説明

画像生成装置

【課題】 複雑な形状や色彩を有する画像の重ね合わせ処理を効率的に行うことのできる技術を提供する。
【解決手段】 複数レイヤの画像を重ね合わせて表示画像を生成する画像生成装置に、それぞれが1レイヤの画像を格納する複数のフレームバッファと、前記フレームバッファの各々に対応し、対応する前記フレームバッファの画像のステンシル値を格納する複数のステンシルバッファと、前記ステンシルバッファに格納された前記ステンシルバッファに基づいて前記複数のフレームバッファに格納された画像を重ね合わせることにより、表示画像を生成する画像生成手段と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成装置に関し、特に、複数レイヤの画像を重ね合せて表示画像を生成する画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置上に画像を表示する際に複数のレイヤに描画された画像を重ね合わせて表示する技術が知られている。例えば、カーナビゲーションシステムのディスプレイ(画像表示装置)には、地図画像、進路を案内する矢印、残り距離や到着予定時刻、操作ボタン等の様々な画像が重ね合わされて表示される。
【0003】
これらの様々な画像のそれぞれを異なるレイヤ上に描画し、これら複数レイヤの画像を重ね合わせることによって、例えば、地図画像に変更が生じた場合には、地図画面のみを書き換えればよく、それ以外の画像を書き換える必要がなくなる。このように、複数レイヤの画像を重ね合わせることで、効率の良い画像表示を行うことが可能となる。
【0004】
画像を重ね合わせる際に、前面にあるレイヤの画像を優先的に表示するが、前面のレイヤに画像が描画されていない領域については、背面のレイヤの画像を表示する。このとき、画像が描画されていない領域を指定する方法として、透過させるべき領域(画像が描画されていない領域)に透過色データを格納する方法がある。
【0005】
透過色データとは、その画素が透過色であるか否かを示すデータであり、任意の値を用いることができる。例えば、各画素データがRGB値で表されるときには、透過色として「808080H」(24ビット値)を指定し、透過させたい領域についてはこの値のデータをフレームバッファに書き込む。なお透過色データの色値は、描画されている領域と描画されていない領域を区別する必要があるため、画像中で使われていない色値を使う必要がある。
【0006】
このように透過色を用いて複数レイヤの画像を重ね合わせる画像表示装置では、図7に示すように、各レイヤに対応するフレームバッファと、複数のフレームバッファに格納された画像を重ね合わせて表示画像を生成する重ね合わせ処理部72を有する。重ね合わせ処理部72は、各画像の画素データから出力すべき画素データを選択する。出力すべき画素データとは、複数の画像のうち優先度の高い(前面にある)画像のデータのことである。ただし、前面の画像中に透過色データがある場合には、背面の画素データが出力される。
【0007】
図8に3つの画像A,B,Cを重ね合わせる処理の例を示す。ここでは、画像Aが最前面にあり、画像Cが最背面にあるものとする。すなわち、画像Aの優先度が最も高く、画像Cの優先度が最も低い。なお、最背面の画像Cには透過色は設定されていないものとする。
【0008】
重ね合わせ処理部72は、まず画像Aの画素A'が透過色であるか否か判定する。画素
A'が透過色でない場合には、画素A'の色値を表示する色値とする。画素A'が透過色で
ある場合には、次に画像Bの画素B'が透過色であるか否か判定する。画素B'が透過色でない場合には、画素B'の色値を表示する色値とする。画素B'が透過色である場合には、画素C'の色値を表示する色値とする。全ての画素について、どのレイヤの画像(色値)
を表示するか、同様に判断して重ね合わせ処理を行う。
【0009】
また、複数レイヤの画像を重ね合わせる別の方法として、画像が描画されている領域を形状とするマスク情報を利用する方法がある。すなわち、各レイヤの画像について、マスク情報を用いて、画像が描画されている領域と描画されていない領域とを判断することができる。したがって、画像を重ね合わせる際に背面のレイヤの画像を表示する領域を正しく判断することが可能となる。
【0010】
このように、従来のレイヤ構造のフレームバッファを持つ画像表示装置では、透過色やマスク情報を利用して、画像を重ね合せた際に表示すべき画像を決定している。
【非特許文献1】James D. Foley、他3名、「コンピュータグラフィックス 理論と実践」、オーム社、2001年3月
【非特許文献2】Mason Woo、他3名、「OpenGL プログラミングガイド」、第2版、ピアソン・エデュケーション、2002年4月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記のように透過色やマスク情報を設定して複数画像を重ね合わせる技術を、3次元描画システムに適用した場合には、透過させる領域を指定することが困難であるという問題が生じる。なお、3次元描画システムとは、仮想3次元空間上で管理された物体の形状情報を用いて、それらの物体を平面上に投射することで画像を生成する描画システムのことである。
【0012】
透過色データの値は、透過させる領域を他の領域と区別するために、画像中で使われていない色値を用いる必要がある。一方で、3次元描画システムにおいては、モデリングされた物体を描画する際にライティング処理やシェーディング処理を行うため、画像中に使われる色は描画計算を行うまで決定されない。したがって、透過色として利用する色値をあらかじめ簡単に決定することができない。
【0013】
また、モデリングされた物体の形状も、画面平面上に投影する際に行列変換処理によってその形状が変わってしまうので、透過させる領域としてのマスク形状をあらかじめ決定することも容易ではない。
【0014】
つまり、3次元描画システムにおいては、複数レイヤの画像を重ね合わせる際に、どの領域を透過させるか設定することが困難である。
【0015】
また、3次元描画システムにおいて物体の重ね合わせ描画を行う方法として、ステンシルバッファやZバッファを利用して、物体の奥行きを考慮して最も手前に存在する物体を描画する技術が知られている。すなわち、画像の色値を格納するフレームバッファと、ステンシル値を格納するステンシルバッファを用い、フレームバッファに画像を描画する際に、ステンシル値を指定して描画を行う。フレームバッファの画素に色値を格納するときに、対応するステンシルバッファの画素に格納されたステンシル値と、指定されたステンシル値とを比較し、指定されたステンシル値が条件を満たす場合のみ、フレームバッファに実際に色値を格納する。この際、ステンシルバッファにも指定されたステンシル値を格納する。このようにして、描画しようとする物体よりも前面にある物体(優先度の高い画像)がすでにフレームバッファに描画されていた場合には、フレームバッファへの描画を行わないことになる。
【0016】
しかし、この技術は、単一のフレームバッファに描画する際に用いられる技術であり、複数レイヤの画像を重ね合わせる利点である、書き換えを必要とする画像のみを再描画するという利点を享受することができない。すなわち、画像を書き換える際には全ての画像を再描画しなければならない。
【0017】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複雑な形状や色彩を有する画像の重ね合わせ処理を効率的に行うことのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明では、以下の手段または処理によって複数レイヤの画像を重ね合わせて表示画像を生成する。
【0019】
本発明に係る画像生成装置は、複数レイヤの画像を重ね合わせて表示画像を生成する画像生成装置であって、複数のフレームバッファと、各フレームバッファに対応するステンシルバッファと、画像を重ね合わせて表示画像を生成する画像生成手段を有する。
【0020】
複数のフレームバッファの各々は、1レイヤの画像を格納する。フレームバッファには、画像の各画素の色値が格納される。
【0021】
ステンシルバッファは、フレームバッファの各々に1対1に対応し、対応するフレームバッファに格納された画像のステンシル値を格納する。ステンシル値は、物体の重ねあわせなどにより描画しなくてもよい領域を判定するために用いられる値であり、画像の各画素に対し与えられる。ステンシルバッファは、このステンシル値を格納するメモリである。
【0022】
なお、ステンシル値は、以下に示す方法でステンシルバッファに格納されることが好ましい。すなわち、画像描画手段が、フレームバッファに画像を格納するとともに、このフレームバッファに対応するステンシルバッファにこの画像のステンシル値を格納することが好ましい。画像描画手段が、フレームバッファのある画素に色値を書き込むときに同時に、対応するステンシルバッファの同じ画素にステンシル値を格納する。このようにすることで、フレームバッファに画像が描画された領域(画素)には、ステンシルバッファにも所定のステンシル値が格納されることになる。したがって、画像が描画されている領域と描画されていない領域は、ステンシルバッファに格納されたステンシル値を参照することで容易に判断することが可能となる。
【0023】
画像生成手段は、ステンシルバッファに格納されたステンシル値に基づいて複数のフレームバッファに格納された画像を重ね合わせることにより、表示画像を生成する。画像生成手段は、複数レイヤの画像を重ね合わせる際に、画素ごとに各ステンシルバッファに格納されたステンシル値を取得し、最も優先度の高いステンシル値が格納されているステンシルバッファを選択し、このステンシルバッファに対応するフレームバッファの当該画素に格納されている色値を、表示する画像の当該画素における色値とする。
【0024】
このように、本発明に係る画像生成装置は、フレームバッファに画像を描画する際に同時にステンシル値を書き込むステンシルバッファをフレームバッファごとに用意し、ステンシルバッファ内のステンシル値に基づいて複数レイヤの画像の重ね合わせ処理を行うため、あらかじめ透過色データやマスク形状を決定することができない3次元描画システムにおいても透過させる領域を容易に判断することができる。
【0025】
また、複数レイヤの画像を重ね合わせているため、一部のレイヤの画像に変更があった場合には、そのレイヤの画像のみを書き換えるだけでよい。例えば、前面、背面の2つのレイヤがあったときに、背面レイヤの画像の一部は前面レイヤの画像に隠されて表示されていないとする。この場合に、前面レイヤの画像に変更があった場合、前面レイヤの画像のみを書き換えればよい。すなわち、前面レイヤのフレームバッファ及びこれに対応する
ステンシルバッファに、新しい画像の色値及びステンシル値を格納すればよい。背面レイヤの画像は、すでにフレームバッファに格納されているため、この画像と新しい前面レイヤ画像を重ね合わせることで表示画像を得ることができ、背面レイヤのフレームバッファ及びステンシルバッファを変更する必要はない。
【0026】
このように、本発明に係る画像生成装置では、複数レイヤを重ね合わせて表示する画像を生成する画像生成装置の利点を、3次元描画システムに適用した場合にも享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、複雑な形状や色彩を有する画像の重ね合わせ処理を効率的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0029】
<構成>
図1は、本発明の実施形態である画像生成装置1のハードウェア構成を示す図である。本実施形態に係る画像生成装置1は、例えば、カーナビゲーション装置に適用され、地図画面、方向指示画面、メニュー等を表示する画面などの複数の画像の重ねあわせを行って、画像表示装置2に表示する画像を生成する。
【0030】
本実施形態に係る画像生成装置1は、グラフィックチップ11、画像メモリ12、CPU13、主記憶装置14から構成される。
【0031】
画像メモリ12は、読み書き可能なメモリであり、画像データを格納するフレームバッファ及びステンシル値を格納するステンシルバッファを有する。なお、本実施形態において、画像メモリ12は、主記憶装置14とは独立したメモリであり、画像処理のために専用で使用されるメモリである。
【0032】
グラフィックチップ11は、画像表示処理を担うLSIチップである。グラフィックチップ11は、CPU13から画像データを受け取り、画像メモリ12に書き込む。また、グラフィックチップ11は、画像メモリ12内の複数のフレームバッファに格納された画像を重ね合わせて、画像表示装置2に重ね合わせた結果である画像を表示させる。
【0033】
図2は、画像生成装置1の機能ブロックを示す図である。描画部(画像描画手段)21は、入力された画像データを、フレームバッファ及びステンシルバッファに書き込む機能を有し、グラフィックチップ11によりその機能が実現される。描画部21は、3次元画像のように、3次元仮想空間上で管理されたポリゴンなどの物体に、レンダリング処理を施して平面上に投射された画像データをフレームバッファ及びステンシルバッファに書き込む。また描画部21に2次元画像データが入力された場合には、その画像データをフレームバッファ及びステンシルバッファに転送する。
【0034】
フレームバッファ及びステンシルバッファは、それぞれ画像メモリ12内に確保されるバッファ領域である。各フレームバッファには、1レイヤの画像の画素ごとの色値が格納される。ステンシルバッファには、その画像の画素ごとのステンシル値が格納される。ステンシル値は、画像データが入力される際に一緒に、描画部21に入力される。
【0035】
図2において、フレームバッファ及びステンシルバッファのペアは3つであり、本実施形態に係る画像生成装置1は3つのレイヤの画像を重ね合わせて表示画像を生成する。も
っとも、フレームバッファとステンシルバッファのペアは2以上であればいくつであってもかまわない。
【0036】
重ね合わせ処理部(画像生成手段)22は、グラフィックチップ11が、画像メモリ12内のフレームバッファに格納された複数のレイヤの画像を重ね合わせて表示画像を生成する機能である。重ね合わせ処理部22は、各レイヤの画像を重ね合わせる際に、画素ごとに、各ステンシルバッファに格納されたステンシル値に基づいて、どのフレームバッファに格納された色値を出力するか決定する。重ね合わせ処理部22が行う、画像の重ね合わせ処理は、後に詳しく説明する。
【0037】
<処理フロー>
次に、図3〜図5を用いて、画像生成装置1が行う処理の流れについて説明する。
【0038】
図3は、描画部21が行う3次元画像の色値及びステンシル値をフレームバッファ及びステンシルバッファに格納する描画処理を表すフローチャートである。
【0039】
描画部21は、ステップS101で、CPU13から画像データを書き込む対象であるレイヤを取得する。次に、ステップS102において、描画部21は、ステップS101で指定されたレイヤに対応するフレームバッファ及びステンシルバッファを初期化する。すなわち、フレームバッファ及びステンシルバッファに所定の値(初期値)を格納する。
【0040】
描画部21はステップS103で、描画対象である物体(ポリゴン等)の3次元仮想空間上での位置・形状等の図形データ(図形情報)を取得する。描画部21は、その他にも、視点の位置、光源の数やその位置などのデータも取得する。
【0041】
描画部21はステップS104で、ステップS103で取得した図形データを描画する際に使用するステンシル値を取得する。もっとも、ステンシル値は、ポリゴンごとに指定されずに、1レイヤの画像内で全て同じ値を使用してもかまわない。
【0042】
ステップS105において、描画部21は、ステップS103で取得した図形データを元に、シェーディングやライティングなどのレンダリング処理を行う。レンダリング処理の結果、画像内の各画素に表示される色値が定まるので、ステップS106において、ステップS101で取得した書き込み対象のレイヤに対応するフレームバッファに、その色値を格納する。そして、ステップS107において、ステップS103で取得したステンシル値を、対応するステンシルバッファに格納する。
【0043】
ステップS108で、一画面に含まれる全ての図形情報についてレンダリング及びフレームバッファ・ステンシルバッファへの値の格納が終了したか判断し、終了していない場合にはステップS103に戻り、次の図形情報の処理を行う。ステップS108で1画面に含まれる全ての図形情報について処理が完了している場合には、描画処理を終了する。
【0044】
次に、図4、図5を用いて、重ね合わせ処理部22が行う、複数レイヤの画像を重ね合わせて表示する画像を生成する処理を説明する。図4は、重ね合わせ処理部22が、複数のレイヤの画像を重ね合わせて表示する画像の色値を決定する処理を、模式的に説明した図である。
【0045】
重ね合わせ処理部22は、それぞれの画素について、ステンシルバッファSB1,SB2,SB3のステンシル値を比較する。重ね合わせ処理部22は、所定のステンシル値の比較方法に基づいて、それぞれのステンシル値を比較する。この比較方法は、例えば、最も大きい値を持つものを選択する方法や、最も小さい値を持つものを選択する方法などが
考えられる。その他にも、所定の範囲内の値であって最も大きい値(又は、小さい値)を選択する方法もある。
【0046】
このような比較方法に従って、ステンシルバッファSB1,SB2,SB3の各画素のステンシル値を比較し、これらのステンシルバッファの中から優先度の高いステンシル値が格納されているステンシルバッファを選択する。ここでは、ステンシルバッファSB3が選択されたものとする。すると、重ね合わせ処理部22は、表示画像のこの画素に表示する色値として、ステンシルバッファSB3に対応するフレームバッファFB3のこの画素に格納されている色値を選択する。
【0047】
図5は、上記の重ね合わせ処理部22が行う複数レイヤの画像の重ね合わせ処理のフローチャートである。図5を参照しながら、上記の処理の詳細について説明する。
【0048】
重ね合わせ処理部22は、ステップS201で初期化処理を行う。初期化処理には、ステンシル値の比較方法の決定、処理対象フレームバッファの設定(最下層のレイヤを対象として設定)、処理対象画素の設定などの処理が含まれる。ステンシル値の比較方法は、あらかじめ定められた方法を使用しても良いし、重ね合わせ処理の度に外部から入力されるようにしても良い。
【0049】
ステップS202で、処理対象フレームバッファの処理対象画素から色値を取得する(この色値をCtとする)。また、処理対象ステンシルバッファの処理対象画素からステンシル値を取得する(このステンシル値をStとする)。
【0050】
ステップS203で、処理対象のフレームバッファが最下層レイヤであるか判断する。処理対象のフレームバッファが最下層レイヤである場合には、ステップS209に進み、色値CにCtを、ステンシル値SにStをそれぞれ格納する。そして、ステップS210で処理対象フレームバッファ及びステンシルバッファを切り替え、ステップS202に戻る。
【0051】
ステップS203で、処理対象のフレームバッファが最下層レイヤでないと判断された場合には、ステップS204に進む。ステップS204では、ステップS202で取得されたステンシル値Stと、現在ステンシル値Sに格納されているステンシル値とを、与えられた比較方法に従って比較する。取得したステンシル値Stの方が優先される場合には、ステップS205に進み、色値Cに色値Ctを格納し、ステンシル値Sにステンシル値Stを格納する。ステンシル値Sの方が優先される場合には、ステップS205をとばしてステップS206に進む。
【0052】
ステップS206では、全てのフレームバッファについて上記の処理が終了したか判断する。まだ全てのフレームバッファについて処理が完了していない場合には、ステップS210で処理対象フレームバッファを切り替えて、ステップS203に戻る。全てのフレームバッファについて上記の処理が完了した場合には、表示画像の現在処理対象としている画素の色値として、色値Cを出力する。
【0053】
ステップS208で、全ての画素について処理が完了したか判断する。まだ全ての画素について処理が完了していない場合には、ステップS211で処理対象とする画素を切り替えて、ステップS202に戻る。全ての画素について処理が完了した場合には、表示画像の全ての画素について出力する色値が決定されたことになるので、表示画像の生成処理は完了する。
【0054】
このように、重ね合わせ処理部22は、各画素についてステンシル値を参照し、与えら
れた比較方法によって最も優先度が高いと評価されたステンシル値が格納されたステンシルバッファを選択し、選択されたステンシルバッファに対応するフレームバッファの当該画素に格納された色値を、表示画像に出力する色値として選択することによって、表示画像の生成を行う。
【0055】
<動作例>
図6を用いて、本実施形態に係る画像生成装置1が複数レイヤの画像を重ね合わせる動作の例を説明する。
【0056】
図6は、2つのフレームバッファFB1、FB2を重ね合わせて表示画像を生成する動作例である。描画部21は、フレームバッファFB1に2つの三角錐41,42を、フレームバッファFB2に立方体43を描画する。この際、フレームバッファFB1の三角錐41はステンシル値「30」を指定して描画され、三角錐42はステンシル値「10」を指定して描画される。フレームバッファFB2の立方体43はステンシル値「20」を指定されて描画される。
【0057】
フレームバッファFB1,FB2に描画する前に、ステンシルバッファSB1、SB2はステンシル値「0」で初期化されるものとする。描画部21は、フレームバッファFB1に三角錐41を描画するとともに、色値が書き込まれた画素に対応するステンシルバッファSB1の画素にステンシル値「30」を格納する。従って、フレームバッファFB1には三角錐41が描画され、三角錐41に対応するステンシルバッファSB1の領域51にはステンシル値「30」が格納される。同様に、フレームバッファFB1に三角錐42を描画する際に、合わせてステンシルバッファSB1の対応する画素にステンシル値「10」を格納する。したがって、ステンシルバッファSB1の領域52にはステンシル値「10」が格納される。なお、ステンシルバッファSB1の領域51、52以外の領域のステンシル値は初期値である「0」のままである。
【0058】
同様に、フレームバッファFB2及びステンシルバッファSB2にも、立方体43が描画される。なお、ここではステンシル値「20」が指定されて描画されるので、ステンシルバッファSB2の領域53には、ステンシル値「20」が格納される。
【0059】
次に、重ね合わせ処理部22は、これら2つのレイヤ画像を重ね合わせて表示画像を生成する。重ね合わせ処理部22は、重ね合わせ処理の際に、ステンシルバッファSB1,SB2に格納されたステンシル値を参照しながら、表示画像に表示する各画素の色値を決定する。
【0060】
ここでは、ステンシル値の比較方法として、ステンシル値が大きい画素ほど優先的に表示する比較方法を使用することとする。したがって、重ね合わせ処理部22は、各画素についてステンシルバッファSB1、SB2に格納されたステンシル値を取得し、最も大きいステンシル値が格納されたステンシルバッファに対応するフレームバッファの色値を表示画像として出力する色値として選択する。図6の例の場合は、重ね合わせて生成した表示画像では、三角錐41,立方体43,三角錐42の順で優先的に表示される。
【0061】
また、フレームバッファFB2に描画した立方体43の位置が変化した場合には、フレームバッファFB2及びステンシルバッファSB2のみ再描画をすることで、新しい表示画像を生成することができる。すなわち、フレームバッファFB1及びステンシルバッファSB1は再描画せずとも、新しい画像を生成することが可能である。
【0062】
<実施形態の作用・効果>
このように、本実施形態に係る画像生成装置1では、レイヤ画像を格納する複数のフレ
ームバッファそれぞれについて、対応するステンシルバッファを備え、フレームバッファに画像を描画する際に、このステンシルバッファにステンシル値を格納する。したがって、ステンシルバッファを参照することでフレームバッファに画像が描画された領域と描画されていない領域を容易に区別することができる。
【0063】
そして、これら複数のレイヤの画像を重ね合わせる際に、ステンシルバッファに格納されたステンシル値に基づいて表示する画像を生成するため、3次元描画システムにおいても複数レイヤの画像を重ね合わせることが容易となる。
【0064】
すなわち、3次元画像システムにおいては、透過させるべき領域を、透過色データやあらかじめ定められたマスク形状を用いて指定することは困難であったが、上記のような構成を取ることで、透過させるべき領域を容易に指定することが可能となる。
【0065】
このように、複数レイヤの画像を重ね合わせて表示画像を生成することで、一部のレイヤ画像だけが変更された場合に、そのレイヤの画像だけを書き換えればよく、残りのレイヤの画像を書き換える必要がなくなる。したがって、効率的な描画処理を3次元描画システムにおいても行うことが可能となる。
【0066】
<変形例>
本実施形態においては、描画部21及び重ね合わせ処理部22は、グラフィックチップ11によってその機能が実現されたが、CPU13がプログラムを実行することによってこれらの機能が実現されても良い。
【0067】
また、フレームバッファ及びステンシルバッファは専用の画像メモリ12内に設けられたが、主記憶装置14内のメモリを使用してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態に係る画像生成装置のハードウェア構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る画像生成装置の機能ブロックを示す図である。
【図3】本実施形態に係る画像生成装置の描画部21が行う画像描画処理を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る画像生成装置の重ね合わせ処理部22が行う複数レイヤの画像を重ね合わせて表示画像を生成する処理を模式的に説明した図である。
【図5】本実施形態に係る画像生成装置の重ね合わせ処理部22が行う複数レイヤの画像を重ね合わせて表示画像を生成する処理を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る画像生成装置の動作の例を説明する図である。
【図7】従来の画像生成装置の機能ブロックを示す図である。
【図8】従来の画像生成装置が複数レイヤの画像を重ね合わせて表示画像を生成する処理を模式的に説明した図である。
【符号の説明】
【0069】
1 画像生成装置
2 画像表示装置
11 グラフィックチップ
12 画像メモリ
13 CPU
14 主記憶装置
15 バス
21 描画部
22 重ね合わせ処理部
FB1、FB2、FB3 フレームバッファ
SB1、SB2、SB3 ステンシルバッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数レイヤの画像を重ね合わせて表示画像を生成する画像生成装置であって、
それぞれが1レイヤの画像を格納する複数のフレームバッファと、
前記フレームバッファの各々に対応し、対応する前記フレームバッファの画像のステンシル値を格納する複数のステンシルバッファと、
前記ステンシルバッファに格納された前記ステンシル値に基づいて前記複数のフレームバッファに格納された画像を重ね合わせることにより、表示画像を生成する画像生成手段と、
を有する画像生成装置。
【請求項2】
前記フレームバッファに画像を格納するとともに、該フレームバッファに対応する前記ステンシルバッファに該画像のステンシル値を格納する画像描画手段
を有することを特徴とする請求項1記載の画像生成装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−47417(P2007−47417A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231194(P2005−231194)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】