説明

画像評価用チャートおよび画像評価装置

【課題】撮像レンズおよび撮像素子を備えるカメラモジュールによって撮影される画像の評価をより短時間で高精度に行うことのできる画像評価用チャートおよび画像評価装置を提供する。
【解決手段】周囲と輝度の異なる矩形状パターン11a〜11eを垂直走査方向に沿って複数並列に配置するとともに、これら矩形状パターン11a〜11eを、垂直走査方向に沿って向かうにつれて、同矩形状パターン11a〜11eの撮像素子への投影像が同撮像素子の画素ピッチを等分した量(画像評価用チャート10上では距離α)だけ垂直走査方向と直交する水平走査方向に同画素ピッチ内で変位するように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の画像評価用チャートおよび画像評価装置に係り、詳しくは、車載用カメラ、監視用カメラ、携帯電話用カメラ等のデジタルカメラに搭載され、撮像レンズおよびCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を備えるカメラモジュールの画像評価に際して用いられる画像評価用チャートおよび画像評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子の画素数は年々増加の一途を辿り、こうした撮像素子が搭載された車載用カメラ、監視用カメラ、携帯電話用カメラ等のデジタルカメラに使用される撮像レンズにあっては、画素数に見合った解像度が要求されている。
【0003】
従来、撮像レンズの解像度の評価には、MTF(modulation transfer
function:変調伝達関数)による評価が広く採用されてきた。このMTFによる評価では、MTFをグラフ化したMTF曲線が用いられる。MTF曲線は、横軸にmm(ミリメートル)当たり本数の空間周波数、縦軸にゼロ周波数で1、もしくは100に規格化したコントラスト再現度をプロットしたものである。このうちのコントラスト再現度は、物体コントラストに対する像コントラストの比として定義されており、空間周波数が増加するにつれてレンズ内の回折や収差などによって低下するといった性質を有している。このため、こうしたMTF曲線を用いることによって撮像レンズの解像度を視覚的に評価することが可能となる。
【0004】
MTFの測定に際しては、上述のように、空間周波数毎のコントラスト再現度を求める必要がある。コントラストの測定方法としては、例えば特許文献1に示されるように、特定の周波数成分を有するチャートを、撮像レンズを介して撮像素子により撮像し、当該撮像素子からの出力に基づいてコントラストを求める方法がある。以下、上記特許文献1に記載のコントラスト測定方法についてその概略を説明する。
【0005】
この特許文献1に記載のコントラスト測定方法では、コントラストを測定したい方向に沿って特定の周波数成分を有するチャートを用意する。例えば、図6(a)に示すように、白地に黒色の矩形状パターン101が上記測定したい方向に沿って格子状に並んだチャート、すなわち高輝度部(白地)と低輝度部(矩形状パターン101)とが上記測定したい方向に沿って格子状に並んだチャートを画像評価用チャート100として用意する。
【0006】
撮像レンズを介して撮像素子により上記画像評価用チャート100を撮像すると、図6(b)に示されるように、撮像素子からは矩形波状に変化する出力が得られる。まず、この出力をサンプリング周期毎にサンプリングして、該サンプリングにより得られた出力値群の分散を算出する。次いで、この分散の平方根に定数を乗じてコントラストを算出した後、高輝度部の出力値および低輝度部の出力値をそれぞれ用いて同コントラストを正規化する。なお、こうして正規化されたそれぞれの空間周波数毎のコントラストに基づいてMTFが算出されることになる。
【0007】
また、一般的には、上記チャートにおける矩形状パターン間のピッチが撮像素子の画素ピッチに近い場合にはコントラストを精度良く測定することができないことから、矩形状パターンのピッチが画素ピッチの2倍以上となるようにしてコントラストを測定している。
【特許文献1】特開2006−234468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記コントラスト測定方法では、撮像素子に撮像される画像評価用チャート100の高輝度部と低輝度部との境界(反転エッジ)と画素の境界との相対関係によって、算出されるコントラストの大きさに差が生じる。具体的には、矩形状パターン101の反転エッジと撮像素子の画素の境界とが一致するときには、高輝度部の出力値と低輝度部の出力値との差分が最大となり、算出されるコントラストも最大となる。しかし、上記反転エッジと画素の境界とが一致しない場合には、高輝度部の出力値と低輝度部の出力値との差分が小さくなり、コントラストは低下する。
【0009】
そこで、チャートを微小なピッチで移動させて、それぞれのチャートの位置に対応するコントラストを求め、これら求められたコントラストのうち最大のコントラストを採用する方法も考えられる。しかしながら、このようにチャートを微小なピッチで移動させてコントラストを測定する方法では、コントラストの測定精度については確かに向上するものの、コントラストの測定に要する時間が大幅に増加することとなり、結果的に、撮像レンズの画像評価に要する時間が増加してしまう。
【0010】
こうした問題点は、上記特許文献1に記載のコントラスト測定方法に限らず、コントラストの測定方向に対して特定の周波数を有するチャートを用いてコントラストを測定する方法全般に共通して内在するものである。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮像レンズおよび撮像素子を備えるカメラモジュールによって撮影される画像の評価をより短時間で高精度に行うことのできる画像評価用チャートおよび画像評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、撮像レンズおよび撮像素子を備えるカメラモジュールによって撮影される画像の評価を行う際に用いられる画像評価用チャートとして、周囲と輝度の異なる矩形状パターンが第1の方向に沿って複数並列に配置されており、これら矩形状パターンが、上記第1の方向に沿って向かうにつれて、同矩形状パターンの上記撮像素子への投影像が上記撮像素子の画素ピッチよりも短い変位間隔だけ上記第1の方向と直交する第2の方向に同画素ピッチ内で変位するように位置する構成とした。
【0013】
上記構成の画像評価用チャートを第1の方向に沿った順で第2の方向に走査すれば、第1の方向に沿って存在する撮像素子の画素にあっては、撮像素子への投影像の高輝度部と低輝度部との境界(反転エッジ)の位置が走査毎に異なることになる。このため、撮像素子からの出力の最大値と最小値との差分も走査毎に異なり、これら走査毎に得られる出力値のうち、最大の振幅を有する出力値に基づいてコントラストを算出することによって、コントラストの測定精度の向上を図ることができる。しかも、画像評価用チャートを移動させる等の煩雑な作業も必要ない。したがって、本発明によれば、コントラストをより短時間で高精度に測定することができ、ひいてはカメラモジュールによって撮影される画像の評価をより短時間で高精度に行うことができるようになる。
【0014】
上記画像評価用チャートにおいては、矩形状パターンを、上記第2の方向に沿って複数配置することが望ましい。このようにすれば、撮像素子の第2の方向における上記反転エッジの数が増加するため、空間周波数が高い領域におけるコントラストの測定を行うことができる。
こうした画像評価用チャートにおいて、上記変位間隔としては、例えば、撮像素子の画素ピッチを等分した量を採用することができる。
【0015】
また、本発明では、画像評価装置として、上記構成の画像評価用チャートと、撮像レンズおよび撮像素子を備え、上記画像評価用チャートを撮影するカメラモジュールと、該カメラモジュールを通じ、上記画像評価用チャートの矩形状パターンの並列方向と直交する第2の方向に沿って当該画像評価用チャートを走査する走査手段と、上記撮像素子からの出力をサンプリングするサンプリング手段と、サンプリングにより得られる出力値の最大値と最小値とから振幅を算出する振幅算出手段と、上記振幅のうち最大の振幅に基づいて、上記カメラモジュールによって撮影される画像のコントラストを算出するコントラスト算出手段と、を備える構成とした。
【0016】
画像評価装置としてこのような構成によれば、カメラモジュールによって上記画像評価用チャートが撮影され、当該画像評価用チャートの矩形状パターンの並列方向と直交する第2の方向に沿って走査手段による走査が行われる。この走査手段によって走査される画像評価用チャートには、上述のように、周囲と輝度の異なる矩形状パターンが第1の方向に沿って複数並列に配置されている。そして、画像評価用チャートにおいて、これら矩形状パターンは、第1の方向、すなわち矩形状パターンの並列方向に沿って向かうにつれて、同矩形状パターンの撮像素子への投影像が、撮像素子の画素ピッチよりも短い変位間隔だけ上記並列方向と直交する第2の方向に同画素ピッチ内で変位するように配置されている。カメラモジュールを通じてこうした構成の画像評価用チャートが撮影されると、矩形状パターンの並列方向に沿って存在する撮像素子の画素にあっては上記反転エッジの位置がそれぞれ異なるため、サンプリング手段によるサンプリングによって得られる出力値の最大値と最小値との差分(振幅)は上記走査毎に異なる。振幅算出手段では、このサンプリングによって得られる出力値のうち、最大値と最小値とから振幅が算出される。コントラスト算出手段では、こうして算出される振幅のうち、最大の振幅に基づいて、上記カメラモジュールによって撮影される画像のコントラストが算出される。このように、本発明に係る画像評価装置では、振幅算出手段により算出される振幅のうち最大の振幅に基づいてコントラストが算出されるため、上記反転エッジと画素の境界との相対関係がコントラストの算出に及ぼす影響を減殺することができ、コントラストの測定精度の向上を図ることができる。また、画像評価用チャートを移動させる等の煩雑な作業も必要ない。したがって、本発明によれば、コントラストをより短時間で高精度に測定することができ、ひいてはカメラモジュールによって撮影される画像の評価をより短時間で高精度に行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の画像評価用チャートおよび画像評価装置によれば、撮像レンズおよび撮像素子を備えるカメラモジュールによって撮影される画像の評価をより短時間で高精度に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態に係る画像評価用チャート、および同画像評価用チャートを備える画像評価装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る画像評価装置の概略構成を示したものである。同図1に示されるように、画像評価装置1は、画像評価用チャート10と、撮像レンズ21およびCCDやCMOS等の撮像素子22を備えるカメラモジュール20と、演算装置30とを備えて構成されている。
【0019】
まず、上記画像評価用チャート10について図2(a)、(b)を参照しつつ説明する。画像評価用チャート10は、カメラモジュール20の撮像レンズ21と対向するように壁面に固定され、図2(a)に示されるように、各種画像評価用のパターンの形成された面の一部にコントラスト評価用パターン形成領域11が形成されている。コントラスト評価用パターン形成領域11には、図2(b)に示されるように、周囲と輝度の異なる矩形状パターン11a〜11eが、図中上下方向に沿って並列に配置されている。この矩形状パターン11a〜11eの並列方向(図中上下方向)は、上記カメラモジュール20の撮像素子22の一方の走査方向に沿った方向でもある。なお、本実施の形態では、同一形状の黒色の矩形状パターン11a〜11eを白地の領域内に並列配置することにより、周囲と輝度の異なる矩形状パターン11a〜11eを形成している。
【0020】
これら矩形状パターン11a〜11eは、その並列方向(第1の方向)に沿って向かうにつれて、同矩形状パターン11a〜11eの撮像素子22への投影像が、当該並列方向に直交する方向(第2の方向)における撮像素子22の画素ピッチPhよりも短い距離(変位間隔)だけ第2の方向に同画素ピッチPh内で変位するように配置されている。詳しくは、同図2(b)に示すように、画像評価用チャート10において、矩形状パターン11a〜11eは、図中下方(以下、「垂直走査方向」)に向かうにつれて、撮像素子22の上記画素ピッチPhを5等分した距離(変位間隔)に相当する画像評価用チャート10上での距離αずつ、図中右方向(以下、「水平走査方向」)に変位して配置されている。すなわち、矩形状パターン11bは、矩形状パターン11aよりも距離αだけ水平走査方向に変位して配置されており、矩形状パターン11cは、矩形状パターン11bよりも距離αだけ水平走査方向に変位して配置されている。また、矩形状パターン11dは、矩形状パターン11cよりも距離αだけ水平走査方向に変位して配置されており、矩形状パターン11eは、矩形状パターン11dよりも距離αだけ水平走査方向に変位して配置されている。
【0021】
また、矩形状パターン11a〜11eの水平走査方向の長さは、同矩形状パターン11a〜11eの撮像素子22への投影像の水平走査方向における長さが撮像素子22の画素ピッチPhの自然数倍(n倍)となる長さに設定されている(図4参照)。そして、これら矩形状パターン11a〜11eは、垂直走査方向における撮像素子22の画素ピッチPvに相当する画像評価用チャート10上での距離βの自然数倍として示される間隔毎にそれぞれ配置されている。本実施の形態では、説明の便宜上、距離βにかかる自然数を「1」とし、同図2(b)に示されるように、矩形状パターン11a〜11eは、距離βの間隔毎にそれぞれ配置されている。
【0022】
画像評価装置1において、演算装置30は、カメラモジュール20からの出力に基づいて、当該カメラモジュール20によって撮影された画像の評価を行うための各種の画像評価値を演算し、それら画像評価値の演算結果をモニタ40に出力する。ここでは、演算装置30にて行われる処理のうち、コントラストの測定に関する処理(以下、「コントラスト演算処理」)についてのみ説明することとし、その他の画像評価値に関する処理については割愛することにする。
【0023】
図3は、演算装置30によって実行されるコントラスト演算処理についてその処理手順を示すフローチャートであり、図4は、撮像素子22の撮像面を模式的に示したものである。図4において、二点鎖線は、撮像レンズ21を通じて撮像素子22の撮像面に投影される矩形状パターン11a〜11eの一態様を示している。なお、コントラストの測定に際しては、測定精度の低下に繋がる外乱の混入を極力防止する観点からも、先の図1に示すように、上記画像評価装置1のうち画像評価用チャート10およびカメラモジュール20を暗室内に設置して、当該画像評価用チャート10を照明50、51によって照明することが望ましい。
【0024】
1.コントラスト演算処理にあたって、演算装置30では、まず、カメラモジュール20を通じて画像評価用チャート10の撮影が行われる(図3:ステップS1)。
2.次に、演算装置30では、図4に示されるように、矢印T1〜T5の順(垂直走査方向に沿った順)に、該矢印T1〜T5の方向(水平走査方向)に沿って画像評価用チャート10が走査されるとともに、撮像素子22からの出力がサンプリングされる(図3:ステップS2)。このとき、同図4に示されるように、撮像素子22の撮像面に投影された矩形状パターン11a〜11eの図中左側辺として示される高輝度部と低輝度部との境界(反転エッジ)の位置が、撮像素子22の垂直走査方向に沿って存在する画素にあってはそれぞれ異なることになる。
3.続いて、演算装置30では、上記サンプリングにより得られた出力値の最大値と最小値とから振幅が算出される(図3:ステップS3)。これにより、矢印T1〜T5の方向に沿った各走査毎の振幅がそれぞれ算出され、走査毎に異なる振幅が得られる。
【0025】
4.続いて、演算装置30では、上記3.にて算出された振幅のうち最大の振幅に基づいて、カメラモジュール20によって撮影される画像のコントラストが算出される(図3:ステップS4)。矩形状パターン11a〜11eの撮像素子22の撮像面への投影像が図4に示すような態様の場合には、矢印T2の方向に沿って走査するときに上記反転エッジと画素の境界とが一致するため、矢印T2の方向に沿って走査したときの出力値から算出される振幅が、矢印T1、T3〜T5の方向に沿って走査したときの出力値から算出される振幅よりも大きな値となる。よって、この場合には、この矢印T2の方向に沿って走査した際の出力値から算出される振幅に基づいてコントラストが算出される。
5.上記4.にて算出されたコントラストがモニタ40に出力される(図3:ステップS5)。
【0026】
以上説明した本実施の形態に係る画像評価用チャート10および画像評価装置1によれば、上述のように、算出された振幅のうち最大の振幅に基づいてコントラストが算出されるため、上記反転エッジと撮像素子22の画素の境界との相対関係がコントラストの算出に及ぼす影響は減殺されることとなり、コントラストの測定精度が向上する。また、画像評価用チャート10は壁面に固定されているため、測定に際して画像評価用チャート10自体を移動させる必要もない。したがって、コントラストの測定をより短時間で高精度に行うことができるようになる。
【0027】
なお、本実施の形態に係る画像評価装置1においては、演算装置30が、「走査手段」、「サンプリング手段」、「振幅算出手段」、および「コントラスト算出手段」に相当する構成となっている。このように、本実施の形態では、走査手段、サンプリング手段、振幅算出手段、およびコントラスト算出手段を演算装置30にて全て担う構成を採用しているが、このような構成に限定されるものではなく、これら走査手段、サンプリング手段、振幅算出手段、およびコントラスト算出手段をそれぞれ別のハードウェア構成によって実現するようにしてもよい。
【0028】
(第2の実施の形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態に係る画像評価用チャートについて説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成については同一符号を付してその詳細な説明を割愛する。
【0029】
本実施の形態に係る画像評価用チャートも、第1の実施の形態に係る画像評価用チャートと同様、カメラモジュール20の撮像レンズ21と対向するように壁面に固定され、各種画像評価用のパターンの形成された面の一部にコントラスト評価用パターン形成領域が形成されている。ただし、本実施の形態に係る画像評価用チャートのコントラスト評価用パターン形成領域には、図5に示されるように、周囲と輝度の異なる矩形状パターン51a〜51c、52a〜52c、53a〜53c、54a〜54c、55a〜55cが、図中上下方向(第1の方向)に沿って並列に配置されるとともに、図中左右方向(第2の方向)に沿って一定の間隔を空けて配置されている。なお、本実施の形態においても、同一形状の黒色の矩形状パターン51a〜51c、52a〜52c、53a〜53c、54a〜54c、55a〜55cを白地の領域内に配置することにより、周囲と輝度の異なる矩形状パターン51a〜51c、52a〜52c、53a〜53c、54a〜54c、55a〜55cを形成している。
【0030】
ここで、これら矩形状パターン51a〜51c、52a〜52c、53a〜53c、54a〜54c、55a〜55cを、矩形状パターン51a、52a、53a、54a、55aのグループ、矩形状パターン51b、52b、53b、54b、55bのグループ、矩形状パターン51c、52c、53c、54c、55cのグループとにそれぞれ分けると、図5に示されるように、各グループにおいて、矩形状パターン51a〜51c、52a〜52c、53a〜53c、54a〜54c、55a〜55cは、上記第1の実施の形態に係る画像評価用チャート10と同様、垂直走査方向に沿って向かうにつれて、撮像素子22の水平走査方向の画素ピッチPhを5等分した距離(変位間隔)に相当する画像評価用チャート上での距離αずつ水平走査方向に変位するように配置されている。例えば、矩形状パターン51a、52a、53a、54a、55aのグループにおいて、矩形状パターン52aは、矩形状パターン51aよりも距離αだけ水平走査方向に変位して配置されており、矩形状パターン53aは、矩形状パターン52aよりも距離αだけ水平走査方向に変位して配置されている。また、矩形状パターン54aは、矩形状パターン53aよりも距離αだけ水平走査方向に変位して配置されており、矩形状パターン55aは、矩形状パターン54aよりも距離αだけ水平走査方向に変位して配置されている。
【0031】
また、矩形状パターン51a〜51c、矩形状パターン52a〜52c、矩形状パターン53a〜53c、矩形状パターン54a〜54c、矩形状パターン55a〜55cはそれぞれ水平走査方向に沿って一列に並んで配置されており、各矩形状パターン51a〜51c、52a〜52c、53a〜53c、54a〜54c、55a〜55cの水平走査方向における長さは、撮像素子22へのその投影像の水平走査方向における長さが撮像素子22の画素ピッチPhの自然数倍となる長さに設定されている。また、上記矩形状パターン51a、52a、53a、54a、55aのグループと上記矩形状パターン51b、52b、53b、54b、55bのグループとの間隔、および上記矩形状パターン51b、52b、53b、54b、55bのグループと上記矩形状パターン51c、52c、53c、54c、55cのグループとの間隔も、撮像素子22へのその投影像の水平走査方向における長さが撮像素子の画素ピッチPhの自然数倍となる長さに設定されている。本実施の形態では、これらグループ間の間隔と、矩形状パターン51a〜51c、52a〜52c、53a〜53c、54a〜54c、55a〜55cの水平走査方向におけるそれぞれの長さとは、同一の大きさに設定されている。
【0032】
これら矩形状パターン51a〜51cの行、矩形状パターン52a〜52cの行、矩形状パターン53a〜53cの行、矩形状パターン54a〜54cの行、矩形状パターン55a〜55cの行のそれぞれは、上記第1の実施の形態に係る画像評価用チャート10と同様、垂直走査方向における撮像素子22の画素ピッチPvに相当する画像評価用チャート上での距離βの自然数倍として示される間隔毎に配置されている。本実施の形態においても、説明の便宜上、距離βにかかる自然数を「1」とし、同図5に示されるように、矩形状パターン51a〜51cの行、矩形状パターン52a〜52cの行、矩形状パターン53a〜53cの行、矩形状パターン54a〜54cの行、矩形状パターン55a〜55cの行の各行は、距離βの間隔毎に配置されている。
【0033】
以上説明した本実施の形態に係る画像評価用チャートを上記第1の実施の形態に係る画像評価用チャート10の代わりに用いることとすれば、撮像素子22の水平走査方向における上記反転エッジの数が増加するため、空間周波数が高い領域におけるコントラストの測定を行うことができる。すなわち、水平走査方向における矩形状パターンの数が増加するにつれて、高輝度部(白地)と低輝度部(矩形状パターン)との反転回数が増加し、上記サンプリングにより得られる出力値の推移を示す波形の周波数が増加するため、空間周波数がより高い領域におけるコントラストを求めることができるようになる。
【0034】
(他の実施の形態)
なお、この発明に係る画像評価用チャートおよび画像評価装置は上記各実施の形態に限定されるものではなく、同実施の形態を適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
・上記第1の実施の形態における矩形状パターン11a〜11eの数、および上記第2の実施の形態における矩形状パターン51a〜51c、52a〜52c、53a〜53c、54a〜54c、55a〜55cの数は任意であり、垂直走査方向の行数、および水平走査方向の列数は上記各実施の形態における行数および列数に限定されない。垂直走査方向における行数を増加させれば、コントラストの測定精度をさらに向上させることができる。この場合には、矩形状パターンの水平走査方向の変位量である距離αを、水平走査方向における撮像素子22の画素ピッチPhを行数等分した距離に相当する画像評価用チャート上での距離に設定すればよい。一方、水平走査方向における列数を増加させれば、空間周波数がより高い領域におけるコントラストを求めることが可能となる。
【0035】
・上記第1の実施の形態では、矩形状パターン11a〜11eを、撮像素子22の垂直走査方向に沿って向かうにつれて距離αずつ水平走査方向に変位させて配置した。また、上記第2の実施の形態においても同様に、矩形状パターン51a、52a、53a、54a、55aのグループ、矩形状パターン51b、52b、53b、54b、55bのグループ、矩形状パターン51c、52c、53c、54c、55cのグループの各グループにおいて、矩形状パターン51a〜51c、52a〜52c、53a〜53c、54a〜54c、55a〜55cを、撮像素子22の垂直走査方向に沿って向かうにつれて距離αずつ水平走査方向に変位させて配置した。これら矩形状パターン11a〜11e、あるいは矩形状パターン51a〜51c、52a〜52c、53a〜53c、54a〜54c、55a〜55cが変位する方向は、水平走査方向に限定されず、その反対方向(例えば、図2(b)中の左方向)でもよい。このような方向に沿って矩形状パターンを配置するようにしても、カメラモジュール20を通じて撮影された画像のコントラストをより短時間で高精度に測定することができる。要するに、矩形状パターンの変位する方向は、矩形状パターンの並列方向に直交する方向(第2の方向)に沿った方向であればよい。
【0036】
・上記各実施の形態において、図中左右方向を「第1の方向」とするとともに、図中上下方向を「第2の方向」とし、走査手段(演算装置30)により、水平走査方向に沿った順に、垂直走査方向に沿って画像評価用チャートを走査するようにしてもよい。この場合には、画像評価用チャートにおいて、矩形状パターンを、撮像素子22の水平走査方向に沿って向かうにつれて、垂直走査方向における撮像素子の画素ピッチPvを列数等分した距離に相当する画像評価用チャート上での距離αずつ、垂直走査方向に変位して配置すればよい。このように矩形状パターンを配置するようにしても、カメラモジュール20を通じて撮影された画像のコントラストをより短時間で高精度に測定することができる。
【0037】
・上記各実施の形態において、矩形状パターンの水平走査方向の変位量である距離αは、撮像素子22の水平走査方向における画素ピッチPhを5等分した距離に相当する画像評価用チャート上での距離に限定されるものではない。例えば、第1の実施の形態においては、矩形状パターン11aに対する矩形状パターン11bの変位量を距離α1、矩形状パターン11bに対する矩形状パターン11cの変位量を距離α2、矩形状パターン11cに対する矩形状パターン11dの変位量を距離α3、矩形状パターン11dに対する矩形状パターン11eの変位量を距離α4とし、これら距離α1〜α4が全て同一の値とならなくてもよい。例えば、撮像素子22の水平走査方向における画素ピッチPhの画像評価用チャート上での距離をAとしたとき、距離α1=A/6、距離α2=A/6、距離α3=2×A/6、距離α4=A/6としてもよい。このようにしても、各矩形状パターン11a〜11eを、垂直走査方向に沿って向かうにつれて、同矩形状パターンの撮像素子22への投影像がその画素ピッチPhよりも短い距離(変位間隔)だけ水平走査方向に同画素ピッチPh内で変位するように配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態に係る画像評価装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】(a)は、同実施の形態に係る画像評価装置の画像評価用チャートについて、コントラスト評価用パターン形成領域の配置例を示す図、(b)は、矩形状パターンの配置態様を模式的に示す図。
【図3】同実施の形態に係る画像評価装置によって実行されるコントラスト演算処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図4】同実施の形態に係る画像評価装置において、撮像素子の撮像面を模式的に示す図。
【図5】本発明を具体化した第2の実施の形態に係る画像評価用チャートについて、その矩形状パターンの配置態様を模式的に示す図。
【図6】(a)は、従来のコントラスト測定方法において用いられる画像評価用チャートを模式的に示す図、(b)は、同画像評価用チャートを撮像する撮像素子からの出力を模式的に示すグラフ。
【符号の説明】
【0039】
1 画像評価装置
10 画像評価用チャート
11 コントラスト評価用パターン形成領域
11a〜11e、51a〜51c、52a〜52c、53a〜53c、54a〜54c、55a〜55c 矩形状パターン
20 カメラモジュール
21 撮像レンズ
22 撮像素子
30 演算装置
40 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像レンズおよび撮像素子を備えるカメラモジュールによって撮影される画像の評価を行う際に用いられる画像評価用チャートであって、
周囲と輝度の異なる矩形状パターンが第1の方向に沿って複数並列に配置されてなり、
これら矩形状パターンは、前記第1の方向に沿って向かうにつれて、同矩形状パターンの前記撮像素子への投影像が前記撮像素子の画素ピッチよりも短い変位間隔だけ前記第1の方向と直交する第2の方向に同画素ピッチ内で変位するように位置する
ことを特徴とする画像評価用チャート。
【請求項2】
前記矩形状パターンが、前記第2の方向に沿って複数配置されてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像評価用チャート。
【請求項3】
前記変位間隔は、前記撮像素子の画素ピッチを等分した量である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像評価用チャート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像評価用チャートと、
撮像レンズおよび撮像素子を備え、前記画像評価用チャートを撮影するカメラモジュールと、
前記カメラモジュールを通じ、前記画像評価用チャートの矩形状パターンの並列方向と直交する第2の方向に沿って当該画像評価用チャートを走査する走査手段と、
前記撮像素子からの出力をサンプリングするサンプリング手段と、
サンプリングにより得られる出力値の最大値と最小値とから振幅を算出する振幅算出手段と、
前記振幅のうち最大の振幅に基づいて、前記カメラモジュールによって撮影される画像のコントラストを算出するコントラスト算出手段と、
を備える画像評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−227999(P2008−227999A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64437(P2007−64437)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(597134108)株式会社長野光学研究所 (21)
【Fターム(参考)】