説明

画素化放射線検知デバイス

N×M画素に細分された放射線検知デバイスは、衝突放射線を電気信号に変換するための変換部(6)と、処理部(7)であり、画素ごとに、画素に対するカウンタの比が少なくとも2に等しいように異なる領域に関連する少なくとも2つのカウンタと、画素ごとに、画素および隣接する画素の検出情報を考慮に入れながら画素および隣接する画素からの検出情報を受け取り、検出値を選択したカウンタに割り振る調停回路とを有する、処理部(7)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線検知デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
画像化システム、例えばX線画像化システムでは、センサデバイスは光子衝撃を検知するために検知領域のアレイを含む。光子の衝突は、物理量、例えば、検知領域の電気信号の電荷または電圧の変動を引き起こす。単光子計数検知デバイスでは、各衝突光子は計数され、それが衝撃を与えた領域に割り振られる。
【0003】
しかし、高解像度の検知デバイスでは、例えば、画素ピッチがセンサデバイス厚さと同様であるか、またはそれよりも小さい場合、衝突光子によって蓄積されたエネルギーは複数の検知領域で共有されることがある。その結果、これらの検知領域の各々の物理量の変化は衝突光子のエネルギーを表さないことがある。電荷共有を明らかにする必要性は、参照により全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる国際公開第2007/038974号で解明された。
【0004】
この既知のデバイスは、放射線が複数の画素に衝突する場合に、より正確なエネルギー分解能を与える。しかしなお、特に、ほんのわずかの画素によってしか共有されないか、またはさらに全く共有されない放射線を考慮に入れるためにこのデバイスを改善する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/038974号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、請求項1に記載の放射線検知デバイスが提供される。
【0007】
これらの特徴により、検出の結果は、放射線が1つを超える画素によって共有されるかどうか、またはどのように共有されるかに応じて画素の特定のカウンタに割り振ることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、従属請求項に規定された特徴の1つまたは複数を使用することもできる。
【0009】
本発明の他の特徴および利点が、非限定的な例として与えられる実施形態および添付図面の7つの以下の説明から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】放射線検知実験の概略斜視図である。
【図2】第1の実施形態による検知デバイスの平面部分図である。
【図3】電子検出回路の一例の電気図である。
【図4】第1の実施形態による画素の部分平面図である。
【図5a】第1のシナリオの第1の実施形態の動作の説明図である。
【図5b】第1のシナリオの第1の実施形態の動作の説明図である。
【図6a】第2のシナリオの同様の図である。
【図6b】第2のシナリオの同様の図である。
【図6c】第2のシナリオの同様の図である。
【図7】第2の実施形態に関する図4と同様の図である。
【図8a】第1のシナリオの第2の実施形態の検知デバイスの動作の説明図である。
【図8b】第1のシナリオの第2の実施形態の検知デバイスの動作の説明図である。
【図8c】第1のシナリオの第2の実施形態の検知デバイスの動作の説明図である。
【図9】第3の実施形態に関する図2と同様の図である。
【図10】第3の実施形態に関する図4と同様の図である。
【図11a】第3のシナリオによる第3の実施形態の動作の説明図である。
【図11b】第3のシナリオによる第3の実施形態の動作の説明図である。
【図12】第6の実施形態による画素の概略部分図である。
【図13】第6の実施形態に関する図4と同様の部分図である。
【図14a】第3のシナリオの第6の実施形態による検知デバイスの動作の説明図である。
【図14b】第3のシナリオの第6の実施形態による検知デバイスの動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
異なる図において、同じ参照符号は同じまたは同様の要素を示す。
【0012】
図1は、入口表面3で入射放射線2を受け取る放射線検知デバイス1を概略的に示す。例えば、検知放射線はX線である。しかし、以下で説明するように、放射線検知デバイスにより、例えば、ガンマ(γ)線、電子、アルファ(α)粒子、低エネルギーまたは高エネルギーの荷電粒子、イオン、中性子(両方ともホウ素などの変換器材料を使用して)、可視光(MCPまたはADPなどの媒体を使用して光電子電荷を増幅することによって)、ガス検出器に堆積され、あるガス粒子グリッド(gas grain grid)で増幅される電荷などの他の種類の放射線を検知することができる。そのような放射線は、例えば、放射線放出デバイス4によって放射線検知デバイスの方に、必要に応じて、そのような放射線の一部を散乱または吸収する物体5を通して放出することができる。典型例は、体、例えば人間または動物の体のX線画像化である。放出デバイスを使用しない、例えば宇宙放射線の検出などのような他の応用が可能である。
【0013】
放射線検知デバイス1は、衝突放射線を電気信号などのより容易に検出できる信号に変換することができる変換部6を含む。例えば、そのような変換部は、例えば、検出されるべき放射線に適合する半導体材料または好適なガスから構成することができる。そのような変換は直接的とするか、または例えば光などの別の種類の放射線への衝突放射線の最初の変換と、その後のその光の電気信号への変換とを含む間接的とすることができる。
【0014】
放射線の放出の方向に従って変換部の直下に配置され、例えば、例えばそれぞれの添え字iおよびjによってそれぞれ参照される2つの方向xおよびyに沿って規則的に配置されたN×M画素(少なくとも3×3画素)8の平面アレイとして配置することができる電子回路などの処理部7を放射線検知デバイス1はさらに含む。
【0015】
各画素8は、本例では、図1に示されたものなどの正方形または長方形表面などの多角形表面を有する。しかし、三角形または六角形などの正方形または長方形以外の形状が可能である。以下の説明では、例は正方形形状を有することになる。しかし、本発明はこの形状の画素に限定されない。
【0016】
以下で示されるように、図2では、画素8はn個の角領域9(現在の場合、n=4)および中央領域10を有する。中央領域10は図2の点線によって任意に区切られる。中央領域10は、角領域9内にない画素のすべての部分を含む。さらに、中央領域10は中心12を有し、それはほぼ画素の中心にある。第1の実施形態によれば、図2に示されるように、電子部分は画素ごとに5つのカウンタ、すなわち、
− 図2の左上角に関連するカウンタCi−1,j−1,i,j
− 図2の右上角に関連するカウンタCi,j−1,i+1,j
− 図2の左下角に関連するカウンタCj−1,j,i,j+1
− 図2の右下角に関連するカウンタCi,j,i+1,j+1
− 中央領域に関連するCi,j
を含む。
【0017】
例えば、第1の実施形態では、Ci,jは、画素8の中央領域10の中心12に関連する。
【0018】
したがって、これらのカウンタの各々は画素の異なる領域に関連する。1つが中心領域に関連し、n個がそれぞれの角領域に関連する。「異なる領域」とは、ある領域が別の領域と完全には重なり合わず、さらに別の領域と全く重なり合わないことを意味する。例えば、点線によってここで説明されるように、隣接領域は共通の境界を共有する。
【0019】
着目している画素(i,j)の角領域9に4つのカウンタが関連するが、これらのカウンタの各々は、さらに、それぞれの他の3つの画素に関連し、それらは、画素(i,j)と共に、このカウンタを中心とする領域を形成することが言及されるべきである。同様に、現在の例では、画素(i,j)の角領域9に関連する各カウンタは実際には4つの画素によって共有される。
【0020】
したがって、画素数の総数はN×Mであり、そのため、(N+1)×(M+1)のラインが画定される。カウンタの総数は、N×M(Ci,jカウンタについて)+(N+1)×(M+1)(角カウンタについて)である。
【0021】
したがって、カウンタの表面密度は画素の密度の2倍よりも大きい。画素のメッシュはカウンタのメッシュよりも粗い。カウンタのパターンは繰り返しであるが、画素の繰り返しパターンと異なる。
【0022】
代替として、最後の行N+1および/または最後の列M+1は割り振られたカウンタがなく、この場合、画素に対するカウンタの比は2であるように設定することができる。
【0023】
図3に示されるように、画素ごとに、電子検出回路13を形成することができる。この検出回路は、例えば、前記画素が受け取った放射線に対応する光を電流に換えるフォトダイオード14(変換部6の一部)を含む。電流は、オペレーショナルトランスコンダクタンス増幅器(OTA)16に並列に接続されたキャパシタンス15にロードすることができる。OTA16により、フォトダイオードへの粒子衝撃からもたらされる電流はキャパシタンス15により積分されて電圧Vp(i,j)を生成し、それは単一のフォトダイオードへの入射粒子によって堆積された全電荷に比例する。次に、この電圧はトランスコンダクタンス段g17によって電流Ip(i,j)に変換される。
【0024】
したがって、この検出回路13は、着目している画素(i,j)に衝撃によって送出されたエネルギーを示す信号を準備する。
【0025】
他の実施形態によれば、着目している画素に衝突する放射線の一部のエネルギーに関連する信号を与える他の種類の回路を備えることができる。
【0026】
次に、図4に移ると、放射線検知デバイスの処理部7は調停回路を有し、その部分が点線18で概略的に示される。調停回路はカウンタを選択し、選択したカウンタに検出値を割り振ることができる。
【0027】
調停回路は、処理部の複数のカウンタの中で、衝突の衝撃に対応する検出値を割り当てられるのに最も好適であるカウンタを決定するように構成される。
【0028】
特に、選択されるカウンタは、受け取った放射線の共通重心にもっと近い(例えば、含む)領域に関連するものとすることができる。したがって、選択されるカウンタは、それぞれの画素の検出値を計量係数として使用して調停回路に共通重心の計算を行わせることによって決定することができる。
【0029】
カウンタを選択するのに、調停回路は画素(i,j)に隣接する画素から得られた検出情報を考慮に入れて、
− 衝突放射線が多くの画素(例えば、2つから4つの画素)によって共有され、その場合、4つの衝撃を与えられた画素の中心にある角領域9に関連するカウンタに検出値を割り振られることになるかどうか、
− または、検出がより少ない画素(例えば、1つの画素)で検知され、画素の中央領域10に関連するカウンタに検出値を割り振るかどうか
を決定しなければならない。
【0030】
図4に示される第1の実施形態によれば、調停回路18は角領域9ごとに加算回路19と比較回路20とを含む。さらに、画素は、例えば中心領域に、識別回路21を含む。
【0031】
識別回路21は、入力として、現在の画素Ii,jに関連する信号、ならびに最隣接のものからの信号、すなわち、現在の場合、信号Ii−1,j、Ii,j−1、Ii+1,jおよびIi,j+1を受け取る。
【0032】
識別回路21は信号Ii,jの値を所定の閾値と比較して、検出がこの画素で生じたかどうかを決定する。この比較の結果から、検出がこの画素で生じたという場合、識別回路は、検出が4つの隣接する画素のいずれかで同様に生じたかどうかを決定する。例えば、識別回路21は、4つの受け取った信号の値を同じ閾値またはIi,jの値と比較する。
【0033】
代替として、2つの異なる回路がこれらのステップの各々を行うことができる。代替として、検出の発生は隣接する画素の各々で局所的に行われることがあり、画素(i,j)に関して識別回路21への入力として受け取った信号は、着目している隣接画素で検出が生じたか、または生じなかったかに関してのほんの少しだけの符号化である。
【0034】
検出が隣接する画素のいずれでも生じていないと識別回路が決定する場合、識別回路は、選択されたカウンタとして、画素の中央領域10に関連するカウンタCi,jを選択し、この選択したカウンタに検出値を割り振る。そのような検出値は、例えば、画素(i,j)における入射放射線のエネルギーの各々のIi,jの値である。
【0035】
さらに、識別回路は、そのような場合、着目している画素の角領域に関連するカウンタの各々にゼロ(0)の値を割り振る。
【0036】
それと反対に、現在の画素に生じている検出に加えて、検出が隣接画素でも生じたことを識別回路21が見いだす場合、角領域に関連するカウンタのうちの1つが選択されたカウンタとなることになる。そのような場合、識別回路は、画素の中央領域に関連するカウンタCi,jにゼロ(0)を割り振る。
【0037】
次に、角領域9ごとに、加算回路19は所与の角領域に最も近い4つの画素の入力を合計する。
【0038】
図4の例では、画素(i,j)の右下角の加算回路19のみが示されているが、当然、同様の加算回路が各角領域に存在する。加算回路19は、入力として、
− 画素(i,j)の検出値Ii,j
− 画素(i,j)の下の画素(i,j+1)の検出値Ii,j+1
− 画素(i,j)の右の画素(i+1,j)の検出値Ii+1,j、および
− 画素(i,j)の右下の画素(i+1,j+1)からの値Ii+1,j+1
を受け取り、これらの4つの値の和Si,j,i+1,j+1を出力する。
【0039】
比較回路20は、それが配置されている角領域でそのカウンタが選択されなければならないかどうかを決定することができる。現在の場合、所与の角領域のカウンタは、この角の加算回路19によって計算された和が4つの隣接する角カウンタの和よりも大きい場合に選択されることになる。
【0040】
したがって、比較回路20は、入力として、
− 現在の角領域に対して計算された和のSi,j,i+1,j+1
− 現在の角領域の左の角領域に対して計算された和のSi−1,j,i,j+1
− 所与の角領域の上の角領域に対して計算された和のSi,j−i,i+1,j
− 現在の角領域の右の角領域に対して計算された和のSi+1,j,i+2,j+1、および
− 現在の角領域の下の角に対して計算された和のSi,j+1,i+1,i+1,j+2
を受け取る。
【0041】
i,j,i+1,j+1が他の4つの入力よりも大きい場合、カウンタCi,j,i+1,j+1が選択される。
【0042】
さらに、検出の検出値は前記カウンタに割り振られる。例えば、割り振られた検出値は和のSi,j,i+1,j+1である。
【0043】
i,j,i+1,j+1が選択されない場合、ゼロ(0)がこのカウンタに割り振られる。次に、選択されたカウンタの値は遠隔処理ユニットに送られるか、またはそれによって読込まれ、次にリセットされる。他のカウンタの値は読込まれない。そのような読込みは、事象ごとに行うことができる。
【0044】
ちょうど今説明した回路により、複数の画素によって共有される事象と、単一の画素によって検出される事象との両方を考慮に入れることができる。
【0045】
事象が単一の画素によって検出される場合、それは中央領域に関連するカウンタに割り振られることになる。事象が複数の画素によって検出される場合、それは画素の最も関連性のある角に関連するカウンタに割り振られることになる。
【0046】
識別回路21がない仮想の実施形態と比較して、事象が単一の画素で検出される場合、そのような仮想の比較例では、4つの加算回路19の各々によって計算された和はほぼ等しいことになり、電子雑音に原因してのみ異なる。そのような比較例では、検出は、最大の雑音誤差をもつ1つの角にランダムに割り振られることになる。したがって、本発明によれば、比較例の現在の問題が解決される。
【0047】
これが、以下の図5a、5b、6a、6b、6cに示される。
【0048】
図5aは、検出が4の検出値を伴って1つの画素にのみ生じる第1のシナリオの場合を概略的に示す。
【0049】
図5bに示されるように、識別回路21は、検出がこの画素でのみ生じたことを決定することができ、中央領域に関連するカウンタに検出値を割り振る。
【0050】
他のカウンタにはゼロが割り振られる。
【0051】
次に、図6aは、単一の粒子がそれぞれ検出値1、1、2、および4を伴って4つの隣接画素により検出される場合を示す。
【0052】
画素ごとに、識別回路21は、少なくとも1つの隣接画素が衝突されたと決定し、したがって中央領域に関連するカウンタにゼロを割り振る。次に、処理は、角領域ごとに隣接画素の和を行う加算回路に渡され、その結果が図6bに示される。
【0053】
処理は比較回路の適用へと続き、比較回路は、選択されたカウンタが中央カウンタであり、8つの検出値がそれに関連することになると決定することができる。他の角カウンタはゼロ値を受け取る。
【0054】
次に、図7は本発明の第2の実施形態を示す。この第2の実施形態によれば、加算回路19および比較回路20は、第1の実施形態について上述したものと同様である。しかし、加算回路19は識別回路21の出力部に接続されないが、識別回路22は加算回路19の出力部として分岐される。
【0055】
この第2の実施形態によれば、加算回路19は、第1の実施形態において上記で説明したように和を行うことで開始する。
【0056】
識別回路22は、例えば画素の中心で画素に割り振られており、入力として、
− 左上角領域について得られた和のSi−1,j−1,i,j
− 右上角領域について得られた和のSi,j−1,i+1,j
− 左下角領域についての和のSi−1,j,i,j+1、および
− 右下角領域についての和のSi,j,i+1,j+1
を受け取る。
【0057】
第2の実施形態によれば、識別回路22は4つの入力信号を比較し、これらの信号がすべて実質的に等しいか(これらの4つの信号の最小と最大との間の差が所定の閾値よりも小さいか)どうかを点検する。
【0058】
4つの入力が実質的に等しいと識別回路22が決定する場合、識別回路22は、選択されるカウンタとして中央領域のカウンタCi,jを選択する。さらに、識別回路22は、例えばIi,jなどの検出値を選択されたカウンタに割り振る。さらに、識別回路22は、角領域に関連するカウンタにゼロ(0)の検出値を割り振ることもできる。
【0059】
それと反対に、4つの入力のうちの少なくとも2つが実質的に異なると識別回路22が決定する場合、識別回路22は中央領域に関連するカウンタCi,jにゼロを割り振る。そのような場合、角領域に関連する角のうちの1つが選択されたカウンタとなることになる。選択されるカウンタの決定は、第1の実施形態におけるように比較回路20によって行われる。
【0060】
一例が図8aから8cに概略的に示される。この例では、図8aに示されるように、事象は4の検出値を伴って1つの画素にのみ生じる。
【0061】
図8bに示されるように、各角領域に関連する加算回路19は入力を合計し、その結果、4の値が画素の各角領域に関連づけられる。図8cに示されるように、識別回路22は、各角領域に関連する値が実質的に等しいことを識別し、選択されたカウンタとして中央領域に関連するカウンタを選択する。さらに、識別回路22は、検出された値をこのカウンタに割り振り、ゼロ(0)を他のカウンタ(図8c)に割り振る。
【0062】
例えば図6aに示されたような複数の画素によって共有される検出の場合、処理は、実質的に、例えば、第1の実施形態について図6aから6cで説明したようなものである。すなわち、和が、図6bに示されたように角ごとに行われる。この段階で、識別回路22は、画素ごとに、各角について計算された和が異なり、中央領域に関連するそれぞれのカウンタにゼロ(0)の値を割り振ることを決定することになる。次に、比較回路20は、角領域に関連するカウンタのうちのどれが選択されるカウンタとなるかを決定し、選択したカウンタに、対応する和を関連づけることになる(図6c)。
【0063】
したがって、上述の実施形態から明らかであるように、選択されるカウンタの選択は、必要に応じて、画素の検出値に基づいて、またはこれらの検出値の好適な組合せに基づいて行うことができる。
【0064】
次に、図9は本発明の第3の実施形態を示す。
【0065】
この第3の実施形態では、画素の中央領域10の中心に関連するカウンタCi,jが必ずしも存在しない。しかし、カウンタは、2つの隣接角領域9間の縁部11に関連することができる。
【0066】
上記で説明したように、これらの縁部カウンタは各々中央領域10に関連し、中央領域10は角にない画素のいかなる部分も含む。
【0067】
例えば、図9に示されるように、4つの縁部カウンタ、すなわち、
− 画素の上に関連するカウンタCi,j−1,j
− 画素の左に関連するカウンタCi−1,i,j
− 画素の右に関連するカウンタCi,i+1,j、および
− 画素の下に関連するカウンタCi,j,j+1
がある。
【0068】
したがって、各々4つの画素によって共有される角領域に関連するカウンタの場合のように、縁部カウンタは2つの画素によって共有される。
【0069】
各カウンタに関連する領域は図9の点線によって完全に任意に指定される。
【0070】
したがって、N×M画素では、(N+1)×(M+1)+2×N×M+M+Nのカウンタがある。
【0071】
図10に示されるように、この実施形態によれば、識別回路23は各縁部に関連づけられる。調停回路は縁部加算回路24をさらに含む。調停回路は、第1の2つの実施形態におけるように加算回路19と比較回路20とをさらに含む。これらの2つの回路は、ここではより詳細には説明されないであろう。
【0072】
識別回路23は、所与の縁部を共有する2つの画素においてのみ検出が生じたかどうかを決定し、そのような場合、選択されたカウンタとしてこの縁部に関連するカウンタを選択するために使用される。
【0073】
例えば、縁部識別回路23は、入力として、
− 縁部の左側の画素(i,j)に対する検出値Ii,j
− 縁部の右の画素に対するIi+i,j、および
− 所与の縁部を共有する画素の上の2つの画素とそれの下の2つの画素に対するIi,j−1、Ii+1,j−1、Ii,j+1、およびIi+1,j+1を受け取る。
【0074】
まず、縁部識別回路23は、両方の値Ii,jおよびIi+1,jが事前定義された閾値を超えていること(すなわち、検出がこれらの2つの画素において生じたこと)を検査することになる。これがそうでない場合、識別回路23は、所与の縁部カウンタCi,i+1,jにゼロの値を割り振ることになる。
【0075】
両方の値Ii,jおよびIi+1,jが実質的にゼロよりも大きい場合、すなわち、検出がこれらの2つの画素において生じた場合、縁部識別回路は、検出が他の4つの周囲の画素においても生じたかどうかを検査することになる。これらの4つの隣接値のうちの少なくとも1つが実質的に0よりも大きい(事前定義された閾値よりも大きい)、すなわち、検出がやはりこれらの隣接画素のうちの1つにおいて生じたことを意味する場合、それは、着目している縁部のまわりで結局は検出が生じておらず、ゼロの値が着目している縁部カウンタCi,i+1,jに割り振られることを意味する。
【0076】
4つの隣接画素からの値が実質的にゼロである場合、縁部カウンタCi,i+1,jは選択されたカウンタである。
【0077】
縁部加算回路24は所与の縁部を共有する2つの画素に対する値Ii,jおよびIi+1,jを入力として受け取り、これらの2つの入力の和を出力として準備する。この和は選択されたカウンタCi,i+1,jに検出値として割り振ることができる。
【0078】
現在の検出では縁部カウンタのどれも選択されたカウンタでないことが縁部識別回路23によって決定される場合、処理は、第1の実施形態について上記で説明したように加算回路19および比較回路20に渡される。そのような場合、検出は生じたが、結局は2つの隣接画素においてではないことを意味する。そのような場合、選択されたカウンタは、上記で説明したように、最も関連性のある角領域に関連するカウンタとなることになる。
【0079】
この状況は図11aおよび11bに例示される。図11aは、1および2のそれぞれの検出値を伴って2つの隣接画素においてのみ検出が生じる場合を示す。そのような場合、上記で説明したように、縁部識別回路は、これらの2つの画素によって共有される縁部に関連するカウンタが選択されたカウンタであると決定することになり、縁部加算回路24はこのカウンタにこれらの2つの画素によって検出された値の和を割り振ることになる。図11bに示されるように、ゼロ(0)の値が隣接カウンタに関連づけられる。例えば図6aに示されたように、検出が2つを超える隣接画素で生じる場合、論理は、図6aから6cに関連して上記で説明したように動作する。すなわち、縁部識別回路23は、縁部カウンタが選択されたカウンタでないと決定し、ゼロ(0)の値がこれらのカウンタに関連づけられる。次に、加算回路19および比較回路20は、上記で説明したように動作する(図6b、図6c)。
【0080】
さらに、加算回路の出力部に識別回路を配置し、加算回路の結果に基づいて識別を行うことによって第1の実施形態から第2の実施形態を得ることができるのと同様に、第3の実施形態は、画素自体からではなく加算回路19からの入力に基づいて縁部識別が行われる第4の実施形態に変更することもできる。
【0081】
図2および図9の実施形態は、第5の実施形態に従って、画素ごとに、各角領域に関連するカウンタ、各縁部に関連するカウンタ、および中央領域の中心に関連するカウンタ、したがって、(N+1)×(M+1)+2×N×M+N+M+N×Mのカウンタを有する検出器において組み合わせることができることが理解されよう。そのような実施形態では、
− 検出値が1つの画素でのみ得られていると決定される場合、中心に関連するカウンタが選択されたカウンタとなることになる、
− 検出が2つの隣接画素のみによって共有されていると決定される場合、選択されたカウンタは、これらの2つの画素によって共有される縁部に関連するカウンタとなることになる、
− 検出が3つまたは4つの画素で生じたと決定される場合、選択されたカウンタは角領域に関連する最も関連性のあるカウンタとなることになる。
【0082】
これらの実施形態のいずれにおいても、1つの目的は電子雑音に基づいて検出値を割り振るのを避けることである。したがって、電子雑音が選択決定に影響を与える場合はいつでも、追加の回路が代替方法を見いだしてカウンタ選択を行うことができるように準備される。
【0083】
さらに、せいぜい4つの画素で検出が生じる場合について本説明が与えられていても、説明した回路は、4つを超える画素からの値に基づいて、調整と、最も関連性のあるカウンタの決定を行うようにより多くの遠方の隣接画素に接続することができることが理解されよう。
【0084】
別の第6の実施形態が図11に部分的に示される。
【0085】
この実施形態によれば、5つのカウンタが各々画素の中心を通過する水平線に沿って配置されるそれぞれの領域に関連する。これらのカウンタは、左から右に、Ci,j,1、Ci,j,2、Ci,j、(画素の中心に関連するカウンタである)、Ci,j,3、およびCi,j,4と呼ばれる。最も外側のカウンタCi,j,1およびCi,j,4は、図10に関連して説明したような縁部カウンタとするか、または縁部ではなく中心に近い領域に関連することができる。例えば、これらの5つのカウンタはこの長手方向のラインに沿って均等に間隔を置かれる。各カウンタに関連する領域は図12の点線によって完全に任意に指定される。
【0086】
この実施形態によれば、カウンタの数はa×N×Mであり、本実施形態ではaは5に等しい。代替の実施形態では、a=2以上などのaの異なる値を使用することができる。
【0087】
論理は、得られた画素に対する検出値に共通重心の計算を行うことによって、選択されるカウンタを選択するのを可能にする。図13に示されるように、識別回路21は、入力として、検出値Ii−1,j、Ii,j、およびIi+1,jを受け取ることができ、各々所与のカウンタに対応する5つの出力部を有する。選択されるカウンタは、例えばIi−1,j、Ii,j、およびIi+1,jに関連する選別器から来るパルスの長さ、すなわちタイムオーバー閾値値を比較することによって選ぶことができる。したがって、識別回路21は、入力振幅のそれぞれの比に比例した出力を供給することができる。
【0088】
代表例が図14aおよび14bに示される。図14aにおいて、2つの画素のみがそれぞれ1および5の非ゼロ検出値を与える。したがって、識別回路は、衝突放射線の中心に最も近い領域に関連するものである選択されるカウンタが、現在の場合、Ci,j,2であると決定することができる。さらに、検出された検出値の和は選択されたカウンタに割り振ることができる。他のカウンタにはゼロ(0)が割り振られる。これが図14bに示される。
【0089】
この実施形態の多くの変形が本発明の範囲内で可能であることは容易に理解されるであろう。所与の画素は、垂直方向に沿って均等に間隔を置かれた、またはそうでないb個のそのようなカウンタのライン(例えば、bは2と10との間で選ばれる)を含む。そのような実施形態は角領域に関連するいかなるカウンタも必要としないことがある。したがって、カウンタのアレイは、画素検知領域のアレイからほとんど完全に分離することができる。
【0090】
原則では、本発明の目的は、画素(検知領域変換ユニット)のメッシュよりも細いカウンタのメッシュを提供することと、所与の画素およびその隣接する画素の検出値に基づいて、カウンタのうちのどれに衝突を割り振るべきかを決定するための論理を有することとである。カウンタのメッシュは規則的でないか、または少なくとも一様でなくてよい。それにより空間分解能は向上されることになり、一方、エネルギー分解能は高く保持することができる。
【0091】
上述の実施形態のすべてに関する一般的見解として、選択されたカウンタに加算値が割り振られることを説明したが、他のあり得る実施形態では、単に、選択されたカウンタに関連づけられる1の値とすることができることに留意するべきである。
【0092】
上述のカウンタはすべて互いに物理的に離れている領域に関連づけられる。変形の実施形態では、いくつかのカウンタまたは各カウンタは、例えば、画素の所与の場所の異なるエネルギーレベル(またはビン)を記録することができるように、各々が1つの所与のエネルギーウィンドウを備える複数のカウンタと取り替えることができる。
【0093】
放射線検知デバイスは、例えば、前の実施形態のいずれかで説明したように細い分解能モードで動作するように設定できること、および画素を組み合わせて超画素を準備するさらなる粗い動作モードを設定することに留意するべきである。例えば、より粗いレベルでは、カウンタの別のより粗い構成が設定される。これらは異なるカウンタとするか、またはより細いレベルのカウンタの間での選択とすることができる。例えば、より粗いモードでは、画素は、B×C、例えば、2×2、3×4、…に組み合わされ、ここで、2≦B≦nおよび2≦C≦Mである。B≦N/2およびC≦M/2である場合、エレクトロニクスは、上述の実施形態のいずれかに従って超画素レベルで同様に設けることができる。これは、例えば、異なる閾値を有する異なるエネルギーウィンドウを監視するのを可能にすることになる。
【0094】
さらに、本説明は放射線検知デバイスの画素のうちの大部分に対して述べられていることが当業者は理解されよう。しかし、例えば、検知デバイスの縁部に沿って存在する画素、または検知デバイスの角(検知デバイスの主要部分よりも少ない隣接画素を有する)の事象のようないくつかの特定の画素に特別な実施態様を行うことができる。
【符号の説明】
【0095】
1 放射線検知デバイス
2 入射放射線
3 入口表面
4 放射線放出デバイス
5 物体
6 変換部
7 処理部
8 画素
9 角領域
10 中央領域
11 縁部
12 中心
13 電子検出回路
14 フォトダイオード
15 キャパシタンス
16 オペレーショナルトランスコンダクタンス増幅器
17 トランスコンダクタンス段
18 調停回路
19 加算回路
20 比較回路
21、22、23 識別回路
24 縁部加算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N×M画素に細分された放射線検知デバイスであって、NおよびMが共に少なくとも3に等しく、各画素が多角形表面を有し、
− 画素ごとに、衝突放射線を、計数値を有する電気信号に変換するように構成された変換部(6)であり、前記計数値の値が前記画素への前記衝突放射線のエネルギーに関連する、変換部(6)と、
− 処理部(7)であり、
・画素ごとに、各々が前記画素の異なる領域に関連する少なくとも2つのカウンタであり、前記放射線検知デバイスのカウンタの総数と前記放射線検知デバイスの画素の総数との間の比が少なくとも2である、少なくとも2つのカウンタと、
・調停回路(18)であり、
*前記画素および隣接する画素からの検出情報を受け取り、
*前記画素の検出情報と隣接する画素からの検出情報とを考慮に入れて、検出が複数の前記カウンタのうちの選択したものに割り振られるべきであるかどうかを決定し、そのような場合、前記選択したカウンタに検出値を割り振るように画素ごとに構成された、調停回路(18)と
を有する、処理部(7)と
を含む、放射線検知デバイス。
【請求項2】
前記調停回路が、前記それぞれの画素の前記検出情報を計量係数として使用して、前記画素および前記隣接する画素の共通重心に最も近い領域に関連するカウンタを前記選択したカウンタとして決定するように構成される、請求項1に記載の放射線検知デバイス。
【請求項3】
各多角形表面がn個の角領域を有し、前記処理部が画素ごとに少なくともn+1個のカウンタを有し、カウンタが各々それぞれの角領域(9)に関連する、請求項1または2に記載の放射線検知デバイス。
【請求項4】
各多角形表面が中心領域を有し、画素ごとに、カウンタが前記中心領域(10)に関連する、請求項3に記載の放射線検知デバイス。
【請求項5】
各画素が中心(12)を有し、カウンタが前記中心に関連する、請求項4に記載の放射線検知デバイス。
【請求項6】
各多角形表面がn個の角領域を有し、各画素が、2つの角を連結する1つの縁部(11)を有し、カウンタが前記縁部に、好ましくは、各縁部に関連する、請求項1から5のいずれかに記載の放射線検知デバイス。
【請求項7】
所与の画素ごとに、前記調停回路は、少なくともnに等しいk個の隣接する画素からの検出情報を受け取るように、ならびに前記所与の画素からの検出情報が所定の閾値を超える場合、および前記k個の隣接する画素のうちの1つのみからの検出情報が所定の閾値を超える場合、縁部に関連するカウンタに検出値を割り振るように構成される、請求項6に記載の放射線検知デバイス。
【請求項8】
各多角形表面がn個の角領域と中央領域とを有し、所与の画素ごとに、前記調停回路は、少なくともnに等しいk個の隣接する画素からの検出情報を受け取るように、ならびに前記所与の画素からの検出情報が所定の閾値を超える場合、および前記k個の隣接する画素のどれからの検出情報も所定の閾値を超えない場合、前記中央領域(10)に関連するカウンタに検出値を割り振るように構成される、請求項1から7のいずれかに記載の放射線検知デバイス。
【請求項9】
各多角形表面がn個の角領域と中央領域とを有し、所与の画素ごとに、前記調停回路は、少なくともnに等しいk個の隣接する画素からの検出情報を受け取るように、ならびに前記所与の画素からの検出情報が所定の閾値を超える場合、および前記k個の隣接する画素のうちの2つまたは3つからの検出情報が所定の閾値を超える場合、角領域(9)に関連するカウンタに検出値を割り振るように構成される、請求項1から8のいずれかに記載の放射線検知デバイス。
【請求項10】
各多角形表面がn個の角領域を有し、前記処理部が、画素ごとに、好ましくは、角領域ごとに、隣接する画素からの前記検出情報を合計し、前記和を前記検出値として出力するように構成された加算回路(19)をさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の放射線検知デバイス。
【請求項11】
前記調停回路(20)が、角領域ごとに、隣接角領域に関連する検出値を受け取り、前記検出値を所与の前記角領域に関連する前記検出値と比較し、前記検出値がすべての隣接角領域に関連する前記検出値よりも大きい場合にのみ前記所与の角領域に関連する前記カウンタに前記検出値を割り振るように構成される比較回路をさらに含む、請求項10に記載の放射線検知デバイス。
【請求項12】
各多角形表面がn個の角領域と中央領域とを有し、所与の画素ごとに、前記調停回路が、k個の隣接する画素からの検出情報を受け取り、検出値を角領域に関連づけるように構成され、
前記調停回路が、画素ごとに、その角領域に関連する検出値を受け取り、前記検出値を互いに比較し、前記角領域に割り振られた前記検出値間の差が所定の閾値より下にある場合に前記中央領域に割り振られる前記カウンタに前記検出値を割り振るように構成される比較回路をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の放射線検知デバイス。
【請求項13】
前記比が3よりも大きく、好ましくは4よりも大きく、さらに好ましくは5よりも大きい、請求項1から12のいずれかに記載の放射線検知デバイス。
【請求項14】
前記変換部が繰り返しパターンを有し、前記カウンタが、繰り返される異なるパターンに沿って配置された領域に関連する、請求項1から13のいずれかに記載の放射線検知デバイス。
【請求項15】
少なくとも2つの画素のグループごとに、
*前記画素のグループおよび隣接する画素のグループからの検出情報を受け取り、
*前記画素のグループの検出情報と隣接する画素のグループからの検出情報とを考慮に入れて、検出が前記複数のカウンタのうちの選択したものに割り振られるべきであるかどうかを決定し、そのような場合、前記選択したカウンタに検出値を割り振るように構成された粗い調停回路(18)をさらに含む、請求項1から14のいずれかに記載の放射線検知デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【公表番号】特表2013−501226(P2013−501226A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523206(P2012−523206)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060115
【国際公開番号】WO2011/015235
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(512029076)
【Fターム(参考)】