画像表示装置
【課題】 表示素子の輝度特性のばらつきを精度よく補正することができる画像表示装置を提供する。
【解決手段】 複数の表示素子と、複数の表示素子を駆動する駆動回路であって、複数の表示素子の輝度特性のばらつきを階調に応じて補正する補正回路を有する駆動回路と、を有し、駆動回路は、第1階調の変調信号と第2階調の変調信号とが相似形である変調信号を出力し、補正回路は、第2階調の変調信号で表示素子を駆動して測定した該表示素子の輝度特性から求めた値を用いて第1階調の補正を行うことを特徴とする画像表示装置。
【解決手段】 複数の表示素子と、複数の表示素子を駆動する駆動回路であって、複数の表示素子の輝度特性のばらつきを階調に応じて補正する補正回路を有する駆動回路と、を有し、駆動回路は、第1階調の変調信号と第2階調の変調信号とが相似形である変調信号を出力し、補正回路は、第2階調の変調信号で表示素子を駆動して測定した該表示素子の輝度特性から求めた値を用いて第1階調の補正を行うことを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置に関し、特に、単純マトリクス駆動を用いる画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CRTにかわる平面型画像表示装置として、液晶表示装置、プラズマ表示装置、EL表示装置、電子放出素子を用いた画像表示装置などが知られている。
【0003】
電子放出素子を用いた画像表示装置の電子放出素子としては、電界放出型、MIM型、表面伝導型などの電子放出素子が知られている。
【0004】
これらの画像表示装置では、複数の表示素子をマトリクス駆動することにより、画像を表示する。そのため、各表示素子の輝度特性は均一であることが好ましい。
【0005】
しかし、表示素子の製造プロセスなどの不均一性により、数%から10数%の加工ばらつきが表示素子に生じてしまうことがある。そのため、各表示素子の輝度特性にばらつきが発生することがある。また、電圧や電流に対する輝度の変化(輝度特性)は必ずしも直線的な関係ではない。
【0006】
このような各表示素子の輝度特性のばらつきを補償するために、各表示素子の全ての階調に対して補正テーブルを有する構成が提案されている(特許文献1)。
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、表示素子数や階調数が大きくなった場合に、メモリ容量が膨大になるという問題がある。また、低階調側の輝度を精度よく測定するためには長い時間が必要になるという問題がある。実際、輝度計により輝度を測定する場合、0.1cd/m2以下の輝度の測定精度を上げるためには、100cd/m2の輝度の測定の2倍から3倍の露光時間が必要となる。
【0008】
そのため、各表示素子の全ての階調に対して補正テーブルを有する構成を採用することは現実的には困難である。
【0009】
これに対し、各表示素子の複数の階調(輝度補正点)に対して補正データを有し、輝度補正点の間の階調に対しては、補間により補正データを求める構成が提案されている(特許文献2)。
【0010】
ここで、一般に表示素子や配線には、変調配線抵抗、変調配線と走査配線との交差容量、表示素子の寄生容量等のインピーダンスが存在するため、これらに起因して、波形のなまりが生ずることがある。
【0011】
図1は、パルス幅変調方式における変調信号の波形のなまりを示す図である。実線は低階調の変調信号を、点線は高階調の変調信号を示している。(a)は波形のなまりが生じない場合の理想的な変調信号を示したものである。(b)は波形のなまりが生じる現実的な変調信号を示したものである。
【0012】
一般に、高階調の変調信号よりも低階調の変調信号の方が波形のなまりによる影響が大きくなる。そのため、高階調の輝度を測定して求めた補正値を用いて低階調の輝度の補正を行うと、波形のなまりによる誤差を受け、場合によっては線状の筋むらが生じてしまう。
【特許文献1】特開2000−122598号公報
【特許文献2】国際公開第2005/124734号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、表示素子の輝度特性のばらつきを精度よく補正することができる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の画像表示装置は、複数の表示素子と、複数の表示素子を駆動する駆動回路であって、複数の表示素子の輝度特性のばらつきを階調に応じて補正する補正回路を有する駆動回路と、を有し、駆動回路は、第1階調の変調信号と第2階調の変調信号とが相似形である変調信号を出力し、補正回路は、第2階調の変調信号で表示素子を駆動して測定した該表示素子の輝度特性から求めた値を用いて第1階調の補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像表示装置によれば、表示素子の輝度特性のばらつきを精度よく補正することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<第1の実施形態>
以下、表示素子として電子放出素子を用いた画像表示装置を例として、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図2は電子放出素子を用いた画像表示装置の表示パネルの一例を示す斜視図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。
【0018】
図中、3115はリアプレート、3116は側壁、3117はフェースプレートである。リアプレート3115、側壁3116およびフェースプレート3117により、表示装置の内部を真空に維持するための気密容器を形成している。
【0019】
リアプレート3115には基板3111が固定されている。この基板3111上には電子放出素子3112が、N×M個形成されている(N、Mは2以上の正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適宜設定される)。また、前記N×M個の電子放出素子3112は、M本の走査配線3113とN本の変調配線3114により配線されている。走査配線3113と変調配線3114の少なくとも交差する部分には、両配線間に絶縁層(不図示)が形成されており、電気的な絶縁が保たれている。
【0020】
フェースプレート3117の下面には、蛍光体3118が形成されており、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の蛍光体(不図示)が塗り分けられている。蛍光体3118の間には黒色体(不図示)が設けられている。さらに蛍光体3118のリアプレート3115側の面には、アルミニウム等からなるメタルバック3119が形成されている。
【0021】
Dx1〜DxmおよびDy1〜DynおよびHvは、表示パネルと不図示の電気回路とを電気的に接続するために設けた気密構造の電気接続用端子である。Dx1〜Dxmは走査配線3113と、Dy1〜Dynは変調配線3114と、Hvはメタルバック3119と各々電気的に接続している。
【0022】
また、上記気密容器の内部は10―4Pa程度の真空に保持されている。そのため、画像表示装置の表示面積が大きくなるに従い、気密容器内部と外部の気圧差によるリアプレート3115およびフェースプレート3117の変形あるいは破壊を防止する手段が必要となる。そこで、比較的薄いガラス板からなり大気圧を支えるためのスペーサ3120が設けられている。このようにして、リアプレート3115とフェースプレート3116との間は通常サブミリないし数ミリに保たれ、気密容器内部は高真空に保持されている。
【0023】
以上説明した表示パネルを用いた画像表示装置は、容器外端子Dx1ないしDxm、Dy1ないしDynを通じて各電子放出素子3112に電圧を印加すると、各電子放出素子3112から電子が放出される。それと同時にメタルバック3119に容器外端子Hvを通じて数百[V]ないし数[kV]の高圧を印加して、上記放出された電子を加速し、フェースプレート3117の内面に衝突させる。これにより、蛍光体3118が励起されて発光し、画像が表示される。
【0024】
本実施形態では、電子放出素子3112として、表面伝導型電子放出素子を用いた。
【0025】
図3は、本発明の表示パネルを駆動する駆動回路を示す図である。101は画像データが入力される信号入力回路、103は表示素子108の補正に用いる補正値を記憶するメモリ、102はメモリ103に保持された補正値を用いて画像データを補正する補正回路である。104は変調信号を出力する変調回路、105は走査信号を出力する走査回路、108は表示画像の単位(サブピクセル)である表示素子である。107は表示素子108の輝度を測定する輝度計である。
【0026】
補正の方法の一例として、例えば、CCDなどの輝度計107により、各表示素子108の輝度を測定して求めた補正値をメモリ103に保存しておき、画像表示を行う際に画像データを補正したデータを変調回路104に入力する方法がある。一般に、電子放出素子の電流−電圧特性(輝度特性)は非線形であるため、特定の1つの階調に対してではなく、複数の階調に対して補正値を求めておくことが好ましい。
【0027】
なお、表示素子108の輝度を測定する手段は、必ずしも輝度計には限られない。例えば、電子放出素子の場合は電子放出素子から放出される電流と輝度とに相関があるため、この電流を測定する電流計により輝度を測定してもよい。
【0028】
変調回路104として、変調回路104から出力される電圧波形をパルス幅変調(PWM)とパルス振幅変調(PHM)を組み合わせた波形とすることにより、階調分解能を高めたものを用いた。
【0029】
特に、低階調では変調信号が互いに相似形となるような波形を出力し、高階調では低階調の変調信号とは相似形ではない波形を出力する。本実施形態では、図4に示すように低階調では変調信号が互いに相似な矩形となるような波形を出力し、高階調では低階調の変調信号とは相似ではない矩形の波形を出力する変調回路104を用いた。
【0030】
より詳細には、第2階調よりも小さい階調(例えば第1階調)の波形は、第2階調の波形と相似な矩形の波形となっている。そして、第2階調よりも大きい階調(例えば第3階調)の波形は、第1階調や第2階調の波形とは相似ではない矩形の波形となっている。
【0031】
本実施形態においてメモリ103は、各表示素子108に対して、少なくとも第2階調における輝度を測定して求めた補正値を格納している。補正回路102は、第2階調よりも小さい階調(例えば第1階調)に対して、メモリ103に格納された第2階調における輝度を測定して求めた補正値を用いて補正を行う。
【0032】
本実施形態によれば、波形のなまりが生じた場合、波形のなまりも相似に近い形となるため、波形のなまりの影響(波形のなまりを含む変調信号の波形のうち、波形のなまりの大きさ)も同程度となる。従って、変調信号の波形が相似形ではない階調における輝度を測定して求めた補正値を用いて補正を行う場合と比べて、補正の精度を向上させることができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、第1階調よりも大きい第2階調の輝度を測定して求めた補正値を用いて第1階調の補正を行う構成を説明したが、本発明はかかる構成に限られるものではない。すなわち、第1階調の輝度を測定して求めた補正値を用いて第2階調の補正を行ってもよい。この場合も第1階調の変調信号と第2階調の変調信号とは相似形となるため、変調信号の波形が相似形ではない階調における輝度を測定して求めた補正値を用いて補正を行う場合と比べて、補正の精度を向上させることができる。
【0034】
しかし、低階調側の輝度を精度よく測定するためには長い時間が必要になる。そのため、相似な変調信号である第1階調の変調信号と第2階調の変調信号のうち、大きい階調である第2階調の輝度を測定して求めた補正値を用いて、小さい階調である第1階調の補正を行うことが好ましい。更には、第2階調は変調信号が相似形となる階調の中で最大の階調であることがより好ましい。
【0035】
なお、本実施形態では第3階調の変調信号は第1階調や第2階調の変調信号と相似形ではない矩形の波形としたが、本実施形態は全ての階調の変調信号が相似形である構成を排除するものではない。全ての階調の変調信号が相似形である場合は、本実施形態を説明するために上述した第3階調は不要となり、上述した第1階調と第2階調のみによって本実施形態を説明することができる。
【0036】
しかし、より高い輝度の表示を行うためには、変調信号のパルス幅とパルス振幅とで決まる波形の面積が大きい方が好ましい。そのため、全ての階調の変調信号が相似形となるような構成を用いるよりは、低階調側の変調信号が相似形であり高階調側の変調信号が低階調側の変調信号とは相似形ではないような構成の方が好ましい。
【0037】
<第2の実施形態>
本実施形態では、図5に示すように低階調では変調信号が互いに相似な三角形となるような波形を出力し、高階調では低階調の変調信号とは相似ではない波形を出力する変調回路104を用いた。
【0038】
より詳細には、第2階調よりも小さい階調(例えば第1階調)の波形は、第2階調の波形と相似な三角形の波形となっている。そして、第2階調よりも大きい階調(例えば第3階調)の波形は台形の波形となっている。その他は第1の実施形態と同様である。
【0039】
本実施形態においても、変調信号の波形が相似形ではない階調における輝度を測定して求めた補正値を用いて補正を行う場合と比べて、補正の精度を向上させることができる。
【0040】
更に、三角形の変調信号は矩形の変調信号に比べて信号の立ち上がりが緩やかになるため、リンギングを抑制することができる。
【0041】
なお、本実施形態では第3階調の変調信号は台形の波形としたが、本実施形態は全ての階調の変調信号が相似な三角形である構成を排除するものではない。全ての階調の変調信号が相似な三角形である場合は、本実施形態を説明するために上述した第3階調は不要となり、上述した第1階調と第2階調のみによって本実施形態を説明することができる。
【0042】
しかし、より高い輝度の表示を行うためには、変調信号のパルス幅とパルス振幅とで決まる波形の面積が大きい方が好ましい。そのため、全ての階調の変調信号が相似な三角形となるような構成を用いるよりは、低階調側の変調信号が相似な三角形であり高階調側の変調信号が低階調側の変調信号とは相似形ではない形状(例えば台形)とする構成の方が好ましい。
【0043】
<第3の実施形態>
本実施形態では、図6に示すように低階調では変調信号が互いに相似な台形となるような波形を出力し、高階調では低階調の変調信号とは相似ではない台形を出力する変調回路104を用いた。
【0044】
より詳細には、第2階調よりも小さい階調(例えば第1階調)の波形は、第2階調の波形と相似な台形の波形となっている。そして、第2階調よりも大きい階調(例えば第3階調)の波形は、第1階調や第2階調の波形とは相似ではない台形の波形となっている。その他は第1の実施形態と同様である。
【0045】
本実施形態においても、変調信号の波形が相似形ではない階調における輝度を測定して求めた補正値を用いて補正を行う場合と比べて、補正の精度を向上させることができる。
【0046】
更に、本実施形態の台形の変調信号は矩形の変調信号に比べて信号の立ち上がりが緩やかになるため、リンギングを抑制することができる。リンギングを抑制することにより、表示素子の破壊や画質の劣化を抑制することができる。
【0047】
また、台形の変調信号は三角形の変調信号に比べて、変調信号の波形に占める立ち上がり、立ち下がりの部分が小さくなるため、波形のなまりの影響をより小さくすることができる。
【0048】
なお、本実施形態では第3階調の変調信号は第1階調や第2階調の変調信号と相似形ではない台形の波形としたが、本実施形態は全ての階調の変調信号が相似形である構成を排除するものではない。全ての階調の変調信号が相似形である場合は、本実施形態を説明するために上述した第3階調は不要となり、上述した第1階調と第2階調のみによって本実施形態を説明することができる。
【0049】
しかし、より高い輝度の表示を行うためには、変調信号のパルス幅とパルス振幅とで決まる波形の面積が大きい方が好ましい。そのため、全ての階調の変調信号が相似形となるような構成を用いるよりは、低階調側の変調信号が相似形であり高階調側の変調信号が低階調側の変調信号とは相似形ではないような構成の方が好ましい。
【0050】
<第4の実施形態>
上述した実施形態では、表面伝導型電子放出素子を用いた画像表示装置を例として本発明を説明したが、表面伝導型電子放出素子以外の電子放出素子を用いた画像表示装置に対しても本発明を適用することができる。
【0051】
また、電子放出素子以外の表示素子を用いた画像表示装置に対しても本発明を適用することができる。
【0052】
例えば、有機EL素子を用いた画像表示装置やプラズマ表示装置、液晶表示装置などに対して本発明を適用することができる。
【0053】
特に、画像表示装置の駆動方法として単純マトリクス駆動を用いる画像表示装置に対して、本発明をより好適に適用することができる。単純マトリクス駆動では一つの走査配線を選択する間に、多数の変調配線に電圧を印加するため、走査配線を流れる電流は変調配線を流れる電流に比べて非常に大きくなる。その際、走査配線の抵抗が大きいと走査配線を流れる電流により電圧降下が生じてしまい、表示素子に対して適切な電圧を印加することが困難となってしまう。そこで、走査配線のインピーダンスを変調配線のインピーダンスよりも小さくするのが一般的である。
【0054】
走査信号についても波形のなまりは生じ得るが、変調配線のインピーダンスに比べて走査配線のインピーダンスは非常に小さく、走査信号の波形のなまりも小さくなる。そのため、インピーダンスが大きく波形のなまりの影響が大きい変調信号に対して本発明を適用することで、表示素子の輝度特性のばらつきを精度よく補正することが出来る。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
図2のような電子放出素子を有する画像表示装置に対し等価回路を組み、回路シミュレーターでシミュレーションを行った。図7は、本発明の表示素子の等価回路を示す図である。
【0056】
電子放出素子201の電界による電子放出は、Fowler Nordheimの式で記述した。走査配線204の抵抗は1ラインで5Ω、変調配線203の抵抗は1ラインで400Ωとし、変調配線抵抗が±50Ωばらついたときの輝度のばらつきを計算して求めた。各表示素子の交差容量と素子の寄生容量を合わせた容量202は0.4pFに設定した。
【0057】
本実施例では、走査回路105からは図8に示すように、一つの走査配線204を選択する期間に−10Vのパルス電圧を印加した。
【0058】
本実施例では、変調回路104から図9(a)のような矩形の変調信号を出力した。図中、301は第1階調の変調信号を、302は第2階調の変調信号を示すものである。第2階調の変調信号302を印加した場合の輝度から求めた補正値を用いて第1階調の補正を行った。
【0059】
より詳細には、本実施例では総階調数を256とし、階調0から階調80までの変調信号は互いに相似な矩形となるようにし、階調81から階調255までの変調信号は、階調0から階調80までの変調信号とは相似ではない矩形となるようにした。本実施例では、第1階調を階調40、第2階調を階調80とした。
【0060】
本実施例では、3つの表示素子A、B、Cを用いて、以下のような条件でシミュレーションを行った。
【0061】
まず、表示素子A、B、Cに接続される変調配線の抵抗をそれぞれ350Ω、400Ω、450Ωとした。この場合、表示素子Cの変調信号の波形のなまりが最も大きくなり、表示素子Cの輝度が最小となる。
【0062】
ここで、本発明の第2階調に相当する階調80における各表示素子の輝度を測定し、その結果をそれぞれLMA、LMB、LMCとした。表示素子Cに輝度を合わせる場合、表示素子Aの補正値MA=LMC/LMA、表示素子Bの補正値MB=LMC/LMB、表示素子Cの補正値MC=LMC/LMCとなる。この補正値がメモリ103に格納される。
【0063】
本実施例では、配線のインピーダンスによる影響のみを考慮しているが、実際には輝度測定の誤差やメモリ103に補正値を格納する場合の量子化誤差等を考慮して補正値を格納してもよい。
【0064】
第1階調(階調40)における各表示素子の輝度及びそのばらつき、第2階調(階調80)における各表示素子の輝度、第2階調の輝度から求めた補正値を表1に示した。
【0065】
また、第1階調に第2階調の輝度から求めた補正値を乗じた補正後の階調、及び、補正後の階調における各表示素子の輝度とそのばらつきも表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
本実施例では、第1階調において補正前に11.54%であった輝度のばらつきを、補正により2.92%まで低減させることができた。
【0068】
なお、本実施例においては、階調数と輝度とが線形の関係にあるという条件で、第1階調(階調40)に補正値を乗じた階調を補正後の階調とした。しかし、階調数と輝度とが非線形である場合にはこれらの条件を考慮して補正後の階調を求めることが好ましい。
【0069】
(実施例2)
本実施例でも、実施例1と同様なシミュレーションを行った。本実施例が実施例1と異なるのは、変調回路104から図9(b)のような三角形の変調信号を出力した点である。図中、401は第1階調の変調信号を、402は第2階調の変調信号を示すものである。第2階調の変調信号402を印加した場合の輝度から求めた補正値を用いて第1階調の補正を行った。
【0070】
本実施例のシミュレーションの結果を表2に示した。
【0071】
【表2】
【0072】
本実施例では、第1階調において補正前に8.68%であった輝度のばらつきを、補正により0.87%まで低減させることができた。また、リンギングもほとんど発生しなかった。
【0073】
(実施例3)
本実施例でも、実施例1と同様なシミュレーションを行った。本実施例が実施例1と異なるのは、変調回路104から図9(c)のような台形の変調信号を出力した点である。図中、501は第1階調の変調信号を、602は第2階調の変調信号を示すものである。第2階調の変調信号602を印加した場合の輝度から求めた補正値を用いて第1階調の補正を行った。
【0074】
本実施例のシミュレーションの結果を表3に示した。
【0075】
【表3】
【0076】
本実施例では、第1階調において補正前に2.70%であった輝度のばらつきを、補正により0.76%まで低減させることができた。また、リンギングもほとんど発生しなかった。
【0077】
(比較例)
本比較例でも、実施例1と同様なシミュレーションを行った。本実施例が実施例1と異なるのは、変調回路104から図9(d)のようなパルス幅変調の変調信号を出力した点である。図中、601は第1階調の変調信号を、602は第2階調の変調信号を示すものである。第2階調の変調信号602を印加した場合の輝度から求めた補正値を用いて第1階調の補正を行った。
【0078】
より詳細には、本比較例では階調数を256とし、階調0から階調255までの変調信号は互いに相似ではない矩形となるようにした。本比較例では、第1階調を階調40、第2階調を階調80とした。
【0079】
本比較例のシミュレーションの結果を表4に示した。
【0080】
【表4】
【0081】
本比較例では、第1階調において補正前に11.54%であった輝度のばらつきを、補正により10.26%までしか低減させることができなかった。
【0082】
(実施例4)
以下、上述した実施例に示した三角形や台形の変調信号を出力する具体的な回路構成について説明する。
【0083】
画像表示装置は、表示パネルを駆動するための駆動手段として、走査回路と変調回路を備えている。走査回路は駆動対象の1または複数の走査配線に選択電位を出力する回路であり、変調回路は画像データに基づき変調パルスを生成し、その変調パルスを変調配線に出力する回路である。本実施形態の変調回路は、スロープ状に立ち上がる第1波形、波高値を規定する第2波形、スロープ状に立ち下がる第3波形を適宜組み合わせて、変調パルスの波形(源波形)を生成する。変調回路は、画像データに基づき、波形制御のための制御信号を生成するロジック回路を有している。この制御信号によって、第1波形、第2波形、第3波形を切替えるタイミングや第2波形の波高値などを自由に制御することができる。
【0084】
以下、本実施形態の変調回路で出力可能な変調パルスの例を挙げる。いずれの変調パルスも、立ち上がり及び立ち下がりが緩やかなスロープ状になっているため、電圧遷移時のオーバーシュート、アンダーシュート、リンギングなどの波形乱れを可及的に抑制できる。よって画像表示装置の階調性を向上することができる。
【0085】
(変調パルスの例1)
第1波形に続いて第3波形を出力することで、三角形状のパルスを生成することができる。第1波形から第3波形への切替えのタイミングを遅くしていくことにより、大きいパルス、すなわち大きい階調値に対応するパルスを生成することができる。
【0086】
(変調パルスの例2)
第1波形でパルスを波高値hまで立ち上げ、第2波形で波高値hを維持し、第3波形で波高値hから立ち下げることで、台形状のパルスを生成することができる。ここで、第2波形を出力する時間を長くしていくことにより、大きい階調値に対応するパルスを生成することができる。
【0087】
(変調パルスの例3)
階調値に応じて三角形状のパルスと台形状のパルスとを使い分けることもできる。たとえば、階調値n(nは1以上の整数)では下記(1)の制御を行い、階調値n+1からn+k(kは1以上の整数)までは下記(2)の制御を行う。
【0088】
(1)階調値nに対応する変調パルスを出力する場合
変調パルスの出力開始時点から時間t1をかけてスロープ状に波高値をh1まで立ち上げ、該変調パルスの出力開始時点から時間t1経過した時点から波高値を立ち下げる。
【0089】
(2)階調値n+kに対応する変調パルスを出力する場合
変調パルスの出力開始時点から時間t2をかけてスロープ状に波高値をh2まで立ち上げた後、該変調パルスの出力開始時点から時間t2+f(k)経過する時点まで波高値h2を維持し、その後、波高値を立ち下げる。
【0090】
ここで、t2>t1、h2>h1である。またf(k)はkが大きくなるにしたがって大きくなる値である。f(k)は典型的にはkの一次関数であるが、単調増加する関数であれば一次関数には限らない。
【0091】
上記(2)の制御は、階調値にしたがってパルス幅(台形波形の平坦部分の長さ)を伸ばしていく制御である。なお、k=1の時にf(k)が0である場合、(2)のパルスは三角形状のパルスとなる。上記(1)で得られる三角形状のパルスは、(2)でk=1の時に得られるパルスよりも1階調分小さいパルスに相当する。このような制御により、台形状パルスのパルス幅変調で表現可能な輝度(つまりk=1の時の輝度)よりも、さらに小さい輝度を実現でき、画像表示装置の階調性を向上できる。
【0092】
また、以下の(3)の制御を行うことも好ましい。
【0093】
(3)階調値n−1に対応する変調パルスを出力する場合
変調パルスの出力開始時点から時間t3をかけてスロープ状に波高値をh3まで立ち上げ、該変調パルスの出力開始時点から時間t3経過した時点から波高値を立ち下げる。ここでt3<t1、h3<h1である。
【0094】
(3)の制御は、(1)のパルスよりもさらに小さい三角形状のパルスを生成するものである。これによりさらに小さい輝度を実現でき、画像表示装置の階調性を一層向上できる。なお同じようにして(3)のパルスよりもさらに小さい三角形状のパルスを生成してもよい。
【0095】
図10および図11は、変調パルスの波形の一例を示している。この例では、階調値1〜nまで三角形状パルスを徐々に大きくしていき、階調値n+1以降は、台形状パルスのパルス幅を徐々に長くしていく。なお、パルス波形の中の黒い部分は、1階調前のパルスとの差分を表している。図10は変調パルスの波高値がV4レベルであり、図11は波高値がV3レベルである(V4>V3)。図10の変調パルスのほうが高輝度表示が可能である。たとえば、高輝度が好ましい映像を表示する場合や、高輝度の表示モードが選択された場合には、図10の制御を採用すればよい。また低輝度が好ましい映像を表示する場合や、低輝度の表示モードが選択された場合には、図11の制御を採用すればよい。波高値をV1やV2にすればさらなる低輝度を実現できる。
【0096】
では、上述した変調パルスを出力するための画像表示装置の構成および制御方法について、具体的に説明する。
【0097】
(画像表示装置)
図12は、本発明の実施例に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。画像表示装置は、概略、表示パネル(画像表示部)としてのマルチ電子源A1と、マルチ電子源A1を駆動する駆動装置と、を備えている。
【0098】
駆動装置は、出力データ回路、変調回路A2、走査回路A3、変調電源回路A7、および走査電源回路A8で構成される。出力データ回路は、タイミング発生回路A4、データ変換回路A5、パラレル/シリアル変換回路A6などを備えている。
【0099】
マルチ電子源A1は、複数の電子放出素子、複数の走査配線、複数の変調配線を備えており、走査配線と変調配線の交差部のそれぞれに電子放出素子が形成されている。走査配線に選択電位を供給し、変調配線に変調パルスを供給すると、選択電位と変調パルスの電位差である駆動電圧が電子放出素子に印加される。この駆動電圧の印加時間や電圧値を適宜制御することにより、所望の素子に所望の輝度で発光させることができる。
【0100】
変調回路A2は、マルチ電子源A1の変調配線に接続されている。この変調回路A2は、出力データ回路から供給される画像データに基づいて変調信号(変調パルス)を生成し、その変調信号をマルチ電子源A1の各変調配線に出力する回路である。
【0101】
変調電源回路A7は、複数の電圧値を出力可能に構成された電源回路である。変調電源回路A7は、変調回路A2の回路動作用の電源であるとともに、変調回路A2から出力される変調パルスの電圧値を規定するための電源である。変調電源回路A7は、一般的に電圧源回路であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0102】
走査回路A3は、マルチ電子源A1の走査配線に接続されている。走査回路A3は、全走査配線の中から駆動対象とする一本または数本の走査配線を選択し、選択する走査配線を順次切り替えるための回路である。一般的には、一行ずつ順次行選択する線順次走査が行われるが、これに限定されるものではない。走査回路A3は、飛び越し走査(インタレース走査)、複数行を選択したり面状に選択したりすること(マルチライン走査)も可能である。走査回路A3は、駆動対象の走査配線(選択ライン)に対しては選択電位を供給し、その他の走査配線(非選択ライン)に対しては非選択電位を供給する。
【0103】
走査電源回路A8は、複数の電圧値(選択電位、非選択電位)を出力する電源回路である。一般的には電圧源回路であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0104】
タイミング発生回路A4は、変調回路A2、走査回路A3、データ変換回路A5およびパラレル/シリアル変換回路A6のそれぞれ回路のタイミングを制御する制御データとしてのタイミング信号を発生する回路である。
【0105】
データ変換回路A5は、入力された輝度階調データを、変調回路A2およびマルチ電子源A1に適した画像データに変換する回路である。たとえば、データ変換回路A5は、輝度階調データに対して、逆γ変換、輝度補正、色補正、解像度変換、最大値調整(リミッタ)などの信号処理を施すことができる。
【0106】
パラレル/シリアル変換回路A6は、データ変換回路5から出力された画像データをパラレルデータからシリアルデータに変換し、変調回路A2に出力する回路である。
【0107】
(変調回路)
図13は、変調回路A2の回路構成を示すブロック図である。変調回路A2は、シリアル/パラレル変換回路A9、シフトレジスタA10、データサンプリング回路A11、ロジック回路A12、出力回路A13、で構成されている。
【0108】
本実施例における変調回路A2の動作を説明する。
【0109】
出力データ回路から出力された画像データは、シリアル/パラレル変換回路A9でパラレルデータに変換される。パラレルデータに変換された画像データは、シフトレジスタA10によって、順次データサンプリング回路A11に格納される。
【0110】
マルチ電子源A1の水平方向の画素数(以下、水平方向の画素数をMとする)に相当する画像データが、データサンプリング回路A11に格納される。その後、データサンプリング回路A11に格納された、各画素用の画像データをもとに、ロジック回路A12が、出力回路A13の制御信号(制御シーケンス)を生成し、出力回路A13に送出する。
【0111】
出力回路A13は、制御信号(制御シーケンス)に基づき、変調パルスを生成し、その変調パルスをマルチ電子源A1の変調配線に出力する。
【0112】
(ロジック回路)
図14は、変調回路のロジック回路A12の構成を示すブロック図である。
【0113】
ロジック回路A12は、M個のロジック回路A14を備えている。それぞれのロジック回路A14は、各画素に対応している。以下、1画素分のロジック回路A14を例に、具体的な構成、動作を説明する。
【0114】
ロジック回路A14は、デコーダA14aとシーケンス発生回路A14bとを備えている。データサンプリング回路A11でサンプリングされた画像データは、デコーダA14aに入力される。デコーダA14aは、画像データと出力データ回路からのタイミング信号とから、変調パルスの立ち上がり・立ち下がりタイミング用の制御データを生成する。その制御データは、シーケンス発生回路A14bに入力され、コンパレータ用データとして使用される。またデコーダA14aは、画像データとタイミング信号とから、変調パルスの出力レベルを規定するための制御信号Levelを生成する。制御信号Levelは出力回路A13に入力される。
【0115】
シーケンス発生回路A14bは、タイミング信号として供給されるクロック信号に基づき、クロック数をカウントする。シーケンス発生回路A14b内のコンパレータは、そのカウント値と、立ち上がり・立ち下がりタイミング用の制御データとを比較する。そして、コンパレータの値に基づき、変調パルスの立ち上がりタイミングを規定するための制御信号Trと、変調パルスの立ち下がりタイミングを規定するための制御信号Tfと、が生成される。制御信号Tr、Tfは出力回路A13に入力される。
【0116】
(出力回路)
図15は、変調回路の出力回路A13の構成を示すブロック図である。
【0117】
出力回路A13は、M個の出力回路A15を備えている。それぞれの出力回路A15は、各画素(各変調配線)に対応している。以下、1画素分の出力回路A15を例に、具体的な構成、動作を説明する。
【0118】
出力回路A15は、レベルシフト回路A16、参照波形発生回路A17、出力段A18から構成される。
【0119】
ロジック回路A14から送出された制御信号Tr、Tf、Levelが出力回路A15に入力される。レベルシフト回路A16が、制御信号Tr、Tf、Levelの電圧をロジックレベルから出力回路A15の動作電圧レベルに変換する。レベルシフト回路A16から出力された制御信号Tr、Tf、Levelは、参照波形発生回路A17に入力される。
【0120】
図16は、参照波形発生回路A17の構成を示すブロック図である。参照波形発生回路A17は、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17c、波形切替え部A17dから構成される。
【0121】
この実施形態では、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17cが、それぞれ、本発明の第1波形生成部、第2波形生成部、第3波形生成部に対応する。また、波形切替え部A17dが、本発明の波形切替え部に対応する。
【0122】
(立ち上がり波形の生成)
立ち上がり波形生成動作を説明する。
【0123】
レベルシフトされた制御信号Trは、立ち上がり参照波形生成部A17aに入力される。立ち上がり参照波形生成部A17aは、制御信号Trが入力されると、所定の傾きを持つ立ち上がりスロープ波形を生成し、出力する。立ち上がりスロープ波形(第1波形)としては、スロープ状に緩やかに立ち上がる波形であればどのような波形を用いてもよい。好ましくは単調増加する波形、より好ましくは一定の傾きをもつ波形が好適である。階調制御が容易になるからである。
【0124】
図17は、立ち上がりスロープ波形を生成するための回路構成例である。この回路は、スイッチS1、S2と、電流源Itrと、容量Ctrから構成される。
【0125】
制御信号Trがオン状態(High)の時、スイッチS1はオン状態、スイッチS2はオフ状態となる。スイッチS1がオン状態に変化する事で、電流源Itrから一定の電流が流れ込み、電荷が容量Ctrに充電される。この動作により、出力電圧Tr_OUTは、一定の傾きを持つ波形となる。
【0126】
制御信号Trがオフ状態(Low)に変化すると、スイッチS1はオフ状態、スイッチS2はオン状態となる。この動作により、容量Ctrに充電された電荷は放電され、出力電圧Tr_OUTは0Vとなる。なお、本例では、スイッチS2側にグランドに向けての電流源を接続しても良い。
【0127】
(出力レベルの生成)
出力レベル生成動作を説明する。
【0128】
レベルシフトされた制御信号Levelは、出力レベル生成部A17bに入力される。出力レベル生成部A17bは、制御信号Levelをデジタル/アナログ変換して、一定電圧の電圧レベル信号LEVEL_OUTを出力する。この電圧レベル信号LEVEL_OUTが、変調パルスの波高値を規定するための波形(第2波形)である。
【0129】
(立ち下がり波形の生成)
立ち下がり波形生成動作を説明する。
【0130】
レベルシフトされた制御信号Tfは、立ち下がり参照波形生成部A17cに入力される。立ち下がり参照波形生成部A17cは、波形切替え部A17dから出力される参照波形REF_WFの電圧を常に受けている。立ち下がり参照波形生成部A17cが参照波形REF_WFの電圧を常に受ける理由は、波形切替え部A17dから出力されている電圧レベルからの立ち下がり波形を生成するためである。すなわち、制御信号Tfが入力されると、立ち下がり参照波形生成部A17cは、参照波形REF_WFの電圧値から、所定の傾きを持つ立ち下がりスロープ波形を生成し、出力電圧Tf_OUTを出力する。
【0131】
立ち下がりスロープ波形(第3波形)としては、スロープ状に緩やかに立ち下がる波形であればどのような波形を用いてもよい。好ましくは単調減少する波形、より好ましくは一定の傾きをもつ波形が好適である。階調制御が容易になるからである。
【0132】
図18は、立ち下がりスロープ波形を生成するための回路構成例である。この回路は、スイッチS3、S4と、電流源Itfと、容量Ctfとから構成される。
【0133】
制御信号Tfがオン状態(High)の時、スイッチS3はオン状態、スイッチS4はオフ状態となる。このため参照波形REF_WFと同じ電圧が入力され、容量Ctfが充電される。
【0134】
制御信号Tfがオフ状態(Low)の時、スイッチS3はオフ状態、スイッチS4はオン状態となる。この動作により、出力電圧Tf_OUTは、立ち下がり開始直前の参照波形REF_WFの電圧から、一定の傾きを持つ立ち下がり波形となり、やがてグランドレベルとなる。
【0135】
(出力波形の生成)
波形切替え動作、および出力波形動作を説明する。
【0136】
波形切替え部A17dは、制御信号Tr、Tfに基づき、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17cの参照波形(出力電圧)を切替えることで、参照波形REF_WFを生成し出力段A18に出力する。
【0137】
具体的には、波形切替え部A17dは、
制御信号TrがHighの時、立ち上がり参照波形生成部A17aの出力電圧Tr_OUTを選択し、
制御信号TrがLowの時、出力レベル生成部A17bの出力電圧LEVEL_OUTを選択する。
【0138】
また、波形切替え部A17dは、
制御信号TfがHighの時、制御信号Trの論理を優先し、
制御信号TfがLowの時、立ち下がり参照波形生成部A17cの出力電圧Tr_OUTを選択する。
【0139】
出力段A18は、波形切替え部A17dからの出力波形REF_WFを参照して、同形もしくは相似の波形をもつ変調パルスを生成する。変調パルスOUTは、マルチ電子源A1の変調配線に出力される。出力段A18は、図16のようなオペアンプA18aを用いたユニティゲインバッファ構成が好適である。また、オペアンプの増幅段構成を出力段に採用してもよい。
【0140】
(動作例1)
図19および図20を参照して、出力回路A15の動作タイミングの一例を説明する。図19は出力回路A15の動作例1を示すタイミングチャートであり、図20は動作例1の論理表である。動作例1は、最大電圧レベル(V4)の変調パルスを出力する場合の制御である。
【0141】
制御信号Levelが、出力レベル生成部A17bに入力され、電圧レベル信号LEVEL_OUTが出力される。この例ではV4レベルが出力される。
【0142】
制御信号TrがHighレベルの時、立ち上がり参照波形生成部A17aから、一定の傾きを持つ立ち上がり波形Tr_OUTが出力される。制御信号TrがLowレベルの時、Tr_OUTは0V(グランドレベル)となる。
【0143】
制御信号TfがHighレベルの時、立ち下がり参照波形生成部A17cはREF_WFの電圧を取り込む。制御信号TfがLowレベルになるまで、立ち下がり参照波形生成部A17cはREF_WFの電圧を取り込み続け、その電圧をTf_OUTとして出力する。制御信号TfがLowレベルになると、Tf_OUTはREF_WFから一定の傾きで立ち下がり、やがて、0Vとなる。
【0144】
波形切替え部A17dは、制御信号TrがHighレベルになると、立ち上がり参照波形生成部A17aから出力された参照波形Tr_OUTを選択し、出力する。図19では、制御信号Trは、Tr_OUTの電圧がV4レベルに達するまでの期間、Highとなっている。
【0145】
波形切替え部A17dは、制御信号TrがLowレベルになると、制御信号TfがHighレベルの場合は、LEVEL_OUTを選択し、出力する。制御信号TfがLowレベルになると、波形切替え部A17dは、Tf_OUTを選択し、出力する。
【0146】
上記動作により、出力波形用の参照波形REF_WFは、グランドレベルから一定の傾きを持って立ち上がり、指定された電圧レベルを出力後、一定の傾きを持ってグランドレベルまで立ち下がる。
【0147】
(動作例2)
図21および図22を参照して、出力回路A15の動作タイミングの一例を説明する。図21は出力回路A15の動作例2を示すタイミングチャートであり、図22は動作例2の論理表である。
【0148】
動作例1と異なる点は、一定電圧の電圧レベル信号LEVEL_OUTを出力せずに、立ち上がり波形からすぐに立ち下がり波形に切り替わる点である。つまり、動作例1の変調パルスは台形波形であったのに対し、動作例2の変調パルスは三角波形である。三角波形はたとえば低階調の駆動に好適に利用できる。
【0149】
図21は、0VからV1レベルまでの間で三角波形を生成する例を示している。
【0150】
図21および図22から判るように、制御信号Tr、Tfの両方が同じタイミングでHighレベルからLowレベルに切り替わることで、三角波形の参照波形REF_WFが生成される。そして制御信号Tr、TfのHigh期間を長くするほど、三角波形を大きくすることができる。図21の例では、High期間の長さが(a)>(b)>(c)>(d)であり、(d)の時に三角波形の波高値がV1レベルに達している。
【0151】
図21では、0VからV1レベルの間の三角波形の例を説明したが、他の電圧レベル間においても、制御信号TrとTfを適宜設定する事で、三角波形を出力する事が可能である。
【0152】
なお、本実施例の回路構成では、それぞれの出力回路A15が、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17cを備えている。よって、M画素分の出力回路A15のそれぞれが、変調パルスの立ち上がりタイミング、電圧レベルとその出力期間、および立ち下がりタイミングを、独立で制御可能である。言い換えれば、画素毎(変調配線毎)に、変調パルスの立ち上がりや立ち下がりのタイミングを異ならせたり、電圧レベルを異ならせたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】パルス幅変調方式における変調信号の波形のなまりを示す図である。
【図2】電子放出素子をマトリクス状に並べた画像表示装置の構造を説明する図である。
【図3】駆動回路を示す図である。
【図4】第1の実施形態における変調信号の波形を示す図である。
【図5】第2の実施形態における変調信号の波形を示す図である。
【図6】第3の実施形態における変調信号の波形を示す図である。
【図7】本発明の表示素子の等価回路を示す図である。
【図8】本実施例における走査信号の波形を示す図である。
【図9】本実施例における変調信号の波形を示す図である。
【図10】変調パルスの波形の一例を示す図である。
【図11】変調パルスの波形の一例を示す図である。
【図12】画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図13】変調回路の回路構成を示すブロック図である。
【図14】変調回路のロジック回路の構成を示すブロック図である。
【図15】変調回路の出力回路の構成を示すブロック図である。
【図16】参照波形発生回路の構成を示すブロック図である。
【図17】立ち上がりスロープ波形を生成するための回路構成例である。
【図18】立ち下がりスロープ波形を生成するための回路構成例である。
【図19】出力回路の動作例1を示すタイミングチャートである。
【図20】動作例1の論理表である。
【図21】出力回路の動作例2を示すタイミングチャートである。
【図22】動作例2の論理表である。
【符号の説明】
【0154】
102 補正回路
103 メモリ
104 変調回路
105 走査回路
108 表示素子
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置に関し、特に、単純マトリクス駆動を用いる画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CRTにかわる平面型画像表示装置として、液晶表示装置、プラズマ表示装置、EL表示装置、電子放出素子を用いた画像表示装置などが知られている。
【0003】
電子放出素子を用いた画像表示装置の電子放出素子としては、電界放出型、MIM型、表面伝導型などの電子放出素子が知られている。
【0004】
これらの画像表示装置では、複数の表示素子をマトリクス駆動することにより、画像を表示する。そのため、各表示素子の輝度特性は均一であることが好ましい。
【0005】
しかし、表示素子の製造プロセスなどの不均一性により、数%から10数%の加工ばらつきが表示素子に生じてしまうことがある。そのため、各表示素子の輝度特性にばらつきが発生することがある。また、電圧や電流に対する輝度の変化(輝度特性)は必ずしも直線的な関係ではない。
【0006】
このような各表示素子の輝度特性のばらつきを補償するために、各表示素子の全ての階調に対して補正テーブルを有する構成が提案されている(特許文献1)。
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、表示素子数や階調数が大きくなった場合に、メモリ容量が膨大になるという問題がある。また、低階調側の輝度を精度よく測定するためには長い時間が必要になるという問題がある。実際、輝度計により輝度を測定する場合、0.1cd/m2以下の輝度の測定精度を上げるためには、100cd/m2の輝度の測定の2倍から3倍の露光時間が必要となる。
【0008】
そのため、各表示素子の全ての階調に対して補正テーブルを有する構成を採用することは現実的には困難である。
【0009】
これに対し、各表示素子の複数の階調(輝度補正点)に対して補正データを有し、輝度補正点の間の階調に対しては、補間により補正データを求める構成が提案されている(特許文献2)。
【0010】
ここで、一般に表示素子や配線には、変調配線抵抗、変調配線と走査配線との交差容量、表示素子の寄生容量等のインピーダンスが存在するため、これらに起因して、波形のなまりが生ずることがある。
【0011】
図1は、パルス幅変調方式における変調信号の波形のなまりを示す図である。実線は低階調の変調信号を、点線は高階調の変調信号を示している。(a)は波形のなまりが生じない場合の理想的な変調信号を示したものである。(b)は波形のなまりが生じる現実的な変調信号を示したものである。
【0012】
一般に、高階調の変調信号よりも低階調の変調信号の方が波形のなまりによる影響が大きくなる。そのため、高階調の輝度を測定して求めた補正値を用いて低階調の輝度の補正を行うと、波形のなまりによる誤差を受け、場合によっては線状の筋むらが生じてしまう。
【特許文献1】特開2000−122598号公報
【特許文献2】国際公開第2005/124734号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、表示素子の輝度特性のばらつきを精度よく補正することができる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の画像表示装置は、複数の表示素子と、複数の表示素子を駆動する駆動回路であって、複数の表示素子の輝度特性のばらつきを階調に応じて補正する補正回路を有する駆動回路と、を有し、駆動回路は、第1階調の変調信号と第2階調の変調信号とが相似形である変調信号を出力し、補正回路は、第2階調の変調信号で表示素子を駆動して測定した該表示素子の輝度特性から求めた値を用いて第1階調の補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像表示装置によれば、表示素子の輝度特性のばらつきを精度よく補正することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<第1の実施形態>
以下、表示素子として電子放出素子を用いた画像表示装置を例として、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図2は電子放出素子を用いた画像表示装置の表示パネルの一例を示す斜視図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。
【0018】
図中、3115はリアプレート、3116は側壁、3117はフェースプレートである。リアプレート3115、側壁3116およびフェースプレート3117により、表示装置の内部を真空に維持するための気密容器を形成している。
【0019】
リアプレート3115には基板3111が固定されている。この基板3111上には電子放出素子3112が、N×M個形成されている(N、Mは2以上の正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適宜設定される)。また、前記N×M個の電子放出素子3112は、M本の走査配線3113とN本の変調配線3114により配線されている。走査配線3113と変調配線3114の少なくとも交差する部分には、両配線間に絶縁層(不図示)が形成されており、電気的な絶縁が保たれている。
【0020】
フェースプレート3117の下面には、蛍光体3118が形成されており、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の蛍光体(不図示)が塗り分けられている。蛍光体3118の間には黒色体(不図示)が設けられている。さらに蛍光体3118のリアプレート3115側の面には、アルミニウム等からなるメタルバック3119が形成されている。
【0021】
Dx1〜DxmおよびDy1〜DynおよびHvは、表示パネルと不図示の電気回路とを電気的に接続するために設けた気密構造の電気接続用端子である。Dx1〜Dxmは走査配線3113と、Dy1〜Dynは変調配線3114と、Hvはメタルバック3119と各々電気的に接続している。
【0022】
また、上記気密容器の内部は10―4Pa程度の真空に保持されている。そのため、画像表示装置の表示面積が大きくなるに従い、気密容器内部と外部の気圧差によるリアプレート3115およびフェースプレート3117の変形あるいは破壊を防止する手段が必要となる。そこで、比較的薄いガラス板からなり大気圧を支えるためのスペーサ3120が設けられている。このようにして、リアプレート3115とフェースプレート3116との間は通常サブミリないし数ミリに保たれ、気密容器内部は高真空に保持されている。
【0023】
以上説明した表示パネルを用いた画像表示装置は、容器外端子Dx1ないしDxm、Dy1ないしDynを通じて各電子放出素子3112に電圧を印加すると、各電子放出素子3112から電子が放出される。それと同時にメタルバック3119に容器外端子Hvを通じて数百[V]ないし数[kV]の高圧を印加して、上記放出された電子を加速し、フェースプレート3117の内面に衝突させる。これにより、蛍光体3118が励起されて発光し、画像が表示される。
【0024】
本実施形態では、電子放出素子3112として、表面伝導型電子放出素子を用いた。
【0025】
図3は、本発明の表示パネルを駆動する駆動回路を示す図である。101は画像データが入力される信号入力回路、103は表示素子108の補正に用いる補正値を記憶するメモリ、102はメモリ103に保持された補正値を用いて画像データを補正する補正回路である。104は変調信号を出力する変調回路、105は走査信号を出力する走査回路、108は表示画像の単位(サブピクセル)である表示素子である。107は表示素子108の輝度を測定する輝度計である。
【0026】
補正の方法の一例として、例えば、CCDなどの輝度計107により、各表示素子108の輝度を測定して求めた補正値をメモリ103に保存しておき、画像表示を行う際に画像データを補正したデータを変調回路104に入力する方法がある。一般に、電子放出素子の電流−電圧特性(輝度特性)は非線形であるため、特定の1つの階調に対してではなく、複数の階調に対して補正値を求めておくことが好ましい。
【0027】
なお、表示素子108の輝度を測定する手段は、必ずしも輝度計には限られない。例えば、電子放出素子の場合は電子放出素子から放出される電流と輝度とに相関があるため、この電流を測定する電流計により輝度を測定してもよい。
【0028】
変調回路104として、変調回路104から出力される電圧波形をパルス幅変調(PWM)とパルス振幅変調(PHM)を組み合わせた波形とすることにより、階調分解能を高めたものを用いた。
【0029】
特に、低階調では変調信号が互いに相似形となるような波形を出力し、高階調では低階調の変調信号とは相似形ではない波形を出力する。本実施形態では、図4に示すように低階調では変調信号が互いに相似な矩形となるような波形を出力し、高階調では低階調の変調信号とは相似ではない矩形の波形を出力する変調回路104を用いた。
【0030】
より詳細には、第2階調よりも小さい階調(例えば第1階調)の波形は、第2階調の波形と相似な矩形の波形となっている。そして、第2階調よりも大きい階調(例えば第3階調)の波形は、第1階調や第2階調の波形とは相似ではない矩形の波形となっている。
【0031】
本実施形態においてメモリ103は、各表示素子108に対して、少なくとも第2階調における輝度を測定して求めた補正値を格納している。補正回路102は、第2階調よりも小さい階調(例えば第1階調)に対して、メモリ103に格納された第2階調における輝度を測定して求めた補正値を用いて補正を行う。
【0032】
本実施形態によれば、波形のなまりが生じた場合、波形のなまりも相似に近い形となるため、波形のなまりの影響(波形のなまりを含む変調信号の波形のうち、波形のなまりの大きさ)も同程度となる。従って、変調信号の波形が相似形ではない階調における輝度を測定して求めた補正値を用いて補正を行う場合と比べて、補正の精度を向上させることができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、第1階調よりも大きい第2階調の輝度を測定して求めた補正値を用いて第1階調の補正を行う構成を説明したが、本発明はかかる構成に限られるものではない。すなわち、第1階調の輝度を測定して求めた補正値を用いて第2階調の補正を行ってもよい。この場合も第1階調の変調信号と第2階調の変調信号とは相似形となるため、変調信号の波形が相似形ではない階調における輝度を測定して求めた補正値を用いて補正を行う場合と比べて、補正の精度を向上させることができる。
【0034】
しかし、低階調側の輝度を精度よく測定するためには長い時間が必要になる。そのため、相似な変調信号である第1階調の変調信号と第2階調の変調信号のうち、大きい階調である第2階調の輝度を測定して求めた補正値を用いて、小さい階調である第1階調の補正を行うことが好ましい。更には、第2階調は変調信号が相似形となる階調の中で最大の階調であることがより好ましい。
【0035】
なお、本実施形態では第3階調の変調信号は第1階調や第2階調の変調信号と相似形ではない矩形の波形としたが、本実施形態は全ての階調の変調信号が相似形である構成を排除するものではない。全ての階調の変調信号が相似形である場合は、本実施形態を説明するために上述した第3階調は不要となり、上述した第1階調と第2階調のみによって本実施形態を説明することができる。
【0036】
しかし、より高い輝度の表示を行うためには、変調信号のパルス幅とパルス振幅とで決まる波形の面積が大きい方が好ましい。そのため、全ての階調の変調信号が相似形となるような構成を用いるよりは、低階調側の変調信号が相似形であり高階調側の変調信号が低階調側の変調信号とは相似形ではないような構成の方が好ましい。
【0037】
<第2の実施形態>
本実施形態では、図5に示すように低階調では変調信号が互いに相似な三角形となるような波形を出力し、高階調では低階調の変調信号とは相似ではない波形を出力する変調回路104を用いた。
【0038】
より詳細には、第2階調よりも小さい階調(例えば第1階調)の波形は、第2階調の波形と相似な三角形の波形となっている。そして、第2階調よりも大きい階調(例えば第3階調)の波形は台形の波形となっている。その他は第1の実施形態と同様である。
【0039】
本実施形態においても、変調信号の波形が相似形ではない階調における輝度を測定して求めた補正値を用いて補正を行う場合と比べて、補正の精度を向上させることができる。
【0040】
更に、三角形の変調信号は矩形の変調信号に比べて信号の立ち上がりが緩やかになるため、リンギングを抑制することができる。
【0041】
なお、本実施形態では第3階調の変調信号は台形の波形としたが、本実施形態は全ての階調の変調信号が相似な三角形である構成を排除するものではない。全ての階調の変調信号が相似な三角形である場合は、本実施形態を説明するために上述した第3階調は不要となり、上述した第1階調と第2階調のみによって本実施形態を説明することができる。
【0042】
しかし、より高い輝度の表示を行うためには、変調信号のパルス幅とパルス振幅とで決まる波形の面積が大きい方が好ましい。そのため、全ての階調の変調信号が相似な三角形となるような構成を用いるよりは、低階調側の変調信号が相似な三角形であり高階調側の変調信号が低階調側の変調信号とは相似形ではない形状(例えば台形)とする構成の方が好ましい。
【0043】
<第3の実施形態>
本実施形態では、図6に示すように低階調では変調信号が互いに相似な台形となるような波形を出力し、高階調では低階調の変調信号とは相似ではない台形を出力する変調回路104を用いた。
【0044】
より詳細には、第2階調よりも小さい階調(例えば第1階調)の波形は、第2階調の波形と相似な台形の波形となっている。そして、第2階調よりも大きい階調(例えば第3階調)の波形は、第1階調や第2階調の波形とは相似ではない台形の波形となっている。その他は第1の実施形態と同様である。
【0045】
本実施形態においても、変調信号の波形が相似形ではない階調における輝度を測定して求めた補正値を用いて補正を行う場合と比べて、補正の精度を向上させることができる。
【0046】
更に、本実施形態の台形の変調信号は矩形の変調信号に比べて信号の立ち上がりが緩やかになるため、リンギングを抑制することができる。リンギングを抑制することにより、表示素子の破壊や画質の劣化を抑制することができる。
【0047】
また、台形の変調信号は三角形の変調信号に比べて、変調信号の波形に占める立ち上がり、立ち下がりの部分が小さくなるため、波形のなまりの影響をより小さくすることができる。
【0048】
なお、本実施形態では第3階調の変調信号は第1階調や第2階調の変調信号と相似形ではない台形の波形としたが、本実施形態は全ての階調の変調信号が相似形である構成を排除するものではない。全ての階調の変調信号が相似形である場合は、本実施形態を説明するために上述した第3階調は不要となり、上述した第1階調と第2階調のみによって本実施形態を説明することができる。
【0049】
しかし、より高い輝度の表示を行うためには、変調信号のパルス幅とパルス振幅とで決まる波形の面積が大きい方が好ましい。そのため、全ての階調の変調信号が相似形となるような構成を用いるよりは、低階調側の変調信号が相似形であり高階調側の変調信号が低階調側の変調信号とは相似形ではないような構成の方が好ましい。
【0050】
<第4の実施形態>
上述した実施形態では、表面伝導型電子放出素子を用いた画像表示装置を例として本発明を説明したが、表面伝導型電子放出素子以外の電子放出素子を用いた画像表示装置に対しても本発明を適用することができる。
【0051】
また、電子放出素子以外の表示素子を用いた画像表示装置に対しても本発明を適用することができる。
【0052】
例えば、有機EL素子を用いた画像表示装置やプラズマ表示装置、液晶表示装置などに対して本発明を適用することができる。
【0053】
特に、画像表示装置の駆動方法として単純マトリクス駆動を用いる画像表示装置に対して、本発明をより好適に適用することができる。単純マトリクス駆動では一つの走査配線を選択する間に、多数の変調配線に電圧を印加するため、走査配線を流れる電流は変調配線を流れる電流に比べて非常に大きくなる。その際、走査配線の抵抗が大きいと走査配線を流れる電流により電圧降下が生じてしまい、表示素子に対して適切な電圧を印加することが困難となってしまう。そこで、走査配線のインピーダンスを変調配線のインピーダンスよりも小さくするのが一般的である。
【0054】
走査信号についても波形のなまりは生じ得るが、変調配線のインピーダンスに比べて走査配線のインピーダンスは非常に小さく、走査信号の波形のなまりも小さくなる。そのため、インピーダンスが大きく波形のなまりの影響が大きい変調信号に対して本発明を適用することで、表示素子の輝度特性のばらつきを精度よく補正することが出来る。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
図2のような電子放出素子を有する画像表示装置に対し等価回路を組み、回路シミュレーターでシミュレーションを行った。図7は、本発明の表示素子の等価回路を示す図である。
【0056】
電子放出素子201の電界による電子放出は、Fowler Nordheimの式で記述した。走査配線204の抵抗は1ラインで5Ω、変調配線203の抵抗は1ラインで400Ωとし、変調配線抵抗が±50Ωばらついたときの輝度のばらつきを計算して求めた。各表示素子の交差容量と素子の寄生容量を合わせた容量202は0.4pFに設定した。
【0057】
本実施例では、走査回路105からは図8に示すように、一つの走査配線204を選択する期間に−10Vのパルス電圧を印加した。
【0058】
本実施例では、変調回路104から図9(a)のような矩形の変調信号を出力した。図中、301は第1階調の変調信号を、302は第2階調の変調信号を示すものである。第2階調の変調信号302を印加した場合の輝度から求めた補正値を用いて第1階調の補正を行った。
【0059】
より詳細には、本実施例では総階調数を256とし、階調0から階調80までの変調信号は互いに相似な矩形となるようにし、階調81から階調255までの変調信号は、階調0から階調80までの変調信号とは相似ではない矩形となるようにした。本実施例では、第1階調を階調40、第2階調を階調80とした。
【0060】
本実施例では、3つの表示素子A、B、Cを用いて、以下のような条件でシミュレーションを行った。
【0061】
まず、表示素子A、B、Cに接続される変調配線の抵抗をそれぞれ350Ω、400Ω、450Ωとした。この場合、表示素子Cの変調信号の波形のなまりが最も大きくなり、表示素子Cの輝度が最小となる。
【0062】
ここで、本発明の第2階調に相当する階調80における各表示素子の輝度を測定し、その結果をそれぞれLMA、LMB、LMCとした。表示素子Cに輝度を合わせる場合、表示素子Aの補正値MA=LMC/LMA、表示素子Bの補正値MB=LMC/LMB、表示素子Cの補正値MC=LMC/LMCとなる。この補正値がメモリ103に格納される。
【0063】
本実施例では、配線のインピーダンスによる影響のみを考慮しているが、実際には輝度測定の誤差やメモリ103に補正値を格納する場合の量子化誤差等を考慮して補正値を格納してもよい。
【0064】
第1階調(階調40)における各表示素子の輝度及びそのばらつき、第2階調(階調80)における各表示素子の輝度、第2階調の輝度から求めた補正値を表1に示した。
【0065】
また、第1階調に第2階調の輝度から求めた補正値を乗じた補正後の階調、及び、補正後の階調における各表示素子の輝度とそのばらつきも表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
本実施例では、第1階調において補正前に11.54%であった輝度のばらつきを、補正により2.92%まで低減させることができた。
【0068】
なお、本実施例においては、階調数と輝度とが線形の関係にあるという条件で、第1階調(階調40)に補正値を乗じた階調を補正後の階調とした。しかし、階調数と輝度とが非線形である場合にはこれらの条件を考慮して補正後の階調を求めることが好ましい。
【0069】
(実施例2)
本実施例でも、実施例1と同様なシミュレーションを行った。本実施例が実施例1と異なるのは、変調回路104から図9(b)のような三角形の変調信号を出力した点である。図中、401は第1階調の変調信号を、402は第2階調の変調信号を示すものである。第2階調の変調信号402を印加した場合の輝度から求めた補正値を用いて第1階調の補正を行った。
【0070】
本実施例のシミュレーションの結果を表2に示した。
【0071】
【表2】
【0072】
本実施例では、第1階調において補正前に8.68%であった輝度のばらつきを、補正により0.87%まで低減させることができた。また、リンギングもほとんど発生しなかった。
【0073】
(実施例3)
本実施例でも、実施例1と同様なシミュレーションを行った。本実施例が実施例1と異なるのは、変調回路104から図9(c)のような台形の変調信号を出力した点である。図中、501は第1階調の変調信号を、602は第2階調の変調信号を示すものである。第2階調の変調信号602を印加した場合の輝度から求めた補正値を用いて第1階調の補正を行った。
【0074】
本実施例のシミュレーションの結果を表3に示した。
【0075】
【表3】
【0076】
本実施例では、第1階調において補正前に2.70%であった輝度のばらつきを、補正により0.76%まで低減させることができた。また、リンギングもほとんど発生しなかった。
【0077】
(比較例)
本比較例でも、実施例1と同様なシミュレーションを行った。本実施例が実施例1と異なるのは、変調回路104から図9(d)のようなパルス幅変調の変調信号を出力した点である。図中、601は第1階調の変調信号を、602は第2階調の変調信号を示すものである。第2階調の変調信号602を印加した場合の輝度から求めた補正値を用いて第1階調の補正を行った。
【0078】
より詳細には、本比較例では階調数を256とし、階調0から階調255までの変調信号は互いに相似ではない矩形となるようにした。本比較例では、第1階調を階調40、第2階調を階調80とした。
【0079】
本比較例のシミュレーションの結果を表4に示した。
【0080】
【表4】
【0081】
本比較例では、第1階調において補正前に11.54%であった輝度のばらつきを、補正により10.26%までしか低減させることができなかった。
【0082】
(実施例4)
以下、上述した実施例に示した三角形や台形の変調信号を出力する具体的な回路構成について説明する。
【0083】
画像表示装置は、表示パネルを駆動するための駆動手段として、走査回路と変調回路を備えている。走査回路は駆動対象の1または複数の走査配線に選択電位を出力する回路であり、変調回路は画像データに基づき変調パルスを生成し、その変調パルスを変調配線に出力する回路である。本実施形態の変調回路は、スロープ状に立ち上がる第1波形、波高値を規定する第2波形、スロープ状に立ち下がる第3波形を適宜組み合わせて、変調パルスの波形(源波形)を生成する。変調回路は、画像データに基づき、波形制御のための制御信号を生成するロジック回路を有している。この制御信号によって、第1波形、第2波形、第3波形を切替えるタイミングや第2波形の波高値などを自由に制御することができる。
【0084】
以下、本実施形態の変調回路で出力可能な変調パルスの例を挙げる。いずれの変調パルスも、立ち上がり及び立ち下がりが緩やかなスロープ状になっているため、電圧遷移時のオーバーシュート、アンダーシュート、リンギングなどの波形乱れを可及的に抑制できる。よって画像表示装置の階調性を向上することができる。
【0085】
(変調パルスの例1)
第1波形に続いて第3波形を出力することで、三角形状のパルスを生成することができる。第1波形から第3波形への切替えのタイミングを遅くしていくことにより、大きいパルス、すなわち大きい階調値に対応するパルスを生成することができる。
【0086】
(変調パルスの例2)
第1波形でパルスを波高値hまで立ち上げ、第2波形で波高値hを維持し、第3波形で波高値hから立ち下げることで、台形状のパルスを生成することができる。ここで、第2波形を出力する時間を長くしていくことにより、大きい階調値に対応するパルスを生成することができる。
【0087】
(変調パルスの例3)
階調値に応じて三角形状のパルスと台形状のパルスとを使い分けることもできる。たとえば、階調値n(nは1以上の整数)では下記(1)の制御を行い、階調値n+1からn+k(kは1以上の整数)までは下記(2)の制御を行う。
【0088】
(1)階調値nに対応する変調パルスを出力する場合
変調パルスの出力開始時点から時間t1をかけてスロープ状に波高値をh1まで立ち上げ、該変調パルスの出力開始時点から時間t1経過した時点から波高値を立ち下げる。
【0089】
(2)階調値n+kに対応する変調パルスを出力する場合
変調パルスの出力開始時点から時間t2をかけてスロープ状に波高値をh2まで立ち上げた後、該変調パルスの出力開始時点から時間t2+f(k)経過する時点まで波高値h2を維持し、その後、波高値を立ち下げる。
【0090】
ここで、t2>t1、h2>h1である。またf(k)はkが大きくなるにしたがって大きくなる値である。f(k)は典型的にはkの一次関数であるが、単調増加する関数であれば一次関数には限らない。
【0091】
上記(2)の制御は、階調値にしたがってパルス幅(台形波形の平坦部分の長さ)を伸ばしていく制御である。なお、k=1の時にf(k)が0である場合、(2)のパルスは三角形状のパルスとなる。上記(1)で得られる三角形状のパルスは、(2)でk=1の時に得られるパルスよりも1階調分小さいパルスに相当する。このような制御により、台形状パルスのパルス幅変調で表現可能な輝度(つまりk=1の時の輝度)よりも、さらに小さい輝度を実現でき、画像表示装置の階調性を向上できる。
【0092】
また、以下の(3)の制御を行うことも好ましい。
【0093】
(3)階調値n−1に対応する変調パルスを出力する場合
変調パルスの出力開始時点から時間t3をかけてスロープ状に波高値をh3まで立ち上げ、該変調パルスの出力開始時点から時間t3経過した時点から波高値を立ち下げる。ここでt3<t1、h3<h1である。
【0094】
(3)の制御は、(1)のパルスよりもさらに小さい三角形状のパルスを生成するものである。これによりさらに小さい輝度を実現でき、画像表示装置の階調性を一層向上できる。なお同じようにして(3)のパルスよりもさらに小さい三角形状のパルスを生成してもよい。
【0095】
図10および図11は、変調パルスの波形の一例を示している。この例では、階調値1〜nまで三角形状パルスを徐々に大きくしていき、階調値n+1以降は、台形状パルスのパルス幅を徐々に長くしていく。なお、パルス波形の中の黒い部分は、1階調前のパルスとの差分を表している。図10は変調パルスの波高値がV4レベルであり、図11は波高値がV3レベルである(V4>V3)。図10の変調パルスのほうが高輝度表示が可能である。たとえば、高輝度が好ましい映像を表示する場合や、高輝度の表示モードが選択された場合には、図10の制御を採用すればよい。また低輝度が好ましい映像を表示する場合や、低輝度の表示モードが選択された場合には、図11の制御を採用すればよい。波高値をV1やV2にすればさらなる低輝度を実現できる。
【0096】
では、上述した変調パルスを出力するための画像表示装置の構成および制御方法について、具体的に説明する。
【0097】
(画像表示装置)
図12は、本発明の実施例に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。画像表示装置は、概略、表示パネル(画像表示部)としてのマルチ電子源A1と、マルチ電子源A1を駆動する駆動装置と、を備えている。
【0098】
駆動装置は、出力データ回路、変調回路A2、走査回路A3、変調電源回路A7、および走査電源回路A8で構成される。出力データ回路は、タイミング発生回路A4、データ変換回路A5、パラレル/シリアル変換回路A6などを備えている。
【0099】
マルチ電子源A1は、複数の電子放出素子、複数の走査配線、複数の変調配線を備えており、走査配線と変調配線の交差部のそれぞれに電子放出素子が形成されている。走査配線に選択電位を供給し、変調配線に変調パルスを供給すると、選択電位と変調パルスの電位差である駆動電圧が電子放出素子に印加される。この駆動電圧の印加時間や電圧値を適宜制御することにより、所望の素子に所望の輝度で発光させることができる。
【0100】
変調回路A2は、マルチ電子源A1の変調配線に接続されている。この変調回路A2は、出力データ回路から供給される画像データに基づいて変調信号(変調パルス)を生成し、その変調信号をマルチ電子源A1の各変調配線に出力する回路である。
【0101】
変調電源回路A7は、複数の電圧値を出力可能に構成された電源回路である。変調電源回路A7は、変調回路A2の回路動作用の電源であるとともに、変調回路A2から出力される変調パルスの電圧値を規定するための電源である。変調電源回路A7は、一般的に電圧源回路であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0102】
走査回路A3は、マルチ電子源A1の走査配線に接続されている。走査回路A3は、全走査配線の中から駆動対象とする一本または数本の走査配線を選択し、選択する走査配線を順次切り替えるための回路である。一般的には、一行ずつ順次行選択する線順次走査が行われるが、これに限定されるものではない。走査回路A3は、飛び越し走査(インタレース走査)、複数行を選択したり面状に選択したりすること(マルチライン走査)も可能である。走査回路A3は、駆動対象の走査配線(選択ライン)に対しては選択電位を供給し、その他の走査配線(非選択ライン)に対しては非選択電位を供給する。
【0103】
走査電源回路A8は、複数の電圧値(選択電位、非選択電位)を出力する電源回路である。一般的には電圧源回路であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0104】
タイミング発生回路A4は、変調回路A2、走査回路A3、データ変換回路A5およびパラレル/シリアル変換回路A6のそれぞれ回路のタイミングを制御する制御データとしてのタイミング信号を発生する回路である。
【0105】
データ変換回路A5は、入力された輝度階調データを、変調回路A2およびマルチ電子源A1に適した画像データに変換する回路である。たとえば、データ変換回路A5は、輝度階調データに対して、逆γ変換、輝度補正、色補正、解像度変換、最大値調整(リミッタ)などの信号処理を施すことができる。
【0106】
パラレル/シリアル変換回路A6は、データ変換回路5から出力された画像データをパラレルデータからシリアルデータに変換し、変調回路A2に出力する回路である。
【0107】
(変調回路)
図13は、変調回路A2の回路構成を示すブロック図である。変調回路A2は、シリアル/パラレル変換回路A9、シフトレジスタA10、データサンプリング回路A11、ロジック回路A12、出力回路A13、で構成されている。
【0108】
本実施例における変調回路A2の動作を説明する。
【0109】
出力データ回路から出力された画像データは、シリアル/パラレル変換回路A9でパラレルデータに変換される。パラレルデータに変換された画像データは、シフトレジスタA10によって、順次データサンプリング回路A11に格納される。
【0110】
マルチ電子源A1の水平方向の画素数(以下、水平方向の画素数をMとする)に相当する画像データが、データサンプリング回路A11に格納される。その後、データサンプリング回路A11に格納された、各画素用の画像データをもとに、ロジック回路A12が、出力回路A13の制御信号(制御シーケンス)を生成し、出力回路A13に送出する。
【0111】
出力回路A13は、制御信号(制御シーケンス)に基づき、変調パルスを生成し、その変調パルスをマルチ電子源A1の変調配線に出力する。
【0112】
(ロジック回路)
図14は、変調回路のロジック回路A12の構成を示すブロック図である。
【0113】
ロジック回路A12は、M個のロジック回路A14を備えている。それぞれのロジック回路A14は、各画素に対応している。以下、1画素分のロジック回路A14を例に、具体的な構成、動作を説明する。
【0114】
ロジック回路A14は、デコーダA14aとシーケンス発生回路A14bとを備えている。データサンプリング回路A11でサンプリングされた画像データは、デコーダA14aに入力される。デコーダA14aは、画像データと出力データ回路からのタイミング信号とから、変調パルスの立ち上がり・立ち下がりタイミング用の制御データを生成する。その制御データは、シーケンス発生回路A14bに入力され、コンパレータ用データとして使用される。またデコーダA14aは、画像データとタイミング信号とから、変調パルスの出力レベルを規定するための制御信号Levelを生成する。制御信号Levelは出力回路A13に入力される。
【0115】
シーケンス発生回路A14bは、タイミング信号として供給されるクロック信号に基づき、クロック数をカウントする。シーケンス発生回路A14b内のコンパレータは、そのカウント値と、立ち上がり・立ち下がりタイミング用の制御データとを比較する。そして、コンパレータの値に基づき、変調パルスの立ち上がりタイミングを規定するための制御信号Trと、変調パルスの立ち下がりタイミングを規定するための制御信号Tfと、が生成される。制御信号Tr、Tfは出力回路A13に入力される。
【0116】
(出力回路)
図15は、変調回路の出力回路A13の構成を示すブロック図である。
【0117】
出力回路A13は、M個の出力回路A15を備えている。それぞれの出力回路A15は、各画素(各変調配線)に対応している。以下、1画素分の出力回路A15を例に、具体的な構成、動作を説明する。
【0118】
出力回路A15は、レベルシフト回路A16、参照波形発生回路A17、出力段A18から構成される。
【0119】
ロジック回路A14から送出された制御信号Tr、Tf、Levelが出力回路A15に入力される。レベルシフト回路A16が、制御信号Tr、Tf、Levelの電圧をロジックレベルから出力回路A15の動作電圧レベルに変換する。レベルシフト回路A16から出力された制御信号Tr、Tf、Levelは、参照波形発生回路A17に入力される。
【0120】
図16は、参照波形発生回路A17の構成を示すブロック図である。参照波形発生回路A17は、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17c、波形切替え部A17dから構成される。
【0121】
この実施形態では、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17cが、それぞれ、本発明の第1波形生成部、第2波形生成部、第3波形生成部に対応する。また、波形切替え部A17dが、本発明の波形切替え部に対応する。
【0122】
(立ち上がり波形の生成)
立ち上がり波形生成動作を説明する。
【0123】
レベルシフトされた制御信号Trは、立ち上がり参照波形生成部A17aに入力される。立ち上がり参照波形生成部A17aは、制御信号Trが入力されると、所定の傾きを持つ立ち上がりスロープ波形を生成し、出力する。立ち上がりスロープ波形(第1波形)としては、スロープ状に緩やかに立ち上がる波形であればどのような波形を用いてもよい。好ましくは単調増加する波形、より好ましくは一定の傾きをもつ波形が好適である。階調制御が容易になるからである。
【0124】
図17は、立ち上がりスロープ波形を生成するための回路構成例である。この回路は、スイッチS1、S2と、電流源Itrと、容量Ctrから構成される。
【0125】
制御信号Trがオン状態(High)の時、スイッチS1はオン状態、スイッチS2はオフ状態となる。スイッチS1がオン状態に変化する事で、電流源Itrから一定の電流が流れ込み、電荷が容量Ctrに充電される。この動作により、出力電圧Tr_OUTは、一定の傾きを持つ波形となる。
【0126】
制御信号Trがオフ状態(Low)に変化すると、スイッチS1はオフ状態、スイッチS2はオン状態となる。この動作により、容量Ctrに充電された電荷は放電され、出力電圧Tr_OUTは0Vとなる。なお、本例では、スイッチS2側にグランドに向けての電流源を接続しても良い。
【0127】
(出力レベルの生成)
出力レベル生成動作を説明する。
【0128】
レベルシフトされた制御信号Levelは、出力レベル生成部A17bに入力される。出力レベル生成部A17bは、制御信号Levelをデジタル/アナログ変換して、一定電圧の電圧レベル信号LEVEL_OUTを出力する。この電圧レベル信号LEVEL_OUTが、変調パルスの波高値を規定するための波形(第2波形)である。
【0129】
(立ち下がり波形の生成)
立ち下がり波形生成動作を説明する。
【0130】
レベルシフトされた制御信号Tfは、立ち下がり参照波形生成部A17cに入力される。立ち下がり参照波形生成部A17cは、波形切替え部A17dから出力される参照波形REF_WFの電圧を常に受けている。立ち下がり参照波形生成部A17cが参照波形REF_WFの電圧を常に受ける理由は、波形切替え部A17dから出力されている電圧レベルからの立ち下がり波形を生成するためである。すなわち、制御信号Tfが入力されると、立ち下がり参照波形生成部A17cは、参照波形REF_WFの電圧値から、所定の傾きを持つ立ち下がりスロープ波形を生成し、出力電圧Tf_OUTを出力する。
【0131】
立ち下がりスロープ波形(第3波形)としては、スロープ状に緩やかに立ち下がる波形であればどのような波形を用いてもよい。好ましくは単調減少する波形、より好ましくは一定の傾きをもつ波形が好適である。階調制御が容易になるからである。
【0132】
図18は、立ち下がりスロープ波形を生成するための回路構成例である。この回路は、スイッチS3、S4と、電流源Itfと、容量Ctfとから構成される。
【0133】
制御信号Tfがオン状態(High)の時、スイッチS3はオン状態、スイッチS4はオフ状態となる。このため参照波形REF_WFと同じ電圧が入力され、容量Ctfが充電される。
【0134】
制御信号Tfがオフ状態(Low)の時、スイッチS3はオフ状態、スイッチS4はオン状態となる。この動作により、出力電圧Tf_OUTは、立ち下がり開始直前の参照波形REF_WFの電圧から、一定の傾きを持つ立ち下がり波形となり、やがてグランドレベルとなる。
【0135】
(出力波形の生成)
波形切替え動作、および出力波形動作を説明する。
【0136】
波形切替え部A17dは、制御信号Tr、Tfに基づき、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17cの参照波形(出力電圧)を切替えることで、参照波形REF_WFを生成し出力段A18に出力する。
【0137】
具体的には、波形切替え部A17dは、
制御信号TrがHighの時、立ち上がり参照波形生成部A17aの出力電圧Tr_OUTを選択し、
制御信号TrがLowの時、出力レベル生成部A17bの出力電圧LEVEL_OUTを選択する。
【0138】
また、波形切替え部A17dは、
制御信号TfがHighの時、制御信号Trの論理を優先し、
制御信号TfがLowの時、立ち下がり参照波形生成部A17cの出力電圧Tr_OUTを選択する。
【0139】
出力段A18は、波形切替え部A17dからの出力波形REF_WFを参照して、同形もしくは相似の波形をもつ変調パルスを生成する。変調パルスOUTは、マルチ電子源A1の変調配線に出力される。出力段A18は、図16のようなオペアンプA18aを用いたユニティゲインバッファ構成が好適である。また、オペアンプの増幅段構成を出力段に採用してもよい。
【0140】
(動作例1)
図19および図20を参照して、出力回路A15の動作タイミングの一例を説明する。図19は出力回路A15の動作例1を示すタイミングチャートであり、図20は動作例1の論理表である。動作例1は、最大電圧レベル(V4)の変調パルスを出力する場合の制御である。
【0141】
制御信号Levelが、出力レベル生成部A17bに入力され、電圧レベル信号LEVEL_OUTが出力される。この例ではV4レベルが出力される。
【0142】
制御信号TrがHighレベルの時、立ち上がり参照波形生成部A17aから、一定の傾きを持つ立ち上がり波形Tr_OUTが出力される。制御信号TrがLowレベルの時、Tr_OUTは0V(グランドレベル)となる。
【0143】
制御信号TfがHighレベルの時、立ち下がり参照波形生成部A17cはREF_WFの電圧を取り込む。制御信号TfがLowレベルになるまで、立ち下がり参照波形生成部A17cはREF_WFの電圧を取り込み続け、その電圧をTf_OUTとして出力する。制御信号TfがLowレベルになると、Tf_OUTはREF_WFから一定の傾きで立ち下がり、やがて、0Vとなる。
【0144】
波形切替え部A17dは、制御信号TrがHighレベルになると、立ち上がり参照波形生成部A17aから出力された参照波形Tr_OUTを選択し、出力する。図19では、制御信号Trは、Tr_OUTの電圧がV4レベルに達するまでの期間、Highとなっている。
【0145】
波形切替え部A17dは、制御信号TrがLowレベルになると、制御信号TfがHighレベルの場合は、LEVEL_OUTを選択し、出力する。制御信号TfがLowレベルになると、波形切替え部A17dは、Tf_OUTを選択し、出力する。
【0146】
上記動作により、出力波形用の参照波形REF_WFは、グランドレベルから一定の傾きを持って立ち上がり、指定された電圧レベルを出力後、一定の傾きを持ってグランドレベルまで立ち下がる。
【0147】
(動作例2)
図21および図22を参照して、出力回路A15の動作タイミングの一例を説明する。図21は出力回路A15の動作例2を示すタイミングチャートであり、図22は動作例2の論理表である。
【0148】
動作例1と異なる点は、一定電圧の電圧レベル信号LEVEL_OUTを出力せずに、立ち上がり波形からすぐに立ち下がり波形に切り替わる点である。つまり、動作例1の変調パルスは台形波形であったのに対し、動作例2の変調パルスは三角波形である。三角波形はたとえば低階調の駆動に好適に利用できる。
【0149】
図21は、0VからV1レベルまでの間で三角波形を生成する例を示している。
【0150】
図21および図22から判るように、制御信号Tr、Tfの両方が同じタイミングでHighレベルからLowレベルに切り替わることで、三角波形の参照波形REF_WFが生成される。そして制御信号Tr、TfのHigh期間を長くするほど、三角波形を大きくすることができる。図21の例では、High期間の長さが(a)>(b)>(c)>(d)であり、(d)の時に三角波形の波高値がV1レベルに達している。
【0151】
図21では、0VからV1レベルの間の三角波形の例を説明したが、他の電圧レベル間においても、制御信号TrとTfを適宜設定する事で、三角波形を出力する事が可能である。
【0152】
なお、本実施例の回路構成では、それぞれの出力回路A15が、立ち上がり参照波形生成部A17a、出力レベル生成部A17b、立ち下がり参照波形生成部A17cを備えている。よって、M画素分の出力回路A15のそれぞれが、変調パルスの立ち上がりタイミング、電圧レベルとその出力期間、および立ち下がりタイミングを、独立で制御可能である。言い換えれば、画素毎(変調配線毎)に、変調パルスの立ち上がりや立ち下がりのタイミングを異ならせたり、電圧レベルを異ならせたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】パルス幅変調方式における変調信号の波形のなまりを示す図である。
【図2】電子放出素子をマトリクス状に並べた画像表示装置の構造を説明する図である。
【図3】駆動回路を示す図である。
【図4】第1の実施形態における変調信号の波形を示す図である。
【図5】第2の実施形態における変調信号の波形を示す図である。
【図6】第3の実施形態における変調信号の波形を示す図である。
【図7】本発明の表示素子の等価回路を示す図である。
【図8】本実施例における走査信号の波形を示す図である。
【図9】本実施例における変調信号の波形を示す図である。
【図10】変調パルスの波形の一例を示す図である。
【図11】変調パルスの波形の一例を示す図である。
【図12】画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図13】変調回路の回路構成を示すブロック図である。
【図14】変調回路のロジック回路の構成を示すブロック図である。
【図15】変調回路の出力回路の構成を示すブロック図である。
【図16】参照波形発生回路の構成を示すブロック図である。
【図17】立ち上がりスロープ波形を生成するための回路構成例である。
【図18】立ち下がりスロープ波形を生成するための回路構成例である。
【図19】出力回路の動作例1を示すタイミングチャートである。
【図20】動作例1の論理表である。
【図21】出力回路の動作例2を示すタイミングチャートである。
【図22】動作例2の論理表である。
【符号の説明】
【0154】
102 補正回路
103 メモリ
104 変調回路
105 走査回路
108 表示素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示素子と、
前記複数の表示素子を駆動する駆動回路であって、前記複数の表示素子の輝度特性のばらつきを階調に応じて補正する補正回路を有する駆動回路と、を有し、
前記駆動回路は、第1階調の変調信号と第2階調の変調信号とが相似形である変調信号を出力し、
前記補正回路は、前記第2階調の変調信号で表示素子を駆動して測定した該表示素子の輝度特性から求めた値を用いて前記第1階調の補正を行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記第2階調は前記第1階調よりも大きい階調であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記第1階調の変調信号と前記第2階調の変調信号とが台形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記第1階調の変調信号と前記第2階調の変調信号とが三角形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記駆動回路は、前記第1階調及び前記第2階調よりも大きい第3階調の変調信号と該第2階調の変調信号とが相似形ではない変調信号を出力し、
前記第3階調の変調信号が台形であることを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記駆動回路は、前記複数の表示素子を単純マトリクス駆動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記表示素子は電子放出素子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項1】
複数の表示素子と、
前記複数の表示素子を駆動する駆動回路であって、前記複数の表示素子の輝度特性のばらつきを階調に応じて補正する補正回路を有する駆動回路と、を有し、
前記駆動回路は、第1階調の変調信号と第2階調の変調信号とが相似形である変調信号を出力し、
前記補正回路は、前記第2階調の変調信号で表示素子を駆動して測定した該表示素子の輝度特性から求めた値を用いて前記第1階調の補正を行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記第2階調は前記第1階調よりも大きい階調であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記第1階調の変調信号と前記第2階調の変調信号とが台形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記第1階調の変調信号と前記第2階調の変調信号とが三角形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記駆動回路は、前記第1階調及び前記第2階調よりも大きい第3階調の変調信号と該第2階調の変調信号とが相似形ではない変調信号を出力し、
前記第3階調の変調信号が台形であることを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記駆動回路は、前記複数の表示素子を単純マトリクス駆動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記表示素子は電子放出素子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−258223(P2009−258223A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104646(P2008−104646)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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