説明

画像表示装置の製造方法

【課題】画像表示面での輝度のばらつきを、フィルターの透過率のばらつきを考慮しつつ簡便な方法で低減する。
【解決手段】画像表示装置8は、透明基板1と、電子線もしくは電磁波の照射または電子の注入を受けて発光する蛍光体5と、蛍光体5と透明基板1との間に位置し、蛍光体5の発光によって出射する光の一部を透過させるフィルター4と、を備える。画像表示装置8の製造方法は、透明基板1上に形成されたフィルター4の光の透過率を、フィルター4の領域ごとに測定する透過率測定工程と、フィルター4上に形成された蛍光体に電子線もしくは電磁波を照射し、または電子を注入するエージング工程と、を有している。エージング工程における電子線もしくは電磁波の照射量または電子の注入量は、画像表示装置の画像表示面内の輝度の変動幅が目標値以内となるように、測定した透過率に応じて、領域ごとに予め決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置の製造方法に関し、特に画像表示装置のエージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像表示装置の製造過程で、画像表示装置の焼きつきの程度を低減し、また面内の輝度を均一化する目的でエージングが行われることがある。焼き付きとは、製品出荷後に静止画像を長時間表示し、その後に全面白色点灯などを行った際に視認される当該静止映像の残像である。これは、静止画像を長時間表示させると、静止画像の内容に応じて大量の電子照射を受けた画素の輝度が低下し、照射量の少なかった画素は輝度低下が小さいために生じる現象である。エージングは所定の画像を一定時間、画像表示装置に表示させる工程である。画像表示装置は初期段階で急峻な、単調減少の輝度の低下を示す。このため、エージングを行うことで意図的に輝度を低下させ、焼きつきの程度を低減するとともに輝度を均一化することができる。
【0003】
特許文献1,2には、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置のエージング方法が記載されている。特許文献1には、寿命の向上のために色毎に輝度劣化特性に合わせてエージングを行うことが記載されている。特許文献2には、生産コストの低減と材料選択性の向上のために、積算駆動量に対する輝度劣化の特性に応じてエージングを行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-323979号公報
【特許文献2】特開2003-297560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載されている画像表示装置のエージング方法は、発光部の輝度のばらつきを低減することは可能であるが、実際の画像表示装置では発光部の前面にフィルターが設けられることがある。フィルターは色合いの調整のために設けられるが、膜厚の均一化が難しく、透過率がばらつくことがある。フィルターの透過率がばらつくと、発光部の輝度を均一化してもフィルターの前面、すなわち装置の表示面で輝度のばらつきが生じる。画像表示性能上、輝度の大きなばらつきは好ましくないため、輝度の大きな画素ないし画像領域については大きな輝度で発光させないように画像補正を行う必要がある。しかしこのような画像補正は、大きな輝度の諧調での表示を困難とするため、利用できる諧調数が減少し、画像表示性能の向上の制約となる。
【0006】
本発明は、画像表示面での輝度のばらつきを、フィルターの透過率のばらつきを考慮しつつ簡便な方法で低減することが可能な、画像表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透明基板と、電子線もしくは電磁波の照射または電子の注入を受けて発光する蛍光体と、蛍光体と透明基板との間に位置し、蛍光体の発光によって出射する光の一部を透過させるフィルターと、を備える画像表示装置の製造方法を提供する。本発明の製造方法は、透明基板上に形成されたフィルターの光の透過率を、フィルターの領域ごとに測定する透過率測定工程と、フィルター上に形成された蛍光体に電子線もしくは電磁波を照射し、または電子を注入するエージング工程と、を有している。エージング工程における電子線もしくは電磁波の照射量または電子の注入量は、画像表示装置の画像表示面内の輝度の変動幅が目標値以内となるように、測定した透過率に応じて、領域ごとに予め決定される。
【0008】
本発明では、フィルターの光の透過率がフィルターの領域ごとに測定され、測定した透過率に応じて、エージング工程における電子線もしくは電磁波の照射量または電子の注入量が決定される。このため、フィルターの光の透過率を予め考慮した上でエージングを行うことができ、フィルター前面での輝度のばらつきを簡便な方法で低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像表示面での輝度のばらつきを、フィルターの透過率のばらつきを考慮しつつ簡便な方法で低減することが可能な画像表示装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明が適用可能な画像表示装置の模式的断面図である。
【図2】蛍光体の発光効率劣化曲線である。
【図3】画像表示装置の発光効率劣化曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の画像表示装置は、電子線表示装置、プラズマ表示装置、EL表示装置などに適用することができる。特に、電子線表示装置、プラズマ表示装置は、蛍光体材料の発光効率の経時変化が大きく、発光効率がカラーフィルターの透過率に大きく依存するという点から本発明が適用される好ましい形態である。
【0012】
本発明の製造方法を適用可能な画像表示装置の構成について、電子線表示装置を例として具体的に説明する。
【0013】
図1は、画像表示装置の断面の模式図である。画像表示装置8はフェイスプレート(透明基板)1とリアプレート2とを有している。リアプレート2には、フェイスプレート1へ電子線を放出する電子源6が配置されている。電子源6としては、表面伝導型、MIM型などの電界放出素子が用いられる。
【0014】
フェイスプレート1には、電子源6からの電子線の照射を受けて発光する蛍光体5と、発光色の色味の調整をおこなうカラーフィルター4と、ブラックマトリクス3と、が設けられている。フェイスプレート1は、蛍光体5で発光した光を透過させる必要から、透明の絶縁性基板が好適に用いられ、ソーダライムガラスなどの板ガラスが特に好適に用いられる。PDP(Plasma Display Panel)の分野で用いられる高ひずみ点ガラスも好適に用いられる。
【0015】
ブラックマトリクス3は、ブラックストライプとも呼ばれ、外光を吸収し明所コントラストを上げたり、蛍光体の混色を防いだりする目的で設けられている。ブラックマトリックス3は、XY方向にマトリックス状に形成された複数の開口3aを有しており、各開口3aにカラーフィルター4と蛍光体5が配置されている。ブラックマトリックス3としては、カーボンブラック、黒色顔料及び低融点ガラスフリットを含有したペーストなどが好適に用いられる。
【0016】
カラーフィルター4は、発光色の色味ないしは発光色を調整する目的で、蛍光体5とフェイスプレート1との間に配置されている。一般的に、RGBの三原色のカラーフィルター4がX方向に順番に配置され、配置される最小単位が画素を形成する。カラーフィルター4としては、CRTで用いられているFe23、Co(Al・Cr)24、Al23・CoOの粉末が、耐熱性及び真空脱ガス特性に優れることから好適に用いられる。表示装置の種類によってはカラーフィルター4を用いる必要はなく、白黒フィルターを代わりに用いることもできる。
【0017】
蛍光体5は、電子源6からの電子線が照射されることで発光し、画像を形成する。カラー表示を行うため、複数種類の蛍光体5が配置されている。一般的にRGBの三原色の蛍光体5が、カラーフィルター4のRGBに対応して、X方向に順番に配置されている。蛍光体5としては、CRTで用いられるP22蛍光体をはじめとする、電子線励起で発光する粉状の蛍光体が好適に用いられる。
【0018】
真空支持部材7はフェイスプレート1とリアプレート2の間に設置される枠部材で、表示装置の外周に配置される。作成されたフェイスプレート1とリアプレート2の間は、真空容器となるため、真空空間を支持するために配置される。材料としては鉄やニッケルなどの金属材料や、フェイスプレート1及びリアプレート2と同等のガラス材料が挙げられる。
【0019】
このように作製された画像表示装置において、フェイスプレート1とリアプレート2の間に電圧を印加して、マトリックス状に配置された電子源6から放出された電子を加速し、マトリックス状に配置された対応する蛍光体5に衝突させて、発光させる。カラーフィルター4は、蛍光体5の発光によって出射する光の一部を透過させる。各画素の発光を制御することにより、画像表示装置は所望の画像を表示する。
【0020】
次に、本発明の画像表示装置の製造方法の第一の実施形態について説明する。本実施形態は以下の(1)〜(6)のステップを含んでいる。
(1)カラーフィルターを形成する工程
(2)カラーフィルターの透過率を測定する工程
(3)蛍光体を形成する程
(4)封着工程
(5)エージング処理量を計算する工程
(6)エージング処理をする工程
以下、それぞれの工程について説明する。
【0021】
(1)カラーフィルターを形成する工程
フェイスプレート1上にカラーフィルター4を形成する。形成方法としては、印刷工法、スピン工法、IJ(インクジェット)工法などがあり、これらはカラーフィルター4の作製容易性と材料利用効率の観点から適宜選択される。
【0022】
(2)カラーフィルターの透過率を測定する工程
(1)で形成されたカラーフィルターの透過率を測定する。具体的には、カラーフィルター4が形成されたフェイスプレート1を均一な発光をするXYステージ上に載置し、XYステージに固定されたCCDカメラによって、カラーフィルター4の透過率を領域ごとに測定する。領域は、映像を構成する最小単位である画素でもかまわないし、一定範囲の画素の集合でもかまわない。画像表示装置の各領域の発光効率は蛍光体5の材料だけでは決まらず、カラーフィルター4の面内の透過率のばらつきの影響を受ける。このため、カラーフィルター4の透過率を測定することにより、各領域の透過率の測定結果が、各測定箇所の発光効率を推定するのに有効に用いられる。ここで測定した結果は工程(5)で用いる。
【0023】
(3)蛍光体を形成する工程
カラーフィルター4上に蛍光体5を形成する。形成方法としては、印刷工法、スピン工法、ディップ工法、IJ工法などの方法があり、これらは蛍光体5の作製容易性と材料利用効率の観点から適宜選択される。
【0024】
(4)封着工程
真空雰囲気内でフェイスプレート1とリアプレート2を対向させて、真空支持部材7をその間に挟まるように周辺に配置する。真空支持部材7とフェイスプレート1の間、及び真空支持部材7とリアプレート2の間にはInなどからなる接合材を予め形成しておく。接合材を溶融させることで、フェイスプレート1と真空支持部材7、及びリアプレート2と真空支持部材7を各々封着し、真空容器を形成し、画像表示装置を形成する。
【0025】
(5)エージング処理量を計算する工程
工程(6)で行うエージングの照射量をエージング開始前に予め決定する。照射量は、カラーフィルター4の特性と、蛍光体5のエージング特性から決定する。そのためにまず、カラーフィルター4の特性と、カラーフィルター4のエージング中の特性と、蛍光体5のエージング中の特性について説明する。
【0026】
カラーフィルター4は、工程(1)において作製されるが、膜厚の均一化が難しく、画像表示装置面内で、膜厚のばらつきを持つ。この膜厚のばらつきに応じて、透過率のばらつきが発生する。カラーフィルター4はエージング時に電子線の照射を受けない(蛍光体によって遮られるため、電子線はカラーフィルター4まで到達しない)ため、カラーフィルター4の特性は、エージング中には変わらない。一方、蛍光体5のエージング特性は図2に示すように、エージングの量(電子線の照射量)に応じて初期に急峻な、単調減少の輝度の低下を示す。
【0027】
次にエージングの目的について説明する。エージングは、焼きつきの程度を低減し、更には面内の輝度を均一化することを目的として行う。蛍光体は図2に示すように初期に輝度の急峻な単調減少を示すため、工程(4)を実施した直後の状態では、焼きつきが大きい。エージングを行うことによって焼きつきを低減させることができる。このため、焼きつきの程度を低減することが、エージングの目的の1つである。エージングの際には、蛍光体5の発光特性(輝度)の時間当たり変化率が一定以下になるまで、画像表示装置を駆動させる。
【0028】
エージングのもうひとつの目的は、画像表示装置面内の輝度の均一化であり、画像表示装置の発光効率のばらつきの低減である。蛍光体5の初期の急峻な輝度低下と、カラーフィルター4の透過率のばらつきと、によって、画像表示装置の発光効率は領域間でばらつく。つまり、カラーフィルター4の面内の透過率ばらつきの影響を受けて、透過率が低い領域では低い発光効率となり、透過率が高い領域では高い発光効率となる。輝度のばらつきがあると、面内で均一な映像を表示するという画像表示装置に要求される表示性能の一つが満足できなくなる。それを回避するため、一般的には画像補正により輝度の均一化を行うが、補正により均一化を行う場合は、発光効率が高い部分の階調表現を犠牲にしなければならないという問題がある。すなわち、発光効率が低い部分に合わせて画像表示装置全体の発光効率を調整する必要があるため、発光効率が高い部分が利用できなくなる。利用できない諧調数を犠牲諧調数と呼ぶ。発光効率のばらつきを低減させるためには、画像表示装置の各領域の発光特性が一定になるまで画像表示装置の駆動を行う。具体的には、画像表示装置の発光特性の時間変化率を事前に取得し、電子線の総照射量(照射量)を領域ごとに規定してエージングを行う。
【0029】
このため、工程(2)において取得したカラーフィルター4の透過率の面内分布情報を用いる。具体的には、事前に取得した蛍光体5の発光効率(輝度)の照射量依存曲線(図2)に、領域ごとに事前に取得した透過率を乗じて、領域ごとにカラーフィルター4の透過率に応じた発光効率劣化曲線を計算する。これによって、領域ごとに必要照射量が算出され、工程(6)において、発光効率が違う各領域に対して適正なエージングが行われる。この際、画像表示装置の画像表示面内の輝度の変動幅が目標値以内となるように、照射量を決定することが望ましい。あらかじめ照射量がわかっているため、エージング中に輝度をモニタリングする必要はない。このため、エージング中に輝度をモニタリングし続けるための輝度測定装置は不要となり、製造装置のコスト低減も実現できる。
【0030】
透過率は、画像表示装置がRGBの3色表示である場合、RGBの色毎に取得してもかまわない。この場合、対応する色の蛍光体材料ごとに蛍光体発光効率劣化曲線を取得し、色毎に最適な照射量を算出して、エージングを行う。
【0031】
(6)エージング処理をする工程
工程(5)で決定した照射量に到達するまで、画像表示装置を駆動する。すなわち、カラーフィルター4上に形成された蛍光体に電子線を照射する。エージング処理は、例えば時間当たり一定の照射量で一定時間電子を照射することによって行うことができる。製造工程内で特別な外部電源や外部駆動装置を用いて、出荷後の状態より高い負荷で、加速させてエージングを行うこともできる。エージング方法は、出荷後の画像表示装置の状態に問題が生じない範囲で適宜選択される。以上の工程を経て、電子線表示装置のエージング処理が終了する。
【0032】
次に、第二の実施形態について説明する。第二の実施形態では、工程(2)がなく、工程(4)と工程(5)の間に、(A)拡散反射率を測定する工程を実施する。このため、第二の実施形態は以下の6つのステップを含んでいる。
(1)カラーフィルターを形成する工程
(2)なし
(3)蛍光体を形成する程
(4)封着工程
(A)拡散反射率を測定する工程
(5)エージング処理量を計算する工程
(6)エージング処理をする工程
第一の実施形態と違う点は、カラーフィルター4の透過率を直接測定する代わりに、拡散反射率を測定していることである。画像表示装置に外部から光を照射すると、照射された光はカラーフィルター4を通り、蛍光体5に達して蛍光体5で散乱され、更にカラーフィルター4を通り、画像表示装置の外側へ反射光として出射する。反射光の拡散反射率は画像表示装置に照射された光と画像表示装置から出射する光の強度の比率として測定することができる。蛍光体5の光の散乱特性は、ある一定粒度において一定のため、拡散反射率の面内分布情報(最小単位は画素ごと)を測定することにより、カラーフィルター4の透過率の面内分布が算出できる。
【0033】
具体的には、透明基板上に蛍光体を直接形成したサンプルを作成し、透明基板側から入射した光の蛍光体からの反射光の拡散反射率β1を予め求めておく。次に、上記のようにして、カラーフィルター4が介在した状態における蛍光体からの反射光の拡散反射率をβ2として求める。透過率は(β2/β1)1/2として算出することができる。このように算出した透過率を用いて、第一の実施形態と同様に最適な照射量を領域ごとに算出してエージングを行う。これにより、発光効率が違う領域に対して適切なエージングが可能となる。第一の実施形態と同様、エージング中にモニタリングし続けるための輝度測定装置が不要であるため、製造装置コストの低減も実現できる。
【0034】
第一の実施形態では、カラーフィルター4の透過率は、カラーフィルター4が表面に露出した状態、すなわち気密容器の組立てを行う前の状態で測定する。これに対して第二の実施形態では、画像表示装置の外側からカラーフィルター4の透過率を測定することができる。このため、測定中にカラーフィルター4を傷つける可能性が低く、歩留まりが向上する。また、第二の実施形態では、気密容器の完成後に透過率を測定するため、製品のほぼ最終的な状態での透過率を得ることができる。このため、第一の実施形態のように透過率測定後に封着工程などを行う必要がなく、透過率が後工程の影響を受けることがない。
【0035】
以上、電子線表示装置を例に本発明を説明したが、本発明はPDP、有機EL、無機EL表示装置にも同様に適用することができる。PDPに適用する場合は、エージング工程で電磁波が照射されるため、同様の手法によって電磁波の照射量を定め、エージングを実施することができる。有機EL、無機EL表示装置に適用する場合は、エージング工程で電流(及び正孔)が注入されるため、同様の手法によって電流(及び正孔)の注入量を定め、エージングを実施することができる。
【実施例】
【0036】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明を詳しく説明する。
【0037】
(実施例1)
[工程1 カラーフィルターの形成]
フェイスプレート1となるソーダライムガラスの基板に対してアニール処理と洗浄を行った。その後、カラーフィルター4となるペーストを厚さ1.0μmで、フェイスプレート1の全面に塗布した。ペーストとして、感光剤を混合したエチルセルロース樹脂ペーストを用いた。カラーフィルター4の材料としては、赤(R)用としてFe23の粉末を、緑(G)用としてCo(Al・Cr)24の粉末を、青(B)用としてAl23・CoOの粉末を用いた。ペーストの塗布後、画素ごとに現像して、画素ごとに所望のパターンを得た。これをRGBについて順次行い、3色のカラーフィルター4を形成した。X方向(図1参照)の画素ピッチは210μm、Y方向(図1参照)の画素ピッチは630μmとした。各色のカラーフィルター4はX方向に1920箇所、Y方向に1080箇所形成した。その後450℃で焼成した。
【0038】
[工程2:カラーフィルター4の透過率測定工程]
均一に発光するステージ上に、工程1で作製された、カラーフィルター4が形成されたフェイスプレート1を載置した。フェイスプレート1を透過してくる光をCCDカメラで検出して透過率を測定した。平均透過率は60%、最低透過率は55%、最高透過率は65%であった。
【0039】
[工程3:蛍光体の形成]
次に、RGBの蛍光体5をスクリーン印刷法により形成した。使用した蛍光体5は、化成オプト社製のP22蛍光体であり、赤:P22RE3(Y22S)、緑:P22GN4(ZnS:Cu、Al)、青:P22B2(ZnS:Ag,Cl)を用いた。それぞれの蛍光体5の平均粒径は2μmであり、平均膜厚が10μmになるように形成した。その後450℃で焼成を行った。さらに、電位規定用のアルミ薄膜を蛍光体表面に100nmの厚さで積層した。
【0040】
[工程4:封着工程]
以上の工程を経てフェイスプレート1を作成し、真空支持部材7を介して、電子源6の形成されたリアプレート2と組み合わせて真空容器を形成した。リアプレート2及び電子源6は従来の方法を用いて作成した。
【0041】
[工程5:エージング処理量を計算する工程]
事前に取得した蛍光体発光効率劣化曲線(図2)と、工程2で取得した透過率とから、作製した表示デバイスのカラーフィルター4の透過率分布に応じた、画像表示装置の発光効率劣化曲線図(図3)を作成した。本実施例では透過率を領域ごとに55%、60%または65%のいずれかに3区分し、図2で示す蛍光体発光効率劣化曲線に各透過率を乗じ、透過率毎の発光効率劣化曲線を算出した。図3の縦軸の値は、フィルターの透過率を考慮した修正輝度ということができ、照射量と修正輝度との関係を示している。図2は蛍光体の(フィルターを通さない状態での)輝度保持率を示しており、照射量がゼロの時を100%としている。照射を続けると初期の段階で急激に輝度が低下し、その後は緩やかに輝度が低下していく。図3の曲線は図2の曲線を0.55倍、0.6倍、または0.65倍して得られたものであり、照射量がゼロの時点で、既に輝度保持率が55%、60%、または65%となっている。
【0042】
図3をもとに、焼きつき量が1[%]/[C/cm2]以下になり、かつエージング後の輝度が面内で均一になるように照射量を設定した。エージング後の輝度は、すべての領域に共通する目標輝度範囲内に収まるように設定した。具体的には、カラーフィルター4の透過率が55%の領域は5C/cm2、透過率が60%の領域は15C/cm2、透過率が65%の領域は30C/cm2の照射量をそれぞれ設定した。
【0043】
[工程6:エージング工程]
エージング工程では、修正輝度が目標輝度範囲内となるように領域ごとに設定された照射量で電子線を照射した。具体的には、工程5で規定した照射量を投入可能な映像を設定し、駆動時のパルス幅を領域ごとに異ならせて、画像表示装置を駆動した。入力した映像は、信号周波数120Hz、フル諧調(1023階調)の映像とした。エージング後の電子線表示装置では、焼きつき量の最大値は1[%]/[C/cm2]以下、輝度の面内均一性は±3%であった。これを犠牲諧調数に換算するとフル諧調1023として、31階調分となる。
【0044】
(比較例1)実施例1における工程2,5を実施せず、その代わり工程6で、輝度をモニタリングしながらエージングを行った。輝度のモニタリングのためコニカミノルタCA2000輝度計(CCDタイプの輝度計)を搭載したXYステージを準備した。画像表示装置を駆動しながらXYステージ上で輝度計を走査させ、表示面内の一定領域ごとに輝度を測定した。焼きつき量が1[%]/[C/cm2]以下となり、輝度の面内均一性も±3%以下となるように照射量を調整し、この条件を達成した領域から照射を停止した。エージング後の電子線表示装置では、焼きつき量の最大値は1[%]/[C/cm2]以下、輝度の面内均一性は±3%であった。しかし、この方法はエージング工程の間ずっと輝度測定計が必要となるため簡便な方法であるとはいえず、製造コストも上昇する。
【0045】
(比較例2)実施例1における工程2,5を実施せず、工程6で面内一律15C/cm2の照射量を投入した。エージング後の電子線表示装置では、焼きつき量の最大値は1[%]/[C/cm2]以下であったが、輝度の面内均一性は±8%であった(図3)。これを犠牲諧調数に換算するとフル諧調1023として、82階調分となる。
【0046】
(実施例2)
本実施例では、実施例1の工程2を実施せず、その代わり工程4と工程5の間で工程Aを実施した。工程Aでは、エージング前に、画像表示装置が組み立てられた状態で拡散反射率を測定した。拡散反射率は日本工業規格JIS Z8722「色の測定方法−反射及び透過物体色」に準拠して測定した。概略は以下の通りである。電子線表示装置の非駆動状態で、ガラス基板に、ガラス基板の法線に対して45度傾いた方向から、標準光源を150lxで照射し(入射させ)、反射光の輝度(L1)を、表示面の法線上の測定位置で測定した。具体的には、コニカミノルタCA2000輝度計(CCDタイプの輝度計)をXYステージに搭載し、表示面内を一定領域に分けて、一定領域ごとに輝度を測定した。同様の方法で、標準拡散板(反射率100%)の表面の輝度(L2)を測定し、その比(L1/L2)である拡散反射率をβ2として求めた。拡散反射率β2は平均21.6%、最大25.4%、最小18.2%であった。
【0047】
本実施例では、カラーフィルター4のない蛍光体の拡散反射率、すなわち、ガラス基板上に直接蛍光体が形成されたサンプルを対象として拡散反射率を測定する。この測定は予め行うことができ、また画像処理装置毎に行う必要もない。上記サンプルを作成し、同様の方法によって蛍光体の拡散反射率β1を測定したところ、60%の値が得られた。カラーフィルター4の透過率は(β2/β1)1/2として求めることができる。よって、拡散反射率が平均値(β2=21.6%)である領域のカラーフィルター4の透過率は(21.6%/60%)1/2=60%となった。同様に、拡散反射率が最小(β2=18.2%)である領域のカラーフィルター4の透過率は55%、拡散反射率が最大(β2=25.4%)である領域のカラーフィルター4の透過率は65%となった。
【0048】
以降、実施例1と同様にしてエージング時の照射量を決定し、実施例1と同様に工程6のエージングを行った。エージング後の電子線表示装置では、焼きつき量の最大値は1[%]/[C/cm2]以下、輝度の面内均一性は±3%であった。これを犠牲諧調数に換算するとフル諧調1023として、31階調分となる。さらに本実施例では、実施例1に比べて歩留まりが2%向上した。
【符号の説明】
【0049】
1 フェイスプレート
4 カラーフィルター
5 蛍光体
8 画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、電子線もしくは電磁波の照射または電子の注入を受けて発光する蛍光体と、前記蛍光体と前記透明基板との間に位置し、前記蛍光体の発光によって出射する光の一部を透過させるフィルターと、を備える画像表示装置の製造方法であって、
前記透明基板上に形成された前記フィルターの光の透過率を、該フィルターの領域ごとに測定する透過率測定工程と、
前記フィルター上に形成された前記蛍光体に電子線もしくは電磁波を照射し、または電子を注入するエージング工程と、
を有し、
前記エージング工程における電子線もしくは電磁波の照射量または電子の注入量は、画像表示装置の画像表示面内の輝度の変動幅が目標値以内となるように、測定した前記透過率に応じて、前記領域ごとに予め決定される、画像表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記蛍光体に照射される前記照射量または前記注入量と、前記蛍光体の輝度との関係を求める工程と、
前記領域ごとに、測定した前記透過率を前記輝度に乗じた値を修正輝度として求め、前記照射量と前記修正輝度との関係を求める工程と、
前記修正輝度の、すべての前記領域に共通する目標輝度範囲を定める工程と、
を有し、
前記エージング工程は、前記領域ごとに、前記修正輝度が前記目標輝度範囲内となる照射量の電子線または電磁波を前記蛍光体に照射し、または前記修正輝度が前記目標輝度範囲内となる注入量の電子を注入することを含む、請求項1に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記透明基板上に前記蛍光体を直接形成し、前記透明基板側から入射した光の前記蛍光体からの反射光の拡散反射率β1を求める工程を有し、
前記透過率測定工程は、前記透明基板側から入射した光の前記蛍光体からの反射光の拡散反射率β2を求めることと、前記透過率を(β2/β1)1/2として求めることと、を含む、請求項1または2に記載の画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−209185(P2012−209185A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75188(P2011−75188)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】