0が経過した後に感光体クリーナ206が駆動開始する。
【0059】
本実施形態において、感光体202はステッピングモータにて回転駆動しており、感光体の回転開始から所定時間T1後に感光体202は目標の回転速度に安定する。そして、感光体202の回転速度が安定したら、帯電装置201に備え付けられているコロナ放電ワイヤに印加するチャージャ電流およびグリッド電極に印加するグリッドバイアスがONとなる。
【0060】
感光体202の回転速度が安定したタイミングから所定時間T2後に現像装置205に備え付けられた現像ローラに印加する現像バイアスがONとなる。
【0061】
感光体202、イレーズ207、感光体クリーナ206、チャージャ電流、グリッドバイアス、現像バイアスのそれぞれが駆動開始もしくはONとなる動作を画像形成部102Y,102M,102C,102Kの順に所定時間T3の間隔で行う。このような動作を行っているのは、すべての画像形成部を同時に起動すると電源の容量をオーバーする可能性があるためである。
【0062】
制御部41の指示のもと、画像形成開始に先立って、帯電装置201による帯電処理を行いながら、かつ、画像形成時の110〜200%の光量でイレーズ207による除電処理を行いながら、一次転写バイアスを印加しない状態で、感光体202を回転駆動させる前回転処理を実施する。
【0063】
この前回転処理のために、感光体202の帯電電位Vdを電位センサ210によって計測し、感光体202のn回転目における平均値Vdavg(n)を制御部41にて算出する。ここで、「n」は、感光体202の回転開始からの感光体202の回転回数である。感光体202が駆動している間、電位センサ210は感光体202の帯電電位を計測しているので、感光体202が一回転分するたびに帯電電位の平均値Vdavg(n)が算出される。
【0064】
制御部41は、Vdavg(n)を算出するとともに、このVdavg(n)の値から、感光体202の帯電電位Vdの時間変化の指標値である帯電電位の安定度DVstbを算出する。この安定度DVstbを算出する式は、下記の式(1)のとおりである。本実施形態における指標値は、感光体202の一回転の帯電電位とその後の一回転の帯電電位との差を示すものであるが、感光体202の帯電電位Vdの時間変化を示す指標値であれば、他の指標値であってもよい。
DVstb = |Vdavg(n) − Vdavg(n+1)| ・・・(1)
【0065】
本実施形態において、前回転処理時における感光体202の回転回数は、累積印刷枚数、使用環境の温度および湿度、VDstb値に応じて判断される。
図14は、累積印刷枚数および使用環境の温湿度に応じた前回転回数を表すグラフである。
本実施形態では、累積印刷枚数と使用環境の温湿度から求まる前回転回数を基本回転回数とし、その基本回転回数に達する前にVDstbが規定値α以下となったときに前回転処理を終了する。ただし、VDstbが規定値α以下とならないまま基本回転回数に達した場合には、追加で感光体をもう一回転させ、これでVDstbが規定値α以下となったら、前回転処理を終了する。このような追加の回転回数は、本実施形態では所定回数Aに設定されている。そして、所定回数Aの追加回転を行っても、VDstbが規定値α以下とならない場合、前回転処理を終了する。これは、感光体202の表面に異常があり、VDstbが規定値α以下とならない場合を想定したものである。
【0066】
前回転処理終了後、イレーズ207の光量を画像形成時の光量に変更し、中間転写ベルト101および2次転写装置111の駆動を開始する。そして、中間転写ベルト101が所定の回転速度となったと同時に一次転写リトラクタ116は一次転写装置106を感光体202の方向へ押圧する、つまり中間転写ベルト101を感光体202と当接させる動作を開始する。一次転写リトラクタ116が当接動作を開始すると同時に現像装置205の構成要素である現像ローラをY、M、C、Kの順序で所定時間T4の間隔をあけて駆動を開始する。また、中間転写ベルト101の感光体202への当接動作が完了した後、一次転写装置に印加する一次転写バイアス及び二次転写装置に印加する二次転写バイアスをONにする。そして、一次転写バイアスがONとなってから所定時間T5後に画像形成を開始する。
【0067】
以上、本実施形態に係るプリンタは、回転駆動する感光体202と、感光体202の表面が目標帯電電位となるように帯電処理を行う帯電手段としての帯電装置201と、帯電装置201により帯電処理がなされた感光体202の表面部分を露光して静電潜像を形成する露光手段としての書込装置203と、書込装置203により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段としての現像装置205と、感光体202と対向する転写部材である一次転写ローラに目標帯電電位(マイナス極性)とは逆極性の電位(プラス極性)を付与することにより感光体202と一次転写装置106との間に一次転写バイアスを印加し、一次転写バイアスの作用によって感光体202上に形成されたトナー像を被転写材としての中間転写ベルト101上へ転写する一次転写処理を行う転写手段としての一次転写装置106と、一次転写装置106によりトナー像が転写された後の感光体202の表面に除電光を照射して除電する除電処理を行う除電手段としてのイレーズ207と、書込装置203による静電潜像の形成を開始する前に、帯電装置201により帯電処理を行いながら、かつ、イレーズ207による除電処理を行いながら、一次転写バイアスを印加しない状態で、感光体202を回転駆動する前回転処理を実施し、感光体202の帯電電位Vdの絶対値が所定の基準値以上となる回転回数までは感光体202を回転駆動させて前回転処理を継続する前回転処理手段としての制御部41とを有する画像形成装置である。そして、制御部41は、感光体202の帯電電位Vdの絶対値が所定の基準値以上となる回転回数に達した後も、感光体202の帯電電位の時間変化が規定値α以下となる回転回数までは、感光体202を回転駆動させて前回転処理を継続する。これにより、感光体202の露光部電位(残留電位)VLが安定した時点から早期のうちに画像形成を開始することが可能となる。
特に、本実施形態では、感光体202の帯電電位を測定する電位測定手段としての電位センサ210を設け、前回転処理中における電位センサ210の測定結果から得られるn周目の感光体一周分の平均表面電位をVdavg(n)としたとき、上記式(1)により得られる上記時間変化の指標値である安定度DVstbが規定値α以下となる回転回数までは感光体202を回転駆動させて前回転処理を継続する。図15は、安定度DVstbと残留電位の変化量との関係を示すグラフである。このグラフに示すように、残留電位の変化量が小さくなって残留電位が安定状態に近い範囲では、残留電位の変化量と安定度DVstbとの相関関係が高い。したがって、感光体202の帯電電位の時間変化を示す指標値として安定度DVstbを用いることで、簡易かつ高精度に、感光体202の露光部電位(残留電位)VLが安定した時点を把握でき、その時点から早期のうちに画像形成を開始することができる。
また、本実施形態では、感光体202と中間転写ベルト101とを接離させる中間転写体接離手段としての一次転写リトラクタ116を設け、一次転写リトラクタ116により感光体202と中間転写ベルト101とを離間させた状態で前回転処理を実施する。これにより、中間転写ベルト101を感光体202に対して接触させて前回転処理を行う場合よりも、中間転写ベルト101の長寿命化を図ることができるなどの利点が得られる。
また、本実施形態において、制御部41は、感光体202の累積回転回数を計測する累積回転回数計測手段として機能し、その計測結果に応じて決められる最大回転回数(基本回転回数+追加A回)に前回転処理中の感光体202の回転回数が達したら、安定度DVstbが規定値α以下でなくても前回転処理を終了する。これにより、感光体202の表面に異常があって、いつまでも前回転処理が終了しないというような事態を避けることができる。
また、本実施形態においては、感光体202の使用環境における温度および湿度の少なくとも一方を検知する検知手段としての温湿度センサを有し、制御部41は、前回転処理中の感光体202の回転回数が温湿度センサの検知結果に応じて決められる最大回転回数(基本回転回数+追加A回)に達したら、安定度DVstbが規定値α以下でなくても前回転処理を終了する。これにより、感光体202の表面に異常があって、いつまでも前回転処理が終了しないというような事態を避けることができる。
また、本実施形態では、前回転処理時にイレーズ207によって感光体202の表面に照射する除電光の出力値(露光量)は、画像形成時における除電光の出力値(露光量)よりも大きい。これにより、より迅速に、感光体202の露光部電位(残留電位)VLを安定させることができ、より早期に前回転処理を終了して画像形成を開始することができる。
また、本実施形態において、感光体202は、導電性支持体202A上に感光層202B,202C,202Dが形成され、その最表面層としてフッ素樹脂微粒子を含有する保護層202Eを有するものである。このような感光体202は、高画質化、高耐久化の観点で有利である。
【符号の説明】
【0068】
41 制御部
101 中間転写ベルト
102 画像形成部
106 一次転写装置
111 二次転写装置
116 一次転写リトラクタ
201 帯電装置
202 感光体
202A 導電性支持体
202B 感光層
202C 電荷発生層
202D 電荷輸送層
202E 保護層
203 書込装置
205 現像装置
206 感光体クリーナ
207 イレーズ
210 電位センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2009−145704号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動する感光体と、
上記感光体の表面が目標帯電電位となるように帯電処理を行う帯電手段と、
上記帯電手段により帯電処理がなされた感光体表面部分を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
上記露光手段により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
上記感光体と対向する転写部材に上記目標帯電電位とは逆極性の電位を付与することにより該感光体と該転写部材との間に転写バイアスを印加し、該転写バイアスの作用によって該感光体上に形成されたトナー像を被転写材上へ転写する転写処理を行う転写手段と、
上記転写手段によりトナー像が転写された後の感光体の表面に除電光を照射して除電する除電処理を行う除電手段と、
上記露光手段による静電潜像の形成を開始する前に、上記帯電手段により帯電処理を行いながら、かつ、上記除電手段による除電処理を行いながら、上記転写バイアスを印加しない状態で、上記感光体を回転駆動する前回転処理を実施し、該感光体の帯電電位の絶対値が所定の基準値以上となる回転回数までは該感光体を回転駆動させて該前回転処理を継続する前回転処理手段とを有する画像形成装置において、
上記前回転処理手段は、上記感光体の帯電電位の絶対値が上記所定の基準値以上となる回転回数に達した後も、該感光体の帯電電位の時間変化が規定値以下となる回転回数までは、該感光体を回転駆動させて上記前回転処理を継続することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記感光体の帯電電位を測定する電位測定手段を有し、
上記前回転処理手段は、上記前回転処理中における上記電位測定手段の測定結果から得られるn周目の感光体一周分の平均表面電位をVdavg(n)としたとき、以下の式(1)により得られる上記時間変化の指標値DVstbが上記規定値以下となる回転回数までは該感光体を回転駆動させて上記前回転処理を継続することを特徴とする画像形成装置。
DVstb = |Vdavg(n) − Vdavg(n+1)| ・・・(1)
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
上記被転写材は中間転写体であり、
上記感光体と上記中間転写体とを接離させる中間転写体接離手段を有し、
上記前回転処理手段は、上記中間転写体接離手段により上記感光体と上記中間転写体とを離間させた状態で上記前回転処理を実施することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記感光体の累積回転回数を計測する累積回転回数計測手段を有し、
上記前回転処理手段は、上記前回転処理中の感光体の回転回数が、上記累積回転回数計測手段の計測結果に応じて決められる最大回転回数に達したら、上記時間変化が上記規定値以下でなくても、上記前回転処理を終了することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記感光体の使用環境における温度および湿度の少なくとも一方を検知する検知手段を有し、
上記前回転処理手段は、上記前回転処理中の感光体の回転回数が、上記検知手段の検知結果に応じて決められる最大回転回数に達したら、上記時間変化が上記規定値以下でなくても、上記前回転処理を終了することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記前回転処理時に上記除電手段によって上記感光体の表面に照射する除電光の出力値は、画像形成時における除電光の出力値よりも大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記感光体は、導電性支持体上に感光層が形成され、その最表面層としてフッ素樹脂微粒子を含有する保護層を有するものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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