説明

画像読取装置

【課題】原稿が原稿台から浮き上がった場合であっても、解像度の低下を抑制する。
【解決手段】画像読取装置100は、原稿Gを載置するための原稿台14と、原稿Gに光を照射するライン状光源16と、原稿Gから反射した光を集光するロッドレンズアレイ11と、ロッドレンズアレイ11を透過した光を受光するラインイメージセンサ20とを備える。原稿台14の原稿載置面14aからラインイメージセンサ20の受光面20aまで距離は、ロッドレンズアレイ11の最適共役長よりも短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドレンズアレイを用いた画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナ等の画像読取装置として、正立等倍結像光学系を用いた装置が知られている。正立等倍結像光学系を用いた場合、縮小結像光学系の場合よりも装置をコンパクトにすることができる。画像読取装置において、正立等倍結像光学系は、ライン状光源と、正立等倍レンズアレイと、ラインイメージセンサから構成される。正立等倍結像光学系における正立等倍レンズアレイとしては、従来、複数のロッドレンズを配列して構成されたロッドレンズアレイが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−178512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像読取装置が読み取る原稿には、うねりやしわ等がある場合がある。このような原稿を原稿台に置いた場合、原稿の一部が原稿台から浮いた状態となり、焦点ずれが生じる可能性がある。その結果、原稿台から浮いた箇所については解像度の低下が生じ、均一な解像度の画像を取得することが難しくなる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、原稿が原稿台から浮き上がった場合であっても、解像度の低下を抑制することのできる画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の画像読取装置は、原稿を載置するための原稿台と、原稿に光を照射するライン状光源と、原稿から反射した光を集光するロッドレンズアレイと、ロッドレンズアレイを透過した光を受光するラインイメージセンサと、を備える画像読取装置であって、原稿台の原稿載置面からラインイメージセンサの受光面まで距離がロッドレンズアレイの最適共役長よりも短い。また、原稿台の原稿載置面とロッドレンズアレイとの間の距離と、ロッドレンズアレイとラインイメージセンサの受光面との間の距離が等しくてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、原稿が原稿台から浮いた場合の解像度の低下を抑制することができ、その結果、解像度の変動の少ない、均一な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る画像読取装置を説明するための図である。
【図2】本実施形態に係る画像読取装置の正立等倍結像光学系を説明するための図である。
【図3】物体側作動距離および像側作動距離と、MTFとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る画像読取装置100を説明するための図である。図1に示すように、画像読取装置100は、光走査ユニット10、ガラス板で形成された原稿Gを載置するための原稿台14、光走査ユニット10を走査する駆動機構(図示せず)、光走査ユニット10によって読み取られたデータを処理する画像処理部(図示せず)等を備える。
【0010】
光走査ユニット10は、原稿台14の原稿載置面14a上に載置された原稿Gに光を照射するライン状光源16と、原稿Gからの反射光を集光するロッドレンズアレイ11と、ロッドレンズアレイ11により集光された光を受けるラインイメージセンサ(光電変換素子)20と、ライン状光源16、ロッドレンズアレイ11およびラインイメージセンサ20を収容する筐体12とを備える。
【0011】
筐体12は、略直方体形状に形成されており、筐体12の上面には第1凹部12aおよび第2凹部12bが形成され、下面には第3凹部12cが形成されている。筐体12は、樹脂の射出成形により形成される。射出成形により筐体12を形成することにより、筐体12を容易に形成でき、安価とすることができる。第1凹部12a内には、ライン状光源16が斜めに固定されている。ライン状光源16は、照射光の光軸が、ロッドレンズアレイ11の光軸Axと原稿載置面14aとの交点または交点近傍を通るように固定される。
【0012】
第2凹部12bには、ロッドレンズアレイ11が固定されている。第3凹部12cには、ラインイメージセンサ20を備えた基板22が取り付けられている。基板22は、その上面が第3凹部12cに設けられた段差部12dに当接するように固定されている。
【0013】
ロッドレンズアレイ11は、2枚の保持部材15の間に、複数のロッドレンズ13を一列または二列に配列したものである。ロッドレンズアレイ11は、そのレンズ配列方向が主走査方向に一致するように画像読取装置100に装着される。ロッドレンズアレイ11は、上方に位置する原稿Gから反射されたライン状の光を受けて、下方に位置する像面、すなわちラインイメージセンサ20の受光面20aに正立等倍像を形成する。画像読取装置100は、駆動機構を用いて光走査ユニット10を副走査方向に走査することにより、原稿Gを読み取ることができるようになっている。
【0014】
図2は、画像読取装置100の正立等倍結像光学系を説明するための図である。図2は、原稿台14、ロッドレンズアレイ11およびラインイメージセンサ20の位置関係を表している。
【0015】
なお、本実施形態においては、ロッドレンズアレイ11と受光面20aの間には空気しか存在しないが、ロッドレンズアレイ11と原稿載置面14aとの間には、原稿台14としてのガラス板が存在する。ガラス板は、空気よりも屈折率が高いため、ロッドレンズアレイ11の原稿台14側の焦点距離は、ラインイメージセンサ20側よりも長くなる。例えば、空気の屈折率を1、ガラス板の屈折率を1.52とすれば、ロッドレンズアレイ11の原稿台14側の焦点距離は、ガラス板の厚みの0.52倍分だけラインイメージセンサ20側よりも長くなる。従って、以下の記載において「距離」について述べる場合、その距離は、空気中での距離に換算したものであることに留意されたい。
【0016】
本実施形態において、原稿台14、ロッドレンズアレイ11およびラインイメージセンサ20は、原稿台14の原稿載置面14aからラインイメージセンサ20の受光面20aまでの距離(使用共役長Tcと称する)が、ロッドレンズアレイ11の最適共役長Tc’よりも短くなるように配置される。
【0017】
原稿台14の原稿載置面14aとロッドレンズアレイ11との間の距離(物体側作動距離と称する)をLo、ロッドレンズアレイ11とラインイメージセンサ20の受光面20aとの間の距離(像側作動距離と称する)をLi、ロッドレンズアレイ11を構成するロッドレンズのレンズ長をZとしたとき、使用共役長Tcは、
Tc=Z+Lo+Li
となる。また、原稿台14、ロッドレンズアレイ11およびラインイメージセンサ20は、物体側作動距離Loと像側作動距離Liが等しくなるように配置される。
【0018】
また、ロッドレンズアレイ11の最適共役長Tc’は、MTF(Modulation Transfer Function)が最大となるときの原稿載置面と受光面の間の距離として規定される。最適共役長Tc’は、ロッドレンズアレイ11を構成するロッドレンズの光学特性によって定まる。図2には、最適共役長Tc’のときの原稿載置面が符号14a’として、また受光面が符号20a’として図示されている。最適共役長Tc’のときの原稿載置面14a’とロッドレンズアレイ11との間の距離(最適物体側作動距離と称する)をLo’と、ロッドレンズアレイ11と最適共役長Tc’のときの受光面20a’との間の距離(最適像側作動距離と称する)をLi’としたとき、最適共役長Tc’は、
Tc’=Z+Lo’+Li’
となる。最適物体側作動距離Lo’と最適像側作動距離Li’は共役関係にあるため、Lo’=Li’である。
【0019】
図3は、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liと、MTFとの関係を示す図である。図3は、最適共役長Tc’=9.74mm、最適物体側作動距離Lo’=最適像側作動距離Li’=2.71mmのロッドレンズアレイ11について、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liを様々な値に変化させたときのMTFをシミュレーションした結果を示す。
【0020】
図3に示すように、物体側作動距離Lo=像側作動距離Li=2.71mmとしたとき(図3の点A)、使用共役長Tcは最適共役長Tc’と等しくなり、MTFは最大の84%となる。通常の画像読取装置は、最大のMTFを達成するために、使用共役長Tc=最適共役長Tc’となるように設計される。以下においては、使用共役長Tc=最適共役長Tc’と設計された画像読取装置を比較例として、本実施形態に係る画像読取装置100を説明する。
【0021】
比較例に係る画像読取装置において、原稿Gが原稿載置面14aから0.1mm浮いた場合(点K)、MTFは74%となり、点Aよりも10%低下する。点AのMTFとの比は0.88である。また、原稿Gが原稿載置面14aから0.2mm浮いた場合(点D)、MTFは38%となり、点Aよりも46%低下する。点AのMTFとの比は、0.45である。
【0022】
図3に示すように、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liを最適物体側作動距離Lo’および最適像側作動距離Li’(点A)からそれぞれ0.2mm短くし、物体側作動距離Lo=像側作動距離Li=2.51mmとした場合(点B)、MTFは74%となった。ここで、原稿Gが原稿載置面14aから0.1mm浮いた場合(点L)、MTFは71%となり、点Bよりも3%低下する。点BのMTFとの比は、0.96である。また、原稿Gが原稿載置面14aから0.2mm浮いた場合(点C)、MTFは41%となり、点Bよりも33%低下する。点BのMTFとの比は、0.55である。
【0023】
また、図3に示すように、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liを最適物体側作動距離Lo’および最適像側作動距離Li’(点A)からそれぞれ0.1mm短くし、物体側作動距離Lo=像側作動距離Li=2.61mmとした場合(点I)、MTFは79%となった。ここで、原稿Gが原稿載置面14aから0.1mm浮いた場合(点J)、MTFは75%となり、点Iよりも4%低下する。点IのMTFとの比は、0.95である。また、原稿Gが原稿載置面14aから0.2mm浮いた場合(点M)、MTFは41%となり、点Iよりも38%低下する。点IのMTFとの比は、0.52である。
【0024】
このように、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liをそれぞれ最適物体側作動距離Lo’および最適像側作動距離Li’よりも短くした場合、原稿Gに浮きが生じたときのMTFの低下量は、比較例よりも小さくなる。
【0025】
次に、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liをそれぞれ最適物体側作動距離Lo’および最適像側作動距離Li’よりも長くした場合について考察する。図3に示すように、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liを最適物体側作動距離Lo’および最適像側作動距離Li’(点A)からそれぞれ0.1mm長くし、物体側作動距離Lo=像側作動距離Li=2.81mmとした場合(点N)、MTFは79%となった。ここで、原稿Gが原稿載置面14aから0.1mm浮いた場合(点H)、MTFは70%となり、点Bよりも9%低下する。点NのMTFとの比は、0.88である。また、原稿Gが原稿載置面14aから0.2mm浮いた場合(点P)、MTFは30%となり、点Nよりも49%低下する。点NのMTFとの比は、0.38である。
【0026】
また、図3に示すように、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liを最適物体側作動距離Lo’および最適像側作動距離Li’(点A)からそれぞれ0.2mm長くし、物体側作動距離Lo=像側作動距離Li=2.91mmとした場合(点O)、MTFは74%となった。ここで、原稿Gが原稿載置面14aから0.1mm浮いた場合(点Q)、MTFは60%となり、点Oよりも14%低下する。点OのMTFとの比は、0.81である。
【0027】
このように、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liをそれぞれ最適物体側作動距離Lo’および最適像側作動距離Li’よりも長くした場合、原稿Gに浮きが生じたときのMTFの低下量は、比較例と殆ど変わらないか、または比較例よりも大きくなる。
【0028】
以上から分かるように、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liをそれぞれ最適物体側作動距離Lo’および最適像側作動距離Li’よりも短くすることにより、言い換えると使用共役長Tcをロッドレンズアレイ11の最適共役長Tc’よりも短くすることにより、MTFは比較例よりも若干低下するものの、原稿Gに浮きが生じたときのMTFの低下量を比較例よりも小さくすることができる。
【0029】
例えば原稿にうねりやしわがあった場合、原稿Gの一部が原稿載置面14aから浮いてしまう可能性がある。比較例に係る原稿読取装置は、使用共役長Tc=最適共役長Tc’であるため、原稿Gに浮きが生じていない場合には高い解像度で原稿Gを読み取ることができるが、原稿Gの一部に浮きが生じた場合、その浮いた箇所はMTFが大きく低下し、解像度が大幅に低下する。画像中において解像度の低下が大きい箇所がある場合、その箇所は非常に目立ち、画像の品質が低下してしまうおそれがある。一方、本実施形態に係る画像読取装置100によれば、原稿Gの一部が浮いていた場合でも、その箇所の解像度は浮きが生じていない部分と比較してそれほど大きくは低下しない。従って、画像中において解像度が大幅に低下する箇所は生じにくくなり、解像度の均一な良好な画像を得ることができる。
【0030】
但し、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liを最適物体側作動距離Lo’および最適像側作動距離Li’から短くしすぎると、原稿Gの浮きが生じていない部分の解像度が低下しすぎるおそれがある。従って、物体側作動距離Loおよび像側作動距離Liは、原稿Gの浮きが生じていない部分の解像度の低下が許容できる範囲内において、最適物体側作動距離Lo’および最適像側作動距離Li’よりも短く設定することが好ましい。この原稿Gの浮きが生じていない部分の解像度の低下が許容できる範囲は、用いるロッドレンズアレイに応じて実験やシミュレーションを行うことにより求めることができる。
【0031】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0032】
11 ロッドレンズアレイ、 14 原稿台、 14a 原稿載置面、 20 ラインイメージセンサ、 20a 受光面、 100 画像読取装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を載置するための原稿台と、
前記原稿に光を照射するライン状光源と、
前記原稿から反射した光を集光するロッドレンズアレイと、
前記ロッドレンズアレイを透過した光を受光するラインイメージセンサと、
を備える画像読取装置であって、
前記原稿台の原稿載置面から前記ラインイメージセンサの受光面まで距離がロッドレンズアレイの最適共役長よりも短いことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記原稿台の原稿載置面と前記ロッドレンズアレイとの間の距離と、前記ロッドレンズアレイと前記ラインイメージセンサの受光面との間の距離が等しいことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−176524(P2011−176524A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38223(P2010−38223)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】