説明

画像記録装置、及び、照射部のメンテナンス方法

【課題】照射部のフィルターに付着した電磁波硬化型インクを除去すること。
【解決手段】電磁波が照射されると硬化する電磁波硬化型インクを被記録媒体に吐出するノズルと、前記電磁波を照射するための照射部であって、前記電磁波を透過するフィルターが照射面に設けられた照射部と、前記フィルターの形状を変形させる前記照射部のメンテナンス部と、を備えたことを特徴とする画像記録装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置、及び、照射部のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置(以下、プリンター)の中には、紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を使用するものがある。このようなプリンターの中には、紫外線照射部の照射口に設けられた紫外線の透過部材から異物を除去するために、ワイパーに対して透過部材を移動させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。紫外線照射部から異物を除去することで、紫外線照射部からの照射量低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−126151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、透過部材にUVインクが付着すると、紫外線照射部から照射される紫外線により、透過部材に付着したUVインクが硬化してしまう。そうすると、ワイパーに対して透過部材を移動させるだけでは、透過部材に付着したUVインクを除去しきれない。
そこで、本発明では、照射部のフィルター(透過部材)に付着した電磁波硬化型インク(UVインク)を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、電磁波が照射されると硬化する電磁波硬化型インクを被記録媒体に吐出するノズルと、前記電磁波を照射するための照射部であって、前記電磁波を透過するフィルターが照射面に設けられた照射部と、前記フィルターの形状を変形させる前記照射部のメンテナンス部と、を備えたことを特徴とする画像記録装置。である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】インクを吐出するヘッドの周辺を説明する図である。
【図3】比較例の本照射部に付着するインクミストを説明する図である。
【図4】図4A及び図4Bはフィルターに付着したUVインクを除去する実施例1の方法を説明する図であり、図4Cはフィルターの新たな部位を照射面に設ける様子を説明する図である。
【図5】図5Aから図5Cはフィルターに付着したUVインクを除去する実施例2の方法を説明する図である。
【図6】図6Aから図6Cは実施例2の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
即ち、電磁波が照射されると硬化する電磁波硬化型インクを被記録媒体に吐出するノズルと、前記電磁波を照射するための照射部であって、前記電磁波を透過するフィルターが照射面に設けられた照射部と、前記フィルターの形状を変形させる前記照射部のメンテナンス部と、を備えたことを特徴とする画像記録装置である。
このような画像記録装置によれば、フィルターから電磁波硬化型インクを剥がし易くすることができ、フィルターに付着した電磁波硬化型インクを除去することができる。
【0009】
かかる画像記録装置であって、前記メンテナンス部は、前記フィルターの形状を変形させた後に、前記フィルターの前記被記録媒体側の面に当接した状態で前記フィルターと相対移動するワイパー部材によって、前記フィルターの前記面に付着した異物を除去すること。
このような画像記録装置によれば、フィルターに付着した電磁波硬化型インクを除去することができる。
【0010】
かかる画像記録装置であって、前記メンテナンス部は、前記フィルターを面方向に伸ばすこと。
このような画像記録装置によれば、フィルターから電磁波硬化型インクを剥がし易くすることができる。
【0011】
かかる画像記録装置であって、前記メンテナンス部は、前記フィルターの前記被記録媒体側とは反対側の面に当接した状態の当接部材を前記フィルターに対して移動させることによって、前記フィルターを屈曲させること。
このような画像記録装置によれば、フィルターから電磁波硬化型インクを剥がし易くすることができる。
【0012】
かかる画像記録装置であって、前記当接部材は、前記フィルターの前記反対側の面に当接した状態で転がるローラーであること。
このような画像記録装置によれば、フィルターに対して当接部材を容易に移動させることができる。
【0013】
かかる画像記録装置であって、前記メンテナンス部は、前記フィルターの前記被記録媒体側の面のうち、前記当接部材が前記フィルターに当接する部位の近傍部位に、別の当接部材を当接させることによって、前記フィルターを屈曲させること。
このような画像記録装置によれば、フィルターが屈曲する角度を急にすることができ、フィルターから電磁波硬化型インクをより剥がし易くすることができる。
【0014】
かかる画像記録装置であって、前記メンテナンス部は、所定方向に連続するフィルターを前記照射部の照射面に対して前記所定方向に移動させることによって、前記フィルターの新たな部位を前記照射面に設けること。
このような画像記録装置によれば、フィルターの形状を変形させることができ、フィルターから電磁波硬化型インクを剥がし易くすることができる。
【0015】
かかるメンテナンス部による照射部のメンテナンス方法。
このような照射部のメンテナンス方法によれば、フィルターから電磁波硬化型インクを剥がし易くすることができ、フィルターに付着した電磁波硬化型インクを除去することができる。
【0016】
===印刷システム===
画像記録装置をインクジェットプリンター(以下、プリンター)とし、プリンターとコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて、実施形態を説明する。
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図2は、インクを吐出するヘッド41の周辺を説明する図である。なお、図2では、ヘッド41の上方から見たノズルの配列を仮想的に示す。
本実施形態のプリンター1は、紫外線(電磁波)の照射によって硬化する紫外線硬化型インク(電磁波硬化型インク)を用いて、被記録媒体S(例えば、用紙、布、フィルムなど)に画像を印刷(記録)する。なお、紫外線硬化型インク(以下、UVインク)は、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、紫外線の照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。
【0017】
コンピューター80は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター80とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群70が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0018】
搬送ユニット20は、被記録媒体S(以下、媒体)を印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向に所定の搬送量で媒体Sを搬送するためのものである。
キャリッジユニット30は、キャリッジ31に搭載されたヘッド41及び仮照射部51a,51bを、搬送方向と交差する移動方向に移動するためのものである。
【0019】
ヘッドユニット40は、媒体SにUVインクを吐出するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41の下面には、図2に示すように、イエローインクを吐出するノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列Mと、シアンインクを吐出するノズル列Cと、ブラックインクを吐出するノズル列Kと、が設けられている。各ノズル列では、インクを吐出する複数のノズル(#1〜#180)が搬送方向に所定の間隔おきに並んでいる。なお、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけてインク室を膨張・収縮させることによりノズルからインクを吐出させるピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってノズルからインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0020】
照射ユニット50は、媒体S上のUVインクに紫外線を照射して、UVインクを硬化するためのものであり、仮照射部51a,51bと本照射部52を有する。各照射部の照射面には紫外線を透過するカバーガラスとフィルターが設けられ、各照射部はカバーガラスとフィルターを介して媒体S上のUVインクに紫外線を照射する。なお、フィルターの方がカバーガラスよりも媒体側(外側)に位置し、カバーガラスにフィルターが密着している。また、紫外線の照射源として、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や、メタルハライドランプ、水銀ランプなどが挙げられるが、本実施形態では発光ダイオード(LED)を用いるとする。
【0021】
仮照射部51a,51bは、ヘッド41を挟んでキャリッジ31の移動方向における両端部に設けられ、キャリッジ31の移動に伴ってヘッド41と共に移動方向に移動する。キャリッジ31が移動方向の左側に移動する時には、ヘッド41よりも右側の仮照射部51aが紫外線を照射し、キャリッジ31が移動方向の右側に移動する時にはヘッド41よりも左側の仮照射部51bが紫外線を照射する。そのため、ヘッド41から吐出されたUVインクは媒体Sに着弾すると直ぐに仮照射部51a,51bにより硬化され、UVインクの流動による滲みや混色を抑えることができる。ただし、仮照射部51a,51bは、本照射部52に比べて、単位面積あたりの紫外線の照射強度(mW/cm)が弱く、UVインクが完全に硬化ない程度にUVインクを仮硬化する。
【0022】
本照射部52は、ヘッド41よりも搬送方向の下流側に固定して配置され、本照射部52の移動方向の長さは、最大サイズの媒体Sの移動方向の長さ以上である。従って、本照射部52は、下を通過する媒体S上のUVインクに向けて、UVインクが完全に硬化する程に強い紫外線を照射する。
【0023】
メンテナンスユニット60(照射部のメンテナンス部に相当)は、仮照射部51a,51b及び本照射部52のフィルターに付着した異物(UVインク,埃,紙粉など)を除去するためのものである(詳細は後述)。
【0024】
このような構成のプリンター1にて、キャリッジ31がヘッド41及び仮照射部51a,51bを移動方向に移動しながらヘッド41がUVインクを吐出する記録動作と、搬送ユニット20がヘッド41に対して媒体Sを搬送方向の下流側に搬送する搬送動作と、が交互に繰り返される。よって、媒体S上に2次元の画像が印刷される。そして、媒体S上のUVインクは、記録動作時に仮照射部51a,51bにより仮硬化され、搬送動作時に本照射部52により完全に硬化される。
【0025】
===インクミストの問題===
図3は、比較例の本照射部52に付着するインクミストを説明する図である。比較例の本照射部52には、フィルターは設けられず、LEDを覆って保護するカバーガラス521だけが設けられている。なお、LEDのカバー部材は、ガラスに限らず、紫外線を透過するものであればよく、例えば、透明な樹脂などでもよい。
【0026】
ノズルからのインク吐出時に発生したインクミスト(微小なインク滴)は、媒体Sに着弾せずに、ヘッド41周辺を浮遊する。そのため、図3に示すように、ヘッド41近傍に位置する本照射部52のカバーガラス521にインクミストが付着してしまう。図示しないが、仮照射部51a,51bのカバーガラスにも同様にインクミストが付着してしまう。カバーガラス521に付着したインクミストを放置すると、インクミストが堆積し、堆積したUVインクがLEDからの紫外線照射を妨げてしまう。そうすると、媒体S上のUVインクに照射される紫外線の照射量(照射強度)が低下し、画像に滲みや混色が生じたり、未硬化のUVインクが残った画像が出力されたりして、印刷物の品質が低下してしまう。
【0027】
また、カバーガラス521に付着したUVインクは、LEDから照射される紫外線により硬化し、カバーガラス521からUVインクを剥がすことが難くなってしまう。そうすると、ワイパー部材でカバーガラス521の面を擦るだけでは、カバーガラス521からUVインクを除去しきれず、カバーガラス521にUVインクが残ってしまう。
【0028】
===実施例1===
図4A及び図4Bは、フィルターFに付着したUVインクを除去する実施例1の方法を説明する図である。前述のように、本実施形態の仮照射部51a,51b及び本照射部52では、カバーガラス521の下面にフィルターFが密着している。そのため、カバーガラス521ではなく、フィルターFの下面(表面・媒体側の面)にインクミストが付着する。そこで、メンテナンスユニット60が、フィルターFに付着したインクミスト等の異物を除去する。なお、フィルターFからの異物除去方法(メンテナンス方法)は、仮照射部51a,51bと本照射部52とで同じであるため、以下では、本照射部52を例に挙げて説明する。
【0029】
実施例1のフィルターFは、紫外線を透過する素材であり、伸縮可能な素材(弾性変形可能な素材)で形成されている。また、フィルターFは、所定方向に長く延び(所定方向に連続し)、ロール状に巻き取られている。ここでは、フィルターFが延びている方向をヘッド41の移動方向とし、フィルターFの幅方向を媒体Sの搬送方向とする。そして、フィルターFの幅方向の長さをカバーガラス521の搬送方向の長さ以上とし、フィルターFがカバーガラス521の下面の全域を覆うことができるようにする。
【0030】
そして、実施例1のメンテナンスユニット60は、送り出しローラー61と、巻取りローラー62と、ワイパー部材63と、移動機構64と、を有する。送り出しローラー61と巻取りローラー62は、フィルターFを移動方向に移動するためのものである。ワイパー部材63は、フィルターFの下面に当接可能であり、ゴムなどの弾性変形可能な素材やフェルトなどで形成された板状の部材である。移動機構64は、ワイパー部材63を移動方向に移動するためのものである。
【0031】
以下、フィルターFからの異物除去方法について説明する。
プリンター1のコントローラー10は、所定のタイミングで(例えば、印刷ジョブの終了時や所定時間の経過毎などに)、本照射部52のフィルターFからUVインク等の異物を除去する指令をメンテナンスユニット60に出力する。
【0032】
そうすると、メンテナンスユニット60は、まず、本照射部52の照射面(カバーガラス521の下面)に位置するフィルターFを面方向に伸ばす。ここでは、図4Aに示すように、送り出しローラー61と巻取りローラー62で、フィルターFを移動方向に伸ばす。具体的には、移動方向左側の送り出しローラー61が時計回りに回転してフィルターFを左側に引っ張り、移動方向右側の巻取りローラー62を反時計回りに回転してフィルターFを右側に引っ張る。即ち、メンテナンスユニット60は、送り出しローラー61と巻取りローラー62をそれぞれ逆方向に回転させて、フィルターFを移動方向に伸ばす。
【0033】
ただし、これに限らず、例えば、送り出しローラー61と巻取りローラー62のうちの一方がフィルターFの位置を固定し、他方がフィルターFを引っ張るようにしてもよい。また、フィルターFを媒体Sの搬送方向に伸ばしてもよいし、フィルターFを複数の方向に伸ばしてもよい。
【0034】
このように、フィルターFを面方向に伸ばすと、フィルターFに付着しているUVインクが剥がれ易くなる現象が得られた。これは、伸縮可能な素材のフィルターFが面方向に伸びるのに対して、フィルターFに付着しているUVインクは伸びないため、フィルターFに対するUVインクの付着力が弱まるからと考えられる。
【0035】
こうして、メンテナンスユニット60は、フィルターFを移動方向に伸ばし、フィルターFからUVインクを剥がし易い状態にした後、図4Bに示すように、ワイパー部材63の上端をフィルターFの下面に当接させた状態で、ワイパー部材63を移動方向に移動させる。ワイパー部材63は、移動機構64により、照射面の移動方向における左端から右端まで移動する。そうすると、フィルターFの下面に付着していたUVインク等の異物は、ワイパー部材63によって取り残しなく除去され、照射面に位置するフィルターFをきれいにすることができる。
【0036】
なお、ワイパー部材63の搬送方向の長さをフィルターFの幅長さ以上とし、ワイパー部材63が移動機構64により移動方向に1回移動することで、ワイパー部材63は、照射面に位置するフィルターFの全域と当接するようにする。また、ワイパー部材63がフィルターFから異物を除去する時に、送り出しローラー61と巻取りローラー62がフィルターFを移動方向に伸ばす状態を維持するようにしてもよいし、フィルターFを元の状態に戻すようにしてもよい。
【0037】
以上のように、実施例1では、メンテナンスユニット60が、本照射部52、及び、仮照射部51a,51bの各照射面に設けられたフィルターFを、面方向に伸ばし(ここでは移動方向に伸ばし)、フィルターFの形状を変形させる。そして、フィルターFを面方向に伸ばした後、メンテナンスユニット60は、フィルターFの下面(媒体側の面)に当接した状態でフィルターFに対して移動方向に移動するワイパー部材63によって、フィルターFの下面に付着したUVインク等の異物を除去する。
【0038】
そうすることで、フィルターFからUVインクが剥がれ易くなった状態で、ワイパー部材63がフィルターFからUVインク等の異物を除去することができ、フィルターFに付着していたUVインクを取り残しなく確実に除去できる。従って、フィルターFに付着したUVインクがLEDからの紫外線照射を妨げることがなくなり、媒体S上のUVインクを確実に硬化することができるため、印刷画像の品質低下を防止できる。
【0039】
なお、ワイパー部材63がフィルターFから異物を除去した後に、フィルターFの下面に洗浄剤や撥液剤を塗布するようにしてもよい。そうすることで、フィルターFからUVインクをより剥がし易くできる。
【0040】
図4Cは、フィルターFの新たな部位を照射面に設ける様子を説明する図である。フィルターFを面方向に伸ばした回数が増えると、フィルターFの伸縮性が劣化し、フィルターFが伸びきってしまう。そうすると、フィルターFを伸ばすことができず、フィルターFからUVインクを剥がし易くすることができなくなってしまう。また、カバーガラス521に対するフィルターFの密着性が悪くなり、フィルターFの下を通過する媒体SとフィルターFが接触してしまう虞がある。
【0041】
そこで、コントローラー10は、所定のタイミングで(例えば、フィルターFからの異物除去回数が所定の回数に達すると)、照射面に位置するフィルターFの部位を変更する指令をメンテナンスユニット60に出力する。そうすると、メンテナンスユニット60は、移動方向(所定方向に相当)に連続するフィルターFを、照射部(本照射部52,仮照射部51a,51b)の照射面に対して移動方向に移動することによって、フィルターFの新たな部位を照射面に設ける。
【0042】
具体的に説明すると、メンテナンスユニット60は、図4Cに示すように、送り出しローラー61を反時計回りに回転させて未使用のフィルターFの部位を照射面(カバーガラス521の下面)に送り出し、巻取りローラー62を反時計回り方向に回転させて照射面に位置するフィルターFをロール状に巻き取る。即ち、メンテナンスユニット60は、送り出しローラー61と巻取りローラー62を同じ方向に回転させて、フィルターFを移動方向の右側に移動させる。
【0043】
そうすることで、照射面に未だ位置していない新しいフィルターFの部位、即ち、未だ面方向に伸ばされていないフィルターFの部位を、照射面に設けることができる。そのため、ワイパー部材63がフィルターFの異物を除去する前に、フィルターFを面方向に伸ばすことができ(フィルターFの形状を変形させることができ)、フィルターFに付着しているUVインクをフィルターFから剥がし易くすることができる。従って、フィルターFからUVインクを確実に除去することができる。また、フィルターFと媒体Sの接触を防止することができる。
【0044】
また、実施例1では、送り出しローラー61と巻取りローラー62が、フィルターFを面方向に伸ばす機能と、フィルターFの新たな部位を照射面に設ける機能の両方を担っている。従って、2つの機能を異なる機構が担う場合に比べて、実施例1では装置構成を簡略化することができる。
【0045】
===実施例2===
図5Aから図5Cは、フィルターFに付着したUVインクを除去する実施例2の方法を説明する図である。実施例2でも、本照射部52のフィルターFから異物を除去する場合を例に挙げて説明する。
【0046】
実施例2のフィルターFは、紫外線を透過する素材であり、可撓性のある素材で形成され、照射面(カバーガラス521の下面)の全域を覆うことができるとする。また、実施例2では、図5に示すように、フィルターFの端部が、本照射部52の移動方向における両側面に固定されている。ただし、これに限らず、実施例1(図4C)のようにロール状のフィルターFを使用し、所定のタイミングで送り出しローラー61と巻取りローラー62によりフィルターFの新たな部位を照射面に設けるようにしてもよい。
【0047】
実施例2のメンテナンスユニット60は、回転ローラー65と、ワイパー部材63と、移動機構64と、を有する。回転ローラー65は、フィルターFの裏面(媒体S側とは反対側のLED側の面)に当接した状態で、移動方向に転がる(回転しながら進む)。回転ローラー65の搬送方向の長さはフィルターFの幅長さ(搬送方向の長さ)以上であり、回転ローラー65が本照射部52の左端から右端まで転がると、回転ローラー65はフィルターFの裏面の全域と当接する。なお、図では、回転ローラー65を移動方向に転がす機構を省略する。
【0048】
以下、フィルターFからの異物除去方法について説明する。
印刷中など、回転ローラー65は、図5Aに示すように、本照射部52の移動方向における側面(図では左側側面)とフィルターFとの間に位置する。そして、メンテナンスユニット60は、コントローラー10からフィルターFの異物を除去する指令を受けると、回転ローラー65を移動方向に転がす。
【0049】
回転ローラー65は、図5Bに示すように、フィルターFの裏面(LED側の面)と当接した状態で、本照射部52の左側側面からカバーガラス521の下面を通過して本照射部52の右側側面まで、移動方向の右側へ転がる。その後、回転ローラー65は、本照射部52の右側側面とフィルターFとの間に位置し、次にフィルターFの異物を除去する時には、逆方向(移動方向の左側)へ転がる。
【0050】
回転ローラー65が、フィルターFの裏面(UVインクが付着していない側の面)に当接した状態で転がると、フィルターFの一部が、下側(UVインクが付着している側)に突出する。即ち、カバーガラス521の下面に沿って平坦であったフィルターFが、回転ローラー65に当接する部位から当接しない部位にかけて、UVインクから離れる方向に屈曲する。つまり、フィルターFに付着しているUVインクを剥がす方向にフィルターFが屈曲するため、フィルターFに対するUVインクの付着力が弱まり、フィルターFからUVインクが剥がれ易い状態となる。
【0051】
こうして、メンテナンスユニット60は、フィルターFの裏面上で回転ローラー65を転がしてフィルターFからUVインクを剥がし易くした後に、ワイパー部材63をフィルターFの下面に当接させた状態で移動方向に移動させる。そうすると、フィルターFの下面に付着していたUVインク等の異物は、ワイパー部材63によって取り残しなく除去され、照射面に位置するフィルターFをきれいにすることができる。
【0052】
以上のように、実施例2では、メンテナンスユニット60が、照射部(本照射部52,仮照射部51a,51b)の照射面に設けられたフィルターFの裏面(媒体側とは反対側の面)に当接した状態の回転ローラー65(当接部材に相当)をフィルターFに対して移動させ、フィルターFを屈曲させる(フィルターFの形状を変形させる)。その後、メンテナンスユニット60は、フィルターFの下面に当接した状態のワイパー部材63を移動方向に移動させることによって、フィルターFの下面に付着したUVインク等の異物を除去する。
【0053】
そうすることで、フィルターFからUVインクが剥がれ易くなった状態で、ワイパー部材63がフィルターFからUVインク等の異物を除去することができ、フィルターFに付着していたUVインクを取り残しなく確実に除去できる。
【0054】
また、図5では、フィルターFを屈曲させる部材(当接部材に相当)を、フィルターFの裏面に当接した状態で転がる回転ローラー65(ローラーに相当)にしている。そのため、フィルターFを屈曲させる部材(回転ローラー65)をフィルターFに対して容易に移動させることができる。
【0055】
また、回転ローラー65がフィルターFの裏面を移動し終わった後に、ワイパー部材63でフィルターFの異物を除去させるに限らず、図5Cに示すように、回転ローラー65とワイパー部材63を同じタイミングで移動方向に移動させてもよい。ただし、ワイパー部材63よりも先に回転ローラー65を移動させる。
【0056】
また、図5Cに示すように、回転ローラー65が当接する部位の近傍のフィルターFの部位(即ち、フィルターFが屈曲している部位)に、ワイパー部材63を当接させてもよい。そうすることで、フィルターFから剥がれたUVインクの端部にワイパー部材63が引っ掛かり易くなり、ワイパー部材63がフィルターFからUVインクをより除去し易くなる。
【0057】
図6Aから図6Cは、実施例2の変形例を説明する図である。図5では、フィルターFの裏面で回転ローラー65を転がしているが、これに限らず、図6Aに示すように、先端が湾曲した板状の部材66(当接部材に相当)を、フィルターFの裏面に当接させた状態で移動方向に移動させてもよい。この場合にも、フィルターFからUVインクを剥がす方向にフィルターFを屈曲させることができ、フィルターFからUVインクを剥がし易い状態にすることができる。また、例えば、移動方向に切った断面が三角形や四角形の部材で、フィルターFを屈曲させてもよい。
【0058】
また、図6Bに示すように、板状部材66がフィルターFの裏面に当接する部位の近傍にて、別の板状部材67をフィルターFの表面から当接させて、フィルターFを屈曲させるようにしてもよい。つまり、フィルターFの表面のうち、裏面側の板状部材66(当接部材に相当)が当接するフィルターFの部位の近傍部位に、別の板状部材67(別の当接部材に相当)も当接させて、フィルターFを屈曲させる。なお、裏面側の板状部材66の先端(下端)と表面側の板状部材67の先端(上端)の上下方向の位置(高さ)を重複させる。また、図6Cに示すように、板状部材66,67を、上下方向(カバーガラス521の面に直行する方向)に対して、傾斜させてもよい。
【0059】
そうすることで、フィルターFが屈曲する角度を小さくできる(角度を急にできる)。詳しく言えば、フィルターFの裏面側において、板状部材66の先端が当接するフィルターFの部位と、板状部材66の側面に沿うフィルターFの部位と、が成す角度を小さくできる。従って、フィルターFからUVインクをより剥がし易い状態にすることができる。
【0060】
なお、図6B及び図6Cでは、表面側の板状部材67の方が裏面側の板状部材66よりも先に移動しているが、これに限らず、裏面側の板状部材66が表面側の板状部材67よりも先に移動するようにしてもよい。
【0061】
===変形例===
前述の実施形態では、照射部(本照射部52,仮照射部51a,51b)に、カバーガラス521を設け、カバーガラス521の外側(媒体S側)にフィルターFを設けているが、これに限らず、例えば、照射部にカバーガラス521は設けずにフィルターFだけを設けるようにしてもよい。
【0062】
前述の実施形態では、フィルターFに対してワイパー部材63を移動させているが、これに限らず、ワイパー部材63に対してフィルターF(照射部)を移動させてもよい。
【0063】
前述の実施形態では、フィルターFの形状を変形させた後に、ワイパー部材63がフィルターFの異物を除去しているが、これに限らず、例えば、ユーザーがフィルターFの異物を布などで拭き取るようにしてもよい。また、フィルターFに対するUVインクの付着力が弱く、フィルターFの形状を変形させるだけでフィルターFからUVインクが剥がれる場合には、ワイパー部材63にフィルターFの異物を除去させなくてもよい。
【0064】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主として画像記録装置について記載されているが、照射部のメンテナンス方法等の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0065】
<インクについて>
前述の実施形態では、紫外線硬化型インク(UVインク)を使用する場合を例に挙げているが、これに限らない。例えば、電子線、X線、可視光線等の電磁波を照射すると硬化するインクを使用する場合にも、本発明を適用することができる。
【0066】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ヘッド41が移動方向に移動しながら画像を記録する動作と媒体を搬送方向に搬送させる動作を繰り返すプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、媒体の幅長さに亘って延びた固定されたヘッドの下を媒体が通過する際に、ヘッドが媒体に向けてインクを吐出することによって、媒体に2次元の画像を印刷するプリンターでもよい。また、例えば、印刷領域に搬送された媒体(ロール紙やカット紙)に対して、ヘッドがX方向に移動しながら画像を記録する動作と、ヘッドがY方向に移動する動作と、を繰り返して、印刷領域の媒体部位に2次元の画像を印刷した後に、媒体をX方向に搬送して新たな媒体部位を印刷領域に搬送するプリンターでもよい。
【0067】
<照射部について>
前述の実施形態では、キャリッジ31と共に移動する仮照射部51a,51bとヘッド41よりも搬送方向下流側に位置する本照射部52の両方をプリンター1が備えているが、これに限らず、例えば、何れか一方の照射部だけでもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 照射ユニット、
51a 仮照射部、51b 仮照射部、52 本照射部、
521 カバーガラス、F フィルター、60 メンテナンスユニット、
61 送り出しローラー、62 巻取りローラー、
63 ワイパー部材、64 移動機構、65 回転ローラー、66 板状部材、
67 板状部材、70 検出器群、80 コンピューター、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波が照射されると硬化する電磁波硬化型インクを被記録媒体に吐出するノズルと、
前記電磁波を照射するための照射部であって、前記電磁波を透過するフィルターが照射面に設けられた照射部と、
前記フィルターの形状を変形させる前記照射部のメンテナンス部と、
を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
前記メンテナンス部は、前記フィルターの形状を変形させた後に、前記フィルターの前記被記録媒体側の面に当接した状態で前記フィルターと相対移動するワイパー部材によって、前記フィルターの前記面に付着した異物を除去する、
画像記録装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像記録装置であって、
前記メンテナンス部は、前記フィルターを面方向に伸ばす、
画像記録装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の画像記録装置であって、
前記メンテナンス部は、前記フィルターの前記被記録媒体側とは反対側の面に当接した状態の当接部材を前記フィルターに対して移動させることによって、前記フィルターを屈曲させる、
画像記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像記録装置であって、
前記当接部材は、前記フィルターの前記反対側の面に当接した状態で転がるローラーである、
画像記録装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の画像記録装置であって、
前記メンテナンス部は、前記フィルターの前記被記録媒体側の面のうち、前記当接部材が前記フィルターに当接する部位の近傍部位に、別の当接部材を当接させることによって、前記フィルターを屈曲させる、
画像記録装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の画像記録装置であって、
前記メンテナンス部は、所定方向に連続するフィルターを前記照射部の照射面に対して前記所定方向に移動させることによって、前記フィルターの新たな部位を前記照射面に設ける、
画像記録装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載のメンテナンス部による照射部のメンテナンス方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate