説明

画像形成装置

【課題】長期に亘る記録材の搬送安定性を確保しながら、消費電力の低減を図る。
【解決手段】記録材供給部3の供給搬送部材3aを駆動する供給用モータM1、記録材戻し搬送部4の戻し搬送部材4aを駆動する戻し用モータM2、および、記録材搬送部5の搬送部材5aを駆動する搬送用モータM3を有し、予め決められた搬送部材5aを駆動する搬送用モータM3としてトルク可変モータを含む駆動装置6と、搬送部材5aによって挟持された記録材1の搬送負荷情報を判別する判別手段7と、搬送用モータM3を駆動するときに、判別手段7の判別結果に基づいてトルク可変モータへの通電電流を制御する可変制御手段8と、供給用モータM1又は戻し用モータM2を駆動するときに、最大負荷に対応して予め決められた固定通電電流を通電電流として設定すると共に、いずれか一方を駆動するときに他方の駆動を禁止する固定制御手段9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送される記録材が厚紙か否かによってステッピングモータのチョッピング電流値を変化させる方式が開示されている。
また、特許文献2には、シートが搬送される際に駆動手段にかかる負荷を、シートが厚紙か否かによって判断し、負荷が大きい場合に駆動手段の駆動速度を小さくする方式が開示されている。
更に、特許文献3には、感光体ドラム等を駆動するステッピングモータに対し、温度、湿度及び稼働時間からステッピングモータの負荷を推定し、推定した負荷に応じた駆動電流をステッピングモータに供給する方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−322734号公報(発明の実施の形態、図5)
【特許文献2】特開2002−211786号公報(発明の実施の形態、図5)
【特許文献3】特開2007−53871号公報(実施例、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、両面記録が可能な画像形成装置にあって、長期に亘る記録材の搬送安定性を確保しながら、消費電力の低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、記録材上に画像が形成可能な画像形成部と、供給搬送部材を用いて収容された記録材を前記画像形成部に向けて供給する記録材供給部と、戻し搬送部材を用いて前記画像形成部にて画像が形成された記録材の非画像面に画像を形成するために反転された状態の記録材を前記画像形成部に向けて戻し搬送する記録材戻し搬送部と、前記記録材供給部及び前記記録材戻し搬送部以外の搬送経路に対応して複数の搬送部材を有し、これらの搬送部材を用いて記録材を搬送する記録材搬送部と、前記供給搬送部材を駆動する一若しくは複数の供給用モータ、前記戻し搬送部材を駆動する一若しくは複数の戻し用モータ、および、前記複数の搬送部材を駆動する一若しくは複数の搬送用モータを有し、前記複数の搬送部材のうち予め決められた搬送部材を駆動するための搬送用モータとして通電電流の変化により駆動トルクが変化するトルク可変モータを含む駆動装置と、前記予め決められた搬送部材によって挟持された記録材の搬送に要する負荷に関する搬送負荷情報を判別する判別手段と、前記搬送用モータを駆動するときに、前記判別手段の判別結果に基づいて前記搬送部材による搬送負荷情報が大きい場合には小さい場合に比べて前記トルク可変モータへの通電電流が大きくなるように前記トルク可変モータを制御する可変制御手段と、前記供給用モータ又は前記戻し用モータを駆動するときに、前記供給搬送部材又は前記戻し搬送部材による記録材の搬送に要する最大負荷に対応して予め決められた固定通電電流を前記供給用モータ又は前記戻し用モータの通電電流として設定すると共に、前記供給用モータ及び前記戻し用モータのいずれか一方を駆動するときに他方の駆動を禁止するように前記供給用モータ又は前記戻し用モータを排他的に制御する固定制御手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置において、前記供給用モータ及び前記戻し用モータはいずれも通電電流の変化により駆動トルクが変化するトルク可変モータであり、前記固定制御手段は、前記供給用モータ又は前記戻し用モータの通電電流として前記固定通電電流を設定することを特徴とする画像形成装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る画像形成装置において、前記判別手段は、前記搬送負荷情報として記録材の厚さの情報を判別し、前記可変制御手段は、前記判別手段の判別結果に基づいて記録材の厚さが厚い場合には薄い場合に比べて前記トルク可変モータへの通電電流が大きくなるように前記トルク可変モータを制御することを特徴とする画像形成装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに係る画像形成装置において、前記記録材搬送部及び前記記録材戻し搬送部による記録材の搬送経路には記録材が湾曲した状態で搬送される一以上の湾曲部が含まれ、前記判別手段は、前記搬送負荷情報として前記搬送部材によって挟持された記録材が搬送経路中でどのような搬送姿勢であるかを判別し、前記可変制御手段は、前記判別手段の判別結果に基づいて記録材の搬送姿勢が大きく湾曲する場合には小さく湾曲する場合に比べて前記トルク可変モータへの通電電流が大きくなるように前記トルク可変モータを制御することを特徴とする画像形成装置である。
請求項5に係る発明は、請求項4に係る画像形成装置において、前記判別手段は、前記搬送負荷情報として前記搬送部材によって挟持された記録材が搬送されるに伴って逐次変化する搬送姿勢を判別するものであり、前記可変制御手段は、前記判別手段の判別結果に基づいて前記トルク可変モータへの通電電流が前記記録材の搬送姿勢の逐次変化に合わせて変化するように前記トルク可変モータを制御することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、両面記録が可能な画像形成装置にあって、本構成を有さない場合に比べて、長期に亘る記録材の搬送安定性を確保しながら、消費電力の低減を図ることができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、供給搬送部材及び戻し搬送部材での長期に亘る記録材の搬送安定性を十分確保できる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、搬送部材での記録材の搬送に要する負荷の判別が容易になされると共に搬送部材による記録材の搬送安定性が確保される。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、搬送部材での記録材の搬送に要する負荷の判別が容易になされると共に搬送部材による記録材の搬送安定性が確保される。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、消費電力の低減がより有効になされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明が適用された画像形成装置の実施の形態モデルの概要を示す説明図である。
【図2】実施の形態1の画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図3】実施の形態1の各種搬送部材の駆動系を示す模式図である。
【図4】(a)は実施の形態1の画像形成装置を簡略化した模式図であり、(b)は本実施の形態でのモータの通電電流を示す説明図である。
【図5】(a)(b)は、供給ロールでの記録材の搬送状態を示す説明図である。
【図6】制御装置での制御フローを示すフローチャートである。
【図7】図6のフローの続きを示すフローチャートである。
【図8】(a)(b)は、供給ロール及び戻しロールの排他的動作を示す説明図である。
【図9】実施の形態2の(a)は記録材供給部、供給経路、戻し経路及びレジストロールの位置関係を示す模式図であり、(b)はモータの駆動電流の一例を示す説明図である。
【図10】制御装置での制御フローを示すフローチャートである。
【図11】図10のフローの続きを示すフローチャートである。
【図12】(a)〜(d)は、3枚の記録材に対して両面印刷を行う場合の夫々の記録材の通過状態を示す説明図である。
【図13】(e)〜(h)は、3枚の記録材に対して両面印刷を行う場合の夫々の記録材の通過状態を示す説明図であり、図12の続き部分である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
◎実施の形態の概要
図1は、本発明を具現化する画像形成装置の実施の形態モデルの概要を示すものであって、本発明に係る画像形成装置は、記録材1上に画像が形成可能な画像形成部2と、供給搬送部材3aを用いて収容された記録材1を画像形成部2に向けて供給する記録材供給部3と、戻し搬送部材4aを用いて画像形成部2にて画像が形成された記録材1の非画像面に画像を形成するために反転された状態の記録材1を画像形成部2に向けて戻し搬送する記録材戻し搬送部4と、記録材供給部3及び記録材戻し搬送部4以外の搬送経路に対応して複数の搬送部材5aを有し、これらの搬送部材5aを用いて記録材1を搬送する記録材搬送部5と、供給搬送部材3aを駆動する一若しくは複数の供給用モータM1、戻し搬送部材4aを駆動する一若しくは複数の戻し用モータM2、および、複数の搬送部材5aを駆動する一若しくは複数の搬送用モータM3を有し、複数の搬送部材5aのうち予め決められた搬送部材5aを駆動するための搬送用モータM3として通電電流の変化により駆動トルクが変化するトルク可変モータを含む駆動装置6と、前記予め決められた搬送部材5aによって挟持された記録材1の搬送に要する負荷に関する搬送負荷情報を判別する判別手段7と、搬送用モータM3を駆動するときに、判別手段7の判別結果に基づいて搬送部材5aによる搬送負荷情報が大きい場合には小さい場合に比べて前記トルク可変モータへの通電電流が大きくなるように前記トルク可変モータを制御する可変制御手段8と、供給用モータM1又は戻し用モータM2を駆動するときに、供給搬送部材3a又は戻し搬送部材4aによる記録材1の搬送に要する最大負荷に対応して予め決められた固定通電電流を供給用モータM1又は戻し用モータM2の通電電流として設定すると共に、供給用モータM1及び戻し用モータM2のいずれか一方を駆動するときに他方の駆動を禁止するように供給用モータM1又は戻し用モータM2を排他的に制御する固定制御手段9と、を備えている。
【0010】
ここで、画像形成部2としては、記録材1に画像が形成できるものであれば特に限定されず、例えば電子写真方式であってもよいし、インクジェット方式等のものであってもよい。
また、供給搬送部材3a及び戻し搬送部材4aを駆動する供給用モータM1及び戻し用モータM2の種類は特に限定されないが、供給搬送部材3aでの記録材1の供給性能を安定化させ、戻し搬送部材4aでの記録材1に対する搬送性能を安定化させる観点からすれば、いずれも通電電流の変化により駆動トルクが変化するトルク可変モータを用いることが好適である。そして、本例では、固定制御手段9によって供給用モータM1又は戻し用モータM2の一方が稼働した場合には他方の稼働が禁止される(停止する)所謂排他的動作が必要である。尚、供給用モータM1及び戻し用モータM2がいずれも停止している状態を含む。
【0011】
また、記録材搬送部5にて記録材1を搬送する搬送部材5aを駆動する搬送用モータM3は、全てが通電電流の変化により駆動トルクが変化するトルク可変モータである必要はなく、少なくとも一部がこのようなトルク可変モータにて駆動されるものを含んでいればよく、例えば直流モータによって駆動されるものがあっても差し支えない。
そして、搬送用モータM3として、通電電流の変化により駆動トルクが変化するトルク可変モータによって駆動される搬送部材5aのうち、可変制御手段8の制御対象となるトルク可変モータによって駆動される搬送部材5aの数量は特に限定されず、幾つあっても差し支えないが、このような搬送部材5aとしては、予め事前の実験等によって決められている。
【0012】
また、このようなトルク可変モータの代表的態様としてはステッピングモータが挙げられる。ここで、トルク可変モータに対する通電電流の変化は、その可変段階が二段階に限らず、三段階以上あってもよい。また、例えばトルク可変モータの駆動開始時期や終了時期に更に少ない通電電流を流す状態を経由するようにしても差し支えない。尚、トルク可変モータへの通電電流と得られる駆動トルクは、必ずしも比例関係である必要はなく、通電電流を上昇させることで駆動トルクが上昇するようになっていればよい。
【0013】
また、判別手段7は、予め決められた搬送部材5aによって挟持された記録材1の搬送に要する負荷に関する搬送負荷情報を判別するものであればよい。
更に、可変制御手段8は、判別手段7による判別結果に基づいて、搬送部材5aによる搬送負荷情報が大きい場合には小さい場合に比べてトルク可変モータへの通電電流が大きくなるようにトルク可変モータを制御する。そのため、判別手段7としては、搬送負荷情報に対して予め実験等によってその範囲を決めておけばよい。このような搬送部材5aの搬送に要する負荷としては、例えば記録材1の厚さ(坪量も含む)に起因するもの、記録材1の搬送姿勢に起因するもの、これらを組み合わせたもの、環境や使用履歴に起因するものなどが挙げられ、これらは事前の実験等により負荷との相関を求めておけば容易に負荷が判別される。
【0014】
また、固定制御手段9は、供給用モータM1又は戻し用モータM2を駆動するときには、供給搬送部材3a又は戻し搬送部材4aによる記録材1の搬送に要する最大負荷に対応して予め決められた固定通電電流を供給用モータM1又は戻し用モータM2の通電電流として設定すると共に、供給用モータM1又は戻し用モータM2を排他的に制御するものである。
【0015】
ここで、記録材1の搬送に要する最大負荷とは、使用する記録材1の種類、環境や使用履歴を想定した場合にも記録材1の搬送安定性が確保されるような負荷を意味し、供給用モータM1及び戻し用モータM2の通電電流をこのように設定することで、記録材1の搬送安定性が確保される。
具体的には、予め決められた固定通電電流を供給用モータM1又は戻し用モータM2の通電電流として設定した場合、供給搬送部材3a及び戻し搬送部材4aにて記録材1を搬送できることが前提である。例えば記録材1の厚さによって負荷が異なることを想定すると、画像形成装置で使用可能な最も厚い記録材1の場合であっても記録材1に対する搬送安定性を確保する上から、この最も厚い記録材1による負荷に合わせた通電電流とすることが必要である。つまり、供給搬送部材3aや戻し搬送部材4aに対する最も大きな負荷を想定し、この負荷であっても記録材1の搬送安定性が確保される通電電流とすることが必要である。尚、このような条件は、例えばユーザーによって異なることもあり、消費電力をより一層低減しようとすれば、ユーザーに合わせた通電電流とするようにしても差し支えない。
【0016】
更に、本発明では、供給用モータM1又は戻し用モータM2は排他的に制御されるが、このことは、一方が稼働される場合に、他方は停止している状態を意味する。
このような供給用モータM1の数量や戻し用モータM2の数量は限定されず、一若しくは複数備える態様が挙げられる。
【0017】
そして、供給用モータM1及び戻し用モータM2がいずれも通電電流の変化により駆動トルクが変化するトルク可変モータである態様では、固定制御手段9は、供給用モータM1又は戻し用モータM2の通電電流として固定通電電流を設定することが好ましい。
【0018】
また、搬送部材5aに対する負荷の代表例として、記録材1の厚さの違いによって搬送部材5aでの挟持状態等が変化することを考慮すると、判別手段7は、搬送負荷情報として記録材1の厚さの情報を判別し、可変制御手段8は、判別手段7の判別結果に基づいて記録材1の厚さが厚い場合には薄い場合に比べてトルク可変モータへの通電電流が大きくなるようにトルク可変モータを制御することが好ましい。このことは、記録材1の厚さが変化すると、搬送部材5aによる挟持状態も変化し、厚さによって負荷が異なったり、また、厚さによっては腰の違いもあることから例えば搬送経路中での負荷も異なることによる。
【0019】
更に、搬送部材5aに対する負荷として記録材1の搬送姿勢を考慮すると、記録材搬送部5及び記録材戻し搬送部4による記録材1の搬送経路には記録材1が湾曲した状態で搬送される一以上の湾曲部が含まれ、判別手段7は、搬送負荷情報として搬送部材5aによって挟持された記録材1が搬送経路中でどのような搬送姿勢であるかを判別し、可変制御手段8は、判別手段7の判別結果に基づいて記録材1の搬送姿勢が大きく湾曲する場合には小さく湾曲する場合に比べてトルク可変モータへの通電電流が大きくなるようにトルク可変モータを制御することが好ましい。搬送経路にこのような湾曲部があると、記録材1が湾曲部を跨がって大きく湾曲するような搬送姿勢では、小さく湾曲する搬送姿勢のものに比べ、搬送部材5aで記録材1を搬送する際に搬送部材5aでの搬送に要する負荷が大きくなることによる。また、このような搬送姿勢は、記録材1の搬送方向に沿った長さ(搬送長さ)の情報や記録材1が通過する搬送経路の情報を利用することで容易に判別される。更に、このような搬送姿勢は、記録材1の厚さによっても異なり、一般的に厚い方が搬送経路中で湾曲し易い方向に向かう。そのため、記録材1の搬送長さと厚さの双方を考慮する方が好適である。
【0020】
以上のように、搬送部材5aに対する搬送負荷情報としては、判別手段7は、記録材1の厚さ情報を利用したり、記録材1の搬送姿勢を利用して、負荷を判別するものであればよい。更には、記録材1の厚さ及び搬送姿勢を含めて判別するものであっても差し支えない。
【0021】
また、搬送用モータM3での消費電力を低減する観点から、判別手段7は、搬送負荷情報として搬送部材5aによって挟持された記録材1が搬送されるに伴って逐次変化する搬送姿勢を判別するものであり、可変制御手段8は、判別手段7の判別結果に基づいてトルク可変モータへの通電電流が記録材1の搬送姿勢の逐次変化に合わせて変化するようにトルク可変モータを制御することが好ましい。このように、逐次変化に合わせて通電電流を変化させることにより、消費電力がより一層低減される。尚、このとき、逐次変化は、変化を連続的に捉えるもののみならず、次次に起こる変化を例えば予め決められた短い時間間隔で捉えるものも含む。
【0022】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は一例として本発明が適用された実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【0023】
−画像形成装置の全体構成−
本実施の形態の画像形成装置は、内部に画像形成部を有する画像形成装置本体10と、この画像形成装置本体10の上部に、自動原稿搬送装置12を搭載している。また、画像形成装置本体10には、その上方に画像読取ユニット11が配置され、下方に多段構成の記録材供給部40(40a〜40c)が配置されると共に画像読取ユニット11と記録材供給部40との間に画像形成部として作像エンジン20が配置されている。尚、符号13は、画像形成装置本体10の側方に設けられた記録材排出部であり、画像形成装置本体10内で画像が形成された記録材等がこの記録材排出部13に排出される。
【0024】
本実施の形態の作像エンジン20は、例えば電子写真方式を採用したものであり、各色成分トナー像を保持する感光体ドラム21を配置し、この感光体ドラム21上の各色成分トナー像を中間転写ベルト30上に順次転写させ、中間転写ベルト30上で多重化されたトナー像を二次転写装置37にて記録材上に一括転写させ、定着装置39にて定着させるようにしたものである。
【0025】
感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21を帯電する例えばコロナ帯電器からなる帯電装置22、帯電された感光体ドラム21上に画像に基づく潜像を書き込む例えばレーザ走査装置からなる露光装置23、感光体ドラム21上の潜像を顕像化するために収容された各色成分トナーにて現像する現像装置24、感光体ドラム21に対し中間転写ベルト30を挟んで対向配置され、感光体ドラム21上の現像されたトナー像を中間転写ベルト30上に転写する一次転写装置25、転写後の感光体ドラム21上の残留トナーを清掃する清掃装置26などが設けられている。
【0026】
ここで、帯電装置22としては、感光体ドラム21に非接触型の態様を示したが、例えば帯電ロールを用いた接触型であっても差し支えない。また、露光装置23はレーザ走査装置の態様を示したが、例えばLEDを用いるようにしても差し支えない。更に、現像装置24は、図では六色の現像ユニットを有する態様を示したが、現像ユニットの数量は特に限定されない。そして、一次転写装置25や二次転写装置37としては、接触型の態様を示したが、例えばコロナ帯電器を用いて非接触型とするようにしてもよい。尚、本例では、一つの感光体ドラム21に多色用の現像装置24を用いて、中間転写ベルト30上に順次転写させて、これを繰り返すことで中間転写ベルト30上に多重化させる態様を示したが、例えば所謂タンデム型の態様であっても差し支えない。
【0027】
中間転写ベルト30は、複数の張架ロール31〜36に掛け渡されて、例えば張架ロール31を駆動ロール、張架ロール34をテンションロールとして回転する。また、本実施の形態では、張架ロール36が二次転写装置37のバックアップロールとして設定され、二次転写装置37と張架ロール36との間に二次転写バイアスが印加される。更に、張架ロール31と中間転写ベルト30を挟んで対向する位置には、二次転写後の中間転写ベルト30上の残留トナーを清掃するベルト清掃装置38が設けられている。
尚、符号90は、本実施の形態の画像形成装置を制御する制御装置であって、後述する各種搬送部材のモータについても、その電流制御を行うようになっている。
【0028】
本実施の形態の記録材供給部40(40a〜40c)は、同様の構成のため、一つの記録材供給部40a(40)について説明する。
記録材供給部40は、記録材が収容される例えば収容容器41と、この収容容器41に収容された記録材を引き出すピックアップロール42、引き出された記録材が一枚毎に搬送されるようにする供給搬送部材としての供給ロール43(具体的にはフィードロールとリタードロールとの組み合わせ)が設けられている。
【0029】
−記録材の搬送経路−
本実施の形態における記録材の搬送経路は、次のようになっている。記録材供給部40から供給された記録材が一旦装置筐体の壁側に沿って上方に向かって搬送された後、略横方向に搬送され、二次転写装置37のある二次転写部位及び定着装置39を経由した後に記録材排出部13に至る主経路51、二次転写部位より上流側で例えば図示外の手差し供給部等から記録材が搬送される手差し経路52、記録材を反転させるため定着装置39より下流側の主経路51から分岐して下方に向けて延びる反転経路53、この反転経路53に搬送された記録材が反転された状態で記録材排出部13に向かって排出されるように反転経路53と主経路51との間に設けられた反転排出経路54、反転経路53から分岐されて反転された記録材が二次転写部位に向かって戻される戻し経路55とで構成されている。これらの搬送経路には、記録材のジャム検知などのために、適宜検知器S1〜S3が設けられている(尚、図では三個を代表的に示したもので、これ以外にも多く含まれる)。
【0030】
主経路51には、次のような各種搬送部材が設けられている。記録材供給部40から供給された記録材を主経路51と手差し経路52との合流部位まで搬送するための適宜数の搬送ロール61、この合流部位から二次転写部位までに設けられて二次転写部位に向かって記録材を位置決めして予め決められたタイミングで搬送するレジストロール63、レジストロール63の上流側に設けられてレジストロール63との間で記録材にループ(たわませる)を形成するプリレジストロール62、二次転写部位にて多重化トナー像が一括転写された記録材を定着装置39まで搬送する搬送ベルト64、定着後の記録材を搬送する定着後ロール65、主経路51から記録材を記録材排出部13に向かって排出する排出ロール66等が配置されている。
【0031】
また、反転経路53には、反転経路53内で記録材を搬送する二つの搬送ロール67,69が設けられ、後者の搬送ロール69は、反転された記録材を反転経路53から他の経路に向かって搬送できるように反転動作が可能な反転ロール69となっている。
更に、反転排出経路54には、反転経路53にて反転された記録材を排出ロール66に向かって搬送する搬送ロール68が設けられている。
そして、戻し経路55には、反転経路53に送り込まれた片面記録済みの記録材が反転された状態で二次転写部位に向かって搬送するための適宜数の戻し搬送部材としての戻しロール71が設けられている。そのため、本実施の形態の記録材戻し搬送部70は、戻し経路55と戻しロール71等で構成される。
尚、各搬送経路の分岐部位には、記録材の搬送方向を切り替える切替部材等が適宜設けられていることは言うまでもない。
【0032】
−搬送部材の駆動系−
図3は、本実施の形態における各種の搬送部材の駆動系を示す模式図である。本実施の形態では、このような各種の搬送部材を駆動するモータM(本例ではM1〜M8を示す)として、通電電流の変化によって駆動トルクが変化するトルク可変モータとしてのステッピングモータが多く用いられている。図3では、このようなステッピングモータが用いられる搬送部材に対して、ハッチングを付加して表している。そのため、モータM1〜M8としてステッピングモータが用いられている。そのため、モータM1が供給用モータ、モータM2が戻し用モータに相当し、その他のモータM3〜M8が搬送用モータに相当する。
そして、このような搬送部材に対しては、ステッピングモータから、例えばクラッチを介したり、トルクリミッタを介したり、あるいは、そのまま直接駆動される。
【0033】
ここで、ステッピングモータとは、巻き線の励磁相電流を逐次切り替えることで回転磁界を発生させ、この回転磁界と磁極との作用によって回転子が回るようにした構成をしており、励磁相の切り替えをパルス信号で行うことで、1パルスに対して決められた角度だけ回転するようにしたモータである。そのため、オープンループ制御が可能であり、フィードバック系が必要なサーボモータに比べ、システムを大きく簡素化でき、コスト面で有利なものとなっている。
また、ステッピングモータでは、回転子と固定子の磁束が互いにずれるとき、トルクが発生する。モータによって発生するトルクは、巻き線が励磁されたときに発生する磁束の強さに比例することから、巻き線の巻き数や巻き線に流す電流に比例する。本例では、この電流に着目し、巻き線に流す電流(通電電流)を大きくすることで、発生するトルクが大きくなることを利用している。
【0034】
そのため、このようなステッピングモータによって駆動される搬送部材に対しては、ステッピングモータへの通電電流が可変でき、通電電流を増加させるとトルクが大きくなる作用が加わる。尚、トルクリミッタを介した搬送部材については、その制限トルクを超えないことは言うまでもない。
【0035】
そして、本実施の形態においては、これらのステッピングモータへの通電電流を制御する電流制御についても制御装置90(図2参照)で行われている。
図4(a)は、説明を簡略化するために、本実施の形態の画像形成装置(図2参照)を簡略化して表したもので、作像エンジン20(図2参照)の代わりに感光体ドラム21のみで表し、二次転写装置37や搬送ベルト64等を省略したものである。また、定着装置39から反転経路53に至る経路等が若干異なった状態で表されている。
【0036】
図中破線で囲った部位は、記録材供給部40及び記録材戻し搬送部70を示すもので、記録材供給部40の収容容器41(図2参照)は省略している。尚、ここでは、記録材供給部40として、三段構成のものが示されている。
【0037】
また、本実施の形態の制御装置90は、各種画像形成プロセスの制御や各種の搬送部材のモータの電流制御等を行うようになっているが、ここでは、記録材供給部40の供給ロール43、記録材戻し搬送部70の戻しロール71、記録材供給部40や記録材戻し搬送部70と異なる記録材搬送部にあるレジストロール63を夫々駆動する供給用モータM1、戻し用モータM2、搬送用モータM3(以下では単にモータM1〜M3と称す)での電流制御について代表的に説明する。尚、本例では、記録材供給部40の供給ロール43と、ピックアップロール42とが同一のモータM1によって駆動される。
【0038】
本実施の形態における電流制御は、図4(b)に示すように、モータM1〜M3への通電電流を「弱」、「中」、「強」の三段階で変化させるようにしている。尚、「弱」はモータM1〜M3の立ち上げ時や停止時に一旦この段階を経るようにしたもので、実効的な通電電流の変化は「中」と「強」との間で行われる。そのため、通電電流が「中」の場合より、通電電流を「強」と大きくすることで、モータM1〜M3の駆動トルクが大きくなるように設定される。
【0039】
また、本実施の形態では、供給ロール43及び戻しロール71を駆動するモータM1,M2に対しては、制御装置90によって固定制御が行われ、モータM1,M2の稼働時の通電電流を「強」に設定すると共に、両者は排他的に動作される。一方、レジストロール63を駆動するモータM3に対しては、制御装置90によって可変制御が行われ、レジストロール63に対する負荷に応じた通電電流が設定される。
【0040】
図5(a),(b)は、供給ロール43を駆動するモータM1での通電電流を大きく設定する理由の一例を示すもので、本例では、ピックアップロール42も含め、同じモータM1(図示せず)にて駆動されている。
ピックアップロール42で供給ロール43に供給される記録材は、通常(a)のように1枚目のみが供給ロール43に挟持される。しかしながら、(b)のように、2枚目も供給ロール43に突っ込んだ状態になることがあり、この場合であっても、供給ロール43の捌き作用によって上にある1枚目のみが下流側に向かって供給される。
【0041】
しかしながら、(a)の状態と(b)の状態とでは、同じ種類の記録材であっても、供給ロール43に対する負荷は異なり、(a)の状態よりも(b)の状態の方が大きな負荷となる。このような負荷変動があっても、安定した記録材の搬送を行うには、供給ロール43の搬送トルクを(b)の状態も許容できるように大きく設定する必要があり、稼働時のモータM1の駆動トルクを大きく設定する必要がある。また、供給ロール43にあっては、部材表面が擦れ易く、表面性が経時的に変化し易い虞がある。このような場合でも、モータM1の駆動トルクを大きく設定することで、長期に亘って安定した記録材の供給性能が維持される。そのため、ここでは、モータM1の通電電流を「強」に設定している。
【0042】
更に、本実施の形態では、記録材戻し搬送部70の戻しロール71を駆動するモータM2(図4参照)についても同様に稼働時の通電電流を大きな値に設定しているが、このことは次の理由による。戻しロール71は、通常、一つのモータM2で多くの搬送ロールが駆動されるため、このような構成の戻しロール71を駆動する際のモータM2に加わる負荷は大きく、通電電流を低く設定すると、安定した搬送性を維持することが損なわれる虞がある。そのため、本実施の形態では大きな値である「強」に設定する。
【0043】
このように通電電流を大きな値に設定する部位が増えると、消費電力が増大する方向に向かうが、本実施の形態では、供給ロール43を駆動するモータM1及び戻しロール71を駆動するモータM2に対して、いずれか一方のみが通電される排他的な駆動を行うことで、消費電力の増大を防ぐと共に、電源容量の増大を防いでいる。
【0044】
−制御フロー−
今、このような中で、基材が同じで厚さが異なる1枚目の記録材が記録材供給部40から主経路51に搬送され、この記録材に両面印刷がなされる場合と、2枚目の記録材が供給される場合を想定して、モータM1〜M3での電流制御について説明する。
【0045】
このような場合の制御装置90での制御フローの一例を図6、図7を用いて説明する。
先ず、画像形成が開始されると、供給ロール43を駆動するモータM1の通電電流に対して「弱」を経由した後に「強」に設定する(ステップST1)。このようにモータM1の通電電流を「強」にすることで、例えば記録材の厚さの違いや供給ロール43の経時変化を想定しても安定した記録材の供給がなされる。
次に、供給される記録材の厚さを把握する(ステップST2)。これは供給される記録材の厚さを例えばセンサなどで検知するようにしてもよいが、通常、画像形成がなされる場合の記録材の供給源(例えばいずれかの記録材供給部40が選択される)が分かっているため、その情報から記録材の厚さを把握すればよい。
【0046】
更に、記録材の厚さによってレジストロール63に対する負荷がどのような大きさであるかを判別し、それに合ったモータM3の通電電流を対応表Tから決定する(ステップST3)。ここで、対応表Tとしては、例えば記録材の厚さの範囲とそれに対する通電電流との相関を示したものを事前に記憶しておくことでなし得る。
その後、記録材がレジストロール63の手前の予め決めた位置に達したか否かの判断が例えば図示外の主経路51に設けられた検知器からの情報を基に行われ(ステップST4)、予め決めた位置に達したと判断されると、具体的にモータM3の通電電流を「弱」を経由した後に、ステップST3で決定した通電電流である「中」または「強」に設定する(ステップST5)。そして、レジストロール63を記録材が通過すれば、モータM3の通電電流を「弱」を経由して停止させる(ステップST6,ST7)。
【0047】
次に、両面印刷を行うものか否かの判断がなされ(ステップST8)、両面印刷がない場合は、ステップST1に戻る。
一方、ステップST1にて通電電流が「強」に設定されたモータM1は、記録材が供給ロール43にて供給された後に、通電電流が「弱」を経由して停止される(ステップST9,ST10)。
【0048】
ステップST8で両面印刷が選択されると、モータM1が停止しているか否かの判断がなされ(ステップST11)、モータM1の停止を条件に戻しロール71を駆動するモータM2の通電電流を「弱」を経由した後「強」に設定する(ステップST12)。
その後、戻しロール71を記録材が通過したか否かの判断がなされ、通過したらモータM2の通電電流を「弱」を経由して停止する(ステップST13,ST14)。
一方、ステップST12からは、戻しロール71によって戻された記録材がレジストロール63の前に達したか否かの判断がなされる(ステップST15)。そして、記録材が予め決めた位置に達すると、モータM3の通電電流を「弱」を経由して「中」または「強」に設定する(ステップST16)。その後、記録材がレジストロール63を通過すると、モータM3の通電電流を「弱」を経由して停止して(ステップST17,ST18)、終了する。
【0049】
尚、ここでは、1枚目の記録材に両面印刷がなされた後に2枚目の記録材の供給を行う態様を示したが、1枚目の記録材に両面印刷がなされる前、つまり、戻しロール71による戻し動作がなされる前に行うようにしても差し支えなく、供給ロール43と戻しロール71とが同時に稼働しないようになっていればよい。
【0050】
図8(a),(b)は、供給ロール43と戻しロール71との排他的動作をわかり易く説明したもので、(a)では、戻し経路55の戻しロール71が記録材Aを搬送し、記録材Aの先端部位が搬送ロール61に掛かった様子を示し、記録材Aは戻し経路55から順次搬送される。そして、戻しロール71の駆動が切れた後、記録材Bが供給されても記録材Aと重ならないタイミングで、供給ロール43の駆動が開始され、記録材Bが新たに供主経路51に供給されるようになる。
【0051】
また、(b)では、例えば片面印刷を終え、両面印刷のために反転経路53に記録材Cがある時点で、記録材Dを供給ロール43によって供給し、供給ロール43を記録材Dが通過して供給ロール43を停止した後に、記録材Dに重ならない条件で反転経路53にある記録材Cを戻し経路55に向けて搬送するようにしたものである。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、レジストロール63を駆動するモータM3に対しては、記録材の厚さに応じて通電電流を「中」または「強」と設定を変えることで、薄い記録材に対しても「強」と設定する場合に比べ、消費電力の低減が図られる。また、このとき、通電電流が「中」であっても記録材の搬送安定性は確保される。
更に、供給ロール43及び戻しロール71を駆動するモータM1,M2に対しては、通電電流を大きな値で設定し、両者を排他的に駆動している。
それ故、レジストロール63を駆動するモータM3に対しては、搬送する記録材の厚さに応じた通電電流に可変制御し、供給ロール43及び戻しロール71を駆動するモータM1,M2に対しては、通電電流を大きな値とし且つ排他的に稼働させる固定制御を行うことで、消費電力の低減を図りながら、長期に亘る記録材の搬送安定性が確保される。
【0053】
本実施の形態では、制御装置90によって可変制御されるモータの例として、レジストロール63を駆動するモータM3について説明したが、図3にてハッチングで示される搬送部材のうち、供給ロール43及び戻しロール71を除く部材を駆動するモータM4〜M8でレジストロール63を駆動するモータM3と同様の電流制御を行うようにしても差し支えない。
【0054】
本実施の形態では、通電電流を変化させる場合、記録材の厚さに基づいて変化させる態様を示したが、これに限らず、例えば記録材の基材種類によって通電電流を更に変化させるようにしても差し支えない。このことは、例えば同じ厚さであっても、記録材が紙基材の場合と、フィルム基材の場合とでは搬送部材に対する負荷が異なり、一般的に、フィルム基材の方が大きな負荷となる。したがって、基材種類に基づいて通電電流を変化させるようにすれば、より適正な通電電流にてモータの駆動がなされ、消費電力の低減にも繋がるようになる。
【0055】
また、記録材の表面性に基づいて通電電流を変化させるようにしてもよい。記録材が通常の厚紙の場合と、例えばエンボスシートのような表面が凹凸をした記録材の場合とでは、表面が凹凸をしている記録材の方が、搬送部材に対する密着性が劣るため、搬送トルクを大きくする方が好ましい。そのため、表面性に基づいて通電電流を変化させるようにすれば、より適正な通電電流にてモータの駆動がなされ、消費電力の低減にも繋がるようになる。
【0056】
◎実施の形態2
本実施の形態は、実施の形態1と同様の画像形成装置において、モータの通電電流を可変制御する場合、実施の形態1では搬送負荷情報として記録材の厚さに基づいたものであったのに対し、本実施の形態では、搬送負荷情報として、記録材の搬送姿勢及び記録材の厚さに基づくものとなっている。
ここでは、代表的にレジストロール63を駆動するモータM3での電流制御について説明する。
【0057】
図9(a)は、記録材供給部40(40a〜40c)、主経路51、戻し経路55及びレジストロール63の関係を示す模式図である。主経路51には、各記録材供給部40a〜40cから主経路51に合流する夫々の分岐経路51a〜51cが設けられ、これらの分岐経路51a〜51cは主経路51に対してするどく湾曲する経路で合流するため、合流部位では大きい湾曲部が形成されている。また、戻し経路55も主経路51との合流部位では大きい湾曲部が形成されている。
そして、レジストロール63はモータM3にて駆動され、このモータM3が制御装置90によって電流制御される。
【0058】
また、本例では、上段の記録材供給部40aには、例えば普通紙のような薄く、搬送長さがL1の記録材A1が収容され、中段の記録材供給部40bには、記録材A1と搬送長さが異なるL2の記録材A2が収容され、また、下段の記録材供給部40cには、例えば厚紙のような厚く、搬送長さが記録材A2と同じ長さの記録材Bが収容されている。そのため、記録材の先端位置がレジストロール63に達したときの記録材の後端位置は、図に示すようになる。
【0059】
一方、モータM3に対する通電電流は、図9(b)に示すように、スタンバイ時の電流を「弱」とし、小さい方の通電電流を「中」、大きい方の通電電流を「強」として通電電流の切り替えを行うようになっている。そのため、通電電流が「中」の場合より、通電電流を「強」と大きくすることで、モータM3の駆動トルクが大きくなるように設定される。
【0060】
−制御フロー−
このような状況において、1枚の記録材に画像形成を行う場合の制御装置90での制御フローを図10,11に示す。
先ず、画像形成が開始されると、記録材供給部40の中で選択された記録材供給部40(具体的には40a〜40cの中のいずれか)を認識し、搬送される記録材の搬送方向に沿った長さ(搬送長さ)及び厚さを把握する(ステップST21)。通常、記録材は、どの記録材供給部40にどのサイズが収容されているかは既に認識されているため、画像形成開始時の画像情報等に基づいて適用される記録材がどの記録材供給部40にあり、どのサイズのものであるかは明確となるため、この認識情報を用いるようにすればよい。
【0061】
次に、その把握結果から、レジストロール63より記録材搬送方向における上流側にて、把握された対象となる記録材の搬送姿勢として、湾曲状態がどうなるかを判別し、記憶されている対応表T1を基にレジストロール63を駆動するモータM3の通電電流を決定する(ステップST22)。そして、通電電流の切り替えタイミングに至ったか否かの判断がなされる(ステップST23)。このような判断は、例えば主経路51に設けられた検知器S1による情報から記録材の先端位置が予め決めた位置に達したかどうかが判断される。
【0062】
切り替えタイミングに至ると、レジストロール63を駆動するモータM3の通電電流を、記録材がA1,A2の場合は「弱」から「中」へ、また、記録材がBの場合は「弱」から「強」へと切り替える(ステップST24,ST25)。
このとき、図9から理解されるように、例えば記録材の搬送長さでは記録材の後端位置が分岐経路51a〜51cに至ったとしても、記録材が大きく湾曲するようにはならないため、記録材の搬送長さに関しては通電電流を異ならせる必要はないが、記録材の厚さの要因を考慮する必要がある。それ故、本例では、記録材によってステップST24とST25とに分別する形となっている。尚、このような条件は、例えば事前に実験等を行い、搬送経路の状況に応じて決定しておけばよい。
【0063】
次に、レジストロール63での当該記録材の搬送が終了したか否かの判断がなされ(ステップST26)、終了すれば、通電電流を「弱」へ戻す(ステップST27)。
その後、両面記録を行うものであるか否かの判断がなされ(ステップST28)、両面記録でなければ終了する。
【0064】
一方、両面記録がなされる場合には、記録材が戻し経路55を通過することから、レジストロール63より記録材搬送方向における上流側(この場合は、主経路51から戻し経路55に至る部位)にて、対象となる記録材の湾曲状態がどうであるかを判別し、記憶されている対応表T2を基にレジストロール63を駆動するモータM3の通電電流を決定する(ステップST29)。
そして、通電電流の切り替えタイミングに至ったか否かの判断が、例えば記録材の先端位置が予め決めた位置に達したかどうかによってなされる(ステップST30)。
【0065】
切り替えタイミングに至ると、レジストロール63を駆動するモータM3の通電電流を、記録材がA1の場合は「弱」から「中」へ、また、記録材がA2,Bの場合は「弱」から「強」へと切り替える(ステップST31,ST32)。
このとき、図9から理解されるように、例えば記録材の搬送長さがL1と短い場合は記録材の後端位置は戻し経路55に殆ど至らないが、搬送長さがL2と長い場合は、記録材の後端位置が戻し経路55に大きく入り込む状況となる。それ故、本例では、ステップST31とST32とに分別する形となっている。尚、このような条件は、例えば事前に実験等を行い、搬送経路の状況に応じて決定しておけばよい。
【0066】
次に、レジストロール63での当該記録材の搬送が終了したか否かの判断がなされ(ステップST33)、終了すれば、通電電流を「弱」へ戻して(ステップST34)、終了する。
【0067】
一般的に、レジストロール63で記録材を搬送する際、記録材の搬送長さや厚さが異なる場合、上述したように、レジストロール63に対する負荷は異なる。そのため、レジストロール63での記録材の搬送性を安定化させるには、通常、レジストロール63を駆動するモータM3の通電電流を大きく保ち(例えば「強」に設定する)、記録材が代わっても大きな駆動トルクでレジストロール63を駆動する必要がある。
しかしながら、このような通電電流を設定すると、レジストロール63に対する負荷が小さい記録材の場合には、余分な消費電力が嵩む形となる。本実施の形態では、上述したように、記録材の搬送姿勢に合わせて搬送力が小さくて済む場合にはそれに合わせて通電電流を小さく(例えば「中」に設定する)することで、その分、消費電力を抑えながらも記録材の搬送安定性の確保がなされる。
尚、記録材に対する画像形成を継続する場合は、同様の方法で通電電流を制御するようにすればよい。
【0068】
更に、記録材の搬送姿勢としては、記録材の厚さを加味するようにしてもよい。このことは、記録材の厚さが厚くなると、一般的に湾曲部では記録材が大きく湾曲する方向に向かうようになり、そのため、薄い記録材の場合に比べ、大きな湾曲状態となり易い。したがって、この湾曲状態に記録材の厚さの要因も含めることで、搬送負荷情報をより一層的確に把握し易くなる。
【0069】
本実施の形態では、モータM3の通電電流を、実質的には「中」と「強」の二段階で変化させる態様を示したが、三段階以上にしても差し支えない。
そして、このような電流制御は、レジストロール63のモータM3に限らず、図3にてハッチングで示される搬送部材のうち、供給ロール43及び戻しロール71を除く部材を駆動するモータM4〜M8でレジストロール63を駆動するモータM3と同様の電流制御を行うようにしても差し支えない。
【0070】
本実施の形態では、記録材の搬送姿勢及び挟持状態の双方を考慮する態様を示したが、記録材の搬送姿勢に着目して電流制御を行うようにしても差し支えない。特に、このような条件は、使用する記録材が例えば上質紙のように厚さが大きく変わらないものを常に使用するユーザーにとって、特に有用となる。
【0071】
また、本実施の形態では、記録材の搬送開始時点から、終了時点までモータM3の通電電流を一定として示したが、記録材が搬送されるに伴ってその搬送姿勢が逐次変化することに着目し、逐次変化する搬送姿勢に合わせて通電電流をもっと細かく切り替えるようにしてもよい。
例えば、本実施の形態では、図9に示すように、記録材供給部40から搬送される記録材に対しては、記録材が、特に、大きな湾曲形状を呈しないため、レジストロール63が記録材を搬送中は一定の通電電流とする必要があるが、戻し経路55から主経路51に至る場合には、必ずしも一定電流とする必要はない。つまり、負荷が大きい状態では通電電流を大きくし、負荷が軽減された段階で通電電流を小さくすることで、消費電力のより一層の低減がなされる。
【0072】
尚、本実施の形態においても、供給ロール43及び戻しロール71を駆動するモータM1,M2に対しては、通電電流は変化させず、しかも両者を排他的に稼働させるようになっていることは言うまでもない。
【0073】
以上の実施の形態1や実施の形態2では、搬送負荷情報として、記録材の厚さ情報や搬送姿勢を利用する態様を示したが、環境条件や使用履歴を加味するようにしても差し支えない。
例えば、環境条件にて高湿条件になると、記録材が吸湿することで、低湿環境に比べ搬送される記録材が搬送経路から抵抗を受けやすくなり、搬送部材に対する搬送負荷が大きくなり易い。また、経時によって搬送部材そのものの変化も多少生じることが想定され、搬送部材での記録材の搬送力そのものが、例えば搬送部材の表面の変化によって低下するようになる。この場合、同じ記録材であっても、搬送部材に対する負荷が初期の場合に比べ大きくなる。したがって、このような条件を加味することで、より一層記録材の搬送安定性が向上される。
【実施例】
【0074】
本実施例は、供給ロール43と戻しロール71との排他的動作の一例を示すもので、3枚の記録材に対して両面印刷を行う場合の夫々の記録材の通過状態を示すものである。
先ず、図12(a)に示すように、1枚目の記録材が供給ロール43によって供給され、主経路51に向かって搬送開始される。この1枚目の記録材は、(b)のように、主経路51を搬送され、(c)のように、画像が定着された後に反転経路53に向かう。その段階で、2枚目の記録材が供給ロール43によって供給される。そして、(d)に示すように、1枚目の記録材は反転経路53にて待機し、2枚目の記録材の供給ロール43による供給を終えた段階で、反転ロール69の反転動作と共に戻し経路55の戻しロール71の駆動が開始され、1枚目の記録材が反転経路53から戻し経路55へ搬送される。
【0075】
次に、図13(e)に示すように、1枚目の記録材が戻しロール71によって戻し経路55を搬送され、主経路51に向けて搬送される。一方、2枚目の記録材は画像が定着された後に反転経路53に搬送される。尚、3枚目の記録材は供給ロール43が停止していることから、そのままの状態で待機している。そして、(f)のように、1枚目の記録材が主経路51を搬送され、戻しロール71の駆動が終了した段階で、1枚目の記録材の後端に重ならない条件で、3枚目の記録材が供給ロール43から主経路51に向けて供給される。このとき、2枚目の記録材は反転経路53に搬送され、2枚目の記録材の後端位置が反転経路53と戻し経路55との合流点を超える位置まで搬送される。
【0076】
次に、(g)のように、1枚目の記録材は両面印刷を終え、そのまま主経路51から図示外の記録材排出部に導かれる。一方、3枚目の記録材はそのまま主経路51を搬送される。そして、(h)のように、供給ロール43による3枚目の記録材の搬送が完了して供給ロール43の駆動が停止した後、反転経路53から戻し経路55側に2枚目の記録材が搬送され、戻しロール71によって戻し経路55内を搬送される。
その後、3枚目の記録材に対して両面印刷が行われて、2枚目及び3枚目の記録材が図示外の記録材排出部に排出されて、このジョブを終える。
【0077】
以上のような方法で、3枚の両面印刷が完了するが、このとき、供給ロール43と戻しロール71の間では、常に、排他的な動作となっているため、これらを駆動するモータに対して通電電流を大きくしても、一方のみ稼働されるようになっていることから、電源容量も少なくて済むようになる。
【符号の説明】
【0078】
1…記録材,2…画像形成部,3…記録材供給部,3a…供給搬送部材,4…記録材戻し搬送部,4a…戻し搬送部材,5…記録材搬送部,5a…搬送部材,6…駆動装置,7…判別手段,8…可変制御手段,9…固定制御手段,M1…供給用モータ,M2…戻し用モータ,M3…搬送用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材上に画像が形成可能な画像形成部と、
供給搬送部材を用いて収容された記録材を前記画像形成部に向けて供給する記録材供給部と、
戻し搬送部材を用いて前記画像形成部にて画像が形成された記録材の非画像面に画像を形成するために反転された状態の記録材を前記画像形成部に向けて戻し搬送する記録材戻し搬送部と、
前記記録材供給部及び前記記録材戻し搬送部以外の搬送経路に対応して複数の搬送部材を有し、これらの搬送部材を用いて記録材を搬送する記録材搬送部と、
前記供給搬送部材を駆動する一若しくは複数の供給用モータ、前記戻し搬送部材を駆動する一若しくは複数の戻し用モータ、および、前記複数の搬送部材を駆動する一若しくは複数の搬送用モータを有し、前記複数の搬送部材のうち予め決められた搬送部材を駆動するための搬送用モータとして通電電流の変化により駆動トルクが変化するトルク可変モータを含む駆動装置と、
前記予め決められた搬送部材によって挟持された記録材の搬送に要する負荷に関する搬送負荷情報を判別する判別手段と、
前記搬送用モータを駆動するときに、前記判別手段の判別結果に基づいて前記搬送部材による搬送負荷情報が大きい場合には小さい場合に比べて前記トルク可変モータへの通電電流が大きくなるように前記トルク可変モータを制御する可変制御手段と、
前記供給用モータ又は前記戻し用モータを駆動するときに、前記供給搬送部材又は前記戻し搬送部材による記録材の搬送に要する最大負荷に対応して予め決められた固定通電電流を前記供給用モータ又は前記戻し用モータの通電電流として設定すると共に、前記供給用モータ及び前記戻し用モータのいずれか一方を駆動するときに他方の駆動を禁止するように前記供給用モータ又は前記戻し用モータを排他的に制御する固定制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記供給用モータ及び前記戻し用モータはいずれも通電電流の変化により駆動トルクが変化するトルク可変モータであり、
前記固定制御手段は、前記供給用モータ又は前記戻し用モータの通電電流として前記固定通電電流を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記判別手段は、前記搬送負荷情報として記録材の厚さの情報を判別し、
前記可変制御手段は、前記判別手段の判別結果に基づいて記録材の厚さが厚い場合には薄い場合に比べて前記トルク可変モータへの通電電流が大きくなるように前記トルク可変モータを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記記録材搬送部及び前記記録材戻し搬送部による記録材の搬送経路には記録材が湾曲した状態で搬送される一以上の湾曲部が含まれ、
前記判別手段は、前記搬送負荷情報として前記搬送部材によって挟持された記録材が搬送経路中でどのような搬送姿勢であるかを判別し、
前記可変制御手段は、前記判別手段の判別結果に基づいて記録材の搬送姿勢が大きく湾曲する場合には小さく湾曲する場合に比べて前記トルク可変モータへの通電電流が大きくなるように前記トルク可変モータを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、
前記判別手段は、前記搬送負荷情報として前記搬送部材によって挟持された記録材が搬送されるに伴って逐次変化する搬送姿勢を判別するものであり、
前記可変制御手段は、前記判別手段の判別結果に基づいて前記トルク可変モータへの通電電流が前記記録材の搬送姿勢の逐次変化に合わせて変化するように前記トルク可変モータを制御することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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