画像形成装置
【課題】定着装置に生じる副走査方向の温度段差による画像品質の低下を防止することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、用紙Sと接触して用紙S上の未定着画像を定着する定着部30と、冷却能力が可変であり、当該定着部30の表面を冷却する冷却部31と、冷却部31の冷却能力を制御する制御部90と、を有し、制御部90は、用紙Sの接触により定着部30上において発生した温度段差の高温側から境界部分に向かって冷却部31により定着部30を冷却し、当該温度段差が小さくなるように、境界部分に近づく程冷却部31の冷却能力を高める。
【解決手段】画像形成装置は、用紙Sと接触して用紙S上の未定着画像を定着する定着部30と、冷却能力が可変であり、当該定着部30の表面を冷却する冷却部31と、冷却部31の冷却能力を制御する制御部90と、を有し、制御部90は、用紙Sの接触により定着部30上において発生した温度段差の高温側から境界部分に向かって冷却部31により定着部30を冷却し、当該温度段差が小さくなるように、境界部分に近づく程冷却部31の冷却能力を高める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、定着装置が設けられている。定着装置は給紙トレイから搬送され、画像形成部で形成されたトナー像が転写された用紙に熱と圧力を付加することによって定着させている。
【0003】
定着装置は一般的に熱を付加する加熱ローラーや圧力を付与する加圧ローラーから構成されている。加熱ローラーは内部にヒーターなどの加熱手段が設けられており、当該ヒーターにより加熱ローラーが所定の温度に加熱される。ヒーターの熱量は、加熱ローラーおよび加圧ローラー間で用紙を挟持する挟持部(ニップ部)において、加熱ローラーを介して用紙に伝達される。
【0004】
用紙へ熱が伝達されると、加熱ローラー上で用紙と接触した部分の温度は低下する。該当部分の温度は、加熱ローラーが1周回転して、ニップ部の位置に戻るまでの間に、ヒーターにより再度加熱され、上昇される。
【0005】
しかし、再度加熱されても、加熱ローラーの該当部分に注目すると、加熱ローラーが用紙を通紙する直前と、通紙してから一周してニップ直前の位置に到達した時とで、異なった温度になる。つまり、加熱ローラー上で用紙との接触部分および非接触部分の境界部分には温度段差が生じることになる。この温度段差は定着工程において用紙上のトナー像に光沢度差を生じさせ、当該光沢度差はトナー像に濃淡の差を生じさせてしまい、画像品質を低下させる要因となる。
【0006】
これに対し、下記特許文献1では加熱コイルを有する定着装置において、用紙との接触部分および非接触部分を検出して、これらの境界部分で加熱コイルに供給する電力を変えることにより加熱ローラー上の温度の均一化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−26493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1における技術では、加熱ローラー上の用紙との接触部分および非接触部分の境界部分を検出して加熱ローラーに対する加熱電力を変更しても、各構成要素のバラつきによって加熱電力の変更が上記境界部分とずれる場合がある。その場合には急激な温度段差を解消できていない部分が残り、光沢度差が生じて画像品質が低下してしまう、という問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、定着装置に生じる副走査方向の温度段差による画像品質の低下を防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、以下の手段により達成される。
【0011】
(1)用紙と接触して前記用紙上の未定着画像を定着する定着部と、冷却能力が可変であり、当該定着部の表面を冷却する冷却部と、前記冷却部の冷却能力を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記用紙の接触により前記定着部上において発生した温度段差の高温側から境界部分に向かって前記冷却部により前記定着部を冷却し、当該温度段差が小さくなるように、前記境界部分に近づく程前記冷却部の冷却能力を高める画像形成装置。
【0012】
(2)前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を線形的に変化させることを特徴とする前記(1)に記載の画像形成装置。
【0013】
(3)前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を非線形的に変化させることを特徴とする前記(1)に記載の画像形成装置。
【0014】
(4)前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を段階的に変化させることを特徴とする前記(1)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る画像形成装置によれば、用紙の接触により定着部上に生じた温度段差が小さくなるように、境界部分に近づく程冷却部の冷却能力を高める。したがって、境界部分での温度段差が小さくなり、温度段差の影響により用紙上に現れる光沢度差も視覚的には認識できない程度のものとし、バラつきがあっても光沢度差が急激に変化することがなくなる。結果として画像品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像形成装置の概略説明図である。
【図2】図1において本発明に係る定着部部分の拡大図である。
【図3】本発明に係る定着工程に使用される構成についてのブロック図である。
【図4】加熱ローラー上の任意の一点の温度推移を示す図である。
【図5】加熱ローラーが用紙を挟持する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【図6】制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフである。
【図7】加熱ローラーが用紙を挟持する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【図8】制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフである。
【図9】加熱ローラーが用紙を挟持する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【図10】制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフである。
【図11】加熱ローラーが用紙を挟持する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【図12】制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフである。
【図13】加熱ローラーが用紙を挟持する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。
【0018】
図1において、画像形成装置Aはタンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部によりカラー画像形成を行う。
【0019】
原稿台上に載置された原稿は画像読取装置SCの走査露光の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサーに読み込まれる。光電変換された画像情報信号は、画像情報処理部(非図示)において、アナログ信号、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、画像形成部の光書込部に入力される。
【0020】
4組の画像形成部はイエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Y、マゼンダ(M)色の画像を形成する画像形成部10M,シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10C、黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kであり、それぞれ共通する符号10の後に形成する色を表す符号Y、M、C、Kを付して表記する。
【0021】
画像形成部10Yは、感光体ドラム1Yおよびその周囲に配置された帯電部2Y、光書込部3Y、現像装置4Yおよびドラムクリーナー5Yを有している。
【0022】
同様に画像形成部10Mは、感光体ドラム1Mの周囲に配置された帯電部2M、光書込部3M、現像装置4Mおよびドラムクリーナー5Mを、画像形成部10Cは感光体ドラム1Cの周囲に配置された帯電部2C、光書込部3C、現像装置4Cおよびドラムクリーナー5Cを、画像形成部10Kは、感光体ドラム1Kの周囲に配置された帯電部2K、光書込部3K、現像装置4K、およびドラムクリーナー5Kを有している。
【0023】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおけるそれぞれの感光体ドラム1Y、1M、1C、1K、帯電部2Y、2M、2C、2K、光書込部3Y、3M、3C、3K、現像装置4Y、4M、4C、4Kおよびドラムクリーナー5Y、5M、5C、5Kはそれぞれ共通する内容の構成である。以下、特に区別が必要な場合を除き符号Y、M、C、Kを付さずに表記することにする。
【0024】
画像形成部10は、光書込部3にて画像情報信号を感光体ドラム1に書込み、感光体ドラム1に画像情報信号に基づく静電潜像を形成する。静電潜像は現像装置4によりトナーを付着させることで現像され、感光体ドラム1上に可視画像であるトナー像が形成される。
【0025】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおけるそれぞれの感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kにはそれぞれ、イエロー(Y)色、マゼンダ(M)色、シアン(C)色、黒(K)色の画像が形成される。
【0026】
中間転写ベルト6は、複数のローラーにより巻回され、走行可能に支持されている。
【0027】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色のトナー像は、走行する中間転写ベルト6上に1次転写部7Y、7M、7C、7Kにより逐次転写されてY(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(黒)の各色層が重畳したカラー画像が形成される。
【0028】
用紙搬送部20は給紙トレイ21、22、23および給紙部24からなる。用紙Sは給紙トレイ21、22、23に収容されており、これら各給紙トレイ21〜23のいずれかから用紙Sが選択され、給紙ローラー241等を有する給紙部24により中間転写ベルト6等が存在する下流へと搬送される。
【0029】
用紙Sは、ループ形成ローラー51およびレジストローラー52を経て2次転写部7Aに搬送され、用紙S上に中間転写ベルト6上のカラー画像が転写される。用紙Sは定着部30にて熱と圧力とを加えることによりトナー像が定着され、定着搬送ローラー25および排紙ローラー26を経て装置外の排紙トレイ61に排紙される。
【0030】
画像形成装置Aは用紙反転部27を備えており、定着工程を終えた用紙Sを定着搬送ローラー25から用紙反転部27に導いて表裏を反転し排紙、あるいは用紙の両面に画像形成を行うことを可能としている。
【0031】
画像形成装置Aの本体上部に設置された操作表示部40では、画像形成を行うに際し、複数の用紙の中から使用する用紙Sの種類、枚数等を設定できる。なお、用紙サイズについては画像読取装置SCにて原稿を読み取った際に検出するようにしてもよい。
【0032】
次に本実施形態に係る定着部30および定着部30を冷却する冷却部31について詳細に説明する。図2は用紙上の未定着画像を定着する定着部30の拡大図、図3は定着工程に関する構成のブロック図である。
【0033】
定着部30は、図2に示すように、用紙Sと接触して(ニップして)用紙S上の未定着のトナー像を定着する。定着部30は、加熱ローラー301、ヒーター302、加圧ローラー303と、を含む。
【0034】
加熱ローラー301は、フッ素樹脂または弾性体からなる被覆層304と、被覆層304の内面に形成された芯金305とを含み、回転可能に支持されている。加熱ローラー301の内部には、ヒーター302が配置されている。
【0035】
ヒーター302は、加熱ローラー301を内部から加熱して、加熱ローラー301が2次転写部7Aから搬送された用紙上のトナーを溶融定着できるようにする。
【0036】
加圧ローラー303は、弾性体からなる被覆層306と、被覆層306の内面に形成された芯金307とを含む。加圧ローラー303は、図示しないモータ等の駆動部に接続され、駆動部の駆動により所定の速度で回転する。加圧ローラー303は、たとえば、図2の反時計方向に回転する。加圧ローラー303は、加熱ローラー301との間でニップ部を形成するので、加熱ローラー301も加圧ローラー303の回転に従動して回転する。用紙Sは、ニップ部において、加熱ローラー301および加圧ローラー303に挟まれつつ、搬送される。
【0037】
冷却部31は、冷却能力が可変であり、定着部30の表面を冷却する。冷却部31は、ノズル311とコンプレッサー312とを含む。冷却部31は、コンプレッサー312からの圧縮空気をノズル311によって温度を調節して加熱ローラー301に吹き付けることで加熱ローラー301を冷却する。
【0038】
なお、図2では、加熱ローラー301上において、用紙Sの通紙方向の先端と接触した部分を、先端接触位置Aとして示している。先端接触位置Aは、通紙の度に変わりうる。
【0039】
制御部90は、加熱ローラー301、ヒーター302、加圧ローラー303、ノズル311およびコンプレッサー312に接続され、これらを制御する。また、制御部90は、操作表示部40で指示された用紙Sの種類やサイズの情報を取得する。
【0040】
制御部90には不揮発メモリ等で構成された記憶部91が接続されている。記憶部91には、加熱ローラー301の初期温度(T1)、ヒーター302による熱量等、制御部90による冷却部31の制御に必要な情報が記憶されている。詳細については後述する。
【0041】
制御部90による冷却部31の冷却能力の制御について説明する前に、冷却部がない場合の加熱ローラー301上の温度推移について、図4および図5を参照して、説明する。
【0042】
図4は加熱ローラー上の任意の一点の温度推移を示す図、図5は加熱ローラーが用紙を挟持(ニップ)する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。図4の温度推移は、たとえば、図2の加熱ローラー301上の先端接触位置Aの温度推移である。
【0043】
図4に示すように、最初は、加熱ローラー301は、ヒーター302により、用紙Sにトナーを溶融定着できる程度の温度T1に昇温されている。印刷指示が与えられると、定着部30にはトナー像が転写された用紙Sが搬送される。
【0044】
加熱ローラー301に用紙Sが接触することで、加熱ローラー301の熱は用紙Sに奪われ、加熱ローラー301の表面温度は、図4に示すようにT1からT4に低下する。通紙領域を通過すると、加熱ローラー301は、ヒーター302により徐々に加熱され、加熱ローラー上の温度はT4からT2にまで回復する。
【0045】
図4に示すように、通紙による温度低下とヒーター302による温度上昇は制御されておらず異なるため、T1とT2は異なった温度になる。そして、再び用紙Sに熱が奪われることで加熱ローラー301の表面温度はT2からT5に低下し、ヒーター302に加熱されてニップ直前に至るまでに表面温度はT3にまで回復する。この繰り返しで、加熱ローラー301上のある点では、用紙Sと接触するたびに、温度が次第に下がっていく。
【0046】
図5を参照すると、加熱ローラー301のニップ部直前の温度推移を見ているので、最初は加熱ローラー301がまだ用紙と接触しておらず、初期温度T1が続く。そして、加熱ローラー301が一回転して、通紙により熱が奪われた部分がニップ部直前に戻ってくると、急に温度T2に下がる。これは、加熱ローラー301上に、用紙に接触して冷却された低温部分と、用紙に接触していない高温部分とがあるからである。このように、加熱ローラー301が1回転する間に、用紙Sと接触した接触部分と接触しなかった非接触部分とでは、先端接触位置Aを境界部分として、温度T1とT2の急激な温度段差ができる。温度段差により、用紙Sには光沢度差が生じてしまう。光沢度差が生じた部分にはトナー像の濃淡の差が現れるようになり、これにより画像品質は低下してしまう。
【0047】
本実施形態では、上記画像品質の低下を防止するために、制御部90は、加熱ローラー301上に発生した温度段差の高温側から境界部分に向かって冷却部31により定着部30を冷却する。特に、制御部90は、加熱ローラー301上の温度段差が小さくなるように、温度段差の境界部に近づく程冷却部31の冷却能力を高める。
【0048】
図6は制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフであり、図7は加熱ローラーが用紙を挟持(ニップ)する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。なお、図6の縦軸に示す冷却能力は、冷却部31により加熱ローラー301に吹き付ける冷媒を冷却する強度を示す。冷却能力が高いほど、加熱ローラー301がより冷却される。
【0049】
制御部90は、用紙Sの先端が加熱ローラー301のニップ部を通過すると、図6に示すように、徐々に冷却部31による冷却能力を向上させる。ここで、用紙Sの先端がニップ部を通過するタイミングは、二次転写部7Aのローラーによる送り出しのタイミングに基づいて決定できる。加熱ローラー301への冷却を徐々に強めることで、図7に示すように、用紙の接触により温度T2まで下がった部分と今回は用紙Sによる温度低下がなかった部分との境界部分に向けて、加熱ローラー301は、温度T1からT2に連続的に徐々に冷却される。したがって、図7に示す加熱ローラー301上の境界部分の前後では、温度がT1からT2に急激に下がることがなく、すなわち温度の急激な変化がない。
【0050】
そして、境界部分まで冷却部31により冷却された時点で、制御部90は、図6に示すように、冷却部31の冷却能力を一旦ゼロに戻す。すなわち、冷却部31から加熱ローラー301への冷媒の吹き付けを停止する。続けて、さらに通紙がある場合、制御部90は、用紙Sの先端が加熱ローラー301のニップ部を通過すると、徐々に冷却部31による冷却能力を向上させる。ここで、冷却能力を強める勾配は、接触部分および非接触部分の境界部分に向けて強めたときの勾配よりも小さい。これは、図5に示すように、温度T1とT2の差よりも、温度T2とT3の差の方が小さくなるからである。このように、加熱ローラー301への冷却を徐々に強めることで、図7に示すように、用紙の接触により温度T3まで下がった部分と今回は用紙Sによる温度低下がなかった部分との境界部分に向けて、加熱ローラー301は、温度T2からT3に連続的に徐々に冷却される。したがって、加熱ローラー301上の境界部分の前後では、温度がT2からT3に急激に下がることがなく、すなわち温度の急激な変化がない。
【0051】
以上を繰り返すことによって、制御部90は、加熱ローラー301上において急激な温度段差が生じることを防止し、温度段差による用紙上のトナー像の光沢度差がなく、結果として、画像品質の低下を防止できる。なお、加熱ローラー301の温度低下は、ある程度のところで、ヒーター302による温度上昇と均衡する。したがって、加熱ローラー301は、温度が下がっていっても、トナー像の定着が困難になるまでは温度は低下しない。
【0052】
上記の制御において、加熱ローラー301の回転周期は、加圧ローラー303の回転速度により算出できる。加圧ローラー303の回転速度は、用紙の種類やサイズ等によって適宜変更されるので、記憶部91に予め、用紙の種類等と加圧ローラー303の回転速度とが対応付けて記憶されている。
【0053】
また、上記の制御において、図5に示すような、境界部分前後の温度T1、T2、T3は、用紙の種類、サイズ、斤量等のパラメータによって算出できる。この場合、制御部90は、操作表示部40に入力された用紙Sの種類等のパラメータに基づいて、用紙Sが加熱ローラー301から奪う熱量を算出する。記憶部にはヒーター302から与える熱量が記憶されており、制御部90は、ヒーター302の熱量および用紙が奪う熱量に基づいて、加熱ローラー301が1周してニップ直前に至った際の温度T2を算出する。同様に、T3も算出できる。制御部90は、求めた温度T1、T2、T3に基づいて、加熱ローラー301表面が図7に示すような温度勾配になるように、冷却部31の冷却能力を制御できる。冷却能力の制御では、たとえば、図7の温度T1とT2の温度段差を加熱ローラー301の一回転の周期で除算して、温度変化の勾配を算出し、当該勾配に合致するように必要な冷却部31の冷却能力を算出できる。
【0054】
あるいは、記憶部91には、通紙による加熱ローラー301の平均的な温度変移が記憶されていてもよい。この場合、制御部90は、平均的な温度変移に基づいて、加熱ローラー301表面が図7に示すような温度勾配になるように、冷却部31の冷却能力を制御できる。
【0055】
(変形例1)
上記実施形態の変形例を説明する。
【0056】
上記実施形態では、図6に示すように冷却部31による冷却能力を、線形的に変化させたが、変形例1では、非線形的に変化させる。
【0057】
図8は制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフであり、図9は加熱ローラーが用紙を挟持(ニップ)する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【0058】
図8を参照すると、変形例1では、制御部90は、加熱ローラー301のニップ部に用紙Sの先端が通過し始めると、冷却部31による冷却能力を非線形に向上させる。冷却部31を構成するコンプレッサー312は、運転開始から所定の回転速度に達するまでに慣性の影響を受けるため、回転速度を線形的に変化させるのは難しく、同様に冷却能力を線形的に変化させるのも困難である。このため、図8のように非線形に冷却能力を向上させることにより、コンプレッサー312に負担なく、冷却能力を制御できる。
【0059】
冷却能力を非線形に向上させた場合でも、図9に示すように、用紙先端がニップ部を通過してから加熱ローラー301が1周した時点で、用紙Sとの接触部分および非接触部分の境界部分(先端接触位置A)前後で、温度段差がない。したがって、加熱ローラー301上において急激な温度段差がないので、上記実施形態と同様に、画像品質の低下を防止できる。
【0060】
(変形例2)
図10は制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフであり、図11は加熱ローラーが用紙を挟持(ニップ)する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【0061】
上記実施形態および変形例1とは異なり、図10に示すように、光沢段差がでないように、冷却部31による冷却能力を段階的に向上してもよい。段階的に冷却能力を向上した場合、図11に示すように、ニップ部直前位置の加熱ローラー301上の温度も段階的に低減される。この場合でも、ローラー1周後の用紙先端通過の前後、すなわち、用紙Sとの接触部分および非接触部分の境界部分前後で、温度段差がない。したがって、加熱ローラー301上において急激な温度段差がないので、上記実施形態と同様に、画像品質の低下を防止できる。
【0062】
なお、変形例2のように段階的に冷却能力を向上する場合、冷却能力の向上が急激だと、その前後で加熱ローラー301上に温度段差ができ、結果として、定着されたトナー像に光沢段差ができる可能性がある。したがって、光沢段差ができないように、1つの段階で向上させる冷却能力は、光沢段差の発生を考慮して決定される。たとえば、光沢度差が現れない加熱ローラー301上の温度段差は5度程度であり、温度段差が5度以下となるように冷却能力が段階的に向上される。
【0063】
(変形例3)
図12は制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフであり、図13は加熱ローラーが用紙を挟持(ニップ)する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【0064】
上記実施形態、変形例1、2では、用紙Sの先端がニップ部を通過した時点から、冷却部31による冷却を開始していた。変形例3では、用紙Sの先端が通過した後、所定時間経過後から冷却部31による冷却を開始する。
【0065】
たとえば、加熱ローラー301上において、今回の通紙で用紙Sの後端と接触する部分が、まだ接触する前に、冷却部31のノズル311の前を通過した時点から、冷却能力を向上しつつ、冷却部31による冷却を開始する。今回の通紙で用紙Sの後端と接触する加熱ローラー301上の部分がノズル311の前を通過するのは、当然、用紙Sの先端がニップ部を通過するのよりも後である。この場合、図12に示すように、冷却能力の向上は、用紙Sの先端がニップ部を通過してしばらく経ってから始まる。なお、用紙Sの後端と接触する加熱ローラー301上の部分は、用紙Sの先端がニップ部を通過した時の先端接触位置Aと用紙Sのサイズとに基づいて、制御部90が算出できる。用紙Sの後端と接触する加熱ローラー301上の部分が算出できれば、加熱ローラー301の回転速度に基づいて、当該部分がノズル311の前を通過する時点も算出できる。
【0066】
図12に示すように冷却能力を制御すると、図13に示すように、ニップ部直前位置の加熱ローラー301上の温度も、加熱ローラー301がしばらく回転した後から下がる。ここで、加熱ローラー301の温度の低下の勾配は、図7に示す実施形態よりも大きい。これにより、加熱ローラー301が一回転して、用紙Sとの接触部分および非接触部分の境界部分(先端接触位置A)が戻ってきたときに、境界部分前後で温度段差がない。したがって、上記実施形態および変形例1、2と同様に、画像品質の低下を防止できる。
【0067】
また、加熱ローラー301は、用紙Sの後端と接触する部分の直後から冷却部31により冷却が開始され、用紙Sとの接触部分および非接触部分の境界部分(先端接触位置A)まで冷却されるので、今回の通紙では用紙Sと接触しない非接触部分だけを冷却できる。接触部分は非接触部分よりも温度が低いので、非接触部分だけが冷却されると、境界部分だけでなく、加熱ローラー301全体としての温度バラツキもより低減できる。
【0068】
なお、用紙Sの先端が通過した後、所定時間経過後から冷却部31による冷却を開始するタイミングは上記に限られない。たとえば、用紙Sの先端がニップ部を通過してから、加熱ローラー301が略半回転した時点から、冷却部31による冷却を開始し、冷却能力を向上してもよい。
【0069】
また、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲において種々の改変が可能である。
【0070】
上記実施形態では定着部30のニップ前後の温度T1、T2を算出する例を説明したが、これに限定されない。つまり、定着部30のニップ部直前位置等に温度センサーを配置して、その結果から温度制御を行ってもよい。
【0071】
また、上記では定着部30が加熱ローラー301を含む場合を説明したが、これに限定されない。加熱ローラー301の代わりに、定着ベルトを含む構成に適用することも可能である。この場合、定着ベルト内に、ヒーター302が配置される。
【0072】
なお、上記実施形態では加熱ローラー301の円周と用紙Sの搬送方向の長さについては特に制限を設けていないため、加熱ローラー301の円周は用紙Sの搬送方向の長さより長くても短くてもよい。加熱ローラー301の円周が、例えば用紙Sの搬送方向の長さより長い場合、連続通紙の際に1枚目の用紙では光沢度差による画像品質低下が発生しなくても、2枚目以降の用紙に画像品質低下が発生する可能性がある。上記実施形態に係る冷却部31により冷却を行えば、用紙Sに対して加熱ローラー301の円周と用紙Sの搬送方向の長さとがどのような関係にあっても、加熱ローラー上の温度は連続的に変化している為、急激な温度段差が発生せず、画像品質低下を防止できる。
【0073】
また、冷却部31がノズル311とコンプレッサー312から構成される例を説明したが、これに限定されない。冷却部31は、たとえば、ファンとエアダクト等の組み合わせにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
30 定着部、
31 冷却部、
301 加熱ローラー、
302 ヒーター、
303 加圧ローラー、
311 ノズル、
312 コンプレッサー、
90 制御部、
91 記憶部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、定着装置が設けられている。定着装置は給紙トレイから搬送され、画像形成部で形成されたトナー像が転写された用紙に熱と圧力を付加することによって定着させている。
【0003】
定着装置は一般的に熱を付加する加熱ローラーや圧力を付与する加圧ローラーから構成されている。加熱ローラーは内部にヒーターなどの加熱手段が設けられており、当該ヒーターにより加熱ローラーが所定の温度に加熱される。ヒーターの熱量は、加熱ローラーおよび加圧ローラー間で用紙を挟持する挟持部(ニップ部)において、加熱ローラーを介して用紙に伝達される。
【0004】
用紙へ熱が伝達されると、加熱ローラー上で用紙と接触した部分の温度は低下する。該当部分の温度は、加熱ローラーが1周回転して、ニップ部の位置に戻るまでの間に、ヒーターにより再度加熱され、上昇される。
【0005】
しかし、再度加熱されても、加熱ローラーの該当部分に注目すると、加熱ローラーが用紙を通紙する直前と、通紙してから一周してニップ直前の位置に到達した時とで、異なった温度になる。つまり、加熱ローラー上で用紙との接触部分および非接触部分の境界部分には温度段差が生じることになる。この温度段差は定着工程において用紙上のトナー像に光沢度差を生じさせ、当該光沢度差はトナー像に濃淡の差を生じさせてしまい、画像品質を低下させる要因となる。
【0006】
これに対し、下記特許文献1では加熱コイルを有する定着装置において、用紙との接触部分および非接触部分を検出して、これらの境界部分で加熱コイルに供給する電力を変えることにより加熱ローラー上の温度の均一化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−26493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1における技術では、加熱ローラー上の用紙との接触部分および非接触部分の境界部分を検出して加熱ローラーに対する加熱電力を変更しても、各構成要素のバラつきによって加熱電力の変更が上記境界部分とずれる場合がある。その場合には急激な温度段差を解消できていない部分が残り、光沢度差が生じて画像品質が低下してしまう、という問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、定着装置に生じる副走査方向の温度段差による画像品質の低下を防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、以下の手段により達成される。
【0011】
(1)用紙と接触して前記用紙上の未定着画像を定着する定着部と、冷却能力が可変であり、当該定着部の表面を冷却する冷却部と、前記冷却部の冷却能力を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記用紙の接触により前記定着部上において発生した温度段差の高温側から境界部分に向かって前記冷却部により前記定着部を冷却し、当該温度段差が小さくなるように、前記境界部分に近づく程前記冷却部の冷却能力を高める画像形成装置。
【0012】
(2)前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を線形的に変化させることを特徴とする前記(1)に記載の画像形成装置。
【0013】
(3)前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を非線形的に変化させることを特徴とする前記(1)に記載の画像形成装置。
【0014】
(4)前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を段階的に変化させることを特徴とする前記(1)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る画像形成装置によれば、用紙の接触により定着部上に生じた温度段差が小さくなるように、境界部分に近づく程冷却部の冷却能力を高める。したがって、境界部分での温度段差が小さくなり、温度段差の影響により用紙上に現れる光沢度差も視覚的には認識できない程度のものとし、バラつきがあっても光沢度差が急激に変化することがなくなる。結果として画像品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像形成装置の概略説明図である。
【図2】図1において本発明に係る定着部部分の拡大図である。
【図3】本発明に係る定着工程に使用される構成についてのブロック図である。
【図4】加熱ローラー上の任意の一点の温度推移を示す図である。
【図5】加熱ローラーが用紙を挟持する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【図6】制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフである。
【図7】加熱ローラーが用紙を挟持する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【図8】制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフである。
【図9】加熱ローラーが用紙を挟持する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【図10】制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフである。
【図11】加熱ローラーが用紙を挟持する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【図12】制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフである。
【図13】加熱ローラーが用紙を挟持する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。
【0018】
図1において、画像形成装置Aはタンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部によりカラー画像形成を行う。
【0019】
原稿台上に載置された原稿は画像読取装置SCの走査露光の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサーに読み込まれる。光電変換された画像情報信号は、画像情報処理部(非図示)において、アナログ信号、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、画像形成部の光書込部に入力される。
【0020】
4組の画像形成部はイエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Y、マゼンダ(M)色の画像を形成する画像形成部10M,シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10C、黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kであり、それぞれ共通する符号10の後に形成する色を表す符号Y、M、C、Kを付して表記する。
【0021】
画像形成部10Yは、感光体ドラム1Yおよびその周囲に配置された帯電部2Y、光書込部3Y、現像装置4Yおよびドラムクリーナー5Yを有している。
【0022】
同様に画像形成部10Mは、感光体ドラム1Mの周囲に配置された帯電部2M、光書込部3M、現像装置4Mおよびドラムクリーナー5Mを、画像形成部10Cは感光体ドラム1Cの周囲に配置された帯電部2C、光書込部3C、現像装置4Cおよびドラムクリーナー5Cを、画像形成部10Kは、感光体ドラム1Kの周囲に配置された帯電部2K、光書込部3K、現像装置4K、およびドラムクリーナー5Kを有している。
【0023】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおけるそれぞれの感光体ドラム1Y、1M、1C、1K、帯電部2Y、2M、2C、2K、光書込部3Y、3M、3C、3K、現像装置4Y、4M、4C、4Kおよびドラムクリーナー5Y、5M、5C、5Kはそれぞれ共通する内容の構成である。以下、特に区別が必要な場合を除き符号Y、M、C、Kを付さずに表記することにする。
【0024】
画像形成部10は、光書込部3にて画像情報信号を感光体ドラム1に書込み、感光体ドラム1に画像情報信号に基づく静電潜像を形成する。静電潜像は現像装置4によりトナーを付着させることで現像され、感光体ドラム1上に可視画像であるトナー像が形成される。
【0025】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおけるそれぞれの感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kにはそれぞれ、イエロー(Y)色、マゼンダ(M)色、シアン(C)色、黒(K)色の画像が形成される。
【0026】
中間転写ベルト6は、複数のローラーにより巻回され、走行可能に支持されている。
【0027】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色のトナー像は、走行する中間転写ベルト6上に1次転写部7Y、7M、7C、7Kにより逐次転写されてY(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(黒)の各色層が重畳したカラー画像が形成される。
【0028】
用紙搬送部20は給紙トレイ21、22、23および給紙部24からなる。用紙Sは給紙トレイ21、22、23に収容されており、これら各給紙トレイ21〜23のいずれかから用紙Sが選択され、給紙ローラー241等を有する給紙部24により中間転写ベルト6等が存在する下流へと搬送される。
【0029】
用紙Sは、ループ形成ローラー51およびレジストローラー52を経て2次転写部7Aに搬送され、用紙S上に中間転写ベルト6上のカラー画像が転写される。用紙Sは定着部30にて熱と圧力とを加えることによりトナー像が定着され、定着搬送ローラー25および排紙ローラー26を経て装置外の排紙トレイ61に排紙される。
【0030】
画像形成装置Aは用紙反転部27を備えており、定着工程を終えた用紙Sを定着搬送ローラー25から用紙反転部27に導いて表裏を反転し排紙、あるいは用紙の両面に画像形成を行うことを可能としている。
【0031】
画像形成装置Aの本体上部に設置された操作表示部40では、画像形成を行うに際し、複数の用紙の中から使用する用紙Sの種類、枚数等を設定できる。なお、用紙サイズについては画像読取装置SCにて原稿を読み取った際に検出するようにしてもよい。
【0032】
次に本実施形態に係る定着部30および定着部30を冷却する冷却部31について詳細に説明する。図2は用紙上の未定着画像を定着する定着部30の拡大図、図3は定着工程に関する構成のブロック図である。
【0033】
定着部30は、図2に示すように、用紙Sと接触して(ニップして)用紙S上の未定着のトナー像を定着する。定着部30は、加熱ローラー301、ヒーター302、加圧ローラー303と、を含む。
【0034】
加熱ローラー301は、フッ素樹脂または弾性体からなる被覆層304と、被覆層304の内面に形成された芯金305とを含み、回転可能に支持されている。加熱ローラー301の内部には、ヒーター302が配置されている。
【0035】
ヒーター302は、加熱ローラー301を内部から加熱して、加熱ローラー301が2次転写部7Aから搬送された用紙上のトナーを溶融定着できるようにする。
【0036】
加圧ローラー303は、弾性体からなる被覆層306と、被覆層306の内面に形成された芯金307とを含む。加圧ローラー303は、図示しないモータ等の駆動部に接続され、駆動部の駆動により所定の速度で回転する。加圧ローラー303は、たとえば、図2の反時計方向に回転する。加圧ローラー303は、加熱ローラー301との間でニップ部を形成するので、加熱ローラー301も加圧ローラー303の回転に従動して回転する。用紙Sは、ニップ部において、加熱ローラー301および加圧ローラー303に挟まれつつ、搬送される。
【0037】
冷却部31は、冷却能力が可変であり、定着部30の表面を冷却する。冷却部31は、ノズル311とコンプレッサー312とを含む。冷却部31は、コンプレッサー312からの圧縮空気をノズル311によって温度を調節して加熱ローラー301に吹き付けることで加熱ローラー301を冷却する。
【0038】
なお、図2では、加熱ローラー301上において、用紙Sの通紙方向の先端と接触した部分を、先端接触位置Aとして示している。先端接触位置Aは、通紙の度に変わりうる。
【0039】
制御部90は、加熱ローラー301、ヒーター302、加圧ローラー303、ノズル311およびコンプレッサー312に接続され、これらを制御する。また、制御部90は、操作表示部40で指示された用紙Sの種類やサイズの情報を取得する。
【0040】
制御部90には不揮発メモリ等で構成された記憶部91が接続されている。記憶部91には、加熱ローラー301の初期温度(T1)、ヒーター302による熱量等、制御部90による冷却部31の制御に必要な情報が記憶されている。詳細については後述する。
【0041】
制御部90による冷却部31の冷却能力の制御について説明する前に、冷却部がない場合の加熱ローラー301上の温度推移について、図4および図5を参照して、説明する。
【0042】
図4は加熱ローラー上の任意の一点の温度推移を示す図、図5は加熱ローラーが用紙を挟持(ニップ)する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。図4の温度推移は、たとえば、図2の加熱ローラー301上の先端接触位置Aの温度推移である。
【0043】
図4に示すように、最初は、加熱ローラー301は、ヒーター302により、用紙Sにトナーを溶融定着できる程度の温度T1に昇温されている。印刷指示が与えられると、定着部30にはトナー像が転写された用紙Sが搬送される。
【0044】
加熱ローラー301に用紙Sが接触することで、加熱ローラー301の熱は用紙Sに奪われ、加熱ローラー301の表面温度は、図4に示すようにT1からT4に低下する。通紙領域を通過すると、加熱ローラー301は、ヒーター302により徐々に加熱され、加熱ローラー上の温度はT4からT2にまで回復する。
【0045】
図4に示すように、通紙による温度低下とヒーター302による温度上昇は制御されておらず異なるため、T1とT2は異なった温度になる。そして、再び用紙Sに熱が奪われることで加熱ローラー301の表面温度はT2からT5に低下し、ヒーター302に加熱されてニップ直前に至るまでに表面温度はT3にまで回復する。この繰り返しで、加熱ローラー301上のある点では、用紙Sと接触するたびに、温度が次第に下がっていく。
【0046】
図5を参照すると、加熱ローラー301のニップ部直前の温度推移を見ているので、最初は加熱ローラー301がまだ用紙と接触しておらず、初期温度T1が続く。そして、加熱ローラー301が一回転して、通紙により熱が奪われた部分がニップ部直前に戻ってくると、急に温度T2に下がる。これは、加熱ローラー301上に、用紙に接触して冷却された低温部分と、用紙に接触していない高温部分とがあるからである。このように、加熱ローラー301が1回転する間に、用紙Sと接触した接触部分と接触しなかった非接触部分とでは、先端接触位置Aを境界部分として、温度T1とT2の急激な温度段差ができる。温度段差により、用紙Sには光沢度差が生じてしまう。光沢度差が生じた部分にはトナー像の濃淡の差が現れるようになり、これにより画像品質は低下してしまう。
【0047】
本実施形態では、上記画像品質の低下を防止するために、制御部90は、加熱ローラー301上に発生した温度段差の高温側から境界部分に向かって冷却部31により定着部30を冷却する。特に、制御部90は、加熱ローラー301上の温度段差が小さくなるように、温度段差の境界部に近づく程冷却部31の冷却能力を高める。
【0048】
図6は制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフであり、図7は加熱ローラーが用紙を挟持(ニップ)する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。なお、図6の縦軸に示す冷却能力は、冷却部31により加熱ローラー301に吹き付ける冷媒を冷却する強度を示す。冷却能力が高いほど、加熱ローラー301がより冷却される。
【0049】
制御部90は、用紙Sの先端が加熱ローラー301のニップ部を通過すると、図6に示すように、徐々に冷却部31による冷却能力を向上させる。ここで、用紙Sの先端がニップ部を通過するタイミングは、二次転写部7Aのローラーによる送り出しのタイミングに基づいて決定できる。加熱ローラー301への冷却を徐々に強めることで、図7に示すように、用紙の接触により温度T2まで下がった部分と今回は用紙Sによる温度低下がなかった部分との境界部分に向けて、加熱ローラー301は、温度T1からT2に連続的に徐々に冷却される。したがって、図7に示す加熱ローラー301上の境界部分の前後では、温度がT1からT2に急激に下がることがなく、すなわち温度の急激な変化がない。
【0050】
そして、境界部分まで冷却部31により冷却された時点で、制御部90は、図6に示すように、冷却部31の冷却能力を一旦ゼロに戻す。すなわち、冷却部31から加熱ローラー301への冷媒の吹き付けを停止する。続けて、さらに通紙がある場合、制御部90は、用紙Sの先端が加熱ローラー301のニップ部を通過すると、徐々に冷却部31による冷却能力を向上させる。ここで、冷却能力を強める勾配は、接触部分および非接触部分の境界部分に向けて強めたときの勾配よりも小さい。これは、図5に示すように、温度T1とT2の差よりも、温度T2とT3の差の方が小さくなるからである。このように、加熱ローラー301への冷却を徐々に強めることで、図7に示すように、用紙の接触により温度T3まで下がった部分と今回は用紙Sによる温度低下がなかった部分との境界部分に向けて、加熱ローラー301は、温度T2からT3に連続的に徐々に冷却される。したがって、加熱ローラー301上の境界部分の前後では、温度がT2からT3に急激に下がることがなく、すなわち温度の急激な変化がない。
【0051】
以上を繰り返すことによって、制御部90は、加熱ローラー301上において急激な温度段差が生じることを防止し、温度段差による用紙上のトナー像の光沢度差がなく、結果として、画像品質の低下を防止できる。なお、加熱ローラー301の温度低下は、ある程度のところで、ヒーター302による温度上昇と均衡する。したがって、加熱ローラー301は、温度が下がっていっても、トナー像の定着が困難になるまでは温度は低下しない。
【0052】
上記の制御において、加熱ローラー301の回転周期は、加圧ローラー303の回転速度により算出できる。加圧ローラー303の回転速度は、用紙の種類やサイズ等によって適宜変更されるので、記憶部91に予め、用紙の種類等と加圧ローラー303の回転速度とが対応付けて記憶されている。
【0053】
また、上記の制御において、図5に示すような、境界部分前後の温度T1、T2、T3は、用紙の種類、サイズ、斤量等のパラメータによって算出できる。この場合、制御部90は、操作表示部40に入力された用紙Sの種類等のパラメータに基づいて、用紙Sが加熱ローラー301から奪う熱量を算出する。記憶部にはヒーター302から与える熱量が記憶されており、制御部90は、ヒーター302の熱量および用紙が奪う熱量に基づいて、加熱ローラー301が1周してニップ直前に至った際の温度T2を算出する。同様に、T3も算出できる。制御部90は、求めた温度T1、T2、T3に基づいて、加熱ローラー301表面が図7に示すような温度勾配になるように、冷却部31の冷却能力を制御できる。冷却能力の制御では、たとえば、図7の温度T1とT2の温度段差を加熱ローラー301の一回転の周期で除算して、温度変化の勾配を算出し、当該勾配に合致するように必要な冷却部31の冷却能力を算出できる。
【0054】
あるいは、記憶部91には、通紙による加熱ローラー301の平均的な温度変移が記憶されていてもよい。この場合、制御部90は、平均的な温度変移に基づいて、加熱ローラー301表面が図7に示すような温度勾配になるように、冷却部31の冷却能力を制御できる。
【0055】
(変形例1)
上記実施形態の変形例を説明する。
【0056】
上記実施形態では、図6に示すように冷却部31による冷却能力を、線形的に変化させたが、変形例1では、非線形的に変化させる。
【0057】
図8は制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフであり、図9は加熱ローラーが用紙を挟持(ニップ)する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【0058】
図8を参照すると、変形例1では、制御部90は、加熱ローラー301のニップ部に用紙Sの先端が通過し始めると、冷却部31による冷却能力を非線形に向上させる。冷却部31を構成するコンプレッサー312は、運転開始から所定の回転速度に達するまでに慣性の影響を受けるため、回転速度を線形的に変化させるのは難しく、同様に冷却能力を線形的に変化させるのも困難である。このため、図8のように非線形に冷却能力を向上させることにより、コンプレッサー312に負担なく、冷却能力を制御できる。
【0059】
冷却能力を非線形に向上させた場合でも、図9に示すように、用紙先端がニップ部を通過してから加熱ローラー301が1周した時点で、用紙Sとの接触部分および非接触部分の境界部分(先端接触位置A)前後で、温度段差がない。したがって、加熱ローラー301上において急激な温度段差がないので、上記実施形態と同様に、画像品質の低下を防止できる。
【0060】
(変形例2)
図10は制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフであり、図11は加熱ローラーが用紙を挟持(ニップ)する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【0061】
上記実施形態および変形例1とは異なり、図10に示すように、光沢段差がでないように、冷却部31による冷却能力を段階的に向上してもよい。段階的に冷却能力を向上した場合、図11に示すように、ニップ部直前位置の加熱ローラー301上の温度も段階的に低減される。この場合でも、ローラー1周後の用紙先端通過の前後、すなわち、用紙Sとの接触部分および非接触部分の境界部分前後で、温度段差がない。したがって、加熱ローラー301上において急激な温度段差がないので、上記実施形態と同様に、画像品質の低下を防止できる。
【0062】
なお、変形例2のように段階的に冷却能力を向上する場合、冷却能力の向上が急激だと、その前後で加熱ローラー301上に温度段差ができ、結果として、定着されたトナー像に光沢段差ができる可能性がある。したがって、光沢段差ができないように、1つの段階で向上させる冷却能力は、光沢段差の発生を考慮して決定される。たとえば、光沢度差が現れない加熱ローラー301上の温度段差は5度程度であり、温度段差が5度以下となるように冷却能力が段階的に向上される。
【0063】
(変形例3)
図12は制御部により制御する冷却部の冷却能力と時間の関係を示すグラフであり、図13は加熱ローラーが用紙を挟持(ニップ)する直前位置(固定点)での加熱ローラー上の温度推移を示す図である。
【0064】
上記実施形態、変形例1、2では、用紙Sの先端がニップ部を通過した時点から、冷却部31による冷却を開始していた。変形例3では、用紙Sの先端が通過した後、所定時間経過後から冷却部31による冷却を開始する。
【0065】
たとえば、加熱ローラー301上において、今回の通紙で用紙Sの後端と接触する部分が、まだ接触する前に、冷却部31のノズル311の前を通過した時点から、冷却能力を向上しつつ、冷却部31による冷却を開始する。今回の通紙で用紙Sの後端と接触する加熱ローラー301上の部分がノズル311の前を通過するのは、当然、用紙Sの先端がニップ部を通過するのよりも後である。この場合、図12に示すように、冷却能力の向上は、用紙Sの先端がニップ部を通過してしばらく経ってから始まる。なお、用紙Sの後端と接触する加熱ローラー301上の部分は、用紙Sの先端がニップ部を通過した時の先端接触位置Aと用紙Sのサイズとに基づいて、制御部90が算出できる。用紙Sの後端と接触する加熱ローラー301上の部分が算出できれば、加熱ローラー301の回転速度に基づいて、当該部分がノズル311の前を通過する時点も算出できる。
【0066】
図12に示すように冷却能力を制御すると、図13に示すように、ニップ部直前位置の加熱ローラー301上の温度も、加熱ローラー301がしばらく回転した後から下がる。ここで、加熱ローラー301の温度の低下の勾配は、図7に示す実施形態よりも大きい。これにより、加熱ローラー301が一回転して、用紙Sとの接触部分および非接触部分の境界部分(先端接触位置A)が戻ってきたときに、境界部分前後で温度段差がない。したがって、上記実施形態および変形例1、2と同様に、画像品質の低下を防止できる。
【0067】
また、加熱ローラー301は、用紙Sの後端と接触する部分の直後から冷却部31により冷却が開始され、用紙Sとの接触部分および非接触部分の境界部分(先端接触位置A)まで冷却されるので、今回の通紙では用紙Sと接触しない非接触部分だけを冷却できる。接触部分は非接触部分よりも温度が低いので、非接触部分だけが冷却されると、境界部分だけでなく、加熱ローラー301全体としての温度バラツキもより低減できる。
【0068】
なお、用紙Sの先端が通過した後、所定時間経過後から冷却部31による冷却を開始するタイミングは上記に限られない。たとえば、用紙Sの先端がニップ部を通過してから、加熱ローラー301が略半回転した時点から、冷却部31による冷却を開始し、冷却能力を向上してもよい。
【0069】
また、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲において種々の改変が可能である。
【0070】
上記実施形態では定着部30のニップ前後の温度T1、T2を算出する例を説明したが、これに限定されない。つまり、定着部30のニップ部直前位置等に温度センサーを配置して、その結果から温度制御を行ってもよい。
【0071】
また、上記では定着部30が加熱ローラー301を含む場合を説明したが、これに限定されない。加熱ローラー301の代わりに、定着ベルトを含む構成に適用することも可能である。この場合、定着ベルト内に、ヒーター302が配置される。
【0072】
なお、上記実施形態では加熱ローラー301の円周と用紙Sの搬送方向の長さについては特に制限を設けていないため、加熱ローラー301の円周は用紙Sの搬送方向の長さより長くても短くてもよい。加熱ローラー301の円周が、例えば用紙Sの搬送方向の長さより長い場合、連続通紙の際に1枚目の用紙では光沢度差による画像品質低下が発生しなくても、2枚目以降の用紙に画像品質低下が発生する可能性がある。上記実施形態に係る冷却部31により冷却を行えば、用紙Sに対して加熱ローラー301の円周と用紙Sの搬送方向の長さとがどのような関係にあっても、加熱ローラー上の温度は連続的に変化している為、急激な温度段差が発生せず、画像品質低下を防止できる。
【0073】
また、冷却部31がノズル311とコンプレッサー312から構成される例を説明したが、これに限定されない。冷却部31は、たとえば、ファンとエアダクト等の組み合わせにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
30 定着部、
31 冷却部、
301 加熱ローラー、
302 ヒーター、
303 加圧ローラー、
311 ノズル、
312 コンプレッサー、
90 制御部、
91 記憶部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙と接触して前記用紙上の未定着画像を定着する定着部と、
冷却能力が可変であり、当該定着部の表面を冷却する冷却部と、
前記冷却部の冷却能力を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記用紙の接触により前記定着部上において発生した温度段差の高温側から境界部分に向かって前記冷却部により前記定着部を冷却し、当該温度段差が小さくなるように、前記境界部分に近づく程前記冷却部の冷却能力を高める画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を線形的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を非線形的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を段階的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項1】
用紙と接触して前記用紙上の未定着画像を定着する定着部と、
冷却能力が可変であり、当該定着部の表面を冷却する冷却部と、
前記冷却部の冷却能力を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記用紙の接触により前記定着部上において発生した温度段差の高温側から境界部分に向かって前記冷却部により前記定着部を冷却し、当該温度段差が小さくなるように、前記境界部分に近づく程前記冷却部の冷却能力を高める画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を線形的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を非線形的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記冷却部の前記冷却能力を段階的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−61427(P2013−61427A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198784(P2011−198784)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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