説明

画像解析方法および画像解析装置

【課題】異なる領域間の分子の動きを評価し得る画像解析方法を提供する。
【解決手段】S1〜S3:空間的に異なる複数の解析領域の画像を取得する。解析領域の各画像は、時系列的に取得された複数のデータをそれぞれ有する複数のピクセルから構成されている。S4〜S6:解析領域の画像のピクセルのデータを使用して二つの解析領域の相互相関を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光相関分光分析法(FCCS)と呼ばれる画像解析の手法が知られている。FCCSは、たとえば非特許文献1に示されている。FCCSでは、試料中の一つまたは複数の測定点に対して、ある程度の時間のあいだ(たとえば10秒間)励起光を継続的に照射し、測定点から発する蛍光の強度の揺らぎを検出して相関解析を行なうことによって分子数や拡散定数の推定を行なう。
【0003】
また、ラスターイメージ相関分光法(RICS:Raster Image Correlation Spectroscopy)と呼ばれる画像解析の手法も知られている。RICSはたとえば非特許文献2に示されている。RICSでは、1フレーム以上のラスター走査画像を取得する。ラスター走査画像はたとえば蛍光画像であってよい。蛍光画像の各ピクセルのデータは、対応する試料中の点から発生した蛍光の強度の情報を表す。ピクセルのデータは、それぞれ取得された時間および取得された位置が異なる。
【0004】
これらのピクセルのデータを用いて空間自己相関解析することによって分子の揺らぎによる相関特性が得られる。分子の相関特性からは拡散定数や分子数を求めることができる。拡散定数からは分子拡散時間を求めることができる。分子拡散時間からは分子量を求めることができる。
【0005】
このように、空間自己相関解析をすることによって分子量や分子数等を評価することができるため、分子間の相互作用を観察することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−093277号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Measuring Fast Dynamics in Solutions and Cells with a Laser Scanning Microscope」, Michelle A. Digman, Claire M. Brown, Parijat Sengupta, Paul W. Wiseman, Alan R. Horwitz, and Enrico Gratton, Biophysical Journal, Vol.89, P1317-1327, August 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
FCCSは、試料中の測定点に対して励起光を照射する時間が比較的長いため、試料が損傷を受けやすい。また、解析できる対象が、拡散時間の短いものに限られ、拡散時間の比較的長いものに対しては適用できない。
【0009】
これに対してRICSは、試料の各点に励起光を照射する時間が短いため、試料に与えるダメージが少ない。またRICSは、拡散時間の比較的長いものに対して有効に適用できる。
【0010】
これまでのRICSによる解析は、一つの領域の画像データを用いて分子の拡散時間(または分子数)を算出している。解析結果は、その領域内の分子の動きを評価したものである。このような解析は、異なる領域間の分子の動きを評価することはできない。
【0011】
本発明は、異なる領域間の分子の動きを評価し得る画像解析方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による画像解析方法は、空間的に異なる複数の解析領域の画像を取得する解析領域画像取得ステップを有する。解析領域の各画像は、同時または時系列的に取得された複数のデータをそれぞれ有する複数のピクセルから構成されている。画像解析方法はさらに、前記解析領域の画像のピクセルのデータを使用して二つの解析領域の相互相関を求める相関解析ステップを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なる領域間の分子の動きを評価し得る画像解析方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施形態による画像解析装置を概略的に示している。
【図2】図1に示される制御部の機能ブロックを示している。
【図3】二次元画像の蛍光画像の例を示す。
【図4】三次元画像の蛍光画像の例を示す。
【図5】本発明の第一実施形態による画像解析のフローチャートである。
【図6】観察領域とそこに設定された複数の解析領域を示している。
【図7】観察領域と相互相関を求める二つの解析領域を示している。
【図8】試料中の分子に関する空間相互相関値の計算結果を輝度で示した画像である。
【図9】図8の空間相互相関値の計算結果のフィッティング結果を示している。
【図10】試料中の分子に関する空間相互相関値の計算結果を輝度で示した画像である。
【図11】図10の空間相互相関値の計算結果のフィッティング結果を示している。
【図12】本発明の第二実施形態による画像解析装置を概略的に示している。
【図13】図12に示される制御部の機能ブロックを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0016】
<第一実施形態>
[装置構成]
図1は、本発明の第一実施形態による画像解析装置を概略的に示している。この画像解析装置は、試料の蛍光観察のための走査型共焦点光学顕微鏡をベースに構成されている。
【0017】
図1に示すように、画像解析装置100は、試料Sに光たとえば励起光を照射する光照射部110と、試料Sからの光たとえば蛍光を検出する光検出部130と、画像解析に必要な制御を行なう制御部160と、試料Sを支持する試料ステージ190とを有している。
【0018】
試料Sはマイクロプレートやスライドガラスなどの試料容器に収容され、試料ステージ190に載置される。試料ステージ190は、たとえば、試料Sを光照射部110および光検出部130に対して横方向(xy方向)および高さ方向(z方向)に移動可能に支持する。たとえば、試料ステージ190は、出力軸が互いに直交する三つのステッピング・モーターを含んでおり、これらのステッピング・モーターによって試料Sをxyz方向に移動し得る。
【0019】
画像解析装置100は、たとえば、多重光照射・多重光検出型である。このため、光照射部110はnチャンネルの光源ユニット111を含み、光検出部130はmチャンネルの光検出ユニット131を含んでいる。光源ユニット111は、n個のチャンネルを有し、n種類の異なる波長の励起光を射出し得る。また光検出ユニット131は、m個のチャンネルを有し、m種類の異なる波長の蛍光を検出し得る。光源ユニット111は必ずしも複数のチャンネルを有している必要はなく、1つのチャンネルだけを有していてもよい。また光検出ユニット131も必ずしも複数のチャンネルを有している必要はなく、1つのチャンネルだけを有していてもよい。
【0020】
光照射部110のnチャンネルの光源ユニット111は、光源112a,…,112nとコリメートレンズ114a,…,114nとダイクロイックミラー116a,…,116nとを含んでいる。光源112a,…,112nは、試料Sに含まれる蛍光色素を励起して試料Sから光(蛍光)を発せさせるための励起光を発する。光源112a,…,112nから発せられる励起光の波長は、試料Sに含まれる蛍光色素の種類に対応して、互いに相違している。光源112a,…,112nは、たとえば、試料S中の蛍光色素に合った発振波長のレーザー光源で構成される。コリメートレンズ114a,…,114nは、それぞれ、光源112a,…,112nから発せられた励起光をコリメートする。ダイクロイックミラー116a,…,116nは、それぞれ、コリメートレンズ114a,…,114nを通過した励起光を同じ方向に反射する。ダイクロイックミラー116a,…,116nは、それぞれ、図1の上方から入射する励起光を透過し、図1の右方から入射する励起光を反射する。その結果、光源112a,…,112nからそれぞれ射出された異なる波長の励起光は、ダイクロイックミラー116aの通過後に一本のビームに合成される。ダイクロイックミラー116nは、励起光を透過する必要がないので、単なるミラーに変更されてもよい。
【0021】
光照射部110はさらに、ダイクロイックミラー122とガルバノミラー124と対物レンズ126と対物レンズ駆動機構128を含んでいる。ダイクロイックミラー122は、光源ユニット111からの励起光をガルバノミラー124に向けて反射し、試料Sから発せられる蛍光を透過する。ガルバノミラー124は、励起光を対物レンズ126に向けて反射するとともに、その反射方向を変更する。対物レンズ126は、励起光を収束して試料S内の測定点に照射するとともに、試料S内の測定点からの光を取り込む。対物レンズ126には、微小な共焦点領域(測定点)の形成のために、NA(開口数)の大きいものが使用される。これにより得られる共焦点領域の大きさは、直径0.6μm程度(xy面内)、長さ2μm程度(z方向)の略円筒状となる。ガルバノミラー124は、測定点をxy方向に走査するxy走査機構を構成している。xy走査機構は、ガルバノミラーを使用して構成するほかに、音響光学変調素子(AOM)やポリゴンミラー、ホログラムスキャナーなどを使用して構成してもよい。対物レンズ駆動機構128は、対物レンズ126を光軸に沿って移動させる。これにより、測定点がz方向に移動される。つまり、対物レンズ駆動機構128は、測定点をz方向に走査するz走査機構を構成している。
【0022】
光検出部130は、対物レンズ126とガルバノミラー124とダイクロイックミラー122を光照射部110と共有している。光検出部130はさらに、収束レンズ132とピンホール134とコリメートレンズ136とを含んでいる。収束レンズ132は、ダイクロイックミラー122を透過した光を収束する。ピンホール134は、収束レンズ132の焦点に配置されている。つまり、ピンホール134は、試料S内の測定点に対して共役な位置にあり、測定点からの光だけを選択的に通す。コリメートレンズ136は、ピンホール134を通過した光を平行にする。コリメートレンズ136を通過した光は、mチャンネルの光検出ユニット131に入射する。
【0023】
mチャンネルの光検出ユニット131は、ダイクロイックミラー138a,…,138mと蛍光フィルター140a,…,140mと光検出器142a,…,142mとを含んでいる。ダイクロイックミラー138a,…,138mは、それぞれ、検出対象の蛍光の波長域付近の波長の光を選択的に反射する。ダイクロイックミラー138mは、光を透過する必要がないので、単なるミラーに変更されてもよい。蛍光フィルター140a,…,140mは、それぞれ、ダイクロイックミラー138a,…,138mによって反射された光から、不所望な波長成分の光を遮断し、光源112a,…,112nからの励起光によって生成された蛍光だけを選択的に透過する。蛍光フィルター140a,…,140mを透過した蛍光はそれぞれ光検出器142a,…,142mに入射する。光検出器142a,…,142mは、入射した光の強度に対応した信号を出力する。すなわち、光検出器142a,…,142mは、試料S内の測定点からの蛍光強度信号を出力する。
【0024】
制御部160はたとえばパーソナルコンピューターで構成される。制御部160は、試料Sの観察領域の蛍光画像の取得・記憶・表示、解析領域の設定などの入力待ち、画像の解析処理(相関値の計算や分子数・拡散時間の推定など)を行なう。また制御部160は、xy走査機構であるガルバノミラー124、z走査機構である対物レンズ駆動機構128、試料ステージ190などの制御を行なう。
【0025】
図1に示される制御部の機能ブロックを図2に示す。制御部160は、図2に示すように、走査制御部162と画像形成部164と記憶部166と表示部168と入力部170と解析領域設定部172とデータ抽出部174と解析処理部176とステージ制御部180とを含んでいる。走査制御部162と画像形成部164と記憶部166とステージ制御部180は、上述した光照射部110と光検出部130と共働して観察領域画像取得部を構成する。この観察領域画像取得部はさらに、解析領域設定部172とデータ抽出部174と共働して解析領域画像取得部を構成する。
【0026】
走査制御部162は、試料Sの蛍光画像を取得する際、励起光の照射位置を試料Sに対してラスター走査するようにガルバノミラー124を制御する。走査制御部162はまた、必要であれば、励起光の照射位置を試料Sに対してz走査するように対物レンズ駆動機構128を制御する。画像形成部164は、走査制御部162から入力される励起光の照射位置の情報と光検出器142a,…,142mの出力信号とから試料Sの蛍光画像を形成する。これにより、蛍光画像が取得される。記憶部166は、画像形成部164で形成された蛍光画像を記憶する。表示部168は、試料Sの蛍光画像や解析処理結果を表示する。入力部170は、たとえばマウスやキーボードを含み、表示部168と共同してGUIを構成する。このGUIは、観察領域や解析領域の設定などに利用される。ステージ制御部180は、たとえば観察領域を設定するために、入力部170からの入力情報にしたがって試料ステージ190を制御する。解析領域設定部172は、入力部170からの入力情報にしたがって解析領域を設定する。データ抽出部174は、相関を求める二つの解析領域のデータを抽出する。解析処理部176は、二つの解析領域の画像のピクセルのデータを使用して相互相関を求める。解析処理部176の処理の詳細は後述する。
【0027】
図1において、光源112a,…,112nから発せられた励起光は、コリメートレンズ114a,…,114nとダイクロイックミラー116a,…,116nとダイクロイックミラー122とガルバノミラー124と対物レンズ126を経て試料S内の測定点に照射される。励起光が照射される測定点は、ガルバノミラー124によってxy方向にラスター走査される。また必要であれば、一回のラスター走査が終了するたびに、対物レンズ駆動機構128によってz走査される。測定点は観察領域の全体にわたって走査される。励起光を受けた試料Sは測定点から蛍光を発する。試料Sからの光(蛍光のほかに不所望な反射光などを含む)は、対物レンズ126とガルバノミラー124とダイクロイックミラー122と収束レンズ132を経てピンホール134に至る。ピンホール134は測定点と共役な位置にあるため、試料S内の測定点からの光だけがピンホール134を通過する。ピンホール134を通過した光すなわち試料S内の測定点からの光はコリメートレンズ136を経てmチャンネルの光検出ユニット131に入射する。mチャンネルの光検出ユニット131に入射した光は、ダイクロイックミラー138a,…,138mによって波長にしたがって分離される(つまり分光される)とともに、蛍光フィルター140a,…,140mによって不所望な成分が除去される。蛍光フィルター140a,…,140mを通過した蛍光は光検出器142a,…,142mにそれぞれ入射する。光検出器142a,…,142mは、それぞれ、入射光すなわち試料S内の測定点から発せられた蛍光の強度を示す蛍光強度信号を出力する。この蛍光強度信号は画像形成部164に入力される。画像形成部164は、入力される蛍光強度信号をxy方向(およびz方向)の位置情報に同期させて処理して、試料S内の観察領域の蛍光画像を形成する。形成された蛍光画像は、記憶部166に保存される。記憶部166に保存された蛍光画像は、そのまま表示部168に表示されるか、解析処理部176によって処理され、解析処理結果が表示部168に表示される。
【0028】
[観察領域と空間相関計算式]
観察領域の蛍光画像は、時系列的に取得された複数のデータを有する複数のピクセルから構成される。測定点は、実際には、xyz方向に空間的広がりを有しており、ピクセルは、この測定点の空間的広がりに対応した大きさを有する。観察領域が二次元的領域である場合、蛍光画像は、xy方向に大きさを持つピクセルが二次元的に配列された二次元画像である。また観察領域が三次元的領域である場合、蛍光画像は、xyz方向に大きさを持つピクセルが三次元的に配列された三次元画像である。三次元画像はまた、別の見方をすれば、z位置の異なる複数フレームの二次元画像から構成される。
【0029】
二次元画像の例を図3に示す。図3において、τは、あるピクセルとこれに隣接する次のピクセルとの間の取得時間のずれ(ピクセル時間)である。すなわち、ピクセル時間τは、1ピクセルのデータを取得するのに要する時間である。またτは、あるラインの最初のピクセルとその次のラインの最初のピクセルとの間の取得時間のずれ(ライン時間)である。すなわち、ライン時間τは、1ラインを走査するのに要する時間を意味する。
【0030】
次式(1)は、二次元画像に対する使用するRICSの解析に使用する空間相互相関計算式を表している。式(1)は、解析領域1と解析領域2の相互相関計算式の例である。
【0031】
【数1】

ここで、GはRICSの空間相互相関値、Iは解析領域1の画像のピクセルのデータたとえば蛍光強度データ、Iは解析領域2の画像のピクセルのデータたとえば蛍光強度データ、x,yは測定点の空間的座標、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、M12は解析領域1と解析領域2のデータの積和計算の回数、Mは解析領域1のデータ総数、Mは解析領域2のデータ総数である。
【0032】
次式(2)は、二次元画像に対するRICSの解析に使用するフィッティング式を表している。
【0033】
【数2】

ここで、GはRICSの空間相互相関値、SはRICSの解析におけるスキャンの影響、GはRICSの解析における時間遅延の影響、Dは拡散定数、δはピクセルサイズ、Nは分子数、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、Wは励起レーザビームの横方向の半径、Wは励起レーザビームの縦方向の半径、τはピクセル時間、τはライン時間である。
【0034】
三次元画像の例を図4に示す。図4において、τはピクセル時間、τはライン時間、τは、あるフレームの最初のピクセルとその次のフレームの最初のピクセルとの間の取得時間のずれ(フレーム時間)である。すなわち、フレーム時間τは、1フレームを走査するのに要する時間を意味する。
【0035】
次式(3)は、三次元画像に対するRICSの解析に使用する空間相互相関計算式を表している。式(3)は、解析領域1と解析領域2の相互相関計算式の例である。
【0036】
【数3】

ここで、GはRICSの空間相互相関値、Iは解析領域1の画像のピクセルのデータたとえば蛍光強度データ、Iは解析領域2の画像のピクセルのデータたとえば蛍光強度データ、x,y,zは測定点の空間的座標、ξ,ψ,ηは測定点からの空間的座標の変化量、M12は解析領域1と解析領域2中のデータの積和計算の回数、Mは解析領域1のデータ総数、Mは解析領域2のデータ総数である。
【0037】
次式(4)は、三次元画像に対するRICSの解析に使用するフィッティング式を表している。
【0038】
【数4】

ここで、GはRICSの空間相互相関値、SはRICSの解析におけるスキャンの影響、GはRICSの解析における時間遅延の影響、Dは拡散定数、δはピクセルサイズ、Nは分子数、ξ,ψ,ηは空間的座標の変化量、Wは励起レーザビームの横方向の半径、Wは励起レーザビームの縦方向の半径、τはピクセル時間、τはライン時間、τはフレーム時間である。
【0039】
[測定手順]
以下、図5を参照しながら画像解析の手順について説明する。また、各ステップについて、適宜、図6〜図11を参照しながら説明する。
【0040】
(ステップS1)
試料Sの観察領域の1フレームまたは複数フレームの蛍光画像を取得する。蛍光画像は、光源ユニット111の1つのチャンネルと、それに対応する光検出ユニット131の1つのチャンネルとを介して取得したものである。観察領域は二次元の領域または三次元の領域あり、それに対応して蛍光画像は二次元画像または三次元画像である。二次元画像の場合、図3に示した一枚の蛍光画像が1フレームにあたる。また三次元画像の場合、図4に示した複数枚の蛍光画像が1フレームにあたる。蛍光画像の各ピクセルのデータは、たとえば、対応する測定点から発せられる蛍光の強度である。
【0041】
(ステップS2)
図6に示すように、各フレームの観察領域の蛍光画像に対して複数の解析領域を設定する。複数の解析領域は、空間的に異なる領域であり、通常、互いに離れていて重複していない。解析領域は、二次元の観察領域に対しては二次元の領域であり、三次元の観察領域に対しては、通常、三次元の領域であるが、二次元の領域であってもよい。なお、図6は1つの細胞の内部を示しており、中央部の楕円の部分Aが核を示している。
【0042】
(ステップS3)
図7に示すように、1フレームの観察領域の蛍光画像に対して、空間相互相関を求める二つの解析領域(解析領域1と解析領域2)を選定する。ここでは、解析領域1として核の内側の領域Xを、解析領域2として核の外側の領域Yを選定している。
【0043】
(ステップS4)
二つの解析領域(解析領域1と解析領域2)に対応するピクセルのデータを抽出する。
【0044】
(ステップS5)
抽出したピクセルのデータを使用して相関計算を行なう。二次元画像に対しては式(1)の空間相互相関計算式を使用する。また三次元画像に対しては式(3)の空間相互相関計算式を使用する。
【0045】
相関計算に使用する各ピクセルのデータは、そのピクセルのデータそのものであってもよいし、そのピクセルを含む複数のピクセルのデータの統計値であってもよい。複数のピクセルは、たとえば、注目のピクセルおよびこれに隣接するピクセルであってよい。統計値は、たとえば、ピクセルのデータの平均値、最大値、最小値、相対差、絶対差、相対比のいずれかであってよい。どのような統計値を使用するかは、RICSの解析によってどのような情報を得たいかによって決める。
【0046】
また相関計算に使用するデータは、ピクセル時間、ライン時間、フレーム時間、ピクセル位置関係、ピクセルサイズまたはそれについての統計値であってもよい。
【0047】
また相関計算は、ピクセルのデータに基づいて画像をそれぞれ再構成し、再構成した画像について相関計算してもよい。たとえば、隣のピクセルのデータ同士を足して、ピクセルのデータの数を半分にする。または、一つのピクセルのデータを複数に分割する。本来ならば、一度画像を取得するとピクセルのデータの数は増えないが、取得したピクセルのデータの強度がそのピクセルのデータの周囲にガウシアン分布で広がっていると仮定して、本来取得できていないピクセルのデータを補う。本質的にピクセルのデータの数が増えている訳ではないが、見た目が良くなる。
【0048】
(ステップS6)
ステップS5の相関計算の結果に対してフィッティングを行なって、分子数と拡散時間の少なくとも一方を推定する。二次元画像に対しては式(2)のフィッティング式を使用し、三次元画像に対しては式(4)のフィッティング式を使用する。
【0049】
具体的には、式(1)または式(3)を使用して異なる遅延時間に対する相互相関値Gをそれぞれ求める。そして、相互相関値Gと遅延時間との関係から、式(2)または式(4)を使用して、拡散定数と分子数を求める。
【0050】
実際に分子数と拡散定数は、式(2)および式(4)の理論値を測定値を使った相関演算の結果と残差比較すること(フィッティング)で求める。フィッティングでは、まず、(a)所定の拡散定数Dと分子数Nを用いて、理論値として得られるG(以下、理論相関値Gとする)を算出する。そして、(b)理論相関値Gと測定値として得られる相関値G(以下、測定相関値Gとする)との比較を行ない、両者の残差を算出する。続いて、(c)理論相関値Gにおける拡散定数Dと分子数Nを変化させて、新たな理論相関値Gを算出する。続いて、(d)新たな理論相関値Gと測定相関値Gとの比較を行ない、両者の残差を算出する。続いて、(e)上記の(b)で得られた残差と(d)で得られた残差を比較して、残差が大きくなったか小さくなったかを判定する。このように、フィッティングでは、理論相関値Gにおける拡散定数Dと分子数Nを変化させながら(b)〜(e)を繰り返し行ない、測定相関値Gと理論相関値Gとの残差が最小となる理論相関値Gを最終的に求める。最終的に得られた理論相関値Gにおける拡散定数Dと分子数Nが、測定相関値Gにおける拡散定数Dと分子数Nとなる。このように、式(2)または式(4)によるフィッティングとは、理論相関値Gにおける拡散定数Dと分子数Nを変動させながら、二次元または三次元の観察領域における最適な分子数または拡散定数を推定することである。
【0051】
拡散定数と拡散時間との間には、次式(5)で表される関係がある。したがって、求めた拡散定数から拡散時間を求めることができる。
【数5】

【0052】
(ステップS7)
分子数または拡散定数の画像を表示し保存する。解析結果の一例を図8〜図11に示す。図8と図10は、試料S中のある分子に関する空間相互相関値の計算結果を画像としてCRTに表示した例であり、図9と図11は、それぞれ、図8と図10の空間相互相関値の計算結果のフィッティング結果を示している。図8と図10では、空間相互相関値の大きさをCRTの輝度で示している。なお、図8と図10では、輝度(空間相互相関値)の変化が分かるように等高線で示している。また、図8(図9)と図10(図11)とでは、二つの解析領域の組み合わせが相違している。図8と図9の解析結果では、解析領域1(図6の領域X)と解析領域2(図6の領域Y)との間の分子の動きが比較的速いことが読み取れる。また、図10と図11の解析結果では、解析領域1(図6の領域X)と解析領域2(図6の領域Z)との間の分子の動きが比較的遅いことが読み取れる。
【0053】
以上で、一つの組み合わせの二つの解析領域に対する画像の解析処理が終了する。必要であれば、別の組み合わせの二つの解析領域に対してもステップS3〜ステップS7の操作を繰り返す。または、別のフレームの観察領域の蛍光画像に対してもステップS3〜ステップS7の操作を繰り返す。
【0054】
本実施形態によれば、試料S内の異なる領域間の分子の動きを評価することが可能になる。さらに、解析領域の組み合わせを次々に変更しながら空間相互相関を求めることによって、試料S内の異なる領域間の分子の動きを二次元的または三次元的に把握することも可能になる。たとえば、一つの解析領域とその周囲に位置する複数の解析領域との各組み合わせに対して空間相互相関を求めることによって、その一つの解析領域とその周囲の複数の解析領域との間の分子の動きを二次元的または三次元的に把握することも可能になる。
【0055】
本実施形態では、走査型共焦点光学顕微鏡によって蛍光画像を得ている。この場合、画像の形成は時系列的に形成されるので、解析領域1の蛍光画像が得られた時刻と、解析領域2の蛍光画像が得られた時刻は異なる。そのため、時系列的に得られた蛍光画像では、移動速度が比較的遅い分子について、その動きを評価することができる。なお、画像の形成が同時に行なわれる場合(CCDやCMOS等の2次元撮像素子による撮像)は、解析領域1の蛍光画像が得られた時刻と、解析領域2の蛍光画像が得られた時刻は同じになる。この場合は、移動速度が比較的速い分子について、その動きを評価することができる。
【0056】
<第二実施形態>
図12は、本発明の第二実施形態による画像解析装置を概略的に示している。この画像解析装置は、試料の蛍光観察のための走査型共焦点光学顕微鏡をベースに構成されている。
【0057】
図12に示すように、画像解析装置200は、試料Sに光たとえば励起光をそれぞれ照射する二つの光照射部210A,210Bと、試料Sからの光たとえば蛍光をそれぞれ検出する二つの光検出部230A,230Bと、画像解析に必要な制御を行なう制御部260と、試料Sを支持する試料ステージ290とを有している。光照射部210A,210Bは、それぞれ、試料S内の異なる領域に光を照射する。光検出部230A,230Bは、それぞれ、光照射部210A,210Bによって励起光が照射された領域からの光を検出する。
【0058】
試料Sはマイクロプレートやスライドガラスなどの試料容器に収容され、試料ステージ290に載置される。試料ステージ290の詳細は、第一実施形態の試料ステージ190と同様である。
【0059】
光照射部210A,210Bは、それぞれ、光源ユニット211A,211Bとダイクロイックミラー222A,222Bとガルバノミラー224A,224Bと対物レンズ226A,226Bと対物レンズ駆動機構228A,228Bを含んでいる。各光源ユニット211A,211Bと各ダイクロイックミラー222A,222Bと各ガルバノミラー224A,224Bと各対物レンズ226A,226Bと各対物レンズ駆動機構228A,228Bの詳細は、それぞれ、第一実施形態の光源ユニット111とダイクロイックミラー122とガルバノミラー124と対物レンズ126と対物レンズ駆動機構128と同様である。
【0060】
光検出部230A,230Bは、それぞれ、対物レンズ226A,226Bとガルバノミラー224A,224Bとダイクロイックミラー222A,222Bを光照射部210A,210Bと共有している。光検出部230A,230Bはさらに、それぞれ、収束レンズ232A,232Bとピンホール234A,234Bとコリメートレンズ236A,236Bと光検出ユニット231A,231Bとを含んでいる。各収束レンズ232A,232Bと各ピンホール234A,234Bと各コリメートレンズ236A,236Bと各光検出ユニット231A,231Bは、それぞれ、第一実施形態の収束レンズ132とピンホール134とコリメートレンズ136と光検出ユニット131と同様である。
【0061】
制御部260はたとえばパーソナルコンピューターで構成される。制御部260は、蛍光画像の取得・記憶・表示、解析領域の設定などの入力待ち、画像の解析処理、xy走査機構であるガルバノミラー224A,224B、z走査機構である対物レンズ駆動機構228A,228B、試料ステージ290などの制御を行なう。
【0062】
図12に示される制御部の機能ブロックを図13に示す。制御部260は、図13に示すように、走査制御部262A,262Bと画像形成部264A,264Bと記憶部266と表示部268と入力部270と解析処理部276とステージ制御部280とを含んでいる。走査制御部262A,262Bと画像形成部264A,264Bと記憶部266とステージ制御部280は、上述した光照射部210A,210Bと光検出部230A,230Bと共働して解析領域画像取得部を構成する。
【0063】
走査制御部262A,262Bは、それぞれ、励起光の照射位置を試料Sの観察領域にラスター走査するようにガルバノミラー224A,224Bを制御する。走査制御部262A,262Bはまた、必要であれば、それぞれ、励起光の照射位置を試料Sに対してz走査するように対物レンズ駆動機構228A,228Bを制御する。画像形成部264A,264Bは、それぞれ、走査制御部262A,262Bから入力される励起光の照射位置の情報と光検出ユニット231A,231Bの出力信号とから試料Sの蛍光画像を形成する。これにより、蛍光画像が取得される。記憶部266は、画像形成部264A,264Bで形成された蛍光画像を記憶する。表示部268は、試料Sの蛍光画像や解析処理結果を表示する。入力部270は、たとえばマウスやキーボードを含み、表示部268と共同してGUIを構成する。このGUIは、観察領域の設定などに利用される。ステージ制御部280は、たとえば観察領域を設定するために、入力部270からの入力情報にしたがって試料ステージ290を制御する。解析処理部276は、画像形成部264A,264Bで取得された二つの観察領域の画像のピクセルのデータを使用して相互相関を求める。
【0064】
光照射部210A,210Bと光検出部230A,230Bと走査制御部262A,262Bと画像形成部264A,264Bとによる各観察領域の蛍光画像の取得は、第一実施形態による蛍光画像の取得と同様の手法によって行なわれる。二つの観察領域の蛍光画像は、同時に取得されても、時間をずらして取得されてもよい。
【0065】
解析処理部276による画像の解析処理は、第一実施形態における二つの解析領域の画像が画像形成部264A,264Bで取得された二つの観察領域の画像に代わるほかは、第一実施形態の解析処理部176による画像の解析処理と同様に行なわれる。
【0066】
本実施形態によっても、第一実施形態と同様の利点が得られる。また二つの観察領域の蛍光画像を同時に取得することによって、より正確な空間相互相関を得ることができる。
【0067】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【0068】
たとえば、実施形態では、試料Sからの発生する蛍光を検出して構築した画像つまり蛍光画像の解析について説明したが、解析対象の画像は蛍光画像に限らない。解析対象の画像は、蛍光画像のほかに、たとえば、りん光、反射光、可視光、化学発光、生物発光、散乱光を検出して構築した画像であってもよい。
【0069】
また実施形態では、ラスター走査によって取得された画像について説明したが、画像は、ラスター走査によって取得されたものに限定されるものではなく、ピクセルのデータが時系列的に取得された複数のピクセルからなる画像であればよく、他の走査方法によって取得されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
100…画像解析装置、110…光照射部、111…光源ユニット、112a,…,112n…光源、114a,…,114n…コリメートレンズ、116a,…,116n…ダイクロイックミラー、122…ダイクロイックミラー、124…ガルバノミラー、126…対物レンズ、128…対物レンズ駆動機構、130…光検出部、131…光検出ユニット、132…収束レンズ、134…ピンホール、136…コリメートレンズ、138a,…,138m…ダイクロイックミラー、140a,…,140m…蛍光フィルター、142a,…,142m…光検出器、160…制御部、162…走査制御部、164…画像形成部、166…記憶部、168…表示部、170…入力部、172…解析領域設定部、174…データ抽出部、176…解析処理部、180…ステージ制御部、190…試料ステージ、200…画像解析装置、210A,210B…光照射部、211A,211B…光源ユニット、222A,222B…ダイクロイックミラー、224A,224B…ガルバノミラー、226A,226B…対物レンズ、228A,228B…対物レンズ駆動機構、230A,230B…光検出部、231A,231B…光検出ユニット、232A,232B…収束レンズ、234A,234B…ピンホール、236A,236B…コリメートレンズ、260…制御部、262A,262B…走査制御部、264A,264B…画像形成部、266…記憶部、268…表示部、270…入力部、276…解析処理部、280…ステージ制御部、290…試料ステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間的に異なる複数の解析領域の画像を取得する解析領域画像取得ステップを有し、前記解析領域の各画像は、時系列的に取得された複数のデータをそれぞれ有する複数のピクセルから構成されており、さらに、
前記解析領域の画像のピクセルのデータを使用して二つの解析領域の相互相関を求める相関解析ステップとを有する画像解析方法。
【請求項2】
前記解析領域画像取得ステップは、
前記解析領域を含む観察領域の画像を取得する観察領域画像取得ステップを有し、前記観察領域の画像は、同時又は時系列的に取得された複数のデータをそれぞれ有する複数のピクセルから構成されており、さらに、
前記観察領域の画像に対して前記解析領域を設定する解析領域設定ステップと、
前記観察領域の画像から前記解析領域に対応するピクセルのデータを抽出するデータ抽出ステップとを有する請求項1に記載の画像解析方法。
【請求項3】
前記観察領域画像取得ステップは、前記観察領域の複数フレームの画像を取得する請求項2に記載の画像解析方法。
【請求項4】
前記解析領域画像取得ステップは、複数の光学系を使用して前記解析領域の画像をそれぞれ取得する請求項1に記載の画像解析方法。
【請求項5】
前記解析領域画像取得ステップは、前記解析領域の画像を同時に取得する請求項4に記載の画像解析方法。
【請求項6】
前記解析領域画像取得ステップは、前記解析領域の複数フレームの画像を取得する請求項4に記載の画像解析方法。
【請求項7】
前記相関解析ステップは、蛍光強度、ピクセル時間、ライン時間、フレーム時間、ピクセル位置関係、ピクセルサイズまたはそれについての統計値を使用して相互相関を求める請求項3または6に記載の画像解析方法。
【請求項8】
前記相関解析ステップは、前記データの平均値、最大値、最小値、相対差または絶対差のいずれかを使用して相互相関を求める請求項1に記載の画像解析方法。
【請求項9】
前記相関解析ステップは、前記データを再構成して得た再構成データを使用して相互相関を求める請求項1に記載の画像解析方法。
【請求項10】
前記解析領域の各画像は二次元画像であり、相互相関を求める前記二つの解析領域は解析領域1と解析領域2であり、前記相関解析ステップは、下記の式(1)を用いて相関計算を行ない、前記相関計算の結果に対して下記の式(2)を用いてフィッティングを行なって二次元解析領域の相互相関を求める請求項1に記載の画像処理方法、
【数1】

ここで、GはRICSの空間相互相関値、Iは解析領域1の画像のピクセルのデータ、Iは解析領域2の画像のピクセルのデータ、x,yは測定点の空間的座標、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、M12は解析領域1と解析領域2のデータの積和計算の回数、Mは解析領域1のデータ総数、Mは解析領域2のデータ総数である、
【数2】

ここで、GはRICSの空間相関値、SはRICSの解析におけるスキャンの影響、GはRICSの解析における時間遅延の影響、Dは拡散定数、δはピクセルサイズ、Nは分子数、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、Wは励起レーザビームの横方向の半径、Wは励起レーザビームの縦方向の半径、τはピクセル時間、τはライン時間である。
【請求項11】
前記解析領域の各画像は三次元画像であり、相互相関を求める前記二つの解析領域は解析領域1と解析領域2であり、前記相関解析ステップは、下記の式(3)を用いて相関計算を行ない、前記相関計算の結果に対して下記の式(4)を用いてフィッティングを行なって三次元解析領域の相互相関を求める請求項1に記載の画像処理方法、
【数3】

ここで、GはRICSの空間相互相関値、Iは解析領域1の画像のピクセルのデータ、Iは解析領域2の画像のピクセルのデータ、x,y,zは測定点の空間的座標、ξ,ψ,ηは測定点からの空間的座標の変化量、M12は解析領域1と解析領域2中のデータの積和計算の回数、Mは解析領域1のデータ総数、Mは解析領域2のデータ総数である、
【数4】

ここで、GはRICSの空間相互相関値、SはRICSの解析におけるスキャンの影響、GはRICSの解析における時間遅延の影響、Dは拡散定数、δはピクセルサイズ、Nは分子数、ξ,ψ,ηは空間的座標の変化量、Wは励起レーザビームの横方向の半径、Wは励起レーザビームの縦方向の半径、τはピクセル時間、τはライン時間、τはフレーム時間である。
【請求項12】
空間的に異なる複数の解析領域の画像を取得する解析領域画像取得部を有し、前記解析領域の各画像は、時系列的に取得された複数のデータをそれぞれ有する複数のピクセルから構成されており、さらに、
前記解析領域の画像のピクセルのデータを使用して二つの解析領域の相互相関を求める相関解析処理部とを有する画像解析装置。
【請求項13】
前記解析領域画像取得部は、
前記解析領域を含む観察領域の画像を取得する観察領域画像取得部を有し、前記観察領域の画像は、時系列的に取得された複数のデータをそれぞれ有する複数のピクセルから構成されており、さらに、
前記観察領域の画像に対して前記解析領域を設定する解析領域設定部と、
前記観察領域の画像から前記解析領域に対応するピクセルのデータを抽出するデータ抽出部とを有する請求項12に記載の画像解析装置。
【請求項14】
前記観察領域画像取得部は、前記観察領域の複数フレームの画像を取得する請求項13に記載の画像解析装置。
【請求項15】
前記解析領域画像取得部は、前記解析領域の画像をそれぞれ取得する複数の光学系を有する請求項12に記載の画像解析装置。
【請求項16】
前記解析領域画像取得部は、前記解析領域の画像を同時に取得する請求項15に記載の画像解析装置。
【請求項17】
前記解析領域画像取得部は、前記解析領域の複数フレームの画像を取得する請求項15に記載の画像解析装置。
【請求項18】
前記相関解析部は、蛍光強度、ピクセル時間、ライン時間、フレーム時間、ピクセル位置関係、ピクセルサイズまたはそれについての統計値を使用して相互相関を求める請求項14または請求項17に記載の画像解析装置。
【請求項19】
前記相関解析部は、前記データの平均値、最大値、最小値、相対差または絶対差のいずれかを使用して相互相関を求める請求項12に記載の画像解析装置。
【請求項20】
前記相関解析部は、前記データを再構成して得た再構成データを使用して相互相関を求める請求項12に記載の画像解析装置。
【請求項21】
前記解析領域の各画像は二次元画像であり、相互相関を求める前記二つの解析領域は解析領域1と解析領域2であり、前記相関解析部は、下記の式(1)を用いて相関計算を行ない、前記相関計算の結果に対して下記の式(2)を用いてフィッティングを行なって二次元解析領域の相互相関を求める請求項12に記載の画像処理装置、
【数5】

ここで、GはRICSの空間相互相関値、Iは解析領域1の画像のピクセルのデータ、Iは解析領域2の画像のピクセルのデータ、x,yは測定点の空間的座標、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、M12は解析領域1と解析領域2のデータの積和計算の回数、Mは解析領域1のデータ総数、Mは解析領域2のデータ総数である、
【数6】

ここで、GはRICSの空間相関値、SはRICSの解析におけるスキャンの影響、GはRICSの解析における時間遅延の影響、Dは拡散定数、δはピクセルサイズ、Nは分子数、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、Wは励起レーザビームの横方向の半径、Wは励起レーザビームの縦方向の半径、τはピクセル時間、τはライン時間である。
【請求項22】
前記解析領域の各画像は三次元画像であり、相互相関を求める前記二つの解析領域は解析領域1と解析領域2であり、前記相関解析部は、下記の式(3)を用いて相関計算を行ない、前記相関計算の結果に対して下記の式(4)を用いてフィッティングを行なって三次元解析領域の相互相関を求める請求項12に記載の画像処理装置、
【数7】

ここで、GはRICSの空間相互相関値、Iは解析領域1の画像のピクセルのデータ、Iは解析領域2の画像のピクセルのデータ、x,y,zは測定点の空間的座標、ξ,ψ,ηは測定点からの空間的座標の変化量、M12は解析領域1と解析領域2中のデータの積和計算の回数、Mは解析領域1のデータ総数、Mは解析領域2のデータ総数である、
【数8】

ここで、GはRICSの空間相互相関値、SはRICSの解析におけるスキャンの影響、GはRICSの解析における時間遅延の影響、Dは拡散定数、δはピクセルサイズ、Nは分子数、ξ,ψ,ηは空間的座標の変化量、Wは励起レーザビームの横方向の半径、Wは励起レーザビームの縦方向の半径、τはピクセル時間、τはライン時間、τはフレーム時間である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−8055(P2012−8055A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145607(P2010−145607)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】