説明

画像読取装置及び画像形成装置

【課題】CCDセンサの出力信号にオフセットを与えるためのコンデンサを所定の目標電圧まで短時間で充電することができるようにする。
【解決手段】出力信号にオフセットを与えるためのコンデンサと、入力するCCDクランプ信号が示すタイミングでそのコンデンサ及びCCDセンサ201の出力部に第1の所定電圧Vaを与えるクランプ回路とを備えたCCDセンサ201と、そのCCDセンサ201の下流に接続されるAC結合コンデンサ203と、クランプゲート信号が示すタイミングで、第2の所定電圧をAC結合コンデンサ203に供給してそのAC結合コンデンサ203を充電するクランプ回路204とを備えた画像読取装置10において、クランプ回路204により第2の所定電圧をAC結合コンデンサ203に供給している間、CCDセンサ201の出力が一定の電圧に保たれるようにCCDセンサ201を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラインイメージセンサであるCCD(Charge Coupled Device)センサを備えた画像読取装置及びこの画像読取装置を画像読取手段として備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原稿等の画像情報を読み取るために、ラインイメージセンサであるCCDセンサが広く用いられている。
このCCDセンサは一般的に、読み取り対象からの反射光強度に応じた電荷を蓄積する光電変換素子と、その光電変換素子が蓄積した電荷を順次画素毎に転送する電荷転送回路と、その電荷転送回路から出力される電荷をアナログ電圧信号に変換して出力する電荷電圧変換回路などを備えている。
【0003】
そして、このようなCCDセンサの後段には、一般的に、CCDセンサの出力から得られたアナログ電圧信号に対して種々のアナログ処理を行うと共に、デジタル画像信号へと変換するアナログ・フロント・エンド(AFE)と呼ばれるアナログ処理用の各回路を集積化したICが接続されており、そのAFEとCCDとの間には、AC結合用のコンデンサが直列に挿入されている。
【0004】
そして、このコンデンサは、CCDセンサからのアナログ電圧信号にオフセットをもたせるために使用される。そして、このオフセットをもたせるためにコンデンサにはクランプ回路が接続されており、このクランプ回路に入力するクランプゲート信号がアサートされている期間に充電を行って、コンデンサに蓄えられる電荷を所定のクランプレベルにして、オフセットをもたせるようにしている。
なお、充電によりコンデンサにクランプレベルとして維持される電荷は、クランプレベルとクランプゲート信号のアサート期間の積分量となる。
【0005】
ここで、原稿読み取りを行う際に、クランプ回路は、CCDセンサの主走査1ラインの読み取り期間を構成する有効画素期間、黒画素期間及び空転送期間のうち、有効画素期間を除く黒画素期間や空転送期間でクランプゲート信号をアサートしてコンデンサを充電し、主走査1ラインの読み取り毎のオフセットレベルを一定に保つようにしている。そして、このオフセットしたクランプレベルを画像データの黒レベルとしている。
【0006】
しかし、画像読取装置の起動時には、コンデンサの電荷がない状態から充電を開始するため、クランプゲート信号の主走査1ライン中のアサート期間が短いと、クランプレベルまで充電するためには時間を要するという問題が以下の特許文献1に記載のように知られている。
そこで、特許文献1では、電源オンの直後には、クランプゲート信号のアサート期間を有効画素期間まで広げてクランプ期間を長くすることが提案されている(0048)。また、この特許文献1では、有効画素期間においてCCDから出力されるリセットノイズを含めてクランプ動作を行う手法と、有効画素期間においてCCDから出力されるリセットノイズを除いた領域でクランプ動作を行う手法を提案している。
また、特許文献2には、上記特許文献1に記載の問題を解決するための別の手法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、CCDセンサ内部の詳細構成及びCCDセンサ下流の詳細構成の一例について図6を参照しながら説明する。図6は、CCDセンサ201及びAFE205の内部ブロック図ならびにそれらの間の回路構成を示した図である。
まず、図6に示すように、CCDセンサ201は、フォトダイオード201a、電荷転送回路201b、電荷電圧変換回路201c、電荷リセット回路201d、内蔵クランプ回路201e及び緩衝増幅器201fを備えている。なお、以下の説明においてクランプするとは、信号のオフセットを予め設定されている所定の基準レベルに設定することを意味するものとする。このクランプは、例えば信号伝送路に直列に接続されたコンデンサを所定の電位差を持つように充電し、そのコンデンサを通して電気信号を伝送することによって実現できる、
【0008】
CCDセンサ201に含まれる各素子のうち、フォトダイオード201aは、読み取り対象からの反射光強度に応じた電荷を蓄積する光電変換素子である。このフォトダイオード201aが主走査方向1ライン中に画素数分配列されている。
電荷転送回路201bは、画素数分配列されたフォトダイオード201aと対応して画素数分配列された複数の転送レジスタからなり、フォトダイオード201aから受け取った電荷を一時的に蓄積して後段の転送レジスタに順次画素毎に転送するための回路である。
【0009】
電荷電圧変換回路201cは、電荷転送回路201bから出力される電荷をアナログ電圧信号に変換して出力する回路である。
電荷リセット回路201dは、電荷電圧変換回路201cの電荷をリセットする回路である。
【0010】
内蔵クランプ回路201eは、基準電位Vaを供給するための電源、スイッチ及びコンデンサから構成され、コンデンサを充電することにより、そのコンデンサを通る電気信号をクランプするための回路である。
ここで、CCDクランプ信号がアサートされるとスイッチがオンになり、コンデンサの下流(図で右側)の電極が基準電位Vaとなり、このアサート期間における上流の電極の電位との電位差(電圧)によって充電が行われる。
【0011】
例えば、CCDクランプ信号がアサート期間中に電荷電圧変換回路201cにより出力される電位が一定のVbだった場合、コンデンサにかかる電圧はVa−Vbとなり、十分な時間が経過するとこの電圧に応じた電荷が充電される。
そして、充電後に内蔵クランプ回路201eのスイッチを切ると、コンデンサは、電圧Va−Vbをもった電圧源として働き、スイッチを切った後も電荷電圧変換回路201cからの出力が一定のVbだった場合、コンデンサの放電量が無視できる程度の期間においてはコンデンサ下流の電位はVaとなる。
【0012】
同様に、電荷電圧変換回路201cの出力にリセット電位や画像信号が乗り、電圧が変動した場合でも、その電圧に、コンデンサに充電された電荷量に応じたオフセットを与えることができる。
緩衝増幅器201fは、CCDセンサ201の出力段に設けて、後段からの逆流や負荷変動の影響を吸収するためのものである。
【0013】
次に、バッファ202は、CCDセンサ201とAFE205の間のインピーダンス整合を行うためのものである。
なお、このバッファ202としては、例えばNPN型のバイポーラトランジスタを用いたエミッタフォロアなどにより構成するとよい。エミッタフォロアは、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いことから、CCDセンサ201とAFE205の間に挿入して、AFE205の入力段における低いインピーダンスと整合をとることができる。
【0014】
AC結合コンデンサ203は、両端の電極の電位差によりCCD出力信号(AFE205の入力側の電位)にオフセットを与えるためのコンデンサである。
クランプ回路204は、電源電圧Vccと二つの抵抗とスイッチから構成され、タイミング信号生成回路210により供給されるクランプゲート信号がアサートされたときにスイッチをONすることにより、AC結合コンデンサ203を充電して、CCD出力信号の電位を所望の電位にクランプするための回路である。
この充電は、クランプ回路204の2つの抵抗の比により分圧された電位Vcc′と、クランプゲート信号のアサート期間に出力されるCCDからのアナログの電位との電位差でAC結合コンデンサ203の両端の端子間に電圧をかけて行う。
【0015】
AFE205は、サンプルホールド回路206、図示しない可変ゲインアンプ及びA/Dコンバータ等を備え、それら回路を集積化したICである。なお、AFE205内部の回路としては、説明の便宜上、サンプルホールド回路206のみ示している。
このサンプルホールド回路206は、A/D変換を行う対象のアナログ電圧信号をサンプリングしてそのアナログ電圧信号を一時的に保持しておくための回路である。
【0016】
タイミング信号生成回路210は、制御部211′により設定されるタイミング設定に従ってCCDセンサ201及びクランプ回路204に供給する信号の立ち上がりあるいは立ち下がりを制御して各回路の動作タイミングをとるためのものである。
ここで、供給する信号の立ち上がり、立ち下がりを制御するとは、CCDセンサ201に対してはCCDシフト信号、CCD駆動信号、CCDリセット信号及びCCDクランプ信号のアサート又はネゲートタイミングを制御することを意味し、クランプ回路204に対しては、クランプゲート信号のアサート又はネゲートタイミングを制御することを意味するものとする。
制御部211′は、タイミング信号生成回路210にタイミング設定を行ってCCDセンサ201やクランプ回路204の動作タイミングを制御する制御手段である。
【0017】
次に、原稿読み取りの際に行うクランプ動作の一例について図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、原稿読み取りの際にCCDセンサ201及びクランプ回路204に入力される信号のタイミングチャートであり、図8は、図7のCCD出力及びクランプゲート信号の黒画素期間における部分的な拡大図である。
【0018】
なお、黒画素期間とは、主走査方向1ラインに画素数分配列されたフォトダイオード201aのうち、何画素か分を光学的にマスクして光を遮光しておき、そのマスクした部分のフォトダイオードから電荷を取り出す期間をいう。このため、黒画素期間における出力の信号レベルは、基本的に原稿の黒画像を読み取ったときの出力の信号レベルと等しくなる。
また、原稿読み取りの際におけるクランプ動作は、制御部211′がタイミング信号生成回路210を、図7のタイミングチャートに示したタイミングで各制御信号を出力するよう制御することにより実現される。
【0019】
図6に示したように、CCDセンサ201に入力する信号としては、CCDシフト信号、CCD駆動信号、CCDリセット信号及びCCDクランプ信号があり、クランプ回路204に入力する信号としては、クランプゲート信号がある。そして、これらの信号の立ち上がり、あるいは立ち下がりによりCCDセンサ201の駆動制御ならびにAC結合コンデンサ203への充電タイミングの制御が行われる。また、図7には、CCD出力のアナログ電圧信号の変化も示す。このCCD出力は、図6に示したCCD出力に表れるアナログ電圧信号の変化と同じものである。
また、図中では、主走査方向1ラインの読み取り期間を構成する黒画素期間、有効画素期間及び空転送期間のうち黒画素期間で充電を行う場合を示しており、空転送期間については説明の便宜上省略している。
【0020】
CCDセンサ201に入力される各信号のうち、CCDシフト信号は、フォトダイオード201aにそれぞれ蓄積された電荷を、電荷転送回路201bの転送レジスタにシフトさせるための信号である。このCCDシフト信号をアサートすることにより、1ラインに画素数分配列されたフォトダイオード201aから、電荷が全て電荷転送回路201bの転送レジスタ側にシフトする。
【0021】
CCD駆動信号は、CCDセンサ201の電荷転送回路201bの転送レジスタに蓄積された電荷を後段にある転送レジスタに順次画素毎に転送していくための2相駆動の信号である。
CCDリセット信号は、電荷リセット回路201dを駆動させて、電荷電圧変換回路201cの電荷をリセットするための信号である。
CCDクランプ信号は、内蔵クランプ回路201eのスイッチをONにしてコンデンサを充電するための信号である。
【0022】
そして、図7に示すタイミングでCCDセンサ201を駆動した場合、まずCCDシフト信号の立ち上がりにより(矢印A部分)、1ラインに画素数分配列されたフォトダイオード201aから、電荷が全て電荷転送回路201bの転送レジスタ側にシフトする。
次に、CCDリセット信号の立ち上がりにより(矢印B部分)、電荷電圧変換回路201cの電荷をリセットする。電荷をリセットすると、CCD出力にはリセットノイズが現れる(矢印C部分)。なお、図中のリセットノイズは全て同じ波形を示しているが、実際は鋭いスパイクをもったランダムノイズである。
【0023】
次に、CCDクランプ信号の立ち上がりにより(矢印D部分)、内蔵クランプ回路201eのスイッチがオンになるため、CCD出力は基準電位のVaとなる(矢印E部分)。その後、CCD駆動信号の立ち下がりのタイミングで(矢印F部分)、最終段の転送レジスタに溜まった電荷が電荷電圧変換回路201cによりアナログ電圧信号に変換されて、Vaにマイナスに重畳されてCCD出力にあらわれる(矢印G部分)。なお、CCDクランプ信号は、CCD駆動信号と同時に立ち下がる。
【0024】
これら信号の入力を繰り返すことにより、黒画素期間においては、原稿の黒画像を読み取った際に得られるアナログ電圧信号に相当するアナログ電圧信号を順次画素毎に取り出すようにしている。なお、黒画素期間におけるこの黒画像の読み取りに対応するアナログ電圧信号は、画素毎にほぼ一定である。
【0025】
一方で有効画素期間においては、CCDセンサ201に入力される各信号のタイミングは黒画素期間と同じであり、異なる点はCCD駆動信号の立ち下がりのタイミングでCCD出力に表れるアナログ電圧信号が、原稿からの反射光強度に応じたアナログ電圧信号である点である(矢印H部分)。なお、原稿からの反射光強度に応じたアナログ電圧は、図中では全ての画素で同じだが、実際は反射光量に応じて異なるものである。
【0026】
ここで、図8に、図7のCCD出力及びクランプゲート信号の黒画素期間における部分的な拡大図を示す。図8に示すように、黒画素期間におけるCCD出力は、(1)で示すリセットノイズと、(2)で示すフィードスルーレベルと、(3)で示す黒画素の信号領域とが1セットになって、これら信号が画素毎に連続して現れる。
【0027】
なお、(2)で示すフィードスルーレベルとは、CCDリセット信号により電荷電圧変換回路201cの電荷がリセットされた後から、CCD駆動信号が立ち下がってアナログ電圧信号が入力される前までの期間であるフィードスルー期間でのレベルを示すものである。このフィードスルー期間においては図7に示すようにCCDクランプ信号をアサートするようにしているので、CCDセンサ201が図6の構成である場合、フィールドスルーレベルはVaとなる。
【0028】
一方、図8に示すように、クランプゲート信号は、黒画素の信号領域に合わせてアサートし、この黒画素の信号領域におけるアナログ電圧と、Vcc′とでAC結合コンデンサ203に電位差をかけて充電を行い、黒画素の信号電圧を基準としたオフセット量を定めることができる。このため、有効画像領域において黒画素を読み取った場合のAFE205への入力画像信号の電圧はVcc′となり、黒ではない画素を読み取った場合には明るさに応じてVcc′から離れた信号となり、AFE205において、Vcc′を基準として各画素の画素値を求めることができる。
【0029】
以上、図7及び図8を参照しながら説明したクランプ動作の例では、原稿読み取りの際に、各画素と対応するタイミングで(例えば1画素毎に)、CCD駆動信号、CCDリセット信号及びCCDクランプ信号をCCDセンサ201に入力しつつ、そのCCDセンサ201から黒画素と対応するアナログ電圧信号が出力されるタイミングで、クランプ回路204がVcc′をAC結合コンデンサ203に印加してAC結合コンデンサ203を充電するようにCCDクランプ信号を制御するようにしている。
【0030】
このことにより、黒画素期間における黒画素の信号領域に合わせてAC結合コンデンサ203の充電を行うことができる。そして、AC結合コンデンサ203を通るCCDセンサ201の出力信号のオフセットを、黒画素の信号領域における出力信号電圧を基準とした所定の基準レベルにすることができる。
このようなクランプのためのAC結合コンデンサ203の充電動作を、以下「通常クランプ動作」と呼ぶことにする。
【0031】
しかしながら、背景技術の項で説明したように、画像読取装置の起動時には、AC結合コンデンサ203の電荷がない状態から充電を開始するため、起動時に図7及び図8で説明した通常クランプ動作を行っても、クランプゲート信号のアサート期間が短いので、AC結合コンデンサ203を充電するには時間を要するという問題があった。
【0032】
そして、この問題を解決するために、画像読取装置の起動時に、例えばクランプゲート信号のアサート期間を主走査1ラインの読み取り期間の全域とし、充電期間の比率を高めることによって、充電期間を短縮する手法が考えられる。この手法を「ベタクランプ動作」と呼ぶことにする。
【0033】
ここで、上記ベタクランプ動作の例について図9及び図10を参照しながら説明する。図9は、ベタクランプ動作を行った場合の図7と対応するタイミングチャートを示した図であり、図10は、ベタクランプ動作を行った場合のCCD出力及びクランプゲート信号の黒画素期間における部分的な拡大図である。
【0034】
この図9において、CCDセンサ201に入力する各信号の入力タイミング及びCCD出力に表れるアナログ電圧信号の変化は、図7の通常クランプ動作のタイミングチャートと同様であり、異なる点は、黒画素の信号領域だけでなく、AC結合コンデンサ203に高速に充電を行うために、全期間でクランプゲート信号をアサートするようにした点である。
【0035】
ベタクランプ動作の場合、全期間でクランプゲート信号をアサートするため、図10の拡大図に示すように、黒画素期間においては、CCD出力の(1)リセットノイズ、(2)フィードスルーレベル及び(3)黒画素の信号領域の各期間にそれぞれの電圧がAC結合コンデンサ203の上流側の電極に印加される。また、これ以外に、有効画素期間におけるCCD出力のリセットノイズ、フィールドスルーレベル及び原稿からの反射光強度に応じた信号領域の各電圧もAC結合コンデンサ203の上流側の電極に印加される。このため、クランプゲート信号をアサートしている期間においては、AC結合コンデンサ203の上流側の電極の電位が時々刻々と変化することになる。
【0036】
一方で、AC結合コンデンサ203の下流側の電極には、クランプゲート信号がアサートされてクランプ回路204のスイッチがONしているため、一定のVcc′が印加されることになる。このため、最終的にAC結合コンデンサ203に与えられる電位差は、上流側に印加される時々刻々と変化する信号の平均レベルの電位と、下流側の電極に印加される一定電位Vcc′との電位差となり(破線)、これがオフセットレベルとなる。
【0037】
以上のようなベタクランプ動作を行うことにより、主走査1ライン中の充電時間を長くすることができるため、図7及び図8で説明した通常クランプ動作の場合より、短時間でAC結合コンデンサ203を充電することができる。
【0038】
しかしながら、このベタクランプ動作では、アサート期間中に時々刻々と変化する上流側の信号の平均レベルの電位と、下流側の電極に印加される一定電位Vcc′との電位差がオフセットレベルとなるため、このオフセットレベルは黒画素の信号領域と対応するオフセットレベルとずれたレベルとなる。
また、有効画素期間における反射光強度に応じた信号領域は、外来光によって信号のレベルが変化するため、例えば起動時に画像読取装置のカバーが開いた状態でベタクランプ動作を実行するような場合、オフセットレベルが黒画素の信号領域と大きくずれる可能性がある。また、リセットノイズによっても大きくずれる可能性がある。
【0039】
このため、ベタクランプ動作後にオフセットレベルがある程度まで収束した後に、通常クランプ動作に切り替えてオフセットレベルのずれを徐々に補正する必要がある。
しかし、ずれの程度によっては黒画素の信号領域に対応した正常なオフセットレベルに安定するまでの時間が長くなり、起動後に原稿画像の読み取りが可能になるまでの時間が長くなるという問題があった。
【0040】
この点について、背景技術の項で説明した特許文献1では、クランプゲート信号のアサート期間を有効画素期間まで広げた際に、CCDから出力されるリセットノイズを除いた領域でクランプ動作を行うことが提案されており、この手法を適用すれば、リセットノイズによってオフセットレベルが正常なオフセットレベルと大きくずれるということはないと考えられる。
【0041】
しかし、特許文献1の手法では、有効画素期間の反射光強度に応じた信号領域を用いてクランプ動作を行うため、画像読取装置の状態によっては外来光が入射され、オフセットレベルが黒画素の信号領域に対応するものと大きくずれる可能性がある。このため、特許文献1に開示された発明を適用しても上記問題は解決できていない。
【0042】
そこで、この発明は、このような問題を解決し、CCDセンサを備えた画像読取装置において、CCDセンサの出力信号にオフセットを与えるためのコンデンサを所定の目標電圧まで短時間で充電することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0043】
この発明は、上記の目的を達成するため、読み取り対象からの反射光強度に応じた電荷を蓄積する光電変換素子と、入力する駆動信号が示すタイミングで上記光電変換素子が蓄積した電荷を順次転送する電荷転送回路と、上記電荷転送回路から出力される電荷をアナログ電圧信号である画像信号に変換して出力する電荷電圧変換回路と、入力するリセット信号が示すタイミングで上記電荷電圧変換回路の電荷をリセットするリセット回路と、出力信号にオフセットを与えるためのコンデンサと、入力するCCDクランプ信号が示すタイミングでそのコンデンサ及びそのCCDセンサの出力部に第1の所定電圧を与えるクランプ回路とを備えたCCDセンサと、上記CCDセンサの下流に接続され、上記CCDセンサの出力信号にオフセットを与えるためのコンデンサと、クランプ信号が示すタイミングで第2の所定電圧を上記コンデンサに供給するクランプ制御手段とを備えた画像読取装置において、上記クランプ制御手段が上記第2の所定電圧を上記コンデンサに供給している間、上記クランプ回路又は前記コンデンサに上記第1の所定電圧を上記CCDセンサの出力端子に供給させつつ、上記電荷の転送及びリセットが起こらないように、上記駆動信号、上記リセット信号、及び上記CCDクランプ信号を制御する第1のクランプ制御手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0044】
以上のようなこの発明の画像読取装置によれば、CCDセンサを備えた画像読取装置において、CCDセンサの出力信号にオフセットを与えるためのコンデンサを所定の目標電圧まで短時間で充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置が備える画像読取装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2に示した画像読取装置のハードウェア構成を示したブロック図である。
【図4】図2に示した画像読取装置の第1のクランプ動作においてCCDセンサ及びクランプ回路に入力される信号のタイミングチャートである。
【図5】図4の部分的な拡大図である。
【図6】CCDセンサ及びAFEの内部ブロック図ならびにそれらの間の回路構成を示した図である。
【図7】原稿読み取りの際にCCDセンサ及びクランプ回路に入力される信号のタイミングチャートである。
【図8】図7のCCD出力及びクランプゲート信号の黒画素期間における部分的な拡大図である。
【図9】ベタクランプ動作を行った場合の図7と対応するタイミングチャートである。
【図10】ベタクランプ動作を行った場合のCCD出力及びクランプゲート信号の黒画素期間における部分的な拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
まず、この発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、その画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0047】
図1において、画像形成装置100は、画像読取装置10及び本体部20を備えている。なお、図中破線で示すRは、原稿からの反射光の光路を示しており、Lは書き込み用のレーザ光の光路を示している。
このうち、画像読取装置10は、原稿を自動搬送してシートスルー読み取りを行うことができる画像読取装置である。この画像読取装置10の詳細な構成については後述する。
【0048】
本体部20は、給紙ユニット21、搬送ユニット22、レジストローラ23、画像形成ユニット24、書き込みユニット25、搬送ベルト26、定着ユニット27、排紙ユニット28及び排紙トレイ29を備えている。
このうち、給紙ユニット21は、3段ある各トレイにそれぞれ設けられた3つの給紙部からなり、各トレイに積載された原稿のうち最上面にある原稿を、いずれかの給紙部により一枚繰り出して搬送ユニット22に給紙する給紙手段である。
【0049】
搬送ユニット22は、複数の搬送ローラ及び図示しないガイド板などからなり、給紙ユニット21から給紙された原稿をレジストローラ23まで搬送するための搬送手段である。
レジストローラ23は、搬送ユニット22により搬送された原稿をいったん突き当てて止めることによりスキュー補正を行うとともに、スキュー補正後の原稿を、画像形成ユニット24の感光体ドラムと搬送ベルト26との間のニップ部に対して感光体ドラムに現像されたトナー像がくるタイミングに合わせて送り込むためのローラである。
【0050】
画像形成ユニット24は、感光体ドラム、この感光体ドラム表面を所定の電位に帯電するためのチャージャ、書き込みユニット25により形成された静電潜像に対してトナー像を現像させるための現像部などを一体として備えた画像形成手段である。
書き込みユニット25は、画像読取装置10で読み取った画像情報に応じたレーザ光Lを、帯電した感光体ドラム表面に照射して露光し、これによって感光体ドラム表面に静電潜像を形成するためのものである。
【0051】
搬送ベルト26は、感光体ドラムと等速で回転し、トナー像転写後の原稿を定着ユニット27に搬送するためのものである。
定着ユニット27は、定着ローラと加圧ローラからなり、搬送ベルト26により搬送された原稿を加熱加圧することにより原稿上の未定着トナーを定着させるための定着手段である。
排紙ユニット28は、定着後の原稿を排紙トレイ29にまで導くための排紙手段であり、排紙トレイ29は、排紙された原稿を積載保持するためのものである。
【0052】
以上のような画像形成装置100において、原稿に画像形成を行う場合、まずいずれかのトレイに積載された原稿のうち最上面にある原稿1枚を、給紙ユニット21で給紙し、搬送ユニット22によってレジストローラ23に当接する位置まで搬送される。
一方、画像読取装置10で読み取られた画像情報は、書き込みユニット25からのレーザ光Lによって感光体ドラムに書き込まれ、現像部を通過することによってトナー像が形成される。
【0053】
そして、原稿は、現像されたトナー像が転写位置にくるタイミングに合わせてレジストローラにより搬送され、感光体ドラムの回転と等速で回転する搬送ベルト26によって搬送されながら、感光体ドラム上のトナー像が原稿に転写されていく。
その後、定着ユニット27にて未定着トナーを定着させ、排紙ユニット28にて排紙トレイ219に排紙される。
【0054】
次に、画像読取装置10の詳細構成について図2を参照しながら説明する。なお、この画像読取装置10は、単体装置として構成することもできる。図2は、その画像読取装置の概略構成を示す図である。
図2において、この画像読取装置10は、自動原稿搬送装置(ADF)11、シートスルー読み取り用スリット12、コンタクトガラス13、基準白板14、第1キャリッジ15、第2キャリッジ16、レンズユニット17、及びCCDセンサ201を備えている。なお、図中破線で示すRは、原稿からの反射光の光路を示している。なお、CCDセンサ201は、図7に示したCCDセンサ201と同じものであるので、その説明を省略する。
【0055】
このうち、ADF11は、原稿台に載置された原稿P1を1枚ずつ順次自動的に給紙して搬送するための自動搬送手段である。
シートスルー読み取り用スリット12は、ADF11により自動搬送される原稿P1を読み取るための読み取り位置であって、光源15aからの照射光が通過する隙間である。なお、シートスルー読み取り用スリット12は、光源15aからの照射光を透過する部材(例えばガラス)にしてもよい。
【0056】
コンタクトガラス13は、原稿P2を載置するためのものである。
基準白板14は、後述するA/Dコンバータ207(図3参照)のダイナミックレンジを有効利用するために、CCDセンサ201から出力される信号レベルを所定の基準レベルに調整するために原稿の読み取りに先立って読み取られる基準部材である。
【0057】
第1キャリッジ15は、原稿露光用の光源15a及び第1反射ミラー15bを含んでおり、図示しないステッピングモータにより駆動され、コンタクトガラス13上に載置された原稿P2を矢示A方向(副走査方向)に移動しながら光学走査することができる。また、シートスルー読み取り用スリット12の読み取り位置に停止して、ADF11により自動搬送される原稿P1の画像読み取りに用いることもできる。
なお、光源としては、LEDや蛍光ランプなど公知の照明手段を用いることができる。
【0058】
第2キャリッジ16は、第2反射ミラー16aと第3反射ミラー16bとを含んでおり、第1キャリッジ15と同様に図示しないステッピングモータにより駆動され、第1キャリッジ15に追随して矢示A方向に移動するものである。
レンズユニット17は、第1反射ミラー15bから第3反射ミラー16bに順次反射偏向された反射光をCCDセンサ201に集光して結像させるためのものである。
【0059】
このような画像読取装置10において、コンタクトガラス13に載置された原稿P2の画像を読み取る場合、光源15aを点灯し、第1キャリッジ15及び第2キャリッジ16を図示しないステッピングモータにより右方向に移動走査して原稿P2を読み取る。
一方、ADF11により搬送される原稿P1を読み取る場合、光源15aを点灯し、第1キャリッジ15をシートスルー読み取り用スリット12の読み取り位置にて停止した状態で待機しておく。そして、ADF11の複数のローラによって原稿P2を矢印Bの方向へガイドすることで、シートスルー読み取り用スリット12の位置において原稿P2を走査する。
【0060】
これら何れの読み取り方式においても、光源15aにより照明された原稿からの反射光を、第1反射ミラー15bから第3反射ミラー16bへ順次反射偏向させて、レンズユニット17に導き、CCDセンサ201の受光面上に縮小結像させ、光電変換によりアナログ電圧を出力するようにしている。そして、CCDセンサ201からのアナログ電圧をAFE205にIC化された様々な回路により処理することでデジタルの画像データを得るようにしている。
【0061】
次に、画像読取装置10内部のハードウェア構成について図3を参照しながら説明する。
図3は、その画像読取装置10のハードウェア構成を示したブロック図である。なお、図3におけるハードウェア構成において、図6と同じものについては同じ符号を付している。
図3に示すように、画像読取装置10は、内部のハードウェアとして、CCDセンサ201、バッファ202、AC結合コンデンサ203、クランプ回路204、AFE205、タイミング信号生成回路210及び制御部211を備えている。
【0062】
これらのうち、CCDセンサ201については、図6に示したものと同じものであり、その内部構成も同じものである。すなわち、図3に示すCCDセンサ201は、内部にフォトダイオード201a、電荷転送回路201b、電荷電圧変換回路201c、電荷リセット回路201d、内蔵クランプ回路201e及び緩衝増幅器201fを備えており、これら各回路にタイミング信号生成回路210から対応する各信号(CCDシフト信号、CCD駆動信号、CCDリセット信号及びCCDクランプ信号)が供給されている。
また、バッファ202、AC結合コンデンサ203及びクランプ回路204は、図6に示したものと同じものなので、その説明を省略する。
【0063】
AFE205も、基本的には図6に示したものと同じものであるが、図3においては、サンプルホールド回路206以外に、可変ゲインアンプ207、A/Dコンバータ208及び画像処理部209の各回路をIC化している。
このうち、可変ゲインアンプ207は、サンプルホールド後のアナログ電圧信号を設定したゲイン(増幅率)で増幅する可変増幅器である。設定するゲインは、画像読取装置の起動時に基準白板14を読み取って得られたアナログ電圧信号のレベルが目標とする白レベルになるように定める。このようにゲインを定めることで、A/Dコンバータ208のダイナミックレンジを広く利用することができる。
【0064】
A/Dコンバータ208は、可変ゲインアンプ207によって増幅されたアナログ電圧信号をデジタル信号に変換するための回路である。
画像処理部209は、A/Dコンバータ208から出力されたデジタル信号に対して、シェーディング補正やガンマ補正等の各種データ処理を行い、画像データを生成するためのものである。この画像データは、画像形成装置100の書き込みユニット25へ送信して画像形成に用いる、制御部211を介して図示しない記憶部に保存する、外部装置へ送信する等の種々の用途に用いることができる。
【0065】
タイミング信号生成回路210は、図6に示したものと対応するものであり、この図3においては、CCDセンサ201、クランプ回路204以外にAFE205のサンプルホールド回路206、A/Dコンバータ208及び画像処理部209にも各回路の動作タイミングをとるための信号を入力するようにしている。このことにより、AFE205のサンプルホールド回路206がアナログ画像信号に対してサンプルホールドを行うタイミング、A/Dコンバータ208がA/D変換を行うタイミング、画像処理部209が画像処理を行うタイミングもそれぞれ制御するようにしている。
【0066】
制御部211は、タイミング信号生成回路210にタイミング設定を行ってCCDセンサ201やクランプ回路204等の動作タイミングを制御する制御手段であって、可変ゲインアンプ207にゲイン設定を行い、かつ画像処理部209が行う種々の画像処理を制御して、画像読取装置10が読み取った原稿の画像データを得るためのものである。
なお、この実施形態においては、制御部211は、画像読取装置10を制御するだけでなく、本体部20の図示しないモータやセンサ等を適宜制御して、プリント用の原稿の給紙搬送、転写、定着及び排紙等も行い画像形成装置100全体を制御するものとする。
【0067】
以上図2及び図3により説明した画像読取装置10において、一つの特徴的な点は、クランプ動作のために行うAC結合コンデンサ203の充電時の各信号の制御である。
そこで、以下この点に関連して、画像読取装置10が行うクランプ動作の一例について、図4及び図5を参照しながら説明する。
図4は、画像読取装置10の第1のクランプ動作においてCCDセンサ201及びクランプ回路204に入力される信号のタイミングチャートであり、図5は、図4の部分的な拡大図である。
なお、図4において示す、CCDセンサ201に入力する各信号及びAC結合コンデンサ203に入力するクランプゲート信号の説明については、図7で説明した通りなので、その説明を省略する。
【0068】
図4に示すように、第1のクランプ動作では、黒画素期間及び有効画素期間双方で、リセットノイズや有効画素期間に出力される反射光強度に応じたアナログ電圧信号の影響を受けないように、CCDシフト信号、CCD駆動信号及びCCDリセット信号をアサートしないようにするとともに、CCDクランプ信号のみアサートしてクランプ動作を実行するようにしている。
このような動作は、制御部211がタイミング信号生成回路210に対して所要のタイミング設定を行うことにより、行うことができる。
【0069】
ここで、CCDクランプ信号がアサートされると、図6の内蔵クランプ回路201eのスイッチが閉じてコンデンサの下流の電極及びCCDセンサ201の出力部に基準電位のVaが印加される。この状態では、CCDセンサ201の出力電圧は、基準電位のVaとなる。
また、このとき、CCDシフト信号、CCD駆動信号及びCCDリセット信号をいずれもアサートしていないので、コンデンサの上流側に電極に印加される電荷電圧変換回路201cからの出力は一定の電位となり、Vaとその一定の電位との電位差までコンデンサが充電される。
【0070】
そして、コンデンサ充電後には、CCDクランプ信号がネゲートされて内蔵クランプ回路201eのスイッチがOFFしても、電荷電圧変換回路201cからの出力が一定の電位だった場合、コンデンサの下流側の電位はVaになって、CCD出力として、CCDクランプ信号がアサートされている時と同じ電位Vaの信号が出力される。
なお、第1のクランプ動作においては、スイッチがOFFした後、コンデンサの放電により徐々にフィードスルーレベルが下がることも考慮して、CCDクランプ信号を一定間隔で繰り返しアサートして再充電するようにしている。
【0071】
このように、第1のクランプ動作では、CCDクランプ信号をアサートして所定電圧Vcc′をAC結合コンデンサ203に供給している間、CCDクランプ信号を一定間隔でアサートすることにより、アサート期間中は電源から、ネゲート期間中はコンデンサから、CCDセンサ201の出力に基準電位Vaを出力させることができる。
【0072】
またこのとき、CCD駆動信号とCCDリセット信号をアサートしないようにしているため、クランプ回路201eが備えるコンデンサの上流側の電極には、一定のフィールドスルーレベルが印加される。このことにより、上述のように、CCDクランプ信号のネゲート中も、コンデンサから、CCDセンサ201の出力に基準電位Vaを出力せることができる。
【0073】
そしてこのCCDセンサ201の出力が、AC結合コンデンサ203の上流側の電極に供給される。
このためAC結合コンデンサ203に対しては、両方の電極にそれぞれVcc′とVaという一定の電圧を印加して充電を行うことができる。
【0074】
このVcc′とVaとで充電される充電電位によるオフセットレベルは、Vcc′と黒画素の信号領域におけるアナログ電圧とで充電した充電電位による、黒レベルの基準として用いる正常なオフセットレベルと近くなる。これは、図8等に見られるように、フィードスルーレベルの値と黒画素の信号領域におけるアナログ電圧の値とが近いことによる。このため、図9及び図10に示したような、リセットノイズや反射光強度に応じたアナログ電圧信号を含めて充電を行うベタクランプ動作と比較すると、オフセットレベルのずれを、リセットノイズや外来光の影響に依ることなく小さくすることができる。
【0075】
しかも、この第1のクランプ動作の場合、フォトダイオード201aからの電荷の転送が起こらないように制御しているので、たとえ画像読取装置10のカバーが空いていてフォトダイオード201aに光が入射するような状態であっても、外来光の影響を受けることがない。
【0076】
このため、まず第1のクランプ動作によりAC結合コンデンサ203の充電電圧を黒レベルの基準として用いることができる充電電圧に近づけた後に、この第1のクランプ動作を無効にして、図7及び図8に示した通常クランプ動作(第2のクランプ動作)に切り替えることで、AC結合コンデンサ203の充電電圧を、図9及び図10に示したベタクランプ動作で行う場合よりも早く、黒レベルの基準として用いる充電電圧に合わせることができる。
従って、第1のクランプ動作を利用することにより、AC結合コンデンサ203の充電に要する時間を短縮することができ、AC結合コンデンサ203が放電している状態から原稿画像の読み取りが可能になるまでの時間を短縮することができる。
【0077】
従って、AC結合コンデンサ203が放電していると考えられる画像読み取り装置の立ち上げ時にこの第1のクランプ動作を利用することが有用である。ここで、立ち上げ時とは、電源投入時や、省電力状態あるいは待機状態から読み取り可能状態への復帰時等である。
【0078】
また、第1のクランプ動作では、CCDセンサ201の電荷の転送及びリセットを行わないので、CCDセンサ201を駆動するための消費電力が少なくて済む。
このため、この第1のクランプ動作を画像読取装置10の立ち上げ時だけでなく、他の期間でも行うことで、CCDセンサ201の消費電力を削減することが考えられる。
【0079】
例えば、画像読取装置10の待機状態において第1のクランプ動作を行うことによって、AC結合コンデンサ203の充電電圧を、黒レベルの基準として用いることができる充電電圧に近い状態を維持しながら、CCDセンサ201の消費電力を低減することができる。なお、ここでいう待機状態とは、すぐに画像読取ができるようにスタンバイして待機している状態を意味するものとする。
【0080】
このように待機状態でも、第1のクランプ動作を行うようにすることで、画像読取装置10の電源をオフするまでのトータルの待機電力を削減することができる。
そして、原稿の読み取りを指示された場合に、第1のクランプ動作を無効にして、通常クランプ動作に切り換えることで、速やかに、AC結合コンデンサ203の充電電圧を、黒レベルの基準として用いる充電電圧に合わせることができる。
【0081】
また、例えば原稿読み取りが終了した後については、タイマーなどの計時手段を設けて、原稿読み取り後の経過時間を測定し、所定時間以上経過した時に、通常クランプ動作を無効にして、第1のクランプ動作に戻すようにするとよい。
このようにすれば、ユーザがセットした原稿を連続して読み取るような場合に、1枚目の原稿を読み取った後すぐに第1のクランプ動作に戻ってしまうことがなく、通常クランプ動作のまま連続スキャンを実行できるので、次の原稿のスキャン開始までの時間を短縮することができる。第1のクランプ動作では、わずかとはいえ、AC結合コンデンサ203の充電電圧が黒レベルの基準として用いる充電電圧からずれるので、すぐに読み取りを行う場合には、通常クランプ動作を続けることが望ましい。
【0082】
以上で実施形態の説明を終了するが、この発明において、画像読取装置10の構成、制御部211がCCDセンサ201及びクランプ回路204に入力する各信号の入力タイミング、第1のクランプ動作の開始タイミングが前述した実施形態で説明したものに限られないことはもちろんである。
【0083】
例えば、図4のタイミングチャートでは、クランプゲート信号をアサートしている期間では、CCDシフト信号、CCD駆動信号及びCCDリセット信号を入力しないようにしているが、CCDシフト信号を入力しないようにすることは必須ではなく、少なくともCCD駆動信号及びCCDリセット信号を入力しないようにすればよい。CCDシフト信号が入力されても、CCD駆動信号が入力されない限り電荷の転送がなされないからである。
【0084】
また、同じく図4のタイミングチャートでは、CCDクランプ信号は、通常クランプ動作と同様のタイミングでCCDセンサ201の内蔵クランプ回路201eに入力するようにしているが、これは必須ではなく、クランプゲート信号をアサートしてAC結合コンデンサ203に充電を行っている間、CCD出力を一定のフィードスルーレベルに保つことができれば、図4に示したタイミング以外で入力しても構わない。
【0085】
図4の例では、内蔵クランプ回路201eのコンデンサの放電を考慮して所定間隔でCCDクランプ信号をアサートするようにしているが、例えば常にCCDクランプ信号をアサートして一定のフィードスルーレベルを出力させたり、あるいは1度フィードスルーレベルにクランプした電位が放電などにより下がらないような場合は、1度だけCCDクランプ信号を入力するようにしてもよい。
【0086】
また、タイミング信号生成回路210に対して行う制御部211のタイミング設定が、制御部211のソフトウェア動作により行われる場合、タイミング信号生成回路210自体を、初期設定が図4に示した第1のクランプ動作を行うようなICで構成することで、制御部211のソフトウェアが起動する前から第1のクランプ動作を実行することができ、電源オン時のクランプ時間をさらに短縮することができる。
【0087】
また、CCDセンサ201を備えた画像読取装置10を画像読取手段としてデジタル複写機、ファクシミリ装置、あるいはこれらの機能を複合した複合機等の画像形成装置に備えてもよいことはもちろんである。
また、上述した実施形態及び変形例の構成は、互いに矛盾しない範囲で任意に組み合わせて適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
100:画像形成装置、10:画像読取装置、11:ADF、12:シートスルー読み取り用スリット、13:コンタクトガラス、14:基準白板、15:第1キャリッジ、16:第2キャリッジ、17:レンズユニット、20:本体部、21:給紙ユニット、22:搬送ユニット、23:レジストローラ、24:画像形成ユニット、25:書き込みユニット、26:搬送ベルト、27:定着ユニット、28:搬送ユニット、29:排紙トレイ、201:CCD、202:バッファ、203:AC結合コンデンサ、204:クランプ回路、205:AFE、206:サンプルホールド回路、207:可変ゲインアンプ、208:A/Dコンバータ、209:画像処理部、210:タイミング信号生成回路、211:制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【特許文献1】特開2008−236247
【特許文献2】特許第3778402号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み取り対象からの反射光強度に応じた電荷を蓄積する光電変換素子と、入力する駆動信号が示すタイミングで前記光電変換素子が蓄積した電荷を順次転送する電荷転送回路と、前記電荷転送回路から出力される電荷をアナログ電圧信号である画像信号に変換して出力する電荷電圧変換回路と、入力するリセット信号が示すタイミングで前記電荷電圧変換回路の電荷をリセットするリセット回路と、出力信号にオフセットを与えるためのコンデンサと、入力するCCDクランプ信号が示すタイミングで該コンデンサ及び当該CCDセンサの出力部に第1の所定電圧を与えるクランプ回路とを備えたCCDセンサと、
前記CCDセンサの下流に接続され、前記CCDセンサの出力信号にオフセットを与えるためのコンデンサと、
クランプ信号が示すタイミングで第2の所定電圧を前記コンデンサに供給するクランプ制御手段とを備えた画像読取装置であって、
前記クランプ制御手段が前記第2の所定電圧を前記コンデンサに供給している間、前記クランプ回路又は前記コンデンサに前記第1の所定電圧を前記CCDセンサの出力端子に供給させつつ、前記電荷の転送及びリセットが起こらないように、前記駆動信号、前記リセット信号、及び前記CCDクランプ信号を制御する第1のクランプ制御手段を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記第1のクランプ制御手段による信号の制御を、当該画像読取装置の立ち上げ時に行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像読取装置であって、
各画素と対応するタイミングで前記駆動信号及び前記リセット信号を前記CCDセンサに入力しつつ、該CCDセンサから黒画素と対応する画像信号が出力されるタイミングで、前記クランプ制御手段が前記第2の所定電圧を前記コンデンサに供給するよう前記クランプ信号を制御する第2のクランプ制御手段を備え、
原稿の読み取りを指示された場合に、前記第1のクランプ制御手段による信号の制御を無効にした状態で、前記第2のクランプ制御手段による信号の制御を行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像読取装置であって、
計時手段を備え、
前回の原稿読み取りから前記計時手段により計時した時間が所定時間以上経過した時に、前記第2のクランプ制御手段による信号の制御を無効にすると共に、前記第1のクランプ制御手段による信号の制御を開始することを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
読み取り対象からの反射光強度に応じた電荷を蓄積する光電変換素子と、該光電変換素子が蓄積した電荷に応じた画像信号を出力する手段と、出力信号にオフセットを与えるためのコンデンサ及び当該CCDセンサの出力部に第1の所定電圧を与えるクランプ回路とを備えたCCDセンサと、
前記CCDセンサの下流に接続されたコンデンサと、
クランプ信号が示すタイミングで、第2の所定電圧を前記コンデンサに供給して該コンデンサを充電するクランプ制御手段とを備えた画像読取装置であって、
前記クランプ制御手段により前記第2の所定電圧を前記コンデンサに供給している間、前記CCDセンサの出力が前記クランプ回路及び前記コンデンサにより一定の電圧に保たれるように前記CCDセンサを制御する第1のクランプ制御手段を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像読取装置であって、
前記第1のクランプ制御手段による信号の制御を、当該画像読取装置の立ち上げ時に行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の画像読取装置であって、
前記CCDセンサに各画素と対応するタイミングで画素毎の前記画像信号を出力させつつ、該CCDセンサから黒画素と対応する画像信号が出力されるタイミングで前記クランプ制御手段が前記第2の所定電圧を前記コンデンサに供給するよう前記クランプ信号を制御する第2のクランプ制御手段を備え、
原稿を読み取り中は、前記第1のクランプ制御手段による信号の制御を無効にした状態で、前記第2のクランプ制御手段による信号の制御を行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像読取装置であって、
計時手段を備え、
前回の原稿読み取りから前記計時手段により計時した時間が所定時間以上経過した後に、前記第2のクランプ制御手段による信号の制御を無効にすると共に、前記第1のクランプ制御手段による信号の制御を開始する。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像読取装置を画像読取手段として備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−66087(P2013−66087A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203982(P2011−203982)
【出願日】平成23年9月19日(2011.9.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】