説明

画像記録用硬化性組成物及びその製造方法、画像記録装置、並びに画像記録方法

【課題】記録媒体に画像を形成した後の光沢の低下が抑制される画像記録用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】外部からの刺激によって硬化する硬化性材料13Bと、体積平均粒子径が50nm以上1500nm以下の範囲にあり、かつ、体積平均粒子径/数平均粒子径の比が1.0以上1.2以下の範囲にあり、前記硬化性材料中で凝集せずに分散している吸液性粒子13Aと、を含む画像記録用硬化性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録用硬化性組成物及びその製造方法、画像記録装置、並びに画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを利用した画像やデータ等を記録する方法の一つとして、インクジェット記録方式がある。インクジェット記録方式では、ノズル、スリット、或いは多孔質フィルム等から液体或いは溶融固体インクを吐出し、紙、布、フィルム等に記録を行う。
このようなインクを利用した記録方式では、浸透媒体や非浸透媒体などの多様な記録媒体に対して高画質で記録を行うために、中間転写体上に画像記録用組成物の層を形成し、該組成物層にインクを付与して予め画像を記録した後、画像が記録された組成物層を紙等の記録媒体に転写して硬化する方式が提案されている。
【0003】
画像記録用組成物として、例えば、特許文献1には、「アニオン性の吸液材料と、外部からの刺激により硬化する硬化性樹脂前駆体と、を含有する画像記録用組成物」が提案されている。
特許文献2には、「sp値が9以上19以下であり外部からの刺激により硬化する硬化性材料と、吸水性樹脂粒子と、ノニオン性界面活性剤と、を含有する画像記録用組成物」が提案されている。
特許文献3には、「外部からの刺激により硬化する硬化性材料と、吸水性樹脂粒子と、を含有し、前記吸水性樹脂粒子の体積平均粒子径が0.5μm以上5.0μm以下であり、前記吸水性樹脂粒子の含有量が5質量%以上50質量%以下である画像記録用組成物」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−89306号公報
【特許文献2】特開2010−710号公報
【特許文献3】特開2010−712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、記録媒体に画像を形成した後の光沢の低下が抑制される画像記録用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1に係る発明は、外部からの刺激によって硬化する硬化性材料と、体積平均粒子径が50nm以上1500nm以下の範囲にあり、かつ、体積平均粒子径/数平均粒子径の比が1.0以上1.2以下の範囲にあり、前記硬化性材料中で凝集せずに分散している吸液性粒子と、を含む画像記録用硬化性組成物である。
請求項2に係る発明は、前記吸液性粒子の粒子径を該吸液性粒子の輪郭に外接する円の直径Dとし、該外接円の半径をR、該外接円と同心円であって、該吸液性粒子の輪郭に内接する円の半径をrとしたときに、前記吸液性粒子の粒子径Dに対する該吸液性粒子の表面の凹凸の頂部と底部との差の最大距離の割合[(R−r)/D]×100(%)が5%未満である請求項1に記載の画像記録用硬化性組成物である。
請求項3に係る発明は、前記吸液性粒子を前記硬化性材料中に分散させる分散剤を含む請求項1又は請求項2に記載の画像記録用硬化性組成物である。
請求項4に係る発明は、前記吸液性粒子の含有比率が10質量%以上40質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の画像記録用硬化性組成物である。
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の画像記録用硬化性組成物を製造する方法であって、水性溶媒中に分散された吸液性粒子を作製する工程と、前記水性溶媒中に分散された前記吸液性粒子を乾燥させずに、外部からの刺激によって硬化する硬化性材料と混合する工程と、を有する画像記録用硬化性組成物の製造方法である。
請求項6に係る発明は、中間転写体と、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像記録用硬化性組成物を前記中間転写体上に供給して硬化性組成物層を形成する硬化性組成物層形成手段と、前記硬化性組成物層に水性インクを付与するインク付与手段と、前記水性インクが付与された前記硬化性組成物層を記録媒体に転写する転写手段と、前記硬化性組成物層の硬化性材料を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、を有する画像記録装置である。
請求項7に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像記録用硬化性組成物を中間転写体上に供給して硬化性組成物層を形成する硬化性組成物層形成工程と、前記硬化性組成物層に水性インクを付与するインク付与工程と、前記水性インクが付与された前記硬化性組成物層を記録媒体に転写する転写工程と、前記硬化性組成物層の硬化性材料を硬化させる刺激を供給する刺激供給工程と、を含む画像記録方法である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、前記吸液性粒子の平均粒子径が上記範囲外にあり、前記硬化性材料中で凝集して分散している場合に比べ、記録媒体に画像を形成した後の光沢の低下が抑制される画像記録用硬化性組成物が提供される。
請求項2に係る発明によれば、前記吸液性粒子の粒子径に対する表面の凹凸の頂部と底部との差の最大距離の割合が5%以上である場合に比べ、記録媒体に画像を形成した後の光沢の低下が抑制される画像記録用硬化性組成物である。
請求項3に係る発明によれば、前記吸液性粒子を前記硬化性材料中に分散させる分散剤を含まない場合に比べ、使用前の保存安定性が高い画像記録用硬化性組成物が提供される。
請求項4に係る発明によれば、前記吸液性粒子の含有比率が上記範囲外である場合に比べ、記録媒体に画像を形成した後の光沢の低下が抑制される画像記録用硬化性組成物である。
請求項5に係る発明によれば、水性溶媒中に分散された吸液性粒子を作製する工程と、前記水性溶媒中に分散された前記吸液性粒子を乾燥させた上で、外部からの刺激によって硬化する硬化性材料と混合する工程と、を有する場合に比べ、記録媒体に画像を形成した後の光沢の低下が抑制される画像記録用硬化性組成物の製造方法が提供される。
請求項6、7に係る発明によれば、前記の画像記録用硬化性組成物を用いない場合に比べ、記録媒体に画像を形成した後の光沢の低下が抑制される画像記録装置、画像記録方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る硬化性組成物を用いて中間転写体上に形成された硬化性組成物層を示す模式図である。
【図2】図1に示す硬化性組成物層にインクが付与された後、記録媒体上に転写された状態を示す模式図である。
【図3】吸液性粒子の粒子径に対する表面の凹凸の頂部と底部との差の最大距離の割合を説明する図である。
【図4】本実施形態に係る画像記録装置を示す構成図である。
【図5】吸液性粒子が凝集した凝集粒子を示す模式図である。
【図6】吸液性粒子が凝集した状態の硬化性組成物層にインクが付与された後、記録媒体に転写された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しつつ説明する。
吸液性粒子と硬化性材料を含む硬化性組成物層を中間転写体上に形成し、インクジェットによって水性インクを付与した後、記録媒体に転写するとともにエネルギーを付与して画像を形成する場合、硬化性組成物は付与されたエネルギーによって硬化し、硬化膜を形成しているにもかかわらず、保存中に光沢の低下が起こる場合がある。このような光沢の低下は特に画像が形成されていない部分(非画像部)において顕著である。光沢の低下のメカニズムは定かで無いが、以下のように推測される。
【0010】
従来の硬化性組成物では、例えば図5に示すように、吸液性粒子の一次粒子33Aが二次凝集した粒子(凝集粒子)33、あるいは粉砕加工された粒子が用いられている。これらの凝集粒子や粉砕加工された粒子は、通常、粒子径が5μm近傍であり、粒子径が1μm未満のものから、30μm程度のものまで粒度分布が大きく、また、程度の差はあるが粒子表面に大きな凹凸がある。特に凝集した粒子や表面の凹凸が大きい吸液性粒子は、粒子の内部まで完全に吸液するわけではないため、インクを吸収して十分な画質を達成するのに、粒子の含有量を多くする必要がある。
【0011】
中間転写体上の硬化性組成物層はインクが付与された後、記録媒体に表裏反転した状態で転写されるため、一部の吸水性粒子は、エネルギーにより硬化した膜では完全に覆いきれない状態として残る。また、硬化膜中の吸液性粒子の形状、大きさの影響で、図6に示すように、硬化膜13Cの表面から凝集粒子33の一部が露出した状態にあり、かかる露出した凝集粒子33が吸液あるいは吸湿して光沢が低下すると考えられる。また、記録媒体Pが通気性の材料である場合、記録媒体Pとの付着面側からも吸液性粒子33が吸湿することも光沢の原因であると考えられる。
【0012】
そこで、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、粒径が比較的小さく、かつ、粒度分布が狭い吸液性粒子を用い、さらに、かかる吸液性粒子が硬化性材料中で凝集せずに分散している硬化性組成物とすれば、吸湿による光沢の低下が抑制され、加えてより高精細な画像が得られることを見出した。
【0013】
<画像記録用硬化性組成物>
本実施形態に係る画像記録用硬化性組成物(適宜「硬化性組成物」と記す)は、液状のものであり、外部からの刺激によって硬化する硬化性材料と、体積平均粒子径が50nm以上1500nm以下の範囲にあり、かつ、体積平均粒子径/数平均粒子径の比が1.0以上1.2以下の範囲にあり、前記硬化性材料中で凝集せずに分散している吸液性粒子と、を含んで構成されている。
【0014】
本実施形態に係る画像記録用硬化性組成物は、粒径が小さく、かつ、粒度分布が狭い吸液性粒子が、硬化性材料中で凝集せずに分散している。そのため、中間転写体上、さらには、記録媒体上に硬化性組成物層として形成されたときに吸液性粒子が粗大な凝集粒子となって硬化性組成物層(硬化膜)の表面から露出することが抑制され、画像記録後においても硬化性組成物層から露出した吸液性粒子が吸湿して光沢が低下することが抑制されると考えられる。
【0015】
例えば、図1に示すように、本実施形態に係る硬化性組成物を用いて中間転写体10上に形成された硬化性組成物層13は、吸液性粒子13Aが硬化性材料13B中で凝集せずに1次粒子の状態で分散されている。そして、硬化性組成物層13にインク14Aが付与された後、表裏が反転した状態で記録媒体Pに転写される。図2に示すように、硬化性組成物層13に付与されたインク14Aは、吸液性粒子13Aに吸収されて保持されるが、吸液性粒子14Aのほとんどが一次粒子の状態で分散しており、硬化性組成物層13に対して刺激の供給によって硬化した硬化膜13Cの表裏面からの露出が抑制されるため、画像記録後に吸湿することが抑制されると考えられる。また、吸液性粒子13Aは一次粒子として分散されているため、各インク成分14Aも吸液性粒子13Aに細かく保持されるため、高精細な画像が形成されると推測される。
【0016】
−硬化性材料−
本実施形態に係る硬化性組成物に含まれる「外部からの刺激により硬化する硬化性材料」とは、外部からの刺激(エネルギー)によって硬化し、「硬化性樹脂」となる材料を意味する。具体的には、例えば、硬化性のモノマー、硬化性のマクロマー、硬化性のオリゴマー、硬化性のプレポリマー等が挙げられる。
【0017】
硬化性材料としては、例えば、紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料、熱硬化性材料等が挙げられる。紫外線硬化性材料は、硬化し易く、他のものに比べ硬化速度も速く、取り扱い易いため、最も望ましい。電子線硬化性材料は、重合開始剤が不要であり、硬化後の層の着色制御が実施しやすい。熱硬化性材料は、大掛りな装置を必要とすることなく硬化される。なお、硬化性材料は、これらに限られず、例えば湿気、酸素等により硬化する硬化性材料を適用してもよい。なお、ここで言う硬化性材料は、硬化後は不可逆である。
【0018】
紫外線硬化性材料を硬化することにより得られる「紫外線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性組成物は、紫外線硬化性のモノマー、紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、及び紫外線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また、硬化性組成物は、紫外線硬化反応を進行させるための紫外線重合開始剤を含んでいることが望ましい。さらに硬化性組成物は、必要に応じて、重合反応をより進行させるための、反応助剤、重合促進剤等を含んでいてもよい。
【0019】
紫外線硬化性のモノマーとしては、例えば、アルコール/多価アルコール/アミノアルコール類のアクリル酸エステル、アルコール/多価アルコール類のメタクリル酸エステル、アクリル脂肪族アミド、アクリル脂環アミド、アクリル芳香族アミド類等のラジカル硬化性材料;エポキシモノマー、オキセタンモノマー、ビニルエーテルモノマー等のカチオン硬化性材料;などが挙げられる。上記紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、紫外線硬化性のプレポリマーとしては、これらモノマーを重合させたものの他、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、ポリエーテル骨格に、アクリロイル基やメタクリロイル基の付加した、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエステルメタクリレート等のラジカル硬化性材料が挙げられる。
【0020】
硬化反応がラジカル反応により進行するタイプである場合、紫外線重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン系、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシケトン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アミノケトン、α-アミノアルキルフェノン、モノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ヒドロキシベンゾフェノン、アミノベンゾフェノン、チタノセン型、オキシムエステル型、オキシフェニル酢酸エステル型などが挙げられる。
【0021】
また硬化反応がカチオン反応により進行するタイプである場合、紫外線重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アレン-イオン錯体誘導体、トリアジン系開始剤等が挙げられる。
【0022】
電子線硬化性材料を硬化することにより得られる「電子線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性組成物は、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、及び電子線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。
【0023】
ここで、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、電子線硬化性のプレポリマーとしては、紫外線硬化性の材料と同様のものが挙げられる。
【0024】
熱硬化性材料を硬化することにより得られる「熱硬化性樹脂」としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性組成物は、熱硬化性のモノマー、熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、及び熱硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また重合の際に硬化剤を添加してもよい。また、硬化性組成物は、熱硬化反応を進行させるための熱重合開始剤を含んでもよい。
【0025】
ここで、熱硬化性のモノマーとしては、例えば、フェノール、ホルムアルデヒド、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン、シアヌリル酸アミド、尿素、グリセリン等のポリアルコール、無水フタル酸、無水マレイン酸、アジピン酸等の酸などが挙げられる。熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、熱硬化性のプレポリマーとしては、これらのモノマーを重合させたものや、エポキシプレポリマー、ポリエステルプレポリマーなどが挙げられる。
【0026】
熱重合開始剤としては、例えば、プロトン酸/ルイス酸等の酸、アルカリ触媒、金属触媒などが挙げられる。
【0027】
以上のように、硬化性材料は、紫外線、電子線、熱等の外部エネルギーにより硬化(例えば、重合反応が進行することによる硬化)するものであれば何でもよい。
上記硬化性材料の中でも、画像記録の高速化という観点を考慮すると、硬化速度の速い材料(例えば、重合の反応速度が速い材料)が望ましい。このような硬化性材料としては、例えば、放射線硬化型の硬化性材料(紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料等)が挙げられる。
【0028】
硬化性材料は、中間転写体等との濡れ性を考慮して、Siやフッ素等による変性がされていてもよい。また硬化性材料は、硬化速度と硬化度を考慮すると、多官能のプレポリマーを含有するのが望ましい。
【0029】
また、硬化性組成物には、上記硬化反応に寄与する主成分(モノマー、マクロマー、オリゴマー、及びプレポリマー、重合開始剤等)を溶解又は分散するための水や有機溶媒を含んでいてもよい。但し、当該主成分の比率が例えば30質量%以上、望ましくは60質量%以上、より望ましくは90質量%以上の範囲が挙げられる。
【0030】
また、硬化性組成物は、硬化後の層を着色制御を行う目的で各種色材を含んでいてもよい。
【0031】
また、硬化性組成物の粘度は、5mPa・sから10000mPa・sが望ましく、より望ましくは10mPa・sから1000mPa・sであり、さらに望ましくは15mPa・sから500mPa・sの範囲が挙げられる。また、硬化性組成物の粘度は、インクの粘度よりも高いことがよい。
【0032】
−吸液性粒子−
本実施形態に係る硬化性組成物に含まれる吸液性粒子は、体積平均粒子径が50nm以上1500nm以下の範囲にあり、かつ、体積平均粒子径/数平均粒子径の比が1.0以上1.2以下の範囲にあり、前記硬化性材料中で凝集せずに分散している。なお、本実施形態に係る硬化性組成物に含まれる吸液性粒子は、全ての吸液性粒子が一次粒子として存在している必要はない。吸液性粒子の含有比率が高くなるほど吸液性粒子が凝集する傾向があるが、一部の吸液性粒子が凝集していても画像記録後の光沢の低下は抑制される。硬化性組成物に含まれる吸液性粒子の全個数N(一次粒子の個数N及び二次粒子の個数Nの合計)のうち、望ましくは50個数%以上、より望ましくは70個数%以上、さらに望ましくは80個数%以上が一次粒子として分散していることがよい。
なお、硬化性組成物に含まれる吸液性粒子のうち一次粒子の個数%は、硬化性組成物から無作為に1000個抽出した吸液性粒子を顕微鏡で観察して判定される。
【0033】
(体積平均粒子径)及び(体積平均粒子径/数平均粒子径の比)
吸液性粒子の体積平均粒子径(Mn)および体積平均粒子径/数平均粒子径(Mv/Mn)は、動的光散乱式粒子径・粒度分布測定装置「ナノトラックUPA」(日機装(株))を用いて以下の方法により測定されるものであり、本明細書に記載の数値は該方法により測定した値である。
【0034】
測定法としては、粒子濃度約0.01質量%に希釈した水分散液を前記ナノトラックUPAにより、約23℃にて測定した。
【0035】
体積平均粒子径が50nm以上1500nm以下の範囲にある吸液性粒子であれば、粒径が小さいため、比表面積が大きく、かつ粒子表面から中心までの距離が比較的短いため、粒子内部における吸液も進み易い。そのため、粒子の含有量が比較的少なくても十分なインクの吸液が実現される。なお、吸液性粒子の体積平均粒子径は、望ましくは200nm以上1200nm以下であり、より望ましくは300nm以上1100nm以下である。
【0036】
また、吸液性粒子の体積平均粒子径/数平均粒子径(Mv/Mn)の比が1.0以上1.2以下の範囲にあれば、粒度分布が狭く、粗大粒子がほとんど存在せず、かつ少ない吸液粒子量で済む。これにより、硬化膜の表面に吸液性粒子が露出することが抑制され、ほぼ硬化性材料で覆われることになる。
【0037】
(吸液性粒子の粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合)
吸液性粒子の粒子径に対する表面の凹凸の頂部と底部との差の最大距離(適宜「表面凹凸の最大距離」と記す)の割合が5%未満であることが望ましい。上記割合が小さいほど吸液性粒子の表面の凹凸が小さく真球形状に近くなる。上記割合は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定される。電子顕微鏡で吸液性粒子を観察したときに、例えば図3に示すように、吸液性粒子13Aの輪郭に外接する円の直径をD、半径をRとし、前記外接円と同心円であって、吸液性粒子13Aの輪郭に内接する円の半径rとしたときに、Dを粒子径、(R−r)を吸液性粒子13Aの表面の凹凸の頂部と底部との差の最大距離とする。そして、吸液性粒子13Aの粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合(%)は、[(R−r)/D]×100として算出される。このような手順によって硬化性組成物中の吸液性粒子20個について算出した平均値を吸液性粒子13Aの粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合とする。かかる割合が5%未満であれば、真球形状に近いため、各吸液性粒子13Aの表面が硬化性材料で覆われ易く、硬化後(保存時)の吸湿が効果的に抑制される。
【0038】
吸液性粒子の表面形状が滑らかであることにより、硬化性組成物層が記録媒体に転写された状態においても、硬化性組成物層の表面はほぼ硬化性材料で覆われ、吸液性粒子はエネルギーにより硬化した膜においても硬化性材料によって十分覆われた状態となる。また、記録媒体が通気性の材料である場合、記録媒体との付着面も硬化した膜で覆われるため、記録媒体側からの吸湿も抑制される。
従って、硬化後の吸液/吸湿が抑制され、光沢の低下が生じにくい。加えて、粒子の形状及び大きさが整っていることにより、画質レベルも向上し、記録媒体との密着性も向上する。
【0039】
吸液性粒子を構成する材料としては、例えば、カルボン酸(塩)などの吸液サイトを有する親水性ポリマー(吸水樹脂)が挙げられる。
吸水樹脂は、水性インク中の液体成分(溶媒)である水を吸液させるため親水性基を持つ有機樹脂である。
【0040】
吸水樹脂は、例えば、親水性基を持つ親水性単量体単独の重合体で構成されてもよいし、親水性基を持つ親水性単量体と疎水性基を持つ疎水性単量体との共重合体で構成されてもよい。なお、吸水樹脂としては、単量体だけでなく、ポリマー/オリゴマー構造などのユニットを開始物質に他のユニットを共重合させるグラフト共重合体やブロック共重合体でもよい。
【0041】
親水性基としては、例えば、−OH、−EOユニット(エチレンオキサイド基)、−COOM(Mは例えば水素、Na、Li、K等のアルカリ金属、アンモニア、有機アミン類等である。)、−SOM(Mは例えば水素、Na、Li、K等のアルカリ金属、アンモニア、有機アミン類等)、−NR(Rは例えば、H、アルキル、フェニル等である。)、−NRX(Rは例えば、H、アルキル、フェニル等であり、Xは例えば、ハロゲン、硫酸根、カルボン酸等の酸アニオン類、BF、等々である。)等が挙げられる。
【0042】
親水性単量体の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、不飽和カルボン酸、クロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。また、極性単量体としては、セルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、でんぷん誘導体、単糖類・多糖類誘導体、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、等の重合性カルボン酸類やこれらの(部分)中和塩類、ビニルアルコール類、ビニルピロリドン、ビニルピリジンやアミノ(メタ)アクリレート及びジメチルアミノ(メタ)アクリレートの如き誘導体、更にはこれらのオニウム塩類、アクリルアミドやイソプロピルアクリルアミド等のアミド類、ポリエチレンオキサイド鎖含有ビニル化合物類、水酸基含有ビニル化合物類、多官能カルボン酸と多価アルコールから構成されるポリエステル類、特にトリメリット酸の如き3官能以上の酸を構成成分として含有し末端カルボン酸や水酸基を多く含む分岐ポリエステル、ポリエチレングリコール構造を含むポリエステル、等も挙げられる。
【0043】
疎水性単量体としては、疎水性基を有する単量体が挙げられ、具体的には、例えばエチレン、ブタジエン等のオレフィン;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体;ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、酢酸ビニル、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、アクリロニトリル、及びこれらの誘導体も挙げられる。
【0044】
ここで、親水性単量体と疎水性単量体との共重合体である吸水樹脂の具体例としては、例えば、スチレン/アルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル類共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸/(無水)マレイン酸類共重合体、エチレン/プロピレン等のオレフィン系共重合体(又はこの変性体、又は共重合によるカルボン酸ユニット導入物)、トリメリット酸等で酸価を向上した分岐ポリエステル、ポリアミド等が好適である。
【0045】
吸水樹脂は、例えば、中和塩構造(例えばカルボン酸塩など)を含んでもよい。このカルボン酸などの中和塩構造は、カチオン(例えばNa,Li等の一価金属カチオン等)を含むインクを吸液したとき、当該カチオンとの相互作用で、アイオノマーを形成する。
【0046】
吸水樹脂は、置換或いは未置換アミノ基や、置換或いは未置換ピリジン基を含むことも望ましい。当該基は、殺菌効果や、アニオン基を有する記録材(例えば顔料や染料)との相互作用を及ぼす。
【0047】
吸水樹脂は、直鎖構造であっても、分岐構造でもよい。
また、吸水樹脂は、非架橋もしくは低架橋であることが画像定着性の観点から望ましい。
また、吸水樹脂は直鎖構造のランダム共重合体やブロック共重合体でも、分岐構造の重合体(分岐構造のランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含む)でも良い。例えば、重縮合で合成されるポリエステルの場合、分岐構造によって末端基が増加する。この分岐構造は、一般的に、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレート類等のいわゆる架橋剤を合成のときに添加する(例えば1%未満の添加)、或いは架橋剤と共に開始剤を多量添加することで得られる。
【0048】
吸水樹脂の酸価は、例えばカルボン酸基(−COOH)換算で50mgKOH/g以上777mgKOH/g以下が挙げられる。このカルボン酸基(−COOH)換算での酸価は、次の方法で測定した値とする。
酸価は、JIS K0070に従って行い、中和滴定法を用いた測定で行う。即ち、適当量の試料を分取し、溶剤(ジエチルエーテル/エタノール混合液)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の紅色が30秒間続いた時を終点とする。酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクターとしたとき、A=(B×f×5.611)/Sとして算出する。
【0049】
吸水樹脂は、インクから供給されるイオンによりイオン架橋してもよい。具体的には、例えば、吸水樹脂中が(メタ)アクリル酸やマレイン酸等のカルボン酸を含む共重合体やカルボン酸を有する(分岐)ポリエステル等、樹脂中にカルボン酸を含む構造単位を有する場合、樹脂中のカルボン酸と水性インク等の液体から供給されるアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、有機アミン・オニウムカチオン等とでイオン架橋や酸・塩基相互作用等が生じる。
【0050】
硬化性組成物中の吸液性粒子の含有量は、質量比で10%以上40%以下が望ましい。硬化性組成物中の吸液性粒子の含有量が10%以上であれば、インク中の水分を確実に吸収して高精彩な画像が得られ、40%以下であれば、吸液性粒子の凝集が抑制され、保存時の光沢の低下がより効果的に抑制される。かかる観点から、硬化性組成物中の吸液性粒子の含有量は、15%以上40%以下がより望ましく、20%以上35%以下がさらに望ましい。
【0051】
−分散剤−
本実施形態に係る画像記録用硬化性組成物は、吸液性粒子を硬化性材料中により安定に分散するために分散剤を含むことが望ましい。
分散剤としては、UVインク等で色材分散に用いられる界面活性剤などがよく利用できる。市販されているものとして、ソルスパース(Solsperse)等が挙げられる。ただし、同様の効果が出る材料であれば、異なる種類のものでも良くこれらに限定されるものではない。
硬化性組成物中の分散剤の含有量は、質量比で0.1%以上10%以下が望ましい。硬化性組成物中の分散剤の含有量が0.1%以上であれば、吸液性粒子の分散性向上に効果があり、10%以下であれば、吸液性の低下や硬化性の阻害を顕著に引き起こさない。かかる観点から、硬化性組成物中の分散剤の含有量は、より望ましくは0.2%以上8%以下、さらに望ましくは0.5%以上5%以下である。
【0052】
<画像記録用硬化性組成物の製造方法>
本実施形態に係る硬化性組成物を製造する方法は特に限定されないが、前記粒子径及び形状を有する吸液性粒子は、水性溶媒中で乳化重合することにより好適に調製される。乳化重合により重合された一次粒子であれば、粒子サイズがほぼ数百nmであり、粒度分布が狭く、粒子表面がほぼ均一で真球形状に近く、硬化性材料中で凝集せずに分散した吸液性粒子が得られる。具体的には、水性溶媒中に分散された吸液性粒子を作製する工程と、前記水性溶媒中に分散された前記吸液性粒子を乾燥させずに、外部からの刺激によって硬化する硬化性材料と混合する工程と、を有する方法が挙げられる。
【0053】
(吸液性粒子作製工程)
基本的には、一般的な乳化重合法での樹脂を製造する方法で、粒子の作製ができる。親水性の官能基を有するモノマーを含む重合性モノマー成分および重合開始剤を混合した液を油相とし、水に乳化剤を溶かした水相中に、窒素雰囲気下で、油相成分を投入する。その後加温することで、重合反応が進行し、水中に分散された状態で粒子が形成される。親水性の官能基がカルボン酸/スルホン酸等の酸である場合、その状態のまま、塩基性成分を添加することにより、カルボン酸塩/スルホン酸塩等の塩構造となり、樹脂の吸液性を高めることができる。
【0054】
(混合工程)
前記水性溶媒中に分散された前記吸液性粒子を乾燥させずに、外部からの刺激によって硬化する硬化性材料と混合する。ここで、溶媒を蒸発させて乾燥させてしまうと、吸液性粒子同士が凝集してしまうため、水中に分散した粒子を、液体状態を維持したまま、エネルギー反応性モノマー、プレポリマー中に粒子を移動させて分散させる。これにより、エネルギー反応性モノマー、プレポリマー等に吸液性粒子を分散させる際、分散剤を添加して、粒子の分散性を向上させることが望ましい。
具体的な方法の一つとしては、溶媒である水の一部を揮発させて粒子濃度を高めた状態で、イソプロピルアルコール(IPA)を加え、さらに水およびIPAの一部を揮発させた後、分散剤を溶解させたエネルギー反応性モノマー/プレポリマー混合液体中に投入する。混合液に対し外部エネルギー等によりせん断力を加え、分散させたのち、残りの水およびIPAを揮発させて、エネルギー反応性モノマー/プレポリマーへの粒子分散を完了させ、硬化性組成物として得ることができる。
これ以外の方法でも、エネルギー反応性モノマー/プレポリマー中に吸液性粒子を分散させ、もともと吸液性粒子が分散していた水を除去できる方法であれば、どのようなやり方でも良い。
【0055】
<画像記録装置>
本実施形態に係る画像記録装置は、中間転写体と、前述した本実施形態に係る画像記録用硬化性組成物を前記中間転写体上に供給して硬化性組成物層を形成する硬化性組成物層形成手段と、前記硬化性組成物層に水性インクを付与するインク付与手段と、前記水性インクが付与された前記硬化性組成物層を記録媒体に転写する転写手段と、前記硬化性組成物層の硬化性材料を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、を有する。
【0056】
図4は、本実施形態に係る画像記録装置の構成の一例を概略的に示している。本実施形態に係る画像記録装置101は、無端ベルト状の中間転写ベルト(中間転写体の一例)10を備え、中間転写ベルト10の周囲に、中間転写ベルト10の移動方向(矢印方向)における上流側から順に、中間転写ベルト10上に、硬化性組成物12Aを供給して硬化性組成物層13を形成する硬化性組成物層形成装置12(硬化性組成物層形成手段の一例)と、水性インク14Aを、硬化性組成物層13に付与して画像Tを形成するインクジェット記録ヘッド14(インク付与手段の一例)と、画像Tが形成される硬化性組成物層13を記録媒体Pに接触させ圧力を加えることにより画像Tが形成された硬化性組成物層13を記録媒体P上に転写する転写装置16(転写手段の一例)と、中間転写ベルト10表面に残留する硬化性組成物層13の残留物や付着した異物(記録媒体Pの紙粉等)等を除去するクリーニング装置20と、が配置されている。
【0057】
そして、硬化性組成物層形成装置12は、硬化性組成物12Aとして、外部からの刺激によって硬化する硬化性材料と、体積平均粒子径が50nm以上1500nm以下の範囲にあり、かつ、体積平均粒子径/数平均粒子径の比が1.0以上1.2以下の範囲にあり、前記硬化性材料中で凝集せずに分散している吸液性粒子と、を含む画像記録用硬化性組成物を供給する。
【0058】
中間転写ベルト10の内側には、例えば、硬化性組成物層13及び記録媒体Pの接触中に硬化性組成物層13に含まれる硬化性材料を硬化させる刺激を硬化性組成物層13に供給する刺激供給装置18(刺激供給手段の一例)が設けられている。硬化性組成物層13が記録媒体Pと接触している領域に対向して刺激供給装置18が設置されている。
【0059】
(中間転写ベルト)
中間転写ベルト10は、例えば、3つの支持ロール10A乃至10C、及び加圧ロール16B(転写装置16)により内周面側から張力を掛けつつ回転するように支持されて配設されている。また中間転写ベルト10は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
【0060】
中間転写ベルト10の構成材料としては、一般に中間転写ベルトとして用いられている公知の材料、例えば、各種の樹脂、各種のゴム、金属材料等が挙げられる。中間転写ベルト10は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。
【0061】
上記の通り、本実施形態においては、刺激供給装置18が中間転写ベルト10の内側に設けられているため、刺激は中間転写ベルト10を透過した後に硬化性組成物層13に供給される。したがって、中間転写ベルト10は、硬化性組成物層13に刺激を供給させるため、刺激透過性を有するとともに、耐刺激性を有するものであることがよい。
【0062】
例えば、刺激供給装置18が紫外線照射装置である場合、中間転写ベルト10は、紫外線透過性を有し、紫外線に対する耐久性を有するものがよい。具体的には、例えば、中間転写ベルト10は、その紫外線透過率が70%以上であることがよい。
紫外線透過性を有し、紫外線に対する耐久性を有する中間転写ベルト10の材料としては、具体的には、例えば、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、ポリイミドフイルム、ポリオレフィン系フィルム等が挙げられる。
【0063】
中間転写ベルト10は、硬化性組成物層13に接する表面に表面離型層を設けてもよい。表面離型層に用いられる材料としては、例えば、フッ素系樹脂材料等が挙げられる。この中でも、上記刺激に対する透過性を有する材料を用いることがよい。また、上記刺激に対する透過性し難い材料を用いる場合は、透過性が発現する膜厚まで表面離型層の膜厚を薄くすることがよい。
【0064】
(硬化性組成物層形成装置)
硬化性組成物層形成装置12は、例えば、硬化性組成物12Aを収納する筐体12C内に、当該硬化性組成物12Aを中間転写ベルト10へ供給する供給ローラ12Dと、供給された硬化性組成物12Aにより形成された硬化性組成物層13の量を規定するブレード12Eと、を含んで構成されている。
【0065】
硬化性組成物層形成装置12は、その供給ローラ12Dが中間転写ベルト10に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写ベルト10から離間する構成としてもよい。また、硬化性組成物層形成装置12は、独立した組成物供給システム(図示せず)より硬化性組成物12Aを筐体12Cへ供給させ、硬化性組成物12Aの供給がとぎれないようにしてもよい。
【0066】
硬化性組成物層形成装置12は、上記構成に限られず、公知の供給法(塗布法:例えば、ダイ塗布法、バー塗布法、スプレー方式の塗布法、インクジェット方式の塗布法、エアーナイフ方式の塗布法、ブレード方式の塗布法、ロール方式の塗布法等)などを利用した装置が適用される。
【0067】
(インクジェット記録ヘッド)
インクジェット記録ヘッド14は、例えば、中間転写ベルト10の移動方向上流側から、ブラックインクを付与するための記録ヘッド14Kと、シアンインクを付与するための記録ヘッド14Cと、マゼンタインクを付与するための記録ヘッド14Mと、イエローインクを付与するための記録ヘッド14Yと、の各色の記録ヘッドを含んで構成されている。無論、記録ヘッド14の構成は上記構成に限られず、例えば、記録ヘッド14Kのみで構成してもよいし、記録ヘッド14C、記録ヘッド14M、及び記録ヘッド14Yのみで構成してもよい。
【0068】
各記録ヘッド14は、例えば、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト10における非屈曲領域上で、且つ中間転写ベルト10表面と記録ヘッド14のノズル面との距離が例えば0.7から1.5mmにして配置されている。
【0069】
また、各記録ヘッド14は、例えば、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、従来のスキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いてもよい。
各記録ヘッド14のインク付与方式は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク14Aを付与し得る方式であれば制限はない。
【0070】
水性インク14Aとしては、溶媒として水性溶媒を含むインクを用いる。水性インクとしては、例えば、記録材として水溶性染料又は顔料を水性溶媒に分散又は溶解したインクが挙げられる。水性インク14Aの構成については、特に制限はなく、公知の構成のものが適用される。
【0071】
(転写装置)
転写装置16は、加圧ロール16B及び支持ロール10Cにより中間転写ベルト10を張力を持って架け渡し、非屈曲領域を形成している。中間転写ベルト10の非屈曲領域において、加圧ロール16B及び支持ロール10Cに対向する位置には、記録媒体Pを支持する支持体22が設けられている。また、加圧ロール16Aは、中間転写ベルト10の加圧ロール16Bと対向する位置に配置され、支持体22に設けられた開口部(図示せず)を通して記録媒体Pに接触する。
すなわち、中間転写ベルト10及び記録媒体Pが加圧ロール16A及び16Bにより挟み込まれた位置(以下、「接触開始位置」と称する場合がある)から、支持ロール10C及び支持体22により挟み込まれた位置(以下、「剥離位置」と称する場合がある)までの転写領域においては、硬化性組成物層13は中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態となっている。
【0072】
(刺激供給装置)
刺激供給装置18は、中間転写ベルト10の内側に設けられ、転写領域の中間転写ベルト10を介して、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の硬化性組成物層13に刺激を供給する。
【0073】
刺激供給装置18の種類は、適用する硬化性組成物12Aに含まれる硬化性材料の種類に応じて選択される。例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性材料を適用する場合、刺激供給装置18としては硬化性組成物12A(これにより形成された硬化性組成物層13)に紫外線を照射する紫外線照射装置を適用する。
また、電子線の照射により硬化する電子線硬化性材料を適用する場合、刺激供給装置18として硬化性組成物12A(これにより形成された硬化性組成物層13)に電子線を照射する電子線照射装置を適用する。
また、熱の付与により硬化する熱硬化性材料を適用する場合、刺激供給装置18として硬化性組成物12A(これにより形成された硬化性組成物層13)に熱を付与する熱付与装置を適用する。
【0074】
紫外線照射装置としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、UV−LEDなどが適用される。
紫外線の照射条件としては、特に制限はなく、紫外線硬化性材料種、硬化性組成物層13の厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、メタルハライドランプを用いた場合で、積算光量20mJ/cm以上1000mJ/cm以下等である。
【0075】
また、電子線照射装置としては、例えば、走査型/カーテン型等があり、カーテン型はフィラメントで生じた熱電子を、真空チャンバー内のグリッドによって引き出し、さらに高電圧(例えば70乃至300kV)によって、一気に加速させ、電子流となり、窓箔を通過して、大気側に放出する装置である。電子線の波長は一般的に1nmより小さく、またエネルギーは大きいもので数MeVに及ぶが、電子線の波長数がpmのオーダーでエネルギーが数十keV以上数百keV以下が適用される。
電子線の照射条件としては、特に制限はなく、電子線硬化性材料種、硬化性組成物層13の厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、電子線量は5kGy以上100kGy以下レベル等である。
【0076】
また、熱付与装置としては、例えば、ハロゲンランプ、セラミックヒータ、ニクロム線ヒータ、マイクロ波加熱、赤外線ランプなどが適用される。また、熱付与装置としては、電磁誘導方式の加熱装置も適用される。
熱の付与条件としては、特に制限はなく、熱硬化性材料種、硬化性組成物層13の厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、空気中において、200℃環境で5min等である。
【0077】
(記録媒体)
記録媒体Pとしては、浸透媒体(例えば、普通紙や、コート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用される。記録媒体Pは、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
【0078】
<画像記録方法>
本実施形態に係る画像記録方法は、前述した画像記録用硬化性組成物を中間転写体上に供給して硬化性組成物層を形成する硬化性組成物層形成工程と、前記硬化性組成物層に水性インクを付与するインク付与工程と、前記水性インクが付与された前記硬化性組成物層を記録媒体に転写する転写工程と、前記硬化性組成物層の硬化性材料を硬化させる刺激を供給する刺激供給工程と、を含む。
【0079】
以下、本実施形態に係る画像記録方法の一例として、前記画像記録装置101を用いた画像記録方法について説明する。
本実施形態に係る画像記録装置101では、中間転写ベルト10が回転駆動され、まず、硬化性組成物層形成装置12により、中間転写ベルト10表面に硬化性組成物12Aを供給して、硬化性組成物層13を形成する。
【0080】
硬化性組成物層13の層厚(平均膜厚)は、本実施形態で用いる硬化性組成物に含まれる吸液性粒子の体積平均粒子径よりも大きい厚みとする。吸液性粒子の体積平均粒子径に対して、2倍以上とすることが望ましい。吸液性粒子の体積平均粒子径に対して、硬化性組成物層の厚みが2倍以上であれば、水性インク14Aが硬化性組成物層13の最下層まで到達することが抑制されるとともに、硬化性組成物層からの吸液性粒子の露出が効果的に抑制される。かかる観点から、吸液性粒子の体積平均粒子径に対する硬化性組成物層13の層厚はより望ましくは3倍以上であり、特に望ましくは5倍以上である。
硬化性組成物に含まれる吸液性粒子の体積平均粒子径にもよるが、硬化性組成物層13の層厚(平均膜厚)は、具体的には、5μm以上50μm以下が望ましく、8μm以上35μm以下がより望ましい。50μm以下であれば、折り曲げ耐性に優れ、材料コストの抑制にも効果的である。
【0081】
また、例えば、硬化性組成物層13の厚みを水性インク14Aが硬化性組成物層13の最下層まで到達しない程度とすれば、記録媒体Pへの硬化性組成物層13の転写後において硬化性組成物層13のうち水性インク14Aが存在する領域が露出せず、硬化性組成物層13の水性インク14Aが存在しない領域が硬化後には保護層として機能する。
【0082】
次に、前記硬化性組成物層13に、インクジェット記録ヘッド14により水性インク14Aを付与する。インクジェット記録ヘッド14は画像情報に基づき、硬化性組成物層13の画像が形成される領域に水性インク14Aを付与する。
【0083】
この際、インクジェット記録ヘッド14による水性インク14Aの付与は、例えば、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト10における非屈曲領域上で行われる。つまり、ベルト表面のたわみが抑制された状態で硬化性組成物層13に水性インク14Aの付与がなされる。
【0084】
次に、転写装置16の加圧ロール16A及び16Bにより記録媒体Pと中間転写ベルト10とを挟み込んで圧力をかける。このとき、中間転写ベルト10上の硬化性組成物層13が記録媒体Pに接触する(接触開始位置)。その後、支持ロール10C及び支持体22によって挟まれた位置(剥離位置)までは、硬化性組成物層13が中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態が維持される。
【0085】
ここで、加圧ロール16A及び16Bによって硬化性組成物層13に加えられる圧力は、例えば、0.001MPa以上2MPa以下がよく、望ましくは0.001MPa以上0.5MPa以下の範囲とすることがよい。
【0086】
次に、刺激供給装置18によって、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の(接触中の)硬化性組成物層13に、中間転写ベルト10を介して刺激が供給されることで、硬化性組成物層13が硬化する。具体的には、中間転写ベルト10上の硬化性組成物層13が記録媒体Pに接触した後(接触開始位置を通過した後)に刺激供給を開始し、硬化性組成物層13が中間転写ベルト10から剥離される前(剥離位置に到達する前)に刺激供給を終了する。
【0087】
ここで、刺激供給量としては、硬化性組成物層13が、中間転写ベルト10から剥離しやすくなる程度に硬化する量であることがよい。具体的には、例えば刺激が紫外線である場合、積算光量で10mJ/cm以上1000mJ/cm以下範囲がよい。
【0088】
次に、剥離位置において硬化性組成物層13が中間転写ベルト10から剥離されることにより、水性インク14Aによる画像Tが含まれる硬化性樹脂層(画像層)が記録媒体Pに形成される。
【0089】
そして、硬化性組成物層13が記録媒体Pへ転写された後の中間転写ベルト10表面に残った硬化性組成物層13の残留物や異物をクリーニング装置20により除去し、再び、中間転写ベルト10上に、硬化性組成物層形成装置12により硬化性組成物12Aを供給して硬化性組成物層13を形成し、画像記録プロセスが繰り返される。
【0090】
上記工程を経て画像記録が行われる本実施形態に係る画像記録装置101では、水性インク14Aが硬化性組成物層13に付与されると、例えば、硬化性組成物層13に含まれる吸水成分(吸液性粒子)に、水性インク14Aの液体成分(水成分)が吸水されると共に、その記録材(例えば色材)を含む残渣成分が吸水成分の周囲に付着して、画像Tが形成される。そして、この状態で、画像Tが形成された硬化性組成物層13が記録媒体Pに転写されると共に硬化され、画像記録物(記録媒体と画像を保持する硬化層とで構成された画像記録物)が得られる。
【0091】
なお、上記本実施形態に係る画像記録装置101においては、上記の通り、硬化性組成物層13が、接触開始位置を通過した後に刺激供給を開始し剥離位置に到達する前に刺激供給を終了しているが、上記形態に限られない。
例えば、硬化性組成物層13が、接触開始位置を通過する際に刺激供給を開始してもよく、接触開始位置を通過する前に刺激供給を開始していてもよい。また、例えば、硬化性組成物層13が、剥離位置に到達する際に刺激供給を終了してもよく、剥離位置を通過した後に刺激供給を終了してもよい。さらに、刺激供給の開始から終了までにおいて、一時的に刺激供給を停止した後に刺激供給を再開してもよい。加えて、硬化性組成物層13が、記録媒体Pに転写された後に、刺激の供給を行ってもよい。
【0092】
また、上記本実施形態に係る実画像記録装置101においては、上記の通り、刺激供給装置18が中間転写ベルト10の内側に配置され、刺激が中間転写ベルト10を透過した後に硬化性組成物層13に供給されるが、これに限られない。
具体的には、例えば、刺激供給装置18を中間転写ベルト10の外側に配置し、中間転写ベルト10を透過せずに、直接(又は、支持体22及び記録媒体Pを透過した後に)中間転写ベルト10上の硬化性組成物層13に刺激を供給する形態であってもよい。
【0093】
また、例えば、刺激供給装置18の本体を中間転写ベルト10の外側に配置しつつ、中間転写ベルト10を透過した刺激を硬化性組成物層13に供給する形態もありうる。
具体的には、例えば、刺激供給装置18が紫外線照射装置である場合、紫外線照射装置本体を中間転写ベルト10の外側に配置し、例えば光ファイバー等を用いて紫外線を紫外線照射装置本体から中間転写ベルト10の内側に誘導し、中間転写ベルト10を透過した後の紫外線を硬化性組成物層13に照射する形態等が挙げられる。
【0094】
また、例えば、中間転写ベルト10の代わりに中間転写ドラムを配置した形態としてもよい。
【0095】
また、上記本実施形態係る画像記録装置101においては、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ヘッド14から画像データに基づいて選択的にインク14Aが付与されてカラーの画像が記録媒体Pに記録されるようになっているが、一色のインクのみを用いて画像を記録する態様であってもよい。また、記録媒体上への文字等の記録に限定されるものではなく、すなわち工業的に用いられる液滴付与(噴射)装置全般などに適用してもよい。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0097】
図4に示す構成を有する前記画像記録装置101を用いて画像を記録した。
まず、硬化性組成物層形成装置12により硬化性組成物12Aを中間転写ベルト10に供給して硬化性組成物層13を形成した。次いで、硬化性組成物層13にインクジェット記録ヘッド14(14K、14C、14M、14Y)により各色水性インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置16により記録媒体Pへ硬化性組成物層13を接触させながら刺激供給装置18により刺激を供給し硬化性組成物層13を硬化させて、画像記録物を中間転写ベルト10から剥離し、評価を行った。
・記録媒体P:A普通紙(C2富士ゼロックスインターフィールド製)
・印刷パターン:J6チャート(JEITA標準パターン)
【0098】
そして、硬化性組成物、各色の水性インクは、以下のものを用いた。
【0099】
(水性インク)
−ブラックインク−
・C.I.ダイレクトブラック154:4重量部
・プロピレングリコール:5重量部
・2−ピロリドン:5重量部
・グリセリン:15重量部
・オルフィンE1010(日信化学社製):2.0重量部
・純水:70重量部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、0.45μmフィルターでろ過し、ブラックインクを得た。
【0100】
−シアンインク−
・C.I.ダイレクトブルー199:3.5重量部
・ジエチレングリコール:15重量部
・プロピレングリコール:10重量部
・テトラエチレングリコール:5重量部
・サーフィノール465(日信化学社製):2.0重量部
・純水:65重量部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、0.45μmフィルターでろ過し、シアンインクを得た。
【0101】
−マゼンタインク−
・C.I.ダイレクトレッド70:3重量部
・ジエチレングリコール:10重量部
・グリセリン:10重量部
・ジプロピレングリコール:4重量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:3.5重量部
・オルフィンE1010(日信化学社製):1.5重量部
・純水:70重量部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、0.45μmフィルターでろ過し、マゼンタインクを得た。
【0102】
−イエローインク−
・C.I.ダイレクトイエロー132:3重量部
・ポリエチレングリコール 400:10重量部
・2−ピロリドン:5重量部
・グリセリン:7重量部
・オキシエチレンステアリルエーテル:1.0重量部
・オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー:1.0重量部
・純水:70重量部
上記組成を混合し、さらにNaOHを加えてpH調整後、0.45μmフィルターでろ過し、イエローインクを得た。
【0103】
<実施例1>
スチレン、メタクリル酸ブチル、フタル酸モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルモノマーを水中で乳化重合により合成して、共重合ポリマーの水性エマルションを調製した。具体的には、以下の組成及び条件により合成を行った。
モル比において、スチレン:メタクリル酸ブチル:フタル酸モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチル=1:3:6、さらに架橋剤としてジビニルベンゼン0.1mol相当、および重合開始剤として過硫酸カリウムを混合した液を準備し、窒素置換したジアルキルスルホコハク酸Na0.25%水溶液中に上記混合液を投入した。窒素雰囲気下で系を60℃に保ち、16時間攪拌を続け、水性ポリマーエマルションを得た。
【0104】
この水性エマルションにNaOHを加えて中和した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA(イソプロピルアルコール)混合溶媒に、さらに下記組成の紫外線硬化性材料に移送して混合した。これにより、紫外線硬化性材料中で吸液性粒子が凝集せずに分散した紫外線硬化性組成物を調製した。
【0105】
得られた紫外線硬化性組成物中に含まれる吸液性粒子の重量比率は20重量%であった。
また、動的光散乱式粒子径・粒度分布測定装置 ナノトラックUPA(日機装(株))を用いて体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)を測定した。さらに、粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影した画像より算出した。測定結果は以下の通りである。
Mv=640nm
Mv/Mn=1.09
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合-=0.5%
【0106】
(紫外線硬化性材料)
・ポリウレタンアクリレート:20質量部
・アクリロイルモルホリン:10質量部
・イソシアヌレート環を有する、ウレタンプレポリマー:25質量部
・トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート:40重量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:5質量部
・イルガキュア819(光重合開始剤):4質量部
【0107】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、UV−LEDランプ(日亜化学工業(株)製 発光ダイオード NCCU033 ピーク波長365nm)にて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、10μmであった。
【0108】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が95、滴下しない部分が96と、特に光沢感の違いもなく、画質劣化は見られなかった。
また画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、乱れのない高精細な画像が得られた。
【0109】
<実施例2>
実施例1と同様にして得た粒子を、水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は30重量%であった。
【0110】
(紫外線硬化性材料)
・ポリウレタンアクリレート:25質量部
・ヒドロキシエチルアクリルアミド:10質量部
・ポリエチレングリコール400ジアクリレート:15重量部
・グリセリンプロポキシアクリレート:35重量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:5質量部
・Solsperse 24000(分散剤):5質量部
・イルガキュア754(光重合開始剤):5質量部
【0111】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、UV−LEDランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、20μmであった。
【0112】
(評価)
−光沢保存性−
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が97、滴下しない部分が98と、特に光沢感の違いもなく、画質劣化は見られなかった。
【0113】
−画質−
画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、乱れのない高精細な画像が得られた。
【0114】
<実施例3>
スチレン、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸モノマーを実施例1のジアルキルスルホコハク酸Naの代わりにラウリルスルホン酸Na0.5%を用いた以外は実施例1と同様に水中で乳化重合により合成した、共重合ポリマーの水性エマルションにNaOHを加え、中和した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は20重量%であった。
また、体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)をナノトラックUPAにて測定した。粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=55nm
Mv/Mn=1.14
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=0.3%
【0115】
(紫外線硬化性材料)
・ポリウレタンアクリレート:30質量部
・ポリエチレングリコール600ジアクリレート:10質量部
・イソシアヌレート環を有する脂肪族ジアクリレート:20質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート:25重量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:5質量部
・イルガキュア184(光重合開始剤):5質量部
【0116】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、紫外線硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、UVメタルハライドランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、8μmであった。
【0117】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が93、滴下しない部分が95であり、特に光沢感の違いもなく、画質劣化は見られなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、乱れのない高精細な画像が得られた。
【0118】
<実施例4>
スチレン、メタクリル酸ブチル、フタル酸モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルモノマーをモル比において、スチレン:メタクリル酸ブチル:フタル酸モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチル=1:1:8、さらに架橋剤としてジビニルベンゼン0.02mol相当とした以外は実施例1と同様に、水中で乳化重合により合成した、共重合ポリマーの水性エマルションにNaOHを加え、中和した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は25重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、ナノトラックUPAにて測定した。粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=1150nm
Mv/Mn=1.11
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=0.8%
【0119】
(紫外線硬化性材料)
・ポリウレタンアクリレート:35質量部
・アクリロイルモルホリン:10質量部
・イソシアヌレート環を有する脂肪族ジアクリレート:15質量部
・トリプロピレングリコールジアクリレート:27重量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:3質量部
・Solsperse 32000(分散剤):5重量部
・イルガキュア127(光重合開始剤):5質量部
【0120】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、高圧水銀ランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、25μmであった。
【0121】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が90、滴下しない部分が97であり、若干光沢感に違いはあったものの、目視での差はあまりなく、画質劣化は見られなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、乱れのない高精細な画像が得られた。
【0122】
<実施例5>
スチレン、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸モノマーをモル比において、スチレン:メタクリル酸ブチル:メタクリル酸=1:4:5とした以外は実施例1と同様に水中で乳化重合により合成した、共重合ポリマーの水性エマルションにNaOHを加え、中和した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は22重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、ナノトラックUPAにて測定した。粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=650nm
Mv/Mn=1.19
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=1.2%
【0123】
(紫外線硬化性材料)
・ポリウレタンアクリレート:20質量部
・アクリロイルモルホリン:10質量部
・イソシアヌレート環を有する、ウレタンプレポリマー:25質量部
・トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート:40重量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:5質量部
・イルガキュア819(光重合開始剤):4質量部
【0124】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、メタルハライドランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、15μmであった。
【0125】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度は、水滴滴下部が95、滴下しない部分が97であり、特に光沢感の違いもなく、画質劣化は見られなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、わずかな乱れは散見されたものの高精細な画像が得られた。
【0126】
<実施例6>
スチレン、メタクリル酸ブチル、アクリル酸モノマーをモル比において、スチレン:メタクリル酸ブチル:アクリル酸=1:5:4、さらに架橋剤としてジビニルベンゼン0.05mol相当とした以外とした以外は実施例1と同様に水中で乳化重合により合成した、共重合ポリマーの水性エマルションにNaOHを加え、中和した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。
紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は25重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、ナノトラックUPAにて測定した。粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=950nm
Mv/Mn=1.12
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=4.8%
【0127】
(紫外線硬化性材料)
・ポリウレタンアクリレート:20質量部
・ポリエチレングリコール600ジアクリレート:14質量部
・イソシアヌレート環を有する、ウレタンプレポリマー:25質量部
・ネオペンチルグリコールジアクリレート:25重量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:4質量部
・Solsperse 36000(分散剤):3重量部
・ルシリンTPO(光重合開始剤):4質量部
【0128】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、メタルハライドランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、18μmであった。
【0129】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が89、滴下しない部分が97であり、若干光沢感に違いはあったものの、目視での差はあまりなく、画質劣化は見られなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、乱れのない高精細な画像が得られた。
【0130】
<比較例1>
実施例1と同様に調製された水性ポリマーエマルションを、スプレードライヤーにて乾燥させ、吸液性粒子が凝集した凝集粒子を得た。この吸液性粒子(凝集粒子)を、実施例1と同様の組成の紫外線硬化性材料に分散させ、紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は25重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、マイクロトラックUPAにて測定した。表面凹凸の最大距離はSEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=5.2μm
Mv/Mn=1.75
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=15%
【0131】
実施例1と同様に前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、UV−LEDランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、10μmであった。
【0132】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が34、滴下しない部分が95と、水滴滴下部の光沢感が低下し、非滴下部分との画質の差が顕著であった。
また画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、わずかではあるが、フェザリングが検出された。
【0133】
<比較例2>
実施例3と同様に調製された水性ポリマーエマルションを、スプレードライヤーにて乾燥させたのち、サイクロン分級機により粒子分級を行った粒子の凝集粒子を得た。該吸液性粒子を、実施例3と同様の組成の紫外線硬化性材料に分散させ、紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は25重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、マイクロトラックUPAにて測定した。表面凹凸の最大距離はSEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=2400nm
Mv/Mn=1.22
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=12%
【0134】
実施例3と同様に前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、UV−LEDランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、25μmであった。
【0135】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が70、滴下しない部分が95と、水滴滴下部の光沢感が低下し、非滴下部分との画質の差が検出された。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、わずかではあるが、フェザリングが検出された。
【0136】
<比較例3>
スチレン、メタクリル酸エチル、アクリル酸モノマーを溶液重合により合成し、得られた共重合ポリマーにNaOHを加え、中和した。中和後のポリマーを実施例5の紫外線硬化性材料中に、マイクロディスパージョンし、紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は25重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、マイクロトラックUPAにて測定した。表面凹凸の最大距離はSEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=1250nm
Mv/Mn=1.35
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=5.8%
【0137】
実施例5と同様に調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、メタルハライドランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、20μmであった。
【0138】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が68、滴下しない部分が95であり、水滴滴下部の光沢感が低下し、非滴下部分との画質の差が検出された。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、わずかではあるが、フェザリングが検出された。
【0139】
実施例、比較例で用いた吸液性粒子、分散剤、硬化性組成物層を記録媒体に転写した後の層厚を下記表1に示し、評価結果を下記表2に示す。
【0140】
<実施例7>
スチレン、メタクリル酸ブチル、フタル酸モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルモノマーをモル比において、スチレン:メタクリル酸ブチル:フタル酸モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチル=1:0.8:8.2、さらに架橋剤としてジビニルベンゼン0.03mol相当とした以外は実施例1と同様に、水中で乳化重合により合成した、共重合ポリマーの水性エマルションにNaOHを加え、中和した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は26重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、ナノトラックUPAにて測定した。粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=1340nm
Mv/Mn=1.20
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=1.1%
【0141】
(紫外線硬化性材料)
・ポリウレタンアクリレート:25質量部
・2−ヒドロキシプロピルアクリレート:10質量部
・グリセリンプロポキシアクリレート:25質量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート:25重量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:5質量部
・イルガキュア754(光重合開始剤):4質量部
【0142】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、メタルハライドランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、19μmであった。
【0143】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が82、滴下しない部分が97であり、若干光沢感に違いはあったものの、目視での差はあまりなく、画質劣化は見られなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、画像品質上問題ないレベルでごくわずかに乱れのある画像が得られた。
【0144】
<実施例8>
スチレン、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸モノマーを実施例1のジアルキルスルホコハク酸Naの代わりにステアリルスルホン酸Na0.1%を用いた以外は実施例1と同様に水中で乳化重合により合成した、共重合ポリマーの水性エマルションにNaOHを加え、中和した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は22重量%であった。
また、体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)をナノトラックUPAにて測定した。粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=115nm
Mv/Mn=1.03
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=0.4%
【0145】
(紫外線硬化性材料)
・脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー:25質量部
・ポリエチレングリコール400ジアクリレート:15質量部
・ヒドロキシエチルアクリルアミド:20質量部
・エトキシ化トリメチロールプロパンアクリレート:25重量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:5質量部
・イルガキュア1870(光重合開始剤):5質量部
【0146】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、紫外線硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、メタルハライドランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、25μmであった。
【0147】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が95、滴下しない部分が96であり、特に光沢感の違いはなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、乱れのない高精細な画像が得られた。
【0148】
<実施例9>
スチレン、メタクリル酸ブチル、フタル酸モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルモノマーをモル比において、スチレン:メタクリル酸ブチル:フタル酸モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチル=1:2:7、さらに架橋剤としてジビニルベンゼン0.15mol相当とした以外は実施例1と同様に、水中で乳化重合により合成した、共重合ポリマーの水性エマルションにNaOHを加え、中和した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は24重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、ナノトラックUPAにて測定した。粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=860nm
Mv/Mn=1.11
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=0.9%
【0149】
(紫外線硬化性材料)
・脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー:25質量部
・2−ヒドロキシプロピルアクリレート:10質量部
・ポリエチレングリコール200ジアクリレート:25質量部
・トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート:30重量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:3質量部
・DISPERBYK(登録商標)− 2008(分散剤):1質量部
・LUCIRIN TPO(光重合開始剤):4質量部
【0150】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、メタルハライドランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、7μmであった。
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が94、滴下しない部分が97であり、特に光沢感の違いはなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、画像品質上問題ないレベルでごくわずかに乱れのある画像が得られた。
【0151】
<実施例10>
実施例9と同様の紫外線硬化性組成物を用い、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。層形成の際、重ね塗りを行うことで実施例9に比べ硬化膜の厚みを厚くした。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、メタルハライドランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、35μmであった。
【0152】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が81、滴下しない部分が95であり、若干光沢感に違いはあったものの、目視での差はあまりなく、画質劣化は見られなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、乱れのない高精細な画像が得られた。
【0153】
<実施例11>
スチレン、メタクリル酸ブチル、フタル酸モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルモノマーをモル比において、スチレン:メタクリル酸ブチル:フタル酸モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチル=1:2.8:6.2、さらに架橋剤としてジビニルベンゼン0.08mol相当とした以外は実施例1と同様に、水中で乳化重合により合成した、共重合ポリマーの水性エマルションにNaOHを加え、中和した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は8重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、ナノトラックUPAにて測定した。粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=630nm
Mv/Mn=1.17
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=2.2%
【0154】
(紫外線硬化性材料)
・ポリウレタンアクリレート:30質量部
・トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート:35質量部
・ポリエチレングリコール400ジアクリレート:15質量部
・ヒドロキシエチルアクリレート:10質量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:5質量部
・SOLSPERSE 39000(分散剤):0.2質量部
・IRGACURE 754(光重合開始剤):4質量部
【0155】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、UV−LEDにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、15μmであった。
【0156】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が96、滴下しない部分が97であり、光沢感の違いはなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、画像品質上問題ないレベルでごくわずかに乱れのある画像が得られた。
【0157】
<実施例12>
実施例11と同様に重合および中和した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記の組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は42重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、ナノトラックUPAにて測定した。粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=630nm
Mv/Mn=1.17
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=2.2%
【0158】
(紫外線硬化性材料)
・ポリウレタンアクリレート:30質量部
・トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート:35質量部
・ポリエチレングリコール400ジアクリレート:15質量部
・ヒドロキシエチルアクリレート:10質量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:5質量部
・SOLSPERSE 39000(分散剤):2質量部
・IRGACURE 754(光重合開始剤):4質量部
【0159】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、UV−LEDにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、15μmであった。
【0160】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が78、滴下しない部分が95であり、光沢感に違いはあったものの、目視での差はあまりなく、画質劣化は見られなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、乱れのない高精細な画像が得られた。
【0161】
<実施例13>
実施例11と同様に調製した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は12重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、ナノトラックUPAにて測定した。粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=630nm
Mv/Mn=1.17
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=2.2%
【0162】
(紫外線硬化性材料)
・脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー:25質量部
・トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート:25質量部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:15質量部
・ヒドロキシエチルアセトアミド:20質量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:5質量部
・DISPERBYK−168(分散剤):0.5質量部
・IRGACURE 127(光重合開始剤):4質量部
【0163】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、UV−LEDにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、15μmであった。
【0164】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が96、滴下しない部分が97であり、光沢感の違いはなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、乱れのない高精細な画像が得られた。
【0165】
<実施例14>
実施例11と同様に重合および中和した水性ポリマーエマルションを用い、粒子を水溶媒中から水/IPA混合溶媒、さらに下記の組成の紫外線硬化性材料に移送し、紫外線硬化性材料中に非凝集状態の吸液性粒子を分散させた紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は38重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、ナノトラックUPAにて測定した。粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合はTEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=630nm
Mv/Mn=1.17
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=2.2%
【0166】
(紫外線硬化性材料)
・脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー:25質量部
・トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート:25質量部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:15質量部
・ヒドロキシエチルアセトアミド:20質量部
・シリコーン変性ポリエーテルアクリレート:5質量部
・DISPERBYK−168(分散剤):1.5質量部
・IRGACURE 127(光重合開始剤):4質量部
【0167】
前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、UV−LEDにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、15μmであった。
【0168】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が85、滴下しない部分が96であり、光沢感にわずかに違いはあったものの、目視での差はあまりなく、画質劣化は見られなかった。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、乱れのない高精細な画像が得られた。
【0169】
<比較例4>
実施例1と同様に調製された水性ポリマーエマルションを、スプレードライヤーにて乾燥させ、その後、気流式分級機および音波ふるいを用いて繰り返し分級を行い、吸液性粒子が凝集した凝集粒子を得た。この吸液性粒子(凝集粒子)を、実施例1と同様の組成の紫外線硬化性材料に分散させ、紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は15重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、マイクロトラックUPAにて測定した。表面凹凸の最大距離はSEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=1.6μm
Mv/Mn=1.19
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=18%
【0170】
実施例1と同様に前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、UV−LEDランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、12μmであった。
【0171】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が45、滴下しない部分が96と、水滴滴下部の光沢感が低下し、非滴下部分との画質の差が顕著であった。
また画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、わずかではあるが、フェザリングが検出された。
【0172】
<比較例5>
実施例1と同様に調製された水性ポリマーエマルションを、スプレードライヤーにて乾燥させ、エルボージェット分級機および振動式ふるいを繰り返し分級を行い、吸液性粒子が凝集した凝集粒子を得た。この吸液性粒子(凝集粒子)を、実施例1と同様の組成の紫外線硬化性材料に分散させ、紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は17重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、マイクロトラックUPAにて測定した。表面凹凸の最大距離はSEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=1.2μm
Mv/Mn=1.20
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=20%
【0173】
実施例1と同様に前記調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、UV−LEDランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、14μmであった。
【0174】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が60、滴下しない部分が95と、水滴滴下部の光沢感が低下し、非滴下部分との画質の差が顕著であった。
また画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、わずかではあるが、フェザリングが検出された。
【0175】
<比較例6>
メタクリル酸Na塩モノマーおよびメタクリル酸モノマーを水中で溶液重合を行い、加熱により水を蒸発させ乾燥し、塊状の共重合ポリマーを得た。得られた共重合ポリマーを気流粉砕/分級を繰り返し行ったのち、実施例1の紫外線硬化性材料中に分散し、非凝集状態の吸液性粒子が分散された紫外線硬化性組成物を調製した。紫外線硬化性組成物中に含まれる粒子の重量比率は22重量%であった。
体積平均粒子径Mvおよび体積平均粒子径と数平均粒子径の比(Mv/Mn)は、マイクロトラックUPAにて測定した。表面凹凸の最大距離はSEMにて撮影された画像より算出した。
Mv=1450nm
Mv/Mn=1.85
粒子径に対する表面凹凸の最大距離の割合=34%
【0176】
実施例3と同様に調製された紫外線硬化性組成物を、硬化性組成物層形成装置により中間転写ベルトに供給して紫外線硬化性組成物層を形成した。次いで、紫外線硬化性組成物層にインクジェットヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ紫外線硬化性組成物層を接触させながら、メタルハライドランプにて照射することにより、紫外線硬化性組成物層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体に転写させた。記録媒体に転写された硬化膜の厚みは、18μmであった。
【0177】
(評価)
得られた記録画像の非印字部に対し、水滴を滴下し拭き取った後の滴下部分を他の非印字部と比較したところ、入射角60°における光沢度が、水滴滴下部が55、滴下しない部分が96であり、水滴滴下部の光沢感が低下し、非滴下部分との画質の差が検出された。
また、画質評価として、1ドットラインのにじみを印字したところ、わずかではあるが、フェザリングが検出された。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

【符号の説明】
【0180】
10 中間転写ベルト
12 硬化性組成物層形成装置
12A 硬化性組成物
13 硬化性組成物層
14 インクジェット記録ヘッド
14A 水性インク
16 転写装置
18 刺激供給装置
101 画像記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの刺激によって硬化する硬化性材料と、
体積平均粒子径が50nm以上1500nm以下の範囲にあり、かつ、体積平均粒子径/数平均粒子径の比が1.0以上1.2以下の範囲にあり、前記硬化性材料中で凝集せずに分散している吸液性粒子と、
を含む画像記録用硬化性組成物。
【請求項2】
前記吸液性粒子の粒子径を該吸液性粒子の輪郭に外接する円の直径Dとし、該外接円の半径をR、該外接円と同心円であって、該吸液性粒子の輪郭に内接する円の半径をrとしたときに、前記吸液性粒子の粒子径Dに対する該吸液性粒子の表面の凹凸の頂部と底部との差の最大距離の割合[(R−r)/D]×100(%)が5%未満である請求項1に記載の画像記録用硬化性組成物。
【請求項3】
前記吸液性粒子を前記硬化性材料中に分散させる分散剤を含む請求項1又は請求項2に記載の画像記録用硬化性組成物。
【請求項4】
前記吸液性粒子の含有比率が10質量%以上40質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の画像記録用硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の画像記録用硬化性組成物を製造する方法であって、
水性溶媒中に分散された吸液性粒子を作製する工程と、
前記水性溶媒中に分散された前記吸液性粒子を乾燥させずに、外部からの刺激によって硬化する硬化性材料と混合する工程と、
を有する画像記録用硬化性組成物の製造方法。
【請求項6】
中間転写体と、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像記録用硬化性組成物を前記中間転写体上に供給して硬化性組成物層を形成する硬化性組成物層形成手段と、
前記硬化性組成物層に水性インクを付与するインク付与手段と、
前記水性インクが付与された前記硬化性組成物層を記録媒体に転写する転写手段と、
前記硬化性組成物層の硬化性材料を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、
を有する画像記録装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像記録用硬化性組成物を中間転写体上に供給して硬化性組成物層を形成する硬化性組成物層形成工程と、
前記硬化性組成物層に水性インクを付与するインク付与工程と、
前記水性インクが付与された前記硬化性組成物層を記録媒体に転写する転写工程と、
前記硬化性組成物層の硬化性材料を硬化させる刺激を供給する刺激供給工程と、
を含む画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−71262(P2013−71262A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209855(P2011−209855)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】