説明

画像形成装置

【課題】湿式定着方式の定着装置を備え、定着が完了していないトナーがユーザーの手や他の記録媒体に接触することに起因する不具合の発生を防止することが出来る画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着液10を付与することでトナー41が軟化したトナー像を記録紙13に定着して画像形成を行うプリンタ100で、塗布ニップNを通過して排紙トレイ110に向けて搬送される記録紙13を、記録紙一時収容装置12の収容トレイに一時的に収容し、記録紙13上の定着が完了するのに十分な規定時間経過後に記録紙13を排紙トレイ110に向けて搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものであり、詳しくは、トナーを軟化させる定着液を用いてトナー像を該記録媒体に定着させる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ及びファクシミリ等の画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。画像形成装置には種々の方式があるが、電子写真方式の画像形成装置が普通紙に高精細な画像を高速で形成することができ、さらに、近年ではカラー画像も手軽に作成できる点から広くオフィス等で使用されている。この電子写真方式の画像形成装置では、そのほとんどが熱を利用した熱定着方式の定着装置を採用している。これは、これはハロゲンヒーターやセラミックヒータ等の発熱体でローラやフィルム等の定着部材を熱し、未定着トナーが乗った記録紙を定着部材と加圧部材で挟む方式である。この定着方式では、記録紙を定着部材と加圧部材で挟むことで、未定着トナーが乗った記録紙を加熱・加圧し、トナーを溶融、変形させ、記録紙の繊維中にアンカリングすることで定着させる。この熱定着方式は、この方式は均一性、安定性に優れているため広く普及しているが、一方で発熱体を用いて加熱するために多くのエネルギーを要し、消費エネルギーが大きい定着装置であるという欠点がある。
【0003】
熱定着方式の定着装置に比べて省エネルギー化を実現できる定着方式として、トナーを定着するために加熱を行わない湿式定着方式が知られている(特許文献1〜3)。湿式定着方式は、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を記録媒体上のトナー像に付与してトナー像を定着させるものであるため、熱定着方式よりも省エネルギー化を実現できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した熱定着方式の定着装置では、熱を与え同時に押しつぶしてトナーを変形させ、紙の繊維に押し込みアンカリングさせることで行われる。加熱されたトナーは瞬時に軟化し、熱が無くなるとすぐに硬化して元の硬さに戻る。このため、定着装置を通過した直後であっても記録紙上のトナーは定着性が安定した状態であり、トナーを指等で触っても取れない定着が完了した状態となる。
一方、湿式定着方式の定着装置では、熱定着方式に比べてトナーの軟化から硬化までの時間が非常に長い事がわかってきた。未定着のトナーに定着液を付与すると、まずトナー粒子の外周部に定着液が付着し、外周部の分子が定着液内の軟化剤により結合力が弱くなることでトナーの樹脂が軟化する。その後、次第にトナー粒子の中央部に軟化剤が浸透し中央部が軟化してくるとそれに連れて外周部は軟化剤の比率が少なくなるため硬化してくる。このような定着液によるトナーが軟化し再び硬化するまでの反応は、加熱に比べて非常に遅く、定着が完了するまでに時間がかかる。つまり、トナーに定着液を付与した直後は、トナーの記録媒体に対する定着は完了しておらず、画像に触れるものがあるとトナーは取れてしまい画像が乱れる。
このため、定着液が付与された直後の記録媒体を排紙トレイ等のユーザーが手に取ることができる画像形成後媒体収容部に受け渡すと、次のような問題が生じる。すなわち、定着が完了していないトナーを担持する記録紙が、ユーザーの手に取られ、ユーザーの手が画像に接触することでトナーが取れてしまい、指や衣服を汚すというようなユーザー周辺環境をトナーで汚染する可能性がある。また、画像形成後媒体収容部内に画像が形成された記録媒体を重ねて収容する場合、定着が完了していないトナーに他の記録媒体が接触し、画像が乱れたり、他の記録媒体の裏汚れとなったりする可能性が有る。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、湿式定着方式の定着装置を備え、定着が完了していないトナーがユーザーの手や他の記録媒体に接触することに起因する不具合の発生を防止することが出来る画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、該トナーを軟化させる軟化剤を含有した定着液を、表面にトナー像を担持する上記記録媒体またはトナー像担持体の表面に付与する定着液付与手段とを有し、該定着液を付与することで該トナーが軟化したトナー像を該記録媒体に定着して画像形成を行う構成で、該記録媒体が該定着液を付与される記録媒体定着液付与位置を通過し、画像が形成された該記録媒体を画像形成後媒体収容部に収容する画像形成装置において、上記記録媒体定着液付与位置を通過して上記画像形成後媒体収容部に向けて搬送される上記記録媒体の搬送速度を該記録媒体が該記録媒体定着液付与位置を通過したときの搬送速度よりも低下させ、該記録媒体定着液付与位置から該画像形成後媒体収容部まで規定時間かけて該記録媒体を搬送することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記記録媒体定着液付与位置を通過した上記記録媒体を一時的に収容し、規定時間経過後に該記録媒体を上記画像形成後媒体収容部に向けて搬送する記録媒体一時収容部を複数備え、連続して該記録媒体定着液付与位置を通過した二つの該記録媒体を、互いに異なる該記録媒体一時収容部に収容することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、上記記録媒体定着液付与位置を通過した上記記録媒体を、上記トナー像形成手段及び定着液付与手段を備える装置本体の外部に排出する記録媒体排出部を備え、複数の上記記録媒体一時収容部は、該記録媒体定着液付与位置から該記録媒体排出部までの該記録媒体の搬送経路に配置され、該記録媒体排出部から排出された該記録媒体を上記画像形成後媒体収容部に収容することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2の画像形成装置において、上記記録媒体定着液付与位置を通過した上記記録媒体を、上記トナー像形成手段及び定着液付与手段を備える装置本体の外部に排出する記録媒体排出部を備え、複数の上記記録媒体一時収容部は、該記録媒体排出部から排出された該記録媒体を受け入れる記録媒体一時収容ユニット内に配置され、該記録媒体一時収容ユニットを通過した該記録媒体を上記画像形成後媒体収容部に収容することを特徴とするものである。
【0007】
本発明においては、記録媒体定着液付与位置で定着液が付与された記録媒体の画像形成後媒体収容部に向かう搬送速度を、記録媒体定着液付与位置を通過したときの搬送速度よりも低下させ、記録媒体定着液付与位置から画像形成後媒体収容部まで規定時間かけて該記録媒体を搬送する。記録媒体定着液付与位置を通過した記録媒体が画像形成後媒体収容部に到達するまでの時間が、定着液を塗布したトナーの記録媒体に対して完全に定着するまでの時間よりも長くなるように、規定時間を設定することによって画像形成後媒体収容部内の記録媒体はトナーの定着が完了した状態とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像形成後媒体収容部内の記録媒体はトナーの定着が完了した状態であるため、定着が完了していないトナーがユーザーの手や他の記録媒体に接触することに起因する不具合の発生を防止することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係るプリンタの概略構成図。
【図2】作像ユニットの拡大説明図。
【図3】定着液を利用した定着プロセスを模式的に示した説明図、(a)は、定着液を付与する前の状態の説明図、(b)は、定着液を付与した直後の状態の説明図、(c)は、定着が完了した状態の説明図。
【図4】記録紙一時収容装置の拡大説明図。
【図5】記録紙一時収容装置の全ての収容トレイに記録紙が収容された状態の説明図。
【図6】第一収容トレイの内部に収容する記録紙が入れ替わるときの説明図。
【図7】変形例に係るプリンタの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のタンデム方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタ1という)の実施形態について説明する。なお、本発明を適用した画像形成装置としては、プリンタに限るものではなく、複写機、ファクシミリ等、定着装置を備えた画像形成装置であれば適用可能である。
まず、実施形態に係るプリンタ1の基本的な構成について説明する。
図1は、プリンタ1の概略構成図である。同図において、プリンタ1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(Bk)のトナー像を4つの感光体2(Y,M,C,Bk)にそれぞれ形成する4つの作像ユニット200(Y,M,C,Bk)、中間転写体である中間転写ベルト3、二次転写ローラ70、レジストローラ対60、定着装置300、図示しない光書込装置などを備えている。二次転写ローラ70は、中間転写ベルト3を挟んで二次転写対向ローラ7に当接し、中間転写ベルト3上のトナー像を記録紙13に転写する二次転写ニップを形成する。
また、プリンタ1の下方には、第一給紙トレイ4a及び第二給紙トレイ4bを備えた給紙装置4が配置されている。また、プリンタ1の図中左側には、画像形成がされた記録紙13を装置外に排出する排紙ローラ対11と、排紙ローラ対11から排紙された記録紙13を収容する排紙トレイ110とを備える。
【0011】
プリンタ1では、各作像ユニット200(Y,M,C,Bk)で、イエロー、マゼンタ、シアン、黒のトナー像を各感光体2(Y,M,C,Bk)の表面上に形成する。
図2は、4つの作像ユニット200のうちの一つの拡大説明図である。
図2に示すように、作像ユニット20は、像担持体である感光体2の周りに、クリーニングブラシ42、クリーニングブレード43、除電ランプ44、帯電チャージャ45、現像装置40等を備える。また、感光体2に対して中間転写ベルト3を挟んで対向する位置には、転写チャージャ28を備える。
画像形成時には、感光体2は図2中の矢印方向に回転する。除電ランプ44によって表面上の電荷が除去された感光体2の表面は、帯電チャージャ45によって均一なマイナス帯電を与えられ、不図示の光書込装置から照射される露光46によって静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体2の表面は現像装置40の現像スリーブ47との対向部で、現像スリーブ47に担持されたプラス帯電キャリア48上のマイナス帯電のトナー41によって、静電潜像が現像され、トナー像が形成される。感光体2の表面上でトナー像を形成するトナー41は、感光体2と中間転写ベルト3との対向部で、プラス電荷が印加された転写チャージャ28と感光体2との間に形成される転写電界によって中間転写ベルト3の表面上に一次転写される。
中間転写ベルト3との対向部を通過した感光体2の表面は、クリーニングブラシ42及びクリーニングブレード43によって残留したトナー41を掻き取られ、次に除電ランプ44によって表面上の電荷が除去されて、次の画像形成に備える。
このようなプロセスによるトナー像の作像が、各作像ユニット200(Y,M,C,Bk)のそれぞれにおいて行われることで、イエロー、マゼンタ、シアン、黒のトナー像が各感光体2(Y,M,C,Bk)の表面上に形成される。そして、各感光体2の表面上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト3の表面上に重ね合わせるように順次転写し、中間転写ベルト3上にカラーのトナー像を形成する。このように、プリンタ1では、4つの作像ユニット200と中間転写ベルト3等により、トナー像形成部100を構成する。
【0012】
一方、給紙装置4では、2つの給紙トレイ(4aまたは4b)のいずれか一方の給紙ローラ5が駆動し、給紙トレイ内の記録紙13が一枚ずつ送り出される。送り出された記録紙13は、図1中の破線で示す経路aに沿って、搬送ローラ対6で搬送され、レジストローラ対60のローラ間に挟み込まれて停止する。レジストローラ対60はローラ間に挟み込んだ記録紙13を中間転写ベルト3上のトナー像に同期させるタイミングで二次転写ニップに送り出す。
レジストローラ対60によって送り出された記録紙13は、二次転写ニップで中間転写ベルト3と接触し、トナー像を静電的に転写される。二次転写ニップではトナーは記録紙13に静電気力で付着しているだけなので、触ったり衝撃を与えたりするとトナーは取れてしまう。
【0013】
二次転写ニップを通過した記録紙13は、定着装置300に到達する。定着装置300は、記録紙13に定着液10を塗布する塗布ローラ8と、塗布ローラ8に定着液10を供給する定着液10を供給する定着液供給装置9とを備える。また、定着装置300は、塗布ローラ8に加圧当接する加圧ローラ80を備え、塗布ローラ8と加圧ローラ80との当接部に塗布ニップNを形成する。定着装置300では、定着液10が定着液供給装置9によって塗布ローラ8の表面上に供給され、表面上に定着液10が供給された塗布ローラ8が、塗布ニップNで記録紙13に定着液10を供給する。定着液10が供給された記録紙13上のトナー像は、定着液10によってトナーが軟化し、その後、再びトナーが硬化することで、トナー像が記録紙13に定着する。
【0014】
電子写真方式の画像形成装置の定着装置としては、熱定着方式が一般的であるが、一方でエネルギーを使いすぎる欠点がある。この点に関し特許文献1に示されるように古くから定着方式には熱方式と蒸気定着方式が考えられていた。蒸気定着法式はトナーを溶かす溶媒蒸気中に未定着トナーが乗った記録紙を挿入するもので、確かにこの方式は熱方式に比べてエネルギーの消費は少ない。しかし液に臭気があったり、使用環境に影響を及ぼしたりする懸念があり、広く普及しなかった。近来、無臭で使用環境への影響がほとんどなく、トナーを膨潤・溶解させ定着可能な液が開発されてきたことで、再び定着液による定着方式が見直されてきている。例えば特許文献2のように中間転写体に定着液を塗布しそのまま記録紙に転写・定着させようというものもある。
【0015】
次に、定着液を利用した定着プロセスを概念的に説明する。
図3は、定着液を利用した定着プロセスを模式的に示した説明図である。
図3(a)は、トナー41が転写され、定着液10が供給される前の記録紙13の説明図である。図3(a)の状態では、記録紙13上に、未定着のトナー41が乗っており、このとき、トナー41は記録紙13に静電的に付着している状態であるため、軽い衝撃で取れてしまう。
図3(b)は、図3(a)の状態から定着液10が塗布された状態の記録紙13の説明図である。定着液10を塗布された記録紙13の表面上のトナー41は、当然、その表面部から軟化が開始される。まずトナー41同士がくっつき、次にトナー41と記録紙13とがくっつく。その後、定着液10がトナー41の中心に浸透し、トナー41の表面部の定着液比率が少なくなることで、トナー41の表面は硬化する。硬化すればトナー41の粘着性が無くなり指等で触っても取れない、図3(c)に示すような、いわゆる定着した状態になる。
【0016】
しかし、定着液10を使った定着の場合、トナー41が軟化してから硬化するまでの時間が、加熱手段による定着の場合に比べて非常に長い。実験的には、トナー41に定着液10を付与した後、3〜5[秒]程度の間は、記録紙13に対する定着が不十分な状態であり、指等で触ると、トナー41が記録紙13から取れてしまう状態が続く。
このため、定着液10を付与した後、そのまま記録紙13を機外に排出してしまうと、ユーザーが手に取り画像を触ることでトナー41が取れてしまい、指や衣服を汚すというようなユーザー周辺環境をトナーで汚染する可能性がある。
【0017】
このような問題に対して、本実施形態のプリンタ1は、塗布ニップNを通過して排紙トレイ110に向けて搬送される記録紙13の搬送を一時的に停止し、規定時間経過後に記録紙13を排紙トレイ110に向けて搬送するための記録紙一時収容装置12を備える。
塗布ニップNを通過した記録紙13を記録紙一時収容装置12内に一度収容し、その後、記録紙一時収容装置12から排紙ローラ対11に向けて搬送することで、塗布ニップNを通過後、排紙ローラ対11によって装置外に排紙されるまで、5秒間は装置内に記録紙13を留める構成としている。
このような構成により、定着液10を塗布された記録紙13は、プリンタ1の装置内で5秒間以上留められ、その間に、トナー41の表面は硬化して、トナー41を指等で触っても取れない定着が完了した状態で排紙ローラ対11から装置外に排出される。定着が完了した状態で記録紙13がプリンタ1の装置外に排紙されることにより、トナー41の記録紙13に対する定着が不十分な状態で記録紙13が排紙されることに起因する不具合の発生を防止することが出来る。
【0018】
また、塗布ニップNを通過し、排紙ローラ対11に向かう記録紙13の全てを同じ位置で留めて、定着強度が増してから機外に出す方法が考えられる。しかし、この方法では留めている5秒間は他のプロセスも全て止める必要があるため5秒に1枚しか印刷できず、1分間に12枚という、遅いプロセスしか対応できないことになる。
このような問題に対して、本実施形態のプリンタ1の記録紙一時収容装置12は、複数の記録媒体一時収容部として収容トレイを複数備えている。
【0019】
画像形成装置はプリンタとして使用される場合が多いが、通常プリンタは資料の順番が狂わぬように画像面を下にして排紙される場合が多い。
プリンタ1では、塗布ニップNで定着液10を塗布された記録紙13は、図1中の実線で示す経路bに沿って記録紙搬送方向変更機構として機能する記録紙一時収容装置12に入る。その後、図1中の二点鎖線で示す経路cに沿って搬送されることによって、記録紙13は、画像面を下にして排紙ローラ対11に搬送され装置外に排紙される。例外的に厚紙等のこしの強い紙は、経路bのような急なカーブは通過できないため、塗布ニップNを通過後、記録紙一時収容装置12に搬送されることなく、直接、排紙ローラ対11に搬送されることもある。
また、両面印刷の場合は、定着液10を塗布された記録紙13が記録紙一時収容装置12に入った後、図1中の一点鎖線で示す経路dに沿って搬送されることによって、さらに反転し、途中から経路aに沿って搬送され、先に画像が形成された面とは反対側の面に画像が形成される。
【0020】
これが通常の画像形成装置と共通する搬送経路の一例であるが、熱定着を行う一般的な画像形成装置では、記録紙一時収容装置12に入った記録紙13は、直ぐに記録紙一時収容装置12から排出され、排紙工程または裏面への画像形成工程へと搬送される。一方、本実施形態のプリンタ1は、定着液10を用いて定着を行うため、記録紙一時収容装置12に入った記録紙13は、規定時間経過後に記録紙一時収容装置12から排出される。このような構成で、規定時間が経過するまでの間、次に搬送されている記録紙13に対する作像プロセスを実行できるように、プリンタ1の記録紙一時収容装置12は、上述したように、複数の記録媒体一時収容部として収容トレイを複数備えている。
【0021】
図4は、記録紙一時収容装置12の拡大説明図である。
図4に示すように、記録紙一時収容装置12は、第一収容トレイ12a〜第四収容トレイ12dの4つの収容トレイを備える。図4に示すプリンタ1の記録紙一時収容装置12では、収容トレイが四段となっているが、収容トレイは四段に限るものではない。
複数枚の記録紙13に対して連続して画像形成が成される場合には、塗布ニップNを通過して定着液10が付与された記録紙13は、図4中の(1)〜(4)に示すように、収容トレイの上から順に、第一収容トレイ12a、第二収容トレイ12b、第三収容トレイ12c及び第四収容トレイ12dの順にストックされていく。
各収容トレイは、入口側端部に反転コロ14をそれぞれ備え、ストック時、この反転コロ14は記録紙13を挟んだままで停止する。図5は、第一収容トレイ12a〜第三収容トレイ12cまで記録紙13をストックした状態を示している。
【0022】
図5は、四段目の第四収容トレイ12dに記録紙13が入る途中のタイミングを示す。図5に示すように、第四収容トレイ12dに入る記録紙13の後端が第一収容トレイ12aの入口付近を通過するタイミングで、第一収容トレイ12aにストックされていた記録紙13が図中の(5)で示すように、反転コロ14によって繰り出され、排紙ローラ対11に向かって搬送される。この時、図中の(6)で示すように、第一収容トレイ12aに入る次の記録紙13が搬送されてきている。このとき、図6で示すように、図中の(5)で示す第一収容トレイ12aから出て行く記録紙13の後端が反転コロ14を通過した後に、図中の(6)で示す記録紙13が第一収容トレイ12aに入るように制御する。これにより、図中の(6)で示す記録紙13の図6中の左側の面に形成された定着が完了していないトナー像が図中の(5)で示す記録紙13に接触し、画像が乱れることを防止できる。
ここで、塗布ニップNから反転コロ14までの距離によっては、図中の(5)で示す記録紙13の後端が反転コロ14を通過するまでの間、図中の(6)で示す記録紙13の搬送を停止する必要性が生じる場合がある。この場合、印刷速度のパフォーマンスを落とすことになるが、全ての記録紙13を装置内の同じ位置で数秒間停止させる構成と比較すると印刷速度のパフォーマンスの低下を防止できる。
【0023】
このような収容トレイにおける記録紙13の入れ替わりを、第二収容トレイ12b〜第四収容トレイ12dについても同様に行い、これを繰り返すことで、印刷のオペレーティング速度を落とさずに連続して印刷することができる。
記録紙一時収容装置12の各収容トレイにストックされていた記録紙13は、定着に必要な時間が記録紙一時収容装置12内で経過し、定着が完了している。このため、プリンタ1の装置外に排出されて、ユーザーに触られる状態となって不具合がない。もちろん、塗布する定着液10の性能により、定着にもっと長い時間が必要な場合は、記録紙一時収容装置12の収容トレイの段数を増やす必要があり、逆に軟化、硬化時間が速い定着液10を用いる場合は、収容トレイの段数を減らすことができる。
【0024】
図1中の一点鎖線で示す経路dを通過させ、両面印刷を行うときにも記録紙一時収容装置12は対応可能である。記録紙一時収容装置12の収容トレイ内で規定秒ストックした後、繰り出した記録紙13を排紙ローラ対11の方向ではなく、一点鎖線で示す経路dに沿って両面パスに戻せば良い。
【0025】
〔変形例〕
図7は、本発明を適用したプリンタ1の変形例の説明図である。
図1のプリンタ1は、装置本体内に記録紙一時収容装置12を備える構成であったが、図7に示す変形例のプリンタ1は、記録紙一時収容装置12をプリンタ1の装置本体を構成する筺体の外に配置された記録紙一時収容ユニット15に備える構成である。
変形例のプリンタ1では、塗布ニップNを通過した記録紙13は、排紙ローラ対11を通過して、装置本体の外部に設けられた記録紙一時収容ユニット15に受け渡され、その内部の記録紙一時収容装置12に収容される。その後、規定時間経過した後に記録紙一時収容装置12から送り出され、第二排紙ローラ対16によって記録紙一時収容ユニット15から排出され、排紙トレイ110上にストックされる。
このように、プリンタ1の装置本体の外部に記録紙一時収容装置12を設ける構成では、熱定着を使用する定着装置を備えるプリンタの定着ユニットを定着液を用いる定着ユニットに置き換えたときに、記録紙一時収容ユニット15を接続することで、一般的に普及してる熱定着を用いたモデルからの変更が可能となる。例えば使用中の熱定着モデルを、環境性能が良い定着液モデルに変更する時などは必要なユニットとなる。もちろん、排紙後の紙をソートしたり、折ったり、ステープルしたりする機能があるフニッシャもこの記録紙一時収容ユニット15と接続することで、機械のパフォーマンスを落とすこと無く使用することができる。
【0026】
以上、本実施形態の画像形成装置であるプリンタ1は、樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナー41を用いて記録媒体である記録紙13上にトナー像を形成するトナー像形成手段であるトナー像形成部100と、トナー41を軟化させる軟化剤を含有した定着液10を、表面にトナー像を担持する記録紙13の表面に付与する定着液付与手段である定着装置300とを有する。プリンタ1では、定着液10を付与することでトナー41が軟化したトナー像を記録紙13に定着して画像形成を行う。さらに、プリンタ1では、記録紙13が定着液10を付与される記録媒体定着液付与位置である塗布ニップNを通過し、画像が形成された記録紙13を画像形成後媒体収容部である排紙トレイ110に収容する。そして、プリンタ1は、塗布ニップNを通過して排紙トレイ110に向けて搬送される記録紙13の搬送を一時的に停止することで、塗布ニップNを通過したときよりも搬送速度が低下した状態となる。搬送を一時的に停止し、記録紙13上の定着が完了するのに十分な規定時間経過後に記録紙13を排紙トレイ110に向けて搬送する。これにより、塗布ニップNの通過した記録紙13が排紙トレイ110に到達するまでの間に、定着液によるトナー定着性能を向上させる時間を設けることができる。よって、定着液10の塗布直後は定着性能が低いため、従来の構成では、排紙後数秒間は記録紙の画像面を触る事が出来なかったが、プリンタ1では規定時間経過後に記録紙13を排紙トレイ110に向けて搬送するため、排紙トレイ110に排紙直後の記録紙13のハンドリングに制限を無くすことができる。
本実施形態のプリンタ1では、「記録媒体定着液付与位置」が表面にトナー像を担持する記録媒体に定着液を塗布する塗布ニップNである。しかし、表面にトナー像を担持する中間転写ベルト等のトナー像担持体の表面に定着液を付与する構成の場合は、トナー像担持体から記録媒体に定着液が付与されたトナーを転写する転写位置が、「記録媒体定着液付与位置」となる。
【0027】
また、プリンタ1は、塗布ニップNを通過した記録紙13を一時的に収容し、規定時間経過後に記録紙13を排紙トレイ110に向けて搬送する記録媒体一時収容部である収容トレイ(12a〜12d)を複数備える。さらに、連続して塗布ニップNを通過した二つの記録紙13{例えば、図4中の(1)で示す記録紙13と、(2)で示す記録紙13}を、互いに異なる収容トレイに収容する。
定着液10の塗布によるトナーの定着が完了する時間は、定着液10の軟化性能によって異なるが、かなり速く軟化させる軟化材を含む定着液10を使っても、実験的には塗布後3〜5秒程度はトナーの定着性が悪く、画像面に触れたりしない方が良い。このため定着液10の塗布後すぐにプリンタ1から排出してしまうとユーザーが触ることで画像が乱れるし、またユーザー近傍環境を剥離したトナーで汚してしまうということになり大きな不具合となってしまう。
このような問題を解決するために、全ての記録紙13を装置内の同じ位置に例えば5秒程度留めておくような構成では、留めている間は他のプロセスも止めなければならない。このような構成では、最速でも連続時5秒に1枚、つまり1分間に12枚の印刷性能となってしまい、遅いシステムにしか対応できない。定着液を使用した画像形成装置のトナー飛散等への対応として、引用文献3のような技術が紹介されているが、この問題に対する解決策は明示されていない。
本実施形態のプリンタ1は、この問題を解決することができる構成であり、収容トレイ(12a〜12d)を複数備え、連続して塗布ニップNを通過した二つの記録紙13(例えば、図4中の(1)で示す記録紙13と、(2)で示す記録紙13)を、互いに異なる収容トレイに収容する。そして、各収容トレイ(12a〜12d)で、順次、記録紙13の入出を切り替えることで、規定秒経過までの記録紙13が停止している時間が印刷枚数に影響を及ぼさない構成とすることができる。このような構成により、1枚目の出力には規定秒、例えば5秒ほど待つ必要があるが、それ以降は連続して出力することができ、1分間に30枚とか50枚とかの高速対機種への対応も可能となる。これにより、印刷速度のパフォーマンスを落とすこと無く、排紙トレイ110に排紙された直後の記録紙13のハンドリングの制限を無くすことができる。
【0028】
また、図1に示すプリンタ1は、塗布ニップNを通過した記録紙13を、トナー像形成部100及び定着装置300を備える装置本体の外部に排出する記録媒体排出部である排紙ローラ対11を備える。複数の記録媒体一時収容部である収容トレイ(12a〜12d)を備えた記録紙一時収容装置12は、塗布ニップNから排紙ローラ対11までの記録紙13の搬送経路に配置され、排紙ローラ対11から排出された記録紙13を排紙トレイ110に収容する構成である。プリンタ1の装置本体内に記録紙一時収容装置12を設けることで、プリンタ1の外部に新たな装置を組み付ける必要がなく、画像形成装置の小型化を図ることができる。
【0029】
図7に示す変形例のプリンタ1は、塗布ニップNを通過した記録紙13を、トナー像形成手段及び定着液付与手段を備える装置本体の外部に排出する記録媒体排出部を備え、トナー像形成部100及び定着装置300を備える装置本体の外部に排出する記録媒体排出部である排紙ローラ対11を備える。そして、排紙ローラ対11から排紙された記録紙13を受け入れる記録紙一時収容ユニット15内に記録紙一時収容装置12が配置されている。そして、記録紙一時収容ユニット15を通過した記録紙13を排紙トレイ110に収容する構成である。プリンタ1の装置本体とは別の記録紙一時収容ユニット15内に記録紙一時収容装置12を設けることで、一般的に普及している熱定着方式の定着装置を備えたプリンタの定着装置を、湿式方式の定着装置に換装したプリンタであっても、高速印刷に対応が可能と成る。
【符号の説明】
【0030】
1 プリンタ
2 感光体
3 中間転写ベルト
4 給紙装置
7 二次転写対向ローラ
8 塗布ローラ
9 定着液供給装置
10 定着液
11 排紙ローラ対
12 記録紙一時収容装置
12a 第一収容トレイ
12b 第二収容トレイ
12c 第三収容トレイ
12d 第四収容トレイ
13 記録紙
14 反転コロ
14a 上側コロ
14b 下側コロ
15 記録紙一時収容ユニット
16 第二排紙ローラ対
20 作像ユニット
28 転写チャージャ
40 現像装置
41 トナー
60 レジストローラ対
70 二次転写ローラ
80 加圧ローラ
100 トナー像形成部
110 排紙トレイ
200 作像ユニット
300 定着装置
N 塗布ニップ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特公昭40−10867号公報
【特許文献2】特開2007−316165号公報
【特許文献3】特開2007−322609号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
該トナーを軟化させる軟化剤を含有した定着液を、表面にトナー像を担持する上記記録媒体またはトナー像担持体の表面に付与する定着液付与手段とを有し、
該定着液を付与することで該トナーが軟化したトナー像を該記録媒体に定着して画像形成を行う構成で、
該記録媒体が該定着液を付与される記録媒体定着液付与位置を通過し、画像が形成された該記録媒体を画像形成後媒体収容部に収容する画像形成装置において、
上記記録媒体定着液付与位置を通過して上記画像形成後媒体収容部に向けて搬送される上記記録媒体の搬送速度を該記録媒体が該記録媒体定着液付与位置を通過したときの搬送速度よりも低下させ、該記録媒体定着液付与位置から該画像形成後媒体収容部まで規定時間かけて該記録媒体を搬送することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記記録媒体定着液付与位置を通過した上記記録媒体を一時的に収容し、規定時間経過後に該記録媒体を上記画像形成後媒体収容部に向けて搬送する記録媒体一時収容部を複数備え、
連続して該記録媒体定着液付与位置を通過した二つの該記録媒体を、互いに異なる該記録媒体一時収容部に収容することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
上記記録媒体定着液付与位置を通過した上記記録媒体を、上記トナー像形成手段及び定着液付与手段を備える装置本体の外部に排出する記録媒体排出部を備え、
複数の上記記録媒体一時収容部は、該記録媒体定着液付与位置から該記録媒体排出部までの該記録媒体の搬送経路に配置され、
該記録媒体排出部から排出された該記録媒体を上記画像形成後媒体収容部に収容することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2の画像形成装置において、
上記記録媒体定着液付与位置を通過した上記記録媒体を、上記トナー像形成手段及び定着液付与手段を備える装置本体の外部に排出する記録媒体排出部を備え、
複数の上記記録媒体一時収容部は、該記録媒体排出部から排出された該記録媒体を受け入れる記録媒体一時収容ユニット内に配置され、
該記録媒体一時収容ユニットを通過した該記録媒体を上記画像形成後媒体収容部に収容することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−93510(P2012−93510A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239992(P2010−239992)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】