説明

画像形成装置

【目的】 画像プロセスの主要因が変動しても,安定した画像が得られる画像プロセス制御を実現して画像品質の信頼性を向上し,また,画質安定化のために自動調整或いはオペレータによる調整操作を簡単に実行可能にする。
【構成】 被制御量,状態量を検知するセンサ部102と,操作量を入力する操作表示部101と,被制御量,状態量,操作量及び演算データを格納するRAM109と,被制御量を制御する制御用プログラムを格納するROM108と,制御用プログラムに基づいてニューロ制御を実行し,得られた出力値を2進数表示することにより信号の長さを決め,前記被制御量を制御するCPU107とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,複写機,ファクシミリ,レーザプリンタ等の電子写真プロセスを用いた画像形成装置に関し,より詳細には,学習制御(ニューラルネットワーク)により前記電子写真プロセス主要部の制御を効率よく実行する画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,電子写真プロセスを用いた画像形成装置において,画像の高画質安定化を実現するためプロセス条件に対して,装置を構成する部品精度や組立時の特性値管理を行うと共に,各プロセス制御部の状態量と操作量に対する制御量を検知してフィードバック制御を行う等によって,その適正化を図っていた。
【0003】また,本発明に関連する参考技術文献として,特開平3−167655号公報に開示されている「ニューラルネットワーク」があり,この「ニューラルネットワーク」は,最初に制約条件の弱い状態で自由度を与えて良質な解を探索し,次第に制約条件を強くすることにより或る程度良質で,且つ,制約条件を満足する解を求めるものである。
【0004】また,画像形成装置の画像品質の安定化を図るためにはプロセス全体を見た場合に,余りにも画像品質に影響する要因が多く,定式的な制御を実行することができないため,常に専門家による調整を行って対応していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記に示されるような従来における画像形成装置にあっては,装置間のバラツキや使用環境,経時的条件等により,プロセス特性の適正値がズレてしまう等の不具合,及びフィードバック制御系での制御応答の遅延により補正が適切に実行されない等の問題点があった。
【0006】また,従来の専門家による調整は,主要因に対する製造時の調整であり,前記主要因が経時的に変動した場合には,画像品質に影響を及ぼし経時変化に十分対応できないという問題点もあった。
【0007】また,前記「ニューラルネットワーク」にあっては,該ニューラルネットワークを複写機等に適用した場合に,専門家による高度な調整(ノウ・ハウ)が十分に装置に反映されないことが考えられる。
【0008】本発明は上記に鑑みてなされたものであって,画像プロセスの主要因が変動しても,安定した画像が得られる画像プロセス制御を実現させ,画像品質の信頼性を向上させることを第1の目的とする。
【0009】また,画質の安定化のために自動調整或いはオペレータによる調整操作を簡単に実行させることを第2の目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は,上記の目的を達成するために,画像形成装置に配設される制御対象の被制御量を検知する被制御量検知手段と,前記被制御量検知手段が検知する被制御量に関与する状態量を検知する状態量検知手段と,前記被制御量を制御するための操作量を入力する操作量入力手段と,前記被制御量,前記状態量,前記操作量及び演算データを格納するデータ格納手段と,前記被制御量を制御する制御用プログラムを格納するプログラム格納手段と,前記制御用プログラムに基づいてニューロ制御を実行し,得られた出力値を2進数表示することにより信号の長さを決め,前記被制御量を制御する演算処理手段とを具備する画像形成装置を提供するものである。
【0011】また,前記状態量を帯電チャージャ用高圧電源の出力値,帯電グリッド用電源の出力値及び暗部パターン電位,露光ランプ電圧値及び明部パターン電位,レーザ出力値,現像バイアス値,トナー濃度,転写用高圧電源の出力値,定着温度,感光体回転時間及び感光体残留電位,機内温湿度,及び給紙搬送速度のうちの1つ以上とすることが望ましい。
【0012】また,前記被制御量を露光ランプ電圧値,グリッド電源出力値,現像バイアス値,レーザ出力値,トナー補給時間,転写用高圧電源の出力値,定着温度,及び給紙搬送速度のうちの1つ以上とすることが望ましい。
【0013】また,前記演算処理手段による出力信号は,パルス幅変調信号,トリガー信号,或いは,ON/OFF時間信号であることが望ましい。
【0014】また,前記ニューロ制御(学習制御)は,誤差逆伝播学習に基づいて実行することが望ましい。
【0015】また,前記演算処理手段は,前記状態量の推移及び(或いは)該状態量に対する前記被制御量の調整推移及び(或いは)使用特性を学習し,予め設定した期間に達したときに,自動補正或いは補正表示を実行することが望ましい。
【0016】また,前記演算処理手段は,前記状態量の推移及び(或いは)該状態量に対する前記被制御量の調整推移及び(或いは)使用特性を学習し,状態量の正常範囲を外れたときに,自動補正或いは補正表示を実行することが望ましい。
【0017】また,前記演算処理手段は,前記状態量の現状値を表示手段に表示することが望ましい。
【0018】また,前記演算処理手段は,前記状態量及び(或いは)前記被制御量を感覚的に表示手段に表示し,該表示された被制御量を自動調整することが望ましい。
【0019】
【作用】本発明による画像形成装置は,データ格納手段に被制御量,被制御量に関与する状態量,操作量,及び演算データを格納し,プログラム格納手段にニューラルネットワークを実行させる制御用プログラムを格納する。演算処理手段は,プログラム格納手段の制御プログラムに基づいてニューロ制御の演算処理を,状態量を入力とし,且つ,被制御量を教師信号として繰り返し実行し,最終演算値を被制御量の出力値を決定する信号とする。
【0020】また,本発明による画像形成装置は,状態量の推移及び該状態量に対する被制御量の調整推移,及び使用特性を学習し,予め設定した期間に達したときに,或いは状態量の正常範囲(無調整の範囲)を外れた場合に自動補正或いは補正表示を実行する。
【0021】
【実施例】以下,本発明の一実施例を添付図面を参照して説明する。図1は,本発明による制御系を示すブロック図である。101は画像濃度,処理枚数,倍率等の初期設定条件をテンキーにより入力し,その内容を表示する操作表示部,102は作像プロセスの主要条件データを検知するセンサ部であり,例えば,(1) 帯電チャージャ用高圧電源の出力値(2) 帯電グリッド用電源の出力値及び暗部パターン電位(3) 露光ランプ電圧値及び明部パターン電位(4) レーザダイオード出力電圧値(5) 現像バイアス値の出力値(6) トナー濃度(Pセンサ及びTセンサの検出値)
(7) 転写用高圧電源の出力値(8) 定着温度(9) 感光体回転時間及び感光体残留電位(10) 機内温湿度(11) 給紙搬送速度を検知する。また,103は,(1) 露光ランプ電圧値(2) グリッド電源出力電圧値(3) 現像バイアス電圧値(4) レーザダイオード(LD)出力電圧値(5) トナー補給時間(6) 転写用高圧電源の出力電圧及び電流(7) 定着温度(8) 給紙搬送速度の制御対象部である。
【0022】なお,上記におけるトナー濃度は,Pセンサ(LEDとホトトランジスタで構成)により感光体ドラム201(図2参照)面にトナーパターンを形成して該トナーパターンの反射濃度を検出して得たトナー濃度,及び現像ローラ209(図2参照)上のトナーと現像剤(キャリア)の割合を磁力巻線によって検出するTセンサによる検出濃度である。
【0023】また,上記における暗部パターン電位とは帯電処理中における暗部の感光体ドラム201面の潜像電位であり,明部パターンとは帯電処理中における明部の感光体ドラム201面の潜像電位であり,残留電位とは感光体ドラム201面の初期時に残留している電位である。
【0024】また,104〜106は上記操作表示部101,センサ部102,及び制御対象部103に各々接続されるI/Oポートである。107は制御ソフト記憶部(ROM)108のニューロ制御プログラムに基づいて本制御系の演算処理を実行するCPU(マイクロコンピュータ),108はニューラルネットワーク用の制御用プログラムを格納する制御ソフト記憶部(ROM),109は操作表示部101,センサ部102,制御対象部103,及びCPU107における演算結果の各データを格納するデータ記憶部(RAM)である。
【0025】また,図2は,上記制御系を複写機に適用した場合の概略構成を示す説明図であり,電子写真プロセスの主要ユニットに対して上記制御系を接続した構成となっている。図において,静電潜像が形成される感光体ドラム201周囲に,スコロトロン方式でコロナ放電する帯電部202と,感光体ドラム201面の静電潜像に対してトナーを付着して可視像化する現像部203と,感光体ドラム201面のトナー像を記録紙に転写処理するための転写部204が配設されている。
【0026】帯電部202は,コロナワイヤ205を有し,該コロナワイヤ205には高電圧を印加するコロナワイヤ用高圧トランス206が接続され,また,スクリーングリッド207にはグリッド電圧供給用のグリッド用高圧トランス208が接続されている。
【0027】現像部203は,現像ローラ209を有し,該現像ローラ209は感光体ドラム201面に対し所定のギャップで配設され,その周面に現像プロセス(例えば,トナーと現像剤による2成分現像)により現像ローラ209上にトナー層を形成して感光体ドラム201にトナーを付着させる。また,現像ローラ209には,感光体ドラム201面の非画像部分にトナーの付着防止(地肌汚れ防止)のための現像バイアス電圧を供給するバイアス用高圧トランス210が接続されている。
【0028】また,本実施例の転写部204は,転写ベルト211,駆動ローラ212〜213及び,転写ローラ214等で構成される転写ベルト方式を採用している。駆動ローラ213及び転写ローラ214には,転写電流を供給する転写用高圧トランス215が接続されている。図中,216〜219はFET(電界効果トランジスタ)である。
【0029】また,220はバッファ,221はパルス幅変調(PWM)による変調信号をCPU107の演算結果に基づいて与えるPWMタイマであり,バッファ220は入力側にPWMタイマ221を接続し,出力側を各FET216〜219に接続している。なお,本実施例でのPWM信号は,各高圧トランス206,208,210及び215の1次側のベースに与える信号であり,その長さにより2次側の出力値が決定される。また,222はAC制御板223によって制御される露光ランプ,224はROM108やRAM109等を実装させてCPU107に接続して装置全体の制御を行うメイン制御板である。
【0030】図3は,本発明によるニューラルネットワークの基本構成を示す説明図であり,バックプロパゲーション(誤差逆伝播)学習規則によるネットワークを表している。図において,301は制御対象の状態量であり,本実施例においては,(1) 帯電チャージャ用高圧電源の出力値(2) 帯電グリッド用電源の出力値及び暗部パターン電位(3) 露光ランプ電圧値及び明部パターン電位(4) レーザダイオード出力電圧値(5) 現像バイアス値の出力値(6) トナー濃度(Pセンサ及びTセンサの検出値)
(7) 転写用高圧電源の出力値(8) 定着温度(9) 感光体回転時間及び感光体残留電位(10) 機内温湿度(11) 給紙搬送速度を示している。
【0031】また,302は状態量301の入力に反応する入力層,303は入力層302からの入力を受けて信号を出力する中間層,304は中間層303からの入力に応答して信号を出力する出力層,305は外部から入力信号に対する理想出力を与える教師信号d(専門家),306はニューロン,307は中間層303と出力層304とのシナプス結合係数(重み)ωであり,このシナプス結合係数(重み)ωによりニューロン306間の結合の強さが表される。
【0032】また,上記に示した本実施例によるニューラルネットワークは,制御対象の状態量に対して,出力層304による出力は,各々1または0の2値/9ビットの2進数で表され,この場合,該2進数の出力はPWMタイマ221によるPWMdutyの長さを決定し,PWMdutyの長さに基づいて現像バイアス出力電圧値を制御する。なお,この場合におけるPWM信号とは,各高圧トランスの1次側の発信トランジスタ(或いはFET)のベースに与える信号であり,その長さによって2次側の出力が決定される。
【0033】上記の本発明による学習制御(ニューラルネットワーク)は,制御対象である((1)露光ランプ電圧値,(2)グリッド電源出力電圧値,(3)現像バイアス電圧値,(4)レーザダイオード出力電圧値,(5)トナー補給時間,(6)転写用高圧電源の出力電圧及び電流,(7)定着温度及び(8)給紙搬送速度)に対応した数分のネットワークが存在する。また,本実施例での学習制御(ニューラルネットワーク)は,ニューラルネットワーク上で,ある出力値(教師信号d)に対する正しい入力値(その出力値に関係する入力値が全て揃わなくても可,→判らないものがあっても可)を予め教える。即ち,出力層304から入力層302へ信号を逆伝播(バックプロパゲーション)学習則により,各ニューロ間の結合の度合い(重みω)を記憶させる(学習)ことによって,入力値が変化した場合に対しても正しい出力値が得られるように構成されている。
【0034】図4は,上記ニューラルネットワークを構成するi番目のユニット例であり,多入力−1出力の非線形素子の機能を有する素子が用いられる。図において,yiはi番目の入力値,ωiはi番目のシナプス結合係数(重み),xはニューロン306iの出力値を示している。なお,ニューロンネットワークの設計は,実際のニューロンの非線形特性を如何にモデル化するかによって多様化される。
【0035】以下に上記ニューロンネットワークによる処理について説明する。本実施例では,離散時間モデルを使用し,その関係式は下記の数1で与えられる。
【0036】
【数1】


【0037】次に,出力関数(シグモイド関数)fは,下記の数2で表される。
【0038】
【数2】


【0039】εは出力関数fの非線形性を決定する非負のパラメータであり,ε>+0のとき,上記数2は単位ステップ関数となる。また,各ニューロンの出力値は,1或いは0の2値であり,1は各ニューロン間の興奮(発火)状態,0は制止(非発火)状態を表している。その他の場合,各ニューロンの出力値は0から1の値である。
【0040】次に,ニューラルネットワークの最大の特徴である学習能力や自己の組織化は,シナプス結合係数ω(前記各ニューロン間の結合の重み)及びしきい値θの変化(主に重みω)に基づいており,時刻(t+1)におけるシナプス結合係数ωiは数3及び数4で与えられる。
【0041】
【数3】


【0042】
【数4】


【0043】また,ニューラルネットワークの最大の特徴である学習能力とは,各層間の入力から出力への情報伝達に加えて,バックプロパゲーション(誤差逆伝播則)により理想出力(教師信号d)を出力側から入力側に与えることにより,ある入力に対して理想出力が得られるように,該理想出力を得るまでの入力信号の経路間のシナプス結合係数ω(重み)を調整し,また,各ニューロン間の重みωを変化させ記憶することによって,任意に与えられた情報が,理想とする出力へ導かれることである。
【0044】換言すれば,出力と理想信号(教師信号d)との誤差(学習信号)が,ネットワークを構成する全ユニットと結合から生じているとして,各々の重みωを調整する。即ち,結合を通じて前の層へさかのぼって出力の誤差を伝播させる動作を入力層302に到達するまで繰り返して,理想とする出力を得る。
【0045】次に,以上のようなニューラルネットワークを図1及び図2に示した複写機に展開した場合について説明する。図5は,本発明によるネットワーク学習の動作を示すフローチャートであり,図6は,ネットワーク学習に基づいて出力電圧制御を実行するフローチャートである。
【0046】図5において,先ず,ネットワーク学習は,複写機の生産ライン上の最終的な検査段階(画像チェック)における専門家或いは販売後のオペレータにより実行し,出力された画像或いは前記状態量を見ながら調整値(例えば,露光ランプ222の出力電圧値,現像バイアス出力電圧値等の制御対象)を教師信号dとして入力する(S501)。続いて,教師信号dとして入力された調整値を,2進数の値に変換し(S502),該2進数を出力層304に入力する(S503)。そして,前述の如く,逆伝播則に基づいて各ニューロン間の重みωを,ROM108の制御プログラムに基づいてCPU107によって算出し,ニューロン間の重み付けを行う(S504)。該算出された重みωはRAM109に記憶され,専門家或いはオペレータの知識をネットワーク上に蓄えるまで(学習終了と判断されるまで)学習を繰り返し実行する(S505)。
【0047】図6において,上記のようにネットワーク学習した(S601)後,ある任意の周期毎に状態量として,(1) 帯電チャージャ用高圧電源の出力値(2) 帯電グリッド用電源の出力値及び暗部パターン電位(3) 露光ランプ電圧値及び明部パターン電位(4) レーザダイオード出力電圧値(5) 現像バイアス値の出力値(6) トナー濃度(Pセンサ及びTセンサの検出値)
(7) 転写用高圧電源の出力値(8) 定着温度(9) 感光体回転時間及び感光体残留電位(10) 機内温湿度(11) 給紙搬送速度の1つ以上を入力層302に入力する(S602)。該入力値はセンサ部102或いは制御回路から入力されデータ記憶部(RAM)109に格納される。
【0048】次に,該入力データを制御ソフト記憶部(ROM)108の学習済みのニューラルネットワーク制御プログラムの入力として,9つの出力値(1または0の2値)をCPU107により算出する(S604)。そして,該9つの出力値を9ビットの2進数として,該出力値に基づいて制御対象である現像バイアスのPWM(パルス幅変調)dutyを決定し(S605),PWMタイマ221によって生成されるPWM信号を,バッファ220を介して,更にFET218によりバイアス用高圧トランス210の出力制御を実行する。
【0049】また,上記のようなネットワークは他の制御対象(露光ランプ電圧値,グリッド電源出力電圧値,LD出力電圧値,トナー補給時間,転写用高圧電源の出力電圧及び電流,定着温度,及び給紙搬送速度)に対しても同様な構成のものを用意し,前記PWM信号の代替としてトリガー信号の長さ(時間)を決定させて出力制御する。なお,該トリガー信号とは,AC制御板223のAC電源出力を長さ(時間)信号によりAC電源出力値が可変され露光ランプ222の出力電圧を決定させる信号である。
【0050】なお,上記のように得られた出力値を2進数表示することによる信号を,前記PWM信号,前記トリガー信号,或いはON/OFF時間信号(ある制御対象へのON/OFF時間であり,その長さにより制御対象の出力値が決定される)の何れかを信号を適宜用いることにより,被制御量(露光ランプ電圧値,現像バイアス電圧値等)の制御が可能となる。
【0051】また,図7は,本発明による自動調整モードの動作例を示すフローチャートであり,前記学習制御終了後に実行する。先ず,学習時の前記状態量及び被制御対象の各調整値の推移を記憶し(S701),更に,調整されなかった状態量及び被制御対象の値を正常範囲として記憶する(S702)。次に,ある期間または前記正常範囲を越えたか否かを判断し(S703),ある期間または前記正常範囲を越えたときには,上記図6に示したステップ602以降の調整モードAを実行し,ある期間または上記正常範囲内であればステップ703の判断を繰り返す。
【0052】このように製品個々の状態量の推移,及び該状態量の推移に対するオペレータ及び専門家(設計者,サービスマン,工場出荷時の調整者等)の被制御量の調整値の推移を記憶して,製品個々の特性やオペレータの使用特性を学習しておき,予め設定した期間,或いは状態量の正常範囲に基づいて自動的に補正を実行する。或いは該補正の要求を操作表示部101に表示する。また,学習制御により設定される正常な範囲(調整されなかった範囲)で調整し,前記期間或いは状態量が正常範囲を越えたか否かを判断し,その後はその時点の状態量を入力値としてニューラルネットによる演算を行い適正な被制御対象量を出力制御する。
【0053】また,上記のように自動補正を実行する以外に,オペレータや専門家の判断に基づいて被制御量の調整を実行させる。このとき製品の一連の状態量や被制御量を判り易い(感覚的な)表現(例えば,画像をクッキリする,薄い/濃い)で操作表示部101に表示して,複雑な調整作業を1つの設定の中に予め定められた関連する調整して盛り込むことにより簡単にできるようにする。なお,前記調整量(被制御量)は以前の学習によって求められた値が入力される。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように,本発明による画像形成装置によれば,被制御量,被制御量に関与する状態量,操作量,及び演算データを格納するデータ格納手段と,ニューラルネットワークを実行する制御用プログラムを格納するプログラム格納手段と,状態量を入力とし,且つ,被制御量を教師信号としてプログラム格納手段の制御プログラムに基づいてニューロ制御を実行し,最終演算値を被制御量の出力値を決定する信号として出力する演算処理手段を具備するため,画像プロセスの主要因が変動しても,学習制御によって安定した画像が得られる画像プロセス制御が実現し,画像品質の信頼性が向上する。
【0055】また,本発明による画像形成装置によれば,状態量の推移及び(或いは)該状態量に対する被制御量の調整推移及び(或いは)使用特性を学習し,予め設定した期間に達したときに,或いは(及び),状態量の正常範囲(無調整の範囲)を外れたときに自動補正或いは補正表示を実行するため,画質の安定化を自動的に,或いはオペレータにより簡単に調整操作を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
【図2】図1に示した制御系を複写機に適用した場合の概略構成を示す説明図である。
【図3】本発明によるニューラルネットワークの基本構成を示す説明図である。
【図4】本発明によるニューラルネットワークを構成するi番目のユニット例を示す説明図である。
【図5】本発明によるネットワーク学習の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明によるネットワーク学習に基づいて出力電圧制御を実行するフローチャートである。
【図7】本発明による自動調整モードの動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
101 操作表示部 102 センサ部
103 制御対象部 106 I/Oポート
107 CPU 108 制御ソフト記憶部(ROM)
109 データ記憶部(RAM) 206 コロナワイヤ用高圧トランス
208 グリッド用高圧トランス 210 バイアス用高圧トランス
215 転写用高圧トランス 222 露光ランプ
223 AC制御板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像形成装置に配設される制御対象の被制御量を検知する被制御量検知手段と,前記被制御量検知手段が検知する被制御量に関与する状態量を検知する状態量検知手段と,前記被制御量を制御するための操作量を入力する操作量入力手段と,前記被制御量,前記状態量,前記操作量及び演算データを格納するデータ格納手段と,前記被制御量を制御する制御用プログラムを格納するプログラム格納手段と,前記制御用プログラムに基づいてニューロ制御を実行し,得られた出力値を2進数表示することにより信号の長さを決め,前記被制御量を制御する演算処理手段とを具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】 前記状態量を帯電チャージャ用高圧電源の出力値,帯電グリッド用電源の出力値及び暗部パターン電位,露光ランプ電圧値及び明部パターン電位,レーザ出力値,現像バイアス値,トナー濃度,転写用高圧電源の出力値,定着温度,感光体回転時間及び感光体残留電位,機内温湿度,及び給紙搬送速度のうちの1つ以上としたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】 前記被制御量を露光ランプ電圧値,グリッド電源出力値,現像バイアス値,レーザ出力値,トナー補給時間,転写用高圧電源の出力値,定着温度,及び給紙搬送速度のうちの1つ以上としたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】 前記演算処理手段による出力信号は,パルス幅変調信号,トリガー信号,或いは,ON/OFF時間信号であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】 前記ニューロ制御(学習制御)は,誤差逆伝播学習に基づいて実行することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】 前記演算処理手段は,前記状態量の推移及び(或いは)該状態量に対する前記被制御量の調整推移及び(或いは)使用特性を学習し,予め設定した期間に達したときに,自動補正或いは補正表示を実行することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】 前記演算処理手段は,前記状態量の推移及び(或いは)該状態量に対する前記被制御量の調整推移及び(或いは)使用特性を学習し,状態量の正常範囲を外れたときに,自動補正或いは補正表示を実行することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】 前記演算処理手段は,前記状態量の現状値を表示手段に表示することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項9】 前記演算処理手段は,前記状態量及び(或いは)前記被制御量を感覚的に表示手段に表示し,該表示された被制御量を自動調整することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平5−333649
【公開日】平成5年(1993)12月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−160199
【出願日】平成4年(1992)5月27日
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)