画像形成装置
【課題】ヘッドにより吐出されたインク等の液体を担持する中間転写部材を有する画像形成装置であって、中間転写部材を洗浄するための液体を用いなくても、また、画像形成を行うための液体を中間転写部材上で乾燥しなくても、中間転写部材の清掃を良好に行うことを可能とした画像形成装置の提供。
【解決手段】ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫから吐出された液体を担持し、担持した液体が媒体Ｓに転写される中間転写部材（以下「部材」）３７と、部材３７を清掃する清掃手段３４とを有し、清掃手段３４は、部材３７に、部材３７の移動方向Ａ１における異なる位置において当接する、ブレード状の第１の部材５１とローラ状の第２の部材５２とを有し、第２の部材５２は、非液体吸収性であるとともに非粘着性であり、部材３７に当接した位置における移動速度が部材３７の移動速度と異なる画像形成装置１００。
【解決手段】ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫから吐出された液体を担持し、担持した液体が媒体Ｓに転写される中間転写部材（以下「部材」）３７と、部材３７を清掃する清掃手段３４とを有し、清掃手段３４は、部材３７に、部材３７の移動方向Ａ１における異なる位置において当接する、ブレード状の第１の部材５１とローラ状の第２の部材５２とを有し、第２の部材５２は、非液体吸収性であるとともに非粘着性であり、部材３７に当接した位置における移動速度が部材３７の移動速度と異なる画像形成装置１００。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ヘッドによりインク等の液体を吐出して画像形成を行う画像形成装置であって、ヘッドから吐出されたかかる液体を担持する中間転写部材を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、ピエゾ方式に代表される可動アクチュエータ方式、サーマル方式に代表される加熱膜沸騰方式等により、画像情報に応じて、複数の微小ノズルからインク等の液体を液滴化して吐出し紙等の記録媒体に付着させるヘッドを備え、インクジェット記録を行うインクジェットプリンタ等のインクジェット方式の画像形成技術を採用した画像形成装置が知られている（たとえば、〔特許文献１〕〜〔特許文献７〕参照）。このようなインクジェット方式の画像形成装置は、電子写真方式に比べた場合の装置構成の簡便さから、プリンタ、ファクシミリ及び複写機等への適用範囲が拡大しつつある。また、電気回路形成やバイオテクノロジーへの応用など、新たな領域への発展が期待されている。
【０００３】
かかる画像形成装置において、高画質化等の目的で、ヘッドから吐出された液体を担持するとともに担持した液体が用紙等の記録媒体などの他の媒体に転写される中間転写部材を備えたいわゆる中間転写方式の画像形成装置が知られている（たとえば、〔特許文献１〕〜〔特許文献７〕参照）。
【０００４】
中間転写方式の画像形成装置においては、転写後に中間転写部材の表面に残留した記録液の組成物、転写の際に中間転写部材に付着した紙粉、その他埃等の異物が、その後の転写の際にかかる他の媒体に転写されると画像品質低下の原因となるため、画像品質等に関する信頼性確保等のために、中間転写部材を清浄に保つことが必須となっている。
【０００５】
そこで、かかる画像形成装置において、中間転写部材をクリーニングする技術が種々提案されている（たとえば、〔特許文献１〕〜〔特許文献７〕参照）。具体的には、画像形成を行うための液体とは別に、中間転写部材を洗浄するための液体を中間転写部材に付与する技術（たとえば、〔特許文献１〕〜〔特許文献４〕参照）、画像形成を行うための液体を、中間転写部材を洗浄するための液体として中間転写部材に付与する技術（たとえば、〔特許文献５〕参照）、画像形成を行うための液体を中間転写部材上で乾燥させてからブレードにより中間転写部材から除去する技術（たとえば、〔特許文献６〕参照）、画像形成を行うための液体を単にブレードにより中間転写部材から除去する技術（たとえば、〔特許文献７〕参照）が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、画像形成を行うための液体とは別に、中間転写部材を洗浄するための液体を中間転写部材に付与する技術では、画像形成を行うための液体とは別に、中間転写部材を洗浄するための液体を要するため、たとえば、ランニングコスト、廃液による環境負荷が高くなるという問題がある。
画像形成を行うための液体を、中間転写部材を洗浄するための液体として中間転写部材に付与する技術では、画像形成を行うための液体を、中間転写部材を洗浄するための液体として使用するため、たとえば、ランニングコストが高くなるという問題がある。
画像形成を行うための液体を中間転写部材上で乾燥させてからブレードにより中間転写部材から除去する技術では、たとえば、乾燥により、かかる液体が中間転写部材から除去されにくくなるおそれがあるという問題がある。
画像形成を行うための液体を単にブレードにより中間転写部材から除去する技術では、たとえば、液体の除去が不十分になるおそれがあるという問題がある。
【０００７】
本発明は、ヘッドにより吐出されたインク等の液体を担持する中間転写部材を有する画像形成装置であって、中間転写部材を洗浄するための液体を用いなくても、また、画像形成を行うための液体を中間転写部材上で乾燥しなくても、中間転写部材の清掃を良好に行うことを可能とした画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するため、本発明は、ヘッドから吐出された液体を担持するとともに担持した液体が他の媒体に転写される中間転写部材と、この中間転写部材を清掃する清掃手段とを有し、この清掃手段は、前記中間転写部材に、この中間転写部材の移動方向における異なる位置において当接する、ブレード状の第１の清掃部材とローラ状の第２の清掃部材とを有し、第２の清掃部材は、非液体吸収性であるとともに非粘着性であり、前記中間転写部材に当接した位置における移動速度が同中間転写部材の移動速度と異なる画像形成装置にある。
【発明の効果】
【０００９】
本発明は、ヘッドから吐出された液体を担持するとともに担持した液体が他の媒体に転写される中間転写部材と、この中間転写部材を清掃する清掃手段とを有し、この清掃手段は、前記中間転写部材に、この中間転写部材の移動方向における異なる位置において当接する、ブレード状の第１の清掃部材とローラ状の第２の清掃部材とを有し、第２の清掃部材は、非液体吸収性であるとともに非粘着性であり、前記中間転写部材に当接した位置における移動速度が同中間転写部材の移動速度と異なる画像形成装置にあるので、中間転写部材を洗浄するための液体を用いなくても、また、画像形成を行うための液体を中間転写部材上で乾燥しなくても、中間転写部材の清掃を良好に行うことを可能とした画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１０】
【図１】本発明を適用した画像形成装置の一実施形態にかかる概略正面図である。
【図２】図１に示した画像形成装置においてヘッドから中間転写部材に記録液が付与される様子を示す概念図である。
【図３】図１に示した画像形成装置においてヘッドから吐出された記録液中の色剤がプロトンを介して凝集した状態を示す概念図である。
【図４】図１に示した画像形成装置においてカソードとアノードとの間に形成される記録液による液柱の状態を示す概念図である。
【図５】図１に示した画像形成装置に備えられた清掃手段の概略正断面図である。
【図６】図５に示した清掃手段に備えられた第１の清掃部材が中間転写部材に当接する態様を示した概略側断面図である。
【図７】図１に示した画像形成装置において清掃手段により中間転写部材をクリーニングするときの状態を示した概略正面図である。
【図８】第１の清掃部材の他の配設態様を示した概略側断面図である。
【図９】清掃手段の他の構成態様を示した概略正断面図である。
【図１０】本発明を適用した、中間転写部材をベルト状とした画像形成装置の一部の一実施形態にかかる概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１１】
図１に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置１００は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置１００は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
【００１２】
画像形成装置１００は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、ＯＨＰシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置１００は、記録媒体である被記録材たる用紙としての記録体である転写紙Ｓの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Ｓの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
【００１３】
画像形成装置１００は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクとしての液体たる導電性記録液である記録液を吐出する記録液吐出体としてのインクヘッドである記録ヘッドとしてのインクジェットヘッドたるヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫを有している。
【００１４】
ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫは、画像形成装置１００の本体９９の略中央部に配設された中間転写部材としての中間転写ドラムである中間転写体３７の外周面に対向する位置に配設されている。ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫは、中間転写体３７の移動方向であって図１において時計回り方向であるＡ１方向の上流側からこの順で並んでいる。同図において各符号の数字の後に付されたＹ、Ｍ、Ｃ、ＢＫは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【００１５】
Ａ１方向は、中間転写体３７表面の進行方向となっている。Ａ１方向は、副走査方向に対応している。副走査方向に直交する主走査方向は、図１の紙面に直交し、中間転写体３７の周面上でＡ１方向に直交する方向となっている。主走査方向は、中間転写体３７の幅方向に一致している。
【００１６】
ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫはそれぞれ、イエロー（Ｙ）、マゼンタ（Ｍ）、シアン（Ｃ）、ブラック（ＢＫ）の画像を形成するための記録液吐出装置であるインク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫに備えられている。なお、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫは、図１の紙面に垂直な方向に複数が並設された態様で、インク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫに備えられている。
【００１７】
中間転写体３７は、Ａ１方向に回転している状態で、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに対向する領域で、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫからイエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が順次重ね合わされる態様で吐出されて付与され、その表面上に画像が形成されるようになっている。このように、画像形成装置１００は、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫを中間転写体３７に対向させＡ１方向に並設したタンデム構造となっている。
【００１８】
ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫによる中間転写体３７に対する記録液の吐出すなわち付与は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体３７上の同じ位置に重なるよう、Ａ１方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【００１９】
画像形成装置１００は、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫをそれぞれ備えたインク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫと、中間転写体３７を備え中間転写体３７のＡ１方向への回転に伴って転写紙Ｓを搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット１０と、転写紙Ｓを多数枚積載可能であり積載した転写紙Ｓのうち最上位の転写紙Ｓのみを搬送ユニット１０に向けて給送する給紙ユニット２０と、搬送ユニット１０によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの転写紙Ｓを多数積載可能な排紙台２５とを有している。
【００２０】
画像形成装置１００はまた、図２（ｂ）に示すようにヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫから吐出された直後の記録液による液柱がヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫと中間転写体３７との間を一時的にブリッジした状態で、中間転写体３７とヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫとの間に電位差が形成されるように、かかる液柱の状態の記録液の内部に電極酸化反応もしくは電極還元反応に起因する電流成分を含んだ通電を行いかかる状態の記録液に後述のように含まれている色剤の凝集を促進する電圧印加手段としての通電手段３３を有している。
【００２１】
画像形成装置１００はまた、図１に示すように、記録液等が転写紙Ｓに転写された後の中間転写体３７から、中間転写体３７上に残留している記録液等を除去して清掃しクリーニングするためのクリーニング手段としての清掃手段３４と、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ５０と、画像形成装置１００の動作全般を制御するＣＰＵ、メモリ等を含む制御手段としての制御部４０とを有している。
【００２２】
搬送ユニット１０は、中間転写体３７の他に、中間転写体３７に対向して配置され中間転写体３７との間の領域である転写部３１を転写紙Ｓが通過するときに中間転写体３７上に担持された記録液による画像を他の媒体であるその転写紙Ｓに転写する転写手段６４と、給紙ユニット２０から給送されてきた転写紙Ｓを転写部３１に案内するとともに、転写部３１を通過した転写紙Ｓを排紙台２５に案内するガイド板３９と、中間転写体３７をＡ１方向に回転駆動する図示しない駆動手段としてのモータである中間転写体回転駆動モータ等とを有している。このように、画像形成装置１００は、転写紙Ｓへの画像形成を中間転写体３７を用いて間接的に行う間接方式の画像形成装置となっている。
【００２３】
転写手段６４は、中間転写体３７に従動回転する転写ローラ３８と、転写ローラ３８を中間転写体３７に圧接し転写ローラ３８を加圧ローラとして機能させる加圧手段としての図示しないばねと、このばねの付勢力に抗して転写ローラ３８を中間転写体３７から離間させる離間手段としての離間部３６とを備え、転写時に中間転写体３７と転写ローラ３８との間において転写紙Ｓを加圧搬送するようになっている。
【００２４】
図２に示すように、中間転写体３７は、導電性基体であるアルミニウム製の支持体３７ａと、支持体３７ａ上に形成されたシリコーンゴム製の表面層３７ｂとを有している。支持体３７ａの材質はアルミニウムに限られるものではなく、機械的強度があれば、たとえばアルミ合金、銅、ステンレス等の金属によって形成しても良い。表面層３７ｂの材質はシリコーンゴムに限られるものではなく、記録液の剥離性が高いという利点のためには表面エネルギーが低く転写紙Ｓへの追随性が高い弾性材料であればよく、たとえばニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素系ゴムなどによって形成しても良い。
【００２５】
表面層３７ｂは、中間転写体３７に導電性を付与するために、かかるゴム材料に導電剤としてのカーボン、白金、金などの金属微粒子を分散して混入させた導電性ゴムとされ、導電層となっている。ただし、導電性微粒子を増やすと導電性は向上するが、離型性が低下するトレードオフの関係であるので、適宜、調整が必要である。後述するように、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫと中間転写体３７とが一時的にブリッジした記録液による液柱に所望の電位差を形成するには、導電性ゴムの体積抵抗率は１０３Ω・ｃｍ未満であることが好ましく、また、記録液の体積抵抗率よりも小さいことが望ましい。
【００２６】
表面層３７ｂの厚みは０．１〜１ｍｍ程度がよく、０．２〜０．６ｍｍが好適である。また、中間転写体３７は、ドラム状でなく、後述するような無端ベルト状、その他可能であればシート状であっても良い。
【００２７】
図１に示すように、給紙ユニット２０は、転写紙Ｓを多数枚積載可能な給紙トレイ２１と、給紙トレイ２１に積載された転写紙Ｓのうち最上位の転写紙Ｓのみを搬送ユニット１０に向けて給送する給紙ローラ２２と、給紙トレイ２１及び給紙ローラ２２を支持した筐体２３と、給紙ローラ２２を、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫにおける記録液の吐出タイミングに合わせるように回転駆動し転写紙Ｓを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。
【００２８】
キャリッジ５０は、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫと一体で、本体９９に対して着脱可能となっている。ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫもそれぞれ、劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立して本体９９に対して着脱可能となっている。これによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
【００２９】
インク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。インク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫ、画像形成装置１００はヘッド固定式のフルライン型となっている。
【００３０】
インク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫは、複数のヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに供給される当該色の記録液を収容したメインタンクとしての記録液カートリッジであるインクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫと、インクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫ内に収容された記録液を各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに向けて圧送し給送するための供給ポンプとしての図示しないポンプと、ポンプによってインクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫ側から供給されてきた記録液を各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに分配して供給する記録液供給部であるインク供給部としてのディストリビュータである図示しないディストリビュータタンクとを有している。
【００３１】
インク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫはまた、ディストリビュータタンク内の記録液量の不足を検出するために同記録液量を検知する記録液量検知手段であるインク量検知手段としての図示しないインク量検知センサと、インクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫとディストリビュータタンクとの間の記録液の給送路をポンプとともに形成している図示しないパイプと、ディストリビュータタンクと各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫとの間の記録液の給送路を形成している図示しないパイプとを有している。
【００３２】
インクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫは、内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体９９に対して着脱可能となっている。
【００３３】
ポンプは、制御部４０によって作動を制御される。具体的には、インク量検知センサによってディストリビュータタンク内の記録液量の不足が検出されたことを条件として、この不足が検出されなくなるまで駆動され、インクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫ内の記録液をディストリビュータタンクに供給する。この点、制御部４０は記録液供給制御手段であるインク供給制御手段として機能する。制御部４０は、画像形成装置１００において駆動される構成については、特に説明しない場合であっても、その駆動を制御するようになっている。
【００３４】
記録液は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応した色剤と、この色剤の分散剤であるアニオン性分散剤と、溶媒とを少なくとも含んでいる。かかる色剤とかかる分散剤とにより、記録液のインク成分はアニオン性基を有している。溶媒は安全性の観点及び後述する電気分解を生じせしめるための導電性の観点から水を含んでおり、記録液は導電性インクであり水溶性インクである水溶性記録液となっている。なお、記録液は、保存安定性の観点から、アルカリ性であることが望ましい。
【００３５】
記録液に用いられる色剤である顔料としては、特に限定されないが、オレンジ又はイエロー用の顔料として、Ｃ．Ｉ．ピグメントオレンジ３１、Ｃ．Ｉ．ピグメントオレンジ４３、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１２、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１３、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１４、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１５、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１７、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー７４、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー９３、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー９４、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１２８、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１３８、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１５１、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１５５、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１８０、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１８５等が挙げられる。
また、レッド又はマゼンタ用の顔料として、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド２、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド３、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド５、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド６、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド７、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１５、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１６、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド４８：１、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド５３：１、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド５７：１、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１２２、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１２３、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１３９、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１４４、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１４９、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１６６、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１７７、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１７８、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド２２２等が挙げられる。
また、グリーン又はシアン用の顔料として、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：２、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１６、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー６０、Ｃ．Ｉ．ピグメントグリーン７等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料として、Ｃ．Ｉ．ピグメントブラック１、Ｃ．Ｉ．ピグメントブラック６、Ｃ．Ｉ．ピグメントブラック７等が挙げられる。
記録液中の顔料の含有量は、通常、０．１〜４０質量％であり、１〜３０質量％が好ましく、２〜２０質量％がさらに好ましい。
【００３６】
アニオン性分散剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【００３７】
記録液は、転写性の点から、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等が塩基を用いて中和されたアニオン性基を有する樹脂をさらに含むことが好ましい。
記録液は、水に可溶な溶媒をさらに含んでもよい。水に可溶な溶媒としては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、１、５−ペンタンジオール、１，２，６−ヘキサントリオール、グリセリン等の多価アルコール類；エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等の多価アルコール誘導体；ピロリドン、Ｎ−メチル−２−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒；エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類；チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄溶媒；炭酸プロピレン、炭酸エチレン等の炭酸アルキレンが挙げられ、二種以上併用してもよい。
【００３８】
たとえば、ブラック用の記録液すなわちブラックインクは、次のような組成とされている。固形分が２０質量％のスルホン酸基結合型カーボンブラック顔料分散液ＣＡＢ−Ｏ−ＪＥＴ−２００（キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク社製）３５．０質量％、２−ピロリドン１０．０質量％、グリセリン１４．０質量％、プロピレングリコールモノブチルエーテル０．９質量％、デヒドロ酢酸ソーダ０．１質量％及び蒸留水（残余）。
【００３９】
図２に示すように、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫは、同図において下方を向く記録液吐出側に配設された導電性のノズルプレートとしてのノズル板６１ａと、ノズル板６１ａに形成されたノズル６１ｂと、ディストリビュータタンクから記録液を供給され記録液を充填されたインク室６１ｃと、インク室６１ｃ内の記録液をノズル６１ｂから吐出させる図示しないインク吐出手段とを有している。ノズル板６１ａ、ノズル６１ｂ、インク室６１ｃ、インク吐出手段はこれらが１組となって、それぞれ各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに多数備えられているが、同図においてはそのうちの１組のみを図示している。
【００４０】
ノズル板６１ａは、詳細な図示を省略するが、導電性の基板と、この基板の、中間転写体３７に対向する側の面に形成された撥水膜とを有している。撥水膜は、フッ素系撥水剤やシリコン系撥水剤などを塗布して形成しても良いし、フッ素系高分子やフッ素―金属化合物共析などをメッキして形成しても良く、撥水性がある膜なら特に限定されない。ノズル板６１ａは、インク室６１ｃ側の面をインク室６１ｃ内の記録液との界面を形成する界面形成部として備えており、後述するようにカソードとして機能する。
【００４１】
ノズル板６１ａは、全体が導電性であっても良いし、インク室６１ｃ側の面のみを導電処理された部材であっても良いし、インク室６１ｃ側に配設された導電性部材と中間転写体３７側に配設された絶縁性部材とによって構成しても良い。
【００４２】
ノズル板６１ａの導電性の部分は、後述するようにカソードとして備えられるため、金属溶出に対して耐性を有する材質によって構成する必要はなく、ＳＵＳ合金、ニッケル等の金属、カーボンなど導電性の高い材料によって構成されればよい。
【００４３】
ノズル板６１ａは、中間転写体３７とのギャップが５０〜２００μｍの間で設定される。かかるギャップが５０μｍ未満であると、回転体である中間転写体３７とノズル板６１ａとのギャップを維持することが困難になることがあり、またかかるギャップが２００μｍを超えると、後述する液注のブリッジが形成されにくくなることがあるためである。ただし、ギャップの維持さえ可能なら５０μｍ未満でも特に問題はない。
ノズル板６１ａは、ノズル６１ｂを備えたノズル部となっており、とくに、中間転写体３７に対向したノズル面６１ｄがノズル部となっている。
【００４４】
インク吐出手段は、各ノズル６１ｂから記録液を液滴化して吐出させ中間転写体３７に着弾させるための圧力印加を行うアクチュエータとして圧電素子を有し、制御部４０による制御によって圧電素子に印加される電圧パルスに応じてノズル６１ｂから記録液を吐出するようになっている。この点、制御部４０は、インク吐出制御手段として機能する。インク吐出制御手段として機能する制御部４０は、かかる圧電素子を駆動するための電圧パルスを所定の信号波形でかかる圧電素子のそれぞれに入力する。インク吐出制御手段として機能する制御部４０は、各ノズル６１ｂから吐出された記録液により、任意のパターンすなわち画像を形成するように、各圧電素子を駆動する。この点、制御部４０は、画像制御装置として機能する。
【００４５】
インク吐出手段のアクチュエータはピエゾ方式等の、形状変形素子方式である他の方式の可動アクチュエータであってもよいし、サーマル方式等の加熱ヒータ方式を採用した加熱手段による記録液の沸騰によってノズル６１ｂから記録液を吐出させるものであっても良いし、電圧印加手段による静電引力によって記録液吐出するものであっても良く、あらゆる方法で記録液を吐出するものを採用可能である。
【００４６】
通電手段３３は、電源３３ａと、電源３３ａを支持体３７ａとノズル板６１ａとに接続した特に図示しない電気回路と、制御部４０の機能の一部として実現され電源３３ａによる電圧の印加タイミング、印加時間を制御する電圧印加制御手段とを有している。電圧印加制御手段としての制御部４０は、電源３３ａの電圧を変更する電圧変更手段としても機能する。
【００４７】
電源３３ａは、電気回路により、陽極を支持体３７ａに接続され、陰極をノズル板６１ａに接続されている。よって、通電手段３３は、中間転写体３７をアノードとして備え、ノズル板６１ａをカソードとして備えている。
【００４８】
清掃手段３４は、Ａ１方向において、転写部３１よりも下流側であって、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫが中間転写体３７に対向している位置も上流側の位置において、中間転写体３７に対向配設されている。
清掃手段３４のその余の点については後に詳述する。
【００４９】
このような構成の画像形成装置１００において、画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、中間転写体３７が各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに対向しながらＡ１方向に回転し、この過程で、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体３７の同じ位置に重なるよう、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫから、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が、Ａ１方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして順次重ね合わされる態様で吐出され、中間転写体３７上に一時的に画像が担持される。
【００５０】
このとき、電圧印加制御手段としての制御部４０により、通電手段３３が駆動され、電源３３ａから支持体３７ａとノズル板６１ａとの間に電圧が印加されている。
この状態で、記録液が、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫから中間転写体３７上に付与されるが、そのときには、まず、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫから、図２（ａ）に示すように、ノズル６１ｂにおいてメニスカスを形成している記録液が、図２（ｂ）に示すように、中間転写体３７に向けて移動し、ノズル６１ｂと中間転写体３７との間に、記録液からなる液柱のブリッジが一時的に形成され、次いで、図２（ｃ）に示すように、記録液からなる液柱のブリッジが分断されることによって中間転写体３７に担持され、中間転写体３７上に記録液による画像が形成される。
【００５１】
そして、図２（ｂ）に示した、記録液からなる液注のブリッジが形成された状態では、通電手段３３により、記録液中の色剤成分が凝集作用を受ける。具体的には、通電手段３３の電圧印加により、カソードであるノズル板６１ａとアノードである中間転写体３７とにはそれぞれ次の電極反応が生じ、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が電気分解される。
カソード：４Ｈ２Ｏ＋４ｅ−→２Ｈ２＋４ＯＨ−・・・反応式（１）
アノード：２Ｈ２Ｏ→４Ｈ＋＋Ｏ２＋４ｅ−・・・反応式（２）
【００５２】
反応式（１）によると、カソードとして機能するノズル面６１ｄ側では水酸化物イオンが生成して、結果、アルカリ性を示す。記録液の色剤がアニオン性顔料であるため、かかるアルカリ条件で高い分散性を示し、ノズル面６１ｄに付着した記録媒体が溶解しやすくなる。また反応式（２）によると、アノードとして機能する中間転写体３７の表面で、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が酸化して水素イオンであるプロトン（Ｈ＋）が生成して、結果、酸性を示し、図４に示すように、アニオン性分散剤Ｄにより分散されている顔料Ｐが、プロトンを介して凝集する。すなわち、記録液の色剤がアニオン性顔料であるため、水素イオンのプラス電荷とアニオン系顔料のマイナス電荷とが打ち消しあい、静電反発が減少して凝集・増粘・固化といった現象が対向電極である中間転写体３７の近傍、特に電極界面である中間転写体３７表面で起こる。これにより、隣接するドット間の滲みの発生が抑制され、高精細な画像が形成される。また、かかる電圧印加によりノズル６１ｂの目詰まりが予防されるという利点もある。なお、かかるブリッジを形成する時間は、圧電素子に印加される電磁パルスのピーク電圧とパルス幅等により制御可能である。
【００５３】
ここで、図５を用いて、カソード及びアノードの間に形成される液柱のブリッジについて説明する。液柱のブリッジＢの内部では、カチオン及びアニオンは、それぞれカソードＣ及びアノードＡの近傍に移動する。その結果、カソードＣ及びアノードＡの表面に、それぞれ電気二重層ＥＣ及びＥＡが形成されるが、電気二重層ＥＣ及びＥＡの充電速度は、液柱のブリッジＢの導電率、記録液に含まれるイオンの濃度でほぼ決定される。このとき、電気二重層ＥＡの電圧が数Ｖに達すると、水が電気分解してファラデー電流が流れる。その結果、アノードＡの表面では、水が酸化してプロトンが生成し、アニオン性分散剤により分散されている顔料が凝集する。すなわち、かかるブリッジが形成された瞬間に、ブリッジに、顔料の凝集作用をもたらすイオンが効率よく生成することで、記録液の中間転写体３７への着液と同時に顔料の凝集が行われる。その結果、隣接する記録液ドット間における顔料の滲みが発生せず、非常に高精細な溶質画像が形成される。
【００５４】
このように、通電手段３３は、液柱のブリッジＢを形成している記録液を電気分解するための、中間転写体３７と、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫ、具体的にはノズル板６１ａとの間の電圧印加を行なうための構成となっている。
【００５５】
液柱のブリッジＢが形成されてから分断されるまでの時間は、通常、数マイクロ秒〜数十マイクロ秒であり、記録液の導電率は、通常、数十ｍＳ／ｍ〜数百ｍＳ／ｍである。このため、中間転写体３７に記録液による画像を形成するためには、通電手段３３による印加電圧は、水の理論分解電圧である１．２３Ｖや一般的な水の電気分解の条件である数Ｖ〜十数Ｖでは不十分であり、数十Ｖ〜数百Ｖであることが好ましい。
【００５６】
液柱のブリッジＢが形成されている状態は、高速度カメラによって観察される。この観察により、インク吐出制御手段として機能する制御部４０によりインク吐出手段の圧電素子に電圧パルスを入力してから、ノズル６１ｂから記録液が吐出されるタイミング、記録液が吐出されてから中間転写体３７との間でブリッジＢが形成されるまでのタイミング、ブリッジの継続時間が、各ノズル６１ｂについて、μｓｅｃ単位で計測することが可能である。
【００５７】
なお、反応式（１）、（２）に加えて、電極自身の酸化還元反応も同時に起こる。どのような反応が起きるかは、電極材料、電極電位、及び記録液及び後述するクリーニング液を用いる場合には記録液に加えてクリーニング液のｐＨによるが、電位−ｐＨ状態図（Ｐｏｕｒｂａｉｘ Ｄｉａｇｒａｍ）を参照すれば容易に類推される。
【００５８】
中間転写体３７上に担持された画像の先端が転写部３１に到達するタイミングに合わせて、給紙ユニット２０から給送された一枚の転写紙Ｓが転写部３１に供給され、転写ローラ３８が連れ回りしながら、転写部３１を通過する転写紙Ｓに、中間転写体３７上に担持されている画像が転写され、転写紙Ｓの表面に画像が形成される。画像が形成された転写紙Ｓは、排紙台２５に案内され排紙台２５上に積載される。担持した画像を転写部３１において転写紙Ｓに転写された中間転写体３７は、Ａ１方向に回転して清掃手段３４との対向領域であるクリーニング部３５に至るとこのクリーニング部３５において清掃手段３４によって清掃され、次の画像形成に備える。
【００５９】
このようにして画像が転写紙Ｓに転写されるときには、凝集成分を含む記録液が転写紙Ｓに転写される。したがって、上述の凝集作用により凝集した色剤によって画像が形成されることにより、転写紙Ｓが普通紙である場合であっても、フェザリングやブリーディングを防止ないし抑制しつつ、高速で高画像濃度、高画質の画像形成が可能である。
【００６０】
また、高速の画像形成を行うには、記録液を速乾性とすることを要するため、記録液は転写紙Ｓへの吸収性が一般に高いが、この場合には記録液が転写紙Ｓの奥深くまで浸透し、いわゆる裏移りを生じ、両面画像形成に不向きとなる。しかし、かかる凝集作用により記録液の転写紙Ｓへの吸収性が低減されるためかかる裏移りが防止ないし抑制され、両面画像形成にも適している。さらにまた、記録液の転写紙Ｓへの吸収性が低減されることにより、転写紙Ｓのコックリングやカールなどの変形も抑制ないし防止されるとともに、これによって画像を担持した転写紙Ｓの搬送性が向上し、ジャムが防止ないし抑制されるなど、転写紙Ｓの取り扱いが容易化する。
【００６１】
ところで、転写部３１における転写により、転写部３１を通過した中間転写体３７上には、中間転写体３７上に形成された画像を構成していた記録液のうち転写紙Ｓに転写されなかった記録液である残インクや、かかる記録液に起因する成分はほとんど残っていないが、これら残インクや記録液に起因する成分が、その後の画像形成時に転写紙Ｓに転写される、いわゆるオフセットが生じると、画像品質低下の原因となる。その他、オフセットは、かかる残インクや記録液に起因する成分が、雰囲気中の埃、紙粉等の異物を吸着したり、中間転写体３７表面にかかる異物が直接付着したりして、これらがその後の画像形成時に転写紙Ｓに転写されることによっても生じ得る。このようなオフセットが生じると、画像品質低下の原因となるため、中間転写体３７のクリーニングは極めて重要である。
【００６２】
なお、以下、かかる残インク、記録液に起因する成分、異物等を総称して残留物という。残留物は、上述のように、残インクや、記録液に起因する成分を含んでおり、これらは、上述した凝集成分を含んでいる。また、残留物は、上述のように、埃や紙粉を含んでいる。したがって、残留物は、固形成分の比率が高くなっている。
【００６３】
中間転写体３７のクリーニングが極めて重要であるため、清掃手段３４は、次のような構成により、中間転写体３７を清掃して清浄な状態に保ち、オフセットを防止ないし抑制して画像品質を良好に保つようになっている。
【００６４】
図１または図５に示すように、清掃手段３４は、かかる残留物を中間転写体３７表面から除去してクリーニングを行い清掃するために中間転写体３７に当接した、ブレード状の第１の清掃部材としてのクリーニングブレードであるブレード５１と、ローラ状の第２の清掃部材としてのクリーニングローラであるローラー状部材５２とを有している。
【００６５】
図５に示すように、清掃手段３４はまた、ローラー状部材５２を清掃するためにローラー状部材５２に当接したブレード状の第３の清掃部材としてのゴム製のブレード５３と、ブレード５１、ローラー状部材５２をそれぞれ支持した支持部材５４、５５とを有している。
【００６６】
清掃手段３４はまた、支持部材５４、５５をそれぞれ回転自在に支持した軸部材５６、５７と、支持部材５４、５５を介してブレード５１、ローラー状部材５２を中間転写体３７に向けて付勢した付勢手段５８とを有している。
【００６７】
清掃手段３４はまた、中間転写体３７に向かう方向におけるローラー状部材５２の位置を規制する態様で支持部材５５を支持する支持部材としての規制部材５９と、ブレード５１、ローラー状部材５２によって中間転写体３７表面から掻き取られた残留物を収集するためにブレード５１、ローラー状部材５２の下方に配設された収集部７４とを有している。
【００６８】
清掃手段３４はまた、以上述べた各構成をその内部に収納した本体フレームとしての筐体７１と、ローラー状部材５２を回転駆動する駆動源としてのモータ７２等を含む駆動手段７３とを有している。
【００６９】
ブレード５１は、弾性体としてのゴムによって形成されている。ブレード５１は、中間転写体３７に対していわゆるカウンター当接の態様で当接している。
図６に示すように、ブレード５１は、中間転写体３７の幅方向において、中間転写体３７の幅Ｌ１よりも大きな幅Ｌ２を有している。
【００７０】
ブレード５１は、中間転写体３７の回転中心軸方向に対して傾斜するように、中間転写体３７に当接している。ブレード５１の、Ａ１方向の上流側の面は、Ａ１方向に対して、角度θで傾斜している。これにより、ブレード５１の、Ａ１方向の上流側における中間転写体３７への当接位置は、Ａ１方向に対して傾斜している。
【００７１】
したがって、ブレード５１は、中間転写体３７のＡ１方向への回転に伴い、中間転写体３７の表面に付着している残留物を掻き取るが、このとき、ブレード５１が中間転写体３７の表面から掻き取った残留物は、中間転写体３７のＡ１方向への回転及びブレード５１の傾斜に伴って、中間転写体３７とブレード５１との当接部に沿って進む力を受ける。これにより、かかる残留物は、自動的に、中間転写体３７とブレード５１との当接線上を移動する態様で同図６における右方に搬送され、片寄せられる。このようにして、中間転写体３７は、その表面から残留物を除去されクリーニングされていく。
【００７２】
ブレード５１は、中間転写体３７の幅方向において、中間転写体３７の全幅において中間転写体３７の周面に当接しているとともに、かかる幅方向において、各端部が、中間転写体３７の端部よりも外側に位置している。
【００７３】
したがって、上述のようにブレード５１によって中間転写体３７の表面から掻き取られ片寄せられた残留物は、中間転写体３７の幅方向において中間転写体３７の端部より外側に搬送され、中間転写体３７の周面上から排除されるようにして除去される。
【００７４】
かりに、ブレード５１の一端あるいは両端が中間転写体３７の周面上に位置している場合には、中間転写体３７の周面上に位置しているブレード５１の端部位置において、同周面上に、Ａ１方向に沿って、筋、帯状に残留物が付着した状態となり、筋状、帯状のオフセットが生じ得る。
【００７５】
しかし、ブレード５１の両端部が中間転写体３７の外側に位置している本形態では、中間転写体３７の周面は、幅方向全体にわたって残留物が排除されるようにして除去されるため、幅方向において清掃が不完全となる領域がなく、かかるオフセットは防止されて、清浄な状態が保たれる。
【００７６】
角度θは、残留物を片寄せするために、４５°≦θ≦８５°の範囲であることが望ましいが、除去される残留物の物性や状態、中間転写体３７に対するブレード５１の当接状態等に大きく依存してシステムとして決定されるため、０°、９０°でなければ、かかる範囲に限られるものではない。
【００７７】
ブレード５１とローラー状部材５２とは、Ａ１方向において異なる位置で中間転写体３７の周面に当接している。具体的には、図５に示すように、ローラー状部材５２は、Ａ１方向においてブレード５１が中間転写体３７に当接している位置よりも下流側の位置において、中間転写体３７に当接している。
【００７８】
ローラー状部材５２は、ブレード５１によって除去されなかった中間転写体３７上の残留物を中間転写体３７から除去してクリーニングし、清掃を行うものである。ただし、中間転写体３７の表面はすでにブレード５１によって清掃されており、とくにブレード５１によって掻き取られた残留物は上述のように中間転写体３７の表面から排除されているため、ローラー状部材５２によるクリーニングは安定して行われる。
【００７９】
ローラー状部材５２は、ＳＵＳ製で剛体であって非粘着性であるとともに平滑性が高く非液体吸収性である。ローラー状部材５２の材質は、剛体であって非粘着性であるとともに平滑性が高く非液体吸収性であれば、ＳＵＳと異なる金属であっても良いし、耐水性、耐薬品性のある樹脂であっても良い。ローラー状部材５２の材質をこのようにすることにより、ローラー状部材５２は残留物との反応性が低く耐久性に優れ、中間転写体３７からの残留物の除去性能が良好となっている。
【００８０】
ローラー状部材５２は、中間転写体３７に対向し中間転写体３７に当接した位置における回転方向言い換えると送り方向が、同位置における中間転写体３７の回転方向言い換えると送り方向と異なるカウンター方向となるように、駆動手段７３によってＢ１方向に回転駆動されている。
【００８１】
これにより、ローラー状部材５２は、かかる位置における回転速度言い換えると移動速度が、中間転写体３７の回転速度言い換えると移動速度と異なっている状態で回転する。よって、ローラー状部材５２は、上述した材質によって構成されていることと相俟って、中間転写体３７からの残留物の除去を経時的に良好に行うようになっている。
【００８２】
ローラー状部材５２は、かかる位置における移動速度が、中間転写体３７の移動速度と異なり、中間転写体３７の表面速度との速度差を持って回転するのであれば、中間転写体３７からの残留物の除去性すなわちクリーニング性が良好である。よって、ローラー状部材５２は、かかる位置において中間転写体３７の移動速度と異なる速度で移動するのであれば、中間転写体３７の送り方向と同じ方向に回転するように駆動手段７３によって駆動されても良い。
【００８３】
なお、かかる速度差は、ローラー状部材５２の回転方向が何れの場合であっても、中間転写体３７、ローラー状部材５２の表面の材質や性質の組み合わせによって適宜設定されるものである。ローラー状部材５２は、さらにクリーニング性を向上するために、Ａ１方向の複数個所において中間転写体３７に当接するように複数備えられていても良い。
【００８４】
ローラー状部材５２は、図示を省略するが、ブレード５１と同様に、中間転写体３７の幅方向において、中間転写体３７の幅Ｌ１よりも大きな幅を有している。ローラー状部材５２はまた、ブレード５１と同様に、中間転写体３７の幅方向において、中間転写体３７の全幅において中間転写体３７の周面に当接しているとともに、かかる幅方向において、各端部が、中間転写体３７の端部よりも外側に位置している。
【００８５】
したがって、ローラー状部材５２は、そのＢ１方向への回転および中間転写体３７のＡ１方向への回転に伴い、中間転写体３７の表面すなわち周面に付着している残留物を、中間転写体３７の幅方向全体にわたって掻き取って除去し、クリーニングする。よって、中間転写体３７は、幅方向における全体が清掃される。
【００８６】
このように、清掃手段３４は、中間転写体３７に当接し中間転写体３７の表面に付着している残留物を除去する構成として、ブレード５１とローラー状部材５２とを有している。一般に、液体を除去してクリーニングを行うための部材としては、ブレードやウェブなどの払拭手段、スポンジのような液体吸収手段等が用いられる。しかしながら、上述のように、残留物は固形成分の比率が高いため、液体除去を前提としたかかる部材のみではクリーニング性能の確保が不十分となり得る。
【００８７】
すなわち、たとえばブレードのみを用いる場合、それ自体に強度を持たせ中間転写部材に対する当接力を高めることである程度クリーニング性能が向上するものの、中間転写部材を劣化させる可能性がある。
【００８８】
これに対し、中間転写体３７に当接し中間転写体３７の表面に付着している残留物を除去する構成として、ブレード５１とローラー状部材５２とを用いている清掃手段３４によれば、次のような機能が得られる。
【００８９】
すなわち、中間転写体３７に先に当接するブレード５１で、残留物のうち転写紙Ｓからもたらされる紙粉や埃、その他記録液を除去し、次いで、上述のように回転する剛体のローラー状部材５２によって、ブレード状の部材を中間転写部材に強く押し当てて残留物を掻き取る場合と同様の、残留物の除去機能を発揮させることで、ブレード５１単体では除去が難しかった固形成分比率の高い残留物が効果的に中間転写体３７から除去される。
【００９０】
とくに、本形態では、ローラー状部材５２がカウンター当接しているため、かかる機能が高められている。
以上のことから、中間転写体３７をクリーニングするためのクリーニング液は不要となっている。
【００９１】
ブレード５３は、このようにローラー状部材５２によって中間転写体３７の周面から除去されローラー状部材５２に付着した残留物を、ローラー状部材５２の表面すなわち周面から掻き取って除去し、クリーニングする。このクリーニング性を向上するため、ブレード５３は、ローラー状部材５２に対していわゆるカウンター当接の態様で当接している。
【００９２】
ブレード５３は、ブレード５１、ローラー状部材５２と同様に、中間転写体３７の幅方向と一致するローラー状部材５２の幅方向において、清掃対象たるローラー状部材５２の幅よりも大きな幅を有している。ブレード５３はまた、ブレード５１、ローラー状部材５２と同様に、ローラー状部材５２の幅方向において、ローラー状部材５２の全幅においてローラー状部材５２の周面に当接しているとともに、かかる幅方向において、各端部が、ローラー状部材５２の端部よりも外側に位置している。
【００９３】
したがって、ブレード５３は、ローラー状部材５２のＢ１方向への回転に伴い、ローラー状部材５２の表面すなわち周面に付着している残留物を、ローラー状部材５２の幅方向全体にわたって掻き取って除去し、クリーニングする。よって、ローラー状部材５２は、幅方向における全体が清掃される。これにより、ローラー状部材５２による中間転写体３７のクリーニング性能が経時的に良好に発揮される。
【００９４】
ブレード５３は、ローラー状部材５２に当接した側と反対側の端部が筐体７１に固定され支持されている。しかし、ブレード５３の筐体７１への固定支持方法は、サブ構造を介して筐体７１に支持するものであっても良い。また、ブレード５３は、ローラー状部材５２への当接圧が一定となるように、バネ等の付勢部材によって、かかる当接圧を管理された状態で筐体７１に支持されていても良い。
【００９５】
ブレード５３は、ゴム製でなく、他の材質で形成されていても良い。第３の清掃部材は、ブレード５３のようなブレード状でなく、不織布のような払拭部材であっても良い。何れにしても、第３の清掃部材は、ブレード５１、ローラー状部材５２と同様に、その幅方向における中途部が清掃対象たるローラー状部材５２の幅方向全体にわたって当接し、この幅方向全体において残留物を掻き取って除去し、クリーニングするように、その幅、配置位置が上述のように設定される。
【００９６】
支持部材５４は、一端においてブレード５１を接着されている。軸部材５６は、支持部材５４の中途部に一体化され、その両端を筐体７１に回転自在に支持されている。これにより、ブレード５１は、軸部材５６を中心に、中間転写体３７の周面に接離可能となっている。
【００９７】
支持部材５５は、一端においてローラー状部材５２の回転中心軸５２ａを回転自在に支持している。軸部材５７は、支持部材５５の中途部に一体化され、その両端を筐体７１に回転自在に支持されている。これにより、ローラー状部材５２は、軸部材５７を中心に、中間転写体３７の周面に接離可能となっている。
【００９８】
付勢手段５８は、一端を筐体７１に固定され他端を支持部材５４の他端に固定された第１の付勢部材としての引っ張りバネであるバネ５８ａと、一端を筐体７１に固定され他端を支持部材５５の他端に固定された第２の付勢部材としての引っ張りバネであるバネ５８ｂとを有している。
よって、付勢手段５８は、ブレード５１とローラー状部材５２とを互いに独立して中間転写体３７に向けて付勢している。
【００９９】
バネ５８ａの付勢力とバネ５８ｂの付勢力とは、ブレード５１、ローラー状部材５２のそれぞれによる上述した残留物のクリーニング性能が良好に発揮されるように、互いに異なるように設定されている。そのため、バネ５８ａの付勢力の方がバネ５８ｂの付勢力よりも大幅に小さくなっている。
【０１００】
これは、中間転写体３７に対するブレード５１の当接圧の最適値と、中間転写体３７に対するローラー状部材５２の当接圧の最適値とでは、前者の方がはるかに小さいためである。すなわち、中間転写体３７へのブレード５１の付勢を中間転写体３７へのローラー状部材５２の付勢と同じようにすると、ブレード５１の弾性が負けてブレード５１による残留物の掻き取り機能が発揮されなくなるためである。
【０１０１】
このように、中間転写体３７に対するブレード５１の当接圧およびローラー状部材５２の当接圧はそれぞれ、ブレード５１による中間転写体３７のクリーニング性能、ローラ状部材５２による中間転写体３７のクリーニング性能が良好に発揮されるように最適化されている。
【０１０２】
とくに、ブレード５１については、弾性の個体差にばらつきが出やすいため、中間転写体３７に対する当接圧を個別に調整する必要がある。よって、ブレード５１とローラ状部材５２とが互いに独立して中間転写体３７に向けて付勢されるように構成されていることは、残留物の各成分による種々の画質低下要因に適切に対応して各成分を中間転写体３７から除去することに適している。
【０１０３】
ただし、ローラー状部材５２は、ブレード５１よりも大きな当接圧で中間転写体３７に当接することで中間転写体３７のクリーニング性能を発揮するものであり、バネ５８ｂの付勢力が比較的大きいため、かかる付勢力と中間転写体３７表面の弾性とローラー状部材５２の弾性との釣り合いで中間転写体３７に対する押し込み量を設定すると、この押し込み量が大きくなりすぎる可能性がある。
【０１０４】
そこで、規制部材５９は、軸部材５７によって回転自在に支持されている支持部材５４の中途部に突き当てられるように、筐体７１の定位置に固定されており、かかる押し込み量を制限する態様で、中間転写体３７に向かう方向におけるローラー状部材５２の位置を規定している。
【０１０５】
かかる押し込み量が制限されることで、ローラー状部材５２が中間転写体３７に当接していることによる中間転写体３７の過剰な負担が防止ないし低減される。これにより、中間転写体３７の表面素材が劣化することが防止ないし低減されつつ、ローラー状部材５２による中間転写体３７のクリーニング性能が適性かつ良好に発揮される。
【０１０６】
このようにして、中間転写体３７は清掃手段３４によるクリーニングを受けることで、記録液をはじめとする残留物のオフセットが高度に防止ないし抑制され、繰り返し画像形成を行っても、オフセットによる地肌汚れ等が防止ないし抑制され、画像劣化が防止ないし抑制されるとともに、中間転写体３７の劣化が抑制ないし防止されて、経時的に良好な画像形成を行うことが可能である。
【０１０７】
このクリーニング動作は、上述した画像形成サイクルにおいて、画像形成および転写の１回ごとに行われるが、これに加えて、非画像形成時にも行われる。非画像形成時のクリーニング動作は次のタイミングで次のようにして行われる。
【０１０８】
すなわち、かかるクリーニング動作を行うタイミングとしては、画像形成を行った転写紙Ｓの枚数が所定枚数となったとき、そのほか、画像形成装置１００にタイマーを配設し、非印字時間言い換えると非画像形成時間をタイマーによって計測し、非印字時間が所定時間以上となったとき、などが挙げられる。
【０１０９】
そして、クリーニング動作を行う場合は、図１に示した通常の印字状態すなわち画像形成状態である、中間転写体３７と転写ローラ３８とが当接した当接状態から、図７に示すように、制御部４０によって離間部３６を制御することで転写ローラ３８を中間転写体３７から離間させた離間状態とする。この状態で、中間転写体３７をＡ１方向に複数回回転させながら連続的にクリーニング動作を行う。
【０１１０】
クリーニング終了後は、制御部４０によって離間部３６を制御することで転写ローラ３８を中間転写体３７に当接させ、図７に示した離間状態から、図１に示した元の位置である当接状態に復帰した状態とする。
【０１１１】
このようなクリーニング動作は、制御部４０により、離間部３６、中間転写体回転駆動モータ等を駆動する信号を生成し、この信号によって離間部３６、中間転写体回転駆動モータを駆動すること等によって行われる。この点、制御部４０は、クリーニング制御手段として機能する。
【０１１２】
以下、清掃手段３４の変形例を説明する。
図８に示す変形例では、ブレード５１が、ブレード５１ａと、ブレード５１ｂとを、Ｙ字を左右対称とした形状の各辺となる態様で有している。
【０１１３】
ブレード５１ａ、ブレード５１ｂはそれぞれ、図６に示した角度θと同様の、角度θ１、角度θ２で、Ａ１方向に対して傾斜している。ブレード５１ａとブレード５１ｂとは、中間転写体３７の幅方向における中間転写体３７の中央部でオーバーラップしている。
【０１１４】
ブレード５１は、図６に示した例のように、１つの部材言い換えると一体型で構成した方が、部品点数が少なく、構成がシンプルとなる。しかし、ブレード５１を単一の部材で構成すると、清掃手段３４をはじめとする装置の構成上、角度θを十分に取れない場合もある。
【０１１５】
これに対して、図８に示した例のように、ブレード５１を、複数枚のブレード５１ａ、５１ｂの組み合わせによって構成すると、角度θ１、θ２が十分に取れるようになるという利点がある。
【０１１６】
同図（ｂ）、（ｃ）はそれぞれ、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂをＡ１方向から見た状態を示している。これらから分かるように、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂはともに、中間転写体３７の幅方向における中間転写体３７の中央部側の端部の、中間転写体３７に当接する側の縁に、Ｒ形状すなわち曲線となった形状を有している。
【０１１７】
これによって、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂはともに、かかる端部が中間転写体３７に当接することによる、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂ自身の劣化、中間転写体３７の劣化を抑制している。
【０１１８】
ただし、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂは、中間転写体３７の幅方向において、かかる曲線形状部分以外の部分においても、Ａ１方向から見てオーバーラップしており、中間転写体３７の表面は、その幅方向の中央部において、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂのいずれか一方に当接し、クリーニングされるようになっている。
【０１１９】
また、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂは、中間転写体３７の幅方向において、かかる曲線形状部と逆側の部分が、中間転写体３７の端部からはみ出し、中間転写体３７外側に位置している。そして、ブレード５１ａとブレード５１ｂとを中間転写体３７の幅方向においてつなぎ合わせた状態で、中間転写体３７の幅Ｌ１より大きな幅Ｌ２となっている。
【０１２０】
したがって、図８に示した例においても、中間転写体３７は、その幅方向における全幅にわたって、ブレード５１ａ、５１ｂによって清掃される。このとき、ブレード５１ａ、５１ｂによって中間転写体３７の周面上から掻き取られた残留物は、中間転写体３７のＡ１方向への回転及びブレード５１ａ、５１ｂの傾斜に伴って、中間転写体３７とブレード５１ａ、５１ｂとの当接部に沿って進む力を受ける。
【０１２１】
これにより、かかる残留物は、自動的に、中間転写体３７とブレード５１ａ、５１ｂとの当接線上を移動する態様で、ブレード５１ａについては図８における左方、ブレード５１ｂについては同図における右方に搬送され、片寄せられる。このようにして、中間転写体３７は、その表面から残留物を除去されクリーニングされていく。
【０１２２】
そしてブレード５１ａ、５１ｂによって中間転写体３７の表面から掻き取られ片寄せられた残留物は、中間転写体３７の幅方向において中間転写体３７の端部より外側に搬送され、中間転写体３７の周面上から排除されるようにして除去される。
なお、ブレード５１は、より多数の部材によって構成しても良い。
【０１２３】
図９に示す変形例では、清掃手段３４は、上述した構成に加えて、Ａ１方向においてブレード５１及びローラー状部材５２と異なる位置で中間転写体３７に当接する、ローラ状で粘着性を有する第４の清掃部材としての第２のローラー状部材である粘着ローラたるローラ７５と、ローラ７５よりも粘着性が高くローラ７５を清掃する第５の清掃部材としての粘着部材である転写用部材７６とを有している。
【０１２４】
図９に示す清掃手段３４はまた、ローラ７５の回転中心軸７５ａをその一端側で回転自在に支持した支持部材７７と、支持部材７７の他端側に固定された軸７８と、軸７８を回転駆動することで、支持部材７７を、軸７８を中心として回動させる態様で揺動させ、ローラ７５を中間転写体３７と転写用部材７６とのいずれかに当接させる図示しない駆動手段としての揺動手段を有している。
【０１２５】
Ａ１方向において、ローラ７５が中間転写体３７に当接する位置は、ブレード５１、ローラー状部材５２が中間転写体３７に当接する位置よりも下流側である。
ローラ７５、転写用部材７６はともに、粘着剤を用いずに粘着性を有する材質であるウレタンゴムで構成されているが、かかる材質であればウレタンゴムに限られない。
【０１２６】
ローラ７５のホームポジションは、同図に示した、中間転写体３７から離間し、転写用部材３７に当接した位置である。ローラ７５は、中間転写体３７への当接時に中間転写体３７に連れ回りする。ローラ７５は、中間転写体３７に連れ回りするときに、ブレード５１、ローラー状部材７５によって除去されなかった中間転写体３７上の残留物をその粘着力で吸着して中間転写体３７から除去し清掃する。
【０１２７】
転写用部材７６は、同図（ａ）に示す例ではローラ状であり、同図（ｂ）に示す例ではローラ７５に当接する側が凹曲面をなしたシート状である。転写用部材７６は着脱自在とされている。転写用部材７６が同図（ａ）に示すローラ状の例では、清掃手段３４は、転写用部材７６を回転駆動する図示しない駆動手段を有している。
【０１２８】
同図（ａ）に示す例において、転写用部材７６は、ローラ７５が当接しているときに、駆動手段によって回転駆動される。このとき、ローラ７５は転写用部材７６に連れ回りする。これにより、転写用部材７６は、回転時に、ローラ７５がその粘着力で中間転写体３７から吸着した残留物を、ローラ７５の粘着力よりも高いその粘着力で、ローラ７５から吸着してローラ７５から除去し清掃する。そのため、ローラ７５の粘着力は経時的に維持される。よって、ローラ７５による中間転写体３７の清掃が経時的に良好に行われる。
【０１２９】
同図（ｂ）に示す例において、ローラ７５は、揺動手段の動作時に、中間転写体３７から離間して転写用部材７６側に移動し、転写用部材７６に当接すると、その移動に伴って回転駆動される。このとき、転写用部材７６は、ローラ７５がその粘着力で中間転写体３７から吸着した残留物を、ローラ７５の粘着力よりも高いその粘着力で、ローラ７５から吸着してローラ７５から除去し清掃する。そのため、ローラ７５の粘着力は経時的に維持される。よって、ローラ７５による中間転写体３７の清掃が経時的に良好に行われる。
【０１３０】
揺動手段がローラ７５を中間転写体３７に当接させるタイミングは、図７に示した離間状態が形成されているタイミングである。よって、ローラ７５による中間転写体３７の清掃は、中間転写体３７がＡ１方向に複数回回転するときに連続的に行われる。
【０１３１】
ローラ７５の使用頻度が高い場合など、ローラ７５の粘着性が低下しクリーニング性能が低下してきた場合は、転写用部材７６を取り外して水洗いすることで転写用部材７６の粘着性を回復させ、ローラ７５のクリーニングを行ってローラ７５の粘着性を回復させることでローラ７５のクリーニング性能を回復させる。
【０１３２】
図１ないし図８に示した清掃手段３４は、使用し続けると中間転写体３７から除去されない残留物が経時で発生し得る。しかし、図９に示した清掃手段３４は、ローラ７５、転写用部材７６によりそのような残留物をも除去するようになっている。よって、図９に示した清掃手段３４によれば、中間転写体３７が経時においてさらに清浄に保たれるようになっている。
なお、転写ローラ３８の清掃を考慮して、非画像形成時におけるクリーニング動作も、当接状態で行うようにしても良い。
【０１３３】
以上述べた中間転写体３７はドラム状としたが、図１０に示すように、中間転写体３７は無端のベルト状をなしたエンドレスベルトであっても良い。中間転写体３７がベルト状であることに伴って、搬送ユニット１０は、中間転写体３７を巻き掛けたローラ４２、４３、４４と、ローラ４３を付勢した図示しないバネとを有している。中間転写体回転駆動モータは、ローラ４２を回転駆動するようになっており、ローラ４２は駆動ローラとなっている。ローラ４３は、バネにより、中間転写体３７の張力を一体に保つように変位するテンションローラとなっている。ローラ４４は、中間転写体３７を介して転写ローラ３８に対向する定位置に配設されており、転写対向ローラとなっている。
【０１３４】
ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１は、中間転写体３７の、ローラ４２とローラ４３との間に張設されている部分に対向するように平行に並べられる態様で備えられている。中間転写体３７をベルト状とすることの利点は、この形態のようにヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１が並設可能となるなど、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１の配置上の自由度が高くなることにある。ただし、中間転写体３７は、ドラム状であるほうが、ベルト状の中間転写体３７の、端部のない形状に加工することが容易でない、駆動時にばたつきが生じる、巻き掛けるローラを複数要する、といった事情がないという利点がある。よって、中間転写体３７をドラム状とするかベルト状とするかは、種々の事項を比較検討して適宜選択される。
【０１３５】
なお、図１０に示す形態では、中間転写体３７を介してヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１のそれぞれに対向した位置に配設され中間転写体３７に内側から当接して中間転写体３７をガイドするガイド部材４５が備えられている。その他の構成、動作は、清掃手段３４の構成、動作をはじめ、図１ないし図９に示した構成、動作と同様である。
【０１３６】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【０１３７】
たとえば、本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置、すなわち、ヘッドに関してシャトル型であってもよいし、また、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。ヘッドの数は画像形成装置の用途に応じて増減されるものであり、複数であっても、１つであってもよい。
【０１３８】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【０１３９】
３４ 清掃手段
３７ 中間転写部材
５１ 第１の清掃部材
５２ 第２の清掃部材
５３ 第３の清掃部材
５８ 付勢手段
５９ 規制部材
６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫ ヘッド
７５ 第４の清掃部材
７６ 第５の清掃部材
１００ 画像形成装置
Ａ１ 中間転写部材の移動方向
Ｓ 他の媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【０１４０】
【特許文献１】特開２００９−７２９２８号公報
【特許文献２】特開２００９−７２９２９号公報
【特許文献３】特開２００６−１９８９８８号公報
【特許文献４】特開２０００−１２７３５６号公報
【特許文献５】特許第４３７１０６０号公報
【特許文献６】特開２００９−１９０３６６号公報
【特許文献７】特開２０１０−１８８６６５号公報
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ヘッドによりインク等の液体を吐出して画像形成を行う画像形成装置であって、ヘッドから吐出されたかかる液体を担持する中間転写部材を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、ピエゾ方式に代表される可動アクチュエータ方式、サーマル方式に代表される加熱膜沸騰方式等により、画像情報に応じて、複数の微小ノズルからインク等の液体を液滴化して吐出し紙等の記録媒体に付着させるヘッドを備え、インクジェット記録を行うインクジェットプリンタ等のインクジェット方式の画像形成技術を採用した画像形成装置が知られている（たとえば、〔特許文献１〕〜〔特許文献７〕参照）。このようなインクジェット方式の画像形成装置は、電子写真方式に比べた場合の装置構成の簡便さから、プリンタ、ファクシミリ及び複写機等への適用範囲が拡大しつつある。また、電気回路形成やバイオテクノロジーへの応用など、新たな領域への発展が期待されている。
【０００３】
かかる画像形成装置において、高画質化等の目的で、ヘッドから吐出された液体を担持するとともに担持した液体が用紙等の記録媒体などの他の媒体に転写される中間転写部材を備えたいわゆる中間転写方式の画像形成装置が知られている（たとえば、〔特許文献１〕〜〔特許文献７〕参照）。
【０００４】
中間転写方式の画像形成装置においては、転写後に中間転写部材の表面に残留した記録液の組成物、転写の際に中間転写部材に付着した紙粉、その他埃等の異物が、その後の転写の際にかかる他の媒体に転写されると画像品質低下の原因となるため、画像品質等に関する信頼性確保等のために、中間転写部材を清浄に保つことが必須となっている。
【０００５】
そこで、かかる画像形成装置において、中間転写部材をクリーニングする技術が種々提案されている（たとえば、〔特許文献１〕〜〔特許文献７〕参照）。具体的には、画像形成を行うための液体とは別に、中間転写部材を洗浄するための液体を中間転写部材に付与する技術（たとえば、〔特許文献１〕〜〔特許文献４〕参照）、画像形成を行うための液体を、中間転写部材を洗浄するための液体として中間転写部材に付与する技術（たとえば、〔特許文献５〕参照）、画像形成を行うための液体を中間転写部材上で乾燥させてからブレードにより中間転写部材から除去する技術（たとえば、〔特許文献６〕参照）、画像形成を行うための液体を単にブレードにより中間転写部材から除去する技術（たとえば、〔特許文献７〕参照）が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、画像形成を行うための液体とは別に、中間転写部材を洗浄するための液体を中間転写部材に付与する技術では、画像形成を行うための液体とは別に、中間転写部材を洗浄するための液体を要するため、たとえば、ランニングコスト、廃液による環境負荷が高くなるという問題がある。
画像形成を行うための液体を、中間転写部材を洗浄するための液体として中間転写部材に付与する技術では、画像形成を行うための液体を、中間転写部材を洗浄するための液体として使用するため、たとえば、ランニングコストが高くなるという問題がある。
画像形成を行うための液体を中間転写部材上で乾燥させてからブレードにより中間転写部材から除去する技術では、たとえば、乾燥により、かかる液体が中間転写部材から除去されにくくなるおそれがあるという問題がある。
画像形成を行うための液体を単にブレードにより中間転写部材から除去する技術では、たとえば、液体の除去が不十分になるおそれがあるという問題がある。
【０００７】
本発明は、ヘッドにより吐出されたインク等の液体を担持する中間転写部材を有する画像形成装置であって、中間転写部材を洗浄するための液体を用いなくても、また、画像形成を行うための液体を中間転写部材上で乾燥しなくても、中間転写部材の清掃を良好に行うことを可能とした画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するため、本発明は、ヘッドから吐出された液体を担持するとともに担持した液体が他の媒体に転写される中間転写部材と、この中間転写部材を清掃する清掃手段とを有し、この清掃手段は、前記中間転写部材に、この中間転写部材の移動方向における異なる位置において当接する、ブレード状の第１の清掃部材とローラ状の第２の清掃部材とを有し、第２の清掃部材は、非液体吸収性であるとともに非粘着性であり、前記中間転写部材に当接した位置における移動速度が同中間転写部材の移動速度と異なる画像形成装置にある。
【発明の効果】
【０００９】
本発明は、ヘッドから吐出された液体を担持するとともに担持した液体が他の媒体に転写される中間転写部材と、この中間転写部材を清掃する清掃手段とを有し、この清掃手段は、前記中間転写部材に、この中間転写部材の移動方向における異なる位置において当接する、ブレード状の第１の清掃部材とローラ状の第２の清掃部材とを有し、第２の清掃部材は、非液体吸収性であるとともに非粘着性であり、前記中間転写部材に当接した位置における移動速度が同中間転写部材の移動速度と異なる画像形成装置にあるので、中間転写部材を洗浄するための液体を用いなくても、また、画像形成を行うための液体を中間転写部材上で乾燥しなくても、中間転写部材の清掃を良好に行うことを可能とした画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１０】
【図１】本発明を適用した画像形成装置の一実施形態にかかる概略正面図である。
【図２】図１に示した画像形成装置においてヘッドから中間転写部材に記録液が付与される様子を示す概念図である。
【図３】図１に示した画像形成装置においてヘッドから吐出された記録液中の色剤がプロトンを介して凝集した状態を示す概念図である。
【図４】図１に示した画像形成装置においてカソードとアノードとの間に形成される記録液による液柱の状態を示す概念図である。
【図５】図１に示した画像形成装置に備えられた清掃手段の概略正断面図である。
【図６】図５に示した清掃手段に備えられた第１の清掃部材が中間転写部材に当接する態様を示した概略側断面図である。
【図７】図１に示した画像形成装置において清掃手段により中間転写部材をクリーニングするときの状態を示した概略正面図である。
【図８】第１の清掃部材の他の配設態様を示した概略側断面図である。
【図９】清掃手段の他の構成態様を示した概略正断面図である。
【図１０】本発明を適用した、中間転写部材をベルト状とした画像形成装置の一部の一実施形態にかかる概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１１】
図１に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置１００は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置１００は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
【００１２】
画像形成装置１００は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、ＯＨＰシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置１００は、記録媒体である被記録材たる用紙としての記録体である転写紙Ｓの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Ｓの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
【００１３】
画像形成装置１００は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクとしての液体たる導電性記録液である記録液を吐出する記録液吐出体としてのインクヘッドである記録ヘッドとしてのインクジェットヘッドたるヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫを有している。
【００１４】
ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫは、画像形成装置１００の本体９９の略中央部に配設された中間転写部材としての中間転写ドラムである中間転写体３７の外周面に対向する位置に配設されている。ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫは、中間転写体３７の移動方向であって図１において時計回り方向であるＡ１方向の上流側からこの順で並んでいる。同図において各符号の数字の後に付されたＹ、Ｍ、Ｃ、ＢＫは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【００１５】
Ａ１方向は、中間転写体３７表面の進行方向となっている。Ａ１方向は、副走査方向に対応している。副走査方向に直交する主走査方向は、図１の紙面に直交し、中間転写体３７の周面上でＡ１方向に直交する方向となっている。主走査方向は、中間転写体３７の幅方向に一致している。
【００１６】
ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫはそれぞれ、イエロー（Ｙ）、マゼンタ（Ｍ）、シアン（Ｃ）、ブラック（ＢＫ）の画像を形成するための記録液吐出装置であるインク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫに備えられている。なお、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫは、図１の紙面に垂直な方向に複数が並設された態様で、インク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫに備えられている。
【００１７】
中間転写体３７は、Ａ１方向に回転している状態で、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに対向する領域で、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫからイエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が順次重ね合わされる態様で吐出されて付与され、その表面上に画像が形成されるようになっている。このように、画像形成装置１００は、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫを中間転写体３７に対向させＡ１方向に並設したタンデム構造となっている。
【００１８】
ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫによる中間転写体３７に対する記録液の吐出すなわち付与は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体３７上の同じ位置に重なるよう、Ａ１方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【００１９】
画像形成装置１００は、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫをそれぞれ備えたインク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫと、中間転写体３７を備え中間転写体３７のＡ１方向への回転に伴って転写紙Ｓを搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット１０と、転写紙Ｓを多数枚積載可能であり積載した転写紙Ｓのうち最上位の転写紙Ｓのみを搬送ユニット１０に向けて給送する給紙ユニット２０と、搬送ユニット１０によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの転写紙Ｓを多数積載可能な排紙台２５とを有している。
【００２０】
画像形成装置１００はまた、図２（ｂ）に示すようにヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫから吐出された直後の記録液による液柱がヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫと中間転写体３７との間を一時的にブリッジした状態で、中間転写体３７とヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫとの間に電位差が形成されるように、かかる液柱の状態の記録液の内部に電極酸化反応もしくは電極還元反応に起因する電流成分を含んだ通電を行いかかる状態の記録液に後述のように含まれている色剤の凝集を促進する電圧印加手段としての通電手段３３を有している。
【００２１】
画像形成装置１００はまた、図１に示すように、記録液等が転写紙Ｓに転写された後の中間転写体３７から、中間転写体３７上に残留している記録液等を除去して清掃しクリーニングするためのクリーニング手段としての清掃手段３４と、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ５０と、画像形成装置１００の動作全般を制御するＣＰＵ、メモリ等を含む制御手段としての制御部４０とを有している。
【００２２】
搬送ユニット１０は、中間転写体３７の他に、中間転写体３７に対向して配置され中間転写体３７との間の領域である転写部３１を転写紙Ｓが通過するときに中間転写体３７上に担持された記録液による画像を他の媒体であるその転写紙Ｓに転写する転写手段６４と、給紙ユニット２０から給送されてきた転写紙Ｓを転写部３１に案内するとともに、転写部３１を通過した転写紙Ｓを排紙台２５に案内するガイド板３９と、中間転写体３７をＡ１方向に回転駆動する図示しない駆動手段としてのモータである中間転写体回転駆動モータ等とを有している。このように、画像形成装置１００は、転写紙Ｓへの画像形成を中間転写体３７を用いて間接的に行う間接方式の画像形成装置となっている。
【００２３】
転写手段６４は、中間転写体３７に従動回転する転写ローラ３８と、転写ローラ３８を中間転写体３７に圧接し転写ローラ３８を加圧ローラとして機能させる加圧手段としての図示しないばねと、このばねの付勢力に抗して転写ローラ３８を中間転写体３７から離間させる離間手段としての離間部３６とを備え、転写時に中間転写体３７と転写ローラ３８との間において転写紙Ｓを加圧搬送するようになっている。
【００２４】
図２に示すように、中間転写体３７は、導電性基体であるアルミニウム製の支持体３７ａと、支持体３７ａ上に形成されたシリコーンゴム製の表面層３７ｂとを有している。支持体３７ａの材質はアルミニウムに限られるものではなく、機械的強度があれば、たとえばアルミ合金、銅、ステンレス等の金属によって形成しても良い。表面層３７ｂの材質はシリコーンゴムに限られるものではなく、記録液の剥離性が高いという利点のためには表面エネルギーが低く転写紙Ｓへの追随性が高い弾性材料であればよく、たとえばニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素系ゴムなどによって形成しても良い。
【００２５】
表面層３７ｂは、中間転写体３７に導電性を付与するために、かかるゴム材料に導電剤としてのカーボン、白金、金などの金属微粒子を分散して混入させた導電性ゴムとされ、導電層となっている。ただし、導電性微粒子を増やすと導電性は向上するが、離型性が低下するトレードオフの関係であるので、適宜、調整が必要である。後述するように、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫと中間転写体３７とが一時的にブリッジした記録液による液柱に所望の電位差を形成するには、導電性ゴムの体積抵抗率は１０３Ω・ｃｍ未満であることが好ましく、また、記録液の体積抵抗率よりも小さいことが望ましい。
【００２６】
表面層３７ｂの厚みは０．１〜１ｍｍ程度がよく、０．２〜０．６ｍｍが好適である。また、中間転写体３７は、ドラム状でなく、後述するような無端ベルト状、その他可能であればシート状であっても良い。
【００２７】
図１に示すように、給紙ユニット２０は、転写紙Ｓを多数枚積載可能な給紙トレイ２１と、給紙トレイ２１に積載された転写紙Ｓのうち最上位の転写紙Ｓのみを搬送ユニット１０に向けて給送する給紙ローラ２２と、給紙トレイ２１及び給紙ローラ２２を支持した筐体２３と、給紙ローラ２２を、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫにおける記録液の吐出タイミングに合わせるように回転駆動し転写紙Ｓを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。
【００２８】
キャリッジ５０は、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫと一体で、本体９９に対して着脱可能となっている。ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫもそれぞれ、劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立して本体９９に対して着脱可能となっている。これによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
【００２９】
インク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。インク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫ、画像形成装置１００はヘッド固定式のフルライン型となっている。
【００３０】
インク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫは、複数のヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに供給される当該色の記録液を収容したメインタンクとしての記録液カートリッジであるインクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫと、インクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫ内に収容された記録液を各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに向けて圧送し給送するための供給ポンプとしての図示しないポンプと、ポンプによってインクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫ側から供給されてきた記録液を各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに分配して供給する記録液供給部であるインク供給部としてのディストリビュータである図示しないディストリビュータタンクとを有している。
【００３１】
インク吐出装置６０Ｙ、６０Ｍ、６０Ｃ、６０ＢＫはまた、ディストリビュータタンク内の記録液量の不足を検出するために同記録液量を検知する記録液量検知手段であるインク量検知手段としての図示しないインク量検知センサと、インクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫとディストリビュータタンクとの間の記録液の給送路をポンプとともに形成している図示しないパイプと、ディストリビュータタンクと各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫとの間の記録液の給送路を形成している図示しないパイプとを有している。
【００３２】
インクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫは、内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体９９に対して着脱可能となっている。
【００３３】
ポンプは、制御部４０によって作動を制御される。具体的には、インク量検知センサによってディストリビュータタンク内の記録液量の不足が検出されたことを条件として、この不足が検出されなくなるまで駆動され、インクカートリッジ８１Ｙ、８１Ｍ、８１Ｃ、８１ＢＫ内の記録液をディストリビュータタンクに供給する。この点、制御部４０は記録液供給制御手段であるインク供給制御手段として機能する。制御部４０は、画像形成装置１００において駆動される構成については、特に説明しない場合であっても、その駆動を制御するようになっている。
【００３４】
記録液は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応した色剤と、この色剤の分散剤であるアニオン性分散剤と、溶媒とを少なくとも含んでいる。かかる色剤とかかる分散剤とにより、記録液のインク成分はアニオン性基を有している。溶媒は安全性の観点及び後述する電気分解を生じせしめるための導電性の観点から水を含んでおり、記録液は導電性インクであり水溶性インクである水溶性記録液となっている。なお、記録液は、保存安定性の観点から、アルカリ性であることが望ましい。
【００３５】
記録液に用いられる色剤である顔料としては、特に限定されないが、オレンジ又はイエロー用の顔料として、Ｃ．Ｉ．ピグメントオレンジ３１、Ｃ．Ｉ．ピグメントオレンジ４３、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１２、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１３、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１４、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１５、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１７、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー７４、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー９３、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー９４、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１２８、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１３８、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１５１、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１５５、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１８０、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１８５等が挙げられる。
また、レッド又はマゼンタ用の顔料として、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド２、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド３、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド５、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド６、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド７、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１５、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１６、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド４８：１、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド５３：１、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド５７：１、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１２２、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１２３、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１３９、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１４４、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１４９、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１６６、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１７７、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１７８、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド２２２等が挙げられる。
また、グリーン又はシアン用の顔料として、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：２、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１６、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー６０、Ｃ．Ｉ．ピグメントグリーン７等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料として、Ｃ．Ｉ．ピグメントブラック１、Ｃ．Ｉ．ピグメントブラック６、Ｃ．Ｉ．ピグメントブラック７等が挙げられる。
記録液中の顔料の含有量は、通常、０．１〜４０質量％であり、１〜３０質量％が好ましく、２〜２０質量％がさらに好ましい。
【００３６】
アニオン性分散剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【００３７】
記録液は、転写性の点から、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等が塩基を用いて中和されたアニオン性基を有する樹脂をさらに含むことが好ましい。
記録液は、水に可溶な溶媒をさらに含んでもよい。水に可溶な溶媒としては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、１、５−ペンタンジオール、１，２，６−ヘキサントリオール、グリセリン等の多価アルコール類；エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等の多価アルコール誘導体；ピロリドン、Ｎ−メチル−２−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒；エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類；チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄溶媒；炭酸プロピレン、炭酸エチレン等の炭酸アルキレンが挙げられ、二種以上併用してもよい。
【００３８】
たとえば、ブラック用の記録液すなわちブラックインクは、次のような組成とされている。固形分が２０質量％のスルホン酸基結合型カーボンブラック顔料分散液ＣＡＢ−Ｏ−ＪＥＴ−２００（キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク社製）３５．０質量％、２−ピロリドン１０．０質量％、グリセリン１４．０質量％、プロピレングリコールモノブチルエーテル０．９質量％、デヒドロ酢酸ソーダ０．１質量％及び蒸留水（残余）。
【００３９】
図２に示すように、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫは、同図において下方を向く記録液吐出側に配設された導電性のノズルプレートとしてのノズル板６１ａと、ノズル板６１ａに形成されたノズル６１ｂと、ディストリビュータタンクから記録液を供給され記録液を充填されたインク室６１ｃと、インク室６１ｃ内の記録液をノズル６１ｂから吐出させる図示しないインク吐出手段とを有している。ノズル板６１ａ、ノズル６１ｂ、インク室６１ｃ、インク吐出手段はこれらが１組となって、それぞれ各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに多数備えられているが、同図においてはそのうちの１組のみを図示している。
【００４０】
ノズル板６１ａは、詳細な図示を省略するが、導電性の基板と、この基板の、中間転写体３７に対向する側の面に形成された撥水膜とを有している。撥水膜は、フッ素系撥水剤やシリコン系撥水剤などを塗布して形成しても良いし、フッ素系高分子やフッ素―金属化合物共析などをメッキして形成しても良く、撥水性がある膜なら特に限定されない。ノズル板６１ａは、インク室６１ｃ側の面をインク室６１ｃ内の記録液との界面を形成する界面形成部として備えており、後述するようにカソードとして機能する。
【００４１】
ノズル板６１ａは、全体が導電性であっても良いし、インク室６１ｃ側の面のみを導電処理された部材であっても良いし、インク室６１ｃ側に配設された導電性部材と中間転写体３７側に配設された絶縁性部材とによって構成しても良い。
【００４２】
ノズル板６１ａの導電性の部分は、後述するようにカソードとして備えられるため、金属溶出に対して耐性を有する材質によって構成する必要はなく、ＳＵＳ合金、ニッケル等の金属、カーボンなど導電性の高い材料によって構成されればよい。
【００４３】
ノズル板６１ａは、中間転写体３７とのギャップが５０〜２００μｍの間で設定される。かかるギャップが５０μｍ未満であると、回転体である中間転写体３７とノズル板６１ａとのギャップを維持することが困難になることがあり、またかかるギャップが２００μｍを超えると、後述する液注のブリッジが形成されにくくなることがあるためである。ただし、ギャップの維持さえ可能なら５０μｍ未満でも特に問題はない。
ノズル板６１ａは、ノズル６１ｂを備えたノズル部となっており、とくに、中間転写体３７に対向したノズル面６１ｄがノズル部となっている。
【００４４】
インク吐出手段は、各ノズル６１ｂから記録液を液滴化して吐出させ中間転写体３７に着弾させるための圧力印加を行うアクチュエータとして圧電素子を有し、制御部４０による制御によって圧電素子に印加される電圧パルスに応じてノズル６１ｂから記録液を吐出するようになっている。この点、制御部４０は、インク吐出制御手段として機能する。インク吐出制御手段として機能する制御部４０は、かかる圧電素子を駆動するための電圧パルスを所定の信号波形でかかる圧電素子のそれぞれに入力する。インク吐出制御手段として機能する制御部４０は、各ノズル６１ｂから吐出された記録液により、任意のパターンすなわち画像を形成するように、各圧電素子を駆動する。この点、制御部４０は、画像制御装置として機能する。
【００４５】
インク吐出手段のアクチュエータはピエゾ方式等の、形状変形素子方式である他の方式の可動アクチュエータであってもよいし、サーマル方式等の加熱ヒータ方式を採用した加熱手段による記録液の沸騰によってノズル６１ｂから記録液を吐出させるものであっても良いし、電圧印加手段による静電引力によって記録液吐出するものであっても良く、あらゆる方法で記録液を吐出するものを採用可能である。
【００４６】
通電手段３３は、電源３３ａと、電源３３ａを支持体３７ａとノズル板６１ａとに接続した特に図示しない電気回路と、制御部４０の機能の一部として実現され電源３３ａによる電圧の印加タイミング、印加時間を制御する電圧印加制御手段とを有している。電圧印加制御手段としての制御部４０は、電源３３ａの電圧を変更する電圧変更手段としても機能する。
【００４７】
電源３３ａは、電気回路により、陽極を支持体３７ａに接続され、陰極をノズル板６１ａに接続されている。よって、通電手段３３は、中間転写体３７をアノードとして備え、ノズル板６１ａをカソードとして備えている。
【００４８】
清掃手段３４は、Ａ１方向において、転写部３１よりも下流側であって、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫが中間転写体３７に対向している位置も上流側の位置において、中間転写体３７に対向配設されている。
清掃手段３４のその余の点については後に詳述する。
【００４９】
このような構成の画像形成装置１００において、画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、中間転写体３７が各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫに対向しながらＡ１方向に回転し、この過程で、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体３７の同じ位置に重なるよう、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫから、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が、Ａ１方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして順次重ね合わされる態様で吐出され、中間転写体３７上に一時的に画像が担持される。
【００５０】
このとき、電圧印加制御手段としての制御部４０により、通電手段３３が駆動され、電源３３ａから支持体３７ａとノズル板６１ａとの間に電圧が印加されている。
この状態で、記録液が、各ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫから中間転写体３７上に付与されるが、そのときには、まず、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫから、図２（ａ）に示すように、ノズル６１ｂにおいてメニスカスを形成している記録液が、図２（ｂ）に示すように、中間転写体３７に向けて移動し、ノズル６１ｂと中間転写体３７との間に、記録液からなる液柱のブリッジが一時的に形成され、次いで、図２（ｃ）に示すように、記録液からなる液柱のブリッジが分断されることによって中間転写体３７に担持され、中間転写体３７上に記録液による画像が形成される。
【００５１】
そして、図２（ｂ）に示した、記録液からなる液注のブリッジが形成された状態では、通電手段３３により、記録液中の色剤成分が凝集作用を受ける。具体的には、通電手段３３の電圧印加により、カソードであるノズル板６１ａとアノードである中間転写体３７とにはそれぞれ次の電極反応が生じ、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が電気分解される。
カソード：４Ｈ２Ｏ＋４ｅ−→２Ｈ２＋４ＯＨ−・・・反応式（１）
アノード：２Ｈ２Ｏ→４Ｈ＋＋Ｏ２＋４ｅ−・・・反応式（２）
【００５２】
反応式（１）によると、カソードとして機能するノズル面６１ｄ側では水酸化物イオンが生成して、結果、アルカリ性を示す。記録液の色剤がアニオン性顔料であるため、かかるアルカリ条件で高い分散性を示し、ノズル面６１ｄに付着した記録媒体が溶解しやすくなる。また反応式（２）によると、アノードとして機能する中間転写体３７の表面で、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が酸化して水素イオンであるプロトン（Ｈ＋）が生成して、結果、酸性を示し、図４に示すように、アニオン性分散剤Ｄにより分散されている顔料Ｐが、プロトンを介して凝集する。すなわち、記録液の色剤がアニオン性顔料であるため、水素イオンのプラス電荷とアニオン系顔料のマイナス電荷とが打ち消しあい、静電反発が減少して凝集・増粘・固化といった現象が対向電極である中間転写体３７の近傍、特に電極界面である中間転写体３７表面で起こる。これにより、隣接するドット間の滲みの発生が抑制され、高精細な画像が形成される。また、かかる電圧印加によりノズル６１ｂの目詰まりが予防されるという利点もある。なお、かかるブリッジを形成する時間は、圧電素子に印加される電磁パルスのピーク電圧とパルス幅等により制御可能である。
【００５３】
ここで、図５を用いて、カソード及びアノードの間に形成される液柱のブリッジについて説明する。液柱のブリッジＢの内部では、カチオン及びアニオンは、それぞれカソードＣ及びアノードＡの近傍に移動する。その結果、カソードＣ及びアノードＡの表面に、それぞれ電気二重層ＥＣ及びＥＡが形成されるが、電気二重層ＥＣ及びＥＡの充電速度は、液柱のブリッジＢの導電率、記録液に含まれるイオンの濃度でほぼ決定される。このとき、電気二重層ＥＡの電圧が数Ｖに達すると、水が電気分解してファラデー電流が流れる。その結果、アノードＡの表面では、水が酸化してプロトンが生成し、アニオン性分散剤により分散されている顔料が凝集する。すなわち、かかるブリッジが形成された瞬間に、ブリッジに、顔料の凝集作用をもたらすイオンが効率よく生成することで、記録液の中間転写体３７への着液と同時に顔料の凝集が行われる。その結果、隣接する記録液ドット間における顔料の滲みが発生せず、非常に高精細な溶質画像が形成される。
【００５４】
このように、通電手段３３は、液柱のブリッジＢを形成している記録液を電気分解するための、中間転写体３７と、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫ、具体的にはノズル板６１ａとの間の電圧印加を行なうための構成となっている。
【００５５】
液柱のブリッジＢが形成されてから分断されるまでの時間は、通常、数マイクロ秒〜数十マイクロ秒であり、記録液の導電率は、通常、数十ｍＳ／ｍ〜数百ｍＳ／ｍである。このため、中間転写体３７に記録液による画像を形成するためには、通電手段３３による印加電圧は、水の理論分解電圧である１．２３Ｖや一般的な水の電気分解の条件である数Ｖ〜十数Ｖでは不十分であり、数十Ｖ〜数百Ｖであることが好ましい。
【００５６】
液柱のブリッジＢが形成されている状態は、高速度カメラによって観察される。この観察により、インク吐出制御手段として機能する制御部４０によりインク吐出手段の圧電素子に電圧パルスを入力してから、ノズル６１ｂから記録液が吐出されるタイミング、記録液が吐出されてから中間転写体３７との間でブリッジＢが形成されるまでのタイミング、ブリッジの継続時間が、各ノズル６１ｂについて、μｓｅｃ単位で計測することが可能である。
【００５７】
なお、反応式（１）、（２）に加えて、電極自身の酸化還元反応も同時に起こる。どのような反応が起きるかは、電極材料、電極電位、及び記録液及び後述するクリーニング液を用いる場合には記録液に加えてクリーニング液のｐＨによるが、電位−ｐＨ状態図（Ｐｏｕｒｂａｉｘ Ｄｉａｇｒａｍ）を参照すれば容易に類推される。
【００５８】
中間転写体３７上に担持された画像の先端が転写部３１に到達するタイミングに合わせて、給紙ユニット２０から給送された一枚の転写紙Ｓが転写部３１に供給され、転写ローラ３８が連れ回りしながら、転写部３１を通過する転写紙Ｓに、中間転写体３７上に担持されている画像が転写され、転写紙Ｓの表面に画像が形成される。画像が形成された転写紙Ｓは、排紙台２５に案内され排紙台２５上に積載される。担持した画像を転写部３１において転写紙Ｓに転写された中間転写体３７は、Ａ１方向に回転して清掃手段３４との対向領域であるクリーニング部３５に至るとこのクリーニング部３５において清掃手段３４によって清掃され、次の画像形成に備える。
【００５９】
このようにして画像が転写紙Ｓに転写されるときには、凝集成分を含む記録液が転写紙Ｓに転写される。したがって、上述の凝集作用により凝集した色剤によって画像が形成されることにより、転写紙Ｓが普通紙である場合であっても、フェザリングやブリーディングを防止ないし抑制しつつ、高速で高画像濃度、高画質の画像形成が可能である。
【００６０】
また、高速の画像形成を行うには、記録液を速乾性とすることを要するため、記録液は転写紙Ｓへの吸収性が一般に高いが、この場合には記録液が転写紙Ｓの奥深くまで浸透し、いわゆる裏移りを生じ、両面画像形成に不向きとなる。しかし、かかる凝集作用により記録液の転写紙Ｓへの吸収性が低減されるためかかる裏移りが防止ないし抑制され、両面画像形成にも適している。さらにまた、記録液の転写紙Ｓへの吸収性が低減されることにより、転写紙Ｓのコックリングやカールなどの変形も抑制ないし防止されるとともに、これによって画像を担持した転写紙Ｓの搬送性が向上し、ジャムが防止ないし抑制されるなど、転写紙Ｓの取り扱いが容易化する。
【００６１】
ところで、転写部３１における転写により、転写部３１を通過した中間転写体３７上には、中間転写体３７上に形成された画像を構成していた記録液のうち転写紙Ｓに転写されなかった記録液である残インクや、かかる記録液に起因する成分はほとんど残っていないが、これら残インクや記録液に起因する成分が、その後の画像形成時に転写紙Ｓに転写される、いわゆるオフセットが生じると、画像品質低下の原因となる。その他、オフセットは、かかる残インクや記録液に起因する成分が、雰囲気中の埃、紙粉等の異物を吸着したり、中間転写体３７表面にかかる異物が直接付着したりして、これらがその後の画像形成時に転写紙Ｓに転写されることによっても生じ得る。このようなオフセットが生じると、画像品質低下の原因となるため、中間転写体３７のクリーニングは極めて重要である。
【００６２】
なお、以下、かかる残インク、記録液に起因する成分、異物等を総称して残留物という。残留物は、上述のように、残インクや、記録液に起因する成分を含んでおり、これらは、上述した凝集成分を含んでいる。また、残留物は、上述のように、埃や紙粉を含んでいる。したがって、残留物は、固形成分の比率が高くなっている。
【００６３】
中間転写体３７のクリーニングが極めて重要であるため、清掃手段３４は、次のような構成により、中間転写体３７を清掃して清浄な状態に保ち、オフセットを防止ないし抑制して画像品質を良好に保つようになっている。
【００６４】
図１または図５に示すように、清掃手段３４は、かかる残留物を中間転写体３７表面から除去してクリーニングを行い清掃するために中間転写体３７に当接した、ブレード状の第１の清掃部材としてのクリーニングブレードであるブレード５１と、ローラ状の第２の清掃部材としてのクリーニングローラであるローラー状部材５２とを有している。
【００６５】
図５に示すように、清掃手段３４はまた、ローラー状部材５２を清掃するためにローラー状部材５２に当接したブレード状の第３の清掃部材としてのゴム製のブレード５３と、ブレード５１、ローラー状部材５２をそれぞれ支持した支持部材５４、５５とを有している。
【００６６】
清掃手段３４はまた、支持部材５４、５５をそれぞれ回転自在に支持した軸部材５６、５７と、支持部材５４、５５を介してブレード５１、ローラー状部材５２を中間転写体３７に向けて付勢した付勢手段５８とを有している。
【００６７】
清掃手段３４はまた、中間転写体３７に向かう方向におけるローラー状部材５２の位置を規制する態様で支持部材５５を支持する支持部材としての規制部材５９と、ブレード５１、ローラー状部材５２によって中間転写体３７表面から掻き取られた残留物を収集するためにブレード５１、ローラー状部材５２の下方に配設された収集部７４とを有している。
【００６８】
清掃手段３４はまた、以上述べた各構成をその内部に収納した本体フレームとしての筐体７１と、ローラー状部材５２を回転駆動する駆動源としてのモータ７２等を含む駆動手段７３とを有している。
【００６９】
ブレード５１は、弾性体としてのゴムによって形成されている。ブレード５１は、中間転写体３７に対していわゆるカウンター当接の態様で当接している。
図６に示すように、ブレード５１は、中間転写体３７の幅方向において、中間転写体３７の幅Ｌ１よりも大きな幅Ｌ２を有している。
【００７０】
ブレード５１は、中間転写体３７の回転中心軸方向に対して傾斜するように、中間転写体３７に当接している。ブレード５１の、Ａ１方向の上流側の面は、Ａ１方向に対して、角度θで傾斜している。これにより、ブレード５１の、Ａ１方向の上流側における中間転写体３７への当接位置は、Ａ１方向に対して傾斜している。
【００７１】
したがって、ブレード５１は、中間転写体３７のＡ１方向への回転に伴い、中間転写体３７の表面に付着している残留物を掻き取るが、このとき、ブレード５１が中間転写体３７の表面から掻き取った残留物は、中間転写体３７のＡ１方向への回転及びブレード５１の傾斜に伴って、中間転写体３７とブレード５１との当接部に沿って進む力を受ける。これにより、かかる残留物は、自動的に、中間転写体３７とブレード５１との当接線上を移動する態様で同図６における右方に搬送され、片寄せられる。このようにして、中間転写体３７は、その表面から残留物を除去されクリーニングされていく。
【００７２】
ブレード５１は、中間転写体３７の幅方向において、中間転写体３７の全幅において中間転写体３７の周面に当接しているとともに、かかる幅方向において、各端部が、中間転写体３７の端部よりも外側に位置している。
【００７３】
したがって、上述のようにブレード５１によって中間転写体３７の表面から掻き取られ片寄せられた残留物は、中間転写体３７の幅方向において中間転写体３７の端部より外側に搬送され、中間転写体３７の周面上から排除されるようにして除去される。
【００７４】
かりに、ブレード５１の一端あるいは両端が中間転写体３７の周面上に位置している場合には、中間転写体３７の周面上に位置しているブレード５１の端部位置において、同周面上に、Ａ１方向に沿って、筋、帯状に残留物が付着した状態となり、筋状、帯状のオフセットが生じ得る。
【００７５】
しかし、ブレード５１の両端部が中間転写体３７の外側に位置している本形態では、中間転写体３７の周面は、幅方向全体にわたって残留物が排除されるようにして除去されるため、幅方向において清掃が不完全となる領域がなく、かかるオフセットは防止されて、清浄な状態が保たれる。
【００７６】
角度θは、残留物を片寄せするために、４５°≦θ≦８５°の範囲であることが望ましいが、除去される残留物の物性や状態、中間転写体３７に対するブレード５１の当接状態等に大きく依存してシステムとして決定されるため、０°、９０°でなければ、かかる範囲に限られるものではない。
【００７７】
ブレード５１とローラー状部材５２とは、Ａ１方向において異なる位置で中間転写体３７の周面に当接している。具体的には、図５に示すように、ローラー状部材５２は、Ａ１方向においてブレード５１が中間転写体３７に当接している位置よりも下流側の位置において、中間転写体３７に当接している。
【００７８】
ローラー状部材５２は、ブレード５１によって除去されなかった中間転写体３７上の残留物を中間転写体３７から除去してクリーニングし、清掃を行うものである。ただし、中間転写体３７の表面はすでにブレード５１によって清掃されており、とくにブレード５１によって掻き取られた残留物は上述のように中間転写体３７の表面から排除されているため、ローラー状部材５２によるクリーニングは安定して行われる。
【００７９】
ローラー状部材５２は、ＳＵＳ製で剛体であって非粘着性であるとともに平滑性が高く非液体吸収性である。ローラー状部材５２の材質は、剛体であって非粘着性であるとともに平滑性が高く非液体吸収性であれば、ＳＵＳと異なる金属であっても良いし、耐水性、耐薬品性のある樹脂であっても良い。ローラー状部材５２の材質をこのようにすることにより、ローラー状部材５２は残留物との反応性が低く耐久性に優れ、中間転写体３７からの残留物の除去性能が良好となっている。
【００８０】
ローラー状部材５２は、中間転写体３７に対向し中間転写体３７に当接した位置における回転方向言い換えると送り方向が、同位置における中間転写体３７の回転方向言い換えると送り方向と異なるカウンター方向となるように、駆動手段７３によってＢ１方向に回転駆動されている。
【００８１】
これにより、ローラー状部材５２は、かかる位置における回転速度言い換えると移動速度が、中間転写体３７の回転速度言い換えると移動速度と異なっている状態で回転する。よって、ローラー状部材５２は、上述した材質によって構成されていることと相俟って、中間転写体３７からの残留物の除去を経時的に良好に行うようになっている。
【００８２】
ローラー状部材５２は、かかる位置における移動速度が、中間転写体３７の移動速度と異なり、中間転写体３７の表面速度との速度差を持って回転するのであれば、中間転写体３７からの残留物の除去性すなわちクリーニング性が良好である。よって、ローラー状部材５２は、かかる位置において中間転写体３７の移動速度と異なる速度で移動するのであれば、中間転写体３７の送り方向と同じ方向に回転するように駆動手段７３によって駆動されても良い。
【００８３】
なお、かかる速度差は、ローラー状部材５２の回転方向が何れの場合であっても、中間転写体３７、ローラー状部材５２の表面の材質や性質の組み合わせによって適宜設定されるものである。ローラー状部材５２は、さらにクリーニング性を向上するために、Ａ１方向の複数個所において中間転写体３７に当接するように複数備えられていても良い。
【００８４】
ローラー状部材５２は、図示を省略するが、ブレード５１と同様に、中間転写体３７の幅方向において、中間転写体３７の幅Ｌ１よりも大きな幅を有している。ローラー状部材５２はまた、ブレード５１と同様に、中間転写体３７の幅方向において、中間転写体３７の全幅において中間転写体３７の周面に当接しているとともに、かかる幅方向において、各端部が、中間転写体３７の端部よりも外側に位置している。
【００８５】
したがって、ローラー状部材５２は、そのＢ１方向への回転および中間転写体３７のＡ１方向への回転に伴い、中間転写体３７の表面すなわち周面に付着している残留物を、中間転写体３７の幅方向全体にわたって掻き取って除去し、クリーニングする。よって、中間転写体３７は、幅方向における全体が清掃される。
【００８６】
このように、清掃手段３４は、中間転写体３７に当接し中間転写体３７の表面に付着している残留物を除去する構成として、ブレード５１とローラー状部材５２とを有している。一般に、液体を除去してクリーニングを行うための部材としては、ブレードやウェブなどの払拭手段、スポンジのような液体吸収手段等が用いられる。しかしながら、上述のように、残留物は固形成分の比率が高いため、液体除去を前提としたかかる部材のみではクリーニング性能の確保が不十分となり得る。
【００８７】
すなわち、たとえばブレードのみを用いる場合、それ自体に強度を持たせ中間転写部材に対する当接力を高めることである程度クリーニング性能が向上するものの、中間転写部材を劣化させる可能性がある。
【００８８】
これに対し、中間転写体３７に当接し中間転写体３７の表面に付着している残留物を除去する構成として、ブレード５１とローラー状部材５２とを用いている清掃手段３４によれば、次のような機能が得られる。
【００８９】
すなわち、中間転写体３７に先に当接するブレード５１で、残留物のうち転写紙Ｓからもたらされる紙粉や埃、その他記録液を除去し、次いで、上述のように回転する剛体のローラー状部材５２によって、ブレード状の部材を中間転写部材に強く押し当てて残留物を掻き取る場合と同様の、残留物の除去機能を発揮させることで、ブレード５１単体では除去が難しかった固形成分比率の高い残留物が効果的に中間転写体３７から除去される。
【００９０】
とくに、本形態では、ローラー状部材５２がカウンター当接しているため、かかる機能が高められている。
以上のことから、中間転写体３７をクリーニングするためのクリーニング液は不要となっている。
【００９１】
ブレード５３は、このようにローラー状部材５２によって中間転写体３７の周面から除去されローラー状部材５２に付着した残留物を、ローラー状部材５２の表面すなわち周面から掻き取って除去し、クリーニングする。このクリーニング性を向上するため、ブレード５３は、ローラー状部材５２に対していわゆるカウンター当接の態様で当接している。
【００９２】
ブレード５３は、ブレード５１、ローラー状部材５２と同様に、中間転写体３７の幅方向と一致するローラー状部材５２の幅方向において、清掃対象たるローラー状部材５２の幅よりも大きな幅を有している。ブレード５３はまた、ブレード５１、ローラー状部材５２と同様に、ローラー状部材５２の幅方向において、ローラー状部材５２の全幅においてローラー状部材５２の周面に当接しているとともに、かかる幅方向において、各端部が、ローラー状部材５２の端部よりも外側に位置している。
【００９３】
したがって、ブレード５３は、ローラー状部材５２のＢ１方向への回転に伴い、ローラー状部材５２の表面すなわち周面に付着している残留物を、ローラー状部材５２の幅方向全体にわたって掻き取って除去し、クリーニングする。よって、ローラー状部材５２は、幅方向における全体が清掃される。これにより、ローラー状部材５２による中間転写体３７のクリーニング性能が経時的に良好に発揮される。
【００９４】
ブレード５３は、ローラー状部材５２に当接した側と反対側の端部が筐体７１に固定され支持されている。しかし、ブレード５３の筐体７１への固定支持方法は、サブ構造を介して筐体７１に支持するものであっても良い。また、ブレード５３は、ローラー状部材５２への当接圧が一定となるように、バネ等の付勢部材によって、かかる当接圧を管理された状態で筐体７１に支持されていても良い。
【００９５】
ブレード５３は、ゴム製でなく、他の材質で形成されていても良い。第３の清掃部材は、ブレード５３のようなブレード状でなく、不織布のような払拭部材であっても良い。何れにしても、第３の清掃部材は、ブレード５１、ローラー状部材５２と同様に、その幅方向における中途部が清掃対象たるローラー状部材５２の幅方向全体にわたって当接し、この幅方向全体において残留物を掻き取って除去し、クリーニングするように、その幅、配置位置が上述のように設定される。
【００９６】
支持部材５４は、一端においてブレード５１を接着されている。軸部材５６は、支持部材５４の中途部に一体化され、その両端を筐体７１に回転自在に支持されている。これにより、ブレード５１は、軸部材５６を中心に、中間転写体３７の周面に接離可能となっている。
【００９７】
支持部材５５は、一端においてローラー状部材５２の回転中心軸５２ａを回転自在に支持している。軸部材５７は、支持部材５５の中途部に一体化され、その両端を筐体７１に回転自在に支持されている。これにより、ローラー状部材５２は、軸部材５７を中心に、中間転写体３７の周面に接離可能となっている。
【００９８】
付勢手段５８は、一端を筐体７１に固定され他端を支持部材５４の他端に固定された第１の付勢部材としての引っ張りバネであるバネ５８ａと、一端を筐体７１に固定され他端を支持部材５５の他端に固定された第２の付勢部材としての引っ張りバネであるバネ５８ｂとを有している。
よって、付勢手段５８は、ブレード５１とローラー状部材５２とを互いに独立して中間転写体３７に向けて付勢している。
【００９９】
バネ５８ａの付勢力とバネ５８ｂの付勢力とは、ブレード５１、ローラー状部材５２のそれぞれによる上述した残留物のクリーニング性能が良好に発揮されるように、互いに異なるように設定されている。そのため、バネ５８ａの付勢力の方がバネ５８ｂの付勢力よりも大幅に小さくなっている。
【０１００】
これは、中間転写体３７に対するブレード５１の当接圧の最適値と、中間転写体３７に対するローラー状部材５２の当接圧の最適値とでは、前者の方がはるかに小さいためである。すなわち、中間転写体３７へのブレード５１の付勢を中間転写体３７へのローラー状部材５２の付勢と同じようにすると、ブレード５１の弾性が負けてブレード５１による残留物の掻き取り機能が発揮されなくなるためである。
【０１０１】
このように、中間転写体３７に対するブレード５１の当接圧およびローラー状部材５２の当接圧はそれぞれ、ブレード５１による中間転写体３７のクリーニング性能、ローラ状部材５２による中間転写体３７のクリーニング性能が良好に発揮されるように最適化されている。
【０１０２】
とくに、ブレード５１については、弾性の個体差にばらつきが出やすいため、中間転写体３７に対する当接圧を個別に調整する必要がある。よって、ブレード５１とローラ状部材５２とが互いに独立して中間転写体３７に向けて付勢されるように構成されていることは、残留物の各成分による種々の画質低下要因に適切に対応して各成分を中間転写体３７から除去することに適している。
【０１０３】
ただし、ローラー状部材５２は、ブレード５１よりも大きな当接圧で中間転写体３７に当接することで中間転写体３７のクリーニング性能を発揮するものであり、バネ５８ｂの付勢力が比較的大きいため、かかる付勢力と中間転写体３７表面の弾性とローラー状部材５２の弾性との釣り合いで中間転写体３７に対する押し込み量を設定すると、この押し込み量が大きくなりすぎる可能性がある。
【０１０４】
そこで、規制部材５９は、軸部材５７によって回転自在に支持されている支持部材５４の中途部に突き当てられるように、筐体７１の定位置に固定されており、かかる押し込み量を制限する態様で、中間転写体３７に向かう方向におけるローラー状部材５２の位置を規定している。
【０１０５】
かかる押し込み量が制限されることで、ローラー状部材５２が中間転写体３７に当接していることによる中間転写体３７の過剰な負担が防止ないし低減される。これにより、中間転写体３７の表面素材が劣化することが防止ないし低減されつつ、ローラー状部材５２による中間転写体３７のクリーニング性能が適性かつ良好に発揮される。
【０１０６】
このようにして、中間転写体３７は清掃手段３４によるクリーニングを受けることで、記録液をはじめとする残留物のオフセットが高度に防止ないし抑制され、繰り返し画像形成を行っても、オフセットによる地肌汚れ等が防止ないし抑制され、画像劣化が防止ないし抑制されるとともに、中間転写体３７の劣化が抑制ないし防止されて、経時的に良好な画像形成を行うことが可能である。
【０１０７】
このクリーニング動作は、上述した画像形成サイクルにおいて、画像形成および転写の１回ごとに行われるが、これに加えて、非画像形成時にも行われる。非画像形成時のクリーニング動作は次のタイミングで次のようにして行われる。
【０１０８】
すなわち、かかるクリーニング動作を行うタイミングとしては、画像形成を行った転写紙Ｓの枚数が所定枚数となったとき、そのほか、画像形成装置１００にタイマーを配設し、非印字時間言い換えると非画像形成時間をタイマーによって計測し、非印字時間が所定時間以上となったとき、などが挙げられる。
【０１０９】
そして、クリーニング動作を行う場合は、図１に示した通常の印字状態すなわち画像形成状態である、中間転写体３７と転写ローラ３８とが当接した当接状態から、図７に示すように、制御部４０によって離間部３６を制御することで転写ローラ３８を中間転写体３７から離間させた離間状態とする。この状態で、中間転写体３７をＡ１方向に複数回回転させながら連続的にクリーニング動作を行う。
【０１１０】
クリーニング終了後は、制御部４０によって離間部３６を制御することで転写ローラ３８を中間転写体３７に当接させ、図７に示した離間状態から、図１に示した元の位置である当接状態に復帰した状態とする。
【０１１１】
このようなクリーニング動作は、制御部４０により、離間部３６、中間転写体回転駆動モータ等を駆動する信号を生成し、この信号によって離間部３６、中間転写体回転駆動モータを駆動すること等によって行われる。この点、制御部４０は、クリーニング制御手段として機能する。
【０１１２】
以下、清掃手段３４の変形例を説明する。
図８に示す変形例では、ブレード５１が、ブレード５１ａと、ブレード５１ｂとを、Ｙ字を左右対称とした形状の各辺となる態様で有している。
【０１１３】
ブレード５１ａ、ブレード５１ｂはそれぞれ、図６に示した角度θと同様の、角度θ１、角度θ２で、Ａ１方向に対して傾斜している。ブレード５１ａとブレード５１ｂとは、中間転写体３７の幅方向における中間転写体３７の中央部でオーバーラップしている。
【０１１４】
ブレード５１は、図６に示した例のように、１つの部材言い換えると一体型で構成した方が、部品点数が少なく、構成がシンプルとなる。しかし、ブレード５１を単一の部材で構成すると、清掃手段３４をはじめとする装置の構成上、角度θを十分に取れない場合もある。
【０１１５】
これに対して、図８に示した例のように、ブレード５１を、複数枚のブレード５１ａ、５１ｂの組み合わせによって構成すると、角度θ１、θ２が十分に取れるようになるという利点がある。
【０１１６】
同図（ｂ）、（ｃ）はそれぞれ、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂをＡ１方向から見た状態を示している。これらから分かるように、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂはともに、中間転写体３７の幅方向における中間転写体３７の中央部側の端部の、中間転写体３７に当接する側の縁に、Ｒ形状すなわち曲線となった形状を有している。
【０１１７】
これによって、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂはともに、かかる端部が中間転写体３７に当接することによる、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂ自身の劣化、中間転写体３７の劣化を抑制している。
【０１１８】
ただし、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂは、中間転写体３７の幅方向において、かかる曲線形状部分以外の部分においても、Ａ１方向から見てオーバーラップしており、中間転写体３７の表面は、その幅方向の中央部において、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂのいずれか一方に当接し、クリーニングされるようになっている。
【０１１９】
また、ブレード５１ａ、ブレード５１ｂは、中間転写体３７の幅方向において、かかる曲線形状部と逆側の部分が、中間転写体３７の端部からはみ出し、中間転写体３７外側に位置している。そして、ブレード５１ａとブレード５１ｂとを中間転写体３７の幅方向においてつなぎ合わせた状態で、中間転写体３７の幅Ｌ１より大きな幅Ｌ２となっている。
【０１２０】
したがって、図８に示した例においても、中間転写体３７は、その幅方向における全幅にわたって、ブレード５１ａ、５１ｂによって清掃される。このとき、ブレード５１ａ、５１ｂによって中間転写体３７の周面上から掻き取られた残留物は、中間転写体３７のＡ１方向への回転及びブレード５１ａ、５１ｂの傾斜に伴って、中間転写体３７とブレード５１ａ、５１ｂとの当接部に沿って進む力を受ける。
【０１２１】
これにより、かかる残留物は、自動的に、中間転写体３７とブレード５１ａ、５１ｂとの当接線上を移動する態様で、ブレード５１ａについては図８における左方、ブレード５１ｂについては同図における右方に搬送され、片寄せられる。このようにして、中間転写体３７は、その表面から残留物を除去されクリーニングされていく。
【０１２２】
そしてブレード５１ａ、５１ｂによって中間転写体３７の表面から掻き取られ片寄せられた残留物は、中間転写体３７の幅方向において中間転写体３７の端部より外側に搬送され、中間転写体３７の周面上から排除されるようにして除去される。
なお、ブレード５１は、より多数の部材によって構成しても良い。
【０１２３】
図９に示す変形例では、清掃手段３４は、上述した構成に加えて、Ａ１方向においてブレード５１及びローラー状部材５２と異なる位置で中間転写体３７に当接する、ローラ状で粘着性を有する第４の清掃部材としての第２のローラー状部材である粘着ローラたるローラ７５と、ローラ７５よりも粘着性が高くローラ７５を清掃する第５の清掃部材としての粘着部材である転写用部材７６とを有している。
【０１２４】
図９に示す清掃手段３４はまた、ローラ７５の回転中心軸７５ａをその一端側で回転自在に支持した支持部材７７と、支持部材７７の他端側に固定された軸７８と、軸７８を回転駆動することで、支持部材７７を、軸７８を中心として回動させる態様で揺動させ、ローラ７５を中間転写体３７と転写用部材７６とのいずれかに当接させる図示しない駆動手段としての揺動手段を有している。
【０１２５】
Ａ１方向において、ローラ７５が中間転写体３７に当接する位置は、ブレード５１、ローラー状部材５２が中間転写体３７に当接する位置よりも下流側である。
ローラ７５、転写用部材７６はともに、粘着剤を用いずに粘着性を有する材質であるウレタンゴムで構成されているが、かかる材質であればウレタンゴムに限られない。
【０１２６】
ローラ７５のホームポジションは、同図に示した、中間転写体３７から離間し、転写用部材３７に当接した位置である。ローラ７５は、中間転写体３７への当接時に中間転写体３７に連れ回りする。ローラ７５は、中間転写体３７に連れ回りするときに、ブレード５１、ローラー状部材７５によって除去されなかった中間転写体３７上の残留物をその粘着力で吸着して中間転写体３７から除去し清掃する。
【０１２７】
転写用部材７６は、同図（ａ）に示す例ではローラ状であり、同図（ｂ）に示す例ではローラ７５に当接する側が凹曲面をなしたシート状である。転写用部材７６は着脱自在とされている。転写用部材７６が同図（ａ）に示すローラ状の例では、清掃手段３４は、転写用部材７６を回転駆動する図示しない駆動手段を有している。
【０１２８】
同図（ａ）に示す例において、転写用部材７６は、ローラ７５が当接しているときに、駆動手段によって回転駆動される。このとき、ローラ７５は転写用部材７６に連れ回りする。これにより、転写用部材７６は、回転時に、ローラ７５がその粘着力で中間転写体３７から吸着した残留物を、ローラ７５の粘着力よりも高いその粘着力で、ローラ７５から吸着してローラ７５から除去し清掃する。そのため、ローラ７５の粘着力は経時的に維持される。よって、ローラ７５による中間転写体３７の清掃が経時的に良好に行われる。
【０１２９】
同図（ｂ）に示す例において、ローラ７５は、揺動手段の動作時に、中間転写体３７から離間して転写用部材７６側に移動し、転写用部材７６に当接すると、その移動に伴って回転駆動される。このとき、転写用部材７６は、ローラ７５がその粘着力で中間転写体３７から吸着した残留物を、ローラ７５の粘着力よりも高いその粘着力で、ローラ７５から吸着してローラ７５から除去し清掃する。そのため、ローラ７５の粘着力は経時的に維持される。よって、ローラ７５による中間転写体３７の清掃が経時的に良好に行われる。
【０１３０】
揺動手段がローラ７５を中間転写体３７に当接させるタイミングは、図７に示した離間状態が形成されているタイミングである。よって、ローラ７５による中間転写体３７の清掃は、中間転写体３７がＡ１方向に複数回回転するときに連続的に行われる。
【０１３１】
ローラ７５の使用頻度が高い場合など、ローラ７５の粘着性が低下しクリーニング性能が低下してきた場合は、転写用部材７６を取り外して水洗いすることで転写用部材７６の粘着性を回復させ、ローラ７５のクリーニングを行ってローラ７５の粘着性を回復させることでローラ７５のクリーニング性能を回復させる。
【０１３２】
図１ないし図８に示した清掃手段３４は、使用し続けると中間転写体３７から除去されない残留物が経時で発生し得る。しかし、図９に示した清掃手段３４は、ローラ７５、転写用部材７６によりそのような残留物をも除去するようになっている。よって、図９に示した清掃手段３４によれば、中間転写体３７が経時においてさらに清浄に保たれるようになっている。
なお、転写ローラ３８の清掃を考慮して、非画像形成時におけるクリーニング動作も、当接状態で行うようにしても良い。
【０１３３】
以上述べた中間転写体３７はドラム状としたが、図１０に示すように、中間転写体３７は無端のベルト状をなしたエンドレスベルトであっても良い。中間転写体３７がベルト状であることに伴って、搬送ユニット１０は、中間転写体３７を巻き掛けたローラ４２、４３、４４と、ローラ４３を付勢した図示しないバネとを有している。中間転写体回転駆動モータは、ローラ４２を回転駆動するようになっており、ローラ４２は駆動ローラとなっている。ローラ４３は、バネにより、中間転写体３７の張力を一体に保つように変位するテンションローラとなっている。ローラ４４は、中間転写体３７を介して転写ローラ３８に対向する定位置に配設されており、転写対向ローラとなっている。
【０１３４】
ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１は、中間転写体３７の、ローラ４２とローラ４３との間に張設されている部分に対向するように平行に並べられる態様で備えられている。中間転写体３７をベルト状とすることの利点は、この形態のようにヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１が並設可能となるなど、ヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１の配置上の自由度が高くなることにある。ただし、中間転写体３７は、ドラム状であるほうが、ベルト状の中間転写体３７の、端部のない形状に加工することが容易でない、駆動時にばたつきが生じる、巻き掛けるローラを複数要する、といった事情がないという利点がある。よって、中間転写体３７をドラム状とするかベルト状とするかは、種々の事項を比較検討して適宜選択される。
【０１３５】
なお、図１０に示す形態では、中間転写体３７を介してヘッド６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１のそれぞれに対向した位置に配設され中間転写体３７に内側から当接して中間転写体３７をガイドするガイド部材４５が備えられている。その他の構成、動作は、清掃手段３４の構成、動作をはじめ、図１ないし図９に示した構成、動作と同様である。
【０１３６】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【０１３７】
たとえば、本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置、すなわち、ヘッドに関してシャトル型であってもよいし、また、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。ヘッドの数は画像形成装置の用途に応じて増減されるものであり、複数であっても、１つであってもよい。
【０１３８】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【０１３９】
３４ 清掃手段
３７ 中間転写部材
５１ 第１の清掃部材
５２ 第２の清掃部材
５３ 第３の清掃部材
５８ 付勢手段
５９ 規制部材
６１Ｙ、６１Ｍ、６１Ｃ、６１ＢＫ ヘッド
７５ 第４の清掃部材
７６ 第５の清掃部材
１００ 画像形成装置
Ａ１ 中間転写部材の移動方向
Ｓ 他の媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【０１４０】
【特許文献１】特開２００９−７２９２８号公報
【特許文献２】特開２００９−７２９２９号公報
【特許文献３】特開２００６−１９８９８８号公報
【特許文献４】特開２０００−１２７３５６号公報
【特許文献５】特許第４３７１０６０号公報
【特許文献６】特開２００９−１９０３６６号公報
【特許文献７】特開２０１０−１８８６６５号公報
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ヘッドから吐出された液体を担持するとともに担持した液体が他の媒体に転写される中間転写部材と、
この中間転写部材を清掃する清掃手段とを有し、
この清掃手段は、前記中間転写部材に、この中間転写部材の移動方向における異なる位置において当接する、ブレード状の第１の清掃部材とローラ状の第２の清掃部材とを有し、
第２の清掃部材は、非液体吸収性であるとともに非粘着性であり、前記中間転写部材に当接した位置における移動速度が同中間転写部材の移動速度と異なる画像形成装置。
【請求項２】
請求項１記載の画像形成装置において、
前記清掃手段は、第１の清掃部材と第２の清掃部材とを互いに独立して前記中間転写部材に向けて付勢する付勢手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項３】
請求項１または２記載の画像形成装置において、
第１の清掃部材の、前記移動方向の上流側における前記中間転写部材への当接位置は、同移動方向に対して傾斜していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項４】
請求項１ないし３の何れか１つに記載の画像形成装置において、
前記中間転写部材の幅方向において、第１の清掃部材と第２の清掃部材とは、同中間転写部材の全幅において同中間転写部材に当接しているとともに、同幅方向における各端部は、同中間転写部材の端部よりも外側に位置していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項５】
請求項１ないし４の何れか１つに記載の画像形成装置において、
前記清掃手段は、前記中間転写部材に向かう方向における第２の清掃部材の位置を規制する規制部材を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項６】
請求項１ないし５の何れか１つに記載の画像形成装置において、
前記清掃手段は、第２の清掃部材を清掃する第３の清掃部材を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項７】
請求項１ないし６の何れか１つに記載の画像形成装置において、
前記清掃手段は、前記移動方向において第１の清掃部材及び第２の清掃部材と異なる位置で前記中間転写部材に当接する、ローラ状で粘着性を有する第４の清掃部材と、第４の清掃部材よりも粘着性が高く第４の清掃部材を清掃する第５の清掃部材を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項１】
ヘッドから吐出された液体を担持するとともに担持した液体が他の媒体に転写される中間転写部材と、
この中間転写部材を清掃する清掃手段とを有し、
この清掃手段は、前記中間転写部材に、この中間転写部材の移動方向における異なる位置において当接する、ブレード状の第１の清掃部材とローラ状の第２の清掃部材とを有し、
第２の清掃部材は、非液体吸収性であるとともに非粘着性であり、前記中間転写部材に当接した位置における移動速度が同中間転写部材の移動速度と異なる画像形成装置。
【請求項２】
請求項１記載の画像形成装置において、
前記清掃手段は、第１の清掃部材と第２の清掃部材とを互いに独立して前記中間転写部材に向けて付勢する付勢手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項３】
請求項１または２記載の画像形成装置において、
第１の清掃部材の、前記移動方向の上流側における前記中間転写部材への当接位置は、同移動方向に対して傾斜していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項４】
請求項１ないし３の何れか１つに記載の画像形成装置において、
前記中間転写部材の幅方向において、第１の清掃部材と第２の清掃部材とは、同中間転写部材の全幅において同中間転写部材に当接しているとともに、同幅方向における各端部は、同中間転写部材の端部よりも外側に位置していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項５】
請求項１ないし４の何れか１つに記載の画像形成装置において、
前記清掃手段は、前記中間転写部材に向かう方向における第２の清掃部材の位置を規制する規制部材を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項６】
請求項１ないし５の何れか１つに記載の画像形成装置において、
前記清掃手段は、第２の清掃部材を清掃する第３の清掃部材を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項７】
請求項１ないし６の何れか１つに記載の画像形成装置において、
前記清掃手段は、前記移動方向において第１の清掃部材及び第２の清掃部材と異なる位置で前記中間転写部材に当接する、ローラ状で粘着性を有する第４の清掃部材と、第４の清掃部材よりも粘着性が高く第４の清掃部材を清掃する第５の清掃部材を有することを特徴とする画像形成装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【公開番号】特開２０１２−２３７７９７（Ｐ２０１２−２３７７９７Ａ）
【公開日】平成２４年１２月６日（２０１２．１２．６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−１０５１０８（Ｐ２０１１−１０５１０８）
【出願日】平成２３年５月１０日（２０１１．５．１０）
【出願人】（０００００６７４７）株式会社リコー (37,907)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１２月６日（２０１２．１２．６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年５月１０日（２０１１．５．１０）
【出願人】（０００００６７４７）株式会社リコー (37,907)
【Ｆターム（参考）】
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