説明

画像除去装置及び画像形成除去システム

【課題】剥離部材及びクリーニング部材の摩耗を抑制すると共に、剥離部材に転写された画像形成物質をクリーニング部材に効率よく転移させることが可能な画像除去装置及び該画像除去装置を有する画像形成除去システムを提供する。
【解決手段】画像除去装置100は、剥離ローラ102を搬送しながら、熱可塑性画像形成物質をリユーザブル被記録材Rから剥離ローラ102に熱転写することにより剥離する剥離手段と、クリーニングローラ105を加熱すると共に搬送しながら、クリーニングローラ105と剥離ローラ102を摺動させることにより、剥離ローラ102に熱転写された熱可塑性画像形成物質をクリーニングローラ105に転移させるクリーニング手段と、剥離ローラ102の作動状態を検知するセンサ111及び113と、剥離ローラ102の周速を制御する制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像除去装置及び画像形成除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真法、インクジェット記録法、熱転写記録法が用いられているプリンタ、アナログ複写機、デジタル複写機、印刷機等の画像形成装置が普及している。このような画像形成装置を用いて画像が形成される被記録材として、一般に用いられている紙は、再生可能な木材パルプを原料としている。
【0003】
しかしながら、紙を製造するために、木材からパルプを抽出する工程、抄紙した紙を乾燥する工程で、多くのエネルギーが消費される。このような紙を製造する工程の一部では、木材からバルプを抽出した残渣である黒液等のバイオマス由来の燃料が使用されているが、全工程では、多量の化石燃料が使用されているのが現状である。
【0004】
化石燃料を使用することにより発生する二酸化炭素は、地球の温暖化を生じる原因物質とされていることに加え、化石燃料の枯渇を防ぐことからも、紙の使用量を低減することが望まれている。また、紙の消費量を低減することにより、森林を保護して、生態系を維持し、地球環境の悪化を防止することも重要な社会的な課題である。さらに、紙には、一般に、燃焼、腐敗しない無機成分が添加されているため、紙が廃棄されると、一定の割合で埋め立てが必要な廃棄物が発生する。
【0005】
このため、熱可塑性画像形成物質を用いて、リユーザブル被記録材に画像を形成した後、熱可塑性画像形成物質を剥離部材に熱転写して剥離することにより画像を除去する方法が知られている。
【0006】
特許文献1には、熱可塑性を有する画像形成物質で画像が形成された被記録材と画像形成物質に対して接着力を有する剥離部材とを重ね合わせる手段と、重ね合わせた被記録材と剥離部材とを加熱・加圧する手段と、重ね合わせた被記録材と剥離部材とを分離する分離手段を有する画像除去装置が開示されている。この画像除去装置には、剥離部材の搬送速度よりも速い速度で搬送されるクリーニング部材を、剥離部材に対向させる手段が設けられている。このため、剥離部材とクリーニング部材の対向部の近傍で、剥離部材上の画像形成物質をクリーニング部材に転移させることにより、剥離部材上の画像形成物質を除去する。
【0007】
しかしながら、剥離部材に転写された画像形成物質をクリーニング部材に効率よく転移させるために、クリーニング部材の搬送速度を大きくすると、剥離部材及びクリーニング部材が磨耗して劣化するという問題がある。一方、剥離部材及びクリーニング部材の摩耗を抑制するために、クリーニング部材の搬送速度を小さくすると、剥離部材に転写された画像形成物質をクリーニング部材に効率よく転移させることが困難になるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、剥離部材及びクリーニング部材の摩耗を抑制すると共に、剥離部材に転写された画像形成物質をクリーニング部材に効率よく転移させることが可能な画像除去装置及び該画像除去装置を有する画像形成除去システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、被記録材に形成されている熱可塑性画像形成物質からなる画像を除去する装置であって、剥離部材を搬送しながら、前記熱可塑性画像形成物質を前記被記録材から該剥離部材に熱転写することにより剥離する剥離手段と、クリーニング部材を加熱すると共に搬送しながら、該クリーニング部材と前記剥離部材を摺動させることにより、該剥離部材に熱転写された熱可塑性画像形成物質を該クリーニング部材に転移させるクリーニング手段と、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離しているか、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次の前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間であるかを検知する検知手段と、前記剥離部材を搬送する速度に対する前記クリーニング部材を搬送する速度の比が、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次の前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間である場合の方が大きくなるように制御する制御手段を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像除去装置において、前記検知手段は、前記熱可塑性画像形成物質が剥離される前の前記被記録材を検知する検知手段と、前記熱可塑性画像形成物質が剥離された後の前記被記録材を検知する検知手段を有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像除去装置において、前記剥離部材は、ローラ又はエンドレスベルトであり、前記制御手段は、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次の前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間に、前記剥離部材を1周以上搬送するように制御することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像除去装置において、前記制御手段は、前記剥離部材を搬送する速度が、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、画像除去装置を停止する動作を実行している場合の方が小さくなるように制御することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像除去装置において、前記制御手段は、前記剥離部材の温度が、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、画像除去装置を停止する動作を実行している場合の方が高くなるように制御することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像除去装置において、前記剥離部材に熱転写されている熱可塑性画像形成物質の量を検知する検知手段をさらに有し、前記制御手段は、前記剥離部材に熱転写されている熱可塑性画像形成物質の量が所定量以上である場合に、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離しないように制御することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、被記録材に形成されている熱可塑性画像形成物質からなる画像を除去する装置であって、第一の剥離部材を搬送しながら、前記熱可塑性画像形成物質を前記被記録材から該第一の剥離部材に熱転写することにより剥離する第一の剥離手段と、第一のクリーニング部材を加熱すると共に搬送しながら、該第一のクリーニング部材と前記第一の剥離部材を摺動させることにより、該第一の剥離部材に熱転写された熱可塑性画像形成物質を該第一のクリーニング部材に転移させる第一のクリーニング手段と、前記第一の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離しているか、前記第一の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次の前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間であるかを検知する検知手段と、表面に熱可塑性組成物層が形成されている第二の剥離部材を搬送しながら、前記熱可塑性画像形成物質を前記第一の剥離手段が前記熱可塑性画像形成物質を剥離した被記録材から該第二の剥離部材に熱転写することにより剥離する第二の剥離手段と、第二のクリーニング部材を加熱すると共に搬送しながら、該第二のクリーニング部材と前記第二の剥離部材を摺動させることにより、該第二の剥離部材に熱転写された熱可塑性画像形成物質及び前記熱可塑性組成物層を該第二のクリーニング部材に転移させる第二のクリーニング手段と、前記第二の剥離部材に熱転写された熱可塑性画像形成物質及び前記熱可塑性組成物層が前記第二のクリーニング部材に転移された第二の剥離部材に前記熱可塑性組成物層を形成する熱可塑性組成物層形成手段と、前記第一の剥離部材を搬送する速度に対する前記第一のクリーニング部材を搬送する速度の比が、前記第一の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、前記第一の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次の前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間である場合の方が大きくなるように制御すると共に、前記第一の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離していない場合に、前記第二のクリーニング手段及び前記熱可塑性組成物層形成手段が動作するように制御する制御手段を有することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の画像除去装置において、前記制御手段は、前記第二の剥離部材を搬送する速度が、前記第二の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、前記第二のクリーニング部材と前記第二の剥離部材を摺動させている場合の方が小さくなるように制御することを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の画像除去装置において、前記制御手段は、前記第二のクリーニング部材を加熱する温度が、前記第二の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、前記第二のクリーニング部材と前記第二の剥離部材を摺動させている場合の方が高くなるように制御することを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、画像形成除去システムにおいて、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像除去装置と、前記被記録材に前記画像を形成する画像形成装置を有することを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の画像形成除去システムにおいて、前記被記録材は、前記画像除去装置により画像を除去できることを示す識別情報が付与されており、前記画像形成装置は、前記識別情報を検知する第一の検知手段を有し、前記画像除去装置は、前記識別情報を検知する第二の検知手段をさらに有し、前記第一の検知手段が前記識別情報を検知した時のみに、前記被記録材に前記画像を形成するように前記画像形成装置を制御すると共に、前記第二の検知手段が前記識別情報を検知した時のみに、前記画像が形成された被記録材から前記画像を除去するように前記画像除去装置を制御する制御手段をさらに有することを特徴とする。
【0020】
請求項12に記載の発明は、請求項10に記載の画像形成除去システムにおいて、前記被記録材は、前記画像除去装置により画像を除去できることを示す第一の識別情報が付与されており、前記画像形成装置は、前記第一の識別情報を検知する第一の検知手段を有すると共に、前記被記録材に前記画像を形成すると共に、第二の識別情報を付与し、前記画像除去装置は、前記第二の識別情報を検知する第二の検知手段をさらに有し、前記第一の検知手段が前記第一の識別情報を検知した時のみに、前記被記録材に前記画像を形成するように前記画像形成装置を制御すると共に、前記第二の検知手段が前記第二の識別情報を検知した時のみに、前記画像が形成された被記録材から前記画像を除去するように前記画像除去装置を制御する制御手段をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、剥離部材及びクリーニング部材の摩耗を抑制すると共に、剥離部材に転写された画像形成物質をクリーニング部材に効率よく転移させることが可能な画像除去装置及び該画像除去装置を有する画像形成除去システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の画像除去装置の一例を示す図である。
【図2】剥離ローラからリユーザブル被記録材を分離する方法を示す図である。
【図3】図1の画像除去装置の部分拡大図である。
【図4】図1の剥離ローラを示す図である。
【図5】図1の画像除去装置の制御部を示すブロック図である。
【図6】リユーザブル被記録材Rに形成されている画像を除去する動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の画像形成除去システムの一例を示す図である。
【図8】本発明の画像形成除去システムの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0024】
図1に、本発明の画像除去装置の一例を示す。画像除去装置100は、リユーザブル被記録材Rに形成されていた画像を、順次、画像除去ユニット100A及び100Bを用いて除去する。このため、画像除去特性を向上させることができる。
【0025】
画像除去ユニット100Aには、加熱加圧ローラ101と、加熱加圧ローラ101と対向する、剥離部材としての剥離ローラ102及びガイド板103が設けられている。加熱加圧ローラ101は、バネ等の付勢手段(不図示)を用いて、片側当たり20〜200Nの圧力を両端部に印加することにより、剥離ローラ102に付勢されており、ニップが形成されている。熱可塑性画像形成物質からなる画像が形成されているリユーザブル被記録材Rは、ニップに搬送されると、加熱加圧され、軟化した熱可塑性画像形成物質を介して、剥離ローラ102に接着する。次に、剥離ローラ102に接着されたリユーザブル被記録材Rは、剥離ローラ102とガイド板103が交差する位置Aにおいて、両側部の角度が変えられた後、分離板104により分離される(図2参照)。ガイド板103は、リユーザブル被記録材Rの両側部と重なるように設けられており、分離板104は、リユーザブル被記録材Rが分離する角度が90〜120°となるように設けられている。その結果、リユーザブル被記録材Rに形成されていた熱可塑性画像形成物質を剥離ローラ102に熱転写することにより剥離することができる。このとき、剥離ローラ102は、両端部が軸受け(不図示)で保持されており、軸受けの一方に設けられたギアに、駆動モータ(不図示)からの駆動力が伝達されることにより、回転することができる。なお、剥離ローラ102の代わりに、エンドレスベルトを用いてもよい。また、ガイド板103及び分離板104を設置する代わりに、バネ等の付勢手段を用いて、分離板や分離爪を剥離ローラ102に当接させてもよい。
【0026】
また、画像除去ユニット100Aには、剥離ローラ102と摺動して、熱可塑性画像形成物質を転移するクリーニングローラ105、クリーニングローラ105に転移された熱可塑性画像形成物質を除去するクリーニングブレード106及びクリーニングブレード106により除去された熱可塑性画像形成物質が回収される回収容器107が設けられている。このとき、クリーニングローラ105は、バネ等の付勢手段(不図示)を用いて、片側当たり5〜50Nの圧力を両端部に印加することにより、剥離ローラ102に付勢されており、ニップが形成されている。また、クリーニングローラ105は、両端部が軸受け(不図示)で保持されており、軸受けの一方に設けられたギアに、駆動モータ(不図示)からの駆動力が伝達されることにより、回転することができる。さらに、クリーニングローラ105の回転軸は、剥離ローラ102の回転軸と平行である。なお、糸曳き現象の発生を抑制するために、クリーニングローラ105が回転する向きは、剥離ローラ102が回転する向きとは逆向きであることが好ましい。なお、クリーニングローラ105の代わりに、エンドレスベルトを用いてもよい。また、クリーニングブレード106の代わりに、又は、クリーニングブレード106と共に、クリーニングローラが設けられていてもよい。
【0027】
加熱加圧ローラ101は、図3に示すように、アルミニウム、SUS等の金属からなる基材101aの表面に、熱可塑性画像形成物質等の付着を防止するために、PTFE、PFA等のフッ素樹脂を含む離型層101bが設けられている。また、加熱加圧ローラ101には、ヒータ101cが内蔵されている。ヒータ101cとしては、ハロゲンランプ、赤外線ランプ、IHヒータ等を用いることができる。さらに、加熱加圧ローラ101には、接触式又は非接触式の温度センサ(不図示)が設けられており、表面の温度が制御される。なお、熱可塑性画像形成物質の熱特性にもよるが、加熱加圧ローラ101の表面の温度は、通常、80〜180℃であり、90〜150℃が好ましい。これにより、熱可塑性画像形成物質を65〜130℃に加熱することができる。
【0028】
剥離ローラ102は、図3に示すように、基材102a上に、弾性体層102b及び樹脂層102cが順次積層されており、直径が30〜50mmである。
【0029】
基材102aは、アルミニウム、SUS等の金属からなる。
【0030】
弾性体層102bは、ゴム硬度が20〜60°のシリコーンゴム、シリコーンゴムの発泡体等の耐熱性ゴムからなる。弾性体層102bは、厚さが1〜10mmであることが好ましい。これにより、2〜20mmのニップを形成することができる。
【0031】
樹脂層102cは、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン等の耐熱性樹脂からなる。このため、樹脂層102cは、リユーザブル被記録材Rに形成されている熱可塑性画像形成物質を熱転写する際に、熱可塑性画像形成物質を接着することができる。樹脂層102cは、厚さが20〜100μmであることが好ましい。
【0032】
クリーニングローラ105は、図3に示すように、アルミニウム、ステンレス等の金属又はステンレスからなる基材105aを有し、ヒータ105bが内蔵されている。ヒータ105bとしては、ハロゲンランプ、赤外線ランプ、IHヒータ等を用いることができる。さらに、クリーニングローラ105には、接触式又は非接触式の温度センサ(不図示)が設けられており、表面の温度が制御される。なお、熱可塑性画像形成物質の熱特性にもよるが、クリーニングローラ105の表面の温度は、剥離ローラ102の表面の温度よりも10〜40℃高いことが好ましい。基材105aとして用いられるアルミニウムは、耐久性が向上するため、アルマイト処理されていることが好ましい。
【0033】
熱可塑性画像形成物質としては、特に限定されないが、電子写真法、熱転写記録法、ソインクジェット記録法等で用いられる画像形成物質が挙げられる。このような画像形成物質は、熱可塑性樹脂を50〜98質量%、着色剤を1〜15質量%、離型剤を1〜10質量%含むことが好ましい。また、離型剤は、融点が60〜110℃であることが好ましい。
【0034】
画像除去ユニット100Bは、剥離ローラ102の代わりに、熱可塑性組成物層102dがさらに設けられている剥離ローラ102'(図4参照)が設けられている以外は、画像除去ユニット100Aと同様である。
【0035】
熱可塑性組成物層102dは、熱可塑性画像形成物質の接着性の点から、熱可塑性画像形成物質に含まれる熱可塑性樹脂とSP値が近い熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリエステル;ポリスチレン、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジエチルアミノプロピル共重合体、スチレン−エチレングリコールメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられる。
【0036】
ポリエステルを合成する際に用いるカルボン酸としては、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ピロメリット酸、シトラコン酸、グルタコン酸、メサコン酸、イタコン酸、テラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、ヘミメリト酸、メロファン酸、トリメシン酸、プレーニト酸、トリメリット酸等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0037】
ポリエステルを合成する際に用いるアルコールとしては、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルジオール、ヘキサメチレンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ペンタグリセロール、ペンタエリトリトール、シクロヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、ピナコール、グリセリン、エーテル化ジフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、ベンゼントリオール、フロログルシノール、ベンゼンテトラオール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0038】
熱可塑性組成物層102dは、リユーザブル被記録材Rの分離性の点から、離型剤を含むことが好ましい。離型剤は、融点が60〜110℃であることが好ましい。このような離型剤としては、特に限定されないが、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、長鎖アルキル基を側鎖に有する樹脂、カルナバワックス、モンタンワックス、蜜ロウ、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックス、高級アルキルアルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸のエステル類、高級アルキルアミド類等が挙げられる。
【0039】
熱可塑性組成物層102dの組成は、熱可塑性画像形成物質の組成と略同一であることが好ましい。これにより、熱可塑性画像形成物質の接着性を向上させることができる。また、リユーザブル被記録材Rに形成されている熱可塑性画像形成物質の剥離を繰り返すと、熱可塑性組成物層102dは、リユーザブル被記録材Rから熱転写される熱可塑性画像形成物質と混合されるが、熱可塑性組成物層102dの組成が大きく変化しない。その結果、安定した熱可塑性画像形成物質の接着性及びリユーザブル被記録材Rの分離性が得られる。
【0040】
熱可塑性組成物層102dは、加熱加圧ローラ101を用いて、加熱すると共に加圧すると、軟化するため、リユーザブル被記録材Rの表面に凹凸が存在する場合やリユーザブル被記録材Rに高低差がある画像が形成されている場合でも、熱可塑性画像形性物質と接触することができ、熱可塑性画像形性物質を良好に熱転写することができる。
【0041】
熱可塑性組成物層102dの厚さは、通常、5〜200μmであり、熱可塑性画像形成物質の接着性及びリユーザブル被記録材Rの分離性の点から、20〜100μmが好ましい。厚さが5μm未満であると、熱可塑性組成物層102dを形成する効果が不十分となることがあり、200μmを超えると、リユーザブル被記録材Rと剥離ローラ102'を分離しにくくなることがある。
【0042】
一方、画像除去装置100には、リユーザブル被記録材Rが収納されるトレー108R、トレー108R内に収納されたリユーザブル被記録材Rを一枚ずつ供給するローラ109R、ローラ109Rにより供給されたリユーザブル被記録材Rを搬送するローラ対110Rが設けられている。
【0043】
リユーザブル被記録材Rは、基材の表面に、熱可塑性画像形成物質との定着性を低下させる物質が付与された被記録材である。
【0044】
基材としては、紙、合成紙、樹脂フィルム等が挙げられるが、耐熱性が高いことから、紙が好ましい。
【0045】
熱可塑性画像形成物質との定着性を低下させる物質としては、シリコーン樹脂、シランカップリング剤、フッ素樹脂、オレフィン樹脂、界面活性剤、サイズ剤、離型剤等が挙げられるが、オレフィン−無水マレイン酸共重合体が好ましい。このとき、オレフィン−無水マレイン酸共重合体の剥離部材や被記録材の内部へ移行を防止し、被記録材を繰り返し使用できることから、オレフィンは、炭素数が10〜20のα位に二重結合を有するオレフィンが好ましい。
【0046】
リユーザブル被記録材Rとしては、特に限定されないが、シリコーン化合物が表面に付与された被記録材(特開平9−204060号公報、特開平9−204061号公報参照)、界面活性剤が表面に付与された被記録材(特開平10−74025号公報参照)、直鎖または分岐したアルキル基またはアルケニル基を有する化合物が表面に付与された被記録材(特開2005−234162号公報)、オレフィン−無水マレイン酸共重合体が表面に付与された被記録材(特開2006−78618号公報)等が挙げられる。
【0047】
なお、基材として、紙を用いる場合は、ベック平滑度計による平滑度が90秒以上とすることが好ましい。リユーザブル被記録材Rの表面の凹凸を小さくするためには、基材の表面に、白色顔料と樹脂を含む目止め層を形成してもよい。白色顔料としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム等が挙げられる。また、樹脂としては、スチレン−ブタジエン重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、でんぷん、ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、アラビアゴム等が挙げられる。なお、目止め層は、熱可塑性画像形成物質との定着性を低下させる物質をさらに含んでもよい。
【0048】
なお、リユーザブル被記録材Rは、画像除去装置100により画像を除去できることを示す識別情報として、切り欠き、穴等の形状、バーコード等の画像が付与されており、識別情報は、画像除去装置100により消去されない。
【0049】
また、画像除去装置100には、熱可塑性画像形成物質からなるべた画像が形成されている媒体Mが収納されるトレー108M、トレー108M内に収納された媒体Mを一枚ずつ供給するローラ109M、ローラ109Mにより供給された媒体Mを搬送するローラ対110Mが設けられており、所定のタイミングで剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dを再生する。このとき、剥離ローラ102でリユーザブル被記録材Rに形成されていた熱可塑性画像形成物質の大部分を除去することができるため、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dを再生する頻度を少なくすることができる。
【0050】
媒体Mは、公知の画像形成装置を用いて、リユーザブル被記録材Rに熱可塑性画像形成物質からなるべた画像を形成することにより、作製することができる。このとき、媒体に形成するべた画像の長さを剥離ローラ102の周長の整数倍とすることにより、均一な厚さの熱可塑性組成物層102dを形成することができる。
【0051】
さらに、画像形成装置100には、制御部120が設けられており、制御部120は、リユーザブル被記録材R及び媒体Mを搬送する動作を制御する搬送制御部121、リユーザブル被記録材Rからの熱可塑性画像形成物質を剥離する動作を制御する剥離制御部122及び剥離ローラ102及び102'をクリーニングする動作を制御するクリーニング制御部123を有する(図5参照)。例えば、パルスモータで駆動するローラの周速を制御する場合、制御部は、組み込まれたモータドライバから周速に見合ったパルス数のクロック信号を送信する。また、ローラの表面の温度を制御する場合、制御部は、温度センサの入力値を読み取り、ヒータの通電をON/OFFする。
【0052】
また、画像除去装置100には、リユーザブル被記録材Rの識別情報を検知するセンサ111、識別情報が検知されなかった被記録材が排出されるトレー112、熱可塑性画像形成物質が剥離されたリユーザブル被記録材Rを検知するセンサ113、熱可塑性画像形成物質が剥離されたリユーザブル被記録材Rを排出するローラ対114及びリユーザブル被記録材Rが排出されるトレー115が設けられている。
【0053】
次に、画像除去装置100の動作について説明する。
【0054】
画像除去装置100を起動する際に、剥離制御部122及びクリーニング制御部123は、画像除去ユニット100Aの加熱加圧ローラ101及びクリーニングローラ105並びに画像除去ユニット100Bの加熱加圧ローラ101の表面の温度が、それぞれ所定の温度になるように制御する。次に、剥離制御部122及びクリーニング制御部123は、画像除去ユニット100Aの加熱加圧ローラ101、剥離ローラ102及びクリーニングローラ105並びに画像除去ユニット100Bの加熱加圧ローラ101及び剥離ローラ102'が、それぞれ所定の周速で回転するように制御する。このため、画像除去装置100の停止時における熱可塑性画像形成物質の固着に起因する破損を抑制することができる。
【0055】
次に、リユーザブル被記録材Rに形成されている画像を除去する動作について説明する(図6参照)。
【0056】
まず、搬送制御部121は、トレー108Rに収納されているリユーザブル被記録材Rが所定の間隔で搬送されるように制御する(S1)。次に、センサ111は、リユーザブル被記録材Rの識別情報を検知する(S2)と、制御部120に画像の除去を許可する信号を送信する。制御部120が信号を受信すると、クリーニング制御部123は、画像除去ユニット100Aのクリーニングローラ105が起動時の周速で回転するように制御する(S3)。なお、搬送制御部121は、リユーザブル被記録材Rが画像除去ユニット100Aの加熱加圧ローラ101と剥離ローラ102の間に搬送されるように、リユーザブル被記録材Rの搬送経路を選択する。このとき、リユーザブル被記録材Rに形成されている熱可塑性画像形成物質の大部分は、剥離ローラ102に熱転写される。次に、センサ113は、リユーザブル被記録材Rの通過を検知する(S4)と、制御部120に信号を送信する。制御部120が信号を受信すると、クリーニング制御部123は、画像除去ユニット100Aのクリーニングローラ105が起動時よりも大きい周速で回転する(S5)ように制御する。このとき、剥離ローラ102が1回転以上回転するように、S1において、搬送制御部121は、リユーザブル被記録材Rを搬送する間隔を制御する。これにより、剥離ローラ102の全周に対して、クリーニングローラ105を摺動させることができ、剥離ローラ102に熱転写された熱可塑性画像形成物質の略全量をクリーニングローラ105に転移させることができる。さらに、搬送制御部121は、リユーザブル被記録材Rから画像除去ユニット100Aで除去できなかった熱可塑性画像形成物質が、画像除去ユニット100Bの剥離ローラ102'に剥離された後、リユーザブル被記録材Rがトレー115に排出されるように制御する。
【0057】
次に、画像の除去を継続するかどうかを判定し(S6)、画像の除去を継続する場合は、S2に戻る。一方、画像の除去を継続しない場合は、クリーニング制御部123が、画像除去ユニット100Aのクリーニングローラ105が起動時の周速で回転するように制御した(S7)後、画像の除去を終了し、後述する画像除去装置100を停止する動作を実行する。画像の除去を継続しない場合としては、特に限定されないが、トレー108Rに収納されていたリユーザブル被記録材Rが全て搬送された場合、ユーザが、操作パネル等から、画像の除去を終了するように入力した場合、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dを再生する場合等が挙げられる。
【0058】
一方、センサ111は、リユーザブル被記録材Rの識別情報を検知しない(S2)と、制御部120に画像の除去を禁止する信号を送信する。制御部120が信号を受信すると、搬送制御部121は、リユーザブル被記録材Rをトレー112に排出する(S3')ように搬送経路を切り替え、S6に進む。
【0059】
制御部120は、センサ111がリユーザブル被記録材Rの識別情報を検知してから、センサ113がリユーザブル被記録材Rの通過を検知するまでの間を、剥離ローラ102がリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離していると判定する。一方、制御部120は、センサ113がリユーザブル被記録材Rの通過を検知してから、センサ111が次のリユーザブル被記録材Rの識別情報を検知するまでの間を、剥離ローラ102がリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次のリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間であると判定する。
【0060】
なお、センサ111と共に、センサ113と同様のリユーザブル被記録材Rを検知するセンサをさらに設け、リユーザブル被記録材Rの通過を検知してもよい。この場合、制御部120は、センサ111がリユーザブル被記録材Rの識別情報を検知するタイミングの代わりに、センサがリユーザブル被記録材Rの通過を検知するタイミングを用いて、剥離ローラ102がリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離しているか、剥離ローラ102がリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次のリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間であるかを判定する。
【0061】
また、センサ113を設けず、センサ111がリユーザブル被記録材Rの識別情報を検知してから、画像除去ユニット100Aを通過するまでの時間を制御部120が算出して、剥離ローラ102がリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離しているか、剥離ローラ102がリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次のリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間であるかを判定してもよい。
【0062】
以上のようにして、剥離ローラ102がリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次のリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間である場合に、画像除去ユニット100Aのクリーニングローラ105の周速を大きくする。このため、剥離ローラ102がリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離している場合に、画像除去ユニット100Aのクリーニングローラ105の周速を小さくすることができる。その結果、画像除去ユニット100Aの剥離ローラ102及びクリーニングローラ105の摩耗を抑制すると共に、剥離ローラ102に転写された熱可塑性画像形成物質をクリーニングローラ105に効率よく転移させることができる。
【0063】
なお、S1〜S7において、画像除去ユニット100Bのクリーニングローラ105が回転しないようにする代わりに、クリーニングローラ105を剥離ローラ102'に付勢しないようにしてもよい。
【0064】
また、S5において、画像除去ユニット100Aのクリーニングローラ105を起動時よりも大きい周速で回転する代わりに、剥離ローラ102を起動時よりも小さい周速で回転するように制御してもよいし、クリーニングローラ105を起動時よりも大きい周速で回転すると共に、剥離ローラ102を起動時よりも小さい周速で回転するように制御してもよい。
【0065】
このとき、S3において、画像形成ユニット100Aの剥離ローラ102に対するクリーニングローラ105の周速比は、2〜4であることが好ましい。
【0066】
一方、S5において、画像形成ユニット100Aの剥離ローラ102に対するクリーニングローラ105の周速比は、4〜8であることが好ましい。
【0067】
周速比が大きい程、剥離ローラ102に熱転写された熱可塑性画像形成物質をクリーニングローラ105に転移する速度が大きくなるが、クリーニングローラ105の周速が大きいと、剥離ローラ102及びクリーニングローラ105が摩耗して劣化しやすくなる。剥離ローラ102の周速の大きさにもよるが、周速比が2未満であると、剥離ローラ102からクリーニングローラ105に熱可塑性画像形成物質を転移する速度が不十分となることがあり、8を超えると、剥離ローラ102及びクリーニングローラ105が摩耗して劣化することがある。
【0068】
なお、画像除去ユニット100Aに、剥離ローラ102に熱転写された熱可塑性画像形成物質の厚さを検知するレーザー変位計等のセンサをさらに設けてもよい。この場合、センサは、剥離ローラ102に熱転写された熱可塑性画像形成物質の厚さが所定値以上であることを検知すると、制御部120に信号を送信する。制御部120が信号を受信すると、搬送制御部121は、トレー108Rに収納されているリユーザブル被記録材Rの搬送を一旦待機させる。次に、クリーニング制御部123は、S5と同様にして、剥離ローラ102に熱転写された熱可塑性画像形成物質の厚さが所定値以下になるまで、画像除去ユニット100Aのクリーニングローラ105を起動時よりも大きい周速で回転するように制御する。センサは、剥離ローラ102に熱転写された熱可塑性画像形成物質の厚さが所定値以下であることを検知すると、制御部120に信号を送信する。次に、制御部120が信号を受信すると、搬送制御部121は、トレー108Rに収納されているリユーザブル被記録材Rの搬送を再開する。
【0069】
なお、剥離ローラ102に熱転写された熱可塑性画像形成物質の厚さは、増加し続けない必要があり、200μm以下であることが好ましく、30μm以下がさらに好ましい。剥離ローラ102に熱転写された熱可塑性画像形成物質の厚さが200μmを超えると、画像除去特性が低下したり、分離特性が低下したりすることがある。
【0070】
次に、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dを再生する動作について説明する。なお、制御部120は、画像を除去したリユーザブル被記録材Rの枚数が所定値以上になると、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dが再生されるように制御する。また、ユーザが、操作パネル等から、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dを再生するように入力した場合も、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dが再生される。
【0071】
まず、剥離制御部122及びクリーニング制御部123は、画像除去ユニット100Bの加熱加圧ローラ101及びクリーニングローラ105を加熱して、表面の温度が所定の温度になるように制御する。このとき、画像除去ユニット100Bの加熱加圧ローラ101を起動時よりも10〜20℃高い温度になるように制御するため、流動しやすくなり、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102d(及び剥離ローラ102'に熱転写された熱可塑性画像形成物質)が、クリーニングローラ105に転移しやすくなる。画像除去ユニット100Bの加熱加圧ローラ101及びクリーニングローラ105の表面の温度が所定の温度になると、剥離制御部122及びクリーニング制御部123は、剥離ローラ102'及びクリーニングローラ105が所定の周速で回転するように制御する。このとき、剥離ローラ102'が起動時よりも小さい周速で回転するように制御するため、画像除去ユニット100Bの剥離ローラ102'及びクリーニングローラ105の摩耗を抑制することができる。なお、画像形成ユニット100Bの剥離ローラ102'に対するクリーニングローラ105の周速比は、4〜8であることが好ましい。
【0072】
なお、S1〜S7において、クリーニングローラ105を剥離ローラ102'に付勢しないようにした場合には、付勢する状態に切り替える必要がある。
【0073】
また、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dをクリーニングローラ105に転移させる間に、剥離制御部122及びクリーニング制御部123は、画像除去ユニット100Aの加熱加圧ローラ101及び剥離ローラ102を、それぞれ起動時の周速で、クリーニングローラ105を、起動時よりも大きい周速で回転するように制御してもよい。このとき、クリーングローラ105を起動時の周速で、剥離ローラ102を起動時よりも小さい周速で回転するように制御してもよい。なお、画像形成ユニット100Aの剥離ローラ102に対するクリーニングローラ105の周速比は、4〜8であることが好ましい。
【0074】
次に、剥離制御部122及びクリーニング制御部123は、画像除去ユニット100Aの加熱加圧ローラ101及びクリーニングローラ105を50〜70℃に冷却すると共に、画像除去ユニット100Bのクリーニングローラ105を冷却するように制御する。さらに、剥離制御部122及びクリーニング制御部123は、画像除去ユニット100Bの剥離ローラ102'が起動時の周速で回転し、画像除去ユニット100Bのクリーニングローラ105が回転を停止するように制御する。次に、搬送制御部121は、トレー108Mに収納されている媒体Mを、画像除去ユニット100Aの加熱加圧ローラ101及び剥離ローラ102の間及び画像除去ユニット100Bの加熱加圧ローラ101及び剥離ローラ102'の間に搬送するように制御する。これにより、画像除去ユニット100Bの剥離ローラ102'に媒体Mに形成されているべた画像が熱転写され、熱可塑性組成物層102dが形成される。このとき、画像除去ユニット100Aの加熱加圧ローラ101及びクリーニングローラ105が冷却されているため、媒体Mに形成されているべた画像は、剥離ローラ102に熱転写されない。次に、画像の除去を続ける場合は、剥離制御部122及びクリーニング制御部123は、画像除去ユニット100Aの加熱加圧ローラ101及びクリーニングローラ105を加熱して、起動時の状態になるように制御する。一方、画像の除去を続けない場合は、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dの再生を終了し、後述する画像除去装置100を停止する動作を実行する。
【0075】
なお、画像除去ユニット100Bに、剥離ローラ102'に熱転写された熱可塑性画像形成物質の厚さを検知するレーザー変位計等のセンサをさらに設けてもよい。この場合、センサは、剥離ローラ102'に熱転写された熱可塑性画像形成物質の厚さが所定値以上であることを検知すると、制御部120に信号を送信する。制御部120が信号を受信すると、制御部120は、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dを再生するように制御する。なお、画像を除去する動作が進行中である場合、制御部120は、進行中の動作が終了した後、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dを再生するように制御する。
【0076】
次に、画像除去装置100を停止する動作について説明する。
【0077】
まず、剥離制御部122は、画像除去ユニット100Aの加熱加圧ローラ101を加熱して、表面の温度が起動時よりも10〜20℃高い温度になるように制御する。このため、剥離ローラ102に熱転写された熱可塑性画像形成物質の残留物を除去しやすくなる。剥離制御部122及びクリーニング制御部123は、加熱加圧ローラ101の表面の温度が起動時よりも10〜20℃高い温度になると、画像除去ユニット100Aの剥離ローラ102が起動時よりも小さい周速で回転するように制御する。このため、画像除去ユニット100Aの剥離ローラ102及びクリーニングローラ105の摩耗を抑制することができる。なお、画像形成ユニット100Aの剥離ローラ102に対するクリーニングローラ105の周速比は、4〜8であることが好ましい。剥離ローラ102に熱転写された熱可塑性画像形成物質の残留物を所定時間除去した後に、剥離制御部122及びクリーニング制御部123は、画像除去ユニット100Aの加熱加圧ローラ101及びクリーニングローラ105並びに画像除去ユニット100Bの加熱加圧ローラ101を冷却するように制御する。さらに、剥離制御部122及びクリーニング制御部123は、画像除去ユニット100Aの加熱加圧ローラ101、剥離ローラ102及びクリーニングローラ105の回転を停止し、画像除去装置100を停止する。このため、熱可塑性画像形成物質の固着に起因する画像除去装置100の起動時における破損を抑制できる。
【0078】
なお、画像除去装置100において、画像除去ユニット100B、トレー108M、ローラ109M及びローラ対110Mが設けられていなくてもよい。
【0079】
図7に、本発明の画像形成除去システムの一例を示す。なお、図7において、図1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。図7に示す画像形成除去システムは、筐体内に、画像除去装置100と画像形成装置200が設けられている。
【0080】
まず、画像形成装置200について説明する。画像形成装置200は、タンデム型デジタルカラー電子写真装置である。画像形成装置200においては、感光体ドラム201Y、201M、201C及び201Bk上に、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)のトナー画像が形成される。次に、バイアス電圧が印加された転写ローラ202Y、202M、202C及び202Bkにより、各色のトナー画像は、中間転写ベルト203に転写され、重ね合わされる。中間転写ベルト203上で重ね合わされたトナー画像は、バイアス電圧が印加された転写ローラ204により、一般紙P又はリユーザブル被記録材Rに転写された後、定着装置205の加熱された定着ローラ205aと加圧ローラ205bの間に搬送されてトナーが軟化し、一般紙P又はリユーザブル被記録材Rに定着される。以上のようにして、画像が形成された一般紙P又はリユーザブル被記録材Rは、ローラ対206を経て、トレー207上に排出される。
【0081】
感光体ドラム201は、金属等の導電性基体上に、光導電体層や保護層が設けられており、帯電ローラ、ワイヤ帯電器等の帯電手段(不図示)により均一に帯電される。次に、均一に帯電された感光体ドラム201は、レーザー、LED、発光体−液晶光バルブ等の露光手段(不図示)により露光され、静電潜像が形成される。さらに、静電潜像が形成された感光体ドラム201は、磁気ローラやトナー搬送ローラを内部に有する現像手段(不図示)により、離型剤を含むトナーで現像され、トナー像が形成される。なお、トナー像が転写された後の感光体ドラム201上に残留したトナーは、クリーニング手段(不図示)により除去される。また、必要に応じて、トナー像が転写された後の感光体ドラム201上に残留した電荷を、交流帯電器、光照射器等の除電手段により除去してもよい。さらに、感光体ドラム201上に形成されたトナー像を、転写される前に、コロナ放電器等の帯電手段により均一に帯電してもよい。また、感光体ドラム201の表面電位を検知する手段と、帯電手段に印加する電圧を制御する手段により、環境変動や繰り返し使用による劣化があっても、感光体ドラム201の表面電位を一定に保持してもよい。逆に、トナー像が転写された後の感光体ドラム201上に残留したトナーを除去する必要がない場合には、クリーニング手段を除いてもよい。
【0082】
中間転写ベルト203は、ローラ203a及び203bを内接するように設けられており、テンション印加機構(不図示)により、張力が印加されている。なお、必要に応じて、一般紙P又はリユーザブル被記録材Rにトナー像が転写された後に、中間転写ベルト203に残留したトナーを、ブラシ、ローラ等のクリーニング手段により除去してもよい。また、一般紙P又はリユーザブル被記録材Rにトナー像が転写された後に、中間転写ベルト203に残留した電荷を、除電手段により除去してもよいし、帯電手段により均一に帯電してもよい。
【0083】
画像形成装置200は、一般紙用カセット208P及びリユーザブル被記録材用カセット208Rを有し、一般紙用カセット208Pには、上質紙等の一般紙Pが収納され、リユーザブル被記録材用カセット208Rには、リユーザブル被記録材Rが収納される。このとき、一般紙P及びリユーザブル被記録材Rは、それぞれローラ209P及び209Rにより、一枚ずつ供給され、ローラ対210P及び210Rにより、ローラ203aと転写ローラ204の間に搬送される。なお、必要に応じて、サイズの異なる一般紙又はリユーザブル被記録材や、使用可能な紙種を増加させたり、送り方向(縦送り、横送り)の異なる一般紙又はリユーザブル被記録材を収納させたりするために、カセットの数を増加させてもよい。
【0084】
次に、図7の画像形成除去システムを用いて画像を形成する方法について説明する。画像形成除去システムは、操作パネル(不図示)や、画像形成除去システムに接続されているコンピュータのディスプレーに表示されるユーザインターフェイスにおいて、第一の制御モード又は第二の制御モードで画像を形成するかをユーザが選択できるように、CPU、ROM、RAM等を有する制御手段(不図示)、表示手段(不図示)、制御ソフト(不図示)、ボタン等の入力手段(不図示)等が設けられている。
【0085】
第一の制御モードは、リユーザブル被記録材Rに画像を形成する制御モードであり、ユーザが第一の制御モードを選択した場合、制御手段は、リユーザブル被記録材用カセット208Rからリユーザブル被記録材Rを供給し、画像が形成された後、トレー207に搬送するように制御するように制御する。このとき、センサ211が、画像除去装置100により画像を除去できることを示す識別情報を検知すると、制御手段に信号を送信する。次に、制御手段は、信号を受信すると、リユーザブル被記録材Rに画像を形成すると共に、例えば、画像を形成する際に用いられるトナーを用いて、リユーザブル被記録材Rの隅等に、第一の制御モードで画像を形成したことを示す識別情報として、バーコード等の画像を付与した後、リユーザブル被記録材Rをトレー207に搬送するように制御する。なお、第一の制御モードで画像を形成したことを示す識別情報は、画像を除去する際に消去されるため、リユーザブル被記録材Rに画像を形成する毎に書き換えられる。但し、第一の制御モードで画像を形成したことを示す識別情報は、画像でなくてもよく、例えば、リユーザブル被記録材RにICチップを埋め込み、画像形成装置200や画像除去装置100にICチップに記録される情報を書き換える手段を設けてもよい。
【0086】
一方、制御手段は、信号を受信しない場合、画像除去装置100により画像を除去できることを示す識別情報が付与されていない被記録材に画像を形成せずに、トレー207に搬送するように制御する。さらに、制御手段は、画像除去装置100により画像を除去できることを示す識別情報が付与されていない被記録材が供給されたことをユーザに通知するための情報を操作パネルやディスプレーに表示する処理を実行するように制御する。これにより、リユーザブル被記録材収納容器208Rに混入した、画像除去装置100により画像を除去できることを示す識別情報が付与されていない被記録材に、第一の制御モードで画像を形成すること、第一の制御モードで画像を形成したことを示す識別情報を付与することを防止できる。
【0087】
また、第二の制御モードは、一般紙Pに画像を形成する制御モードであり、ユーザが第二の制御モードを選択した場合、制御手段は、一般紙用カセット208Pから一般紙Pを供給し、画像が形成された後、トレー207に搬送するように制御する。
【0088】
次に、画像形成除去システムを用いて画像を除去する方法について説明する。制御手段は、トレー108Rからリユーザブル被記録材Rが供給されるように制御する。このとき、センサ111が、画像除去装置100により画像を除去できることを示す識別情報及び第一の制御モードで画像を形成したことを示す識別情報を検知すると、制御部120に信号を送信する。制御部120は、信号を受信すると、リユーザブル被記録材Rに形成されている画像を除去した後、リユーザブル被記録材Rをトレー115に搬送するように制御する。
【0089】
一方、制御部120は、信号を受信しない場合、画像を除去せずに、被記録材をトレー112に排出するように制御する。これにより、画像除去装置100により画像を除去できない被記録材に形成された画像を除去すること及び第一の制御モードで形成されていない画像を除去することを防止できる。その結果、画像が除去されにくいためにリユーザブル被記録材Rを剥離ローラ102又は102'から分離することが困難になって発生するジャム等のトラブルを防止することができる。
【0090】
なお、センサ111は、画像除去装置100により画像を除去できることを示す識別情報を検知せず、第一の制御モードで画像を形成したことを示す識別情報のみを検知してもよい。
【0091】
また、単に、画像除去装置100により画像を除去できない被記録材が混入することによるジャム等のトラブルを防止するためだけであれば、リユーザブル被記録材Rに画像を形成する際に、第一の制御モードで画像を形成したことを示す識別情報を付与しなくてもよい。この場合、センサ111は、画像除去装置100により画像を除去できることを示す識別情報のみを検知する。
【0092】
一方、画像が除去されたリユーザブル被記録材Rは、ユーザが、トレー115からリユーザブル被記録材用カセット208Rに搬送して、再度画像を形成することができる。このとき、トレー115とリユーザブル被記録材用カセット208Rを同一の構成とすることにより、両者を交換して用いることができる。
【0093】
また、トレー115を設ける代わりに、画像が除去されたリユーザブル被記録材Rを、直接、リユーザブル被記録材用カセット208Rに搬送する搬送経路を設けてもよい。
【0094】
さらに、一般紙用カセット208Pを設けず、第二の制御モードで画像を形成しない構成としてもよい。
【0095】
図8に、本発明の画像形成除去システムの他の例を示す。なお、図8において、図7と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。図8(a)に示す画像形成除去システムは、それぞれ別の筐体に設けられている複数の画像形成装置200と、別の筐体内に設けられている画像除去装置100を有する。また、図8(b)に示す画像形成除去システムは、同一の筐体内に設けられている画像形成装置200及び画像除去装置100と、それぞれ別の筐体に設けられている複数の画像形成装置200を有する。このような画像形成除去システムでは、複数の画像形成装置200を用いて画像が形成されたリユーザブル被記録材Rは、画像情報が利用された後、回収される。回収されたリユーザブル被記録材Rは、画像除去装置100を用いて画像が除去された後、再度使用される。
【0096】
以上、画像形成装置として、電子写真法を用いる画像形成装置を用いる場合について説明したが、熱転写記録法、ソリッドインクを用いるインクジェット記録法等の、他の熱可塑性画像形成物質を用いて画像を形成する方法を用いる画像形成装置を用いてもよい。
【実施例】
【0097】
以下、具体的な実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例で挙げられた条件に限定されるものではない。
【0098】
[リユーザブル被記録材Rの作製]
オレフィン−無水マレイン酸共重合体の加水分解物の25質量%水溶液1質量部、ポリビニルアルコールの10質量%水溶液10質量部を混合し、塗布液を得た。
【0099】
得られた塗布液を、片面の乾燥塗布量が2.3g/mとなるように、コピー用紙Type6200(リコー社製)の両面に、ワイヤバーを用いて塗布し、120℃で5分間乾燥させた後、スーパーキャレンダーを用いて、平滑化処理し、リユーザブル被記録材Rを得た。
【0100】
[画像形成]
リユーザブル被記録材Rに、imagio Neo C285(リコー社製)を用いて、階調画像、2次色及び単色のべた画像、文字画像を有するフルカラーパターンを形成した。なお、トナーとしては、ワックス成分を5〜10質量%含み、ポリエステルを主成分とするオイルレス重合トナーを用いた。
【0101】
[画像除去]
図1の画像除去装置100を用いて、下記の条件で、リユーザブル被記録材Rに形成された画像を除去した。
【0102】
(画像除去ユニット100A)
加熱加圧ローラ101の設定温度:120℃
加熱加圧ローラ101と剥離ローラ102の間の圧力:60N
剥離ローラ102の周速(リユーザブル被記録部材Rの搬送速度):40mm/秒
クリーニングローラ105の設定温度:140℃
クリーニングローラ105と剥離ローラ102の間の圧力:20N
クリーニングローラ105の周速:120mm/秒、240mm/秒
クリーニングローラ105の回転方向:剥離ローラ102とはカウンター方向
なお、クリーニングローラ105の周速は、剥離ローラ102がリユーザブル被記録材Rからトナーを剥離している間(7.5秒)及び剥離ローラ102がリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次のリユーザブル被記録材Rから熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間(2.5秒)が、それぞれ120mm/秒及び240mm/秒である。
【0103】
加熱加圧ローラ101は、アルミニウム製の基材101a上に、PFAからなる離型層101bが形成されており、ヒータ101cとして、ハロゲンヒータが内蔵されている。剥離ローラ102は、直径が30mmであり、基材102a上に、厚さが4mm、ゴム硬度が40°のシリコーンゴム発泡体からなる弾性体層102b及び厚さが50μmのポリイミドフィルムチューブからなる樹脂層102cが順次積層されている。クリーニングローラ105は、直径が30mmであり、アルミニウム製の基材105aを有し、ヒータ105bとして、ハロゲンヒータが内蔵されている。基材105aは、表面が平坦であり、アルマイト処理されている。クリーニングブレード106は、ポリイミド製である。
【0104】
(画像除去ユニット100B)
加熱加圧ローラ101の設定温度:120℃
加熱加圧ローラ101と剥離ローラ102の間の圧力:60N
剥離ローラ102の周速(リユーザブル被記録部材Rの搬送速度):40mm/秒
クリーニングローラ105の設定温度:無し(加熱しない)
クリーニングローラ105と剥離ローラ102の間の圧力:0N(加圧しない)
クリーニングローラ105の周速:0mm/秒
剥離ローラ102'は、直径が30mmの基材102a上に、厚さが4mm、ゴム硬度が40°のシリコーンゴム発泡体からなる弾性体層102b、厚さが50μmのポリイミドフィルムチューブからなる樹脂層102c及び厚さが30μmのトナーからなる熱可塑性組成物層102dが順次積層されている。
【0105】
その結果、1000枚の画像を除去したが、画像除去性能が維持され、画像が判別できないレベルまで画像が除去されていた。使用したリユーザブル被記録材Rは、50枚であり、20回繰り返して画像を形成したが、得られた画像に顕著な変化はなく、鮮明な画像を維持していた。一方、画像除去ユニット100Aで画像が除去されたリユーザブル被記録材Rは、階調画像の中間色の薄い部分が薄く残り、完全に除去されていなかったが、べた画像や文字画像は除去されていた。
【0106】
このとき、画像除去ユニット100Aのクリーニングローラ105の周速を200mm/秒に固定した場合よりも、計算上では、画像除去ユニット100Aの剥離ローラ102及びクリーニングローラ105の摺動回数が25%減少し、剥離ローラ102及びクリーニングローラ105の摩耗を抑制することができる。また、画像除去ユニット100Aにおいて、剥離ローラ102に熱転写されたトナーは、クリーニングローラ105に効率よく転移されており、剥離ローラ102上のトナーの残量が少ないことが観察された。このため、リユーザブル被記録材Rの分離特性も安定していた。
【0107】
[剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dの除去]
図1の画像除去装置100を用いて、下記の条件で、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dを除去した。
【0108】
(画像除去ユニット100B)
加熱加圧ローラ101の設定温度:120℃
加熱加圧ローラ101と剥離ローラ102の間の圧力:60N
剥離ローラ102の周速(リユーザブル被記録部材Rの搬送速度):10mm/秒
クリーニングローラ105の設定温度:140℃
クリーニングローラ105と剥離ローラ102の間の圧力:20N
クリーニングローラ105の周速:60mm/秒
クリーニングローラ105の回転方向:剥離ローラ102とはカウンター方向
その結果、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dの除去の頻度は、200〜400回の画像除去に1回で十分であった。また、剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dの除去時間は2分間であった。さらに、剥離ローラ102'の周速を小さくしたため、計算上は、剥離ローラ102'側及びクリーニングローラ105側の摺動回数が、それぞれ10回程度及び70回程度であり、少ない。このため、剥離ローラ102'及びクリーニングローラ105の摩耗を抑制することができる。
【0109】
[剥離ローラ102'の熱可塑性組成物層102dの形成]
図1の画像除去装置100を用いて、下記の条件で、剥離ローラ102'に熱可塑性組成物層102dを形成した。
【0110】
(画像除去ユニット100A)
加熱加圧ローラ101の設定温度:無し(加熱しない)
加熱加圧ローラ101と剥離ローラ102の間の圧力:60N
剥離ローラ102の周速(リユーザブル被記録部材Rの搬送速度):40mm/秒
クリーニングローラ105の設定温度:無し(加熱しない)
クリーニングローラ105と剥離ローラ102の間の圧力:0N(加圧しない)
クリーニングローラ105の周速:0mm/秒
(画像除去ユニット100B)
加熱加圧ローラ101の設定温度:120℃
加熱加圧ローラ101と剥離ローラ102の間の圧力:60N
剥離ローラ102の周速(リユーザブル被記録部材Rの搬送速度):40mm/秒
クリーニングローラ105の設定温度:無し(加熱しない)
クリーニングローラ105と剥離ローラ102の間の圧力:0N(加圧しない)
クリーニングローラ105の周速:0mm/秒
具体的には、剥離ローラ102'の周長の3倍の長さのべた画像が形成されたリユーザブル被記録材Rを2枚通紙して、熱可塑性組成物層102dが除去された剥離ローラ102'にべた画像を熱転写することにより、熱可塑性組成物層102dを形成する。なお、リユーザブル被記録材Rに多層べた画像を形成する際には、imagio Neo C285(リコー社製)を用いた。
【符号の説明】
【0111】
100 画像除去装置
100A、100B 画像除去ユニット
101 加熱加圧ローラ
102、102' 剥離ローラ
103 ガイド板
104 分離板
105 クリーニングローラ
106 クリーニングブレード
120 制御部
121 搬送制御部
122 剥離制御部
123 クリーニング制御部
200 画像形成装置
M メディア
R リユーザブル被記録材
P 一般紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開2007−279619号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材に形成されている熱可塑性画像形成物質からなる画像を除去する装置であって、
剥離部材を搬送しながら、前記熱可塑性画像形成物質を前記被記録材から該剥離部材に熱転写することにより剥離する剥離手段と、
クリーニング部材を加熱すると共に搬送しながら、該クリーニング部材と前記剥離部材を摺動させることにより、該剥離部材に熱転写された熱可塑性画像形成物質を該クリーニング部材に転移させるクリーニング手段と、
前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離しているか、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次の前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間であるかを検知する検知手段と、
前記剥離部材を搬送する速度に対する前記クリーニング部材を搬送する速度の比が、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次の前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間である場合の方が大きくなるように制御する制御手段を有することを特徴とする画像除去装置。
【請求項2】
前記検知手段は、前記熱可塑性画像形成物質が剥離される前の前記被記録材を検知する検知手段と、前記熱可塑性画像形成物質が剥離された後の前記被記録材を検知する検知手段を有することを特徴とする請求項1に記載の画像除去装置。
【請求項3】
前記剥離部材は、ローラ又はエンドレスベルトであり、
前記制御手段は、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次の前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間に、前記剥離部材を1周以上搬送するように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像除去装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記剥離部材を搬送する速度が、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、画像除去装置を停止する動作を実行している場合の方が小さくなるように制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像除去装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記剥離部材の温度が、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、画像除去装置を停止する動作を実行している場合の方が高くなるように制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像除去装置。
【請求項6】
前記剥離部材に熱転写されている熱可塑性画像形成物質の量を検知する検知手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記剥離部材に熱転写されている熱可塑性画像形成物質の量が所定量以上である場合に、前記剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離しないように制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像除去装置。
【請求項7】
被記録材に形成されている熱可塑性画像形成物質からなる画像を除去する装置であって、
第一の剥離部材を搬送しながら、前記熱可塑性画像形成物質を前記被記録材から該第一の剥離部材に熱転写することにより剥離する第一の剥離手段と、
第一のクリーニング部材を加熱すると共に搬送しながら、該第一のクリーニング部材と前記第一の剥離部材を摺動させることにより、該第一の剥離部材に熱転写された熱可塑性画像形成物質を該第一のクリーニング部材に転移させる第一のクリーニング手段と、
前記第一の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離しているか、前記第一の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次の前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間であるかを検知する検知手段と、
表面に熱可塑性組成物層が形成されている第二の剥離部材を搬送しながら、前記熱可塑性画像形成物質を前記第一の剥離手段が前記熱可塑性画像形成物質を剥離した被記録材から該第二の剥離部材に熱転写することにより剥離する第二の剥離手段と、
第二のクリーニング部材を加熱すると共に搬送しながら、該第二のクリーニング部材と前記第二の剥離部材を摺動させることにより、該第二の剥離部材に熱転写された熱可塑性画像形成物質及び前記熱可塑性組成物層を該第二のクリーニング部材に転移させる第二のクリーニング手段と、
前記第二の剥離部材に熱転写された熱可塑性画像形成物質及び前記熱可塑性組成物層が前記第二のクリーニング部材に転移された第二の剥離部材に前記熱可塑性組成物層を形成する熱可塑性組成物層形成手段と、
前記第一の剥離部材を搬送する速度に対する前記第一のクリーニング部材を搬送する速度の比が、前記第一の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、前記第一の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離した後、次の前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離するまでの間である場合の方が大きくなるように制御すると共に、前記第一の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離していない場合に、前記第二のクリーニング手段及び前記熱可塑性組成物層形成手段が動作するように制御する制御手段を有することを特徴とする画像除去装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第二の剥離部材を搬送する速度が、前記第二の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、前記第二のクリーニング部材と前記第二の剥離部材を摺動させている場合の方が小さくなるように制御することを特徴とする請求項7に記載の画像除去装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第二の剥離部材の温度が、前記第二の剥離手段が前記被記録材から前記熱可塑性画像形成物質を剥離している場合よりも、前記第二のクリーニング部材と前記第二の剥離部材を摺動させている場合の方が高くなるように制御することを特徴とする請求項7又は8に記載の画像除去装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像除去装置と、前記被記録材に前記画像を形成する画像形成装置を有することを特徴とする画像形成除去システム。
【請求項11】
前記被記録材は、前記画像除去装置により画像を除去できることを示す識別情報が付与されており、
前記画像形成装置は、前記識別情報を検知する第一の検知手段を有し、
前記画像除去装置は、前記識別情報を検知する第二の検知手段をさらに有し、
前記第一の検知手段が前記識別情報を検知した時のみに、前記被記録材に前記画像を形成するように前記画像形成装置を制御すると共に、前記第二の検知手段が前記識別情報を検知した時のみに、前記画像が形成された被記録材から前記画像を除去するように前記画像除去装置を制御する制御手段をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の画像形成除去システム。
【請求項12】
前記被記録材は、前記画像除去装置により画像を除去できることを示す第一の識別情報が付与されており、
前記画像形成装置は、前記第一の識別情報を検知する第一の検知手段を有すると共に、前記被記録材に前記画像を形成すると共に、第二の識別情報を付与し、
前記画像除去装置は、前記第二の識別情報を検知する第二の検知手段をさらに有し、
前記第一の検知手段が前記第一の識別情報を検知した時のみに、前記被記録材に前記画像を形成するように前記画像形成装置を制御すると共に、前記第二の検知手段が前記第二の識別情報を検知した時のみに、前記画像が形成された被記録材から前記画像を除去するように前記画像除去装置を制御する制御手段をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の画像形成除去システム。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−13379(P2011−13379A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156194(P2009−156194)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】