説明

画像形成装置

【課題】メイン基板と消耗品との間の信号の伝達の正確化を図るとともに、ファームウェアの正当性を確実に確認する。
【解決手段】被印刷媒体に画像を形成する画像形成装置であって、メイン基板と、メイン基板とは所定距離離れた位置であり、画像形成装置の取替え可能な消耗品とは所定距離未満の近い位置に配置されたサブ基板と、電源のオンオフ操作を行うための電源スイッチと、を備え、サブ基板は、メイン基板と通信するための第1インターフェースと、消耗品に備え付けられた基板と通信するための第2インターフェースと、メイン基板から受信したファームウェアが格納された不揮発性メモリーと、電源スイッチがオン状態となったときに、不揮発性メモリーのファームウェア領域のデータのメッセージ認証コードを計算して、ファームウェアの正当性をチェックする演算部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置として、消耗品(例えばインク)を被印刷媒体(例えば紙)に吐出して画像を形成するプリンターが知られている。このようなプリンターには、例えば、装置の各ユニットを制御する制御回路などが設けられた基板(以下、メイン基板とよぶ)が配置されている。また、インクの種類、インクの残量等のユーザーに有用な情報を記憶する記憶素子(CSIC:Customer Service Integrated Circuit)を有する基板をインクカートリッジに設け、メイン基板とインクカートリッジのCSICとの間で通信を行うようにしたものが知られている。
【0003】
また、このような通信の際に、データの改ざんなどが行われていないこと(すなわちデータの正当性)を確認するためにメッセージ認証コード(MAC:Message Authentication code)を用いるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-39206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業用プリンターなどの大型のプリンターでは、メイン基板とCSICとが物理的にかなり離れた位置に配置されることがある。この場合、メイン基板とCSICとの間で信号が正常に伝達できなくなるおそれがあった。つまり、CSICのデータの読み書きを正確に行えなくなるおそれがあった。
【0006】
また、通常、基板の不揮発性メモリー(例えば、フラッシュメモリー)に格納されるファームウェアを書き換えるときには、ファームウェアを、一時的に揮発性メモリー(例えばRAM)に記憶させ、その後、フラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーに格納するようになっている。従来では、不揮発性メモリーに書き込む際にデータの正当性の確認を行っていたが、不揮発性メモリーに格納されたデータの正当性は確認していなかった。つまり、不揮発性メモリーに格納されたデータが改ざんされているおそれがあった。
【0007】
本発明は、メイン基板と消耗品との間の信号の伝達の正確化を図るとともに、ファームウェアの正当性を確実に確認することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、被印刷媒体に画像を形成する画像形成装置であって、メイン基板と、前記メイン基板とは所定距離離れた位置であり、前記画像形成装置の取替え可能な消耗品とは前記所定距離未満の近い位置に配置されたサブ基板と、電源のオンオフ操作を行うための電源スイッチと、を備え、前記サブ基板は、前記メイン基板と通信するための第1インターフェースと、前記消耗品に備え付けられた基板と通信するための第2インターフェースと、前記メイン基板から受信したファームウェアが格納された不揮発性メモリーと、前記電源スイッチがオン状態となったときに、前記不揮発性メモリーのファームウェア領域のデータのメッセージ認証コードを計算して、前記ファームウェアの正当性をチェックする演算部と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】プリンター1のブロック図である。
【図2】プリンター1の装置本体2の概略断面図である。
【図3】4パスで印刷するケースにおいて各パスで形成されるラスタラインを示した模式図である。
【図4】ヘッドの移動を説明するための模式図である。
【図5】サブ基板300の構成を示すブロック図である。
【図6】MACの使用方法についての概念図である。
【図7】フラッシュメモリー306のファームウェア領域のメモリーマップを示す図である。
【図8】サブ基板300のファームウェアの書き換え時の処理を示すフロー図である。
【図9】本実施形態におけるサブ基板300の動作について説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0012】
被印刷媒体に画像を形成する画像形成装置であって、メイン基板と、前記メイン基板とは所定距離離れた位置であり、前記画像形成装置の取替え可能な消耗品とは前記所定距離未満の近い位置に配置されたサブ基板と、電源のオンオフ操作を行うための電源スイッチと、を備え、前記サブ基板は、前記メイン基板と通信するための第1インターフェースと、前記消耗品に備え付けられた基板と通信するための第2インターフェースと、前記メイン基板から受信したファームウェアが格納された不揮発性メモリーと、前記電源スイッチがオン状態となったときに、前記不揮発性メモリーのファームウェア領域のデータのメッセージ認証コードを計算して、前記ファームウェアの正当性をチェックする演算部と、を有することを特徴とする画像形成装置が明らかとなる。
このような画像形成装置によれは、メイン基板と消耗品との間の信号の伝達の正確化を図るとともに、ファームウェアの正当性を確実に確認することができる。
【0013】
かかる画像形成装置であって、前記ファームウェアが正当でないと判断した場合には、前記ファームウェアを書き換えるモードを実行することが望ましい。
このような画像形成装置によれば、正当でないファームウェアを実行しないようにすることができる。
【0014】
かかる画像形成装置であって、複数の前記消耗品に対応して複数の前記サブ基板を有し、各サブ基板は、前記電源スイッチがオン状態となったときに、それぞれの前記不揮発性メモリーに格納された前記ファームウェアの種類についての情報を取得し、各サブ基板の前記ファームウェアが正当であっても、前記ファームウェアの種類についての情報が一致しない場合は、各ファームウェアを書き換えるモードを実行することが望ましい。
このような画像形成装置によれば、複数のサブ基板が設けられている場合に、より正当性を高めることができる。
【0015】
また、前記ファームウェアの種類についての情報は、バージョン情報であることが望ましい。
このような画像形成装置によれば、各基板について同じバージョンのファームウェアを適用することができる。
【0016】
かかる画像形成装置であって、前記サブ基板は、前記消耗品の前記基板に設けられた記憶素子に対してデータの読み書きをさせるための基板であることが望ましい。
このような画像形成装置によれば、メイン基板と消耗品との間の距離に関わらず、メイン基板と消耗品との間の信号の伝達を正確に行うようにすることができる。
【0017】
かかる画像形成装置であって、前記サブ基板は、前記ファームウェアのデータ量よりも記憶容量の小さい揮発性メモリーを有し、前記ファームウェアの所定量のデータを前記揮発性メモリーに記憶させた後、前記揮発性メモリーに記憶された前記所定量のデータを前記不揮発性メモリーに書き込むことを繰り返すことによって、前記ファームウェアを前記不揮発性メモリーに格納することが望ましい。
このような画像形成装置によれば、揮発性メモリーの容量が小さくてもサブ基板のファームウェアを書き換えることができる。
【0018】
以下の実施形態では、画像形成装置としてラテラル方式のインクジェットプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。なお、プリンター1は、産業用の大型プリンターである。
【0019】
===第1実施形態===
まず、図1及び図2を用いてプリンター1の構成例について説明する。図1は、プリンター1のブロック図である。図2は、プリンター1の装置本体2の概略断面図である。
なお、以下の説明において、「上下方向」、「前後方向」をいう場合は、図2に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、「左右方向」をいう場合は、図2において紙面に直交する方向を示すものとする。
また、本実施形態においては、プリンター1が画像を記録する媒体としてロール紙S(連続紙)を用いて説明する。
本実施形態に係るプリンター1は、図1に示すように、装置本体2と、装置本体2の右隣に配置されたインクカートリッジホルダーユニット3とを備えている。
【0020】
≪装置本体側の構成例について≫
図1及び図2に示すように、プリンター1の装置本体2は、搬送ユニット20と、及び、該搬送ユニット20がロール紙Sを搬送する搬送経路に沿って、給送ユニット10と、プラテン29と、巻き取りユニット70と、を有し、さらに、ヘッドユニット30と、キャリッジユニット40と、これらのユニット等を制御しプリンター1としての動作を司るコントローラー60と、検出器群50と、電源ユニット80とを有している。
【0021】
給送ユニット10は、ロール紙Sを搬送ユニット20に給送するものである。この給送ユニット10は、ロール紙Sが巻かれ回転可能に支持される巻軸18と、巻軸18から繰り出されたロール紙Sを巻き掛けて搬送ユニット20に導くための中継ローラー19と、を有している。
【0022】
搬送ユニット20は、給送ユニット10により送られたロール紙Sを、予め設定された搬送経路に沿って搬送するものである。この搬送ユニット20は、図2に示すように、中継ローラー19に対して水平後方に位置する中継ローラー21と、中継ローラー21から見て後斜め下方に位置する中継ローラー22と、中継ローラー22から見て後斜め上方(ロール紙Sが搬送される方向において、プラテン29から見て上流側)に位置する第一搬送ローラー23と、第一搬送ローラー23から見て後方(ロール紙Sが搬送される方向において、プラテン29から見て下流側)に位置する第二搬送ローラー24と、第二搬送ローラー24から見て鉛直下方に位置する反転ローラー25と、反転ローラー25から見て後方に位置する中継ローラー26と、中継ローラー26から見て上方に位置する送り出しローラー27と、を有している。
【0023】
中継ローラー21は、中継ローラー19から送られたロール紙Sを、前方から巻き掛けて下方に向かって弛ませるローラーである。
中継ローラー22は、中継ローラー21から送られたロール紙Sを、前方から巻き掛けて後斜め上方に向かって搬送するローラーである。
【0024】
第一搬送ローラー23は、不図示のモーターにより駆動される第一駆動ローラー23aと、該第一駆動ローラー23aに対してロール紙Sを挟んで対向するように配置された第一従動ローラー23bとを有している。この第一搬送ローラー23は、下方に弛ませたロール紙Sを上方に引き上げ、プラテン29に対向する印刷領域Rへ搬送するローラーである。第一搬送ローラー23は、印刷領域R上のロール紙Sの部位に対して画像記録がなされている期間、一時的に搬送を停止させるようになっている。なお、コントローラー60の駆動制御により、第一駆動ローラー23aの回転駆動に伴って第一従動ローラー23bが回転することによって、プラテン29上に位置させるロール紙Sの搬送量(ロール紙の部位の長さ)が調整される。
【0025】
搬送ユニット20は、上述したとおり、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間に巻き掛けたロール紙Sの部位を下方に弛ませて搬送する機構を有している。このロール紙Sの弛みは、コントローラー60により、不図示の弛み検出用センサーからの検出信号に基づき監視される。具体的には、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間において弛ませたロール紙Sの部位を、弛み検出用センサーが検出した場合には、該部位に適切な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20はロール紙Sを弛ませた状態で搬送することが可能となる。一方、弛み検出用センサーが弛ませたロール紙Sの部位検出しない場合は、該部位に過剰な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20によるロール紙Sの搬送が一時的に停止され、張力が適切な大きさに調整される。
【0026】
第二搬送ローラー24は、不図示のモーターにより駆動される第二駆動ローラー24aと、該第二駆動ローラー24aに対してロール紙Sを挟んで対向するように配置された第二従動ローラー24bとを有している。この第二搬送ローラー24は、ヘッドユニット30により画像が記録された後のロール紙Sの部位を、プラテン29の支持面に沿って水平後方向に搬送した後に鉛直下方に搬送するローラーである。これにより、ロール紙Sの搬送方向が転換されることになる。なお、コントローラー60の駆動制御により、第二駆動ローラー24aの回転駆動に伴って第二従動ローラー24bが回転することによって、プラテン29上に位置するロール紙Sの部位に対して付与される所定の張力が調整される。
【0027】
反転ローラー25は、第二搬送ローラー24から送られたロール紙Sを、前側上方から巻き掛けて後斜め上方に向かって搬送するローラーである。
中継ローラー26は、反転ローラー25から送られたロール紙Sを、前側下方から巻き掛けて上方に向かって搬送するローラーである。
送り出しローラー27は、中継ローラー26から送られたロール紙Sを、前側下方から巻き掛けて巻き取りユニット70に送り出すようになっている。
【0028】
このように、ロール紙Sが各ローラーを順次経由して移動することにより、ロール紙Sを搬送するための搬送経路が形成されることになる。なお、ロール紙Sは、搬送ユニット20により、印刷領域Rと対応した領域単位で間欠的にその搬送経路に沿って搬送される(すなわち、印刷領域R上のロール紙Sの部位に1ページ分の画像記録が成される毎に、間欠的な当該搬送が行なわれる)。
【0029】
プラテン29は、搬送経路上の印刷領域Rに位置するロール紙Sの部位を支持するものである。このプラテン29は、図2に示すように、搬送経路上の印刷領域Rに対応させて設けられ、かつ、第一搬送ローラー23と第二搬送ローラー24との間の搬送経路に沿った領域に配置されている。
【0030】
ヘッドユニット30は、搬送ユニット20により搬送経路上の印刷領域Rに(プラテン29上に)送り込まれたロール紙Sの部位に、液体の一例としてのインクを吐出するためのものである。このヘッドユニット30は、ヘッド31と、バルブユニット34と、クリーニングユニット35とを有している。
【0031】
ヘッド31は、その下面に、列方向にノズルが並んだノズル列を有している。本実施形態においては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)等の色ごとにそれぞれ複数のノズル♯1〜♯Nからなるノズル列を有している。各ノズル列の各ノズル♯1〜♯Nは、ロール紙Sの搬送方向に交差する交差方向(つまり、当該交差方向が前述した列方向である)に直線状に配列されている。各ノズル列は、当該搬送方向に沿って相互に間隔をあけて平行に配置されている。
【0032】
各ノズル♯1〜♯Nには、インク滴を吐出するための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯Nから吐出される。
【0033】
また、ヘッド31は、後述するように、前記搬送方向(すなわち、前記前後方向)と前記列方向(すなわち、前記左右方向)に往復移動することができるようになっている。
【0034】
バルブユニット34は、インクを一時貯留するためのものであり、後述するインクカートリッジホルダーユニット3のカートリッジホルダー部310に装着されたインクカートリッジからインクが供給される。また、バルブユニット34は、不図示のインク供給チューブを介してヘッド31に接続されている。このため、ヘッド31は、バルブユニット34から供給されたインクをノズルからプラテン29上に搬送されて停止された状態のロール紙Sの部位に向けて吐出することにより、画像記録を行なうことができる。
【0035】
クリーニングユニット35は、ヘッド31をクリーニングするためのものである。このクリーニングユニット35は、ホームポジション(以下、HPと呼ぶ。図2参照)に設けられており、キャップと、吸引ポンプ等とを有している。ヘッド31(キャリッジ42)が搬送方向(前後方向)に移動してHPに位置すると、ヘッド31の下面(ノズル面)に不図示のキャップが密着するようになっている。このようにキャップが密着した状態で吸引ポンプが作動すると、ヘッド31内のインクが、増粘したインクや紙粉と共に吸引される。このようにして、目詰まりしたノズルが不吐出状態から回復することによってヘッドのクリーニングが完了する。
【0036】
キャリッジユニット40は、ヘッド31を移動させるためのものである。このキャリッジユニット40は、搬送方向(前後方向)に延びるキャリッジガイドレール41と(図2に二点鎖線で示す)、キャリッジガイドレール41に沿って搬送方向(前後方向)へ往復移動可能に支持されたキャリッジ42と、不図示のモーターとを有する。
【0037】
キャリッジ42は、不図示のモーターの駆動により、ヘッド31と一体となって搬送方向(前後方向)へ移動するよう構成されている。また、キャリッジ42には、列方向(左右方向)に延びる不図示のヘッドガイドレールが設けられており、ヘッド31は、前記モーターの駆動により、当該ヘッドガイドレールに沿って列方向(左右方向)へ移動するよう構成されている。
【0038】
巻き取りユニット70は、搬送ユニット20により送られたロール紙S(画像記録済みのロール紙)を巻き取るためのものである。この巻き取りユニット70は、送り出しローラー27から送られたロール紙Sを、前側上方から巻き掛けて後斜め下方へ搬送するための中継ローラー71と、回転可能に支持され中継ローラー71から送られたロール紙Sを巻き取る巻き取り駆動軸72と、を有している。
【0039】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行なうための制御ユニットである。このコントローラー60は、図1に示すように、インターフェース部61A、61Bと、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、を有している。インターフェース部61Aは、外部装置であるホストコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行なうためのものである。インターフェース部61Bは、インクカートリッジホルダーユニット3のサブ基板300との間でデータの送受信を行なうためのものである。CPU62は、プリンター1全体の制御を行なうための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従ってユニット制御回路64により各ユニットを制御する。なお、コントローラー60は、メイン基板200上に設けられている。
【0040】
検出器群50は、プリンター1内の状況を監視するものであり、例えば、搬送ローラーに取り付けられて媒体の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送される媒体の有無を検出する用紙検出センサー、キャリッジ42(又はヘッド31)の搬送方向(前後方向)の位置を検出するためのリニア式エンコーダーなどがある。
【0041】
電源ユニット80は、装置本体2に固設されている。そして、不図示の電気コード等を介してコンセント等に接続されている。なお、電源ユニット80は、電源のオンオフ操作を行う電源スイッチ81を備えている。この電源スイッチ81がオン状態になることにより、プリンター1に電力が供給される。
【0042】
≪プリンター1の動作例について≫
上述した通り、本実施形態に係るプリンター1には、列方向(左右方向)にノズルが並んだノズル列を有するヘッド31が設けられている。そして、コントローラー60が、当該ヘッド31を搬送方向(前後方向)に移動させながら、ノズルからインクを吐出させ、搬送方向(前後方向)に沿ったラスタラインを形成することにより、印刷領域R上のロール紙Sの部位に1ページ分の画像記録を行なう。
【0043】
ここで、本実施形態に係るコントローラー60は、複数パス(2パス、4パス等)の印刷を実行する。すなわち、列方向における画像の解像度を高くするために、パス毎に列方向におけるヘッド31の位置を少しずつ変えて印刷を行なう。本実施形態では4パスの印刷を実行することとする。また、画像形成方法としては、例えば、公知のインターレース(マイクロウィーブ)印刷が実行される。
これについて、図3を用いてより具体的に説明する。図3は、4パスで印刷するケースにおいて各パスで形成されるラスタラインを示した模式図である。
【0044】
図3の左側にはヘッド31のノズル列(ノズル)が表されており、当該ヘッド31(ノズル列)が搬送方向に移動しながらノズルからインクが吐出されることにより、ラスタラインが形成される。図に表されているヘッド31(ノズル列)の列方向における位置は、1パス目のときの位置であり、かかる位置を維持したままヘッド31(ノズル列)が搬送方向に移動すると、1パス目の印刷が実行され、図に表された5つのラスタライン(図の右端にパス1と書かれているラスタラインL1)が形成される。
【0045】
そして、次に、ヘッド31(ノズル列)が列方向に移動して、移動後の位置を維持したままヘッド31(ノズル列)が搬送方向に移動すると、2パス目の印刷が実行され、図に表された4つのラスタライン(右端にパス2と書かれているラスタラインL2)が形成される。なお、インターレース(マイクロウィーブ)印刷が採用されているため、前記ラスタラインL1に隣接するラスタラインL2は、ラスタラインL1を形成するインクが吐出されたノズルとは異なるノズルから吐出されたインクにより形成されることとなる。そのため、ヘッド31(ノズル列)の列方向への移動距離は、ノズル間距離(例えば、1/180インチ)の1/4分(1/180×1/4=1/720インチ)ではなく、これより大きな距離となる。
【0046】
以下、同様の動作が行なわれることにより、3パス目、4パス目の印刷が実行されて、図に表された残りのラスタライン(右端にパス3と書かれているラスタラインL3及びパス4と書かれているラスタラインL4)が形成される。このように、4パスでラスタラインが形成されることにより、列方向における画像の解像度を4倍(=720÷180)の解像度とすることが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態においては、所謂双方向印刷が行なわれる。すなわち、1パス、3パス目の印刷が行なわれるときのヘッド31(ノズル列)の移動方向と2パス、4パス、目の印刷が行なわれるときのヘッド31(ノズル列)の移動方向は互いに逆方向となる(後に、詳述する)。
【0048】
以下では、プリンター1の動作例としてプリンター1の画像形成動作(換言すれば、インク吐出動作)を説明するが、上述した4パスで印刷する図4のケースを例に挙げて説明する(以下の説明で、図3も随時参照する)。
【0049】
<プリンター1の画像形成動作例について>
ここでは、プリンター1の印刷動作例について、図3、図4を用いて説明する。図4は、ヘッドの移動を説明するための模式図である。印刷動作を説明する前に、先ず、図4(の見方)について説明する。
【0050】
図4には、印刷処理(すなわち、画像形成に係る一連の処理)が行なわれている間に、ヘッドがどのように移動するかが示されている。ここでは、説明を分かり易くするために、ヘッド31(およびノズル列)の数は、複数個ではなく1つであることとして、説明を行なう。
【0051】
ヘッド31は、便宜上、丸印で表され(図には、大きな丸と小さな丸があるが、双方の区別に意味は無い)、ヘッドの移動が矢印で表されている。ここで、図中前後方向に向いた矢印は、搬送方向におけるヘッドの移動を表し、左右方向に向いた矢印は、列方向におけるヘッドの移動を表している。また、各矢印には、S1〜S10の符号が付けられているが、これは、以降の印刷処理の説明で用いられるステップ番号である。
また、パス1乃至パス4が付されているステップ番号があるが、これらのステップ番号はインクが吐出されることにより画像形成動作が実行されるステップを表している。
【0052】
以下、図3、図4を参照しつつ、印刷処理について説明する。なお、当該印刷処理は、主としてコントローラー60により実現される。特に、本実施形態においては、メモリー63に格納されたプログラムをCPU62が処理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明する各種の動作を行なうためのコードから構成されている。
【0053】
前述した間欠的なロール紙Sの搬送が行なわれてロール紙Sが停止すると、印刷領域R上のロール紙Sの部位に1ページ分の画像形成を行なうための印刷処理が開始される。
先ず、コントローラー60は、キャリッジ42(すなわち各ヘッド)をHP位置から往方向(ロール紙Sが搬送される方向において、上流側から下流側へ向かう方向)へ移動させる(ステップS1)。
コントローラー60は、ヘッド31の往方向への移動を継続しつつ、ヘッドにインクを吐出させて、1パス目の印刷を実行する(ステップS2)。そして、このことにより、図6に示されたラスタラインL1(パス1のラスタライン)が形成される。
【0054】
ヘッドが第一折り返し位置へ至ると、コントローラー60は、ヘッドを列方向へ移動させる(ステップS3)。本実施形態においては、前記距離dだけヘッドを移動させる。
その後、コントローラー60は、ヘッドを復方向(ロール紙Sが搬送される方向において、下流側から上流側へ向かう方向)へ移動させながら、ヘッドにインクを吐出させて、2パス目の印刷を実行する(ステップS4)。そして、このことにより、図3に示されたラスタラインL2(パス2のラスタライン)が形成される。
ヘッドが第二折り返し位置へ至ると、コントローラー60は、ヘッドを列方向へ移動させる(ステップS5)。本実施形態においては、前記距離dだけヘッドを移動させる。
【0055】
次に、コントローラー60は、ステップS2乃至ステップS4の処理と同じ処理をさらになう(ステップS6乃至ステップS8)。この処理において、3パス目の印刷(ステップS6)により図6に示されたラスタラインL3(パス3のラスタライン)が、4パス目の印刷(ステップS8)により図6に示されたラスタラインL4(パス4のラスタライン)が、それぞれ形成される。コントローラー60は、ヘッドの列方向における位置を元に戻す(ステップS9)。すなわち、ステップS3、S5、S7でヘッドが移動した方向とは逆方向に、距離3dだけヘッドを移動させる。
【0056】
そして、コントローラー60は、ヘッドをHP位置へ移動させることにより(ステップS10)、1ページ分の画像形成を行なうための印刷処理を終了させる。なお、本実施形態では、1ページ分の画像形成を4パスで行うこととしたがこれには限られない。例えば2パスで1ページ分の画像形成を行うようにしてもよい。また、本実施形態ではインターレース(マイクロウィーブ)印刷を行うこととしたがこれには限られない。例えばバンド印刷を行ってもよい。
【0057】
≪インクカートリッジホルダーユニットの構成例について≫
図1に示すように、インクカートリッジホルダーユニット3は、サブ基板300とカートリッジホルダー部310を備えている。
【0058】
<カートリッジホルダー部について>
カートリッジホルダー部310には、インクが収容されたインクカートリッジを着脱可能に装着するためのカートリッジホルダーH1〜H4が設けられている。なお、インク、及び、インクが収容されたインクカートリッジは、プリンター1の消耗品に相当する。このカートリッジホルダーH1〜H4には、各種類(色)のインクのインクカートリッジがそれぞれ着脱可能に装着される。なお、カートリッジホルダーH1〜H4は、ヘッド31の各色のノズル列と対応している。そして、カートリッジホルダーH1〜H4に装着された各インクカートリッジのインクは不図示のインク供給チューブを通じてバルブユニット34に供給され、さらに不図示のインク供給チューブを介してヘッド31に供給される。例えば、カートリッジホルダーH1がヘッド31のシアンのノズル列に対応している場合、カートリッジホルダーH1にシアンのインクカートリッジが装着されることによって、シアンのノズル列にシアンのインクが供給されることになる。
【0059】
こうして、ヘッド31は各カートリッジホルダーから供給されたインクを吐出する。本実施形態では、前述したようにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクを使用して画像を印刷する。すなわちカートリッジホルダーH1〜H4には、上記4色のインクカートリッジの何れかが装着される。
【0060】
なお、インクカートリッジ(不図示)は、内部にインクを収容するカートリッジ本体、カートリッジ本体に備えつけられた基板、当該基板に設けられた記憶素子(CSICともいう)を備えている。CSICは、インクカートリッジをカートリッジホルダー部310のカートリッジホルダーH1〜H4に装着したときに、プリンター1(コントローラー60)との間で各種のデータを授受するための素子であり、不揮発性メモリー(例えばフラッシュメモリー)などの各種データの格納可能な素子により構成される。CSICには、例えば、当該カートリッジに収容されているインクの色、濃度、粘性などの特性を示す情報や、各種の印刷制御プログラムなどが記憶されている。また、インクカートリッジには、この記憶素子と電気的に接続された複数の接続端子が露出して形成されている。
【0061】
これに対して、カートリッジホルダー部310のカートリッジホルダーH1〜H4には、インクカートリッジを装着したときにインクカートリッジの複数の接続端子とそれぞれ電気的に接続するための複数の接続端子(不図示)が形成されている。
【0062】
インクカートリッジがカートリッジホルダー部310のカートリッジホルダーH1〜H4に装着されると、インクカートリッジからプリンターの装置本体2のヘッド31へのインクの供給が可能になる。また、インクカートリッジがカートリッジホルダーH1〜H4に装着されるとインクカートリッジの複数の接続端子と、カートリッジホルダーH1〜H4の複数の接続端子とがそれぞれ電気的に接続して、サブ基板300を介して、プリンター1のメイン基板200(コントローラー60)とインクカートリッジの記憶素子(CSIC)との間においてデータの授受が可能となる。
【0063】
このように、インクカートリッジホルダーユニット3のカートリッジホルダー部310にインクカートリッジが装着されることにより、メイン基板200(コントローラー60)は、サブ基板300を介してインクカートリッジの記憶素子からのデータの読み出しや、インクカートリッジの記憶素子へのデータの書き込みを行うことができる。
【0064】
<サブ基板について>
本実施形態のプリンター1のような大型のプリンターの場合、メイン基板200とカートリッジホルダー部310の位置がかなり離れていることがある。この場合、仮に、メイン基板200とカートリッジホルダー部310とを直接電気的に接続すると、信号の伝送距離が非常に長くなってしまう。このため、例えば、信号がなまってしまい、正確な通信が行えなくなる可能性がある。そこで本実施形態では、メイン基板200とカートリッジホルダー部310との間にサブ基板300を設けている。そして、メイン基板200からサブ基板300を介して、カートリッジの記憶素子(CSIC)の読み取りや書き込みを行うようにしている。このようにサブ基板300を設けることによって、メイン基板200とインクカートリッジのCSIC間の信号の伝達の正確化を図っている。
【0065】
図5はサブ基板300の構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すサブ基板300は、インターフェース部301、インターフェース部302、CPU303を備えている。また、CPU303は、演算部304、RAM305、フラッシュメモリー306を有している。本実施形態ではサブ基板300は、インクカートリッジホルダーユニット3に設けられている。言い換えると、メイン基板200とは一定距離離れた位置であり、カートリッジホルダー部310(言い換えるとインクカートリッジ)とは近い(上記一定距離より短い)位置に設けられている。
【0066】
インターフェース部301(第1インターフェースに相当する)は、装置本体2のメイン基板200と通信するためのものである。
インターフェース部302(第2インターフェースに相当する)は、インクカートリッジに備え付けられた基板(より具体的にはCSIC)と通信するためのものであり、カートリッジホルダー部310の複数の接続端子(不図示)と接続されている。
演算部304は、例えばフラッシュメモリー306に格納されたプログラム等を実行し、各種の演算を行う。
【0067】
RAM(Random Access Memory)305は、データの書き込みと読み出しが随時可能なメモリーである。なお、RAM305は揮発性メモリーの一種であり、RAM305に記憶されたデータは、プリンター1の電源(すなわち電源スイッチ81)がオフ状態になると消去される。なお、本実施形態のRAM305は、メイン基板200から受信するファームウェア(後述する)を全て記憶することができないような小さい記憶容量で構成されている。
【0068】
フラッシュメモリー306は、不揮発性メモリーの一種であり、データの書き換えが可能であり電源を切っても(電源スイッチ81がオフ状態になっても)データが消えない。なお、フラッシュメモリー306のデータの消去は、チップ単位または後述するセクター(ブロック)単位で行われる。フラッシュメモリー306には、各種のデータ(秘密鍵等)やプログラム(ブートプログラム、ファームウェア等)が格納される。
【0069】
<ファームウェアについて>
ファームウェアとは、ハードウェアの基本的な制御を行うために機器に組み込まれたソフトウェア(プログラム)のことである。機器に固定的に搭載され、あまり変更が加えられないことから、ハードウェアとソフトウェアの中間的な存在としてファームウェアと呼ばれている。パソコンや周辺機器、家電製品等の機器に搭載されており、機器に内蔵された不揮発性メモリーに格納されている。ファームウェアは、機能の追加や不具合の修正のため、後から変更できるようになっているものが多い。プリンター1の場合、ファームウェアは、例えばホストコンピューター110のアプリケーションで生成されてプリンター1に伝送される。この伝送において、データの改ざんやノイズ等により正当なデータが送られていないおそれがある。そこで、ファームウェアの正当性を確認することが必要になる。
【0070】
プリンター1の場合、メイン基板200とサブ基板300に対してそれぞれファームウェアが設けられているが、以下の実施形態では、サブ基板300のファームウェアの正当性を確認する場合について説明する。本実施形態ではサブ基板300のファームウェアの正当性をチェックする際に、「メッセージ認証コード」(MAC)を使用する。
【0071】
<MACについて>
異なる機器間などのデータ伝送において、秘密鍵に基づいて、伝送された情報(データ)の整合性(正当性)をチェックする仕組みをMACと呼ぶ。通常、MACは、秘密鍵を共有する2つの組織(機器)の間で送られる情報を認証するために使用される。なお、本実施形態ではMACの生成にはハッシュ関数が使われている。ハッシュ関数とは、入力値の長い情報を圧縮(要約)して短い情報にするための関数である。そのハッシュ関数を使って秘密鍵と組み合わせて計算したものをHMACという。
【0072】
まず、MACの使用方法の概念について説明する。
図6は、MACの使用方法についての概念図である。送信側は送信データにハッシュ関数を使って秘密鍵(keyX)と組み合わせてHMACを生成し、送信データにHMACを付与してデータを送出する。次に、そのデータの受信側は、まず受信したデータに対して送信側と同じ手順で独自のHMAC(HMAC´とする)を生成する。そのHMAC´と、送信側が付与したHMACを比較して、両者が一致すればデータは正常であると判断できることになる。
【0073】
図7は、フラッシュメモリー306のファームウェア領域のメモリーマップの一例を示す図である。なお、メモリーマップとは、どのアドレスに何のデータがあるかを示すものであり、図において、右にいくほど、また、下にいくほどアドレスが大きくなっている。例えば、図の一番上の段の左端は最もアドレスが小さい(先頭アドレスである)。
【0074】
図の一つのライン(例えばA1で示すライン)は256バイトである。また4ライン(256バイト×4)分のデータを1セクター(ブロックともいう)という。すなわち図に示すファームウェアは、3セクター分のデータで構成されている。そして、その3セクター分のデータに対して前述のHMACが計算されて付与されている。
【0075】
本実施形態のメイン基板200は、例えば、ホストコンピューター110のアプリケーションからファームウェアを受信して、その受信したファームウェアをサブ基板300に伝送する。サブ基板300は、メイン基板200から受信したファームウェアをフラッシュメモリー306に格納する。
なお、フラッシュメモリー306において、或るセクターに書き込みを行う際には、最初にそのセクター全てのデータを消去する必要がある。
【0076】
<ファームウェア書き換え時の処理について>
図8は、サブ基板300のファームウェアの書き換え時の処理を示すフロー図である。まず、メイン基板200は、例えば、ホストコンピューター110のアプリケーションからファームウェアを受信し、そのファームウェアをサブ基板300に送信する。このとき、メイン基板200は、サブ基板300にファームウェアのデータを32バイトずつ送信する。サブ基板300のCPU303は、インターフェース部301を介して32バイトのデータを受信し(S101)、RAM305に記憶させる(S102)。
【0077】
そして、CPU303は、受信したデータが256バイトか否かを判断する(S103)。受信したデータが256バイトでないと判断した場合(S103でNO)は、ステップS101に戻る。一方、受信したデータが256バイトであると判断した場合(S103でYES)は、書き込みを行うフラッシュメモリー306のアドレスが各セクターの先頭アドレスか否かを判断する(S104)。
【0078】
先頭アドレスと判断した場合(S104でYES)は、フラッシュメモリー306の該当するセクターのデータを全て消去する(S105)。例えばセクターAの先頭アドレスの場合、セクターA(A1、A2、A3、A4)の全データを消去する。そして、RAM305に記憶された256バイトのデータをフラッシュメモリー306に書きこむ(S106)。一方、ステップS104で先頭アドレスではないと判断した場合は、フラッシュメモリー306にデータを書き込むステップS106を実行する。
【0079】
ステップS106の後、CPU303は、全データの書き込みが終わったか否かの判断を行う(S107)。全データの書き込みが終わっていないと判断した場合(S107でNO)は、ステップS101に戻る。全データの書き込みが終了したと判断した場合(S107でYES)は、ファームウェアの書き換え処理を終了する。
【0080】
<本実施形態のサブ基板300の動作について>
図9は、本実施形態におけるサブ基板300の動作について説明するためのフロー図である。
装置本体2の電源スイッチ81がオン状態になると(S201)、CPU030は、フラッシュメモリー306に格納されたブートプログラムを実行し、ブートモードで起動する(S202)。このとき、サブ基板300の演算部304は、ハッシュ関数と秘密鍵(keyX)を用いて、フラッシュメモリー306のワームウェア領域のHMAC(図6におけるHMAC´)を計算し(S203)、算出されたHMACが正しいか(HMAC=HMAC´であるか)を判断する(S204)。HMACが正しいと判断した場合(S204でYES)、CPU303は、ブートモードから通常モードに切り替える。この通常モードは全コマンドを受け付けるモードである。例えば、CPU303は、CSICのデータを読み出すコマンドや、CSICにデータを書き込むコマンドを受けてCSICの読み書きを行う。
【0081】
その後、ファームウェアアップデートコマンドを受け付けたかの判断を行う(S206)。ファームウェアアップデートコマンドを受け付けてないと判断した場合(S206でNO)、再度ステップS206を実行する。
【0082】
一方、ファームウェアアップデートコマンドを受け付けたと判断した場合(S206でYES)、及び、ステップS204でHMACが正しくないと判断した場合(S204でNO)は、ファームウェア書き換えモードを実行する(S207)。なお、ファームウェア書き換えモードは、フラッシュメモリー306に格納されたファームウェアを書き換えるためのモードであり、このモードを実行する際には、フラッシュメモリー306にはアクセスせず、RAM305上で動くことになる。そして、ファームウェアの書き換え用のコマンドを受信することによってフラッシュメモリー306のデータの書き換えを行う。このため、フラッシュメモリー306に格納されたファームウェアが正当でない場合に、そのファームウェアを実行しないようにできる。CPU303は、ファームウェアの書き換えを行ったか否かの判断を行う(S208)。ファームウェアの書き換え処理を行っていなければ(S208でNO)、再度ステップS210を実行する。ファームウェアの書き換え処理を行っていれば(S208でYES)、電源をオフとする(S209)。その後、電源がオンとなることによって(ステップS201に戻り)、ブートモードで起動する。
【0083】
以上、説明したように、本実施形態のプリンター1は、装置本体2のメイン基板200とは一定距離離れた位置であり、且つ、インクカートリッジが装着されるカートリッジホルダー部310に近い位置にサブ基板300を設けている。さらにサブ基板300は、メイン基板200と通信するためのインターフェース部301とインクカートリッジに備え付けられた基板と通信するためのインターフェース部302と、メイン基板200から受信したファームウェアが格納されたフラッシュメモリー306と、電源スイッチ81がオン状態となったときに、フラッシュメモリー306のファームウェア領域のデータのHMACを計算して、ファームウェアの正当性をチェックする演算部304とを有している。
【0084】
このようにサブ基板300を設けているので、メイン基板200とインクカートリッジに備え付けられた基板の記憶素子(CSIC)との間の信号の伝達の正確化を図ることができる。また、電源がオンとなる毎にブートモードを実行し、サブ基板300のフラッシュメモリー306に格納されたファームウェアのHMACを計算して正当性を確認しているので、ファームウェアの正当性を確実に確認することができる。
【0085】
===第2実施形態===
第1実施形態では、メイン基板200に対してサブ基板が1つ設けられていたが、第2実施形態では、メイン基板200に対して2つのサブ基板が設けられている。また、第2実施形態のプリンター1のインクカートリッジホルダー部310には、インクカートリッジホルダーH1〜H8が備えられている。つまり第2実施形態のプリンター1は、8色のインクを吐出する。なお、これ以外の構成は第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0086】
第2実施形態のプリンター1は、2つのサブ基板(サブ基板300A、サブ基板300Bとする)を有している。なお、サブ基板300Aとサブ基板300Bは第1実施形態のサブ基板300と同じ構成であり、サブ基板300AはインクカートリッジホルダーH1〜H4と対応し、サブ基板300BはインクカートリッジホルダーH5〜H8と対応している。そして、各サブ基板のフラッシュメモリー306にはそれぞれ個々にファームウェアが格納されている。
【0087】
この第2実施形態では、ブートモードにおいて、サブ基板300Aとサブ基板300BについてのファームウェアのHMAC(HMAC´)をそれぞれ算出し、ファームウェアの正当性をそれぞれ確認する。ただし、この場合、各サブ基板のファームウェア領域のHMACの正当性が確認されても、サブ基板300Aのファームウェアのバージョンと、サブ基板300Bのファームウェアのバージョンが一致しなければ、通常モードは実行せず、ファームウェア書き換えモードを実行する。
【0088】
例えば、サブ基板300Aとサブ基板300Bの正当性が共に確認されたにも関わらず、サブ基板300Aのファームウェアが最新バージョンであり、サブ基板300Bのファームウェアが旧バージョンであれば、通常モードを実行せずに、ファームウェア書き換えモードを実行する。
【0089】
こうすることにより、サブ基板が2つ設けられている場合のファームウェアの正当性をより確実に確認することができる。なお、この第2実施形態では、サブ基板を2つ設けるようにしていたが、これには限られず、サブ基板の数が3つ以上であってもよい。この場合も同様に、ブートモードにおいて各サブ基板についてのファームウェアの正当性が確認されても、ファームウェアのバージョンが一致しなければ、通常モードを行わずに、ファームウェア書き換えモードを行うようにすればよい。
【0090】
===その他の実施の形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0091】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ラテラル式のプリンターであったが、これには限らない。例えば、被印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送動作と、ヘッドを移動方向(搬送方向と交差する方向)に移動しつつ、ヘッドのノズルからインクを吐出して被印刷媒体にドットを形成するドット形成動作とを繰り返して画像を形成するプリンター(いわゆるシリアルプリンター)であってもよい。また、例えば、被印刷媒体を搬送方向に搬送しつつ搬送経路上に設けられたヘッドからUVインクを吐出して画像を形成するプリンター(いわゆるラインプリンター)であってもよい。
【0092】
また、前述の実施形態では、消耗品としてのインクを吐出して画像を形成するプリンターであったが、これには限られない。例えば消耗品としてのトナーを被印刷媒体に付着させ、その後、熱により定着させることで画像を形成するプリンターであってもよい。
【0093】
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子(ピエゾ素子)を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0094】
<サブ基板について>
前述の実施形態では、1つのサブ基板が4つのインクカートリッジ(言い換えるとCSIC)と対応していたが、これには限らない。例えば3つ以下のインクカートリッジと対応していてもよいし、5つ以上のインクカートリッジと対応していてもよい。
【0095】
<フラッシュメモリーについて>
前述の実施形態では、サブ基板300の不揮発性メモリーとしてフラッシュメモリー306を用いていたがこれには限られない。例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)を用いても良い。
【0096】
<RAMについて>
前述の実施形態ではフラッシュメモリー306のファームウェアを書き換える際、RAM305は256バイト記憶した段階でフラッシュメモリー306にデータを送信していたが、このとき送信するデータは256バイト以外であってもよい。例えば、ファームウェア全体を記憶してからフラッシュメモリー306にファームウェアを送信してもよい。ただし、前述の実施形態のように、ファームウェアのデータを所定バイトずつに分けて送信することによってRAM305に記憶容量の小さいものを用いることができる。
【符号の説明】
【0097】
1 プリンター、2 装置本体、3 インクカートリッジホルダーユニット、
10 給送ユニット、18 巻軸、19 中継ローラー、
20 搬送ユニット、21 中継ローラー、22 中継ローラー、
23 第一搬送ローラー、23a 第一駆動ローラー、23b 第一従動ローラー、
24 第二搬送ローラー、24a 第二駆動ローラー、24b 第二従動ローラー、
25 反転ローラー、26 中継ローラー、27 送り出しローラー、29 プラテン、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、34 バルブユニット、
35 クリーニングユニット、40 キャリッジユニット、41 ガイドレール、
42 キャリッジ、50 検出器群、60 コントローラー、
61 インターフェース部、62 CPU、63 メモリー、64 ユニット制御回路、
70 巻き取りユニット、71 中継ローラー、72 巻き取り駆動軸、
80 電源ユニット、81 電源スイッチ、
110 ホストコンピューター、200 メイン基板、300 サブ基板、
301 インターフェース部、302 インターフェース部、303 CPU、
304 演算部、305 RAM、306 フラッシュメモリー、
310 カートリッジホルダー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
メイン基板と、
前記メイン基板とは所定距離離れた位置であり、前記画像形成装置の取替え可能な消耗品とは前記所定距離未満の近い位置に配置されたサブ基板と、
電源のオンオフ操作を行うための電源スイッチと、
を備え、
前記サブ基板は、
前記メイン基板と通信するための第1インターフェースと、
前記消耗品に備え付けられた基板と通信するための第2インターフェースと、
前記メイン基板から受信したファームウェアが格納された不揮発性メモリーと、
前記電源スイッチがオン状態となったときに、前記不揮発性メモリーのファームウェア領域のデータのメッセージ認証コードを計算して、前記ファームウェアの正当性をチェックする演算部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記ファームウェアが正当でないと判断した場合には、前記ファームウェアを書き換えるモードを実行する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置であって、
複数の前記消耗品に対応して複数の前記サブ基板を有し、
各サブ基板は、前記電源スイッチがオン状態となったときに、それぞれの前記不揮発性メモリーに格納された前記ファームウェアの種類についての情報を取得し、
各サブ基板の前記ファームウェアが正当であっても、前記ファームウェアの種類についての情報が一致しない場合は、各ファームウェアを書き換えるモードを実行する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記ファームウェアの種類についての情報は、バージョン情報である
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の画像形成装置であって、
前記サブ基板は、前記消耗品の前記基板に設けられた記憶素子に対してデータの読み書きをさせるための基板である
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の画像形成装置であって、
前記サブ基板は、前記ファームウェアのデータ量よりも記憶容量の小さい揮発性メモリーを有し、前記ファームウェアの所定量のデータを前記揮発性メモリーに記憶させた後、前記揮発性メモリーに記憶された前記所定量のデータを前記不揮発性メモリーに書き込むことを繰り返すことによって、前記ファームウェアを前記不揮発性メモリーに格納する
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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