説明

画像記録方法

【課題】 液状コーティング剤から成る薄層を付与または塗布するコーティング機構を有するようなインクジェットプリンタにおいて、液状コーティング剤の液体の含有量が変化しにくく、かつその液量を適正に保つ点で優れた画像記録方法の提供。それによって耐環境性および保存安定性の問題のない組成物を使用した画像記録方法を提供することが可能となる。
【解決手段】 実質的に粘着性を有さず、かつ水素イオン濃度の変化による粘着性付与を可能としたことを特徴とする組成物を用いて、該組成物を記録媒体上に塗布する前および/または塗布した後から、少なくとも一種類以上のインク組成物を塗工する工程を含む画像記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、インクセット、及びインクジェット記録方法に関し、特に、記録媒体に対して組成物とインクとを併用して印字を行う場合に使用する組成物、インクセット及びインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、インクの小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて記録を行うものである。その記録方式としては、種々のものが知られているが、特に、吐出エネルギー供給手段として電気熱変換体を用い、熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることによって液滴を吐出させる方式によれば、記録ヘッドの高密度マルチオリフィス化が容易に実現でき、高解像度、及び高品質の画像を高速に記録することができる(特公昭61−59911、特公昭61−59912及び特公昭61−59914参照)。
【0003】
しかしながら、従来のインクジェット記録に用いられるインクは、一般に水を主成分とし、これに乾燥防止、目詰まり防止等の目的でグリコール等の水溶性高沸点溶剤を含有した水性媒体に、色材を含有させてなるが、このようなインクを用いて特に普通紙に記録を行った場合には、乾燥時間に時間を要するという問題があった。
【0004】
この問題を解決するため特表2002−517341には液状コーティング剤から成る薄層を付与又は塗布するコーティング機構を有するようなインクジェットプリンタを提供することにより乾燥時間の低減を図っているが、この方法では別の問題が生じる。即ち、前記液状コーティング剤が温度・湿度などの環境変化によりその組成が変化し印字品質に影響を及ぼすということ、及び前記コーティング機構を有するようなインクジェットプリンタを傾けるなどしたとき前記液状コーティング剤がそれを溜めておく容器からこぼれその液量が適正に保たれないということである。
【特許文献1】特公昭61−59911号公報
【特許文献2】特公昭61−59912号公報
【特許文献3】特公昭61−59914号公報
【特許文献4】特表2002−517341号公報
【特許文献5】特公平6−86142号公報
【特許文献6】特開平9−207424号公報
【特許文献7】特開2000−94825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなインクジェットプリンタにおいて、液状コーティング剤の液体の含有量が変化しにくいこと及びその液量を適正に保つことは、安定して良好な画像を連続形成する点、組成物の耐環境性、保存安定性などにおいて重要である。本発明の目的は液状コーティング剤の液体含有量が変化しにくく且つその液量を適正に保つ点で優れた画像記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題に対して、我々は実質的に粘着性を有さず、且つ水素イオン濃度の変化による粘着性付与を可能としたことを特徴とする組成物を用いて、該組成物を記録媒体上に塗付する前及び/又は塗工した後から、少なくとも一種類以上のインク組成物を塗工する工程を含む画像記録方法を考案した。
【0007】
更に上記目的を達成するための記録方法とは、組成物が通電に基づく水素イオン濃度の変化により粘着性が付与されることを特徴とするものである。
【0008】
又、上記目的を達成するための記録方法とは、組成物が電子対受容体の添加に基づく水素イオン濃度の変化により粘着性が付与されることを特徴とするものである。
【0009】
又、上記目的を達成するための記録方法とは、前記組成物が電子対供与体の添加に基づく水素イオン濃度の変化により粘着性が付与されることを特徴とするものである。
【0010】
又、上記目的を達成するための記録方法とは、前記組成物が液体と、これを保持する架橋構造物質とからなることを特徴とするものである。
【0011】
又、上記目的を達成するためのインクセットとは、少なくとも一種類以上のインク組成物、及び該インク組成物を記録媒体上に固定化させる液体組成物とのインクセットであって、該組成物が上記に示す画像記録方法に用いることを特徴とするものである。
【0012】
又、上記目的を達成するためのインクジェット記録方法とは、少なくとも一種類以上のインク組成物、及び該インク組成物を記録媒体上に固定化させる液体組成物とのインクセットを用いた記録方法であって、該液体組成物が上記に示す組成物であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば液状コーティング剤から成る薄層を付与又は塗布するコーティング機構を有するようなインクジェットプリンタにおいて、液状コーティング剤の液体の含有量が変化しにくく、且つその液量を適正に保つこと点で優れた画像記録方法が提供される。それによって耐環境性及び保存安定性の問題のない組成物を使用した画像記録方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(組成物)
本発明の組成物は、実質的に粘着性を有さず、且つ水素濃度の変化による粘着性付与が可能なゲル状組成物である。このゲル状組成物に通電などにより水素イオン濃度変化を付与した場合には、架橋構造、イオン構造、又は粒子の配列状態などが変化することにより、このゲル状組成物に粘着性が付与されるものと推定される。
【0015】
上述した特性を有する本発明の組成物は液体、これを保持する架橋構造物質(ないし高分子電解質)とを含むことが好ましい。
【0016】
ここに「架橋構造物質」とは、それ自体で架橋構造をとることが可能な物質、又は他の添加物の添加により、架橋構造をとることが可能となる物質を言う。
【0017】
又「架橋構造」とは「橋架け結合」を有する三次元的な構造を言う。
【0018】
本発明の組成物においては、この「橋架け結合」は共有結合、イオン結合、水素結合又はファンデルワールス結合の何れ(ないし二種以上の組み合わせ)により構成されていても良い。
【0019】
本発明の組成物において上記液体としては、常温で液体である種々の無機、ないし有機の溶媒を用いることが可能であるが、揮発性が比較的に低い(たとえば、水と同様、又はこれより低い)溶媒を用いることが好ましい。
【0020】
上記液体として水ないし親水性溶剤を用いる場合、架橋構造物質として親水性の高分子などが好ましく用いられる。
【0021】
このような高分子化合物としては、水溶性高分子であることが好ましい。具体的には、例えば、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアマイド、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物性高分子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
上記に挙げたような高分子化合物の好ましい添加量は、液体100部に対して、通常、0.2〜50部、特に0.5〜30部用いることが好ましい。
【0023】
本発明の組成物においては、上述した架橋構造物質として高分子電解質を用いることが更に好ましい。ここに「高分子電解質」とは、高分子鎖中に怪力を有する高分子を言う。
【0024】
このような高分子を用いた場合、インク中に通電する場合の他の電解質の添加、又は粘着性制御を容易化する場合のイオン性架橋剤(たとえばホウ酸イオン)の添加は必ずしも必要でないため、系の単純化により組成物の安定性、保存性の向上がはかれるという利点がある。
【0025】
本発明の組成物は、上記した成分を水性媒体に溶解してなるが、通常は、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が使用される。水溶性有機溶媒としては、組成物の乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でも又は混合物としても使用することができる。又、水としては脱イオン水を使用することが好ましい。
【0026】
又、本発明の組成物は、上記の成分のほかに、更に必要に応じて、所望の物性値を持たせるために、界面活性剤、消泡材、防黴剤及び防腐剤等を適宜に添加することができる。
【0027】
この際に添加することのできる界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコール、アセチレングリコール等の非イオン性界面活性剤があり、これらの1種又は、2種以上を適宜選択して使用できる。その使用量は、含有させる高分子化合物等によっても異なるが、組成物全量に対して、質量基準で、0.01〜10%が好ましい。この際、組成物の表面張力が、20dyne/cm以上になるように界面活性剤の添加量を決定することが好ましい。なぜなら、組成物の表面張力がこれよりも小さい値を示す場合には、インクジェット用とした場合に、ノズル先端のぬれによる印字よれ(液滴の着弾点のズレ)等、好ましくない事態を引き起こすからである。
【0028】
又、特公平6−86142号公報、特開平9−207424号公報、特開2000−94825号公報では多価金属イオンと、それに相溶性のよいバインダ成分を含む液体組成物を予め記録媒体に塗布した後、該液体組成物と反応性のあるインクを印字することで、画像の均一性や画像濃度の向上を達成させる記録方法がされているが、本発明の組成物にも更に必要に応じて多価金属イオンとその塩を含むことが出来る。具体的には、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、及びBa2+等の二価の金属イオンや、Al3+、Fe3+、Cr3+、及びY3+等の三価の金属イオンが挙げられるがこれに限定されるものではない。又、その塩とは、上記に挙げたような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、水に可溶なものであることを要する。塩を形成するための陰イオンとしては、例えば、Cl、NO、I、Br、ClO、SO2−、CO2−、CHCOO、及びHCOO等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0029】
(画像記録工程)
本発明の画像記録方法は、少なくとも一方の電極を版とした一対の電極間に、印加電圧の極性に応じて付着性が変化する組成物を供給する工程と、前記一対の電極間に電圧を印加して前記組成物に通電することにより、版とした前記電極上に前記組成物を付着させる工程と、版とした前記電極上に付着した前記組成物を、中間部材を介して又は中間部材を介さずに被記録体に転写させる工程と、前記組成物が転写した前記被記録体に前記組成物が転写した面からインクジェット方式により画像記録する工程を有するものである。
【0030】
更に、本発明の組成物転写方法は、少なくとも一方の電極を、導電部分と絶縁部分とでパターンの形成された版とした一対の電極を用い、一対の電極間に、印加電圧の極性に応じて付着性が変化する組成物を供給する工程と、前記一対の電極間に電圧を印加して前記組成物に通電することにより、版とした前記電極に前記パターンに対応して前記組成物を付着させる工程と、版とした前記電極上に付着した前記組成物を、中間部材を介して又は中間部材を介さずに被記録体に転写させる工程とを有するものである。
【0031】
又、本発明の画像記録装置は、少なくとも一方の電極を、導電部分と絶縁部分とでパターンの形成された版とした一対の電極、一対の電極間に印加電圧の極性に応じて付着性が変化する組成物を供給する手段、一対の電極間の前記組成物に通電を行うための電源、及び、版とした前記電極上に付着した前記組成物を被記録体に転写させる手段を有するものである。
【0032】
本発明の画像記録方法は、組成物に一対の電極により電圧印加したときに、付着性を有する組成物が電極に付着しなくなったり、又は付着性のない組成物が電極に付着するようになったりする性質を利用して、一方の電極を版とすることにより画像を形成する。
【0033】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0034】
図1において、組成物担持ロール1は円筒形状を有し矢印A方向へ回転する部材である。ロール1は、アルミニウム、銅、ステンレスなどの導電体で形成するのが好ましい。組成物担持ロール1の表面(円筒面)上には、矢印E方向に回転するコーティングロール9により、組成物である組成物2が均一の厚みに形成される。このロール1の組成物担持面たる表面を構成する材料としては、(矢印A方向への回転による組成物2の搬送により)その表面上に所望の組成物2の層を形成することが可能な材料であれば、特に制限なく用いることができる。より具体的には、ステンレス等の金属からなる導電体が好ましい。組成物担持ロール1は、直流電源103の一端に接続されている。
【0035】
このような材料からなる組成物担持ロール1の表面は、平滑面であってもよいが、組成物2の搬送、担持性をより高める点からは、適度に粗面化(例えば粗面度1S程度に)されている方が好ましい。
【0036】
組成物担持ロール1の表面上の組成物2には、版ロール3に巻かれた版4が接している。版ロール3は、ロール1とは逆に矢印B方向に回転している。
【0037】
こうして版4と組成物担持ロール1間に電源103により電圧を印加することにより、版4の導電部分と接触する組成物2の付着性が変化して、その付着性の差により版上に組成物2をパターン状に付着させる。電源103の電圧は、実用的には3〜100V、更には5〜80Vの直流電圧が好ましい。
【0038】
図1では、版4側が陽極、組成物担持ロール1側が陰極となっているが、使用する組成物の性状によって版4側を陰極、ロール1側を陽極としてもかまわない。
【0039】
電源103による電圧は、具体的には版ロール3及び組成物担持ロール1のそれぞれの回転軸間に印加するとよい。
【0040】
組成物担持ロール1表面上に形成される組成物2の層の厚さは、(組成物担持ロール1とコーティングロール9とのギャップの大きさ、組成物2の流動性ないし粘度、組成物担持ロール1表面の材質ないし粗面度、又は該ロール1の回転速度等によって異なるが)、このロール1が版ロール3上のパターン版4に対向する組成物転写位置において、概ね0.001〜100mm程度であることが好ましい。
【0041】
この組成物2の層厚が0.001mm未満では、組成物担持ロール1上に均一な組成物層を形成することが困難となる。一方、この組成物層厚が100mmを越えると、組成物層の表層(版4に接触する側の層)を均一な周速としつつ、組成物2を搬送することが困難となり、又組成物担持ロール1と版4との通電も容易でなくなる。
【0042】
次に、版4上の組成物2を、版4と圧接しつつ矢印C方向に回転するブラン胴5に転写し、更に中間部材であるブラン胴5上の組成物画像を、ブラン胴5と圧接しつつ矢印D方向に回転する圧胴6の間を通過する被記録体7(紙、布、金属シートなど)上に転写して、被記録体7上に上記組成物を転写する。
【0043】
場合によってはブラン胴5を設けずに、版4上の組成物を直接被記録体7上に転写してもかまわないが、ブラン胴5を設けると、ブラン胴5の材質により版の摩耗劣化を防止することができる。
【0044】
本発明の画像記録方法は、以上説明した通り、電極(版)と対向電極との間に特定の組成物を供給し、上記一対の電極間に直流電圧を印加することによって、組成物の付着性が変化することを利用したものである。
【0045】
電圧印加による通電により、電気化学反応で組成物の有する架橋構造の変化、又は電解質の解離状態の変化が生じ付着性が変化する場合、組成物を当初は非付着としてもよいし、付着性に調整してもよい。組成物を非付着性に調整した場合、通電により組成物の架橋構造の少なくとも一部が変化ないし破壊されて、ゲル的な状態からゾル的な状態となって付着性が付与される。又は電解質の解離状態が変化して付着性が付与される。組成物を当初から付着性があるように調整した場合は、上記とは全く逆のメカニズムにより付着性の組成物が非付着となる。
【0046】
前記メカニズムとる組成物について説明する。
【0047】
本発明に用いられる組成物としては、液体と、これを保持する架橋構造物質又は高分子電解質を含むもの等を用いることができる。
【0048】
ここに「架橋構造物質」とは、それ自体で架橋構造をとることが可能な物質、又は他の添加物(例えばホウ酸イオン等の無機イオンからなる架橋剤)の添加により、架橋構造をとることが可能となる物質をいう。
【0049】
又、「架橋構造」とは、「橋かけ結合」を有する三次元的な構造をいう。
【0050】
本発明に使用する組成物においては、この「橋かけ結合」は、イオン結合、水素結合、又はファンデルワールス結合の何れ(ないしこれら2種以上の組み合わせ)により構成されていてもよい。
【0051】
本発明の使用する組成物において、上記「架橋構造」は、所望の液体保持性が得られる程度のものであれば足りる。即ちこの架橋構造は、例えば網状、ハチの巣状、らせん状構造等の何れであってもよく、又、規則的な構造でなくともよい。
【0052】
本発明に使用する組成物において、上記液体としては、常温で液体である種々の無機、ないし有機の溶媒を用いることが可能であるが、揮発性が比較的低い(例えば、水と同様、又はこれより低い)溶媒を用いることが好ましい。
【0053】
上記液体として水ないし含水分散媒等の親水性分散媒を用いる場合は、架橋構造物質として親水性(天然ないし合成)高分子等が好ましく用いられる。
【0054】
又組成物の別な形態の一つである高分子電解質を含むものとは、高分子鎖中に解離基を有する高分子である高分子電解質を含むものである。水に溶けると解離して高分子イオンとなるものには、アルギン酸、ゼラチン等の天然高分子;ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸等の合成高分子に解離基を導入することにより合成したものなどがある。
【0055】
高分子電解質の内、通電による付着性の変化を得る際に、幅広い変化を得るには、たんぱく質のように酸としても、塩基としても解離できる両性高分子電解質が好ましい。
【0056】
一方液体として、例えば鉱油等の油、又はトルエン等の有機溶媒からなる分散媒を用いる場合は、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸の金属塩;その他バルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸の同様の金属塩等からなる金属石けん、又はヒドロキシプロピルセルロース誘導体、ジベンジリデンD−ソルビトール、シヨ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル等の有機物;等が(上述した親水性高分子と同様に)単独で又は必要に応じて2種以上組合わせて、好適に用いられる。
【0057】
上述したような親水性高分子ないし金属石けん等を用いる場合、これらの配合量、又はこれらと液体との組合わせの如何によって、液体分散剤の保持性や組成物の成膜性は、ある程度変化する。これらの配合量、又は組合わせの如何等の構成を一義的に決定することはやや困難であるが、液体と架橋構造物質又は高分子電解質とからなる組成物が付着性を有しないようにするには、組成物中の溶媒の量を少なくするか、又架橋構造物質を使用するものは架橋度を上げることが好ましい。又逆に付着性を有するようにするには、前記と逆に組成物中の溶媒の量を多くするか、又架橋構造物質を使用するものは架橋度を下げることが好ましい。
【0058】
前述の(2)のメカニズムをとる組成物は、上述した液体と、架橋構造物質又は高分子電解質とを必須構成成分とするものであるが、更に、必要に応じて、染顔料ないし着色微粒子等からなる着色剤、通電により発色する発色性化合物、又は、上記組成物に所望の導電性を付与して該組成物の通電発熱等を可能とする電解物質等や必要に応じて防カビ剤、防腐剤等の添加物を含有していてもよい。
【0059】
又画像の耐刷性を向上させる目的でコロイダルシリカ、酸化チタン、酸化スズ等の無機化合物微粒子を添加することもできる。
【0060】
上述した成分からなる本発明に使用される組成物を得るには、例えば、水等の液体と、親水性高分子等からなる架橋構造物質(必要に応じて、更に架橋剤、着色剤、電解質等)及び/又は高分子電解質とを加熱しつつ均一に混合して粘稠な溶液とした後、冷却してゲル化すればよい。
【0061】
このように得られた組成物は、通電印加により、架橋構造の少なくとも一部が変化ないし破壊されて、ゲル的な状態から(可逆的に)ゾル的な状態となって、に応じた付着性が付与される。又は導電により高分子電解質の解離状態が変化して、通電に応じた付着性が付与される。
【0062】
前述のメカニズム(2)をとる組成物に通電すると、電気化学的反応により、電極近傍の水素イオン濃度が変化する。即ち、電極との電子の授受により組成物の有する架橋構造の変化、又は電解質の解離状態の変化が生じ付着性が変化する。
【0063】
通電による架橋構造の変化を、例えば、ポリビニルアルコールとホウ酸イオンとの架橋物を例として説明するならば、以下のような現象が起こると推定できる。
【0064】
ポリビニルアルコールのOH基と結合して架橋しているホウ酸イオン、
【0065】
【化1】

から、電気通電の陽極近傍での陽極反応又は塩酸などの電子受容体の添加により水素イオン濃度が酸性側にかわり、電子が奪われ、架橋構造(少なくともその一部)が破壊されて、分子量が減少し、粘度が下がり、組成物に付着性が付与されたためと推定される。
【0066】
この際の反応は、例えば以下のように推定される。
【0067】
【化2】

又通電による高分子電解質の解離状態の変化をアミノ酸を例として説明するならば、電気通電による陰極近傍での陰極反応又は電子対供与体添加によりpHがアルカリ性側に変化して、アミノ酸の−NH3+イオンが−NHとなる。又電気通電による陽極近傍での陽極反応又は電子受容体添加により水素イオン濃度が酸性側に変化することにより、アミノ酸の−COOイオンが−COOHとなる。
【0068】
上述のようにアミノ酸の解離状態の変化により付着性の差が生じると考えられ、この際の反応は例えば以下のように推定される。
【0069】
【化3】

(1)電気通電による陽極反応
(2)電気通電による陰極反応
(インク)
以下、本発明で使用するインクを構成する成分について詳述する。
【0070】
〈顔料〉
本発明で使用されるインクの色材として顔料を用いる場合には、顔料の量は、インク全重量に対して、重量比で1〜20重量%、好ましくは2〜12重量%の範囲で用いる。
【0071】
本発明において使用される顔料としては、具体的には、黒色のインクに使用されるものとしてカーボンブラックが挙げられるが、例えば、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックであって、一次粒子径が15〜40μm、BET法による比表面積が50〜300m/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9等の特性を有するものが好ましく用いられる。このような特性を有する市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上、三菱化成製)、RAVEN 1255(以上、コロンビア製)、REGAL400R、REGAL330R、REGAL660R、MOGUL L(以上、キャボット製)、Color Black FW1、COLOR Black FW18、ColorBlack S170、Color Black S150、Printex35、Printex U(以上、デグッサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
【0072】
又、イエローインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16,C.I.Pigment Yellow 83等が挙げられ、マゼンタのインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.PigmentRed 112、C.I.Pigment Red 122等が挙げられ、シアンインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられるが、これらに限られるものではない。又、以上の他、本発明のために新たに製造された顔料も勿論使用することが可能である。
【0073】
〈分散剤〉
上記したカーボンブラックや有機顔料を用いる場合には分散剤を併用することが好ましい。分散剤としては、アニオン性基の作用によって上記の顔料を水性媒体に安定に分散させることのできるものが好適である。分散剤の具体例は、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体又はこれらの塩等が含まれる。又、これらの分散剤は、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、特には3,000〜15,000の範囲のものが好ましい。
【0074】
〈自己分散型顔料〉
本発明では、色材として、顔料表面にイオン性基(アニオン性基)を結合させることによって得られる、分散剤を使用することなく水性媒体に分散する顔料、所謂、自己分散型顔料を用いることもできる。このような顔料の一例として、例えば、自己分散型カーボンブラックを挙げることができる。自己分散型カーボンブラックとしては、例えば、アニオン性基がカーボンブラック表面に結合したもの(アニオン性CB)が挙げられる。以下、カーボンブラックを例にとって説明する。
【0075】
〈アニオン性CB〉
アニオン性カーボンブラックとしては、カーボンブラックの表面に、例えば、−COO(M)、−SO(M)、−POH(M)、−PO(Mから選ばれる少なくとも1つのアニオン性基を結合させたものが挙げられる。上記式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。
【0076】
これらの中でも特に、−COO(M)や−SO(M)をカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめたカーボンブラックは、インク中の分散性が良好なため、本発明に特に好適に用い得る。ところで、上記親水性基中「M」として表したもののうち、アルカリ金属の具体例としては、例えば、Li、Na、K、Rb及びCs等が挙げられる。又、有機アンモニウムの具体例としては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0077】
これらの「M」を、アンモニウム又は有機アンモニウムとした自己分散型カーボンブラックを含むインクを用いた場合には、記録画像の耐水性をより向上させることができ、この点において特に好適である。これは当該インクが記録媒体上に付与されると、アンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発する影響によるものと考えられる。ここで「M」をアンモニウムとした自己分散型カーボンブラックとしては、例えば、「M」がアルカリ金属である自己分散型カーボンブラックをイオン交換法を用いて「M」をアンモニウムに置換する方法や、酸を加えてH型とした後に水酸化アンモニウムを添加して「M」をアンモニウムにする方法等によって得ることができる。
【0078】
アニオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックの製造方法としては、例えば、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法が挙げられる。例えば、この方法によってカーボンブラック表面に−COONa基を化学結合させることができる。
【0079】
ところで、上記したような種々の親水性基は、カーボンブラックの表面に直接結合させてもよい。又は他の原子団をカーボンブラック表面と該親水性基との間に介在させ、該親水性基をカーボンブラック表面に間接的に結合させてもよい。ここで他の原子団の具体例としては、例えば、炭素原子数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、置換又は未置換のフェニレン基、置換又は未置換のナフチレン基が挙げられる。ここで、フェニレン基及びナフチレン基の置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。又、他の原子団と親水性基の組合わせの具体例としては、例えば、−CCOO(M)、−Ph−SO(M)、−Ph−COO(M)等(但し、Phはフェニル基を表す)が挙げられる。
【0080】
本発明においては、上記した自己分散型カーボンブラックの中から2種又はそれ以上を適宜選択して、インクの色材に用いてもよい。又、インク中の自己分散型カーボンブラックの添加量としては、インク全量に対して、質量基準で、0.1〜15%、特には1〜10%の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで、自己分散型カーボンブラックは、インク中に含有された場合に、十分な分散状態を維持することができる。更に、インクの色調の調製等を目的として、自己分散型カーボンブラックに加えて染料を色材として添加してもよい。
【0081】
〈着色微粒子/マイクロカプセル化顔料〉
色材として上記したものの他に、ポリマー等でマイクロカプセル化した顔料や樹脂粒子の周囲を色材で被覆した着色微粒子等も用いることができる。マイクロカプセルに関しては、本来的に水性媒体に対する分散性を有するが、分散安定性を高めるために上記したような分散剤を更にインク中に共存させてもよい。又、着色微粒子を色材として用いる場合には、上記したアニオン系分散剤等を用いることが好ましい。
【0082】
〈染料〉
本発明で使用されるアニオン性基を有する水溶性染料としては、カラーインデクス(COLOUR INDEX)に記載されている水溶性の酸性染料、直接染料、反応性染料であれば特に限定はない。又、カラーインデックスに記載のないものでも、アニオン性基、例えば、スルホン基及びカルボキシル基等を有するものであれば特に制限はない。ここでいう水溶性染料の中には、溶解度のpH依存性があるものも当然に含まれる。これらのアニオン性基を有する染料を含有するインクのpHは5〜12の間、好ましくは5〜10、より好ましくは7〜10の間で調整される。
【0083】
本発明のインク中に含有するカチオン染料としては、
カチオンブラック:市販品のアストラゾンブラックSW(Astrazon Black SW:バイエル)、ジアクスリルブラックSWR−N liq(Diaxryl Black SWR−N liq:三菱)、カヤセル(登録商標)ブラックCN(Kayacel Black CN:日本化薬)
カチオンイエロー:C.I.ベーシックイエロー 1,11,13,19,28,29,33,36
カチオンマゼンタ:
C.I.ベーシックレッド 1,2,9,12,13,24,24,39,51
C.I.ベーシックバイオレット 1,3,7,10,11,15,16,20,27,35,39
カチオンシアン:C.I.ベーシックブルー 1,3,5,9,21,24,25,26,28,45,47,54,65,92,100,124,147
等が挙げられるが、特にこれら染料に限定されるものではない。このカチオン染料はインク中に0.1〜15重量%含有することが好ましい。又、これらカチオン染料を含有するインクのpHは2〜8の間、好ましくは3〜7の間で調製される。
【0084】
上記のような色材として水溶性染料が含有されているインクに含有される水溶性有機溶剤としては、前記した本発明にかかる液体組成物に使用される水溶性有機溶剤を同様に用いることができる。又、これらの水溶性有機溶剤のインク中の含有量の好適な範囲についても同様とする。更に、インクの好適な物性範囲についても、液体組成物の場合と全く同様である。
【0085】
なお、前記のように本発明の組成物中に多価金属を含む場合は、アニオン性基の作用によって上記顔料を水性媒体中に分散させた分散体、顔料表面にアニオン性基を結合させた自己分散型顔料、又はアニオン染料を用いることが好ましい。
【0086】
(インクセット)
上記で説明したインクと、前記で説明した組成物とを組み合わせて本発明のインクセットを構成する場合のインクの色味は特に限定されず、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー及びブラックから選ばれる1つの色調を示すインクとすればよい。具体的には、所望の色調のインクとなるように適宜前記した色材のなかから選択して用いることができる。又、反応液と組み合わせるインクは、1種類に限定されるものでなく、異なる色のインクを2つ以上組み合わせて多色画像の形成に適したインクセットとした態様がより好ましい。各インク中の色材の含有量は、インクジェット記録に用いた場合に優れたインクジェット吐出特性を備え、又、所望の色調や濃度を有するように適時選択すればよい。目安としては、例えば、インク全重量に対して、質量基準で、1〜50%の範囲が好ましい。
【0087】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0088】
<実施例>
(組成物1の組成及び調製)
下記の組成からなる本発明の実施例の組成物1を調製した。具体的な調製方法としては、下記の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過して、組成物とした
A成分
・水 100部
ポリビニルアルコール(重合度1700、けん化度88%) 9部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH) 1部
・トリメチロールプロパン 20部
B成分
・ホウ酸ナトリウム10水和物 0.6部
上記A成分を70℃に加熱しながら均一に混合した後、B成分を加え常温下で放置することにより、本発明に公的に用いられる高保水性のゲル状組成物を得た。この際、酸又はアルカリを用いてpH8とすることが好ましかった。
【0089】
このゲル状組成物においては、ポリビニルアルコールのOH基が、ホウ酸イオンにより架橋されているものと推定される。
【0090】
組成物1とともに使用する組成物として、下記の組成を有する黒色のBkインク1を調製した。
【0091】
(Bkインク1及び調製)
顔料(カーボンブラック(製品名:Mogul L、キャブラック製))10部、アニオン系高分子P−1(スチレン−アクリル酸共重合体、酸価200、重量平均分子量10,000、固形分10%の水溶液、中和剤:水酸化カリウム)20部、純水70部を混合し、以下に示す材料をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを150部充填し、水冷しつつ、5時間分散処理を行った。この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去した後、最終調製物の固形分は約12%、重量平均粒径は120nmの顔料分散体Bkを得た。
【0092】
(インク組成)
顔料分散体Bk 30部
グリセリン 10部
ジエチレングリコール 6部
水 54部
(組成物1の塗工)
<画像記録、印刷>
図1に示すように、ステンレス製の30mmφの円筒状ロール(表面粗度1S)からなるインク担持ロール1の表面をハードクロムメッキした。鉄製円筒ロール(30mmφ)からなる版ロール3上に、白金メッキ銅板上にビニルポリマーで画像を形成した版4を巻きつけてインク担持ロール1に対向させた。前記インクをインク溜10として投入し、インク担持ロール1を20mm/secで矢印A方向に回転させ、E方向に回転する表面テフロン(登録商標)ゴム製円筒ロールであるコーティングロール9とのギャップを制御し、コーティングロール20mm/secの回転で、インク担持ロール1上のインク層厚を1.2mmにした。版ロール3を矢印B方向に20mm/secで回転させた。
【0093】
この際、版4とインク担持ロール1に通電しなかったときは、版上へのインク転写はごく微量の溶液が転移したが、インクは実質的に転写しなかった。
【0094】
一方、図1に示すように、版ロール3上の版4を陽極とし、インク担持ロール1を陰極としてインク2の層を介して30Vの電圧を印加したところインク2は版ロール上に転写された。
【0095】
次に、版と接触して回転する表面ウレタンゴムからなるブラン銅5に転写し、ブラン銅5と圧接し、矢印D方向に回転する表面シリコンゴムの圧銅6の間を通過する普通紙7上に転写した。
【0096】
(印字)
この記録媒体7の組成物1の転写面の上方から、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによってインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJS700(キヤノン製)を用いてインクの印字を行った。媒体としては、市販のコピー用紙、ボンド紙及び再生紙を使用した。
【0097】
又この組成物を温度50℃、湿度90%の高湿環境に約10時間放置した。すると、乾燥により放置前より組成物全量にして1.0%だけわずかに減少し、前述と同様に印字を行ったところ前述と同様の黒色の鮮明な画像が得られた。
【0098】
一方これとは別にこの組成物を温度50℃、湿度20%の高湿環境に約10時間放置した。すると、乾燥により放置前より組成物全量にして4.2%だけわずかに減少し、前述と同様の良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は本発明の画像記録方法を実施する装置の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0100】
1 組成物担持ロール
2 組成物
3 版ロール
4 版
5 ブラン銅
6 圧銅
7 被記録体
8 付着組成物
9 コーティングロール
10 組成物溜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に粘着性を有さず、且つ水素イオン濃度の変化による粘着性付与を可能としたことを特徴とする組成物を用いて、該組成物を記録媒体上に塗付する前及び/又は塗工した後から、少なくとも一種類以上のインク組成物を塗工する工程を含む画像記録方法。
【請求項2】
前記組成物が通電に基づく水素イオン濃度の変化により粘着性が付与される請求項1に記載の画像記録方法。
【請求項3】
前記組成物が電子対受容体の添加に基づく水素イオン濃度の変化により粘着性が付与される請求項1又は2に記載の画像記録方法。
【請求項4】
前記組成物が電子対供与体の添加に基づく水素イオン濃度の変化により粘着性が付与される請求項1又は2に記載の画像記録方法。
【請求項5】
前記組成物が液体と、これを保持する架橋構造物質とからなる請求項1〜4の何れかに記載の画像記録方法。
【請求項6】
少なくとも一種類以上のインク組成物、及び該インク組成物を記録媒体上に固定化させる液体組成物とのインクセットを用いた記録方法であって、該液体組成物が請求項1〜5に示すことを組成物であるインクジェット記録方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−183819(P2008−183819A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19550(P2007−19550)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】