説明

画像形成装置

【課題】排紙ローラ対のみで用紙をスイッチバックするために搬送力を大きくすると、搬送ベルトの搬送力が小さい場合に、用紙が排紙ローラ対に挟持された以降の各送り(この際、用紙は排紙ローラ対と搬送部(搬送ベルト)とにより間欠的に送られる)に対して用紙が引っ張られるため、送り精度が悪化したり、用紙が引っ張られる際に発する張り音による騒音が発生したりする問題点を解決する。
【解決手段】搬送ベルト7と排紙ローラ対12とにより用紙Pが間欠送りで搬送されているときの排紙ローラ対12の駆動開始タイミングを、搬送ベルト7の駆動開始タイミングよりも遅らせ、各駆動開始タイミングの間にタイムラグTαを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式で画像形成が可能な画像形成装置に関し、さらに詳しくは、被記録媒体(以下、「シート」という)の両面に画像形成が可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙を搬送する搬送ベルトを備えた搬送部と、用紙を排出する排紙ローラ対を備えた排紙部とを有し、用紙の両面(第1面および第2面)に印字・画像形成が可能なインクジェット方式の画像形成装置に係る技術は既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、用紙の第1面への印字(片面印刷)動作中に用紙が排紙ローラ対に挟持されて搬送ベルトと排紙ローラ対とで用紙を用紙排出方向に送り、用紙の第2面への両面印刷の際には第1面に印字・画像形成した用紙を正逆転可能な排紙ローラ対を用いてスイッチバックさせた後、画像形成部と対向しない搬送ベルトの反対向面に案内しながら再給紙経路(反転搬送経路)で用紙を反転させ、両面印刷を行う構成が開示されている。
【0004】
また、搬送ベルトと排紙ローラとを別駆動とした場合であって、搬送ベルトによる用紙の保持力が低下するときでも送り精度を維持して画像品質の低下を防止することを目的として、記録ヘッドを備え片面印刷だけを行う画像形成装置(インクジェット記録装置)に係る技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2の図1〜図7等には、用紙5を搬送する搬送ベルト31を駆動する副走査モータ131と、用紙5を排紙のために搬送する排紙搬送部7を駆動する排紙モータ79とを同期して、排紙モータ79の1回の駆動期間(ON時間)の駆動終了タイミングを、副走査モータ131の1回の駆動期間(ON時間)の駆動終了タイミングに対して遅延時間tだけ遅延させて間歇的に駆動するとき、入口検知センサ331が用紙5を検知しているときには遅延時間tを時間t1とし、入口検知センサ331が用紙5を検知しなくなったときには遅延時間tを時間t1よりも短い時間t2(t2<t1)とする制御が開示されている。
【0006】
また、スイッチバック機能の無い排紙ローラ対を用いて、正逆転可能な搬送ベルトおよび両面ユニットを利用して両面印刷を行う技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
特許文献3には、搬送装置の吸着ベルトを帯電させる帯電開始位置と、第2面を印字するために両面ユニットから搬送されてくる用紙が搬送装置と接触する位置とを合わせる目的で、両面ユニットに対する帯電装置の配置に合わせて、両面ユニットから搬送される用紙の搬送タイミングを調整することにより、第1面が印字された用紙を搬送装置(吸着ベルト)を用いて反転させて両面印字させる構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2を含む従来の画像形成装置では、排紙ローラ対は、用紙を排出するだけでよく、スイッチバックしないことから、排紙ローラ対の搬送力(例えば、断続的に排紙コロを備えた排紙ローラにあっては、排紙コロの数、拍車の数、拍車圧、排紙コロの摩擦係数、排紙コロの研摩方向の向きなど)は小さくすることができる。
【0009】
一方、特許文献1を含む従来の画像形成装置(インクジェット記録装置)では、排紙ローラ対のみで用紙をスイッチバックするために搬送力を大きくすると、搬送部(搬送ベルト)の搬送力が小さい場合に、用紙が排紙ローラ対に挟持された以降の各送り(この際、用紙は排紙ローラ対と搬送部(搬送ベルト)とにより間欠的に送られる)に対して用紙が引っ張られるため、送り精度が悪化したり、用紙が引っ張られる際に発する張り音による騒音が発生したりする問題点がある。
【0010】
なお、搬送部が帯電・搬送ベルトのときには、環境条件や経時による搬送ベルトの劣化や、帯電ローラなどとの接触による汚れや劣化によって搬送力が次第に小さくなる傾向がある。また、後述するが、搬送ベルトを用いないで印字後の用紙を搬送するインクジェット方式の画像形成装置においては、送りローラ対(第2の回転部材)が画像形成部・印字部の直後に設けられているため搬送力を大きくすることができない事情がある。
【0011】
そこで、本発明は、上述した事情・問題点に鑑みてなされたものであり、搬送ベルトや送りローラ対を通過した用紙(シート)をスイッチバックするためのスイッチバック手段のみで搬送するために、スイッチバック手段の搬送力を大きくした際の、用紙がスイッチバック手段に挟持された以降の用紙が引っ張られることによる送り精度が悪化したり、用紙が引っ張られる際に発する張り音による騒音が発生したりすることを防止できる画像形成装置を実現し提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、本発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
すなわち、本発明は、少なくとも2つの回転部材間に掛け回されて周回移動され、シートをシート搬送方向に間欠的に搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトと対向して配置され、前記搬送ベルトにより搬送されてくるシートに画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段を通過したシートを前記搬送ベルトよりも前記シート搬送方向の下流側に搬送し、スイッチバックするスイッチバック手段とを有し、前記搬送ベルトと前記スイッチバック手段とによりシートが搬送されているときの前記スイッチバック手段の駆動開始タイミングを、前記搬送ベルトの駆動開始タイミングよりも遅らせることを特徴とする画像形成装置である(請求項1)。
【0013】
また、本発明は、シート搬送方向の上流側に設けられ、シートを間欠的にシート搬送方向に搬送する第1の回転部材と、第1の回転部材の前記シート搬送方向の下流側に設けられ、第1の回転部材により搬送されてくるシートを受け取り、前記シート搬送方向の下流側へシートを搬送する第2の回転部材と、第1の回転部材と第2の回転部材との間に設けられ、シートを支持する支持部材と、前記支持部材と対向して配置され、搬送されてくるシートに画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段を通過したシートを第2の回転部材よりも前記シート搬送方向の下流側に搬送し、スイッチバックするスイッチバック手段とを有し、第2の回転部材と前記スイッチバック手段とによりシートを搬送しているときの前記スイッチバック手段の駆動開始タイミングを、第2の回転部材の駆動開始タイミングよりも遅らせることを特徴とする画像形成装置である(請求項7)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記課題を解決して新規な画像形成装置を実現し提供することができる。すなわち、本発明によれば、上記構成により、搬送ベルトまたは第2の回転部材を通過したシートをスイッチバックするためにスイッチバック手段の搬送力を大きくした際、シートが搬送ベルトとスイッチバック手段とにより搬送されているときに、またはシートが第2の回転部材とスイッチバック手段とにより搬送されているときに、シートが引っ張られることによるシートの送り精度が悪化したり、シートが引っ張られる際に発する張り音による騒音が発生したりすることを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すインクジェット記録装置全体の簡略的な一部断面正面図である。
【図2】第1の実施形態の基本的な駆動構成例であって、搬送ベルトと排紙ローラ対とにより用紙が間欠送りで搬送されているときの搬送ベルトと排紙ローラ対との各駆動開始タイミングについて説明するタイミングチャートである。
【図3】排紙ローラ対の駆動開始時点と、搬送ベルトの駆動開始時における加速域との関係について説明するタイミングチャートである。
【図4】(a)は、排紙ローラ対の駆動開始時点と、搬送ベルトの駆動の加速域以降との関係について説明するタイミングチャート、(b)は、(a)の各番号における用紙Pの送られ方を説明する図である。
【図5】コシの強い厚紙などを送る際の、搬送ベルトと排紙ローラ対との駆動方法(駆動時間)について説明するタイミングチャートである。
【図6】共通搬送路に用紙撓み部を設けたインクジェット記録装置全体の簡略的な一部断面正面図である。
【図7】(a)は、搬送ベルトの駆動速度と排紙ローラ対の駆動速度とが共に等速である本実施形態の駆動構成例を説明するタイミングチャート、(b)は、排紙ローラ対の駆動速度が搬送ベルトの駆動速度よりも速い比較例を説明するタイミングチャートである。
【図8】排紙ローラ対の駆動速度が搬送ベルトの駆動速度よりも遅い場合の、用紙を引っ張らなくするための排紙ローラ対の駆動調整方法の第1の例について説明するタイミングチャートである。
【図9】排紙ローラ対の駆動速度が搬送ベルトの駆動速度よりも速い場合の、用紙を引っ張らなくするための排紙ローラ対の駆動調整方法の第2の例について説明するタイミングチャートである。
【図10】図5に示した駆動構成例の変形例を説明するタイミングチャートである。
【図11】図5に示した駆動構成例のさらに別の変形例を説明するタイミングチャートである。
【図12】排紙ローラ対の駆動停止タイミングが搬送ベルトの駆動停止タイミングよりも早い場合について説明する線図である。
【図13】排紙ローラ対の駆動停止タイミングが搬送ベルトの駆動停止タイミングよりも遅い場合について説明するタイミングチャートである。
【図14】本発明の第2の実施形態を示すインクジェット記録装置全体の簡略的な正面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態を示すインクジェット記録装置全体の簡略的な正面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態を示すインクジェット記録装置全体の簡略的な正面図である。
【図17】本発明の第5の実施形態を示すインクジェット記録装置全体の簡略的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を詳細に説明する。各実施形態および各変形例等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品等)については、混同の虞がない限り一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0017】
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態を示す画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置の全体構成および動作を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態を示すインクジェット記録装置の全体構成を簡略的に説明する図である。
同図に示すインクジェット記録装置100は、インクジェット方式で画像形成を行うシリアル型のインクジェット記録装置である。
インクジェット記録装置100は、インクジェット方式で画像形成を行う画像形成手段としての記録ヘッド17等を備えた画像形成部50と、シート・被記録媒体の一例としての用紙Pを搬送する搬送ベルト7等を備えた搬送部51と、用紙Pを給送・給紙する給紙部52と、画像形成(以下、「印刷」ともいう)された用紙Pを排出・排紙する排紙部および片面印刷済みの用紙Pをスイッチバックし反転すべく再給送する排紙反転部53とを有する。
【0018】
用紙Pの搬送経路としては、給紙部52から給紙された用紙Pを搬送部51に搬送する経路である給紙搬送路55と、給紙搬送路55に接続・連通され、表面(第1の面)に画像形成された片面印刷済みの用紙P、および片面印刷済みの用紙Pがスイッチバック・反転されて残りの裏面(第2の面)に画像形成された両面印刷済みの用紙Pを画像形成部50の下流側に搬送する経路である共通搬送路56と、共通搬送路56に接続・連通され、再給送手段を構成する後述する2組の排紙ローラ対10,11によりスイッチバックされ再給送されてきた片面印刷済みの用紙Pを画像形成部50の記録ヘッド17と対向しない反対向側の搬送ベルト7面(以下、「反対向面7b」という)に案内・搬送する、反転経路・再給送経路を含む両面搬送経路としての両面搬送路57と、片面印刷済みの用紙Pが搬送ベルト7の反対向面7bを通過した後、搬送ベルト7の移動方向における記録ヘッド17との対向部よりも上流側の搬送ローラ6に掛け回されている搬送ベルト7の外側周囲を迂回して反転された片面印刷済みの用紙Pを、再度、記録ヘッド17と対向する対向側の搬送ベルト7の面(以下、「対向面7a」という)に案内する反転経路としての反転路21とを有する。なお、反転路21は、搬送ローラ6に掛け回されている搬送ベルト7の外側周囲を迂回して略U字形状に形成されていることにより、迂回経路ないし迂回路とも呼ばれる。
給紙搬送路55を始めとして共通搬送路56および両面搬送路57は、特に説明する経路箇所を除き、対向する一対のガイド部材等で形成されている。
【0019】
画像形成部50は、走査・移動可能なキャリッジ5を備えている。キャリッジ5は、装置本体に横架して固設されたガイド部材である主従のガイドロッド5a,5bにより、主走査方向(図中紙面に対して直交する紙面手前側および紙面奥側の方向)に摺動自在に保持されている。キャリッジ5は、図示しないタイミングベルトを介して主走査モータ(図示せず)に連結されており、同主走査モータによって主走査方向に往復移動・走査される。
【0020】
キャリッジ5には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド17が搭載されている。記録ヘッド17は、搬送ベルト7と対向して配置され、搬送ベルト7により搬送されてくる用紙Pに画像を形成する画像形成手段ないし記録手段として機能する。記録ヘッド17は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向Xa(シート搬送方向Xaでもある)に配列し、ノズルのインク滴吐出方向を略水平方向に向けて装着している。
記録ヘッド17は、例えば、4つのノズル列を有し、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の液滴であるインクをそれぞれ吐出する。
【0021】
また、キャリッジ5は、記録ヘッド17のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク(図示せず)を搭載している。このヘッドタンクには、図示しないカートリッジ装填部に着脱自在に装着される各色の記録液カートリッジから、供給ポンプユニット(図示せず)によって各色の供給チューブを介して、各色の記録液であるインクが補充供給されるようになっている。
【0022】
給紙部52は、複数枚の用紙Pを収納し積載する給紙カセット19と、複数枚の用紙Pを積載して揺動・昇降可能に設けられた底板1と、底板1上の最上の用紙Pを給送する給紙ローラ2と、給紙ローラ2との協働作用により用紙Pを1枚ずつ分離給送する分離パッド(図示せず)等とを備えている。
給紙カセット19は、装置本体に対して図1中両矢印方向に挿脱自在に構成されている。給紙ローラ2は、半月状のローラからなる。給紙カセット19と、給紙ローラ2と、分離パッド(図示せず)とは、給紙ユニットを構成している。
【0023】
片面印刷時に給紙部52から給紙された用紙Pおよび両面印刷時に反転された片面印刷済みの用紙Pを画像形成部50の記録ヘッド17に対向する位置に送り込むために、搬送部51が配置されている。搬送部51は、搬送ベルト7と、搬送ローラ6と、テンションローラ8と、先端コロ4と、帯電ローラ16と、搬送ベルト7の対向面7aの裏面側に設けられた図示しない搬送ガイド板と、分離爪18等とを備えている。
【0024】
搬送ベルト7は、給送されてきた用紙Pを静電吸着して記録ヘッド17に対向する位置に搬送するためのものであり、用紙Pをシート搬送方向Xaに間欠的に搬送する搬送手段として機能する。搬送ベルト7は、無端状ベルトであり、駆動・回転部材としての搬送ローラ6と従動・回転部材としてのテンションローラ8との間に掛け回されて、ベルト移動方向Xa(シート搬送方向Xa、副走査方向Xaでもある)に周回移動するように構成されている。
【0025】
搬送ローラ6は、駆動力伝達手段としての図示しないタイミングベルトおよび歯付きのプーリを介して、駆動手段・駆動源としての副走査モータ25によって構成される駆動系によって回転駆動される。搬送ベルト7は、副走査モータ25により搬送ローラ6が回転駆動されることによって矢印で示すベルト移動方向Xaに周回移動する。
本実施形態の搬送ベルト7は、無端ベルトであるが、成型上において無端のベルトでも、両端をつなぐことで無端状としたベルトでもよい。
【0026】
搬送ベルト7は、1層または複層構造であり、少なくとも用紙Pや帯電ローラ16と接触する側(表層)は、例えばPET、PEI、PVDF、PC、ETFE、PTFEなどの樹脂、またはエラストマーであって導電制御材を含まない材料などで形成される絶縁層を有していて、電荷を保持するようになっている。なお、2層以上の構造とする場合には帯電ローラ16と接触しない側に上記樹脂やエラストマーにカーボンを含有させた導電層を有する構成とできる。
【0027】
先端コロ4は、搬送ベルト7を表面側(搬送面側)から押圧する押圧部材として機能する。先端コロ4は、搬送ベルト7のベルト移動方向Xaにおける記録ヘッド17の上流近傍に、搬送ベルト7を介して搬送ローラ6に押圧するように配設されていて、用紙Pを搬送ベルト7に密着させる。
搬送ガイド板(図示せず)は、搬送ローラ6とテンションローラ8との間であって、搬送ベルト7の内側における記録ヘッド17に対向する位置に配設され、搬送ベルト7を内側からガイドするベルトガイド部材として機能する。分離爪18は、ベルト移動方向Xaにおける記録ヘッド17の下流側において、搬送ベルト7を介してテンションローラ8に押圧するように配設され、搬送ベルト7から用紙Pを分離する分離部材として機能する。
【0028】
帯電ローラ16は、搬送ローラ6におけるベルト移動方向Xaの上流側に配置され、搬送ベルト7の表面を帯電させるための帯電手段として機能する。帯電ローラ16は、搬送ベルト7の表層(絶縁層)に接触し、搬送ベルト7の周回移動に従動して回転するように、図示しないバネによって帯電ローラ16の軸の両端に加圧力を付与されている。
【0029】
帯電ローラ16に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が図示しない電圧印加手段により印加され、搬送ベルト7が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向Xaに、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト7上に用紙Pが給送されると、用紙Pが搬送ベルト7に静電的に吸着され、搬送ベルト7の周回移動によって用紙Pが副走査方向Xaに搬送される。
【0030】
そこで、キャリッジ5を移動させながら画像信号に応じて、図示しない制御手段の制御の下に記録ヘッド17を駆動することにより、停止している用紙Pにインク滴を吐出して1行分を記録し、搬送ベルト7により用紙Pを所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙Pの後端が記録ヘッド17の記録領域を抜け出た信号を、図示しない制御手段が受けることにより、記録動作を終了する。
【0031】
搬送部51における搬送ベルト7のシート搬送方向の下流直後には、分離爪18によって搬送ベルト7から分離された用紙Pを搬送するための、搬送ベルト7の直後で記録ヘッド17の下流側に位置する送りローラ対3を有している。この送りローラ対3は、断面星型の拍車ローラ11と、この拍車ローラ11に対向当接した第2搬送ローラとも呼ばれる送りローラ9とからなる。
搬送ベルト7の直後で記録ヘッド17の下流側に位置するローラ対の拍車ローラ11は、記録ヘッド17の下流側において、用紙Pの記録ヘッド17側の面に係わり合う(以下、「係合」という)するものであるが、用紙Pが通常の普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ、封筒等の厚紙に記録を行う場合においては、用紙Pの送りを単に補助するものであり、拍車ローラ11と送りローラ9との間に用紙Pが噛んでいること、すなわち拍車ローラ11が用紙Pに係合していることによって用紙表面と記録ヘッド17とのギャップを定めるものではない。
【0032】
さらに、記録ヘッド17で画像形成・記録された用紙Pを排紙するための排紙部として、搬送ベルト7および送りローラ対3によって搬送されてきた用紙Pを、排紙トレイ13に排出する排出手段、およびスイッチバックするスイッチバック手段ないし再給送手段の機能を併せ持つ2組の排紙ローラ対12を備えている。各排紙ローラ対12は、断面星型の拍車ローラ11と、この拍車ローラ11に対向当接した排紙ローラ10とからなる。これら排紙ローラ対12のシート搬送方向下流には、各排紙ローラ対12によって送られてきた用紙Pを案内する図示しない排紙ガイド部材と、排出される用紙Pを積載する排紙トレイ13とが配設されている。
【0033】
次に両面印刷に係る構成について説明する。
各排紙ローラ対12を構成する排紙ローラ10および拍車ローラ11は、片面印刷済みの用紙Pの先端および後端を反転させるスイッチバック動作可能に、共に時計回り、反時計回りの両方向に回転可能、すなわち正逆転可能に構成されている。本実施形態では、上述したようにスイッチバック手段および排出手段の両機能を兼ね備えた2組の排紙ローラ対12だけで、片面印刷済みの用紙Pを確実にスイッチバックするために2組の排紙ローラ対12(以下、単に「排紙ローラ対12」ともいう)を採用して搬送力を大きくしている。排紙ローラ対12の駆動ローラである排紙ローラ10側は、例えば中間ギヤを備えたギヤ列等の駆動力伝達手段を介して連結されていて、共に同一方向に回転するようになっている。
【0034】
各排紙ローラ対12は、図示しないタイミングベルトおよび歯付きのプーリまたはギヤ列等からなる駆動力伝達手段を介して、駆動源としての正逆転可能な排紙モータ26に連結されていて、同排紙モータ26によって回転駆動される。
上述したとおり、排紙ローラ対12は、搬送ベルト7の対向面7aを通過した片面印刷済みの用紙Pをスイッチバックさせて、再度、画像形成部50の記録ヘッド17側へ給送するスイッチバック手段ないし再給送手段として機能する。排紙ローラ対12は、本実施形態では排紙反転部53に配置されており、シート排出部としての排紙部に配設される排出手段の機能と上記スイッチバック手段の機能とを兼ね備えている。
【0035】
排紙反転部53の共通搬送路56と両面搬送路57との分岐部には、スイッチバック用の、支軸を中心として揺動可能な搬送経路切替手段・分岐部材としての分岐爪20が配設されている。上記したとおり、再給送手段は、排紙ローラ対12、両面搬送路57および分岐爪20から主に構成されている。
テンションローラ8に対向して、記録ヘッド17と対向・対峙しない側の搬送ベルト7の反対向面7bに当接する両面搬送ローラ14が配設されている。搬送ベルト7の反対向面7b側には、片面印刷済みの用紙Pを反対向面7bにガイドする図示しないガイド部材も配置される。
【0036】
反転路21の入口近傍には、搬送ベルト7を介して搬送ローラ6に押圧するように配設された押圧部材としての両面加圧コロ15と、搬送ベルト7を介して搬送ローラ6に押圧するように配設された分離部材としての分離爪18とが配置されている。
【0037】
図1に基づいて、本実施形態のインクジェット記録装置100の全体動作を説明する。先ず、片面(例えば用紙Pの第1の面である用紙表面)印刷時の動作を説明する。図示しない電源スイッチがオン・投入され、使用者による操作部(図示せず)の各種キー操作(印刷枚数や拡大・縮小等のキー操作)が終了すると、インクジェット記録装置100の動作を制御する図示しない制御手段からの制御指令により、給紙部52が画像形成部50および搬送部51と同期して起動可能状態になる。すなわち、給紙ローラ2および分離パッド(図示せず)の協働作用により、底板1上の最上面の用紙Pが1枚に分離されて給送され、給紙搬送路55により案内されつつ搬送部51の先端コロ4と搬送ベルト7との間に送り込まれる。
【0038】
この時、副走査モータ25により搬送ローラ6が回転駆動されることによって、搬送ベルト7は副走査方向(ベルト移動方向)Xaに周回移動している。この際、帯電ローラ16は、搬送ベルト7の表層に接触し、搬送ベルト7の周回移動に従動して回転しており、図示しない電圧印加手段による帯電ローラ16への交番する電圧印加を介して、帯電ローラ16がプラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電される。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト7上に用紙Pが給送され、用紙Pが搬送ベルト7の対向面7aに静電的に吸着され、搬送ベルト7の周回移動によって用紙Pが副走査方向Xaに搬送される。この際、用紙Pの搬送は記録ヘッド17における印字位置で一旦停止する。
【0039】
次いで、キャリッジ5が主走査方向(図1中紙面に直交する紙面手前および奥側)に移動するように駆動されるとともに、画像信号に応じて記録ヘッド17が駆動されることにより、停止している用紙Pにインク滴を吐出して1行分を印字記録し、搬送ベルト7上に保持された用紙Pの所定量搬送後、次の行の印字記録が行われる。
そして、再びの搬送ローラ6の回転駆動を介して搬送ベルト7によって用紙Pが搬送され、この際、分離爪18を介して搬送ベルト7から分離された片面印刷済みの用紙P(以下、単に「用紙P」ともいう)は送りローラ9と拍車ローラ11とにより排紙反転部53に送り込まれ、図示しない排紙ガイド部材によって案内されつつ、さらにシート搬送方向Xaの下流側に搬送される。
【0040】
搬送される用紙Pは、2組の排紙ローラ対12が例えば正転駆動されるによってシート排出方向Xbの下流側に搬送される。記録終了信号または用紙Pの後端が記録ヘッド17の記録領域を抜け出た信号を、上記図示しない制御手段が受けることにより、記録動作を終了して、用紙Pは排紙トレイ13に排紙・積載される。このように、片面印刷済みの用紙Pは、記録ヘッド17による印字・画像形成中にスイッチバック手段の機能を備えた2組の排紙ローラ対12によって搬送される(請求項8)。
【0041】
次に両面印刷時の動作について説明する。
片面印刷が上述した通りの動作で行われた後、片面印刷済みの用紙Pの先端が排紙ローラ対12のニップ部へ導かれて、片面印刷済みの用紙Pの後端が排紙反転部53の分岐部を通過すると、これが図示しないセンサにより検知されることで、2組の排紙ローラ対12の各排紙ローラ10と各拍車ローラ11とが例えば逆転駆動されることによって反転開始し、片面印刷済みの用紙Pの先端と後端とが逆になるスイッチバック動作が行われる。この際、分岐部に配設されている分岐爪20により、片面印刷済みの用紙Pの搬送経路は両面搬送路57側に切り換えられている。
次いで、スイッチバック動作を検知する図示しないセンサにより、スイッチバックされた片面印刷済みの用紙Pの先端(スイッチバック前は用紙Pの後端)が検知されると、片面印刷済みの用紙Pの先端が両面搬送路57の図において下方に搬送される。
【0042】
次いで、片面印刷済みの用紙Pは両面搬送路57を経由して、搬送ベルト7における記録ヘッド17と対向しない反対向面7bに吸着させながら搬送される。搬送ベルト7の反対向面7bに吸着されながら搬送されてきた片面印刷済みの用紙Pは、両面加圧コロ15によって搬送ベルト7を介して搬送ローラ6に押圧されつつ搬送され、分離爪18によって搬送ベルト7から分離される。分離された片面印刷済みの用紙Pは、さらに反転路21に案内されつつ先端コロ4を通って搬送ベルト7によって記録ヘッド17との対向部に再度搬送される。この際、上述したと同様にして搬送ベルト7の対向面7aに吸着されて記録ヘッド17の印字領域に吸着搬送される。
ここで、帯電ローラ16は、反転時、反転路21の内側に設置されているため、片面印刷済みの用紙Pは常に新規に帯電された状態の搬送ベルト7上に吸着されることとなる。以降の動作は片面印刷時の動作より当業者であれば容易に理解し実施できるため、これ以上の詳細な動作説明を省略する。
【0043】
図1のインクジェット記録装置100では、両面印刷可能な画像形成装置であるインクジェット記録装置100において、片面印刷済みの用紙Pを再給送・反転する際に、記録ヘッド17と対向しない搬送ベルト7の反対向面7bに再給送し案内するように再給送手段(排紙ローラ対12、両面搬送路57、分岐爪20)を構成しているので、従来同タイプの画像形成装置と同様に装置の小型化を図れるとともにコストアップを抑えることができる。
【0044】
図1のインクジェット記録装置100では、図において右側が装置本体の前面(もしくは正面)であり、装置本体(もしくはマシン)サイズを最小限に抑えつつフロントオペレーション(装置本体前面からのすべてのジャム処理、メンテナンス部品交換、給紙カセット19の挿脱・用紙補給等)を行える構成を有している。また、図1のインクジェット記録装置100では、フロントオペレーションを達成しつつ、マシンサイズとともに部品点数を最小限に抑えるために、両図に示したように、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド17を主走査方向に走査しながらインクを略水平に吐出して画像を形成する搬送経路にて構成される。
このように、給紙カセット19の前面からのアクセスと共に、用紙Pの印字面側を下向きに排紙する裏面排紙(フェイスダウン)を実現している。
【0045】
図2を参照して、本実施形態で採用している本発明に特有の基本的な駆動構成例を説明する(請求項1)。図2は、搬送ベルト7と排紙ローラ対12とにより用紙Pが間欠送りで搬送されているときの搬送ベルト7と排紙ローラ対12との各駆動開始タイミングについて説明するタイミングチャートである。横軸には時間として例えば[t]を、縦軸には速度として例えば[mm/s]をそれぞれ取っており、速度プロファイルの一例となっている(以下、時間[t]、速度[mm/s]の単位を省略する。後述する各図に示す駆動構成例のタイミングチャートでも同じ)。
【0046】
図に示すタイミングチャートでは、搬送ベルト7と排紙ローラ対12との駆動源が別であるものの一例であり、搬送ベルト7を駆動する副走査モータ25がDCモータ、排紙ローラ対12を駆動する排紙モータ26がステッピングモータであるときの一例となっている。なお、上記のようにモータを特定したのは、本実施形態における図2に示す駆動構成例での搬送ベルト7と排紙ローラ対12との各駆動開始タイミングの違いを明確に表すためであり、駆動モータの種類においてはこれらに限るものではない(後述する各図に示す駆動構成例でも同じ)。
また、図2の斜線部分は、搬送ベルト7および排紙ローラ対12の各移動量(「送り量」でもある)を示すものとなっている。これは、各速度プロファイルの面積で表されるものである。
【0047】
図2に示す駆動構成例では、搬送ベルト7と排紙ローラ対12とにより用紙Pが間欠送りで搬送されているとき、搬送ベルト7が駆動を開始してから排紙ローラ対12が駆動を開始している。つまり、排紙ローラ対12の駆動開始タイミングを、搬送ベルト7の駆動開始タイミングよりも遅らせており、排紙ローラ対12と搬送ベルト7との各駆動開始タイミングの間にタイムラグTαを設けている。タイムラグTαを設けることにより、搬送ベルト7の搬送力が小さくとも用紙Pが排紙ローラ対12に挟持されて搬送された以降の各送りに対して、用紙Pの引っ張りを防ぐことができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙が引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
【0048】
排紙ローラ対12と搬送ベルト7との各駆動開始タイミングの間にタイムラグTαを設けないで、例えば搬送ベルト7の駆動開始時点(駆動開始タイミング)と排紙ローラ対12の駆動開始時点を同じにすると、図2の駆動構成例では排紙ローラ対12の駆動にステッピングモータを用いているため、排紙ローラ対12の駆動の立ち上がりが搬送ベルト7の駆動の立ち上がりよりも急であり、排紙ローラ対12が先に用紙Pを送ることになり、用紙Pを引っ張ってしまうことになることで、送り精度が悪化したり、用紙が引っ張られる張り音により騒音が発生したりする。
【0049】
タイムラグTαをどの程度に設定するかは、例えば、搬送ベルト7の搬送力と、2組の排紙ローラ対12の搬送力とがどの程度であるか等を把握し、適宜試験を行うことで効果を確認しながら、上記効果を奏するようにインクジェット記録装置100の機種ごとに設定される。
搬送ベルト7の帯電能力の低下によって搬送ベルト7の搬送力が減少していく点に着目して、例えば、環境条件や印刷枚数に応じてタイムラグTαを調整・制御するようなことも勿論可能である。
【0050】
図3を参照して、同図の駆動構成例について説明する(請求項2)。図3は、排紙ローラ対12の駆動開始時点と、搬送ベルト7の駆動開始時における加速域との関係について説明するタイミングチャートである。
同図に示すように、排紙ローラ対12の駆動開始時点が、搬送ベルト7の駆動開始時における加速域中であることが分かる。
排紙ローラ対12の駆動開始を、搬送ベルト7の加速域に設定することによって、シート種類としての紙種に関係なく用紙Pの引っ張りを防止することができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙Pが引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
詳細な説明は後述するが、例えば、排紙ローラ対12の駆動開始時点(あるいは駆動開始タイミング)を、搬送ベルト7の駆動開始時点よりも大きく遅らせると、厚紙など比較的剛性が高く(コシが強い)用紙Pは、搬送ベルト7のみが駆動している際にその用紙Pのコシなどの影響において、搬送ベルト7と排紙ローラ対12との間の共通搬送路56で用紙Pが撓まず、用紙Pは排紙ローラ対12を滑り、搬送ベルト7の送り量に対して排紙ローラ対12の送り量が大きくなってしまうことで、送り精度が悪化したり、用紙Pが引っ張られる張り音により騒音が発生したりする。
【0051】
図4を参照して、同図の駆動構成例について説明する(請求項3)。図4は、排紙ローラ対12の駆動開始時点(駆動開始タイミング)と、搬送ベルト7の駆動の加速域以降との関係について説明する図である。図4(a)は、排紙ローラ対12の駆動開始時点(駆動開始タイミング)と、搬送ベルト7の駆動の加速域以降との関係について説明するタイミングチャートである。図4(b)は、図4(a)の各番号における用紙Pの送られ方を説明する図である。なお、図4(b)の(1)〜(3)では、1組の排紙ローラ対12のみを示し、もう1組の排紙ローラ対12の図示を省略している。
具体的には、図4(b)の(1)は、搬送ベルト7が駆動を開始してから排紙ローラ対12が駆動を開始する前までの用紙Pの送られ方を説明する図であり、図4(b)の(2)は、排紙ローラ対12が駆動を開始してから搬送ベルト7が駆動を停止する前までの用紙Pの送られ方を説明する図であり、図4(b)の(3)は、搬送ベルト7が駆動を停止してから排紙ローラ対12が駆動を停止する直前までの用紙Pの送られ方を説明する図である。
【0052】
図4(a)に示すように、排紙ローラ対12の駆動開始時点(駆動開始タイミング)が、搬送ベルト7の駆動開始における加速領域以降であること、換言すれば排紙ローラ対12の駆動開始タイミングを、搬送ベルト7の駆動開始時における加速域よりも遅らせていることが分かる。
薄紙や普通紙などは、排紙ローラ対12の駆動開始時点(駆動開始タイミング)を搬送ベルト7の駆動の加速領域以降に設定しても、図4(b)のように用紙Pが撓む駆動方法にすることによって、用紙Pの引っ張りを防止することができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙Pが引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
【0053】
図4(b)の(1)の用紙送り状態では、搬送ベルト7のみが駆動していることから、用紙Pは排紙ローラ対12と搬送ベルト7との間の共通搬送路56にて撓むようなる。排紙ローラ対12が駆動し出しても搬送ベルト7との速度が同じであれば、図4(b)の(2)のように用紙Pが撓んだまま送られていく。図4(b)の(3)の用紙送り状態では、排紙ローラ対12のみが駆動していることから、用紙Pが撓んだ分だけ排紙ローラ対12が駆動するようになっている。用紙Pの撓み方は一例であり、搬送経路によっては図のように撓むとは限らない。
なお、コシ(剛性)の強い厚紙などでは薄紙や普通紙と違い、搬送経路によっては図4(b)の(1)のように用紙Pが撓まず、排紙ローラ対12を滑っていき、図4(a)のように搬送ベルト7と同じ送り量だけ排紙ローラ対12を駆動させると、用紙Pを引っ張ってしまうが、その対応について図5にて説明を行う。
【0054】
図5を参照して、同図の駆動構成例について説明する(請求項4)。図5は、コシの強い厚紙などを送る際の、搬送ベルト7と排紙ローラ対12との駆動方法(駆動時間)について説明するタイミングチャートである。
図5において、T1は、搬送ベルト7の駆動時間(または副走査モータ25のパルス数)、T2は排紙ローラ対12の駆動時間(または排紙モータ26のパルス数)を表している。同図から分かるように、排紙ローラ対12の駆動時間T2は搬送ベルト7の駆動時間T1よりも短く設定している。これは、コシ(剛性)の強い用紙(厚紙など)では、搬送経路によっては図4(b)の(1)のように用紙Pが撓まず、排紙ローラ対12を滑っていき、図4(a)のように搬送ベルト7と同じ送り量だけ排紙ローラ対12を駆動させると、用紙Pを引っ張ってしまう。そのため、排紙ローラ対12の駆動時間T2は、搬送ベルト7の駆動時間T1よりも短く設定することにより、コシの強い用紙Pでも排紙ローラ対12上での送り量を、搬送ベルト7上の送り量と同等にすることができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙Pが引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
なお、図5では、排紙ローラ対12の駆動開始タイミングは、搬送ベルト7の加速領域以降にあるが、加速領域でも加速度合い(傾き)によっては用紙Pが滑る可能性があるため、これに限るものではない(モータの種類等によって速度プロファイルは変わるため図5は一例として記載している)。また、排紙ローラ対12の駆動停止時点(駆動停止タイミング)は、搬送ベルト7の駆動停止時点よりも時間的に遅れているが、これに限るものではない。
【0055】
図6を参照して、同図の駆動構成例について説明する(請求項5)。図6は、共通搬送路56に用紙撓み部22を設けた画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置100全体を示す図である。
図6のインクジェット記録装置100は、図1のインクジェット記録装置100と比較して、同図に示すように、搬送ベルト7と排紙ローラ対12との間の搬送経路である共通搬送路56に、用紙Pの撓みを許容する、換言すれば用紙Pを逃がす領域である用紙撓み部22が設けられている点のみ相違する。
【0056】
用紙撓み部22を設けることによって、薄紙や普通紙、また厚紙などでも用紙Pの逃げる領域が図1の共通搬送路56よりも大きくなり、図5を参照して説明したように排紙ローラ対12の駆動時間(または排紙モータ26のパルス数)を調整しなくとも、用紙Pの引っ張りを防ぐことができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙Pが引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
【0057】
図7を参照して、同図の駆動構成例について説明する(請求項6)。図7は、排紙ローラ対12の駆動速度と搬送ベルト7の駆動速度との関係について説明する図である。
図7(a)は、搬送ベルト7の駆動速度V1と排紙ローラ対12の駆動速度V2とが共に等速である本実施形態の駆動構成例を説明する図、図7(b)は排紙ローラ対12の駆動速度V2が搬送ベルト7の駆動速度V1よりも速い比較例を説明する図である。また、図7(a)、図7(b)において、S1は、搬送ベルト7の送り量(もしくは移動量)、S2は、排紙ローラ対12の送り量(もしくは移動量)を示している。図7(a)、図7(b)では、図2等と同様に搬送ベルト7の駆動開始タイミングに対して排紙ローラ対12の駆動開始タイミングにタイムラグTαを設けている。
【0058】
図7(a)の本実施形態の駆動構成例では、排紙ローラ対12の駆動速度V2が搬送ベルト7の駆動速度V1と等しいため、送り量S1と送り量S2との間に殆ど差が生じず、速度差の影響による各送りに対しての用紙Pの引っ張りを防止することができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙Pが引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
しかしながら、図7(b)の比較例のように、排紙ローラ対12の駆動速度V2が搬送ベルト7の駆動速度V1よりも速いと、面積(用紙送り量)がS2>S1となってしまい、排紙ローラ対12が用紙Pを引っ張ってしまうことになり、これにより送り精度が悪化したり、また用紙Pが引っ張られる際に発する張り音による騒音が発生する。
【0059】
図8を参照して、同図の駆動構成例について説明する。図8は、排紙ローラ対12の駆動速度V2が搬送ベルト7の駆動速度V1よりも遅い場合の、用紙Pを引っ張らなくするための排紙ローラ対12の駆動調整方法の第1の例について説明する図である。
【0060】
図8に基づいて、排紙ローラ対12の駆動速度V2が搬送ベルト7の駆動速度V1よりも遅い場合の、排紙ローラ対12の駆動調整方法の第1の例について説明する。図2、図7等と同様に、搬送ベルト7の駆動開始タイミングに対して排紙ローラ対12の駆動開始タイミングにタイムラグTαを設けている。
図8から分かるように、搬送ベルト7の駆動速度V1よりも排紙ローラ対12の駆動速度V2が遅く、搬送ベルト7の駆動時間T1よりも排紙ローラ対12の駆動時間T2が長く、各々の送り量(もしくは移動量)が等しい(S1=S2)図となっている。これは、排紙ローラ対12の駆動速度V2が搬送ベルト7の駆動速度V1よりも遅くとも、排紙ローラ対12の駆動時間T2(または排紙モータ26のパルス数)を搬送ローラの駆動時間T1(または副走査モータ25のパルス数)よりも大きく(同等以上)し、用紙Pの移動量を同等にすることによって、用紙Pの引っ張りを防止することができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙Pが引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
【0061】
また、タイムラグTα、および駆動速度V1,V2、駆動時間T1,T2を調整することにより、搬送ベルト7の駆動が排紙ローラ対12の駆動よりも先に止まるが、図6に示したように、搬送ベルト7と排紙ローラ対12との間の共通搬送路56に用紙撓み部22を設けることによって用紙Pの逃げる領域を形成でき、各送りに対する用紙送り量にズレがなくなる。
【0062】
図9を参照して、同図の駆動構成例について説明する。図9は、排紙ローラ対12の駆動速度V1が搬送ベルト7の駆動速度V2よりも速い場合の、用紙Pを引っ張らなくするための排紙ローラ対12の駆動調整方法の第2の例について説明する図である。
【0063】
図9においては、搬送ベルト7の駆動速度V1よりも排紙ローラ対12の駆動速度V2が速く、搬送ベルト7の駆動時間T1よりも排紙ローラ対12の駆動時間T2が短く、各々の送り量(もしくは移動量)が等しい(S1=S2)ことを示している。これは、排紙ローラ対12の駆動速度V2が搬送ベルト7の駆動速度V1よりも速くとも、排紙ローラ対12の駆動時間T2(または排紙モータ26のパルス数)を搬送ベルト7の駆動時間T1(または副走査モータ25のパルス数)よりも小さくし、用紙Pの移動量を同等にすることによって、用紙Pの引っ張りを防止することができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙Pが引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
【0064】
また、タイムラグTα、および駆動速度V1,V2、駆動時間T1,T2を調整することにより、搬送ベルト7の駆動が排紙ローラ対12の駆動よりも先に止まるが、図6に示したように、搬送ベルト7と排紙ローラ対12との間の共通搬送路56に用紙撓み部22を設けることによって用紙Pの逃げる領域を形成でき、各送りに対する用紙送り量にズレがなくなる。
【0065】
図10を参照して、図5に示した駆動構成例の変形例に係る駆動構成例を説明する(請求項9)。図10の駆動構成例は、図5の駆動構成例と比較して、図10に示すように、搬送ベルト7と排紙ローラ対12とにより用紙Pが間欠送りで搬送されているときの排紙ローラ対12の駆動停止タイミングが、搬送ベルト7の駆動停止タイミングと同じ、換言すれば同期している点を明定した点のみ相違する。この相違点以外の図10の駆動構成例は、図5の駆動構成例と同様である。
【0066】
図10に示すように、本駆動構成例の排紙ローラ対12の駆動停止タイミングは、搬送ベルト7の駆動停止タイミングと同期していて、同じタイミングで停止している。排紙ローラ対12の駆動停止タイミングを搬送ベルト7の駆動停止タイミングと同期させることにより、用紙Pの引っ張りを防ぐことができ、これにより送り精度の悪化を防止することができるとともに、用紙Pが引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。詳細な説明は後述するが、排紙ローラ対12の駆動停止タイミングを搬送ベルト7の駆動停止タイミングより遅らせると、搬送ベルト7の駆動停止後に排紙ローラ対12が用紙を引っ張ることになり、狙いの送り量だけ用紙Pを送ることができず送り精度が悪化してしまう。
【0067】
図11を参照して、図5に示した駆動構成例のさらに別の変形例に係る駆動構成例を説明する(請求項10)。図11の駆動構成例は、図10の駆動構成例と比較して、図11に示すように、搬送ベルト7と排紙ローラ対12とにより用紙Pが間欠送りで搬送されているときの排紙ローラ対12の駆動停止タイミングが、搬送ベルト7の駆動中に設定されている点のみ相違する。この相違点以外の図11の駆動構成例は、図10の駆動構成例と同様である。
なお、図11の(A)と(B)は、排紙ローラ対12の駆動停止タイミングが異なる場合を示しており、(A)の場合と(B)の場合との2つのケースについて説明を行うためのものである。
【0068】
上述したとおり、図11の駆動構成例では、排紙ローラ対12の駆動停止タイミングが搬送ベルト7の駆動中(搬送ベルト7の駆動停止タイミングより早い)に設定されている。排紙ローラ対12の駆動停止タイミングを搬送ベルト7の駆動中に設定することにより、図11の駆動構成例と同様、排紙ローラ対12における用紙Pの引っ張りを防ぐことができ、これにより送り精度の悪化を防止することができるとともに、用紙Pが引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
詳細は後述する図12に示すが、図11の(B)のように排紙ローラ対12の駆動停止タイミングを早くしすぎても(排紙ローラ対12の駆動時間をT2’を搬送ベルト7の駆動時間T1と比べて短くしすぎても)送り精度は悪化してしまう。これは、排紙ローラ対12が排紙ローラ対12のみで用紙Pを排出するとともにスイッチバックできる搬送力をもっているために、駆動停止後の排紙ローラ対12が負荷になってしまい、排紙ローラ対12上で上手く用紙Pを送れずに送り精度が悪化したりするからである。
【0069】
図12を参照して、排紙ローラ対12の駆動停止タイミングが搬送ベルト7の駆動停止タイミングよりも早い場合について説明する。図12は、横軸に排紙搬送力を、縦軸に送り速度をそれぞれ取って、排紙ローラ対12の駆動停止タイミングが搬送ベルト7の駆動停止タイミングよりも早過ぎる場合に対して説明する図である。なお、図12中の実線で示す(A)と破線で示す(B)は、図11中の(A)と(B)の場合の排紙搬送力と送り精度との関係を示している。
【0070】
図12の(B)は、排紙ローラ対12の駆動停止タイミングを早くしすぎた場合の排紙ローラ対12の排紙搬送力と送り精度との関係を表しており、排紙ローラ対12の排紙搬送力が高ければ高いほど、負荷が高くなってしまい、排紙ローラ対12上で上手く用紙Pを送れずに送り目標値に対して精度が悪化したり、また用紙Pが送れずにジャムを起こしたりする場合もある。
また、図12の(A)は、図11の(A)で示したように、排紙ローラ対12の駆動停止タイミングを搬送ベルト7の駆動停止タイミングよりも最適な位置で停止しているため、排紙搬送力を高くしても送り精度が悪化しにくくなっている。これは、送り精度が悪化しない送り精度として排紙ローラ対12の排紙搬送力の設定範囲を広くとることができることで、外乱などを考慮しても送り精度に影響を及ぼさない構成がつくり易くなっていることを表している。
【0071】
図13を参照して、排紙ローラ対12の駆動停止タイミングが搬送ベルト7の駆動停止タイミングよりも遅い場合の駆動構成例について説明する。図13の駆動構成例は、排紙ローラ対12の駆動停止タイミングが搬送ベルト7の駆動停止タイミングよりも遅く、かつ、排紙ローラ対12の駆動時間T2が搬送ベルト7の駆動時間T1よりも短い場合を示している。この駆動構成例では、排紙ローラ対12の駆動時間T2が搬送ベルト7の駆動時間T1よりも短くても、搬送ベルト7の駆動停止後に排紙ローラ対12が用紙Pを引っ張ってしまうため、狙いの送り量だけ用紙Pを送ることができず送り精度が悪化してしまう。
【0072】
図10および図11に示した駆動構成例、すなわち第1に、搬送ベルト7と排紙ローラ対12とにより用紙Pが間欠送りで搬送されているとき、シート種類に関らず、排紙ローラ対12の駆動時間T2を搬送ベルト7の駆動時間T1よりも短く設定した点、第2に、搬送ベルト7と排紙ローラ対12とにより用紙Pが間欠送りで搬送されているときの、排紙ローラ対12の駆動停止タイミングを搬送ベルト7の駆動停止タイミングと同じに設定した点、第3に、搬送ベルト7と排紙ローラ対12とにより用紙Pが間欠送りで搬送されているときの、排紙ローラ対12の駆動停止タイミングを搬送ベルト7の駆動中に設定した点は、図2に示した駆動構成例に適用することに限らず、図3〜図9に適宜示した駆動構成例、より具体的には図3、図5、図7に示した駆動構成例や図6に示した用紙撓み部22を有するインクジェット記録装置100にも適用可能であることは無論である。
【0073】
図6に示した用紙撓み部22を有するインクジェット記録装置100に適用した場合では、図6を参照して説明したと一部同様の効果に加えて、すなわち、用紙撓み部25を設けることによって、薄紙や普通紙、また厚紙などでも用紙Pの逃げる領域が図1の共通搬送路56よりも大きくなり、排紙ローラ対12の駆動開始タイミングが搬送ベルト7の駆動開始タイミングより遅くとも、また排紙ローラ対12の駆動停止タイミングが搬送ベルト7の駆動中であっても、用紙Pの引っ張りを防ぐことができ、これにより送り精度の悪化を防止することができるとともに、用紙Pが引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
【0074】
以下、図14〜図17を参照して、上記図2〜図13に適宜示した駆動構成例や駆動方法が適用可能な本発明の実施形態を示す画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置について説明する。各実施形態のインクジェット記録装置において、同一の機能および多少の形状の相違はあっても均等な形状等を有する構成要素(部材や構成部品、搬送路等)については、混同の虞がない限り同一符号を付すことによりその説明を省略する。また、図の簡明化のため、1組の排紙ローラ対12のみを図示するとともに、反転路21、給紙部52等の図示を省略する。
【0075】
(第2の実施形態)
図14を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図14は、本発明の第2の実施形態を示す画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置100Aの簡略的な全体構成図である。
第2の実施形態のインクジェット記録装置100Aは、図1に示した第1の実施形態のインクジェット記録装置100と比較して、ほぼ鉛直上方向に用紙を搬送すべく搬送ベルト7、送りローラ対3、排紙ローラ対12等が配置されていた構成に代えて、ほぼ水平方向に用紙を搬送すべく搬送ベルト7、送りローラ対3、排紙ローラ対12等を配置構成した点、および記録ヘッド17からの用紙へのインクの吐出方向がほぼ水平方向となる構成に代えて、インクの吐出方向が鉛直下方向(重力方向)に変更した点が主に相違する。
なお、第2の実施形態の排紙ローラ対12は、第1の実施形態の2組の排紙ローラ対12と同様に、排出手段とスイッチバック手段との両機能を併せ持っている。
【0076】
図14のインクジェット記録装置100Aでは、片面印刷時には、用紙(シート)の給送方向である矢印A方向に用紙が送られてきて、搬送ベルト7、送りローラ対3を経由して搬送され、排紙ローラ対12が正転駆動されることによって用紙が排紙トレイ13に排出される。
両面印刷時には、図1のインクジェット記録装置100の動作と同様に、排紙ローラ対12の逆転動作および分岐爪20による両面搬送路57への切り換え動作によって、片面印刷済みの用紙(図示せず)がスイッチバックされて両面搬送路57を搬送され、搬送ベルト7の反対向面7bへの吸着搬送を経て、矢印Bの両面送り方向に送られ、図示しない反転路を経由して再給送に供される。
従って、図14のインクジェット記録装置100Aでも、図2〜図13までに適宜記載の搬送ベルト7と排紙ローラ対12の駆動構成例によって、用紙の引っ張りを防止することができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙が引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
【0077】
(第3の実施形態)
図15を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。図15は、本発明の第3の実施形態を示す画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置100Bの簡略的な全体構成図である。
第3の実施形態のインクジェット記録装置100Bは、図1に示した第1の実施形態のインクジェット記録装置100と比較して、ほぼ鉛直上方向に用紙を搬送すべく搬送ベルト7、送りローラ対3、排紙ローラ対12等が配置されていた構成に代えて、ほぼ水平方向に用紙を搬送すべく搬送ベルト7、送りローラ対3を配置構成した点、および記録ヘッド17からの用紙へのインクの吐出方向がほぼ水平方向となる構成に代えて、インクの吐出方向が鉛直下方向(重力方向)に変更した点が主に相違する。
なお、第3の実施形態の排紙ローラ対12は、第1の実施形態の2組の排紙ローラ対12と同様に、排出手段とスイッチバック手段との両機能を併せ持っている。
【0078】
図15のインクジェット記録装置100Bでは、片面印刷時には、用紙(シート)の給送方向である矢印A方向に用紙が送られてきて、搬送ベルト7、送りローラ対3を経由して搬送され、排紙ローラ対12が正転駆動されることによって用紙が排紙トレイ13に排出される。
両面印刷時には、図1のインクジェット記録装置100の動作と同様に、排紙ローラ対12の逆転動作および分岐爪20による両面搬送路57への切り換え動作によって、片面印刷済みの用紙(図示せず)がスイッチバックされて、両面搬送ローラ対27,28,29によって両面搬送路57を搬送され、矢印Bの両面送り方向に送られ、図示しない反転路を経由して再給送に供される。
従って、図15のインクジェット記録装置100Bでも、図2〜図13までに適宜記載の搬送ベルト7と排紙ローラ対12の駆動構成例によって、用紙の引っ張りを防止することができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙が引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
【0079】
(第4の実施形態)
図16を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。図16は、本発明の第4の実施形態を示す画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置100Cの簡略的な全体構成図である。
第4の実施形態のインクジェット記録装置100Cは、図14に示した第2の実施形態のインクジェット記録装置100Aと比較して、搬送ベルト7に代えて、シート搬送方向Xaの上流側に設けられ、用紙(図示せず)を間欠的にシート搬送方向Xaに搬送する第1の回転部材としての搬送ローラ対30と、この搬送ローラ対30のシート搬送方向Xaの下流側に設けられ、搬送ローラ対30により搬送されてくる用紙(図示せず)を受け取り、シート搬送方向Xaの下流側へ用紙(図示せず)を搬送する第2の回転部材としての送りローラ対32とを用いる点、および搬送ローラ対30と送りローラ対32との間に設けられ、用紙(図示せず)を支持する支持部材31を新規に用いる点が主に相違する。この相違点以外の第4の実施形態の構成は、第2の実施形態と同様である。
なお、第4の実施形態の排紙ローラ対12は、第1の実施形態の2組の排紙ローラ対12と同様に、排出手段とスイッチバック手段との両機能を併せ持っている。
【0080】
搬送ローラ対30は、同様の搬送ローラが圧接して用紙を挟持搬送するニップ部を形成する周知の構成である。送りローラ対32は、送りコロ9と拍車ローラ11とが当接して構成されている。搬送ローラ対30と送りローラ対32とは、タイミングベルトおよび歯付きプーリからなる駆動力伝達手段を介して回転可能な駆動連結関係にある。搬送ローラ対30の下側の駆動ローラには、タイミングベルトおよび歯付きプーリからなる駆動力伝達手段を介して搬送モータ24に連結されており、搬送モータ24によって回転駆動される。
支持部材31は、図16の紙面に直交する紙面手前側および奥側に複数並んでおり、支持部材31上でインクが吐出されて生じる用紙の波うち(コックリング)を逃がす領域なども有している。
【0081】
インクジェット記録装置100Cの動作を簡単に説明する。片面印刷時には、図示しない給紙部の給送方向である矢印A方向からシート搬送方向Xaに用紙(図示せず)が送られてきて、搬送ローラ対30と送りローラ対32との間に主走査方向に往復移動可能に構成されたキャリッジ5の記録ヘッド17にて支持部材31上の用紙に印字を行う。印字後の用紙(図示せず)は送りローラ対32より送られ、排紙ローラ対12が正転駆動されることによって用紙が排紙トレイ13に排出される。
両面印刷時には、図14のインクジェット記録装置100Aの動作とほぼ同様に、排紙ローラ対12の逆転動作および分岐爪20による両面搬送路57への切り換え動作によって、片面印刷済みの用紙(図示せず)がスイッチバックされて、両面搬送ローラ対27,28によって両面搬送路57を搬送され、矢印Bの両面送り方向に送られ、図示しない反転路を経由して再給送に供される。
【0082】
図2〜図13までに適宜記載の駆動構成例では、搬送ベルト7と排紙ローラ対12の駆動に関して説明してきたが、図16インクジェット記録装置100Cでは送りローラ対32と排紙ローラ対12の駆動の関係によって用紙が引っ張られるため、図2〜図13までに適宜記載の搬送ベルト7を図16の送りローラ対32に置き換え、読み替えることによって、用紙の引っ張りを防止することができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙が引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
【0083】
(第5の実施形態)
図17を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。図17は、本発明の第5の実施形態を示す画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置100Dの簡略的な全体構成図である。
第5の実施形態のインクジェット記録装置100Dは、図14に示した第2の実施形態のインクジェット記録装置100Aと比較して、排出手段とスイッチバック手段との両機能を併せ持っている排紙ローラ対12に代えて、排出手段だけの機能を持つ排紙ローラ対12Aと、スイッチバック手段だけの機能を持つスイッチバックローラ対12Bとに機能分離して用いる点、共通搬送路56から分岐した排紙搬送路54およびスイッチバック搬送路58を用いる点、共通搬送路56の分岐部およびスイッチバック搬送路58と排紙搬送路54の分岐部に、それぞれ分岐爪20を配置した点が主に相違する。この相違点以外の第5の実施形態の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0084】
排紙ローラ対12Aの下側の駆動ローラは、ギヤ列からなる駆動力伝達手段を介して排紙モータ26Aに連結されており、排紙モータ26Aによって例えば正転方向の一方向のみに回転駆動される。排紙ローラ対12Aは、排紙搬送路54の下流に配置されていて、片面印刷済みの用紙を排紙トレイ13に排出すべく排紙モータ26Aによって例えば正転方向の一方向のみに回転駆動される。
本実施形態の排紙ローラ対12Aの搬送力は、搬送ベルト7と排紙ローラ対12Aとにより片面印刷済みの用紙を搬送しているときに、用紙を引っ張らないように第1〜第4の実施形態の排紙ローラ対12の搬送力よりも小さく設定される。
【0085】
スイッチバックローラ対12Bの下側の駆動ローラは、ギヤ列からなる駆動力伝達手段を介してスイッチバックモータ26Bに連結されており、スイッチバックモータ26Bによって正逆転方向の両方向に回転駆動される。スイッチバックローラ対12Bは、スイッチバック搬送路58の下流側に配置されていて、片面印刷済みの用紙をスイッチバックすべくスイッチバックモータ26Bによって正逆転方向の両方向に回転駆動される。
なお、排紙モータ26Aおよびスイッチバックモータ26Bを正逆転可能な単一のモータに置き換えるとともに、電磁クラッチを設けて排紙ローラ対12Aとスイッチバックローラ対12Bとを選択的に駆動するようにしてもよい。
【0086】
インクジェット記録装置100Dの動作を簡単に説明する。片面印刷時には、図示しない給紙部の給送方向である矢印A方向からシート搬送方向Xaに用紙(図示せず)が送られてきて、図1のインクジェット記録装置100の動作と同様に、搬送ベルト7、送りローラ対3を経由して搬送され、分岐爪20により切り換えられた排紙搬送路54を搬送され、排紙ローラ対12Aが正転駆動されることによって用紙が排紙トレイ13に排出される。
【0087】
両面印刷時には、図1のインクジェット記録装置100の動作と同様に、搬送ベルト7、送りローラ対3を経由して共通搬送路56に搬送されてきた片面印刷済みの用紙は、分岐爪20により切り換えられたスイッチバック搬送路58に搬送され、スイッチバックローラ対12Bの正転動作後の逆転動作によるスイッチバック動作、ならびに分岐爪20による両面搬送路57への切り換え動作によって、片面印刷済みの用紙(図示せず)がスイッチバックされて両面搬送路57を搬送され、搬送ベルト7の反対向面7bへの吸着搬送を経て、矢印Bの両面送り方向に送られ、図示しない反転路を経由して再給送に供される。
上述したとおり、片面印刷済みの用紙は、記録ヘッド17による印字・画像形成中にスイッチバック手段としてのスイッチバックローラ対12Bによってシート搬送方向の下流側に搬送された(請求項8)後であって、片面印刷済みの用紙の後端がスイッチバック搬送路58の下流側の分岐爪20を抜け出た後(この近傍に用紙の後端を検知する図示しないセンサが配置される)で、スイッチバックローラ対12Bでスイッチバックされる。
【0088】
図2〜図13までの適宜の駆動構成例では、搬送ベルト7と排紙ローラ対12の駆動に関して説明してきたが、図17のインクジェット記録装置100Dでは搬送ベルト7とスイッチバックローラ対12Bの駆動の関係によって、搬送ベルト7とスイッチバックローラ対12Bとにより片面印刷済みの用紙を搬送しているときに、用紙が引っ張られるため、図2〜図13までに適宜記載の排紙ローラ対12を図17のスイッチバックローラ対12Bに置き換え、読み替えることによって、用紙の引っ張りを防止することができ、これにより送り精度の悪化を防止するとともに、用紙が引っ張られる際に発する張り音による騒音の発生を未然に防止できる。
【0089】
以上述べたように、第1〜第5の実施形態においては、画像形成手段としての記録ヘッド17を通過した用紙を搬送ベルト7または送りローラ対32よりもシート搬送方向Xaの下流側に搬送し、スイッチバックするスイッチバック手段としての排紙ローラ対12またはスイッチバックローラ対12Bを有し、搬送ベルト7または送りローラ対32とスイッチバック手段(排紙ローラ対12またはスイッチバックローラ対12B)とにより用紙を搬送しているときのスイッチバック手段(排紙ローラ対12またはスイッチバックローラ対12B)の駆動開始タイミングを、搬送ベルト7または送りローラ対32の駆動開始タイミングよりも遅らせる駆動構成・駆動方法であった(請求項1)。
また、第5の実施形態に限らず、第5の実施形態の搬送ベルト7に代えて、第4の実施形態の搬送ローラ対30、送りローラ対32を適用して第5の実施形態とは別の実施形態を構成することもできる。
【0090】
以上述べたとおり、本発明を特定の実施形態や駆動構成例・駆動方法等について説明したが、本発明が開示する技術は、上述した実施例を含む実施形態や駆動構成例等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【0091】
本発明に係る画像形成装置は、上記したインクジェット方式のインクジェット記録装置100に限らず、例えば、プリンタ、プロッタ、ワープロ、ファクシミリ、複写機等またはこれら2つ以上の機能を備えた複合機等においてインクジェット記録装置を含む画像形成装置にも適用可能である。
また、シートとしては、用紙Pに限らず、上記したように使用可能な薄紙から厚紙、はがき、封筒、あるいはOHPシート等まで、インクジェット方式で画像形成可能な全てのシートを含むものである。
【符号の説明】
【0092】
5 キャリッジ
6 搬送ローラ(駆動・回転部材)
7 搬送ベルト
8 テンションローラ(従動・回転部材)
10 排紙ローラ(排出手段、スイッチバック手段)
11 拍車ローラ(排出手段、スイッチバック手段)
12 排紙ローラ対(排出手段、スイッチバック手段)
12A 排紙ローラ対(排出手段)
12B スイッチバックローラ対(スイッチバック手段)
13 排紙トレイ(積載手段)
14 両面搬送ローラ
15 両面加圧コロ
16 帯電ローラ
17 記録ヘッド(画像形成手段)
18 分離爪
19 給紙カセット(シート収容手段)
20 分岐爪(搬送経路切換手段)
21 反転路(反転経路、迂回経路)
22 用紙撓み部(シート撓み部)
24 搬送モータ(駆動源)
25 副走査モータ(駆動源)
26 排紙モータ(駆動源)
26A 排紙モータ(駆動源)
26B スイッチバックモータ(駆動源)
27,28,29 両面搬送ローラ
30 搬送ローラ対(第1の回転部材)
31 支持部材
32 送りローラ対(第2の回転部材)
50 画像形成部
51 搬送部
52 給紙部
53 排紙反転部
54 排紙搬送路
55 給紙搬送路
56 共通搬送路
57 再給紙路、両面搬送路(反転経路、再給送経路)
58 スイッチバック搬送路
100,100A,100B,100C,100D インクジェット記録装置(画像形成装置)
P 用紙(シート、被記録媒体)
S1,S2 送り量・移動量
V1,V2 駆動速度
T1,T2 駆動時間
Xa 副走査方向、シート搬送方向
Xb シート排出方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】特開2001−063019号公報
【特許文献2】特開2009−119745号公報
【特許文献3】特開2005−148365号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの回転部材間に掛け回されて周回移動され、シートをシート搬送方向に間欠的に搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトと対向して配置され、前記搬送ベルトにより搬送されてくるシートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段を通過したシートを前記搬送ベルトよりも前記シート搬送方向の下流側に搬送し、スイッチバックするスイッチバック手段と、
を有し、
前記搬送ベルトと前記スイッチバック手段とによりシートを搬送しているときの前記スイッチバック手段の駆動開始タイミングを、前記搬送ベルトの駆動開始タイミングよりも遅らせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記スイッチバック手段の駆動開始を、前記搬送ベルトの駆動開始時における加速域中に行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記スイッチバック手段の駆動開始タイミングを、前記搬送ベルトの駆動開始における加速域よりも遅らせることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記スイッチバック手段の駆動時間は、前記搬送ベルトの駆動時間よりも短いことを特徴とする請求項1ないし3の何れか一つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送ベルトと前記スイッチバック手段との間の搬送経路に、シートの撓みを許容するシート撓み部を有することを特徴とする請求項1ないし4の何れか一つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送ベルトと前記スイッチバック手段との各駆動速度は、等速であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
シート搬送方向の上流側に設けられ、シートを間欠的にシート搬送方向に搬送する第1の回転部材と、
第1の回転部材の前記シート搬送方向の下流側に設けられ、第1の回転部材により搬送されてくるシートを受け取り、前記シート搬送方向の下流側へシートを搬送する第2の回転部材と、
第1の回転部材と第2の回転部材との間に設けられ、シートを支持する支持部材と、
前記支持部材と対向して配置され、搬送されてくるシートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段を通過したシートを第2の回転部材よりも前記シート搬送方向の下流側に搬送し、スイッチバックするスイッチバック手段と、
を有し、
第2の回転部材と前記スイッチバック手段とによりシートを搬送しているときの前記スイッチバック手段の駆動開始タイミングを、第2の回転部材の駆動開始タイミングよりも遅らせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
シートは、前記画像形成手段による画像形成中に前記スイッチバック手段によって搬送されることを特徴とする請求項1ないし7の何れか一つに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記搬送ベルトと前記スイッチバック手段とによりシートを搬送しているときの、または第2の回転部材と前記スイッチバック手段とによりシートを搬送しているときの前記スイッチバック手段の駆動停止タイミングは、前記搬送ベルトの駆動停止タイミングまたは第2の回転部材の駆動停止タイミングと同じであることを特徴とする請求項1ないし8の何れか一つに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記搬送ベルトと前記スイッチバック手段とによりシートを搬送しているときの、または第2の回転部材と前記スイッチバック手段とによりシートを搬送しているときの前記スイッチバック手段の駆動停止タイミングは、前記搬送ベルトの駆動中または第2の回転部材の駆動中であることを特徴とする請求項1ないし8の何れか一つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−60299(P2013−60299A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222795(P2011−222795)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】