説明

画像投影装置

【課題】スクリーンに装着した画像投影装置を移動自在として、画像が投影される投影領域を適宜に移動可能とした画像投影装置を提供する。
【解決手段】光源と、この光源から照射された光を用いて画像を投影する投影部とを備え、画像を投影するスクリーンに装着される画像投影装置において、当該画像投影装置の下方から重心位置又はその近傍にかけて、スクリーンの上側縁に係合する凹条部を設ける。光源及び投影部に電力を供給する電源回路を設け、電源回路を凹条部よりもスクリーンの裏面側に配置し、投影部を凹条部よりもスクリーンの表面側に配置する。画像をスクリーンに投影する投影部の反射ミラーを、スクリーンに対して進退自在に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンに画像を拡大投影する画像投影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ装置等から入力された画像データを液晶表示素子に表示し、この液晶表示素子に光を照射してスクリーン上に画像を拡大投影するプロジェクタなどの画像投影装置が知られている。この画像投影装置は、通常、スクリーンの正面前方に設けた机などの台の上面に設置して、スクリーンに向けて画像を投影している。
【0003】
このような画像投影装置の一形態として、ホワイトボードやパーティションなどのように頑丈なフレームを有したスクリーンに画像を投影する画像投影装置において、スクリーンの上側縁に画像投影装置本体を装着して、スクリーンの正面上方からスクリーンに向けて画像を投影する画像投影装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−276199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像投影装置本体をスクリーンの上側縁に装着した場合には、画像投影装置を移動させることができないという問題があった。
【0005】
特に、スクリーンがホワイトボードであった場合には、ホワイトボードに画像を投影するだけでなく、ホワイトボードへの書き込みを行いながら画像を投影したいこともあり、例えばスクリーンの中央に画像を投影するように画像投影装置本体をホワイトボードに装着した際には、書き込みができる領域が限定されることとなって、ホワイトボードを有効に利用できないこととなっていた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、スクリーンに装着した画像投影装置を移動自在として、画像が投影される投影領域を適宜に移動可能とした画像投影装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の画像投影装置は、光源と、この光源から照射された光を用いて画像を投影する投影部とを備え、画像を投影するスクリーンに装着される画像投影装置において、当該画像投影装置の下方から重心位置又はその近傍にかけて、スクリーンの上側縁に係合する凹条部を設けた。
【0008】
請求項2に記載の画像投影装置は、請求項1に記載の画像投影装置において、光源及び投影部に電力を供給する電源回路を設け、電源回路を凹条部よりもスクリーンの裏面側に配置し、投影部を凹条部よりもスクリーンの表面側に配置した。
【0009】
請求項3に記載の画像投影装置は、請求項2に記載の画像投影装置において、画像をスクリーンに投影する投影部の反射ミラーを、スクリーンに対して進退自在に設けた。
【0010】
請求項4に記載の画像投影装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像投影装置において、凹条部に、当該画像投影装置をスクリーンの上側縁に沿って移動させる移動手段を設けた。
【0011】
請求項5に記載の画像投影装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像投影装置において、凹条部に、スクリーンを挟持する挟持手段を設けた。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の画像投影装置では、光源と、この光源から照射された光を用いて画像を投影する投影部とを備え、画像を投影するスクリーンに装着される画像投影装置において、当該画像投影装置の下方から重心位置又はその近傍にかけて、スクリーンの上側縁に係合する凹条部を設けたことによって、画像投影装置をスクリーンの上側縁にバランスよく設置できるので、スクリーンの上側縁に沿って画像投影装置を安全に移動させることができる。
【0013】
請求項2に記載の画像投影装置では、請求項1に記載の画像投影装置において、光源及び投影部に電力を供給する電源回路を設け、電源回路を凹条部よりもスクリーンの裏面側に配置し、投影部を凹条部よりもスクリーンの表面側に配置したことによって、画像投影装置のバランスを良好とすることができるとともに、画像投影装置から放出される熱や騒音をスクリーンの裏面側に放出させることができるので、画像投影装置から放出される熱や騒音によって不快感を覚えるおそれを解消できる。
【0014】
請求項3に記載の画像投影装置では、請求項2に記載の画像投影装置において、画像をスクリーンに投影する投影部の反射ミラーを、スクリーンに対して進退自在に設けたことによって、必要に応じて反射ミラーを進出させることによりスクリーンにおける画像のサイズを容易に調整できる。
【0015】
請求項4に記載の画像投影装置では、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像投影装置において、凹条部に、当該画像投影装置をスクリーンの上側縁に沿って移動させる移動手段を設けたことによって、画像投影装置をスクリーンの上側縁に沿って安全にかつスムーズに移動させることができる。
【0016】
請求項5に記載の画像投影装置では、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像投影装置において、凹条部に、スクリーンを挟持する挟持手段を設けたことによって、スクリーンの上側縁に設置した画像投影装置の安定性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の画像投影装置は、図1及び図2に示すように、ホワイトボードWやパーティションなどの十分な強度を有した平板体で構成されるスクリーンSの上側縁に装着して使用する画像投影装置Aである。
【0018】
画像投影装置Aは、図2に示すように、所定形状とした筐体11内に、光源12と、この光源12から照射された光を用いて画像を投影する投影部13を有しており、さらに、筐体11内には、光源12や投影部13に電力を供給する電源回路14、及び各種制御を行う制御部15を設けている。投影部13は、光源12から照射されて、照明光学系16で適宜調整された光が照射されるLCD(Liquid Crystal Display)13aと、このLCD13aを通過した光をスクリーンSに拡大投影する結像光学系13bを備えている
【0019】
特に、筐体11は、底部に上方に向けて窪ませた凹条部10を筐体11の左右方向に延伸させて設けている。すなわち、凹条部10は、筐体11の底部を左右方向に横断しており、この凹条部10をスクリーンSの上側縁に係合させることにより、画像投影装置AをスクリーンSの上側縁に装着可能としている。
【0020】
凹条部10は、画像投影装置Aの重心位置又はその近傍にかけて設けている。したがって、画像投影装置AをスクリーンSの上側縁に装着した際には、画像投影装置Aの荷重をスクリーンSの鉛直方向に沿って加えることができるので、スクリーンSに鉛直方向以外の方向の応力が作用することを抑制して、スクリーンSに破損が生じることを抑制できる。
【0021】
特に、画像投影装置Aでは、重量の比較的大きい投影部13と電源回路14のうち、投影部13を凹条部10よりもスクリーンSの表面側に配置し、電源回路14を凹条部10よりもスクリーンSの裏面側に配置している。したがって、画像投影装置の重心位置を凹条部10内に容易に位置させることができる。なお、必要に応じて、筐体11内にはバラスト17を適宜配置してもよい。
【0022】
このように、投影部13と電源回路14を適正に配置することにより画像投影装置A内に重量の偏りが生じることを抑制し、凹条部10内に重心を位置させることにより、画像投影装置AをスクリーンSの上側縁にバランスよく設置できるとともに、スクリーンSの上側縁に沿って安全に移動させることができる。
【0023】
しかも、電源回路14をスクリーンSの裏面側に配置したことによって、画像投影装置Aの駆動にともなって電源回路14から放出される熱や騒音を、スクリーンSで遮断することができ、熱や騒音によって不快感を覚えるおそれを解消できる。
【0024】
特に、発熱量の大きい光源12もスクリーンSの裏面側に配置し、光源12を冷却するために設けている冷却ファン18を光源12のさらに後方の上方位置に配置することにより、冷却ファン18の稼働量が比較的大きくなっても、冷却ファン18の稼働にともなう騒音を気にならないレベルにまで抑制しやすくすることができる。
【0025】
画像投影装置Aの投影部13には、結像光学系13bによって投影された画像を反射する反射ミラー13cを設けており、結像光学系13bによって画像をスクリーンSの前方方向に一旦投影し、投影方向に配置した反射ミラー13cでスクリーンSに向けて反射投影している。
【0026】
反射ミラー13cは、筐体11に対して進退自在に装着したガイドアーム13dの先端に装着しており、ガイドアーム13dの進出量を調整することにより、スクリーンSに投影した画像のサイズを調整可能としている。
【0027】
すなわち、本発明の画像投影装置Aでは、電源回路14を凹条部10よりもスクリーンSの裏面側に配置していることにより、凹条部10よりもスクリーンSの表面側に配置される投影部13のスクリーンSの表面からの突出量を小さくして、見た目のコンパクト性を向上させることができる一方で、画像のサイズの調整幅が小さくなるおそれがあった。
【0028】
すなわち、スクリーンSの表面からの投影部13の突出量が小さい場合には、スクリーンSに投影する画像をあらかじめ調整しておくことにより所定のサイズの画面をスクリーンSに投影することは可能であるが、投影した画像のサイズを変更した場合に、大きな台形ひずみを生じやすくなるため、画像のサイズの調整幅が小さくなっていた。
【0029】
そこで、結像光学系13bから投影された画像を一旦スクリーンSの前方に投影し、反射ミラー13cでスクリーンSに向けて反射投影するとともに、この反射ミラー13cを筐体11に対して進退自在なガイドアーム13dによって所望の画像のサイズとなる位置に調整可能することにより、台形ひずみなどを生じさせることなく、極めて簡便に画像のサイズを調整可能とすることができ、しかも、調整幅を大きくすることができる。
【0030】
なお、ガイドアーム13dは、適宜の駆動モータなどを用いて遠隔操作で進退自在とするとともに、ガイドアーム13dの進出量に応じて、反射ミラー13cの傾きを任意に調整可能としてもよい。
【0031】
筐体11に設けた凹条部10は、凹条部10の底部となる底板10aと、スクリーンSの表面側と対向状態となる前側板10bと、スクリーンSの裏面側と対向状態となる後側板10cとを有しており、本実施形態では、底板10aには、スクリーンSの上側縁と当接する転動ローラ21を転動自在に設けている。なお、転動ローラ21の回転軸は、スクリーンSと直交する方向としている。
【0032】
したがって、スクリーンSを構成するホワイトボードWには転動ローラ21を介して画像投影装置Aの荷重が作用するので、画像投影装置の荷重をホワイトボードWの鉛直方向に沿って加えることができ、破損の発生を抑制できる。
【0033】
しかも、転動ローラ21をスクリーンSの幅方向に沿って転動させることにより、画像投影装置AをスクリーンSの上側縁に沿ってスムーズに移動させることができる。なお、転動ローラ21は、スクリーンSを構成しているホワイトボードWの上端フレームの幅寸法と同じ寸法の長さを有していることが望ましい。また、転動ローラ21には適宜の駆動ローラを当接させたり、あるいは転動ローラ21の回転軸に駆動モータの出力軸を連動連結したりして駆動可能とすることにより、スクリーンSの上側縁に沿って自走させることもできる。
【0034】
また、転動ローラ21には荷重センサなどを装着しておき、画像投影装置AをスクリーンSの上側縁に装着することにより転動ローラ21に所定の荷重が加わったことを荷重センサで検出した場合に、画像投影装置Aのメインスイッチを自動的にオン状態としてもよい。
【0035】
凹条部10における前側板10bには、スクリーンSの表面に当接させる緩衝体22を設けている。緩衝体22はウレタンなどの弾性体で形成し、前側板10bとスクリーンSとの間を所定の間隔として、前側板10bがスクリーンSに直接的に接触してスクリーンSに損傷が生じることを抑制している。
【0036】
緩衝体22は、スクリーンSを構成しているホワイトボードWの比較的高強度である上端フレームに当接させることが望ましい。なお、緩衝体22のかわりに弾性体で形成したローラを用いた転動ローラを設けてもよい。
【0037】
凹条部10における後側板10cには、スクリーンSの裏面に当接させて、スクリーンSを挟持状態とする当接体23を設けている。
【0038】
図3に拡大して示すように、当接体23は、後側板10cに凹設した収容部24内に配設しており、回転軸を上下方向に向けた当接ローラ23aと、この当接ローラ23aを支持するストッパ23bと、スプリング23cを介してストッパ23bを支持するストッパステー23dとで構成している。
【0039】
当接ローラ23aは、緩衝体22と同様にスクリーンSを構成しているホワイトボードWの比較的高強度である上端フレームに当接させている。当接ローラ23aは、スクリーンSを挟んで緩衝体22と対向状態となることが望ましい。また、当接ローラ23aはローラ部をゴムなどの弾性体で構成していることが望ましい。
【0040】
ストッパ23bは、当接ローラ23aの軸受けであり、さらに、スクリーンSの裏面に近接させて対向させた膨出部25を設けている。この膨出部25は、仮に画像投影装置AがスクリーンSの上側縁上でバランスを崩した際に、膨出部25がスクリーンSと接触することにより画像投影装置Aの脱落を防止する脱落防止体となっている。
【0041】
ストッパステー23dは、前側にはストッパ23bが嵌め入れられる凹部23d-1を有し、図4に示すように、後側には二股状に分岐した左側フレーム23d-2と右側フレーム23d-3とを有しており、この左側フレーム23d-2と右側フレーム23d-3を筐体11の左側面11aと右側面11bに案内されて筐体11の前後方向に進退自在としている。
【0042】
左側フレーム23d-2及び右側フレーム23d-3の後端には、筐体11の後側面11cに枢着された調整ネジ26をそれぞれ螺入しており、調整ネジ26の螺入量によってストッパステー23dの位置を調整可能としている。
【0043】
すなわち、画像投影装置Aの凹条部10をスクリーンSの上側縁に係合させてスクリーンSの上側縁に載設した後、調整ネジ26を回転させてストッパステー23dを前進させ、当接ローラ23aをホワイトボードWの上端フレームに当接させることにより、当接ローラ23aと緩衝体22とでホワイトボードWの上端フレームを挟持して、画像投影装置Aを強固に装着可能としている。
【0044】
スプリング23cは、ストッパステー23dに対してストッパ23bを前方へと付勢しており、当接ローラ23aがホワイトボードWの上端フレームに当接した後、スプリング23cがある程度収縮するまでストッパステー23dを前進させることにより、スプリング23cの付勢力によってホワイトボードWの上端フレームを挟持している。
【0045】
画像投影装置AをスクリーンSに沿って移動させたい場合には、調整ネジ26を逆回転させてストッパステー23dを後退させ、当接ローラ23aと緩衝体22とによるホワイトボードWの上端フレームの挟持状態を緩めることにより、所望の方向に容易に移動させることができる。移動後には、ストッパステー23dを再度前進させて、当接ローラ23aと緩衝体22とによってホワイトボードWの上端フレームを挟持している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る画像投影装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像投影装置の縦断面模式図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図2の要部平面図である。
【符号の説明】
【0047】
W ホワイトボード
S スクリーン
A 画像投影装置
10 凹条部
10a 底板
10b 前側板
10c 後側板
11 筐体
12 光源
13 投影部
13a LCD(Liquid Crystal Display)
13b 結像光学系
13c 反射ミラー
19 ガイドアーム
14 電源回路
15 制御部
16 照明光学系
17 バラスト
18 冷却ファン
21 転動ローラ
22 緩衝体
23 当接体
23a 当接ローラ
23b ストッパ
23c スプリング
23d ストッパステー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、この光源から照射された光を用いて画像を投影する投影部とを備え、前記画像を投影するスクリーンに装着される画像投影装置において、
当該画像投影装置の下方から重心位置又はその近傍にかけて、前記スクリーンの上側縁に係合する凹条部を設けたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
前記光源及び前記投影部に電力を供給する電源回路を設け、
前記電源回路を前記凹条部よりも前記スクリーンの裏面側に配置し、前記投影部を前記凹条部よりも前記スクリーンの表面側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項3】
前記画像を前記スクリーンに投影する前記投影部の反射ミラーを、前記スクリーンに対して進退自在に設けたことを特徴とする請求項2に記載の画像投影装置。
【請求項4】
前記凹条部に、当該画像投影装置を前記スクリーンの上側縁に沿って移動させる移動手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像投影装置。
【請求項5】
凹条部に、前記スクリーンを挟持する挟持手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像投影装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−250253(P2008−250253A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95064(P2007−95064)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】