説明

画像記録装置

【課題】原稿カバー又はスキャナ筐体の開閉時における装置の安全性を向上させ、且つ、原稿カバー及びプリンタ筐体それぞれとスキャナ筐体とのロック機構の小型化を実現すること。
【解決手段】複合機10は、プリンタ筐体14、スキャナ筐体15、原稿カバー17を有する。スキャナ筐体15にロック機構50が設けられている。ロック機構50の回転体52は、プリンタ筐体14側へ延びる第1アーム67と、原稿カバー17側へ延びる第2アーム71とを有している。回転体52は回転モーメントF2を受けることにより第1回転姿勢となっており、スキャナ筐体15とプリンタ筐体14とをロックしているが、原稿カバー17はスキャナ筐体15にロックされていない。操作レバー91が操作されると、回転体52は第2回転姿勢となり、スキャナ筐体15とプリンタ筐体14とのロックが解除され、原稿カバー17はスキャナ筐体15にロックされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿カバー、スキャナ筐体、及びプリンタ筐体を備えた画像記録装置に関し、特に、原稿カバーとスキャナ筐体とをロックするロック機構、及びスキャナ筐体とプリンタ筐体とをロックするロック機構を備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿の画像を読み取る機能(スキャン機能)を有するスキャナ装置と記録用紙に画像を記録する機能(プリント機能)を有するプリンタ装置とを備えた画像記録装置が広く知られている。上記プリント機能を実現するための構成部材はプリンタ筐体(プリンタハウジング)に収容されており、上記スキャン機能を実現するための構成部材はスキャナ筐体(スキャナハウジング)に収容されている。特許文献1には、スキャナ筐体がプリンタ筐体に対して所定の回動軸を中心に回動可能に支持された画像記録装置(画像入出力装置)が開示されている。プリンタ筐体から離れる方向へスキャナ筐体が回動されると、スキャナ筐体によって覆われていたプリンタ筐体の上面が開放される。これにより、ユーザは、プリンタ筐体内に収容された各構成部材に容易にアクセスすることができ、ジャム処理や消耗品交換作業などのメンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【0003】
スキャナ装置には、上面の原稿載置面を開閉するための原稿カバーが設けられている。この原稿カバーが開けられた状態でスキャナ筐体が誤って開方向へ回動されると、原稿カバー及びスキャナ筐体の重みによって画像記録装置の重心が移動して、画像記録装置が転倒する場合がある。また、原稿カバーがスキャナ装置に対してロックされていない状態でスキャナ筐体が開方向へ回動されたときに、勢い余って原稿カバーが開いてしまい、その勢いで画像記録装置が転倒したり、場合によっては、周辺部材と衝突して画像記録装置や周辺部材が破損又は故障する場合がある。また、周囲の人に原稿カバーがぶつかり、人に怪我を負わせるおそれもある。このため、特許文献1に記載の画像記録装置には、上記問題に鑑みて、スキャナ筐体と原稿カバーとが同時に開かないようにするロック手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−42003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のロック手段は、原稿カバーとスキャナ筐体とを第1の回動部材でロック可能とし、スキャナ筐体とプリンタ筐体とを第2の回動部材でロック可能とするものである。このように2つの回動部材からなるため、ロック手段が大型化し、装置の小型化を妨げるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、原稿カバー又はスキャナ筐体の開閉時における装置の安全性を向上させ、且つ、原稿カバー及びプリンタ筐体それぞれとスキャナ筐体とのロック機構の小型化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、プリンタ筐体と、スキャナ筐体と、原稿カバーと、ロック部材と、第1付与手段と、第2付与手段と、規制部材と、を具備する画像記録装置として構成されている。プリンタ筐体に画像記録部が収容されている。スキャナ筐体に画像読取部が収容されている。スキャナ筐体は、上記プリンタ筐体の上部を覆う閉姿勢と上記上部から離間した開姿勢との間で回動可能に支持されている。原稿カバーは、上記スキャナ筐体の上面に設けられた原稿載置面を覆う閉姿勢と上記原稿載置面から離間した開姿勢との間で回動可能に支持されている。ロック部材は、上記スキャナ筐体に設けられており、スキャナ筐体内で回転可能に支持されている。このロック部材は、上記プリンタ筐体に係合可能な第1係合部と、上記原稿カバーに係合可能な第2係合部とを有している。ロック部材は、上記第1係合部が上記プリンタ筐体に係合し且つ上記第2係合部及び上記原稿カバーが非係合状態となる第1回転姿勢と、上記第1係合部及び上記プリンタ筐体が非係合状態となり且つ上記第2係合部が上記原稿カバーに係合する第2回転姿勢との間で姿勢変化可能に構成されている。第1付与手段は、上記スキャナ筐体に設けられている。この第1付与手段は、上記ロック部材を上記第1回転姿勢から上記第2回転姿勢へ向けて回動させる第1力を付与する。第2付与手段は、上記プリンタ筐体に設けられている。この第2付与手段は、上記スキャナ筐体が閉姿勢にあるときに、上記ロック部材を上記第2回転姿勢から上記第1回転姿勢へ向けて回動させる上記第1力よりも大きい第2力を付与する。規制部材は、上記原稿カバーが開姿勢にあるときに、上記第1回転姿勢から上記第2回転姿勢へ上記ロック部材が回転することを規制する。
【0008】
この画像記録装置では、ロック部材が第1回転姿勢にあるときに、第1係合部とプリンタ筐体とが係合してスキャナ筐体とプリンタ筐体とがロックされ、第2係合部及び原稿カバーは係合が解除された非係合状態が維持される。また、ロック部材が第2回転姿勢にあるときに、第2係合部と原稿カバーとが係合してスキャナ筐体と原稿カバーとがロックされ、第1係合部及びプリンタ筐体は係合が解除された非係合状態となっている。
【0009】
スキャナ筐体には第1付与手段が設けられている。この第1付与手段は、第1回転姿勢から第2回転姿勢へ向けて第1力をロック部材に付与している。一方、プリンタ筐体には第2付与手段が設けられている。この第2付与手段は、上記スキャナ筐体が閉姿勢にあるときに、上記第2回転姿勢から上記第1回転姿勢へ向けて上記第1付与手段による第1力よりも大きい第2力を上記ロック部材に付与している。したがって、上記スキャナ筐体が閉姿勢であるときは、ロック部材は第2付与手段による第2力を受けることによって、第1回転姿勢を維持している。これにより、上記スキャナ筐体が閉姿勢であるときは、スキャナ筐体とプリンタ筐体とがロックされる。また、原稿カバーとスキャナ筐体とはロックされていないので、原稿カバーはスキャナ筐体に対して開閉可能状態を維持する。この場合、原稿カバーが開けられても、スキャナ筐体とプリンタ筐体とがロックされているので、原稿カバーの開動作による重心移動によってスキャナ筐体が開姿勢となることはない。
【0010】
なお、原稿カバーが開姿勢となってスキャナ筐体から離れると、ロック部材は規制部材によって、上記第1回転姿勢から上記第2回転姿勢へ回転することが規制される。したがって、原稿カバーが開姿勢のときに、第1付与手段による第1力との合力が第2付与手段による第2力に勝る程度の外力が第1付与手段により力が付与される方向と同方向に入力されても、規制部材による規制によって、ロック部材は第1回転姿勢を維持する。つまり、スキャナ筐体とプリンタ筐体とのロック状態が維持される。
【0011】
スキャナ筐体及び原稿カバーの両方が閉姿勢にある状態で、ロック部材に上記外力が入力されると、ロック部材が第1回転姿勢から第2回転姿勢へ姿勢変化する。そして、ロック部材が第2回転姿勢になると、スキャナ筐体とプリンタ筐体とのロックが解除される。また、原稿カバーとスキャナ筐体とがロックされる。これにより、スキャナ筐体はプリンタ筐体に対して開閉可能な状態となる。この場合、スキャナ筐体がプリンタ筐体に対して開けられても、原稿カバーとスキャナ筐体とがロックされているので、スキャナ筐体が開けられても原稿カバーが開姿勢となることはない。
【0012】
なお、スキャナ筐体が開姿勢となってプリンタ筐体から離れると、ロック部材も第2付与手段から離れる。これにより、ロック部材は第2付与手段による第2力を受けなくなる。したがって、この状態で上記外力の入力がなくなっても、ロック部材は第1付与手段による第1力によって、第2回転姿勢に維持される。つまり、原稿カバーとスキャナ筐体とのロック状態が維持される。
【0013】
(2) また、本発明の画像記録装置は、上記スキャナ筐体に設けられたレバー部材を備えることが好ましい。このレバー部材は、上記ロック部材を回転させる外力を入力するためのものである。
【0014】
これにより、ユーザは、レバー部材を操作することによって、ロック部材の回転方向へ所定の外力を入力することができる。これにより、ユーザは、ロック部材を第1回転姿勢から第2回転姿勢へ姿勢変化させることができる。その結果、ユーザは、スキャナ筐体とプリンタ筐体とのロックを任意に解除することができる。
【0015】
(3) 上記第1係合部の具体例としては、上記ロック部材の支軸から延出された第1アーム部材と、該第1アーム部材の先端に設けられ上記プリンタ筐体に係合可能な第1フックとを有するものが考えられる。また、上記第2係合部の具体例としては、上記支軸から延出された第2アーム部材と、該第2アーム部材の先端に設けられ上記原稿カバーに係合可能な第2フックとを有するものが考えられる。
【0016】
(4) 上記第2付与手段は、上記スキャナ筐体が開姿勢から閉姿勢となる過程で上記第1係合部を上記プリンタ筐体に設けられた被係合部に案内するとともに、上記第2回転姿勢から上記第1回転姿勢へ向かう上記第2力を上記ロック部材に付与するものである。
【0017】
これにより、スキャナ筐体が開姿勢から閉姿勢へ円滑に移行し、また、スキャナ筐体とプリンタ筐体とが確実に係合される。
【0018】
(5) 上記スキャナ筐体は、装置背面側を回転軸として上記プリンタ筐体に回動可能に支持されている。また、上記原稿カバーは、装置背面側を回動軸として上記スキャナ筐体に回動可能に支持されている。
【0019】
この構成では、スキャナ筐体及び原稿カバーは共に装置背面側を回動軸として回動するため、スキャナ筐体が開姿勢となったときに原稿カバーが開きやすい。本発明がこのような構成に適用されることにより、スキャナ筐体及び原稿カバーの両方が開くことを防止する効果の実効姓が高くなる。
【0020】
(6) 上記原稿カバーは、自動原稿送り装置を備えている。
【0021】
この構成では、原稿カバーの自重と自動原稿送り装置の自重とによって原稿カバーを開姿勢へ変化させようとする作用が強く働く。本発明がこのような構成に適用されることにより、スキャナ筐体及び原稿カバーの両方が開くことを防止する効果の実効姓が高くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の画像記録装置によれば、原稿カバー又はスキャナ筐体の開閉時における装置の安全性を向上させることが可能となり、且つ、原稿カバー及びプリンタ筐体それぞれとスキャナ筐体とのロック機構の小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の画像記録装置の一実施形態である複合機10の外観斜視図である。
【図2】図2は、複合機10の部分拡大図であり、(A)には図1において左側から見た複合機10の側面図が示されており、(B)には複合機10が左端部の平面図が示されている。
【図3】図3は、図1において左側から見た複合機10の側面図が示されており、(A)には左側壁の一部が取り除かれた状態が示されており、(B)にロック機構50の部分拡大図が示されている。
【図4】図4は、原稿カバー17及びスキャナ筐体15が閉姿勢にあるときの図2(B)における切断線II−IIの断面構造を示す模式図であり、(A)には複合機10の上部断面を示す部分断面図が示されており、(B)にはロック機構50の部分拡大断面図が示されている。
【図5】図5は、原稿カバー17が開姿勢にあるときの図2(B)における切断線II−IIの断面構造を示す模式図であり、(A)には複合機10の上部断面を示す部分断面図が示されており、(B)にはロック機構50の部分拡大断面図が示されている。
【図6】図6は、操作レバー92が操作されたときの図2(B)における切断線II−IIの断面構造を示す模式図であり、(A)には複合機10の上部断面を示す部分断面図が示されており、(B)にはロック機構50の部分拡大断面図が示されている。
【図7】図7は、スキャナ筐体15が開姿勢にあるときの図2(B)における切断線II−IIの断面構造を示す模式図であり、(A)には複合機10の上部断面を示す部分断面図が示されており、(B)にはロック機構50の部分拡大断面図が示されている。
【図8】図8は、スキャナ筐体15が閉じられる直前の図2(B)における切断線II−IIの断面構造を示す模式図であり、(A)には複合機10の上部断面を示す部分断面図が示されており、(B)にはロック機構50の部分拡大断面図が示されている。
【図9】図9は、本発明のレバー部材の変形例である操作レバー92を備えた複合機10を示す斜視図であり、(A)には複合機10の外観斜視図が示されており、(B)には操作レバー92の拡大図が示されている。
【図10】図10は、複合機10における操作レバー92及びロック機構50の位置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る複合機10の外観を示す斜視図である。以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0026】
複合機10は本発明の画像記録装置の一例である。この複合機10は、図1及び図2に示されるように、高さ(上下方向7の長さ)に対して横幅(左右方向9の長さ)及び奥行き(前後方向8の長さ)が大きい薄型の直方体に概ね形成されている。複合機10は、ファクシミリ機能、プリント機能、スキャン機能、及び、コピー機能などの各種の機能を有している。なお、本発明の画像記録装置は、上記した全ての機能を有するものに限られず、例えば、プリント機能及びスキャン機能のみを有する複合機、或いはコピー機能のみを有する複写機として本発明の画像記録装置が実施されてもよい。
【0027】
複合機10の下部にインクジェット記録方式のプリンタ装置11が設けられている。プリンタ装置11は、正面に開口13が形成されたプリンタ筐体14(本発明のプリンタ筐体の一例)を有する。開口13に記録用紙を収容するためのトレイ24が装着されている。なお、プリンタ装置11は、インクジェット記録方式のものに限られず、電子写真方式或いは熱転写方式のものであってもよい。
【0028】
プリンタ装置11の上部にスキャナ装置12が設けられている。スキャナ装置12は、上面にコンタクトガラス(不図示)が設けられたスキャナ筐体15(本発明のスキャナ筐体の一例)を有する。画像が読み取られる原稿は、コンタクトガラスの上面(本発明の原稿載置面に相当)に載置される。
【0029】
スキャナ筐体15は、プリンタ筐体14の上面に対して開閉可能なように複合機10の後背部で蝶番などの支持機構によって支持されている。これにより、スキャナ筐体15は、プリンタ筐体14の上面を覆う閉姿勢(図1及び図6に示される姿勢)とプリンタ筐体14の上面から上方へ離間した開姿勢(図7に示される姿勢)との間で回動可能となる。本実施形態では、プリンタ筐体14の上面は開放されている。そのため、スキャナ筐体15が図7に示されるように上方へ開けられてプリンタ筐体14の上面が露出されると、ユーザは、プリンタ筐体14の上面から内部にアクセスすることが可能となる。そして、ユーザは、プリンタ装置11内の構成要素のメンテナンスやジャム処理などを行うことが可能となる。このように、スキャナ筐体15は、プリンタ筐体14の上面を覆うカバーの役割を担っている。
【0030】
スキャナ装置12の前方側に操作パネル20が設けられている。操作パネル20を介して、プリンタ装置11及びスキャナ装置12に所望の動作をさせるための所定の指示が入力される。
【0031】
スキャナ装置12の上部には、上記コンタクトガラスに載置された原稿を覆うための原稿カバー17(本発明の原稿カバーの一例)が設けられている。原稿カバー17は、スキャナ筐体15の上面にあるコンタクトガラスに対して開閉可能なように複合機10の後背部で蝶番などの支持機構によって支持されている。これにより、原稿カバー17は、コンタクトガラスの上面を覆う閉姿勢(図1及び図4に示される姿勢)と上記コンタクトガラスの上面から上方へ離間した開姿勢(図5に示される姿勢)との間で回動可能となる。
【0032】
また、原稿カバー17には、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿送り装置)19が設けられている。ADF19は、原稿カバー17の左端部に設けられている。ADF19は、予め定められた位置にセットされた複数の原稿を一枚ずつピックアップして上記コンタクトガラス上の読取位置を通過するように原稿を搬送し、そして、原稿を原稿排紙部22に排出するものである。
【0033】
[ロック機構50]
以下、図3乃至図8を参照しながら、ロック機構50について説明する。図3に示されるように、複合機10にはロック機構50が設けられている。なお、図3では、ロック機構50の各構成要素の説明の便宜を図るため、鉛直軸を中心に右方向へ少し回転された状態が示されている。図3には、スキャナ筐体15と操作パネル20の左側壁とが取り外された状態が示されており、スキャナ筐体15内に設けられたロック機構50が詳細に示されている。図示されるように、ロック機構50は、複合機10の前方側の左端部に設けられている。このロック機構50は、スキャナ筐体15とプリンタ筐体14とを係合してこれらをロックする役割と、スキャナ筐体15と原稿カバー17とを係合してこれらをロックする役割とを有する。
【0034】
図3(B)に示されるように、ロック機構50は、回転体52(本発明のロック部材の一例)を備えている。回転体52は、支軸65と、支軸65の中央部から支軸65に垂直な方向へ延びる第1アーム67(本発明の第1アーム部材の一例)と、第1アーム67とは反対の方向へ延びる第2アーム71(本発明の第2アーム部材の一例)とを有する。上支軸65は、スキャナ筐体15内において左右方向9へ延びており、その両端部がスキャナ筐体15に設けられた図示しない軸受け部によって軸支されている。これにより、回転体52は、支軸65を中心に回転可能となる。なお、本実施形態では、回転体52は、後述する第1回転姿勢と第2回転姿勢との間で回転可能に構成されている。
【0035】
第1アーム67の先端には、第1フック68(本発明の第1フックの一例)が設けられている。第1アーム67と第1フック68とによって、本発明の第1係合部が実現されている。第1フック68は、プリンタ筐体14に係合されるものである。具体的には、第1フック68は、プリンタ筐体14に設けられた第1係合片34(本発明の被係合部の一例)と係合可能なように、第1アーム67の先端から後方へ突出した鉤状に形成されている。
【0036】
第1係合片34は、プリンタ筐体14と一体に形成されており、当該プリンタ筐体14から上方へ突出した逆U字状の部材である。スキャナ筐体15の下壁15Aには、第1係合片34に対応する位置に開口80(図4(B)参照)が形成されている。スキャナ筐体15がプリンタ筐体14の上面を閉塞した閉姿勢にあるときに、第1係合片34が開口80を通じてスキャナ筐体15内に入り込む。本実施形態では、第1フック68は、スキャナ筐体15内に入り込んだ第1係合片34に係合可能となっている。詳細には、回転体52が時計回転方向へ回転する過程で第1フック68が後方へ移動し、そして、回転体52が図4に示される第1回転姿勢となったときに、第1フック68が第1係合片34の前方側から係合する。これにより、スキャナ筐体15とプリンタ筐体14とが上下方向7へ離れないようにロックされる。なお、このように互いに係合可能なものであれば、第1フック68及び第1係合片34はいかなる構成であってもかまわない。
【0037】
ここで、第1回転姿勢とは、図4に示されるように第1フック67が第1係合片34に係合する姿勢である。回転体52が第1回転姿勢にあるときは、図4に示されるように、第2フック72は第2係合片41から前方へ離間した位置に配置されており、第2フック72と第2係合片41とが係合できない状態(非係合状態)となっている。
【0038】
第2アーム71の先端には、第2フック72(本発明の第2フックの一例)が設けられている。第2アーム71と第2フック72とによって、本発明の第2係合部が実現されている。第2フック72は、原稿カバー17に係合されるものである。具体的には、第2フック72は、原稿カバー17に設けられた第2係合片41と係合可能なように、第2アーム71の先端から後方へ突出した鉤状に形成されている。
【0039】
第2係合片41は、原稿カバー17の下壁17Aから下方へ突出したU字状の部材である。スキャナ筐体15の上壁15Bには、第2係合片41に対応する位置に開口81(図4(B)参照)が形成されている。原稿カバー17がスキャナ筐体15の上面を閉塞した閉姿勢にあるときに、第2係合片41が開口81を通じてスキャナ筐体15内に入り込む。本実施形態では、第2フック72は、スキャナ筐体15内に入り込んだ第2係合片41に係合可能となっている。詳細には、回転体52が反時計回転方向へ回転する過程で第2フック72が後方へ移動し、そして、回転体52が図6に示される第2回転姿勢となったときに、第2フック72が第2係合片41の前方側から係合する。これにより、スキャナ筐体15と原稿カバー17とが上下方向7へ離れないようにロックされる。なお、このように互いに係合可能なものであれば、第2フック72及び第2係合片41はいかなる構成であってもかまわない。
【0040】
ここで、第2回転姿勢とは、図6に示されるように第2フック72が第2係合片41に係合する姿勢である。回転体52が第2回転姿勢にあるときは、図6に示されるように、第1フック68は第1係合片34から前方へ離間した位置に配置されており、第1フック68と第1係合片34とが係合できない状態(非係合状態)となっている。
【0041】
図3(B)に示されるように、支軸65にねじりコイルバネ66(本発明の第1付与手段の一例)が設けられている。ねじりコイルバネ66は、その内孔に支軸65が挿通された状態でスキャナ筐体14内で支持されている。本実施形態では、ねじりコイルバネ66によって、回転体52が図3における反時計回転方向へ付勢されている。これにより、回転体52は、反時計回転方向の回転モーメントF1を受ける。したがって、回転体52にねじりコイルバネ66の付勢による回転モーメントF1以外の外力が加えられていないときは、回転体52は、上記回転モーメントF1を受けることにより、反時計回転方向へ回転する。そして、第2フック72が第2係合片41に係合することにより回転体52の回転が停止して、回転体52は、第1回転姿勢を維持する。
【0042】
また、プリンタ筐体14には、前後方向8へ移動可能に支持されたガイド部材57と、このガイド部材57を後方へ弾性付勢するコイルバネ58とが設けられている。ガイド部材57とコイルバネ58とによって、本発明の第2付与手段が実現されている。ガイド部材57は、第1係合片34よりも前方側において前後方向8へ移動可能に支持されている。ガイド部材57よりも更に前方側にはバネ受け用の内壁59が設けられており、この内壁59とガイド部材57との間に圧縮状態のコイルバネ58が設けられている。これにより、ガイド部材57がコイルバネ58によって後方へ付勢される。
【0043】
ガイド部材57の後方側には上端から後方斜め下方へ傾斜するガイド面60が形成されている。このガイド面60は、スキャナ筐体15が開姿勢から閉姿勢となる過程で、第1フック68をガイド面60に沿って後方斜め下方へ案内する。そして、スキャナ筐体15が閉姿勢となると、第1フック68が第1係合片34と係合可能な位置に案内される。そして、コイルバネ58の後方への付勢力がガイド部材57を介して第1フック68に伝達されて、第1フック68が第1係合片34に係合する。
【0044】
本実施形態では、スキャナ筐体15が閉姿勢にあるときに、第1フック68は、コイルバネ58によって、図3における時計回転方向へ付勢されている。これにより、回転体52は、時計回転方向の回転モーメントF2を受ける。この回転モーメントF2は、上述した反時計回転方向の回転モーメントF1よりも大きい。したがって、スキャナ筐体15が閉姿勢にあり、しかもねじりコイルバネ66の付勢による回転モーメントF1及びコイルバネ58の付勢による回転モーメントF2以外の外力が回転体52に加えられていないときは、回転体52は、ガイド部材57によって後方へ押されて、第1フック68と第1係合片34とが係合した第1回転姿勢を維持する。
【0045】
図3に示されるように、第2アーム71には、前方へ延びる操作レバー91が設けられている。操作レバー91は、第2アーム71に一体に形成されている。この操作レバー91は、操作パネル20の左端部に形成された切欠溝77に挿通されている。これにより、操作レバー91は切欠溝77を通じて操作パネル20の上面に露出されている。ユーザは、この操作レバー91を外部から操作することによって、回転体52に所望の回転方向の外力を入力することができる。なお、本実施形態では、操作レバー91は、第2アーム71に一体に形成されたものとしたが、例えば、回転体52と操作レバー91とを別々の部材で構成し、これらの間に設けられたリンク部材などを介して操作レバー91に入力された力を回転体52に伝達させる構成を採用してもよい。
【0046】
図3に示されるように、支軸66よりも後方斜め上方に規制部材83(本発明の規制部材の一例)が設けられている。規制部材83は、支軸84と、ねじりコイルバネ85と、規制アーム86とを備えている。支軸84は、スキャナ筐体15に設けられた図示しない支持部に軸支されている。規制アーム86は、支軸84から垂直な方向へ延びるアーム状の部材である。ねじりコイルバネ85は、支軸84に設けられている。ねじりコイルバネ85は、その内孔に支軸84が挿通された状態でスキャナ筐体14内で支持されている。本実施形態では、ねじりコイルバネ85によって、規制部材83が図3における反時計回転方向へ付勢されている。
【0047】
規制部材83は、開口81の下方に配置されている。具体的には、規制アーム86の可動範囲と第2係合片41の挿入範囲とが重なるような位置に規制部材83が配置されている。これにより、原稿カバー17が閉姿勢となって開口81から第2係合片41がスキャナ筐体15に入り込むと、第2係合片41が規制アーム86を下方へ押し込む。また、規制アーム86の長さは、回転体52が第1回転姿勢にあるときに、規制アーム86の先端が第2アーム71に当接可能な程度に設定されている。そのため、原稿カバー17が開姿勢にされると、第2係合片41による下方への押しつけが解除されるため、規制アーム86が反時計回転方向に回転するとともに、規制アーム86の先端が第2アーム71に当接する。このとき、規制アーム86がつっかえ棒の如く作用するため、回転体52は、規制アーム86によって反時計回転方向への回転が規制される。
【0048】
[原稿カバー17の開閉動作及びロック機構50の動作]
以下、図4及び5を参照して、原稿カバー17の開閉動作と、原稿カバー17の開閉動作に伴うロック機構50の動作について説明する。
【0049】
図4には、スキャナ筐体15及び原稿カバー17が共に閉姿勢である状態が示されている。このとき、回転体52は、第1フック68と第1係合片34とが係合し、第2フック72と第2係合片41とが非係合状態となる第1回転姿勢を維持している。
【0050】
図5に示されるように、原稿カバー17が持ち上げられて閉姿勢から開姿勢へ回動されると、第2係合片41も上方へ移動する。このとき、規制アーム86に対する第2係合片41による下方への押しつけが解除されるため、規制アーム86は支軸84を中心に反時計回転方向へ回転する。そして、規制アーム86は第2アーム71に当接した状態で停止する。このとき、誤って操作レバー91が操作されることによって、回転体52に反時計回転方向の外力が加えられたとしても、規制アーム86によって回転体52の反時計回転方向への回転が規制されているため、回転体52は、ガイド部材57による付勢によって回転モーメント力F2を受けた状態で、第1回転姿勢を維持する。
【0051】
なお、原稿カバー17が閉姿勢に戻されると、開口81に入り込んだ第2係合片41によって規制アーム86が下方へ押し下げられて、規制アーム86による回転体52の規制は解除される。
【0052】
このようにロック機構50が動作するため、原稿カバー17が全開にされたとしても、スキャナ筐体15はプリンタ筐体14にロックされている。そのため、原稿カバー17が開けられた状態でスキャナ筐体15が開くことはない。また、規制アーム86によって第2アーム72が前方へ押しつけられているため、操作レバー91が操作できない状態になっている。そのため、誤操作によってスキャナ筐体15とプリンタ筐体14とのロックが解除されることはない。つまり、原稿カバー17とスキャナ筐体15とが同時に開くことはない。
【0053】
[スキャナ筐体15の開閉動作及びロック機構50の動作]
以下、図6乃至図8を参照して、スキャナ筐体15の開閉動作と、スキャナ筐体15の開閉動作に伴うロック機構50の動作について説明する。
【0054】
図6に示されるように、スキャナ筐体15及び原稿カバー17が共に閉姿勢である状態で、操作レバー91が上方へ押し上げられると、回転体52は回転モーメントF2に抗して反時計回転方向へ回転する。これにより、回転体52は、第1回転姿勢から第2回転姿勢に変化される。つまり、回転体52は、第2フック72と第2係合片41とが係合した状態となり、第1フック68と第1係合片34との係合が解除された非係合状態となる。
【0055】
回転体52が第2回転姿勢にあるときに、スキャナ筐体15が持ち上げられて閉姿勢から開姿勢へ回動されると、図7に示されるように、スキャナ筐体15がプリンタ筐体14から離間する。スキャナ筐体15がプリンタ筐体14から離間すると、回転体52は第1係合片34及びガイド部材57から離間する。このため、回転体52は、ガイド部材57の付勢による回転モーメントF2を受けなくなる。したがって、回転体52は、ねじりコイルバネ66の付勢による回転モーメントF1だけを受けることになる。そのため、ユーザが操作レバー91の操作を止めた場合でも、回転体52は、反時計回転方向の回転モーメントF1を受けているので、第2回転姿勢を維持する。
【0056】
このようにロック機構50が動作するため、スキャナ筐体15が後方へ全開にされたとしても、原稿カバー17はスキャナ筐体15にロックされているため、スキャナ筐体15が開けられた状態で原稿カバー17が開くことはない。また、スキャナ筐体15が開姿勢のときにユーザが操作レバー91の操作を止めた場合でも、回転体52は、反時計回転方向の回転モーメントF1を受けているので、第2回転姿勢を維持する。つまり、原稿カバー17とスキャナ筐体15とが同時に開くことはない。
【0057】
なお、スキャナ筐体15が閉姿勢に戻されると、図8に示されるように、その戻し動作の過程において、開口80に入り込んだガイド部材57のガイド面60によって、第1フック68がガイド面60に沿って後方斜め下方へ案内される。そして、スキャナ筐体15が閉姿勢になる直前に下方へ押し込まれることにより、第1フック68が第1係合片34と係合可能な位置に配置されると同時に、コイルバネ58による後方への付勢力がガイド部材57を介して第1フック68に伝達されて、第1フック68が第1係合片34に係合する。これにより、回転体52が第1回転姿勢となる。
【0058】
[本実施形態の作用・効果]
上述したように、本実施形態では、ロック機構50によって、原稿カバー17及びスキャナ筐体15それぞれを共に開姿勢とすることができないように構成されている。つまり、原稿カバー17及びスキャナ筐体15の一方が開姿勢の場合は他方が閉姿勢状態でロックされる。そのため、原稿カバー17及びスキャナ筐体15が同時に開くことにより生じていた複合機10の転倒や、転倒による破損、故障等の問題が解消され、複合機10の安全性を高めることができる。また、本実施形態のロック機構50は、一つの回転体52によって具現化されているため、部品点数が少なくて済む。このため、ロック機構50をコンパクトにすることができ、複合機10の小型化に寄与している。
【0059】
[本実施形態の変形例]
なお、上述の実施形態では、操作パネル20の左端部に形成された切欠溝77に操作レバー91を配置することとしたが、図9に示されるように、操作パネル20の中央部に形成された切欠溝78に操作レバー92が配置された構成を採用してもよい。この操作レバー92は、図10に示されるように、左右方向9に延出されて支軸65に直接或いはリンク部材などを介して間接的に連結されている。このような操作レバー92であっても、ユーザの操作によって回転体52に所望の外力を加えることができる。なお、この場合、図示されるように、支軸65の両端にロック機構50が設けられていてもよい。このように左右にロック機構50が配置されることによって、スキャナ筐体15及び原稿カバー17のロックが確実となる。
【0060】
また、本実施形態では、原稿カバー17及びスキャナ筐体15それぞれが装置の後背部で回動可能に支持される構成としたが、例えば、スキャナ筐体15が装置の左端部で回動可能に支持され、原稿カバー17が装置の後背部で回動可能に支持された構成にも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
10・・・複合機
14・・・プリンタ筐体
15・・・スキャナ筐体
17・・・原稿カバー
34・・・第1係合片
41・・・第2係合片
50・・・ロック機構
52・・・回転体
57・・・ガイド部材
58・・・コイルバネ
65・・・支軸
66・・・ねじりコイルバネ
67・・・第1アーム
68・・・第1フック
71・・・第2アーム
72・・・第2フック
83・・・規制部材
91・・・操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像記録部が収容されたプリンタ筐体と、
画像読取部が収容され、上記プリンタ筐体の上部を覆う閉姿勢と上記上部から離間した開姿勢との間で回転可能に支持されたスキャナ筐体と、
上記スキャナ筐体の上面に設けられた原稿載置面を覆う閉姿勢と上記原稿載置面から離間した開姿勢との間で回動可能に支持された原稿カバーと、
上記スキャナ筐体内に回動可能に支持され、上記プリンタ筐体に係合可能な第1係合部と、上記原稿カバーに係合可能な第2係合部とを有し、上記第1係合部が上記プリンタ筐体に係合し且つ上記第2係合部及び上記原稿カバーが非係合状態となる第1回転姿勢と、上記第1係合部及び上記プリンタ筐体が非係合状態となり且つ上記第2係合部が上記原稿カバーに係合する第2回転姿勢との間で姿勢変化するロック部材と、
上記スキャナ筐体に設けられ、上記ロック部材を上記第1回転姿勢から上記第2回転姿勢へ向けて回動させる第1力を付与する第1付与手段と、
上記プリンタ筐体に設けられ、上記スキャナ筐体が閉姿勢にあるときに、上記ロック部材を上記第2回転姿勢から上記第1回転姿勢へ向けて回動させる上記第1力よりも大きい第2力を付与する第2付与手段と、
上記原稿カバーが開姿勢にあるときに、上記第1回転姿勢から上記第2回転姿勢へ上記ロック部材が回転することを規制する規制部材と、を具備する画像記録装置。
【請求項2】
上記スキャナ筐体に設けられ、上記ロック部材を回転させる外力を入力するためのレバー部材を更に具備する請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記第1係合部は、上記ロック部材の支軸から延出された第1アーム部材と、該第1アーム部材の先端に設けられ上記プリンタ筐体に係合可能な第1フックとを有し、
上記第2係合部は、上記支軸から延出された第2アーム部材と、該第2アーム部材の先端に設けられ上記原稿カバーに係合可能な第2フックとを有する請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記第2付与手段は、上記スキャナ筐体が開姿勢から閉姿勢となる過程で上記第1係合部を上記プリンタ筐体に設けられた被係合部に案内するとともに、上記第2回転姿勢から上記第1回転姿勢へ向かう上記第2力を上記ロック部材に付与する請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記スキャナ筐体は、装置背面側を回転軸として上記プリンタ筐体に回動可能に支持されており、
上記原稿カバーは、装置背面側を回動軸として上記スキャナ筐体に回動可能に支持されている請求項1から4のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記原稿カバーは、自動原稿送り装置を備えている請求項1から5のいずれかに記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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