説明

画像投射装置

【課題】画像投射装置において、吸い込まれた塵埃の画像形成素子や他の光学素子への付着を回避でき、かつ高い冷却効率が得られるようにする。
【解決手段】画像投射装置は、塵埃除去フィルタ36を備えた吸気口21aを有する筐体21と、該吸気口を通じて筐体内に空気を吸い込むファン12と、該吸気口から吸い込まれた空気を、画像形成素子61を包含する空間に導くダクト13bと、該吸気口とダクトとの間に設けられた風洞室13aとを有する。風洞室とダクトとの接続部13cにおける空気のダクトへの流入方向Aに直交する方向Bでの風洞室の断面積は、該接続部の断面積よりも大きく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶プロジェクタ等の画像投射装置に関し、さらに詳しくは装置内部を空気により冷却する冷却構造を有する画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像投射装置の冷却構造としては、水冷方式やペルチェ素子を使用する方法があるが、これらの方法に比べて安価に構成できるファンを用いた空冷方式を採用するものが多い。
【0003】
ただし、空冷方式では、ファンの吸い込み力によって外気とともに装置外部の塵埃も装置内に吸い込まれ、液晶パネル(画像形成素子)や他の光学素子の表面に付着し、投射画像に写り込んでしまうおそれがある。一般に、装置の外気吸い込み口には塵埃除去フィルタが設けられるが、吸い込まれる空気の流速が速いと、塵埃が塵埃除去フィルタを通過して装置内部に侵入する。
【0004】
特許文献1には、外部からの塵埃の侵入を防止するために、装置内部で空気を循環させることで液晶パネル等の発熱体を冷却する方法が開示されている。
【特許文献1】特許第3490024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1にて開示された冷却方法では、装置内部で循環する空気が継続的に発熱体から熱を奪うため、時間と共に循環空気の温度が上昇し、十分な冷却効果が得られなくなる。この場合、ファンの回転数を上げることで冷却効果を改善し得るが、ファンの回転数を上げると装置から発生する騒音が増加するため、好ましくない。
【0006】
本発明は、吸い込まれた塵埃の画像形成素子や他の光学素子への付着を回避でき、かつ高い冷却効率が得られるようにした画像投射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての画像投射装置は、塵埃除去フィルタを備えた吸気口を有する筐体と、該吸気口を通じて筐体内に空気を吸い込むファンと、該吸気口から吸い込まれた空気を、画像形成素子を包含する空間に導くダクトと、該吸気口とダクトとの間に設けられた風洞室とを有する。そして、風洞室とダクトとの接続部における空気のダクトへの流入方向に直交する方向での風洞室の断面積が、該接続部の断面積よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の一側面としての画像投射装置は、塵埃除去フィルタを備えた吸気口を有する筐体と、該吸気口を通じて筐体内に空気を吸い込むファンと、該吸気口から吸い込まれた空気を、画像形成素子を包含する空間に導くダクトと、該吸気口とダクトとの間に設けられ、該吸気口からの空気の一部の流速を低下させて該吸気口からの空気の流速を均一化する抵抗部とを有することを特徴とする。
【0009】
なお、上記画像投射装置と、該画像投射装置に画像情報を供給する画像供給装置とを有する画像表示システムも本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸気口とダクトとの間に風洞室を設けることで、吸気口から吸い込まれる空気の流速を、ダクト内での流速に比べて低くすることができる。これにより、塵埃除去フィルタを通過する塵埃を低減し、さらに塵埃除去フィルタを通過した塵埃を風洞室内に留めることができる。したがって、ダクトを通じて画像形成素子を包含する空間に侵入する塵埃を少なくすることができる。
【0011】
また、本発明によれば、吸気口とダクトとの間に抵抗部を設けることで、該抵抗部がない場合に吸気口を通って高速で流入する一部の空気の流速を低下させ、吸気口全体から吸い込まれる空気の流速を低くする(流速分布を均一化)することができる。これにより、塵埃除去フィルタを通過する塵埃を低減し、ダクトを通じて画像形成素子を包含する空間に侵入する塵埃を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
図1には、本発明の実施例1である液晶プロジェクタ(画像投射装置)の構成を示している。
【0014】
この図において、1は光源ランプ(以下、単にランプという)であり、本実施例では、高圧水銀放電ランプが用いられている。ただし、光源ランプ1として、高圧水銀放電ランプ以外の放電型ランプ(例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ)を用いてもよい。
【0015】
2はランプ1を保持するランプホルダ、3は防爆ガラス、4はガラス押えである。
【0016】
αはランプ1からの光束を均一な明るさ分布を有する平行光束に変換する照明光学系である。βは照明光学系αからの光を色分解して、RGBの3色用の反射型液晶パネル(画像形成素子:図1には示さず)に導き、さらに該液晶パネルからの光を色合成する色分解合成光学系である。
【0017】
5は色分解合成光学系βからの光(画像)を図示しないスクリーン(被投射面)に投射する投射レンズ鏡筒である。投射レンズ鏡筒5内には、投射光学系が収納されている。
【0018】
6はランプ1、照明光学系α及び色分解合成光学系βを収納するとともに、投射レンズ鏡筒5が固定される光学ボックスである。光学ボックス6は、後述する反射型液晶パネル等の光学素子を包含する空間を形成する。
【0019】
7は光学ボックス6内に照明光学系α及び色分解合成光学系βを収納した状態で蓋をする光学ボックス蓋である。
【0020】
8は商用電源から各基板へのDC電源を作り出すPFC電源ユニット、9は電源フィルタである。10はPFC電源ユニット8とともに動作してランプ1を点灯駆動するバラスト電源ユニットである。
【0021】
11はPFC電源ユニット8からの電力により液晶パネルの駆動とランプ1の点灯制御を行う制御基板である。
【0022】
12は後述する下部外装ケース21の吸気口21aから空気を吸い込むことで、色分解合成光学系β内の液晶パネルや偏光板等の光学素子を冷却するための光学系冷却ファンである。13は光学系冷却ファン12からの風を、色分解合成光学系β内の光学素子に導く第1RGBダクトである。
【0023】
14はランプ1に対して吹き付け風を送り、ランプ1を冷却するランプ冷却ファンである。15はランプ冷却ファン14を保持しつつ、冷却風をランプ1に導く第1ランプダクトである。16はランプ冷却ファン14を保持して、第1ランプダクト15とともにダクトを構成する第2ランプダクトである。
【0024】
17は下部外装ケース21に設けられた吸気口21bから空気を吸い込み、PFC電源ユニット8とバラスト電源ユニット10内に風を流通させることで、これらを冷却するための電源冷却ファンである。18は排気ファンであり、ランプ冷却ファン14からランプ1に送られてこれを冷却した後の熱風を、後述する第2側板B24に形成された排気口から排出する。
【0025】
下部外装ケース21は、ランプ1、光学ボックス6、PFC電源ユニット8、バラスト電源ユニット10及び制御基板11等を収納する。
【0026】
22は下部外装ケース21に光学ボックス6等を収納した状態で蓋をするための上部外装ケースである。
【0027】
23は第1側板であり、第2側板24とともに外装ケース21,22により形成される側面開口を閉じる。下部外装ケース21には、上述した吸気口21a,21bが形成されており、第2側板24には上述した排気口が形成されている。下部外装ケース21、上部外装ケース22、第1側板23及び第2側板24によって、該プロジェクタの筐体が構成される。
【0028】
25は各種信号を取り込むためのコネクタが搭載されたインターフェース(IF)基板であり、26は第1側板23の内側に取り付けられたIF補強板である。
【0029】
27はランプ1からの排気熱を排気ファン18まで導き、筐体内に排気風を拡散させないようにするための排気ダクトである。排気ダクト27は、ランプ1からの光が装置の外部に漏れないようにするための遮光機能を有するランプ排気ルーバー19,20を内部に保持する。
【0030】
28はランプ蓋である。ランプ蓋28は、下部外装ケース21の底面に着脱可能に配置され、不図示のビスにより固定される。また、29はセット調整脚である。セット調整脚29は、下部外装ケース21に固定されており、その脚部29aの高さを調整可能となっている。脚部29aの高さ調整により、プロジェクタの傾斜角度を調整できる。
【0031】
30は下部外装ケース21の吸気口21aに取り付けられる塵埃除去フィルタ(図7及び図8中の36参照)を保持するRGB吸気プレートである。
【0032】
31は色分解合成光学系βを保持するプリズムベースである。32は色分解合成光学系β内の光学素子と液晶パネルを冷却するために、光学系冷却ファン12からの冷却風を導くダクト形状部を有するボックスサイドカバーである。33はボックスサイドカバー32と合わさってダクトを形成する第2RGBダクトである。
【0033】
34は色分解合成光学系β内に配置される液晶パネルから延びたフレキシブル基板が接続され、制御基板11に接続されるRGB基板である。
【0034】
次に、前述したランプ1、照明光学系α、色分解合成光学系β及び投射レンズ鏡筒5により構成される光学系について、図2を用いて説明する。
【0035】
図2において、(A)は光学系の水平断面を、(B)は垂直断面をそれぞれ示す。
【0036】
同図において、41は連続スペクトルで白色光を発光する放電発光管(以下、単に発光管という)である。42は発光管41からの光を所定の方向に集光する凹面鏡を有するリフレクタである。発光管41とリフレクタ42により光源ランプ1が構成される。
【0037】
43aは図2(A)に示す水平方向において屈折力を有するシリンドリカルレンズセルを複数配列した第1シリンダアレイである。43bは第1シリンダアレイ43aの個々のレンズセルに対応したシリンドリカルレンズセルを複数有する第2シリンダアレイである。44は紫外線吸収フィルタ、45は無偏光光を所定の偏光光に変換する偏光変換素子である。
【0038】
46は図2(B)に示す垂直方向において屈折力を有するシリンドリカルレンズで構成されたフロントコンプレッサである。47はランプ1からの光軸を、ほぼ90度(より詳しくは88度)折り曲げるための反射ミラーである。
【0039】
43cは垂直方向において屈折力を有するシリンドリカルレンズセルを複数配列した第3シリンダアレイである。43dは第3シリンダアレイ43cの個々のレンズセルに対応したシリンドリカルレンズアレイを複数有する第4シリンダアレイである。
【0040】
50は色座標を所定値に調整するために特定波長域の色をランプ1に戻すためのカラーフィルタである。48はコンデンサーレンズである。49は垂直方向において屈折力を有するシリンドリカルレンズで構成されたリアコンプレッサである。以上により、照明光学系αが構成される。
【0041】
58は青(B:例えば430〜495nm)と赤(R:例えば590〜650nm)の波長領域の光を反射し、緑(G:例えば505〜580nm)の波長領域の光を透過するダイクロイックミラーである。59は透明基板に偏光素子を貼り付けたG用の入射側偏光板であり、P偏光光のみを透過する。60は多層膜により構成された偏光分離面においてP偏光光を透過し、S偏光光を反射する第1偏光ビームスプリッタである。
【0042】
61R,61G,61Bはそれぞれ、入射した光を反射するとともに画像変調する光変調素子(若しくは画像形成素子)としての赤用反射型液晶パネル、緑用反射型液晶パネル及び青用反射型液晶パネルである。62R,62G,62Bはそれぞれ、赤用1/4波長板、緑用1/4波長板及び青用1/4波長板である。
【0043】
64aはR光の色純度を高めるためにオレンジ光をランプ1に戻すトリミングフィルタである。64bは透明基板に偏光素子を貼り付けたRB用入射側偏光板であり、P偏光のみを透過する。
【0044】
65はR光の偏光方向を90度変換し、B光の偏光方向は変換しない色選択性位相差板である。66は偏光分離面においてP偏光を透過し、S偏光を反射する第2偏光ビームスプリッタである。
【0045】
68BはB用射出側偏光板(偏光素子)であり、B光のうちS偏光成分のみを整流する。68GはG光のうちS偏光成分のみを透過させるG用出側偏光板である。69はR光及びB光を透過し、G光を反射するダイクロイックプリズムである。
【0046】
以上のダイクロイックミラー58〜ダイクロイックプリズム69により、色分解合成光学系βが構成される。
【0047】
本実施例において、偏光変換素子45はP偏光をS偏光に変換するが、ここでいうP偏光とS偏光は、偏光変換素子45における光の偏光方向を基準として述べている。一方、ダイクロイックミラー58に入射する光は、第1及び第2偏光ビームスプリッタ60,66での偏光方向を基準として考え、P偏光光であるとする。すなわち、本実施例では、偏光変換素子45から射出された光をS偏光光とするが、同じS偏光光をダイクロイックミラー58に入射する場合はP偏光光として定義する。
【0048】
次に、光学的な作用について説明する。発光管41から発した光はリフレクタ42により所定の方向に集光される。リフレクタ42は放物面形状の凹面鏡を有し、放物面の焦点位置からの光は該放物面の対称軸に平行な光束となる。但し、発光管41からの光源は理想的な点光源ではなく、有限の大きさを有しているので、集光する光束には放物面の対称軸に平行でない光の成分も多く含まれている。これらの光束は、第1シリンダアレイ43aに入射する。第1シリンダアレイ43aに入射した光束は、シリンダレンズセルの数に応じた複数の光束に分割されて集光され、垂直方向に並ぶ帯状の複数の光束となる。そして、これら複数の分割光束は、紫外線吸収フィルタ44及び第2シリンダアレイ43bを経て、複数の光源像を偏光変換素子45の近傍に形成する。
【0049】
偏光変換素子45は、偏光分離面と反射面と1/2波長板とを有する。複数の光束は、それぞれの列に対応した偏光分離面に入射し、これを透過するP偏光成分とここで反射するS偏光成分とに分割される。反射されたS偏光成分は反射面で反射し、P偏光成分と同じ方向に射出する。一方、偏光分離面を透過したP偏光成分は、1/2波長板を透過してS偏光成分と同じ偏光成分に変換される。こうして、同じ偏光方向を有する複数の光束が射出する。
【0050】
偏光変換された複数の光束は、偏光変換素子45から射出した後、フロントコンプレッサ46で圧縮され、反射ミラー47によって88度反射され、第3シリンダアレイ43cに入射する。
【0051】
第3シリンダアレイ43cに入射した光束は、シリンダレンズセルの数に応じた複数の光束に分割されて集光され、水平方向に並ぶ帯状の複数の光束となる。該複数の分割光束は、第4シリンダアレイ43d及びコンデンサーレンズ48を介してリアコンプレッサ49に入射する。
【0052】
フロントコンプレッサ46、コンデンサーレンズ48及びリアコンプレッサ49の光学作用によって、複数の光束によって形成される矩形像は互いに重なり合い、矩形の均一な明るさの照明エリアを形成する。この照明エリアに、反射型液晶パネル61R,61G,61Bが配置される。
【0053】
偏光変換素子45によってS偏光とされた光は、ダイクロイックミラー58に入射する。以下、ダイクロイックミラー58を透過したG光の光路について説明する。
【0054】
ダイクロイックミラー58を透過したG光は、入射側偏光板59に入射する。G光はダイクロイックミラー58によって分解された後もP偏光(偏光変換素子45を基準とする場合はS偏光)となっている。そして、G光は入射側偏光板59から射出した後、第1偏光ビームスプリッタ60に対してP偏光として入射し、その偏光分離面を透過してG用反射型液晶パネル61Gへと至る。
【0055】
ここで、該プロジェクタのIF基板25には、パーソナルコンピュータ、DVDプレーヤ、テレビチューナ等の画像供給装置80が接続されている。制御基板11は、画像供給装置80から入力された画像情報に基づいて反射型液晶パネル61R,61G,61Bを駆動し、これらに各色用の原画を形成させる。これにより、各反射型液晶パネルに入射した光は、反射されるとともに原画に応じて変調(画像変調)される。画像供給装置80とプロジェクタとにより画像表示システムが構成される。
【0056】
G用反射型液晶パネル61Gにおいては、G光が画像変調されて反射される。画像変調されたG光のうちP偏光成分は、再び第1偏光ビームスプリッタ60の偏光分離面を透過して光源側に戻され、投射光から除去される。一方、画像変調されたG光のうちS偏光成分は、第1偏光ビームスプリッタ60の偏光分離面で反射され、投射光としてダイクロイックプリズム69に向かう。
【0057】
このとき、すべての偏光成分をP偏光に変換した状態(黒を表示した状態)において、第1偏光ビームスプリッタ60とG用反射型液晶パネル61Gとの間に設けられた1/4波長板62Gの遅相軸を所定の方向に調整する。これにより、第1偏光ビームスプリッタ60とG用反射型液晶パネル61Gで発生する偏光状態の乱れの影響を小さく抑えることができる。
【0058】
第1偏光ビームスプリッタ60から射出したG光は、ダイクロイックプリズム69に対してS偏光として入射し、該ダイクロイックプリズム69のダイクロイック膜面で反射して投射レンズ鏡筒5へと至る。
【0059】
一方、ダイクロイックミラー58で反射したR光とB光は、トリミングフィルタ64aに入射する。R光とB光はダイクロイックミラー58によって分解された後もP偏光となっている。そして、R光とB光は、トリミングフィルタ64aでオレンジ光成分がカットされた後、入射側偏光板64bを透過し、色選択性位相差板65に入射する。
【0060】
色選択性位相差板65は、R光の偏光方向のみを90度回転させる作用を有し、これによりR光はS偏光として、B光はP偏光として第2偏光ビームスプリッタ66に入射する。
【0061】
S偏光として第2偏光ビームスプリッタ66に入射したR光は、該第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射され、R用反射型液晶パネル61Rへと至る。また、P偏光として第2偏光ビームスプリッタ66に入射したB光は、該第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過してB用反射型液晶パネル61Bへと至る。
【0062】
R用反射型液晶パネル61Rに入射したR光は、画像変調されて反射される。画像変調されたR光のうちS偏光成分は、再び第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射されて光源側に戻され、投射光から除去される。一方、画像変調されたR光のうちP偏光成分は、第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過して、投射光としてダイクロイックプリズム69に向かう。
【0063】
また、B用反射型液晶パネル61Bに入射したB光は、画像変調されて反射される。画像変調されたB光のうちP偏光成分は、再び第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過して光源側に戻され、投射光から除去される。一方、画像変調されたB光のうちS偏光成分は、第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射して、投射光としてダイクロイックプリズム69に向かう。
【0064】
このとき、第2偏光ビームスプリッタ66とR用,B用反射型液晶パネル61R,61Bとの間に設けられた1/4波長板62R,62Bの遅相軸を調整することにより、G光の場合と同じように、R,B光それぞれの黒表示状態での調整を行うことができる。
【0065】
こうして1つの光束に合成されて第2偏光ビームスプリッタ66から射出したR光とB光は、射出側偏光板68Bで検光されてダイクロイックプリズム69に入射する。また、R光はP偏光のまま射出側偏光板68Bを透過して、ダイクロイックプリズム69に入射する。
【0066】
射出側偏光板68Bで検光されることにより、B光は、該B光が第2偏光ビームスプリッタ66、B用反射型液晶パネル61B及び1/4波長板62Bを通ることによって生じた無効な成分がカットされた光となる。
【0067】
そして、ダイクロイックプリズム69に入射したR光とB光は、ダイクロイック膜面を透過して、該ダイクロイック膜面にて反射したG光と合成されて投射レンズ5に至る。
【0068】
そして、合成されたR,G,B光は、投射レンズ5によってスクリーンなどの被投射面に拡大投影される。
【0069】
以上説明した光路は、反射型液晶パネルが白表示状態の場合である。以下では、反射型液晶パネルが黒表示状態の場合での光路について説明する。
【0070】
まず、G光の光路について説明する。ダイクロイックミラー58を透過したG光のP偏光光は、入射側偏光板59に入射し、その後第1偏光ビームスプリッタ60に入射してその偏光分離面で透過され、G用反射型液晶パネル61Gへと至る。しかし、反射型液晶パネル61Gが黒表示状態であるため、G光は画像変調されずに反射される。このため、G用反射型液晶パネル61Gで反射された後も、G光はP偏光光のままである。したがって、G光は再び第1偏光ビームスプリッタ60の偏光分離面を透過し、入射側偏光板59を透過して光源側に戻され、投射光から除去される。
【0071】
次に、R光とB光の光路について説明する。ダイクロイックミラー58で反射したR光とB光のP偏光光は、入射側偏光板64bに入射する。そして、入射側偏光板64bから射出した後、色選択性位相差板65に入射する。色選択性位相差板65は、R光の偏光方向のみを90度回転する作用を持つため、R光はS偏光として、B光はP偏光として第2偏光ビームスプリッタ66に入射する。
【0072】
S偏光として第2偏光ビームスプリッタ66に入射したR光は、その偏光分離面で反射され、R用反射型液晶パネル61Rへと至る。また、P偏光として第2偏光ビームスプリッタ66に入射したB光は、その偏光分離面を透過してB用反射型液晶パネル61Bへと至る。
【0073】
ここで、R用反射型液晶パネル61Rは黒表示状態であるため、R用反射型液晶パネル61Rに入射したR光は画像変調されないまま反射される。このため、R用反射型液晶パネル61Rで反射された後も、R光はS偏光光のままである。したがって、R光は再び第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射し、入射側偏光板64bを通過して光源側に戻され、投射光から除去される。これにより、黒表示がなされる。
【0074】
一方、B用反射型液晶パネル61Bに入射したB光は、B用反射型液晶パネル61Bが黒表示状態であるため、画像変調されないまま反射される。このため、B用反射型液晶パネル61Bで反射された後も、B光はP偏光光のままである。したがって、B光は再び第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過し、色選択性位相差板65によりP偏光に変換され、入射側偏光板64bを透過して、光源側に戻され、投射光から除去される。
【0075】
次に、図3から図5を用いて、色分解合成光学系βの周辺の構成について説明する。なお、以下の説明では、反射型液晶パネル61R,61G,61Bに61を、1/4波長板62R,62G,62Bに62を付す。
【0076】
図3には、色分解合成光学系βにおけるR光用、G光用及びB光用の反射型液晶パネル61の相対的な位置関係を示している。図3において、プリズムベース31は、前述したように色分解合成光学系βを保持する。70R,70G,70Bはそれぞれ、R光用、G光用及びB光用の反射型液晶パネル61(図4参照)を保持するヒートシンクであり、73R,73G,73BはR光用、G光用及びB光用の1/4波長板62(図4参照)を保持する1/4波長板ホルダである。
【0077】
図4には、RGBの3色光に共通する反射型液晶パネル61の周辺の構成を分解して示している。また、図5には、図4に示した部品の組み立て状態を示している。
【0078】
これらの図において、70は前述したヒートシンク(70R,70G,70B)であり、73は1/4波長板ホルダ(73R,73G,73B)である。
【0079】
71はパネルマスクであり、72は反射型液晶パネル61の光入出射面に塵埃が付着しないように該光入出射面の周囲を覆うゴムシールドである。
【0080】
図5の状態において、反射型液晶パネル61の背面は、ヒートシンク70で覆われる。また、反射型液晶パネル61の側面はパネルマスク71の側面部によって取り囲まれる。さらに、反射型液晶パネル61の光入出射面は、1/4波長板62と1/4波長板ホルダ73によって覆われ、残った隙間がゴムシールド72により取り囲まれる。
【0081】
このような構成によれば、1/4波長板62と反射型液晶パネル61との間に塵埃の侵入を許さないように密閉された空間を形成することが可能である。このため、高い防塵性能を得ることができる。ただし、その反面、1/4波長板62及び反射型液晶パネル61の放熱性が低下する。
【0082】
特に、反射型液晶パネル61内の液晶及びラビング膜と有機物であるポリカーボネート材料により製作される1/4波長板62が熱による影響を受けやすい。
【0083】
そこで、本実施例では、光学系冷却ファン12を反射型液晶パネル61と1/4波長板62の近辺に設けている。そして、光学系冷却ファン12によって光学ボックス6の内部(反射型液晶パネル61を包含する空間)の空気を吸い込むことで反射型液晶パネル61及び1/4波長板62の冷却を行う。これは、反射型液晶パネル61及び1/4波長板62に冷却風を吹き付ける場合の風速よりも、吸い込みによって反射型液晶パネル61及び1/4波長板62の周囲に発生する冷却風流の風速の方が高く(速く)、それらの冷却に有利だからである。
【0084】
図6から図8を用いて、反射型液晶パネル61及び1/4波長板62の冷却構造について詳しく説明する。
【0085】
図6には、下部外装キャビネット21に光学ボックス6が取り付けられた状態を示す。反射型液晶パネル61と1/4波長板62に近接して、光学系冷却ファン12が設けられている。光学系冷却ファン12は、光学ボックス6に隙間なく取り付けられている。これは、光学系冷却ファン(本実施例では、シロッコファン)12の吸い込み力によって冷却風流を生じさせるためであり、吹き付けに対して吸い込みの場合は冷却対象物までの密閉性により冷却風速に差が生じやすいからである。
【0086】
また、反射型液晶パネル61と1/4波長板62等を含む色分解合成光学系βを包含する光学ボックス6内に外気を導入するために、第1RGBダクト13とボックスサイドカバー32が下部外装キャビネット21に装着されている。さらに、第1RGBダクト13とボックスサイドカバー32の図中手前側の開放部を塞ぐように、第2RGBダクト33が第1RGBダクト13とボックスサイドカバー32に装着されている。
【0087】
図7には、第1RGBダクト13とボックスサイドカバー32によって形成される冷却風路を、第2RGBダクト33を除いた状態で示している。さらに、図7の右下の図には、図7中のC部を投射レンズ鏡筒5の光軸方向から見た断面を模式的に示している。該右下の図において、36は前述した塵埃除去フィルタであり、下部外装キャビネット21の吸気口21aの内側を覆うように吸気口21aに備えられている。
【0088】
図7において、光学系冷却ファン12が駆動されると、光学ボックス6から空気が吸い出されて光学ボックス6内が低圧となり、ボックスサイドカバー32に形成された小断面積の開口部32G,32B,32Rから光学ボックス6内に空気が吸い込まれる。これにより、ボックスサイドカバー32と第2RGBダクト33により形成された空間(以下、ダクトという)13bが低圧となる。さらに、第1及び第2RGBダクト13,33により形成された空間(以下、風洞室という)13aも低圧となって、吸気口21a(塵埃除去フィルタ36)を通じて外気(空気)が取り込まれる。
【0089】
このような吸い込みによって吸気口21aから取り込まれた空気(図7に太矢印で示す)は、風洞室13aを通ってダクト13bに流入する。さらに、空気はダクト13bを通って、開口部32G,32B,32Rから光学ボックス6内に流入し、反射型液晶パネル61や1/4波長板62等の光学素子を冷却した後、光学系冷却ファン12によって吸い込まれて筐体の外部に排出される。
【0090】
図8には、吸気口21aとダクト13bの間に形成された風洞室13aとダクト13bとの断面積の関係を模式的に示している。図中の13cは、風洞室13aとダクト13bとの接続部(例えば、第1RGBダクト13とボックスサイドカバー32との接続部)を示す。
【0091】
吸気口21aの開口面積は、十分な量の外気を取り込めるように大きく設定されている。このため、吸気口21aでの外気の流速は高くならず、多くの塵埃が吸い込まれることはない。吸気口21aから吸い込まれた塵埃のほとんどは、塵埃除去フィルタ36によって除去される。ただし、塵埃除去フィルタ36を通過する塵埃も存在する。
【0092】
風洞室13aは、吸気口21a及び塵埃除去フィルタ36に隣接して設けられ、大きな空間を有する。具体的には、風洞室13aとダクト13bとの接続部13cにおける空気のダクト13bへの流入方向(矢印A方向)に直交する方向(矢印B方向:以下、B方向という)での風洞室13aの断面積は、該接続部13cの断面積よりも大きく設定されている。このように大空間を有する風洞室13aに空気が流入すると、ここでの流速はさらに低下する。
【0093】
これは、吸気口21aは、見かけ上は大きな開口面積(断面積)を有するが、塵埃除去フィルタ36を保持するために吸気口21aを横切る複数のリブが設けられているため、実際の開口面積は小さくなるためである。これに比べて、風洞室13aは、単純な大空間であるので、B方向におけける実効断面積が大きく、これにより吸気口21a(塵埃除去フィルタ36)からの空気の流速を低下させることができる。
【0094】
風洞室13aにて流速が低下した空気は、次にダクト13bに流入する。ダクト13bは、B方向の断面積が小さく設定されることで、所定の領域に空気を導く風路を形成する。ダクト13bは、そのB方向の断面積を減少させながら開口部32G,32B,32Rに接続される。図7に示すように、ダクト13bにおける開口部32G,32B,32Rの手前には、該開口部32G,32B,32Rを通じて光学ボックス6内に空気を導入するための折れ曲がり部13dが設けられている。
【0095】
なお、ダクト13bは、光学ボックス6に対して、開口部32G,32B,32Rを通じて、反射型液晶パネル61の長辺方向から接続されている。
【0096】
開口部32G,32B,32Rの開口面積(断面積)は、空気抵抗が大きくなり過ぎない程度にできるだけ小さく設定されている。これは、冷却対象物に触れる空気の流速ができるだけ高い方が、冷却能力が向上するからである。冷却風としてダクト13bを流れる空気が光学ボックス6内に取り込まれた後でも高い流速を維持するために、開口部32G,32B,32Rの開口面積を小さくした方が有利である。
【0097】
このように、本実施例では、外気取り込み部である吸気口21aとダクト13bとの間に大空間を有する風洞室13aを設けることで、吸気口21a及び塵埃除去フィルタ36を通過して流入した空気の流速を一旦低下させる。これにより、塵埃除去フィルタ36を通過した塵埃を風洞室13b内で失速させてそこに留め、ダクト13bに侵入させないようにすることができる。
【0098】
そして、風洞室13aから該風洞室13aよりも断面積が小さいダクト13bに流入した空気は、その流速を速めて開口部32G,32B,32Rを通じて光学ボックス6内に流入する。光学ボックス6内に流入した空気は、反射型液晶パネル61や1/4波長板62等の光学素子の周囲を高速で流れてこれらを効率良く冷却する。
【0099】
風洞室13a内で失速した塵埃は、該風洞室13aの底面に向かって落ちる。このため、図8に示すように、風洞室13aの底面に、粘着剤や帯電シート等の塵埃捕獲部材を設けることで、塵埃がダクト13bに侵入することをより確実に防止することが好ましい。
【0100】
以上のように、吸気口21aを通って筐体内に入り込んだ塵埃は、まず塵埃除去フィルタ36により1次捕獲され、風洞室13aにて失速して落下することで2次捕獲される。さらに、ダクト13b内に侵入した塵埃は、ダクト13bにおける開口部32R,32G,32B付近に設けられた折れ曲がり部13dの壁面に衝突し、壁面と塵埃間に作用する静電気力や分子間力によって壁面に引き付けられて付着することで3次捕獲される。このため、光学ボックス6内に塵埃が侵入したとしても、その塵埃はごく小さく、かつわずかな量の塵埃であるので、光学ボックス6内を高い流速で流れる空気ととともに光学系冷却ファン12により光学ボックス6の外部に高い確率で排出される。
【0101】
また、このような小さな塵埃が仮に1/4波長板62に付着したとしても、1/4波長板62に対して投射光学系が十分デフォーカス状態にあることからも、スクリーン上での投射画像内に塵埃の像が写り込むことはない。
【0102】
次に、本実施例の設計例について説明する。吸気口21aの実効断面積は、塵埃除去フィルタ36を保持するための複数のリブが存在するため小さく、吸気口21aから流入する空気の流速を0.6m/s程度とする。この流速だと、吸気口21aの近くに浮遊する塵埃のみが吸気口21aから空気とともに取り込まれる。
【0103】
空気が塵埃除去フィルタ36を通過するときの流速は、塵埃除去フィルタ36の実効断面積が吸気口21aの実効断面積よりも30%ほど減少するものとして、1.0m/s程度と推測する。
【0104】
このような条件のもとでは、断面積が大きい風洞室13aでの空気の流速は、0.3m/s以下とするとよい。これは、無風状態に近く、塵埃がダクト13bまで流される可能性は極めて低い。
【0105】
ダクト13aは、風洞室13aの最大断面積の半分以下とするとよい。言い換えれば、風洞室13aのB方向での最大の断面積を、ダクト13bと風洞室13aとの接続部13cにおけるB方向での断面積の2倍以上とするとよい。これにより、ダクト13b内での空気の流速は、0.7〜1.0m/sになる。
【0106】
ダクト13bに入り込んだ塵埃は、該ダクト13aの折れ曲がり部を通過するときに壁面に衝突し、壁面と塵埃間に作用する静電気力や分子間力によって壁面に付着する。0.7〜1.0m/s程度の流速ではこれを引き剥がすことは難しく、この結果、光学ボックス6内に進入する塵埃はほとんどなくなると考えられる。
【0107】
ダクト13bを通過して光学ボックス6内に入った空気の流速は、2.0〜2.5m/sといったかなりの高速とするのがよい。この場合、開口部32G,32B,32Rの合計断面積を、風洞室13aの最大断面積の1/5程度まで狭く設定すればよい。
【0108】
光学ボックス6内での高速の空気流は、反射型液晶パネル61と1/4波長板62等の光学素子を効率良く冷却するだけでなく、光学ボックス6内に侵入した塵埃を強制的に運び去る力を有する。
【0109】
本実施例の場合、特に1/4波長板62の表面に塵埃が付着することが問題となる。しかし、1/4波長板62の表面は平面であり、その近隣に凹凸部を形成しないことで、1/4波長板62の表面を流れる空気を層流状態とし、塵埃が1/4波長板62の表面に付着する可能性を低くしている。1/4波長板62の表面に付着する可能性のある塵埃は、スクリーン上では認識されない0.005mm以下のものとなる。
【0110】
本実施例によれば、吸気口21aとダクト13bとの間に風洞室13aを設けることで、吸気口21aから吸い込まれた空気の流速を、ダクト13b内での流速に比べて低くすることができる。これにより、塵埃除去フィルタ36を通過する塵埃を低減し、さらに塵埃除去フィルタ36を通過した塵埃を風洞室13a内に留めることができる。したがって、ダクト13aを通じて反射型液晶パネル61を包含する空間に侵入する塵埃を少なくすることができる。これにより、高い防塵性能と冷却性能を有するプロジェクタを実現することができる。
【0111】
また、光学系冷却ファン12は、光学ボックス6よりも下流で吸気するため、必然的に筐体の内部に配置されることになり、また外気を取り込む構成であるため、低回転で駆動できる。このため、プロジェクタの低騒音化に有利である。
【実施例2】
【0112】
図9には、本発明の実施例2であるプロジェクタにおける風洞室13aとダクト13bとのB方向での断面積の関係を模式的に示している。本実施例における冷却構造の基本的な構成は、実施例1と同じである。このため、本実施例において実施例1と共通する又は共通する機能を有する構成要素には、実施例1と同符号を付す。
【0113】
本実施例では、吸気口21aが筐体の側面に設けられている。
【0114】
本実施例でも、実施例1と同様に、風洞室13aは、吸気口21a及び塵埃除去フィルタ36に隣接して(吸気口21aとダクト13bとの間に)設けられ、大きな空間を有する。具体的には、風洞室13aとダクト13bとの接続部13cにおける空気のダクト13bへの流入方向(矢印A方向)に直交するB方向での風洞室13aの断面積は、該接続部13cの断面積よりも大きく設定されている。好ましくは、風洞室13aの最大断面積は、接続部13cの断面積2倍以上に設定される。
【0115】
このため、風洞室13aに空気が流入すると、実施例1で説明したように、ここでの流速は吸気口21a及び塵埃除去フィルタ36を通過する空気の流速よりも低下する。したがって、塵埃除去フィルタ36を通過した塵埃の多くを風洞室13a内に留め、ダクト13bに侵入しないようにすることができる。
【0116】
風洞室13aにて流速が低下した空気は、次にダクト13bに流入する。ダクト13bのB方向の断面積は、風洞室13aのB方向の断面積よりも小さいため、ダクト13bに流入した空気の流速は風洞室13a内での流速に比べて高くなる。そして、ダクト13b内の空気は、開口部32G,32B,32R(図には開口部32Bのみを示す)を通じて光学ボックス6内に流入する。ダクト13bには、複数の折れ曲がり部13dが設けられており、ダクト13bに侵入した塵埃を該折れ曲がり部13dの壁面に付着させることができる。
【0117】
光学ボックス6内に流入した空気は、反射型液晶パネル61や1/4波長板62等の光学素子の周囲を高速で流れてこれらを効率良く冷却し、光学系冷却ファン12を通じて光学ボックス6の外部に排出される。
【0118】
このように、吸気口21aを筐体の側面に設けた場合でも、吸気口21aとダクト13bとの間に風洞室13aを設け、空気の流速の低減による防塵効果を得ることができる。
【0119】
本実施例は、実施例1のように、筐体の底面における投射レンズ鏡筒5の下側の位置に吸気口21aを設けたり投射レンズ鏡筒5の側方に上下方向に大きな風洞室13aを設けたりすることが困難なプロジェクタにおいて採用し易い構成である。
【実施例3】
【0120】
図10には、本発明の実施例3であるプロジェクタにおける風洞室13aの形状と、該風洞室13a及びダクト13bのB方向での断面積の関係とを模式的に示している。
【0121】
本実施例において、実施例1と共通する又は共通する機能を有する構成要素には、実施例1と同符号を付す。
【0122】
また、本実施例でも、風洞室13aとダクト13bとの接続部13cにおける空気のダクト13bへの流入方向(矢印A方向)に直交するB方向での風洞室13aの断面積は、該接続部13cの断面積よりも大きく設定されている。好ましくは、風洞室13aの最大断面積は、接続部13cの断面積2倍以上に設定される。
【0123】
吸気口21a及び塵埃除去フィルタ36を通過した空気のうち一部が直接ダクト13bに流れ込むと、その一部の空気は風洞室13aによる流速低減効果を受けないため、高い流速を持つ。そして、これにより、吸気口21aよりも外部に空気が高速で吸気口21aに向かって流れる領域ができてしまい、吸気口21aから侵入する塵埃の量が増加する。
【0124】
このような現象を回避するために、本実施例では、吸気口21a及び塵埃除去フィルタ36を通過する空気の一部の流速を低下させる抵抗部として、風洞室13aに(すなわち、吸気口21aとダクト13bとの間に)、抵抗板13eを設けている。抵抗板13eを設けることで、吸気口21a及び塵埃除去フィルタ36の全体を通る空気の流速を均一化することができる。ここで、均一化とは、完全に同じ(均一)とする場合に限らず、抵抗板13eがない場合に比べて均一に近づけることを意味する。
【0125】
また、抵抗板13eを設けることで、ダクト13bの入り口(接続部13c)は、風洞室13aを挟んで吸気口21aとは反対側に位置することになる。このため、吸気口21a及び塵埃除去フィルタ36を通過した空気のすべてが風洞室13aを通過し、風洞室13aによる流速低減作用を受ける。したがって、塵埃除去フィルタ36を通過した塵埃の多くを風洞室13a内に留め、ダクト13bに侵入しないようにすることができる。
【0126】
抵抗板13eは、吸気口21a及び塵埃除去フィルタ36を通過した空気の一部をガイドして風洞室13aを通過するようにその流れ方向を決定する壁とも言える。
【0127】
風洞室13aにて流速が低下した空気は、次にダクト13bに流入する。ダクト13bのB方向の断面積は、風洞室13aのB方向の断面積よりも小さいため、ダクト13bに流入した空気の流速は風洞室13a内での流速に比べて高くなる。そして、ダクト13b内の空気は、開口部32G,32B,32Rを通じて光学ボックス6内に流入する。ダクト13bには、複数の折れ曲がり部13dが設けられており、ダクト13bに侵入した塵埃を該折れ曲がり部13dの壁面に付着させることができる。
【0128】
光学ボックス6内に流入した空気は、反射型液晶パネル61や1/4波長板62等の光学素子の周囲を高速で流れてこれらを効率良く冷却し、光学系冷却ファン12を通じて光学ボックス6の外部に排出される。
【0129】
本実施例は、実施例1のように、筐体の底面における投射レンズ鏡筒5の下側の位置に吸気口21aを設けたり投射レンズ鏡筒5の側方に上下方向に大きな風洞室13aを設けたりすることが困難なプロジェクタにおいて採用し易い構成である。
【0130】
また、本実施例では、風洞室13aからダクト13bに空気が流れ込んだ直後に最初の折れ曲がり部13dによって空気の流れ方向が変化するため、空気流に対して抵抗になりそうにも見える。しかし、風洞室13aからダクト13bに流れ込んだ直後の空気の流速は低速であるので、流れ方向の変動による抵抗増加の影響は少ない。
【0131】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の実施例1である液晶プロジェクタの分解斜視図。
【図2】実施例1のプロジェクタの光学構成を示す水平及び垂直断面図。
【図3】実施例1のプロジェクタにおけるプリズムユニットを示す斜視図。
【図4】実施例1のプロジェクタにおける液晶パネルの周辺構造を示す分解斜視図。
【図5】上記液晶パネルの周辺構造を示す斜視図。
【図6】実施例1のプロジェクタにおける冷却構造を示す斜視図。
【図7】上記冷却構造を示す斜視図及び部分図。
【図8】上記冷却構造の模式図。
【図9】本発明の実施例2であるプロジェクタにおける冷却構造の模式図。
【図10】本発明の実施例3であるプロジェクタにおける冷却構造の模式図。
【符号の説明】
【0133】
1 光源ランプ
6 光学ボックス
12 光学系冷却ファン
13 第1RGBダクト
13a 風洞室
13b ダクト
13c 接続部
13d 折れ曲がり部
13e 抵抗板
21 下部外装キャビネット
21a 吸気口
32 ボックスサイドカバー
33 第2RGBダクト
36 塵埃除去フィルタ
61,61R,61G,61B 反射型液晶パネル
62,62R,62G,62B 1/4波長板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光により原画を形成する画像形成素子を照明し、該画像形成素子からの光を被投射面に投射する画像投射装置であって、
塵埃除去フィルタを備えた吸気口を有する筐体と、
前記吸気口を通じて前記筐体内に空気を吸い込むファンと、
該吸気口から吸い込まれた空気を、前記画像形成素子を包含する空間に導くダクトと、
前記吸気口と前記ダクトとの間に設けられた風洞室とを有し、
前記風洞室と前記ダクトとの接続部における該ダクトへの空気の流入方向に直交する方向での該風洞室の断面積が、前記接続部の断面積よりも大きいことを特徴とする画像投射装置。
【請求項2】
前記風洞室の断面積は、前記接続部の断面積の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像投射装置。
【請求項3】
前記風洞室に、前記吸気口を通過する空気の一部の流速を低下させて該空気の流速を均一化する抵抗部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像投射装置。
【請求項4】
前記風洞室に、塵埃を捕獲する塵埃捕獲手段が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の画像投射装置。
【請求項5】
前記ダクトは、折れ曲がり部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の画像投射装置。
【請求項6】
前記ダクトは、前記画像形成素子を包含する空間に対して、該画像形成素子の長辺方向から接続されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の画像投射装置。
【請求項7】
光源からの光により原画を形成する画像形成素子を照明し、該画像形成素子からの光を被投射面に投射する画像投射装置であって、
塵埃除去フィルタを備えた吸気口を有する筐体と、
前記吸気口を通じて前記筐体内に空気を吸い込むファンと、
該吸気口から吸い込まれた空気を、前記画像形成素子を包含する空間に導くダクトと、
前記吸気口と前記ダクトとの間に設けられ、前記吸気口を通過する空気の一部の流速を低下させて該空気の流速を均一化する抵抗部とを有することを特徴とする画像投射装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の画像投射装置と、
該画像投射装置に画像情報を供給する画像供給装置とを有することを特徴とする画像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−175404(P2009−175404A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13566(P2008−13566)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】