説明

画像記録装置

【課題】フラップやその支持機構の故障を防止することが可能な画像記録装置を提供する。
【解決手段】
複合機10は、トレイ20から給送された記録用紙の両面に画像を記録する機能、及び開口13から直線路65Bに挿入されたディスクトレイ53のディスクメディアにも画像を記録するレーベル記録機能を備える。プリンタ部11にカム駆動機構134が設けられており、これが動作されると直線路65Bが拡張されて、ディスクトレイ53が挿入可能となる。直線路65Bには、両面記録時に記録用紙を反転搬送路67へ向けさせるフラップ49が設けられている。フラップ49の先端部には、傾斜状のガイド面128が形成されており、このガイド面128は、ディスクトレイ53の挿入経路98に対して斜め上方に傾斜している。直線路65にディスクトレイ53が挿入されると、その先端がガイド面128に当たってフラップ49を押し上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を記録する画像記録装置に関し、特に、シートの両面に画像を記録可能な画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録用紙などのシートの両面に画像を記録することができる画像記録装置が知られている(特許文献1参照)。この種の画像記録装置では、給紙トレイから送り出されたシートが記録部へ搬送され、そして、記録部によってシートの表面に画像が記録される。記録部よりも搬送方向下流側には分岐口が設けられており、この分岐口を起点にして反転搬送路が形成されている。両面記録時は、記録部によって表面に画像が記録されたシートは、分岐口よりも搬送方向下流側でシートの進行方向を逆方向に変更するためにスイッチバックされる。スイッチバックされたシートは、分岐口から分岐されて記録部の下側を通る反転搬送路へ搬送される。シートは、反転搬送路を通って再び記録部へ搬送される。記録部に到達したシートは、表面に画像を形成されたときと同様にして、記録部によってその裏面に画像が記録される。その後、両面に画像が記録されたシートは排出トレイに排出される。
【0003】
分岐口の上側には、回動自在に支持されたフラップが設けられている。フラップは、常時においては自重又はバネ等の弾性力によって下方(分岐口側)へ付勢されている。記録部から搬送されるシートがフラップに当接すると、フラップはシートによって押し上げられてシート通過させる。シートの後端がフラップを通過して分岐口に到達すると、フラップによる下方への付勢力によってシートの後端が押し下げられる。これにより、シートの後端が反転搬送路のガイド面に押し付けられて、シートの後端が反転搬送路へ向けられる。
【0004】
また、従来より、厚紙の表面やCDやDVDなどのディスクメディアのラベル面に画像記録を記録する機能を備えた画像記録装置が知られている(特許文献2参照)。この種の画像記録装置は、記録後のシートを排出するシート排出口から記録部の排出方向上流側まで直線状に形成された直線経路を有している。例えばディスクメディアのラベル面に画像記録する場合は、排出口から直線経路へ向けてディスクトレイが挿入され、ディスクトレイ上のディスクメディアが記録部よりも上流側にセットされる。このとき、ディスクトレイを記録部の上流側へ進入可能とするために、直線経路に設けられた搬送ローラ対の各ローラやプラテンなどが下方へ離間させている。これにより、ディスクトレイが直線経路を通過可能な隙間が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−208718号公報
【特許文献2】特開2010−76421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の画像記録装置に特許文献2の記録機能を備えた場合は、厚紙やディスクトレイがシート排出口から直線経路に挿入されると、厚紙やディスクトレイの先端がフラップに接触して、フラップが故障するおそれがある。また、厚紙やディスクトレイがフラップの上側へ進入し、そのまま押し込まれることによって、フラップの支持機構やフラップを支持するフレームなどが故障したりずれたりして、フラップだけにとどまらず、画像記録装置が正常に動作しなくなるおそれもある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フラップやその支持機構の故障を防止することが可能な画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、記録部と、第1搬送路と、第2搬送路と、上側ガイド部材と、フラップとを備えた画像記録装置として構成されている。
記録部は、第1シート及び第2シートに画像を記録する。第1搬送路は、上記第1シートが収容される第1トレイから上記記録部に至る湾曲状の湾曲路及び上記記録部からシート排出口に至る水平な直線路を有する。第2搬送路は、上記直線路に設けられた分岐口で上記直線路から分岐され、上記記録部の下側を通って、上記湾曲路に設けられた合流口で上記湾曲路と合流するように延びており、上記第1シートを上記分岐口から上記合流口へ案内する。上側ガイド部材は、上記直線路において上記分岐口よりも上記シート排出口側の上側を形成する。フラップは、上記分岐口よりも上記記録部側に設けられた支軸から上記シート排出口側へ延出され、上記分岐口よりも上方に位置する第1姿勢と少なくとも延出端が上記分岐口から上記第2搬送路に進入する第2姿勢との間で上記支軸を中心に回動自在に支持されている。上記フラップの延出端には、上記フラップが上記第1姿勢のときに上記上側ガイド部材と交差する突出部が設けられている。この突出部は、上記フラップが上記第2姿勢のときに上記シート排出口から上記直線路に挿入された上記第2シートの挿入方向に対して斜め上方に傾斜するガイド面を有している。
【0009】
記録部は、第1トレイから給送された第1シートに対して画像を記録することができ、また、シート排出口から直線路に挿入された第2シートに対しても画像を記録することが可能である。第1トレイには、湾曲路に沿って撓まされながら搬送可能な第1シートが収容される。一方、湾曲路を搬送できない剛性の強い第2シート(例えば厚紙やディスクメディア)は、シート排出口から直線路を通って記録部を通過するまで挿入され、その後、所定の搬送手段によってシート排出口側へ搬送されつつ、記録部によって第2シートに画像が記録される。
【0010】
直線路には、フラップが設けられている。フラップは記録部側の支軸によって回動自在に支持されている。そのため、外力が加えられていない状態では、フラップの延出端が下方へ落ちて分岐口よりも下方へ進入した第2姿勢を維持している。この状態で、第2シートがシート排出口から直線路に挿入されると、第2シートの挿入方向の先端がフラップの突出部に形成されたガイド面に衝突する。ガイド面は、第2シートの挿入方向に対して斜め上方に傾斜しているから、フラップの延出端は、第2シートから上向きの力を受ける。プラップは、この力を受けて上方へ移動して第1姿勢となる。また、フラップが第1姿勢になることにより、突出部が上側ガイド部材と交差する。
【0011】
このように構成されているため、第2シートが挿入されても、第2シートから受ける力がフラップを第2姿勢から第1姿勢に姿勢変化させる運動に転換されるので、フラップの故障が防止される。また、第2シートから受ける力によってフラップを第2姿勢から第1姿勢となるので、フラップの上側への第2シートの進入が防止される。また、フラップが第1姿勢となったときに突出部が上側ガイド部材と交差するので、仮に、第2シートが無理矢理押し込まれるなどしてフラップの上側へ進入しようとしても突出部よりも奥側へ入り込む隙間がないため、進入できない。このため、フラップだけでなくフラップの回動支持機構が保護される。
【0012】
(2) 上記突出部の具体的構成としては、上記フラップの延出端から上方へ突出した形状が好ましく、また、上記ガイド面は、上記突出部において上記シート排出口側に設けられていることが好ましい。
【0013】
(3) 本発明の画像記録装置は、上記直線路の下側ガイド部材を第3姿勢とこの第3姿勢から下方へ離間する第4姿勢との間で移動可能に支持する支持部材を更に備える。上記支持部材は、上記第1トレイから給送された上記第1シートへの記録時は上記下側ガイド部材を上記第3姿勢に保持し、上記シート排出口から上記直線路に挿入された上記第2シートへの記録時は上記下側ガイド部材を上記第4姿勢に保持するものである。
【0014】
この構成の場合は、第1シートよりも極めて厚い第2シートがシート排出口から直線路へ挿入可能である。このような第2シートが挿入されると、フラップの故障が生じ易いため、本発明はこのような構成に対して好適である。
【0015】
(4) この場合、上記直線路は、上記下側ガイド部材が上記第4姿勢にあるときに、上記第2シートを載置可能な第2トレイを挿入可能に構成されていることが好ましい。
【0016】
第2トレイはシートに比べて各段に剛性が高い。このため、第2トレイの挿入によるフラップの故障が生じ易くなると考えられる。したがって、本発明はこのような構成にも好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シート排出口から厚紙或いはメディアトレイが挿入されたとしても、フラップが厚紙或いはメディアトレイから力を受けて第1姿勢から第2姿勢となるから、フラップやその支持機構の故障を確実に防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、カム駆動機構134の構成を模式的に示す模式図である。
【図4】図4は、フレーム81及びフラップ49の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、フレーム81の裏面側の構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、図4における切断線VI−VIの断面構造を示す詳細拡大図である。
【図7】図7は、フラップ49の構成を示すものであり、(A)は外形図であり、(B)は(A)における切断線VIIB−VIIBの断面構造を示す詳細拡大図である。
【図8】図8は、フラップ49の周辺機構の構成を示すものであり、(A)は平面図であり、(B)は(A)における切断線VIIIB−VIIIBの断面構造を示す詳細拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態は適宜変更できる。以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0020】
[複合機10の概要]
図1に示されるように、複合機10は、薄型の直方体に概ね形成されており、下部にインクジェット記録方式のプリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。なお、プリント機能以外の機能の有無は任意である。したがって、本実施形態では、プリント機能以外の機能及びその機能を実現する構成要素についての説明を省略する。
【0021】
[プリンタ部11の構成]
図2に示されるように、プリンタ部11は、主として、各種サイズの記録用紙(本発明のシートの一例)を保持可能なトレイ20(本発明の第1トレイの一例)と、トレイ20から記録用紙をピックアップして給送する給送部15と、インクを用いて画像記録を行うインクジェット記録方式の記録部24(本発明の記録部の一例)と、を備えている。なお、記録部24はインクジェット方式に限られず、電子写真方式などの種々の記録方式のものが適用可能である。
【0022】
プリンタ部11は、正面に開口13(図1参照)が形成されたケーシング14(図1参照)を有しており、トレイ20は、開口13から前後方向8に挿抜可能に設けられている。つまり、トレイ20は、ケーシング14に装着及び脱抜可能である。トレイ20は、シートの載置面よりも上方に設けられた排紙保持部79を備える。排紙保持部79は、概ね平板形状に形成されており、トレイ20の前方側の上部に水平を保つように取り付けられている。なお、排紙保持部79は、トレイ20に取り付けられていてもよく、また、プリンタ部11のフレームなどに固定されていてもよい。
【0023】
トレイ20の上方にトレイガイド51が設けられている。トレイガイド51は、ケーシング14にスライド可能に支持されており、図1(A)に示されるように内部に収容された状態から、図1(B)に示されるように正面から突出した状態となるように前方へ引き出すことが可能である。トレイガイド51の上面でディスクトレイ53(図1(B)参照、本発明の第2トレイの一例)が前後方向8へ挿抜可能に支持される。ディスクトレイ53は、例えばCDやDVDなどのディスクメディア(本発明の第2シートの一例)を保持可能な厚さ3mm程度の平板状部材である。このディスクトレイ53にディスクメディアが保持された状態でトレイガイド51にディスクトレイ53が挿入されると、記録部20によって記録可能な位置にディスクメディアがセットされる。なお、トレイガイド51が引き出されると、後述するカム駆動機構134が動作して、後述の直線路65B(本発明の直線路に相当)が下側に拡張されるように構成されており、これにより、直線路65Bにディスクトレイ53が挿入可能となる。
【0024】
プリンタ部11の制御は、図示しない制御部により行われる。制御部は、外部機器から入力された信号やデータに基づいてプリンタ部11を駆動させて、画像を記録媒体に記録させる。より詳細には、制御部は、トレイ20に収容された記録用紙を記録部24に搬送して記録用紙に画像を記録する通常記録モードと、開口13から挿入されたディスクトレイ53に載置されたディスクメディアのラベル面に画像を記録するレーベル記録モードと有しており、いずれかの記録モードに応じた記録制御を行う。
【0025】
[給送部15]
図2に示されるように、給送部15は、トレイ20の上方であって記録部24の下方に設けられている。給送部15は、給紙ローラ25、給紙アーム26、及び複数のギヤが噛み合わされてなる駆動伝達機構27とを備えている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端部で軸支されている。給紙アーム26は、その基端部に設けられた支軸28を中心として、矢印29の方向に回動する。これにより、給紙ローラ25はトレイ20に載置された記録用紙に当接することができ、また、トレイ20から離間することができる。給紙ローラ25は、駆動伝達機構27によって給紙用モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、トレイ20上に積載された記録用紙のうち、一番上側の記録用紙に当接された状態で回転することによって、当該記録用紙をその下側にある他の記録用紙から分離して後述の湾曲路65Aに給送する。
【0026】
[搬送路65]
図2に示されるように、プリンタ部11の内部には、トレイ20の先端(後方側の端部)から記録部24を経て排紙保持部79に至る搬送路65(本発明の第1搬送路の一例)が形成されている。搬送路65は、トレイ20の先端から記録部24に至る間に形成された湾曲路65A(本発明の湾曲路に相当)と、記録部24から排紙保持部79に至る間に形成された直線路65Bとに区分される。
【0027】
湾曲路65Aは、トレイ20に設けられた分離傾斜板22の上端付近から記録部24に渡って延設された湾曲状の通路である。湾曲路65Aは、プリンタ部11の内部側を中心とする円弧形状に概ね形成されている。トレイ20から給送される記録用紙は、湾曲路65Aを搬送方向(図2において一点鎖線で示される方向)に沿って第1搬送向き(図2において一点鎖線に付された矢印の向き)に湾曲されて、記録部24の直下へ案内される。湾曲路65Aは、所定間隔を隔てて互いに対向する外側ガイド部材18と内側ガイド部材19によって区画されている。なお、外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19、更に後述する各ガイド部材83,90,31,32は、いずれも、図2の紙面垂直方向(図1の左右方向9)へ延出されている。
【0028】
直線路65Bは、記録部24の直下から排紙保持部79に渡って延設された直線状の概ね水平な通路である。この直線路65Bには、トレイ20からの記録用紙のみならず、開口13から挿入されたディスクトレイ53も通る。記録用紙やディスクトレイ53は、直線路65Bに沿って案内される。直線路65Bは、記録部24が設けられている箇所においては、所定間隔を隔てて互いに対向する記録部24及びプラテン42によって形成されており、記録部24が設けられていない箇所においては、所定間隔を隔てて互いに対向する各ガイド部材によって区画されている。
【0029】
本実施形態では、直線路65Bの下側ガイドを担う部材として、拍車61、プラテン42、第2搬送ローラ62、直線ガイド部材83、及び第3搬送ローラ45が第1搬送向きにその順番で配置されている。これら各部材は本発明の下側ガイド部材の一例であって、これら各部材によって、直線路65Bの下側ガイドが区画形成されている。直線ガイド部材83は、第2搬送ローラ62と後述の分岐口36との間に配置された板状の樹脂部材である。直線ガイド部材83は、凹部84を有する。凹部84は、直線ガイド部材83の上面、つまり直線路65Bの下側ガイド面に開口している。凹部84は、前後方向8に沿って延びる溝である。この凹部84は、第1搬送向きの下流側に延ばされて直線ガイド部材83の下流端に達するように形成されていてもよい。この場合、凹部84の下流側は分岐口36に連通する。凹部84のサイズ及び位置は、後述する第1補助ローラ47が凹部84に進退することができるように設計されている。なお、凹部84は、単一の溝ではなく、第1補助ローラ47の数に応じて複数の溝が左右方向9へ併設されており、櫛状に形成されている。なお、下側ガイドを担う他の部材については後述する。
【0030】
また、本実施形態では、直線路65Bの上側ガイドを担う部材として、第1搬送ローラ60、記録部24,拍車63、フラップ49、上側ガイド部材90(本発明の上側ガイド部材の一例)、拍車46が第1搬送向きにその順番で配置されている。これら各部材によって、直線路65Bの上側ガイドが区画形成されている。上側ガイド部材90は、分岐口36よりも第1搬送向きの下流側に設けられている。つまり、上側ガイド部材90は、分岐口36よりも記録用紙が排出される排出口側に設けられている。図8に示されるように、上側ガイド部材90は、樹脂部材で形成されたものであり、直線路65Bの左右方向9の幅に対応して、左右方向9に細長い板状に形成されている。上側ガイド部材90の下面には、記録用紙を排出する際に記録用紙の上面をガイドする複数のガイドリブ94が設けられている。上側ガイド部材90の後端は下方に屈曲されており、これにより下向きの突起95が形成されている。なお、上側ガイドを担う他の部材については後述する。
【0031】
記録部24よりも第1搬送向きの下流側の直線路65Bに分岐口36(本発明の分岐口の一例)が設けられている。両面画像記録の際には、直線路65Bを搬送される記録用紙は、分岐口36よりも第1搬送向きの下流側でスイッチバックされ、後述する反転搬送路67(本発明の第2搬送路の一例)へ向けて搬送される。
【0032】
[記録部24]
記録部24は、トレイ20から給送された記録用紙、又は直線路65Bに挿入されたディスクトレイ48上のディスクメディアに対して画像記録を行うものである。この記録部24は、トレイ20の上方に配置されている。記録部24は、左右方向9(図2において紙面と垂直な方向)に往復移動する。記録部24の下方には記録用紙を水平に保持するためのプラテン42が設けられている。記録部24は、左右方向9への往復移動過程において、図示しないインクカートリッジから供給されたインクをノズル39からプラテン42上を搬送される記録用紙に吐出する。これにより、搬送路65において記録用紙に画像が記録される。
【0033】
[搬送ローラ45,60,62]
図2に示されるように、外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19の第1搬送向きの下流端と記録部24との間には、第1搬送ローラ60及びピンチローラ61が設けられている。ピンチローラ61は、第1搬送ローラ60の下方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第1搬送ローラ60のローラ面に圧接されている。第1搬送ローラ60及びピンチローラ61は、湾曲路65Aを搬送してきた記録用紙を狭持してプラテン42上へ送る。
【0034】
記録部24と直線ガイド部材83との間には、第2搬送ローラ62が設けられている。第2搬送ローラ62の上方には拍車63が設けられている。拍車63は、図示しないバネなどの弾性部材によって第2搬送ローラ62のローラ面に圧接されている。第2搬送ローラ62及び拍車63は、記録部24で画像を記録された記録用紙を狭持して第1搬送向きの下流側へ搬送する。直線路65Bの上方には、左右方向9に延出された平板状の金属製のフレーム81が設けられている。図5に示されるように、拍車63は、フレーム81の下面に固定されたホルダー92に回転可能に支持されている。本実施形態では、左右方向9へ並ぶようにして8個の拍車63が設けられている。
【0035】
各搬送ローラ60,62は、搬送用モータ(不図示)から駆動伝達機構(不図示)を介して回転駆動力が伝達されて回転される。前記の駆動伝達機構は、遊星ギヤなどから構成されており、搬送用モータが正回転及び逆回転方向のいずれに回転されても、各搬送ローラ60,62を一回転方向へ回転させる。これにより、記録用紙は第1搬送向きへ搬送される。
【0036】
分岐口36よりも第1搬送向きの下流側に、第3搬送ローラ45と拍車46とが設けられている。拍車46は、第3搬送ローラ45の上方に配置されており、図示しないバネなどの弾性部材によって第3搬送ローラ45のローラ面に圧接されている。第3搬送ローラ45は、プリンタ部11のフレームなどに軸支された支軸85に固定されている。拍車46は、上側ガイド部材90の下面に設けられた複数のガイドリブ94間に回転可能に支持されている。
【0037】
第3搬送ローラ45は、搬送用モータから正逆回転方向の駆動力が伝達されて、正回転方向又は逆回転方向に回転駆動される。例えば、片面記録が行われる場合は、第3搬送ローラ45は正回転方向へ回転される。これにより、記録用紙は第3搬送ローラ45及び拍車46に挟持されて下流側の排出口78(本発明のシート排出口の一例)から排紙保持部79に排紙される。一方、両面記録が行われる場合は、第3搬送ローラ45及び拍車46が記録用紙の後端部を挟持した状態で、第3搬送ローラ45の回転方向が正回転方向から逆回転方向へ切り換えられる。以下で説明する経路切換部41によって記録用紙の後端が後述する反転搬送路67へ向けられた後に第3搬送ローラ45の回転方向が逆回転方向に切り換えられると、記録用紙は、反転搬送路67へ向けて搬送される。
【0038】
[経路切換部41]
図2に示されるように、経路切換部41は、第2搬送ローラ62よりも第1搬送向きの下流側、かつ第3搬送ローラ45よりも第1搬送向きの上流側に配置されている。経路切換部41は、第1補助ローラ47、第2補助ローラ48、フラップ49(本発明のフラップの一例)、及び支軸87で構成されている。
【0039】
図5に示されるように、ホルダー92に支軸87が設けられている。ホルダー92には、2つの支軸87が設けられている。図6に示されるように、フラップ49は、支軸87から概ね第1搬送向きの下流側へ延出されており、支軸87に回動自在に軸支されている。
【0040】
図6に示されるように、フラップ49は、樹脂部材からなるフラップ本体122を有する。フラップ本体122は、直線路65Bの左右方向9の幅に対応して、左右方向9に細長い薄板状に形成されている。図7に示されるように、フラップ本体122の下面にはガイドリブ125(125A,125B)が設けられている。ガイドリブ125は、フラップ本体122の長手方向に沿って複数設けられている。また、フラップ本体122の一方の長辺から2本のアーム123が延びている。これらアーム123の先端には、支軸87に嵌め入れられる軸受け124が形成されている。この軸受け124が支軸87に取り付けられることにより、フラップ49が回動可能となる。アーム123は、軸受け124からフラップ本体122に至る部分が湾曲状に形成されている。
【0041】
図6に示されるように、フラップ49には、第1補助ローラ47及び第2補助ローラ48が軸支されている。補助ローラ47,48のローラ面は、記録用紙の記録面に当接されるので、拍車63及び拍車46と同様に拍車状に形成されている。第1補助ローラ47は、フラップ本体122の基端側(後方側)に設けられており、具体的には、基端側のガイドリブ125A間に軸支されている。また、第2補助ローラ48はフラップ本体122の延出端側(前方側)に設けられており、具体的には、延出端側のガイドリブ125B間に軸支されている。
【0042】
フラップ49は、支軸87に回動自在に軸支されているから、姿勢変化可能である。本実施形態では、直線ガイド部材83や分岐口36よりも上方に位置する排出姿勢(図2に破線で示される姿勢、本発明の第1姿勢に相当)と、第2補助ローラ48が分岐口36よりも下方へ進入する反転姿勢(図2に実線で示される姿勢、本発明の第2姿勢に相当)との間で回動する。フラップ49は、外力が加えられていない状態では、自重によってフラップ本体122が垂れ下がる。そのため、フラップ49は、常時において、反転姿勢を維持する。フラップ49が反転姿勢にあるときは、第1補助ローラ47は凹部84に進入している。つまり、トレイ20から搬送された記録用紙がフラップ49に到達していない状態では、フラップ49は、反転姿勢となっており、第1補助ローラ47は凹部84に進入している。この状態で記録用紙が第1搬送向きへ搬送されると、記録用紙の先端が第1補助ローラ47に接触する。更に記録用紙が同向きに搬送されることにより、記録用紙によって凹部85が徐々に塞がれるとともに第1補助ローラ47が上方へ押し上げられる。これに伴い、フラップ49は支軸87を中心に回動して、第1補助ローラ47は凹部84から退出し、フラップ49は、反転姿勢から排出姿勢(図2に破線で示される姿勢)へと変化する。なお、フラップ49は、バネ等の弾性部材によって反転姿勢となるように弾性付勢されていてもよい。
【0043】
図7及び図8に示されるように、フラップ本体122の後方端部には、後方端部から外側へ突出する突出片126(本発明の突出部の一例)が設けられている。本実施形態では、フラップ本体122の長手方向に沿って7個の突出片126が設けられている(図7(A)参照)。突出片126は、後方端部から外側へ突出した後に上方へ屈曲されて鉤状に形成された鉤部127を有する(図7(B)参照)。この鉤部127は、後述するように、フラップ49が排出姿勢となったときに、上側ガイド部材90に設けられた突起95よりも第1搬送向き側に形成された隙間96に入り込む。言い換えると、突出片126は、前方又は後方から見て突起95と重なるように立体的に交差する。
【0044】
また、突出片126には、ガイド面128(本発明のガイド面の一例)が形成されている。ガイド面128は、突出片126において第1搬送向き下流側の表面に形成されている。図6に示されるように、ガイド面128は、フラップ49が反転姿勢のときに、ケーシング14の開口13(図1参照)から挿入されるディスクトレイ53の挿入経路98に対して斜め上方に傾斜している。このようなガイド面128が設けられているため、後述するように、フラップ49が反転姿勢にあるときにディスクトレイ53が挿入されても、フラップ49の上側にディスクトレイ53が進入しない。
【0045】
[反転搬送路67]
図2に示されるように、記録部24とトレイ20との間に反転搬送路67が形成されている。反転搬送路67は、分岐口36で直線路65Bから分岐され、記録部24の下側且つ給紙アーム27の上側を通って、記録部24よりも第1搬送向きの上流側の合流口37(本発明の合流口の一例)で湾曲路65Aと合流する。記録用紙は、反転搬送路67を第2搬送向きに搬送される。ここで、第2搬送向きとは、反転搬送路67を分岐口36から合流向き37に向かう向きで、図2における矢印付きの二点鎖線で示される向きを指す。
【0046】
反転搬送路67の上側は、概ね薄型の平板矩形状に形成された第2ガイド部材32によって区画されている。また、反転搬送路67の下側は、概ね薄型の平板矩形状に形成された第1ガイド部材31によって区画されている。詳細には、第2ガイド部材32の下面と第1ガイド部材31の上面とによって、反転搬送路67が区画形成されている。つまり、第2ガイド部材32と第1ガイド部材31とが、記録用紙が通過可能な所定間隔を隔てて互いに対向するように配置されている。なお、第2ガイド部材32及び第1ガイド部材31の両端は、プリンタ部11のフレームなどに支持されている。
【0047】
[第4搬送ローラ68]
図2に示されるように、反転搬送路67には、第4搬送ローラ68及び従動ローラ69よりなる搬送ローラ対70が設けられている。従動ローラ69は、記録部24よりも下方であって第4搬送ローラ68よりも上方に配置されている。第4搬送ローラ68は、コイルバネ(不図示)によって従動ローラ69のローラ面に圧接されている。第4搬送ローラ68は、搬送用モータから正逆回転方向の駆動力が伝達されて、正回転方向又は逆回転方向に回転駆動される。本実施形態においては、搬送ローラ対70は、搬送用モータが逆転の向きに回転された場合に、第4搬送ローラ68と従動ローラ69との間に記録用紙を挟持することによって、反転搬送路67に搬送されてきた記録用紙を第2搬送向きに搬送する。
【0048】
[カム駆動機構134]
図3に示されるように、プリンタ部11にはカム駆動機構134(本発明の支持部材の一例)が設けらている。カム駆動機構134は、直線路65Bの下側ガイドを担う拍車61、プラテン42、第2搬送ローラ62、直線ガイド部材83、及び第3搬送ローラ45の各部材(以下「下側ガイド部材」と総称する。)を第3姿勢(図2で実線で示す姿勢、図3(A)の姿勢)と、この第3姿勢から下方へ離間した第4姿勢(図2で波線で示す姿勢、図3(B)の姿勢)との間で移動可能とする機構である。本実施形態では、下側ガイド部材が第4姿勢のときに、直線路65Bは、開口13から挿入されたディスクトレイ53を搬送可能な幅に拡張される。
【0049】
カム駆動機構124は、トレイガイド51(図1参照)に連結されたリンクプレート136を有する。このリンクプレート136は、左右方向9へ間隔を隔ててに対をなすように2つ設けられている。リンクプレート136間に、拍車61、プラテン42、第2搬送ローラ62、直線ガイド部材83、及び第3搬送ローラ45が配置されており、これら下側ガイド部材それぞれの左右方向9の両端部がリンクプレート136に形成された溝状のスライドカム137に支持されている。なお、図3には、拍車61が支持されるスライドカム137A、第2搬送ローラ62が支持されるスライドカム137B、第3搬送ローラ45が支持されるスライドカム137Cが示されているが、プラテン42及び直線ガイド部材83を支持するスライドカムは省略されている。このように構成されているため、図3(A)に示される第3姿勢にある状態でトレイガイド51が前方へ引き出されると、リンクプレート136が前方(図3の右側)へ移動される。これにより、下側ガイド部材それぞれの被支持部の支持位置がスライドカムの上位位置から下位位置へ移動して、下側ガイド部材が第4姿勢となる(図3(B)参照)。その結果、直線路65Bが下側へ拡張される。なお、言うまでもなく、カム駆動機構124以外の機構を用いて、直線路65Bを拡張させてもよい。
【0050】
[実施形態の作用・効果]
上述のように構成されているため、レーベル記録のためにユーザがトレイガイド51を前方へ引き出すと、カム駆動機構124が動作して、拍車61、プラテン42、第2搬送ローラ62、直線ガイド部材83、及び第3搬送ローラ45などの下側ガイド部材が下方へ移動し、直線路65Bが下方へ拡張される。これによりディスクトレイ53を直線路65Bに挿入可能となる。一方、上述したように、外力が加えられていない状態では、フラップ49は反転姿勢を維持している。そのため、ディスクトレイ53を直線路65Bに挿入すると、ディスクトレイ53の挿入方向の先端部がフラップ49のガイド面128に衝突する。ガイド面128は、ディスクトレイ53の挿入経路98に対して斜め上方に傾斜しているため、フラップ本体122は、ディスクトレイ53から上向きの力を受ける。プラップ49はこの力を受けて上方へ移動して、反転姿勢から排出姿勢となる。これにより、ディスクトレイ53の挿入経路98に障害がなくなり、ディスクトレイ53はスムーズに記録部24側へ挿入される。また、フラップ49はディスクトレイ53の挿入に対して上方へ退避するため、ディスクトレイ53とフラップ49との衝突時にフラップ49が故障することはない。
【0051】
また、プラップ49が排出姿勢になると、図8に示されるように、フラップ49の鉤部127が上側ガイド部材90の隙間96に入り込む。これにより、仮にディスクトレイ53に保持されたディスクメディアが外れるなどしてフラップ49の上側に進入しようとしても、突出片126よりも奥側へ入り込む隙間がないため、フラップ49の上側へは進入できない。このため、フラップ49の支軸87やホルダー92、フレーム80などの部材が保護される。
【0052】
なお、上述の実施形態では、カム駆動機構134によってディスクトレイ53が直線路65Bに挿入可能な構成について説明したが、本発明は、直線路65Bを拡張させる機構が搭載されておらず、例えば厚紙などを開口13から挿入して画像記録するような構成についても適用可能である。
【0053】
また、上述の実施形態では、突起片126の鉤部127が隙間96に進入する構成について説明したが、例えば、上側ガイド部材90に鉤部127が貫通可能な貫通孔を形成し、フラップ49が排出姿勢になったときに鉤部127が上記貫通孔に入り込んで上側ガイド部材90の上面に抜け出るように鉤部127や貫通孔を形成してもかまわない。
【符号の説明】
【0054】
10:複合機
20:トレイ
24:記録部
42:プラテン
45:第3搬送ローラ
49:フラップ
51:トレイガイド
53:ディスクトレイ
61:ピンチローラ
62:第2搬送ローラ
65:搬送路
67:反転搬送路
83:直線ガイド部材
87:支軸
134:カム駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シート及び第2シートに画像を記録する記録部と、
上記第1シートが収容される第1トレイから上記記録部に至る湾曲状の湾曲路及び上記記録部からシート排出口に至る水平な直線路を有する第1搬送路と、
上記直線路に設けられた分岐口で上記直線路から分岐され、上記記録部の下側を通って、上記湾曲路に設けられた合流口で上記湾曲路と合流するように延びており、上記第1シートを上記分岐口から上記合流口へ案内する第2搬送路と、
上記直線路において上記分岐口よりも上記シート排出口側の上側を形成する上側ガイド部材と、
上記分岐口よりも上記記録部側に設けられた支軸から上記シート排出口側へ延出され、上記分岐口よりも上方に位置する第1姿勢と少なくとも延出端が上記分岐口から上記第2搬送路に進入する第2姿勢との間で上記支軸を中心に回動自在に支持されたフラップと、
上記フラップの延出端に設けられ、上記第2姿勢のときに上記シート排出口から上記直線路に挿入された上記第2シートの挿入方向に対して斜め上方に傾斜するガイド面を有し、上記第1姿勢のときに上記上側ガイド部材と交差する突出部と、を備えた画像記録装置。
【請求項2】
上記突出部は、上記フラップの延出端から上方へ突出しており、上記ガイド面は、上記突出部において上記シート排出口側に設けられている請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記直線路の下側ガイド部材を第3姿勢とこの第3姿勢から下方へ離間する第4姿勢との間で移動可能に支持する支持部材を更に備え、
上記支持部材は、上記第1トレイから給送された上記第1シートへの記録時は上記下側ガイド部材を上記第3姿勢に保持し、上記シート排出口から上記直線路に挿入された上記第2シートへの記録時は上記下側ガイド部材を上記第4姿勢に保持するものである請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記直線路は、上記下側ガイド部材が上記第4姿勢にあるときに、上記第2シートを載置可能な第2トレイを挿入可能に構成されている請求項3に記載の画像記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−153443(P2012−153443A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11451(P2011−11451)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】